説明

細胞溶解を誘発するための二本鎖リボ核酸の使用

本発明は、医薬を製造するためのリボ核酸の使用であって、該リボ核酸は二本鎖構造を含み、該二本鎖構造は第1鎖及び第2鎖を含み、第1鎖は連続したヌクレオチドの第1ストレッチを含み、第2鎖は連続したヌクレオチドの第2ストレッチを含み、第1ストレッチは、該医薬により処置されるべき生物の細胞の核酸、好ましくは、mRNAに対して相補性ではなく、及び/又は、第2ストレッチは、該医薬により処置されるべき生物の細胞の核酸、好ましくは、mRNAとは異なる、医薬を製造するためのリボ核酸の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、お互いに対して本質的に相補性である第1鎖と第2鎖を含む二本鎖核酸及び医薬としてのその使用に関する。
【0002】
一般に望まれない細胞増殖、特に腫瘍は、多くの場合に、機能の損失の結果である。この制御されていない細胞増殖は、腫瘍の処置のために選ばれる種々のアプローチのための標的である。このようなアプローチは、中でも、ある場合に腫瘍サプレッサー(tumor suppressors)の機能の損失の直接の結果である、過剰発現される因子の排除を可能とする化合物の使用を含む。その目的のための適当な手段は、中でも、低分子(small molecules)であって、該分子に対してスクリーニングされる低分子又は、中でも作用部位からの抗体によこの種の因子の除去である。しかしながら、これらの場合のいずれにおいても、処置は、継続した処置でなければならない。何故ならば、そうでないと、失調状態の因子(imbalanced factor)は、それぞれの手段がその疾患に罹っている生物にもはや与えられなくなると、再び過剰に発現され又は過剰に存在するからである。他のアプローチは、典型的には、腫瘍と関連して観察された生理学的現象、例えば、血管形成を利用する。成功したと思われるアプローチは、腫瘍への栄養の供給を抑制するようにVEGFに対する抗体を使用することである。しかしながら、血管形成はきわめて重大な生物学的現象であるので、副作用が極めて重大であり、そして注意深い配慮を必要とする。
【0003】
腫瘍及び腫瘍関連疾患の処置で実行される更なるストラテジーは、腫瘍細胞崩壊ウイルス(oncolytic viruses)の使用である。このようなウイルス、中でも、アデノウイルスは、腫瘍細胞に感染し、腫瘍細胞は感染するとアポトーシスを受け、かくして腫瘍をそのまま溶解するのに使用される。しかしながら、ウイルス媒介腫瘍崩壊は、典型的には、細胞の腫瘍選択性溶解を与えるように処置されるためには、それぞれ細胞及び腫瘍のある種の遺伝子バックグラウンドを必要とする。
【0004】
siRNAとも呼ばれる低分子干渉RNA(small interfering RNA)は、標的遺伝子の発現の配列特異的阻害のための手段として相当注目された。siRNAは、サイレンシングされる遺伝子に対して配列が相同性の二本鎖RNA(dsRNA)により開始される転写後の遺伝子サイレンシング機構であるRNA媒介干渉(RNAi)と呼ばれる現象を媒介する(Fire(1999),Trend 15,358-63,Tuschl,et al.(1999),Genes Dev 13, 3191-7,Waterhouse,et al.(2001),Nature 411,834-42,Elbashir, et al.(2001),Nature 411 ,494-8, 概説については、Sharp(2001),Genes Dev 15,485-90,Barstead(2001),Curr Opin Chem Biol 5,63-6参照)。RNAiは、植物(Baulocombe(1999),Curr Opin Plant Biol 2,109-13)、線虫(Montgomery, et al.(1998),Proc.Natl.Acad.Sci.USA95,15502-7)、Drosophila(Kennerdell, et al.(1998),Cell 95,1017-26,Kennerdell,et al.(2000),Nat Biotechnol 18,896-8)を含む多数の生物における遺伝子機能を決定するために広く使用されてきた。線虫C.elegansでは、ゲノムの約1/3が、既にRNAiによる機能分析に付された(Kim(2001),Curr Biol 11,R85-7,Maeda et al,(2001),Curr Biol 11,171-6)。
【0005】
最近まで、RNAiは、早期のマウス発生を除いては、哺乳動物細胞には一般に適用可能ではなかった(Wianny,et al.(2001),Nat Cell Biol 2,70-5)。21ヌクレオチド(nt)の長さのリボオリゴヌクレオチドの二本鎖の哺乳動物細胞へのトランスフェクションは、遺伝子発現を妨害しそして、長いdsRNAで通常得られる配列非依存性インターフェロン駆動抗ウイルス応答(sequence independent interferon-driven anti-virus response)を誘発しないという発見は、分化した哺乳動物細胞において新規な潜在的用途をもたらした(Elbashir et al.(2001),Nature 411,498-8)。興味深いことに、これらの低分子干渉RNAs(siRNAs)は、長いdsRNAsからのプロセッシング産物に似ており、これは、分化した哺乳動物細胞における潜在的バイパス機構(potential bypassing mechanism)を示唆する。最初のdsRNAプロセッシングのために必要なRNアーゼIIIファミリーのメンバーであるDicer複合体が同定された(Bernstein,et al.(2001),Nature 409,363-6,Billy,et al.(2001),Proc.Natl.Acad.Sci.USA 98,14428-33)。修飾されていないリボオリゴヌクレオチドを使用する際に以前に遭遇した問題の1つは、細胞における又は血清含有培地における急速な分解であった(Wickstrom(1986),J.Biochem Biophys Methods 13,97-102,Cazenave,et al,(1987),Nucleic Acids Res 15,10507-21)。トランスフェクションされたsiRNAにより誘発されたそれぞれのノックダウンが表現型の変化を達成するのに十分長く維持されるかどうかは、特定の遺伝子機能及び使用されるアッセイシステムに依存するであろう。
【0006】
今日まで使用されたsiRNAの主要な特徴は、二本鎖構造の一つの鎖が標的核酸配列に対して相補性であり、これに対して他方はsiRNAの二本鎖構造の基礎をなす塩基対形成機構により、標的核酸と同じであるということである。siRNAの二本鎖構造を形成する2つの鎖のいずれかの各側に結合したいかなるヌクレオチド又は配列も、クローニング又は安定化の目的で加えられる。
【0007】
今日まで、siRNAsは、それぞれ、腫瘍及び腫瘍疾患の処置に適当な手段であるとは思われない。失調状態の因子がsiRNAsによって分解されるとしても、このような分解は、非常に長い時間持続されなければならない。何故ならば、腫瘍を形成する細胞は、siRNAsにより排除されないからである。他方、制御因子の損失により特徴付けられないが異常なしかし他の生理学的因子により特徴付けられるこれらの形態の腫瘍は、異常な形態のみを扱う高度に特異的なsiRNAを必要とする。しかしながら、このようなsiRNAのデザインのためには、失調状態の因子のそれぞれの異常な形態の原因である核酸配列の種類を知ることが必要である。あるグループの腫瘍については、同じ異常が起こることが認められるべきであるけれども、siRNAにより処置されるべき腫瘍の注意深い分子生物学的特徴付けが必要とされ、そのため、それは非常に時間とお金がかかる。更に、siRNAの高い特異性が前提とされるならば、あるグループの患者の別の腫瘍の処置用にデザインされたsiRNA種が、異なるグループの患者の同じ腫瘍の処置に実際に適当であるかどうかは疑問があると思われる。
【0008】
ゆえに、siRNAの最近もくろまれた使用は、いくらかの問題に出会う。
【0009】
ゆえに、腫瘍及び腫瘍関連疾患の処置のための手段を提供しそしてそのためのそれぞれの化合物を提供することは、本発明の基礎をなす問題である。
【0010】
第1の観点では、本発明の基礎をなす問題は、
核酸が二本鎖構造を含み、該二本鎖構造が第1鎖(first strand)及び第2鎖(second strand)を含み、
該第1鎖が連続したヌクレオチドの第1ストレッチを含み、第2鎖が連続したヌクレオチドの第2ストレッチを含み、
第1ストレッチが、医薬により処置されるべき生物の細胞の標的核酸、好ましくは、mRNAに対して相補性ではなく、及び/又は
第2ストレッチが、該医薬により処置されるべき生物の細胞の標的核酸、好ましくは、mRNAとは異なる、
核酸、好ましくは、リボ核酸の医薬を製造するための使用により解決される。
【0011】
或る態様では、標的核酸は、生物の細胞のいかなる核酸でもあり、好ましくは生物の細胞のいかなるmRNAでもある。
【0012】
或る態様では、標的核酸は、生物の細胞のトランスクリプトームのいかなるエレメントでもあり、好ましくは、生物の細胞のトランスクリプトームのすべてのエレメントである。
【0013】
或る態様では、細胞は、好ましくは疾患にかかった病理学的細胞である。
【0014】
ある態様では、第1ストレッチは処置されるべき生物の非病理学的細胞の核酸、好ましくはmRNAに対して相補性であり、及び/又は
第2ストレッチは、処置されるべき生物の非病理学的細胞の標的核酸、好ましくは、mRNAと同一である。
【0015】
好ましい態様では、非病理学的細胞の標的核酸は1つ以上のヌクレオチド位置で病理学的細胞の標的核酸とは異なる。
【0016】
ある態様では、医薬は、疾患の処置及び/又は予防用であり、このような疾患は好ましくは、腫瘍又はがんである。
【0017】
ある態様では、病理学的細胞は腫瘍サプレッサー欠損(tumor suppressor-defective)であり、そして連続したヌクレオチドの第1ストレッチは、機能的腫瘍サプレッサーをコードする核酸に対して相補性であり、及び/又は
連続したヌクレオチドの第2ストレッチは、機能的腫瘍サプレッサーをコードする核酸と同一である。
【0018】
好ましい態様では、第1ストレッチは、機能的腫瘍サプレッサーをコードする核酸に対して相補性であり、病理学的細胞が該機能的腫瘍サプレッサーに関して腫瘍サプレッサー欠損であり、そして
第2ストレッチが、機能的腫瘍サプレッサーをコードする核酸と同一であり、病理学的細胞が該腫瘍サプレッサーに関して腫瘍サプレッサー欠損である。
【0019】
ある態様では、病理学的細胞は、機能的腫瘍サプレッサーの遺伝子又はその転写物を欠いている。
【0020】
ある態様では、病理学的細胞は、機能的に活性な腫瘍サプレッサーを与える遺伝子又はその転写物を欠いている。
【0021】
好ましい態様では、該遺伝子又はその転写物は、1つ以上の突然変異を含み、このような突然変異は、好ましくは、点突然変異及び欠失突然変異よりなる群から選ばれ、このような突然変異(1つ又は複数)は好ましくは、機能的に不活性な腫瘍サプレッサーをもたらす。
【0022】
第2の観点では、本発明の基礎をなす問題は、
核酸が二本鎖構造を含み、そして該二本鎖構造が、第1鎖及び第2鎖を含み、
該第1鎖が連続したヌクレオチドの第1ストレッチを含み、そして第2鎖が連続したヌクレオチドの第2ストレッチを含み、
該核酸又はその一部若しくは鎖(strand)が、RNA干渉応答ネガティブである、
核酸、好ましくは、リボ核酸の医薬を製造するための使用により解決される。
【0023】
第2の観点のある態様では、核酸が、医薬で処置されるべき生物の病理学的細胞においてRNA干渉応答ネガティブである。
【0024】
第2の観点のある態様では、核酸が、医薬で処置されるべき生物の非病理学的細胞においてRNA干渉応答ポジティブである。
