説明

細胞生育促進方法

ウルソデオキシコール酸(UDCA)、それらの塩、及びそれらの類似物(例えば、グリコウルソデオキシコール酸及びタウロウルソデオキシコール酸)のような親水性胆汁酸を投与することにより、移植細胞集団の生育を促進するための方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
細胞(例えば臓器)移植は、多様なヒト疾患の治療に現在広く用いられている。例えば心臓移植は、欠陥のある心臓を持つ患者に日常的に行われている。しかしながら移植における主な障害は、移植のための良質組織の不足である。多くの細胞(例えば臓器)は、採取後は残存しにくいため、最終的には移植されない。従って、移植のための細胞育成促進方法は、ぜひとも必要とされる。
【0002】
移植を用いることができる疾患の例は、パーキンソン病である。パーキンソン病(PD)は中枢神経系の疾患であり、100万人から150万人のアメリカ人が罹患している。PDはどの年齢でも起こり得るが、PDを発達させるリスクは、年齢に伴い増加する。更にPDは、世界の全地域に発生し、そして女性よりも男性のほうがわずかに高い頻度で罹患する。PDの徴候は、硬直(rigidity)、震え(tremors)、動作緩慢、歩行困難、及び/又はバランスのとり難さを含み得る。PD患者は、一般的にそれら全ての徴候を経験するのではなく、むしろそれらの一部の徴候を経験する。
【0003】
PDの実際の原因は知られていない。PDは遺伝の傾向とまだ解明されていない環境の誘引との組合せに起因すると信じられている。PDが発症した場合、変性変化が、黒質として知られるドーパミンを産する脳の領域で見出される。ドーパミンは、人々を正常且つ円滑に動かすことができる化学物質である。PDはドーパミンの深刻な不足により特徴づけられる。ドーパミンの欠乏は、PDの徴候を引き起こすと信じられている。
【0004】
PD対象におけるヒト胚ドーパミンニューロンの移植は、現在臨床試験で評価中である(A.Bjorklund等.,Nat.Neurosci.3:537-544,2000)。PDを有す少数の対象は、脳中のドーパミン含有量の正常化を見せ、そして神経移植後は正常な生活に戻ることが報告されたが(J.H.Kordower等.,J.Comp.Neurol.370:203-230,1996;P.Piccini等.,Nat.Neurosci.2:1137-1140,1999)、移植を受けた対象の大多数は、不完全な症状の回復を見せる(C.R.Freed等.,N.Engl.J.Med.344:710-719,2001;Lindvall,O.,Cell Transpl.4:393-400,1995)。いくつかの要因がこの制限に寄与し得る。特に、移植されたドーパミンニューロンの欠損は、完全な臨床改善の主な障害の一つになる。多くの動物実験及び臨床試験では、細胞懸濁技術を用いてドーパミンニューロンが脳中へ移植された場合、約10%のみの残存率であることが示された(P.Brundin等.,Prog.Brain Res.71:293-308,1987;N.Nakao等.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA91:12408-12412,1994;H.Sauer等.,Restor.Neurol.Neurosci.2:123-135,1991;H.Sauer等.,Exp.Brain Res.90:54-62,1992;G.S.Schierle等.,Nat.Med.5:97-100,1999;A.Zuddas等.,Eur.J.Neurosci.3:72-85, 1991)。
【0005】
近年における検討では、臨床的利益を明確にするために要求される最小限のドーパミンニューロンは80,000個であることが見積もられた(A.Bjorklund等.,Nat.Neurosci.3:537-544,2000)。しかしながら、いくつかの臨床試験では、脳中の残存ドーパミンニューロンの数は、対照のニューロン数より大幅に少ないことが実証された(C.R.Freed等.,N.Engl.J.Med.344:710-719,2001)。従って、ドーパミンニューロン残存を強化することは、妥当な問題になる(P.Brundin等.,Cell Transplant.9:179-195,2000)。更に、ドーパミンニューロン残存の改善は、神経移植の臨床応用において障害となるヒト胚ドーパミン組織の制限された利用能を回避することができる。
【0006】
アポトーシスがドーパミンニューロンの欠損に役割を果たすという実質的なエビデンスがある(M.Emgard等.,Exp.Neurol.160,279-288,1999;T.J.Mahalik等.,Exp.Neurol.129:27-36,1994;G.S.Schierle等.,Nat.Med.5:97-100,1999;W.M.Zawada等.,Brain Res.786,96-103,1998)。更に、アポトーシスは、移植後数日以内に正常に起こる(M.Emgard等.,Exp.Neurol.160,279-288,1999;G.S.Schierle等.,Nat.Med.5:97-100,1999;W.M.Zawada等.,Brain Res.786,96-103,1998)。In vitro試験では、ドーパミンニューロンの欠損に関連するアポトーシスは、大部分が最初の24時間に起こり、そしてドーパミンニューロンの約50%は最初の8時間で既に失われることが見出された(R.L.Branton等.,Exp.Neurol.160:88-98,1999)。これらの試験は、黒質移植片中の細胞死の大部分が移植後速やかに起こるという従来の観察に対し、可能な説明を提供する(R.A.Barker等.,Exp.Neurol.141:79-93,1996;W.-M.Duan等.,Exp.Brain Res.104:227-242,1995)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