【0025】
第1及び第2の観点の態様において、核酸は、病理学的細胞のストレス応答、好ましくは、アポトーシス及び/又は増殖の抑制を誘導する。
【0026】
第3の観点では、本発明の基礎をなす問題は、核酸、好ましくは、リボ核酸、及び好ましくは、薬学的に許容されうる担体を含む医薬組成物であって、
該核酸が二本鎖構造を含み、そして二本鎖構造が第1鎖及び第2鎖を含み、
第1鎖が連続したヌクレオチドの第1ストレッチを含み、そして第2鎖が連続したヌクレオチドの第2ストレッチを含み、
第1ストレッチが、該医薬で処置されるべき生物の細胞の標的核酸、好ましくは、mRNAに対して相補性ではなく、及び/又は、
第2ストレッチが、該医薬で処置されるべき生物の細胞の標的核酸、好ましくは、mRNAとは異なる、
医薬組成物により解決される。
【0027】
第3の観点のある態様では、標的核酸は、該医薬組成物を使用して処置されるべき生物の細胞のいかなる核酸でもあり、好ましくは、このような生物の細胞のいかなるmRNAでもある。
【0028】
第3の観点のある態様では、標的核酸は、いかなるエレメントでもあり、好ましくは、該医薬組成物で処置されるべき生物の細胞のトランスクリプトームのトランスクリプトームのすべてのエレメントである。
【0029】
第3の観点のある態様では、細胞は、好ましくは、医薬組成物により処置及び/又は予防されるべき疾患にかかっている病理学的細胞である。
【0030】
第3の観点のある態様では、核酸は、本発明の第1の観点に関して定義されたとおりである。
【0031】
第3の観点のある態様では、医薬組成物は、少なくとも1つの脂質、好ましくはカチオン性脂質を更に含む。
【0032】
第3の観点の好ましい態様では、脂質が、β−アルギニル−2,3−ジアミノプロピオン酸−N−パルミチル−N−オレイル−アミド三塩酸塩である。
【0033】
第3の観点のある態様では、医薬組成物はヘルパー脂質を更に含む。
【0034】
第3の観点の好ましい態様では、ヘルパー脂質が、ジフィタノイルホスファチジルエタノールアミンである。
【0035】
第4の観点では、本発明の基礎をなす問題は、第3の観点に従う医薬組成物及び/又は本発明の第1の観点に関連して記載された核酸を投与する工程を含む、処置を必要とする患者の処置方法、好ましくは、がん及び/又は腫瘍を処置する方法により解決される。
【0036】
第4の観点のある態様では、患者は、前記請求項のいずれか1項に記載の細胞、好ましくは、病理学的細胞を示す。
【0037】
本発明者は、驚くべきことに、腫瘍又は腫瘍関連疾患を含む(しかしそれらに限定はされない)種々の疾患の処置のために二本鎖核酸を使用することが可能であることを見出した。好ましくは、本発明に従う二本鎖核酸の使用はストレス応答をもたらす。このようなストレス応答は、個々に又はいかなる組み合わせにおいても、本明細書でストレス応答とも呼ばれる下記の現象のいずれかをもたらし、即ち、細胞サイクル停止(cell cycle arrest)、増殖抑制、細胞死、アポトーシス、細胞の除去(elimination)、好ましくは、アポトーシスによる若しくはアポトーシスにより媒介される細胞の除去、又はこれらの現象のいずれかの誘発をもたらし、その際細胞は、原因的方法で又は非原因的方法で、即ち、直接又は間接に、該疾患に関与している。更に、ストレス応答は、二本鎖核酸で処置された細胞、組織、器官又は生物により又は二本鎖核酸で処置された細胞、組織、器官又は生物において、直接又は間接に、先天性免疫応答及び/又は抗ウイルス応答を伴うことができ、先天性免疫応答及び/又は抗ウイルス応答を引起すことができ、又は先天性免疫応答及び/又は抗ウイルス応答により引起されうるというのが、本発明者の最近の理解である。二本鎖核酸の作用様式を知ることなくそして該ストレス応答、更に詳しくは、その1つ以上の態様、例えば、それぞれ、アポトーシス及び細胞溶解をもたらす機構(1つ又は複数)を正確に知ることなく、本発明を実施することができることは理解されるべきである。
【0038】
更に、本発明者は、驚くべきことに、ストレス応答は、RNA干渉応答の存在下に誘発されうることも見出した。これは、もしも細胞が、RNA干渉装置(RNA interference machinery)により処理できなくてこのような装置のオーバーフローをもたらす量の、標的核酸に対して特異的なRNAi分子に直面するならば、達成することができる。ゆえに、RNAi分子のオーバーフローは、様々な経路に豊富な又は過剰のRNAi分子を流すことにより本明細書に記載のストレス応答をもたらす。
【0039】
本発明に従って使用されそして本明細書では本発明に従う二本鎖核酸とも呼ばれる二本鎖核酸は、第1鎖及び第2鎖を含む。第1鎖は、連続したヌクレオチドの第1ストレッチを含み、そして第2鎖は、連続したヌクレオチドの第2ストレッチを含む。両鎖は、好ましくはワトソン−クリック塩基対形成により塩基対形成性である。更に好ましくは、塩基対形成は、完全である、即ち、第1ストレッチのヌクレオチドと第2ストレッチのヌクレオチドとの間にミスマッチはない。
【0040】
本発明者は、驚くべきことに、第1ストレッチ又は第1鎖の配列は、核酸、好ましくは標的核酸、更に好ましくは、転写システム、例えば、細胞、組織、器官又は生物中に含有されるこのような核酸に対して相補性ではないとの条件下に、この種の二本鎖核酸を使用することにより、上記したストレス応答を引起すことができることも見出した。この種の核酸は、一般に本明細書では標的核酸と呼ばれるであろう。このような相補性の欠如は、基本的に下記の2つのシナリオの下に創り出されうる。第1シナリオは、このような標的核酸が転写システム中に存在しないということであり、その際このような転写システムは好ましくは細胞であり、そしてこのような標的核酸は更に好ましくは細胞のトランスクリプトームには存在しないということである。このシナリオは、本明細書では、遺伝子の欠如とも呼ばれ、上記したストレス応答をもたらす。遺伝子の欠如シナリオの下では、好ましくはRNA干渉応答はないが、しかしこのようなRNA干渉応答が存在していてもよい態様がある。このようなストレス応答をいかにして測定することができるかに関するアッセイは、実施例で与えられる。第2シナリオの下では、標的核酸は基本的に存在するが、しかし、本発明に従う二本鎖核酸のそれぞれ第1ストレッチ及び第1鎖の配列は、細胞中に存在する標的核酸に対して又は比較して1つ以上のミスマッチを含み、更に好ましくは細胞のトランスクリプトームに対して1つ以上のミスマッチを含む。換言すれば、それらの第1ストレッチ及び第1鎖に1つ以上のミスマッチを与えて、転写システム、例えば細胞中に存在するいかなる標的核酸に対する相補性ももはや与えられないようにする、好ましくは細胞のトランスクリプトームに対する相補性がもはや与えられないようにすることによって、第1シナリオ下と同じ効果が実現される。このデザインのゆえに、相補性の点で、標的核酸と、本発明に従う二本鎖核酸のそれぞれ第1ストレッチ及び第1鎖との相互作用又は関係はなく、それにより、この種の相互作用又は関係の欠如は、上記したストレス応答を与えそして通常当該技術分野で知られているRNA干渉反応の誘発を生じないか、又は少なくとも、本発明に従う二本鎖核酸のそれぞれ第1ストレッチ及び第2ストレッチと標的核酸とのマッチの条件下に観察されたその結果を生じない。ゆえに、本明細書で概説され、更に詳しくはこの節で概説された第1シナリオ及び第2シナリオに固有な相補性及びミスマッチとなるとき、徐々の変化又は変移(transition)がある。このようなミスマッチ(1つ又は複数)が、該ストレス応答を誘発するのに必要とされる程度は、本明細書の実施例に記載されたアッセイを使用してルーチンな分析により各々のケース及びいかなる個々のケースについても決定することができる。いずれにせよ、ミスマッチを含むそれぞれ第1ストレッチ及び第1鎖は、転写システム、好ましくは細胞のいかなる他の標的核酸に対しても又は細胞のトランスクリプトームの他の標的核酸に対しても、上記した意味で相補性ではないということが好ましい。
【0041】
それぞれ、第2鎖及び第2ストレッチのデザインについて、同じ考察が適用可能であり、その際、それぞれ、この第2ストレッチ及び第2鎖では、基準は相補性よりもむしろ同一性であり、その際、それぞれ、第1ストレッチと第2ストレッチ、並びに第1鎖と第2鎖は、完全に、即ち、それらの間にいかなるミスマッチ(1つ又は複数)もなしにマッチしている好ましい態様では、第1鎖及び第1ストレッチがそれぞれ上記したとおりにデザインされるならば、これは自動的に実現されるであろう。
【0042】
いかなる理論によっても束縛されることを望むものではないが、本明細書でRNA干渉応答とも呼ばれるRNA干渉に関与する、それぞれ、種々のタンパク質及び因子は、1つの鎖、好ましくは本発明に従う二本鎖核酸に関連して本発明で使用される好ましくは第1鎖であるアンチセンス鎖を標的核酸と比較すると思われる。本発明に従う二本鎖核酸により与えられるアンチセンス鎖が標的核酸、例えば、mRNA鎖とマッチするという意味でポジティブ応答がある場合に、直接又は間接に、RNA干渉に関与するヌクレアーゼ(例えば、RISC複合体)により認識される構造が産生され、そして標的核酸の分解が可能となる。この種の反応を与える二本鎖RNA、例えばsiRNAは、本明細書ではRNA干渉応答ポジティブであるとも言われる。しかしながら、それぞれの因子が、siRNAsの1つの鎖、好ましくはアンチセンス鎖にマッチするいかなる標的核酸も見出すことができないならば、このようなシグナル又は構造は与えられないか、又は最後に上記したストレス反応又はストレス応答をもたらす異なるシグナル又は追加のシグナルが与えられる。この種のストレス応答を引起す又は誘発する二本鎖核酸は、RNA干渉応答ネガティブであるとも言われるが、少なくともいくらかの態様では、いくらかのRNA干渉応答が起こりうることは排除できない。ゆえに、本発明に従う二本鎖核酸の鎖の1つ、好ましくはアンチセンス鎖、更に好ましくは第1鎖と、好ましくは転写システムの核酸の各々及びいずれか、更に好ましくは、転写システム、例えば、細胞のトランスクリプトームのいかなる核酸でもある標的核酸との広い意味でのミスマッチを有する本発明に従う二本鎖核酸も、好ましくは、アポトーシス又は細胞死をもたらすシグナルを与える。しかしながら、本発明者は、RNA干渉機構以外の更なる機構が、本発明に従う二本鎖核酸、即ち、RNA干渉応答を誘発するという意味で標的核酸と相互作用しない核酸を投与するとき、RNA干渉機構以外の更なる機構が、ストレス応答の観察された効果を媒介するのに関与していると推測する。このストレス応答に関与する更なる成分は、例えば、PKR経路又はいかなる他のインターフェロン関連経路又はいかなるプロアポトーシス経路の一部でもありうる。
【0043】
本発明者の最近の理解に従えば、好ましくはマッチしており、従って1つ以上のミスマッチにより中断されていない、又は本発明に従う二本鎖リボ核酸の相補性鎖又は同一鎖程ではない、総計12、13、14個の連続したヌクレオチドが標的核酸とマッチしないか又は標的核酸と同一ではないならば、このような状況が好ましくは生じうる。好ましくは総計約15以上のヌクレオチドが標的核酸に対して相補性であるか又は標的核酸と同一であるならば、これは、RNA干渉応答をもたらし、かくしてアポトーシスをもたらさないであろう。後者は、第2シナリオが実現される場合、即ち、それぞれ第1ストレッチ及び第1鎖及び/又はそれぞれ、第2ストレッチ及び第2鎖に存在するミスマッチの故に、標的核酸が認識されない場合に、特に適用可能である。更に好ましくは、標的核酸が、それ自体、それぞれ、細胞中に及びそのトランスクリプトーム中に存在しないならば、このデザインが考慮されるべきではない。
【0044】
本発明者は、更に詳しくは、本発明に従う二本鎖核酸が、腫瘍サプレッサーに対してデザインされ又は腫瘍サプレッサーを扱うならば、そしてこのような腫瘍サプレッサーが腫瘍細胞中に存在しないならば、これはRNA干渉応答ネガティブ反応をもたらし、したがって上記したストレス応答をもたらしそして最後にアポトーシス又は細胞死又は増殖抑制をもたらすということを見出した。
【0045】
しかしながら、本発明に従う二本鎖核酸の適用可能性は、腫瘍、腫瘍疾患、がん及びがん疾患に限定されず、その際悪性及び良性の両方の腫瘍及びがんが含まれるが、他の疾患にも適用可能である。更に好ましくは、機能の損失又はこのような機能の損失をもたらす遺伝子の損失が、疾患又は病理学的条件の基礎を形成する場合には、常に本発明に従う二本鎖核酸を適用することができ、その際、好ましくは生物内のこの遺伝子の損失を有する又は示すそれぞれの細胞が排除されるべきである。ある態様では、転写システムのいかなる標的核酸に対してもミスマッチを与える本発明に従う二本鎖核酸、好ましくは、その1つの鎖がこの種の細胞においてRNA干渉応答を誘発しないような方法で標的核酸との塩基対形成しているとき、ミスマッチを与える本発明に従う二本鎖核酸は、好ましくは、それぞれ、細胞及び生物に投与される。
【0046】
本発明に従う二本鎖核酸を使用することにより処置されうるなお更なる疾患は、疾患が核酸又はそれぞれのmRNAによりコードされているペプチド又はタンパク質と直接又は間接に関係するこれらの疾患であり、その際このような核酸又はmRNAは、野生型に比べて、1つ以上のヌクレオチド交換を示す。換言すれば、本発明に従って処置されうる更なる疾患は、1つ以上のヌクレオチド多型性(1つ又は複数)(SNP(s))を示すこれらの疾患である。疾患に罹った細胞、組織、器官及び生物中にあり、又はこのような疾患を発生させるべき素質を有するそれぞれいかなる細胞、組織、器官及び生物中にもあり、そして疾患に罹っていない又は健康な細胞、組織、器官及び生物の核酸又はmRNAとは異なるこのような核酸又はmRNAは、転写システムの標的核酸又は核酸の一部とみなされ、好ましくは、転写システム、例えば細胞のトランスクリプトームの核酸の1つとみなされる。本発明に従う二本鎖核酸をデザインするとき、この種の標的核酸も考慮されなければならない。ゆえに、二本鎖核酸、更に詳しくは、標的核酸に対してアンチセンス鎖であるその第1ストレッチ及び第1鎖は、本明細書で定義されたストレス応答の誘発又は発生を可能とするように、転写システムの核酸に相補性でなくてもよく、更に詳しくは、細胞、例えば、直接又は間接に疾患に関与する細胞のトランスクリプトームに対して相補性でなくてもよい。それに関連して、本発明に従うそれぞれの二本鎖核酸は、好ましくは、SNP又は少なくともその1つを有する標的核酸のその部分を包含することが好ましく、何故ならば、そうでないと、SNP(s)を有していないこれらの細胞、組織、器官又は患者間の識別が可能ではないからであるということに留意されるべきである。換言すれば、SNP(s)は本発明に従う二本鎖核酸の第1ストレッチ及び第1鎖が本明細書で定義されたとおり相補性ではない標的核酸上のヌクレオチドストレッチを規定し、その際このような相補性の欠如は、本発明で定義されたストレス応答を誘発するようなものである。もちろん、好ましくは、本発明に従う二本鎖核酸は本明細書で教示されたとおり転写システムのいかなる核酸にも相補性ではないことも認められるべきである。
【0047】
本明細書で使用された処置は、予防も含むことは本発明の範囲内にある。1つの態様では、特に、予防されるべき疾患がそれぞれがん及び腫瘍である場合に、本発明に従う医薬及び医薬組成物を、患者又は疾患を発生するのを防止されるべきひヒトに投与する。本発明に従う二本鎖核酸を使用して、本明細書に記載のシナリオのいずれか、例えば、腫瘍サプレッサーの遺伝子の損失又は機能の損失を示す傾向を有する又はこのような損失を既に受けたいかなる細胞も、扱うことができ、従って最後に抑制され又は溶解されうる。これにより、生物は、特にモノクローナルな腫瘍及びガンの場合に、腫瘍又はがん疾患の起源でありうるこのような細胞から解放される。それに関連して、細胞は通常二倍体細胞であることに留意されるべきである。ゆえにいかなる遺伝子情報も基本的に二倍で存在するけれども、遺伝子情報は、二組の遺伝子情報の間でそれぞれの遺伝子の転写を随意に変えることができる。しかしながら、意図される特定の疾患に関与する機能的に不活性なタンパク質、好ましくは、それぞれ、腫瘍及びがんの場合における腫瘍サプレッサー、の転写物の存在は、本発明に従って扱うことができ、かくして最後に直接又は間接にそれぞれの病理学的細胞の増殖抑制、アポトーシス又は溶解をもたらすストレス応答が誘発されうる。
【0048】
本明細書で使用されそして本明細書でそうでないとの指示がなければ、本発明に従う二本鎖核酸は、下記の構造を有する:即ち、該核酸は、二本鎖構造を含み、そして該二本鎖構造は第1鎖と第2鎖を含み、第1鎖は連続したヌクレオチドの第1ストレッチを含み、第2鎖は連続したヌクレオチドの第2ストレッチを含む。このデザインは基本的デザインとも呼ばれる。好ましくは、二本鎖核酸は二本鎖リボ核酸である。しかしながら、二本鎖核酸が二本鎖デオキシリボ核酸であることも、本発明の範囲内にある。更なる態様では、二本鎖核酸は第1鎖を含み、その際、それぞれ、第1ストレッチ及び第1鎖はリボ核酸であり、そしてそれぞれ第2鎖及び第2ストレッチはデオキシリボ核酸である。別の態様では、それぞれ、第1ストレッチ及び第1鎖は、デオキシリボ核酸であり、そしてそれぞれ第2ストレッチ及び第2鎖はリボ核酸である。
【0049】
本発明に従えば、本発明に従う二本鎖核酸の基本的デザインは、特に本明細書に開示されている第2シナリオでは、即ち、標的核酸が転写システム中に存在するが、好ましくは本発明に従う二本鎖核酸のそれぞれ第1鎖及び第1ストレッチにより与えられるアンチセンス鎖が1つ以上のミスマッチにより標的核酸に対して完全に相補性ではないならば、相補性の欠如により本明細書で定義されたストレス応答が誘発される場合に、一般に下記のとおり修飾されうる。ミスマッチが、正しく塩基対形成していない反対鎖上のヌクレオチドの対により形成される。第1の修飾では、本発明に従う二本鎖核酸の連続したヌクレオチドの第1ストレッチは、このようなミスマッチを創り出す1つ以上のヌクレオチドを除いて標的核酸に対して相補性である。換言すれば、この種の第1ストレッチは、標的核酸に対して相補性ではなく、更に好ましくは、細胞のトランスクリプトームの如き転写システムの核酸のいずれに対しても相補性ではない。いずれにせよ、本発明に従うこのように修飾された二本鎖リボ核酸のデザインは、RNA干渉応答ネガティブであることが好ましい。本発明に従う二本鎖核酸の連続したヌクレオチドの第2ストレッチは、1つの態様では、ミスマッチの位置に対応する位置における1つ以上のヌクレオチドを除いて標的核酸と同じである。ミスマッチ(1つ又は複数)は、連続したヌクレオチドの第1ストレッチが、標的核酸、更に好ましくは、転写システムのいずれかの核酸と塩基対形成するならば、出っ張り又はループ構造をもたらす。好ましい態様では、ミスマッチの数は、1〜10、好ましくは2〜8、更に好ましくは2〜4、最も好ましくは4であり、その際、このようなミスマッチは好ましくは、それぞれ、第1ストレッチ及び第2ストレッチ上に配列される。本明細書で使用した、第1の数字〜第2の数字で特定された範囲は、その数字のいずれもその範囲により含まれることを意味する。例えば、範囲が1〜4であるならば、これは、実際に開示されているものは1〜4のいかなる整数でもあり、即ち、1,2、3及び4であることを意味する。
【0050】
本発明の好ましい態様では、基本的デザイン又はその修正を有する本発明に従う二本鎖核酸は、第1鎖上に長さが14以下のヌクレオチドであるヌクレオチドの配列又はストレッチを含み、該配列又はストレッチは、本明細書で定義された標的核酸と完全にマッチしている。換言すれば、本発明に従う二本鎖核酸は、好ましくはアンチセンス鎖である第1鎖上に、長さが最大14ヌクレオチドである配列を含み、このような配列は標的核酸に完全にマッチしている。本発明に従う二本鎖核酸の第1鎖又は第1ストレッチにより含まれる追加の又は他のヌクレオチドは、完全には塩基対形成せず、かくして、ミスマッチを生じさせ、このようなミスマッチは、全体の第1ストレッチが本明細書で定義された標的核酸に対して相補性ではないという本発明に従う二本鎖核酸の特徴を与える。この特徴は、本明細書で開示された両シナリオ下に、即ち、標的遺伝子は、細胞中に全然存在せず、更に正確に言えば、本発明に従う二本鎖核酸を使用して処置されるべき細胞のトランスクリプトーム中に全然存在しないというシナリオ、及び標的遺伝子は存在するが、本発明に従う二本鎖核酸はストレス応答を誘発し、このようなストレス応答及びその誘発は、標的核酸に相補性でない本発明に従う二本鎖核酸の第1ストレッチにより好ましくは引起されるというシナリオの下で実現されうる。
【0051】
上記と同じ考察が本発明に従う二本鎖核酸の第2鎖に適用可能であり、その際基準は相補性よりはむしろ同一性である。
【0052】
別の態様では、連続したヌクレオチの第1ストレッチは、標的核酸に対して完全には相補性ではなく、これに対して、第2ストレッチは、標的核酸と完全に同一である。しかしながら、本発明に従う二本鎖核酸のこのような構築物は、アンチセンス鎖と標的核酸との間に観察された構造と同様なミスマッチした又は出っ張りを有するした二本鎖構造をもたらす。しかしながら、第1ストレッチと第2ストレッチが、完全に、即ち、完ぺきに塩基対形成性であること、そしてこれは、第1ストレッチが標的核酸と完全には塩基対形成性ではない(何故ならば、1つ以上のヌクレオチドが標的核酸に対して相補性ではないからである)という前提の下で、第2ストレッチはしたがって標的核酸と完ぺきに同一ではないということを意味することも、本発明の範囲内にある。好ましい態様では、標的核酸に対する第1ストレッチのミスマッチの位置は、標的核酸と完全に同一ではない第2ストレッチの対応する位置に位置している。それらのミスマッチに関する上記した態様は、標的核酸が全然存在しない場合に使用することもでき、例えば、トランスクリプトームのそれぞれのmRNAメンバーが存在しない場合に、好ましくは、依然としてこの種の分子が上記したストレス応答を誘発するのに適当であるという条件下に、使用することができることも認められるべきである。
【0053】
第1ストレッチと標的核酸とのミスマッチは、例えば、ヌクレオチドの第1ストレッチをトランケート(trancate)して相補性ストレッチの長さを減少させるように配列させることができ、又はミスマッチは、第1ストレッチ内に位置させることができ、これは好ましくは5’端部及び3’端部とは異なる位置を意味する。同じことが、一般に、標的核酸と同一であることが特徴付けられる、連続したヌクレオチドの第2ストレッチのレベルにおけるミスマッチの数及び局在化にも当てはまる。
【0054】
ミスマッチの数及び局在化は変わることができ、その際このような変更は、上記した効果が観察されるかぎり、本発明の範囲内にあると思われること、即ち、RNA干渉を媒介する因子、好ましくは発現システムがストレス応答をもたらすシグナルを与えるということは本発明の範囲内にある。
【0055】
本発明に従う二本鎖核酸の長さに関して、それは15オリゴヌクレオチド対という少ないもの及び数百オリゴヌクレオチド対という多いものである。ある態様では、本発明に従う二本鎖核酸の第1鎖及び第2鎖は同じ長さである。しかしながら、別の態様では、本発明に従う二本鎖核酸の第1鎖及び第2鎖は長さが異なる。ある態様では、第1ストレッチは第1鎖と同じ長さであり、第2ストレッチは第2鎖と同じ長さである。第1ストレッチ及び/又は第2ストレッチの最小の長さは、当該技術分野で知られているそして本明細書でも特定されたとおりRNAiの分野で実現されるこれらの長さと同様であることが認められる。別の態様では、第1ストレッチ及び/又は第2ストレッチの長さは、19〜40ヌクレオチド、好ましくは19〜30、更に好ましくは21〜30、最も好ましくは21〜27オリゴヌクレオチドであり、これは、それぞれ第1鎖及び第2鎖にも当てはまる。好ましくは第1ストレッチ及び/又は第2ストレッチの長さは、インターフェロン応答をもたらす遺伝子発現に対する非特異的効果の原因であるPKR反応を誘発するオリゴヌクレオチドの長さより少ないことが認められる。他方、それぞれ、第1ストレッチ及び/又は第2ストレッチ並びに第1鎖及び/又は第2鎖は、数百オリゴヌクレオチドという長いものであることができ、その際これらの状況下に好ましくはこれらのストレッチ及び鎖の一部のみが、本発明に従う二本鎖オリゴヌクレオチドに対して本明細書に記載した意味で作用する、即ち、ストレス応答を誘発する。第1ストレッチ及び/又は第2ストレッチが長ければ長いほど、それらは、その全体として又はその一部として、トランスクリプトームにおける標的配列を見出し、かくして、本発明に従う二本鎖核酸を適用するとき、好ましくは回避されるべき特異的RNA干渉を誘発する可能性がより高い。それぞれ、第1ストレッチ及び第2ストレッチに関連して言われたことは、それぞれ、第1鎖及び第2鎖にも当てはまることは理解されるべきである。分かりやすくするという理由で、本発明のいくらかの態様では、この種のインターフェロン応答を許容することができるということが述べられるであろう。更なる観点では、本発明は、医薬の製造のための二本鎖核酸の使用にも関し、その際このような医薬は患者の免疫システムの刺激用であり、その際好ましくは、患者はそれを必要としている。本発明の他の観点に従ってデザインされるとき、更に詳しくは、疾患、例えば、腫瘍の処置のために使用されるとき、本発明に従う二本鎖核酸は、非特異的免疫応答を引き出すのに適当であると思われる。このような非特異的免疫応答は有利であり得、かくしてこのような非特異的免疫応答が主要な治療の効能を増加させるのに適当である場合の疾患のための支持治療として使用することができる。このような主治療は、好ましくは、いかなる腫瘍治療であることもでき、又は予防接種、例えば、感染性疾患の処置又はがん及び腫瘍疾患の処置のための予防接種を含むいかなる治療でもあることができる。
【0056】
それにもかかわらず、本発明に従う二本鎖核酸の長さはインターフェロン応答を誘導しないことが好ましい。更に好ましくは、その長さ、更に詳しくは第1ストレッチ及び/又は第2ストレッチの長さは、本発明に従う二本鎖核酸について上記に概説したデザイン原理の場合に、15〜30、更に好ましくは、17〜25、なお更に好ましくは、19〜23、最も好ましくは、21〜23ヌクレオチドである。
【0057】
好ましくは、本発明に従う二本鎖核酸は、第1鎖及び第2鎖の3’端部に1つ以上のデオキシリボヌクレオチド、好ましくは、2つのデオキシリボヌクレオチド、最も好ましくは2TTを含む。あるいは、この種の修飾は、本発明に従う二本鎖核酸の第1鎖及び第2鎖の5’端部に存在することができる。更なる好ましい態様では、好ましくは、1つ以上、更に好ましくは2つのデオキシリボヌクレオチドからなるこの種の修飾は、好ましくは、アンチセンス鎖である第1鎖の3’端部に結合しており、そして1つ以上、更に好ましくは2つのデオキシリボヌクレオチド(1つ又は複数)は第2鎖、即ち、好ましくは、本発明に従う二本鎖核酸のセンス鎖である第2鎖の5’端部に結合している。本発明に従う二本鎖核酸の更なる別の態様では、第1鎖及び第2鎖の2つの端部は平滑末端である。二本鎖核酸の長さは、これまでに本明細書で記載された長さのいずれかであることができる。しかしながら、それぞれ第1ストレッチ及び第2ストレッチの長さは、好ましくは、19〜30ヌクレオチド、更に好ましくは21〜27ヌクレオチド、なお更に好ましくは21〜23ヌクレオチドである。更に好ましい態様では、もしあれば、ミスマッチの数は1〜4であり、2〜4及び3又は4が更に好ましい。
【0058】
本発明に従う二本鎖核酸の更なるデザインは、下記のとおりであることができる。好ましくは、本発明に従う二本鎖核酸のヌクレオチドは、リボヌクレオチドである。あるいは、一般に、二本鎖核酸に含有されたヌクレオチドのいずれかは、好ましくは、逆向きの脱塩基部(inverted abasic)であるヌクレオチド及び2’−位置にNH修飾を有するヌクレオチドよりなる群から選ばれる修飾を含むことができる。本発明に従う二本鎖核酸に含有された個々のヌクレオチドのいかなる更なる修飾も、アミノ、フルオロ、メトキシ、アルコキシ及びアルキルよりなる群から選ばれうる。好ましくは、アルコキシはエトキシである。好ましくはアルキルは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル及びイソブチルを意味は、その際このような修飾はヌクレオチドの糖部分の2’位置に位置している。修飾のタイプにかかわりなく、ヌクレオチドは、好ましくはリボヌクレオチドである。
【0059】
上記した修飾に加えて又は上記した修飾に替わるものとして、ヌクレオチドの各々及びいずれかは、ヌクレオチドのホスフェート部分で修飾されうる。このような修飾は、ホスホチオエートの存在であることができる。本発明に従う二本鎖核酸のそれぞれストレッチ及び鎖の個々のヌクレオチドは、ホスホジエステル連結を介して又はホスホチオエート連結を介して又は両者の組み合わせを介して、それぞれ個々の鎖及びストレッチのヌクレオチド配列の長さに沿って連結されることは本発明の範囲内にある。
【0060】
本発明に従う二本鎖核酸の鎖、即ち、各一つの鎖又は両方の鎖の更なる形態の修飾は、末端ヌクレオチド、即ち、最も3’又は最も5’のヌクレオチドのいかなる修飾でもある。このような種類の修飾は、逆向きの(デオキシ)脱塩基部(inverted (deoxy) abasics)、アミノ、フルオロ、クロロ、ブロモ、CN、CF、メトキシ、イミダゾール、カルボキシレート、チオエート、C〜C10低級アルキル、置換された低級アルキル、アルカリール又はアラルキル、OCF、OCN、O−、S−、又はN−アルキル;O−、S−又はN−アルケニル;SOCH;SOCH;ONO;NO、N;ヘテロシクロアルキル;ヘテロシクロアルカリール;アミノアルキルアミノ;ポリアルキルアミノ又は置換されたシリル、中でも、欧州特許EP0586520B1又はEP0618925B1に記載のもの、よりなる群から選ばれうる。本明細書で使用されそして更に詳しくは上記した修飾と関連して、アルキル又は「アルキル」を含むいかなる用語も、1〜12個、好ましくは1〜6個、更に好ましくは1〜2C原子を含むいかなる炭素原子鎖も意味する。
【0061】
更なる端部修飾はビオチン基である。このようなビオチン基は、好ましくは、第1鎖及び/又は第2鎖の最も5’のヌクレオチド又は最も3’のヌクレオチド又は両端部に結合させることができる。更に好ましい態様では、ビオチン基はポリペプチド又はタンパク質にカップリングされる。ポリペプチド又はタンパク質が他の上記した端部修飾のいずれかを介して結合されることも本発明の範囲内にある。ポリペプチド又はタンパク質は、本発明の核酸分子に更なる特徴を与えることができる。中でも、ポリペプチド又はタンパク質は、他の分子に対するリガンドとして作用することができる。該他の分子が受容体であるならば、受容体の機能及び活性は、結合するリガンドにより活性化されうる。受容体は、リガンド結合した本発明の核酸分子の有効なトランスフェクションを可能とする内部化活性を示すことができる。本発明の核酸分子にカップリングされるべきリガンドの例は、VEGFであり、対応する受容体はVEGF受容体である。
【0062】
前記した修飾、好ましくは、ヌクレオチドの2’位置、更に好ましくはリボヌクレオチドの2’位置に関する修飾は、或るパターンで本発明に従う二本鎖核酸に適用することができる。1つのこのようなパターンは、国際特許出願PCT/EP03/08666に記載の空間パターンである。更に詳しくは、このような空間パターンは、二本鎖リボ核酸が二本鎖構造を含み、該二本鎖構造は第1鎖と第2鎖を含み、該第1鎖は連続したヌクレオチの第1ストレッチを含み、該第1ストレッチは標的核酸に対しても少なくとも部分的に相補性であり、そして該第2鎖は連続したヌクレオチの第2ストレッチを含み、該第2ストレッチは標的核酸と少なくとも部分的に同一であり、そして該第1鎖及び/又は該第2鎖は、2’位置に修飾を有する修飾されたヌクレオチドの複数の基を含み、該鎖内の修飾されたヌクレオチドの各基はヌクレオチドのフランキング基(flanking group)により一側又は両側でフランキングされており(flanked)、ヌクレオチドのフランキング基を形成するフランキングヌクレオチドは、修飾されていないヌクレオチド、又は修飾されたヌクレオチドの修飾とは異なる修飾を有するヌクレオチドであることを特徴とするような空間パターンである。好ましい態様では、修飾されたヌクレオチドの基は、1つのヌクレオチドを含み、そして修飾されていないヌクレオチドの基は1つのヌクレオチドを含む。更に、修飾されていないヌクレオチドはリボヌクレオチドでありそして修飾されたヌクレオチドは本明細書で開示された修飾されたリボヌクレオチドであって、該修飾はヌクレオチドのリボース部分の位置2’におけるメトキシ基である、修飾されたリボヌクレオチドであることが好ましい。更なる好ましい態様では、第1鎖、即ちアンチセンス鎖の5’端部は、修飾されたヌクレオチドで始まり、これに対してセンス鎖の対応する位置において、3’端部のヌクレオチドは修飾されていないヌクレオチドである。
【0063】
更なる形態の修飾は、個々のヌクレオチドがプリンであるか又はピリミジンであるかどうかを識別することに基づくことができる。1つの選択では、本発明に従う二本鎖核酸のいかなるプリンヌクレオチドも本明細書に記載のとおり修飾され、そして、他の選択では、本発明に従う二本鎖核酸の如何なるピリミジンヌクレオチドも本明細書に記載のとおり修飾される。このタイプの修飾パターンは、中でも国際特許出願PCT/US03/70918に記載されている。更に詳しくは、それぞれ第1鎖及び第1ストレッチ、即ち、本発明に従う二本鎖核酸のアンチセンス鎖のピリミジンヌクレオチドは、2’デオキシ−2’−フルオロピリミジンヌクレオチドであり、それぞれ第1鎖及び第1ストレッチ、即ち本発明に従う二本鎖核酸のアンチセンス鎖のプリンヌクレオチドは、2’−O−メチルプリンヌクレオチドである。
【0064】
二本鎖核酸を形成する2つの鎖が互いに連結されていることも本発明の範囲内にある。このような連結は、単一の連結又は複数の連結からなることができる。好ましくは、連結は、本発明の二本鎖核酸を形成する2つの鎖の1つの5’端部と他方の鎖の3’端部の間で起こる。この種の連結は、好ましくはリンカーによりなされる。このようなリンカーは、好ましくは、多数のヌクレオチドからなる。あるいは、このようなリンカーは、非ヌクレオチドポリマー、例えばペプチド、LNA、PNA又はPEGからなる。
【0065】
本発明に従う二本鎖核酸を化学的に合成し、次いで処方する(formulated)ことは本発明の範囲内にある。このような処方は、当該技術分野で知られた処方のいずれかであることができる。好ましい処方は、少なくとも1種の脂質、好ましくは1種の脂質及びヘルパー脂質を含む。なお更に好ましくは、脂質はカチオン性脂質、例えば、実施例で使用された脂質であり、ヘルパー脂質は実施例で記載されたヘルパー脂質である。処方物は、好ましくは、実施例に記載された処方物としての特徴を示す。
【0066】
本発明に従う二本鎖核酸をin vitro又はin vivoで合成することも本発明の範囲内にある。このような目的で、その転写が本発明に従う二本鎖核酸を形成する2つの鎖をもたらす遺伝子構築物が提供される。遺伝子構築物は、好ましくは、プロモーターを含む。そして、その制御下で鎖(1つ又は複数)をコードする配列は転写される。遺伝子構築物は、各々個々の鎖がそれ自身のプロモーターから転写され、その際該プロモーターは同一であるようにあることができる。別の態様では、プロモーターは同じである。更なる態様では、同じプロモーターが両方の鎖及びそれをコードする配列の転写を制御する。なお更なる態様では、遺伝子転写物は、本発明に従う二本鎖核酸の2つの鎖をコードする配列を含み、両配列は、遺伝子転写物又はその一部の転写後にループ又はヘアピンの形成を可能とする配列により互いに連結される。このような条件下に、転写物は、2つの相補性鎖、即ち、本発明に従う二本鎖核酸の第1鎖及び第2鎖が塩基対形成することができそしてループ配列により連結されるように折りたたまれることができる。この種の技術は、中でも、国際特許出願PCT/AU99/00195又は国際特許出願PCT/IB99/00606に記載されており、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。それぞれのプロモーターは当該技術分野で知られており、そして中でも、Current protocols in Molecular Biology;Ausubel F.M.,Brent R, Kingston R.E.,Moore D.D., Seidman J.G., Smith J.A. and Struhl K.(1996);J.Wiley and Sons,New Yorkに記載されている。
【0067】
更なる態様では、転写システムであって、本発明に従う二本鎖核酸が投与されるべき転写システム又は本発明に従う二本鎖核酸が本明細書で定義されたとおりその中で発現されるべき若しくは活性であるべき転写システムの中において標的核酸が存在しないことが示されるとの条件下に、本発明に従う二本鎖核酸は、先行技術に記載されそして知られているいかなるRNAi又はsiRNA分子のようにデザインすることもできる。本発明の技術的教示に従って使用することができる更なる形態のsiRNA分子は、国際特許出願PCT/US03/05346に記載のsiNAである。
【0068】
前記した可能な修飾に関連して、このような修飾は、本発明に従う二本鎖分子が、特にこのような分子がいかなるsiRNA分子若しくはいかなるRNAi分子としてもデザインされる場合に、もしこのような修飾が細胞中に標的核酸を有しそして標的核酸を見出すRNAi分子若しくはsiRNA分子上で実現されるならば、RNA干渉応答が引起されるという意味で活性であることを可能とすることが好ましい。換言すれば、本発明に従う二本鎖核酸上で場合により実現される修飾は、好ましくは、もし先行技術に従うRNAi分子及びsiRNA分子に適用されるならば、依然としてRNA干渉応答を引起すことができるいかなる修飾でもある。いかなる理論によっても束縛されることを望むものではないが、本発明者は、本明細書に記載されたストレス応答であって、本発明に従う二本鎖核酸により媒介される、例えば、それぞれアポトーシス及び細胞溶解のために使用されるストレス応答は、依然として少なくとも或る程度、RNA干渉装置、例えば、RISC複合体の成分(1つ又は複数)と相互作用することができ、そして修飾の許容性に対するこれらの成分の要件は、本発明に従う二本鎖核酸にも適用可能であると推測する。どの種類の修飾(1つ又は複数)が好ましくは本発明に従う二本鎖核酸にも許容されうるかを可能とする適当なアッセイについてはこれまでに説明された。
【0069】
上記した本発明の第1シナリオにおいて、本発明に従う二本鎖核酸は、細胞の如き転写システム中にそのままで存在しない標的核酸に向けられる。好ましくは、該核酸は、mRNA、hnRNA又は他の転写産物として存在しない。更に詳しくは、本発明に従う二本鎖核酸は、該発現システムに含有されたそれぞれの核酸のいずれにも向けられず、その際、この核酸の全体は、一般に本明細書ではトランスクリプトーム又は標的核酸とも呼ばれる。これらの状況下に、標的核酸に向けられる本発明に従う二本鎖核酸は、第1鎖の第1ストレッチが本明細書で定義された程度に標的核酸に対して相補性であり、そして第2鎖の第2ストレッチが本明細書で定義された程度に同一であることを意味する。上記した機構により、干渉装置は、標的核酸を見出さず、かくしてストレス応答を誘発する。細胞が標的核酸を見出さないためには、本発明に従う二本鎖核酸は、トランスクリプトームの他の核酸が実際に標的として作用することができず、かくしてRNA干渉応答を誘発するようにデザインされることは必須である。これは、バイオインフォマティクスにより達成することができる。典型的には、可能な標的配列は、全体のトランスクリプトームに対して比較されそしてそれぞれのストレッチは、ヌクレオチド配列が他の核酸とマッチする配列を含まず、かくしてオフ標的効果(off-target effect)をもたらさず、かくしてこれはネガティブRNA干渉応答の結果を見ることを許容せず又は、治療用途において、場合により望まれない副作用を生じないようなヌクレオチド配列としてデザインされる。特に腫瘍疾患の場合に、標的核酸は、好ましくは、それぞれの細胞系のトランスクリプトームの一部ではない腫瘍サプレッサーである。したがって、この方法により処置されるべき、そして本発明に従う二本鎖核酸を使用することができる好ましい腫瘍は、腫瘍サプレッサーネガティブな(tumor suppressor-negative)腫瘍である。好ましい腫瘍サプレッサーは、PTEN、p53、p21及びRbであるが、本発明はそれらに限定はされない。本明細書に開示された目的、例えば医薬の製造の目的に、1つのタイプの二本鎖核酸のみならず2種以上のこのような二本鎖核酸も使用され、その際二本鎖核酸の少なくとも2つは、2つの異なる腫瘍サプレッサーを扱い、これが、ストレス応答自体の増加した効能又はストレス応答の誘発の増加した効能をもたらすことも本発明の範囲内にある。
【0070】
病理学的細胞が腫瘍サプレッサー欠損(tumor suppressor-deffective)でもよいことは本発明の範囲内にある。これは、病理学的細胞が腫瘍サプレッサーを産生しないか又は持っていないことを意味する。腫瘍サプレッサーのこの欠如により、がん又は腫瘍が生じうる。機能状態の損失でもある腫瘍サプレッサー欠損状態は、種々の方法で発生させることができる。第1に、細胞は、該腫瘍サプレッサーについてのいかなる遺伝子情報も欠いていてもよい。このような欠損は、いかなる腫瘍サプレッサーもまったく持たない、したがってこのような遺伝子の転写物をもたない細胞をもたらす。第2に、細胞は、いかなる機能的腫瘍サプレッサーも欠いていてもよい。本明細書で好ましく理解されている機能的腫瘍サプレッサーは、腫瘍を抑制するのに活性ないかなる腫瘍サプレッサーでもある。いかなる機能的腫瘍サプレッサーの欠損も、機能的に不活性な腫瘍サプレッサーを生じる1つ以上の突然変異を有する、それぞれ遺伝子及びその転写物から生じることができる。このような突然変異は、例えば、点突然変異又は欠失突然変異であることができる。これらの突然変異(1つ又は複数)を有する転写物は、本明細書で定義された標的核酸とみなされ、かくして本発明に従う二本鎖核酸のそれぞれのデザインを可能とする。
【0071】
1つの鎖が腫瘍サプレッサーに相補性であるこの種の二本鎖を、非病理学的細胞中で、即ち、本発明に従う二本鎖核酸の種類で処置されるべき生物の、疾患、例えば腫瘍に関与していない細胞において使用すると、これは腫瘍サプレッサーのノックダウンをもたらすことは認められるべきである。このようなノックダウンは、RNA干渉応答により多分媒介されるようである。しかしながら、これはある種の副作用とみなされうるけれども、本発明に従う二本鎖核酸が一過性方式でのみ活性であり、これは、中でもアポトーシスをもたらす毒性副作用が一旦誘発されると、それぞれの病理学的細胞が除去され、これに対して非病理学的細胞はもはやこの種の作用物質にさらされず、かくして腫瘍サプレッサーのノックダウンは停止されるということを意味するという事実を認めれば、本発明に従う処置計画にとってそれは決定的に重要ではないと思われる。換言すれば、腫瘍サプレッサーは、細胞が病理学的状態を発生することを許容しない、それぞれの腫瘍細胞として腫瘍サプレッサーネガティブでないこれらの細胞において限定された期間の時間ノックダウンされるにすぎない。
【0072】
同じことが、標的核酸に対する1つ以上のミスマッチを有する本発明に従う二本鎖核酸の使用に関する本明細書に開示された第2のシナリオであって、それぞれの標的核酸が細胞、更に詳しくは、病理学的細胞は又はいかなる病理学的状態若しくは疾患状態に関与している細胞にも存在する、第2シナリオの基礎をなすストラテジーにも当てはまる。また、本発明に従う二本鎖核酸は、好ましくは、RNA干渉応答を創生しないように、しかし本明細書に記載されたストレス応答を誘発するようにデザインされ、これに対して、疾患状態に関与していない又はこのような状態を発生させる素地を有していないこれらの細胞は、一過性ノックダウンのみを経験する。もちろん、いかなる他のオフ標的効果も回避されるべきであり、これはそれぞれバイオインフォマティクスを使用して、適切な条件及び配列を選択することにより実現することができる。
【0073】
更なる観点では、本発明は、本明細書に記載された疾患、更に詳しくは、腫瘍、腫瘍疾患、がん及びがん疾患並びに機能の損失又は遺伝子の損失により特徴付けられるいかなる疾患又は本明細書で定義された少なくとも1つのSNPを伴う疾患のための医薬を製造及び/又はデザインするための方法に関する。この方法に従えば、処置されるべき疾患、更に詳しくは、該疾患に関与している細胞は、それらがこのような疾患の原因となる因子、好ましくは、それぞれペプチド及びタンパク質を発現するかどうかに関して特徴付けられる。該細胞がこのような因子を発現しない及び/又はこのような因子のための転写物若しくはこのような因子をコードする転写物を含まないならば、本発明の二本鎖核酸はいかなるオフ標的効果もを回避するようにデザインされ、それにより細胞のトランスクリプトームはそれぞれの因子のmRNA又はhnRNAを含まない。あるいは、それぞれの因子が正常な、即ち健康な細胞に見出される因子の突然変異された形態であるならば、二本鎖RNAは、突然変異された形態の因子のmRNA若しくはhnRNA又は他の転写物に対して相補性であるようにデザインされ、それにより本明細書に記載のとおりのストレス応答の発生を可能とするように多くのミスマッチが導入されるが、これに対して、好ましくはポジティブRNA干渉応答は発生されず、そしてまたいかなるオフ標的効果も配列をそれ相応にデザインすることにより回避される。この種の配列デザインは、当業者に知られたバイオインフマティクスを使用することにより行うことができる。いかなるオフ標的効果も回避されることは認められるべきであるが、しかしながら、オフ標的効果が減少するか又は細胞にいかなる害もなさないと思われる細胞の他の成分又は因子に関して起こるならは、一般に十分である。しかしながら、それぞれの配列により引起されるオフ標的効果がないことがこのましい。
【0074】
本発明を図及び実施例によりここで更に説明する。これから本発明の更なる特徴、態様及び利点が分かりうる。
【0075】
実施例1:種々のノックダウン技術によるHeLa細胞中のPTENタンパク質の減少
種々のノックダウン技術によるHeLa細胞中のPTENタンパク質の減少を評価するために、siRNA構築物及び遺伝子ブロック、即ち、アンチセンス構築物を調製した。それぞれの配列及びデザイン原理は図1Aから確かめることができる。PTENに対するsiRNAs構築物を、それぞれPTEN1、PTEN2及びPTEN3と名付けることに留意されるべきである。PTEN1 MM、PTEN2 MM及びPTEN3 MMと呼ばれる各場合に4つのミスマッチを有するsiRNA構築物を創生した。これらのsiRNA構築物におけるミスマッチの配列は、いかなる他のsiRNAにも使用することができること、即ち、この配列はPTENのための使用に限定されないで、他の標的核酸配列にも使用することができることは認められるべきである。PTENmRNA配列、即ち、標的配列と比較したミスマッチを矢印によりマークした。更に、5’端部及び3’端部に逆向き脱塩基部(inverted abasic)を有しそしていずれかの端部に6個のオリゴヌクレオチドによりフランキングされた9デスオキシリボヌクレオチドのストレッチをコアに含むアンチセンス構築物を創生した。それぞれのアンチセンス構築物は、PTEN1 GBと呼ばれる。この種のアンチセンス分子についても、標的PTENmRNAと比較して総計4つのミスマッチを含むミスマッチしているアンチセンスバージョンをデザインした。
【0076】
HeLa細胞を最小必須培地Eagle(L−グルタミン2mM、Earl’s BSSピルビン酸ナトリウム1mM、非必須アミノ酸0.1mM、ウシ胎仔血清(FCS)10%を有するEMEM)中に維持した。合成siRNA及びアンチセンストランスフェクション、即ち、GeneBlocsトランスフェクションをL8脂質(Atugen,Berlin)を使用することにより10cmプレートで行った(密集度30〜50%で)。血清を含まない培地中のsiRNAs及び脂質の予め形成された5x濃度の複合体を完全培地中の細胞に加えることにより、HeLa細胞をトランスフェクションした。総トランスフェクション容積は、10cmプレートにおける細胞について10mlであった。最終脂質濃度は細胞密度に依存して0.8〜1.2μg/mlであった。イムノブロットのために、細胞を溶解させそして等量のタンパク質を含有する細胞抽出物のアリコートをニトロセルロース膜上にブロットしそしてマウスモノクローナル抗PTEN抗体(Santa Cruz Biotechnology)及びマウスモノクローナル抗p110α抗体を使用する標準方法により分析して、同等ローディング(equal loading)を評価した(Klippel,1994)。
【0077】
種々の構築物の効果をHeLa細胞で試験しそして結果をイムノブロットとして示した。
【0078】
一般に、PTENがノックダウンされる場合にはいつも、Aktのリン酸化形態(phosphorlyated form)のレベルは増加するであろう。しかしながら、リン酸化Akt(phospho-Akt)はストレス条件下に増加した発現を示すことも知られている。種々のsiRNA構築物を比較すると、下流の読み取り(downstream read-out)、即ち、リン酸化Aktは基本的な生物学的シグナリングカスケードともはや一致しないけれども、ノックダウンが一般に発生されることは図1Bから理解することができる。この効果は、もっぱらsiRNA構築物により示されるが、これに対してアンチセンス構築物はHeLa細胞の発現レベルでこの種の不対反応(unpaired reaction)を示さない。換言すれば、siRNA媒介PTENノックダウンは、必ずしもAktリン酸化の刺激をもたらさない。この結果は、細胞中のsiRNA分子の存在が、正常なシグナル伝達を阻止することがあることを示唆する。これは、PTEN3 MMに関して例示されたとおり、本発明に従ってデザインされた二本鎖リボ核酸は、細胞毒性応答及びアポトーシス及び損なわれた細胞シグナリングを含むストレス反応をもたらすことができるという結論に導く。
【0079】
更に、なお更に下流の可能な読み取りとしてpFKHRを使用した。pFKHRは更なる転写因子である。この実験で、特に興味深いことが分かったPTEN3構築物を、図2Bに示された結果を確認する滴定実験に付した。この滴定実験は、損なわれた細胞シグナリングは、それが制限された量のsiRNAの送達により減少させることができないという事実により証明されるとおり、過剰の細胞内siRNAにより引起されないということを証明する。
【0080】
実施例2:Affymetrix実験における種々のノックダウン技術の影響の試験
Affymetrix実験は、実施例1に関連して記載されたヌクレオチドを使用してデザインされたが、その際GB1はPTEN1 GBに対応し、GB1 MMはPTEN1 GB MMに対応し、siRNA1はPTENに対応しそしてsiRNA1MMはPTEN1 MMに対応する。
【0081】
コールドプローブセット(called probe sets)についての選択基準は、処理された細胞及び未処理細胞の両方における存在及び少なくとも2.5倍のシグナルの強度の変化があるということであった。
【0082】
ミクロアレー実験では、対応するGB/siRNAで処理された細胞からのRNAを調製し、そしてビオチニル化cRNAプローブを発生させそして製造者のプロトコール(Affymetrix,Santa Clara,CA-USA)に従ってAffymetrix Human genomeU95セット(Chip HGU133A及びB)にハイブリダイゼーションさせた。Affymetrixソフトウエア(Microarray suite,Version5.0)を使用することにより、各チップの絶対分析及びサンプルの比較分析を行った。
【0083】
これらの実験の結果を図3Aに示す。Affymetrix実験から、前記したノックダウン構築物によりそれぞれのHeLa細胞を処理して、約6000のプローブセツトを分析した。いずれにせよ、特定の配列にかかわりなく、12時間後にコールドプローブセットにおいて有意な減少があることが結果から確かめることができる。siRNAは、12時間後にコールドプローブセットの有意な減少を有することに留意されるべきである。いずれにせよ、アンチセンス媒介された効果(antisense mediated effects)については、siRNA構築物の効果ほどは言い切れない。
【0084】
24時間のインキュベーションの後、それぞれのHeLa細胞は、アンチセンス構築物の場合に、ミスマッチがあるかないかにかかわりなく、コールドプローブセットの有意な増加を示し、したがって、これは12時間後に観察された状況の逆転である。これは、依然としてコールドプローブセットの有意な減少を示すsiRNA構築物での状況とは対照的である。それに関連して、本発明に従う二本鎖リボ核酸構築物に対応するミスマッチsiRNAは、コールドプローブセットの有意な減少を示す。
【0085】
実施例3:腫瘍細胞のトランスクリプトームに対して対形成しないdsRNAによる腫瘍細胞増殖の抑制
この実施例では、腫瘍細胞増殖の抑制が腫瘍細胞のトランスクリプトームに対して対形成しないdsRNAにより引き起される実験を説明する。
【0086】
この実験の基本的方法は、下記のとおり要約することができる。短いヘアピンRNA(shRNAs)を発現するヒト前立腺がん細胞(PC3)又はHeLa細胞を発生させた。総計5×10個の細胞を8nu/nuマウスに注射した(皮下HeLa、前立腺内PC3)。マウスをPC3では注射後56日目、HeLaでは注射後10日目に殺した。最終点は移植腫瘍の増殖であった。
【0087】
その結果を図4に示す。
【0088】
図4Aは、示されたshRNA発現構築物で安定にトランスフェクションされたPTEN(−/−)前立腺がん細胞(PC)の腫瘍容積を示す。GFP発現プラスミドで安定にトランスフェクションされたPC3細胞は、同所腫瘍モデル(orthotopic tumor model)のコントロールとして含まれた。それぞれの配列は、
【表1】


である。
【0089】
この特定の実験では、PI3Kの2つのサブユニット、即ち、p110b及びp110aに対するsiRNAがデザインされた。p110βとも呼ばれるp110bの重要性を前提とすれば、この標的に対するsiRNA構築物は、この実験により確かめられたとおり腫瘍容積を減少させるという点で特に有効であろう。しかしながら、p110a MMであるsiRNAも腫瘍特異的p110bsiRNAsとほぼ同じく有効であるということを見るのは驚くべきであり、これに対して、p110aはp110bに対するネガティブコントロールである。更に、p110bのミスマッチされた形態であるsiRNA構築物は、PC3腫瘍細胞容積の有意な抑制を依然として示す。この効果は、本発明に従う二本鎖リボ核酸がPC3腫瘍細胞のトランスクリプトームのmRNA又は他のエレメントと相互作用しないようにデザインされるとしても、これは腫瘍容積の減少から確かめられうるとおり、それぞれ細胞毒性応答及びアポトーシスをもたらすという理解を確証する。
【0090】
それぞれの細胞系に存在せずそして他の核酸とのRNA干渉応答を誘発しないトランスクリプトームのメンバーに対してsiRNA構築物が向けられる場合に、細胞毒性応答及びアポトーシスを誘発するのにsiRNA構築物も一般に有効であるという本発明の基礎をなす驚くべき発見は、高度に特異的なp110siRNA構築物とほぼ同じく有効であるPTEN構築物の効果により確かめられる。
【0091】
この実験からの更なる結果は図4Bに示され、図4Bは、皮下腫瘍モデルで使用されたshRNA発現プラスミドで安定にトランスフェクションされたPTEN(+/+)HeLa細胞の腫瘍容積を示す。ここで、PTENsiRNA構築物は標的を見出す。何故ならば、HeLa細胞は、両対立遺伝子に関してPTENポジティブであり、かくしてその細胞毒性応答を誘発しないからである。それにもかかわらず、p110b MM構築物、即ち、p110に対して特異的であり、しかしながら、正しい、即ちポジティブRNA干渉応答を許容しない本明細書で開示されたデザイン原理に従っていくつかのミスマッチを有するsiRNA構築物も、HeLa腫瘍容積の有意な減少をもたらす。
【0092】
実施例4:dsRNA分子のトランスフェクションにより誘導される減少したPC3細胞増殖
dsRNA分子の修飾パターンの影響及び導入されたdsRNA分子の標的核酸のそれぞれ存在及び不存在の影響を評価するために、この実施例を行った。
【0093】
下記のdsRNA分子を誘導させた:
【表2】


太字及び下線を施されたもの=2’−O−メチル修飾
大文字=デスオキシヌクレオチド(desoxy nt)
【0094】
種々のdsRNA分子の効能を、PC3細胞を使用して10cmプレート上の増殖アッセイで評価した。
【0095】
プラスチックディッシュ上での増殖アッセイ
30〜50%の密集度のPC3細胞をそれぞれのdsRNA分子(実施例1参照)でトランスフェクションした。インキュベーション後に、72時間目に写真を撮り、これは図5A(72時間インキュベーション)でありそして160時間目のものは図5B(160時間インキュベーション)である。トランスフェクション条件は、atuFECT01(1μg/ml)と複合した100nMsiRNA分子であった。
【0096】
β−アルギニル−2,3−ジアミノプロピオン酸−N−パルミチル−N−オレイル−アミド三塩酸塩
【0097】
【化1】

【0098】
ジフィタノイルホスファチジルエタノールアミン
【0099】
【化2】

【0100】
dsRNA分子の処方
カチオン性脂質β−アルギニル−2,3−ジアミノプロピオン酸−N−パルミチル−N−オレイル−アミド三塩酸塩及びヘルパー脂質ジフィタノイルホスファチジルエタノールアミンのクロロギ酸溶液を、両脂質が1:1のモル比で存在するようにブレンドした。次いで、クロロホルムを真空下に除去し、得られる脂質フイルムを1μg脂質/mlの濃度で水中で再水和させた。かくして形成されたカチオン性脂質を超音波浴中で室温で6分間分散液の超音波処理に付した。脂質をdsRNA分子と複合させるために、dsRNA(2mg/lDPBS)を1:1の容積比で脂質(0.735mg/ml超純水)と混合し、ボルテツクスしそして37℃で約20分間インキュベーションした。この処方は本明細書ではatuFECT01とも呼ばれる。
【0101】
図5A及び5Bから確かめることができるとおり、種々のRNA分子は、PC3細胞の増殖に関する能力に対して異なる影響を有する。増殖アッセイは、細胞が増殖する潜在力を指示するのに適当なアッセイであり、かくしてそれらのマイトジェン活性及びアポトーシス活性のインディケーターでもある。
【0102】
図5A及び5Bに示された結果を比較すると、72時間増殖の後、種々のRNA分子を使用する細胞の処理効果は、細胞が10cmのプレート上で160時間の増殖の後に再び観察された場合の状況と対照的に、顕著な効果ではないということに留意することは重要である。
【0103】
siRNA分子であるPK71AB、即ち、21塩基対を含む二本鎖RNA分子は、PKNβ(NM 0113355)に対して向けられ、かくしてRNA干渉機構に従ってPKNβmRNAをダウンレギュレートするのに適当である。しかしながら、PKNβはPC3の増殖に対していかなる影響も与えない。
【0104】
PTENABは、上記したPTENA及びPTENB配列を含む二本鎖構造である。160時間後、PC3細胞を抑制し、そして増殖及び生存を有意に減少させる。PC3はPTEN−/−細胞であるので、即ち、それらはPTENをコードするmRNA又は他の転写されたRNAを含むトランスクリプトームを持たないので、これは、細胞増殖の抑制及びアポトーシスが、二本鎖核酸、更に好ましくは、トランスクリプトームにマッチしない二本鎖リボ核酸としてのリボ核酸の使用により誘導されうるという本願に開示された発見を確証する。
【0105】
PTENABMMの使用は、PTENABについて上記したと同様な効果を示す。PTENABMMは上記した配列PTENAMM及びPTENBMMを含む二本鎖リボ核酸である。PTEN遺伝子の転写物を示さないPC3細胞のほかに、ミスマッチは、抑制された細胞増殖の点でより強くすらある応答をもたらし、かくしてそれぞれ72時間及び160時間後に密度を比較すると、細胞密度の点からみてより強いアポトーシス効果をもたらす。
【0106】
しかしながら、一本鎖構築物として、それぞれPTENA及びPTENBを使用すると、一本鎖リボ核酸がPC3細胞増殖の抑制をもたらさず、かくして本明細書に開示された効果を達成するために二本鎖核酸構造の必要を裏付けることが、図5A及び図5Bを比較することから確かめることができる。
【0107】
二本鎖リボ核酸分子PTENABV15は、上記した2つの鎖PTENAV15及びPTENBV15からなる。この分子は、第1、第3等の如き修飾パターンを示す、即ち、いかなる1つ置いて次のヌクレオチドも、修飾、特定の場合には2’O−メチル化リボース部分を含み、修飾された最初のヌクレオチドはアンチセンス鎖の5’端部から出発する最初のヌクレオチドである。PTENAV鎖に相補性であるPTENBV15鎖は同じパターンを有するが、しかし、1ヌクレオチドのフレームシフトがあり、その結果、第2、第4、第6等の、即ち、やはりどの1つ置いて次のヌクレオチドもアンチセンス鎖と同じ方法で、即ち、2’O−メチル化リボースにより修飾される。
【0108】
この結果は、本明細書では空間的修飾パターンの1つの態様とも呼ばれる修飾パターンは本明細書に記載の効果を生じることを確証する。
【0109】
二本鎖RNA分子PTENABV10にも同じことが言え、これはPTENmRNA又はPTEN転写物にも関係しているが、しかし、PTENmRNA又はPTEN転写物は、PC3細胞の特定の遺伝子バックグラウンドが与えられるならば、存在しない。この配列も増殖アッセイにおいてPC3細胞の増殖の抑制をもたらし、かくして本明細書に開示された機構に基づく細胞溶解及びアポトーシスを示している。
【0110】
最後に、上記した個々の配列PTENAV1及びPTENBV1からなる分子PTENABV1がアッセイされたが、しかし、このアッセイにおいて活性ではない、即ち、この種の分子は細胞増殖を抑制するのに適当ではない。配列それ自体はPTENに対して向けられそしてそのかぎりにおいて働くはずであるけれども、しかし、この分子はリボースの2’位置で両鎖が完全にメチル化されているような特徴を有し、それによりこのような全体の修飾はRNA干渉を誘発しないことが知られる。これから、本発明者は、修飾は本明細書に記載の効果を誘発するように許容できるけれども、しかしながら、アンチセンス鎖が2’リボースで完全にメチル化されそして好ましくはセンス鎖もそうである、完全に修飾されたdsRNA分子の発生は、RNAi応答を引き出すのに有効ではないことが知られ、本発明に関して作用可能ではないと結論した。
【0111】
この実施例で使用されたdsRNA分子の長さは、21ヌクレオチド対であることに留意されるべきである。
【0112】
実施例5:ミスマッチで誘導されるアポトーシス
本発明の基礎をなす発見、即ち、RNA干渉反応を引き出す最適siRNA分子に比べて、完全に塩基対形成しないで、少なくとも1つ、好ましくはいくつかのミスマッチを示す二本鎖核酸、好ましくは二本鎖リボ核酸により、細胞増殖を抑制することができ、更に詳しくはアポトーシスを誘導することができるということを裏付けるために、下記の実験を行った。
【0113】
実施例4に関して上記した如くして調製されたatuFECT01(1μg/ml)を使用してsiRNA100nmでHeLa細胞をトランスフェクションした。下記の配列を使用した:
【0114】
【表3】


下線を施したnt=導入されたミスマッチに対応する
大文字=デスオキシnt
【0115】
このようにして処理された細胞をそれぞれ48時間及び72時間後に溶解させそして指示された抗体を使用してイムノブロットにより分析した。
【0116】
上記配列において、dsRNA分子のミスマッチは下線を施すことにより示されることに留意されたい。ゆえに、PTENMMの場合に、ミスマッチはヌクレオチドno.1が5’端部にあるアンチセンス鎖上の位置4、9、13及び18に基づいたが、このようなミスマッチは、HeLaに存在しているPTENmRNAと呼ばれた(HeLaのトランスクリプトームは依然としてPTENmRNAsを含むので)。
【0117】
実施例3に記載のPI3Kのサブユニットであるp110αの場合に、ミスマッチは、第1ヌクレオチドが5’端部のヌクレオチドであるセンス鎖上の位置3、8、12及び20にありそしてセンス鎖上の対応する位置にある。いずれにせよ、二本鎖RNA分子は21ヌクレオチドの第1ストレッチ及び21ヌクレオチドの第2ストレッチからなっていた。各場合に、センス鎖及びアンチセンス鎖の各々の3’端部にジデオキシヌクレオチド、即ちTTがあった。
【0118】
結果を図6に示す。図6から確かめられるとおり、p110αに対して向けられたdsRNA分子は、p110αタンパク質の減少をもたらす。二本鎖RNA分子が標的mRNA、即ち、p110αmRNAに完全にマッチしていた場合。PTENについて同じことが言える。
【0119】
更なる読み取り(read-out)は、RB及びGSK3αであったが、これらはその脱リン酸化された形態で増殖の抑制を示し、両場合に脱リン酸化は活性化を意味する。更なる読み取りは、開裂されたPARPシグナルであり、これはアポトーシスを示す。活性化されたカスパーゼ3がデス基質(death substrate)PARPを開裂することは十分に確立されている(Lazebnik et al., 1994, Nature 371, 346-347)。
【0120】
再び図6を参照すると、少なくとも72時間後に、PTENMM及びp110αMMは、RB及びGSK3αがリン酸化される程度を明らかに減少させる。更に、まさに同じdsRNA分子について、開裂された部分が有意なレベルで存在し、これは、これらのdsRNAで処理された細胞がアポトーシスを受けることを示す、ということが確立されうる。これは、標的配列が存在するとしても、完全にマッチしない二本鎖RNA分子の使用は、アポトーシスを含む(しかしそれに限定はされない)ストレス反応を生じさせ、そして最後に増殖抑制及び/又は細胞停止及び/又は細胞溶解を生じさせることを裏付ける。
【0121】
実施例6:ヒトPC3マウスモデルにおけるdsRNAに基づく治療
実験デザイン
食品医薬品協会の非臨床実験室的研究のための良好な実験室実施(Good Laboratory Practice for Nonclinical Laboratory Studies(GLP Regulations) of the Food and Drug Administration)(U.S Department of Health and Human Services,Food and Drug Administration,Rockville,MD)に相当する実験を、法律的基礎としてドイツ動物保護法、連邦官報,I, 25May1998, p.1094(Bundesgesetzblatt,I,25 May 1998,p.1094)に従って行った。地方政府機関の許可を与えられた(Landesamt feur Arbeitsschutz, Gesundheitsschutz und technische Sicherheit Berlin)。ヒト前立腺がん細胞PC3(American Type Culture Collection(ATCC)2002),Manassas,VA20108)を、グルタミン(Gibco BRL)2mM、Hepes(Biochrom)20mM及びウシ胎仔血清(Gibco BRL)10%を含有するF−12Kカインの改変培地(F-12K Kaighn's modification medium)(Gibco BRL) 中で増殖させた。培養した細胞をトリプシン処理しそして培地によるトリプシン効果を停止した後回収した。洗浄手順(PBS;遠心5分/1.000rpm)を加え、最後にペレットを、接種されるべき細胞数及び容積を考慮して再懸濁させた。
【0122】
動物及び細胞チャレンジ
SPF条件(空気層流装置、Scasntainer,Scanbur)下に維持されたオスのShoe:NMRI−nu/nuマウス(DIMED Schoenwalde GmbH)をPC細胞の受容体として使用した。8週齢、体重28〜32gのこの動物に、5×10個/0.1mlの腫瘍細胞を鼠頚部領域(inguinal region)に皮下に接種した。細胞チャレンジの17日後に、動物を各グループ当たり6匹の動物からなる4つの処理グループに従って無作為化した。腫瘍サイズは処理グループ当たり150〜160mmの範囲であつた。動物を所見のプロトコール化を含めて順次に検査した。Ssniff NM−Z、10mm、オートクレーブ処理可能(ssniff Spezialdiaeten GmbH)を、強化食餌として投与し、飲用水道水を酸性化し、両方とも適宜に行った。
【0123】
処方
実施例4に関連して前記したとおりに処方物を調製した。
【0124】
更に、この処方物300μlを、30gのマウスに静脈内注射し、それによりそれぞれ体重1kg当たりsiRNA10mg及び脂質3.7mgの用量が投与される。裸のsiRNA(2mg/mlDPBS)を同じ容積比でDPBSで満たしそして適当に処理した。複合体を各処理について新たに調製した。
【0125】
siRNA処理
コントロールとしてPBSを含むsiRNA調製物を、尾部静脈を経由して静脈内に投与した。処理スケジュールは、9回の連続した毎日の注射からなっていた。投与レベルは、それぞれ、体重1kg当たりsiRNA10mg、脂質3.7mgに達し、0.3ml/30gマウスの注射容積を達成した。下記の処理グループが含まれていた:
PBS:
PTEN/AB/裸(Naked)
PTEN/AB
【0126】
評価
実験期間中定期的に体重を記録して、動物の物理的状態を評価した。腫瘍を、処理期間中は毎日そして処理後は1週間に3回、一対のカリパー(calliper)によって二次元的に測定した。容積は、V(mm)=ab/2(ここでb<aである)に従って計算した(In vivo cancer models.1976-1982.Washington,D.C.:National Cancer Institute 1984(NIH Publication No.84-2635,February 1984))。一般に、このアプローチで達成された細胞数は100%腫瘍生着(tumor take)を引起した。
【0127】
血液パラメーターを、眼窩洞(orbital sinus)からの血液穿刺(blood punctures)によって評価した:
酵素:ALT、AST、AP;
細胞構成分:WBC、RBC、PLT、Hb、Hkt;
白血球分化。
【0128】
組織学的分析のために、腫瘍及び肝臓組織のサンプルを5%ホルムアルデヒド中に固定しそしてパラフィンに埋めた。ルーチンに、切片をHE染色した。
【0129】
腫瘍サイズに関する結果を、Mann及びWhitneyのu検定(u-test)により統計的に証明した。
/atuFect01;
MTP18/atuFect01.
PTENV1/atuFect01
PTENGB/atuFecto1
【0130】
下記の二本鎖リボ核酸及びアンチセンス分子を使用した:
【表4】

【0131】
いかなる2’O−メチル修飾されたリボヌクレオチドも太字で示されそして下線を施されており、大文字はデスオキシリボヌクレオチドを示しそして大文字及びイタリック体のいかなる文字もホスホチオエートを含むデスオキシリボヌクレオチドを示していることに留意されたい。
【0132】
結果を図7に示す。
【0133】
20日後ではPTENAB/atuFECT01の投与により誘発された応答に比べてPBSに対する応答は、Mann及びWhitneyに従って統計的に有意であり(P=0.05)そして絶対腫瘍容積は、いかなる他の処理計画に比べてさほど増加しなかった。種々の処方の投与は17〜18日に毎日行った。
【0134】
更なる態様では、動物をPBSでチャレンジしそして別法としてPTENAB/atuFECT01 10mg/kg及びPTENAB/atuFECT01 1mg/kgでチャレンジした。それぞれの処方物を投与し、19〜26日に毎日投与した。結果を図8に示す。
【0135】
図8から確かめることができるとおり、より大量の処方物を投与するならば、相対的腫瘍容積の増加はより少なく、かくしてin vitro研究でも観察された投与量依存性反応を確証する。
【0136】
更なる実験では、PBS、PTENV1/atuFECT01 10mg/kg及びGene Bloc 53/atuFECT01 10mg/kgの影響をまったく同じ動物モデルで評価し、その結果を図9に示す。
【0137】
上記したPTENAV1及びPTENBV1鎖からなるPTEN−V1構築物を使用して、特定の脂質と共に上記したとおりに処方し、その際このような分子は、いかなる2’OH位置も2’O−メチルとなるように修飾されるように、センス鎖及びアンチセンス鎖の両方において完全に修飾されることは、この図形から確かめることができる。この分子は、マウスモデルで実際に有効ではなく、そして腫瘍容積の増加は、PBSによる処理による腫瘍容積増加と同様であった。この理由は、完全な修飾、好ましくはアンチセンス鎖の完全な修飾は、該鎖を不活性にし、その結果この種の二本鎖RNA分子が細胞システムで使用されるときに観察される効果は、標的核酸、即ち、mRNA、更に正確にはPTENmRNAが存在しない場合には、上記したとおりのストレス応答をもたらすということである。
【0138】
PTENに対して向けられるGene Bloc 53/atuFECT01も、腫瘍容積を減少させるのには有効ではないが、これは、特定のPC3細胞が標的を与えずそして実施例4に記載の実験に従って、一本鎖オリゴヌクレオチドは本明細書で観察されそして開示された効果を誘導するのには適当ではないという事実を前提とすれば、驚くには当たらない。
【0139】
本明細書、特許請求の範囲及び/又は図面で開示された本発明の特徴は、個々に及びそのいかなる組み合わせにおいても、本発明をその種々の形態において認識するための資料である。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】低分子RNA二本鎖の主反応を示し、図1Aは本発明の基礎をなす原理機構を説明し、これに対して図1BはsiRNAの作用の様式を示す。
【図2A】本発明に適用可能な種々のsiRNA構築物を示す。
【図2B】PTENに対してデザインされたsiRNA又はアンチセンス分子を使用する細胞溶解のイムノブロットの結果を示す。
【図2C】PTENに対してデザインされたsiRNA又はアンチセンス分子を使用する細胞溶解のイムノブロットの結果を示し、p110α、PTEN及びpAktのほかに、pFKHRが読み取り(read-out)として使用される。
【図3A】それぞれ、12時間及び24時間後に種々のアンチセンス構築物及びsiRNA構築物を使用するアフィマトリックス実験のプローブセットの数の増減を示す図形を示す。
【図3B】PTENmRNAノックダウンのための種々のアンチセンス構築物及びRNA構築物を使用するアフィマトリックス実験の結果を示す。
【図4A】種々のsiRNA発現構築物で処理したときのPC3腫瘍の容積を示す図形を示す。
【図4B】種々のsiRNA発現構築物により処理したときのHeLa腫瘍の容積を示す図形を示す。
【図5A】細胞が種々のRNA分子を使用してトランスフェクションに付されている細胞増殖アッセイにおける、72時間後のPC−3細胞を示す。
【図5B】細胞が種々のRNA分子を使用するトランスフェクションに付された細胞増殖アッセイにおける、160時間後のPC−3細胞を示す。
【図6】種々の二本鎖RNA分子を使用するHeLa細胞の処理後の細胞溶解物のウエスタンブロット分析を示す。
【図7】種々の処方物を使用して細胞チャレンジ後の日数として表された時間の関数としての絶対腫瘍容積を示す図形を示す。
【図8】PBS及び二本鎖リボ核酸を含有する種々の濃度の脂質処方物の投与による細胞チャレンジ後の日数の関数としての腫瘍容積を示す図形を示す。
【図9】PBS、及び二本鎖リボ核酸を含有する種々の濃度の脂質処方物の投与による細胞チャレンジ後の日数の関数としての腫瘍容積を示す図形を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸が二本鎖構造を含み、該二本鎖構造が第1鎖及び第2鎖を含み、
第1鎖が連続したヌクレオチドの第1ストレッチを含み、第2鎖が連続したヌクレオチドの第2ストレッチを含み、
第1ストレッチが、医薬により処置されるべき生物の細胞の標的核酸、好ましくは、mRNAに対して相補性ではなく、及び/又は
第2ストレッチが、該医薬により処置されるべき生物の細胞の標的核酸、好ましくは、mRNAとは異なる、
核酸、好ましくは、リボ核酸の医薬を製造するための使用。
【請求項2】
標的核酸が、生物の細胞のいかなる核酸でもあり、好ましくは生物の細胞のいかなるmRNAでもある、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
標的核酸が、生物の細胞のトランスクリプトームのいかなるエレメントでもあり、好ましくは、生物の細胞のトランスクリプトームのすべてのエレメントである、請求項1又は2のいずれか1項に記載の使用。
【請求項4】
細胞が、好ましくは疾患に関与する病理学的細胞である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
第1ストレッチが、処置されるべき生物の非病理学的細胞の標的核酸、好ましくは、mRNAに対して相補性であり、及び/又は
第2ストレッチが、処置されるべき生物の非病理学的細胞の標的核酸、好ましくは、mRNAと同一である、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
非病理学的細胞の標的核酸が、1つ以上のヌクレオチド位置で病理学的細胞の標的核酸とは異なる、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
医薬が疾患の処置及び/又は予防用であり、このような疾患が、好ましくは、腫瘍又はがんである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
病理学的細胞が腫瘍サプレッサー欠損であり、そして連続したヌクレオチドの第1ストレッチが機能的腫瘍サプレッサーをコードする核酸に対して相補性であり、及び/又は
連続したヌクレオチドの第2ストレッチが、機能的腫瘍サプレッサーをコードする核酸と同一である、
請求項4〜7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
第1ストレッチが、機能的腫瘍サプレッサーをコードする核酸に対して相補性であり、病理学的細胞が該機能的腫瘍サプレッサーに関して腫瘍サプレッサー欠損であり、そして
第2ストレッチが、機能的腫瘍サプレッサーをコードする核酸と同一であり、病理学的細胞が該機能的腫瘍サプレッサーに関して腫瘍サプレッサー欠損である、
請求項8に記載の使用。
【請求項10】
病理学的細胞が、機能的腫瘍サプレッサーの遺伝子又はその転写物を欠いている、請求項4〜9のいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
病理学的細胞が、機能的に活性な腫瘍サプレッサーを与える遺伝子又はその転写物を欠いている、請求項4〜9のいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
遺伝子又はその転写物が、1つ又はいくつかの突然変異を含み、このような突然変異が、好ましくは、点突然変異及び欠失突然変異よりなる群から選ばれ、このような突然変異が、好ましくは、機能的に不活性な腫瘍サプレッサーをもたらす、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
核酸が二本鎖構造を含み、該二本鎖構造が、第1鎖及び第2鎖を含み、
第1鎖が連続したヌクレオチドの第1ストレッチを含み、第2鎖が連続したヌクレオチドの第2ストレッチを含み、
該核酸又はその一部若しくは鎖が、RNA干渉応答ネガティブである、
核酸、好ましくは、リボ核酸の医薬を製造するための使用。
【請求項14】
核酸が、医薬で処置されるべき生物の病理学的細胞においてRNA干渉応答ネガティブである、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
核酸が、医薬で処置されるべき生物の非病理学的細胞においてRNA干渉応答ポジティブである、請求項13又は14に記載の使用。
【請求項16】
核酸がストレス応答、好ましくは、病理学的細胞のアポトーシス及び/又は増殖の抑制を誘導する、請求項1〜15のいずれか1項に記載の使用。
【請求項17】
核酸、好ましくは、リボ核酸、及び好ましくは、薬学的に許容されうる担体を含む医薬組成物であって、
該核酸が二本鎖構造を含み、該二本鎖構造が第1鎖及び第2鎖を含み、
第1鎖が連続したヌクレオチドの第1ストレッチを含み、第2鎖が連続したヌクレオチドの第2ストレッチを含み、
第1ストレッチが、該医薬で処置されるべき生物の細胞の標的核酸、好ましくは、mRNAに対して相補性ではなく、及び/又は、
第2ストレッチが、該医薬で処置されるべき生物の細胞の標的核酸、好ましくは、mRNAとは異なる、
医薬組成物。
【請求項18】
標的核酸が、該医薬組成物を使用して処置されるべき生物の細胞のいかなる核酸でもあり、好ましくは、このような生物の細胞のいかなるmRNAでもある、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
標的核酸が、医薬組成物で処置されるべき生物の細胞のトランスクリプトームのいかなるエレメントでもあり、好ましくは、医薬組成物で処置されるべき生物の細胞のトランスクリプトームのすべてのエレメントである。請求項17又は18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
細胞が、好ましくは、該医薬組成物により処置及び/又は予防されるべき疾患に関与しいる病理学的細胞である、請求項17〜19のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
核酸が請求項1〜16のいずれか1項に定義されている、請求項17〜20のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項22】
少なくとも1つの脂質、好ましくはカチオン性脂質を更に含む、請求項17〜21のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項23】
脂質が、β−アルギニル−2,3−ジアミノプロピオン酸−N−パルミチル−N−オレイル−アミド三塩酸塩である、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
ヘルパー脂質を更に含む、請求項17〜23のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項25】
ヘルパー脂質が、ジフィタノイルホスファチジルエタノールアミンである、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
請求項16〜24のいずれか1項に記載の医薬組成物及び/又は請求項1〜25のいずれか1項に記載の核酸を投与する工程を含む、処置を必要とする患者の処置方法であって、好ましくは、がん及び/又は腫瘍を処置する方法。
【請求項27】
患者が、請求項1〜26のいずれか1項に記載の細胞、好ましくは病理学的細胞を示す、請求項26に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−513487(P2009−513487A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516079(P2006−516079)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【国際出願番号】PCT/EP2004/006999
【国際公開番号】WO2005/000320
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(505047256)サイレンス・セラピューティクス・アーゲー (13)
【氏名又は名称原語表記】SILENCE THERAPEUTICS AG
【Fターム(参考)】