PDを有す対象において、ヒト胚ドーパミンニューロンの神経移植では不完全な症状の回復を見せたように、対象中へ移植された細胞の欠損を減少させる必要性が継続して存在する。この必要性はPDのニューロンのみでなく、他の移植適用に応用される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
概要
本発明は対象へ移植される移植細胞集団の生育を促進するための方法を提供する。好適には対象はヒトであり、且つ移植細胞集団の育成を促進することは、移植細胞集団と、親水性胆汁酸、それらの塩、それらの類似物、及びそれらの組合せから成る群から選定される有効量の化合物を接触させることを含む。
【0009】
移植細胞集団の細胞は、例えば、分化細胞、及び前駆細胞を含むことができる。更に移植細胞集団の細胞は、自家(autologous)細胞、他家(heterologous)細胞、又は異種(xenologous)細胞を含む。或いは、移植細胞集団の細胞は、少なくとも自家組織、他家組織、又は異種組織の一部を含むことができる。特定の態様のための当該細胞集団は、例えば肝臓、心臓、腎臓、肺、及び膵臓等の臓器、又はそれらの一部形態にある。好適には、当該細胞集団はヒト細胞集団である。
【0010】
当該接触は、in vitro、in vivo、及びそれらの組合せにおいて起こすことができる。本明細書において使用されるin vitroは、in vivoと区別される。In vitroとは処理される移植細胞集団の人工的環境配置を言い、例えば組織培養皿中の細胞培養を言う。In vivoとは処理される細胞集団の天然環境配置を言い、例えば哺乳動物の体内を言う。
【0011】
本発明の一つの観点では、対象に移植細胞集団を移植する前に、当該移植細胞集団と化合物を接触させることを含んで成る方法を提供する。これはドナー由来の移植細胞集団を摘出する前(in vivo)、又は後(in vitro)において実施できる。或いは、これは移植細胞集団が対象に移植された後に実施できる。
【0012】
更に、又は或いは、本発明は移植細胞集団と化合物を受容する対象を処理することを含んで成る方法を提供する。例えば、化合物で対象を処理することは、当該対象に移植細胞集団を移植する前に、当該対象に化合物を投与することを含むことができる。更に、上記の通り化合物で対象を処理することは、当該対象に移植細胞集団を移植した後に、当該対象に化合物を投与することを含むことができる。この後者の例では、対象は既に当該対象中に移植細胞集団を移植する前に化合物で処理してよい。好適には対象を処理することは、非経口又は経口的に化合物で対象を処理することを含む。
【0013】
本発明は、親水性胆汁酸、それらの塩、それらの類似物、それらの組合せから成る群から選定された化合物により、移植細胞集団のドナー、及び/又は対象を処理することも提供する。本明細書における検討の通り、本発明に有用である親水性胆汁酸は、制限されずにウルソデオキシコール酸、及び/又はタウロウルソデオキシコール酸を含む。
【0014】
本発明の1つの観点では、化合物により移植細胞集団のドナーを処理することを含む方法を提供する。これはドナー由来の移植細胞集団の摘出前(in vivo)、摘出中(in vivo)又は摘出後(in vitro)に行うことができる。或いは、又は更に、本発明は化合物により移植細胞集団の対象を処理することを含む方法を提供する。これは対象へ移植細胞集団を移植する前(in vivo/in vitro)、移植中(in vivo)又は移植後(in vivo)に実施することができる。
【0015】
本発明の他の観点は、細胞交代を必要とする疾患を有す対象、好適にはヒトを処理するための方法がある。例えば、本発明はパーキンソン病を有する対象、好適にはヒトを処理するための方法を提供することができる。当該方法は、移植細胞集団とウルソデオキシコール酸、それらの塩、それらの類似物、及びそれらの組合せから成る群から選定される有効量の化合物を接触させ、移植細胞集団の育成を促進させることを含むことができる。そして本方法は、更に対象へ移植細胞集団を移植することを含んで成る。
【0016】
ウルソデオキシコール酸の類似物の例は、複合誘導体(conjugated derivative)がタウロウルソデオキシコール酸であることができる場合は、当該複合誘導体を含む。特別な例では、本発明の方法は、in vitroにおいて医薬的に許容され得る担体との組合せの中で、移植細胞集団と有効量のタウロウルソデオキシコール酸を接触させることを含む方法である場合、移植細胞集団が分化細胞である場合、パーキンソン病を有するヒトを治療することを含むことができる。当該方法は更にヒトへ移植細胞集団を移植することを含む。
【0017】
上記の通り、パーキンソン病を有するヒトのための移植細胞集団は、分化細胞と前駆細胞を含むことができる。更に、移植細胞集団の細胞は自家細胞、他家細胞、又は異種細胞を含むことができる。或いは、移植細胞集団の細胞は、少なくとも自家組織、他家組織、又は異種組織の一部を含むことができる。前記接触ステップはin vitro、in vivo、及びそれらの組合せにおいて起こすことができる。1つの態様では、細胞集団はヒト細胞集団である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
現在、多様な病状を治療するための移植細胞集団の育成を促進する効果的な処理が必要とされている。本発明は、移植細胞集団の育成を促進するためのかかる方法を提供する。当該方法は、移植細胞集団と、親水性胆汁酸、それらの塩、それらの類似物、及び/又はそれらの組合せから成る群から選定された有効量の化合物を、対象へ移植細胞集団を移植する前、移植中、又は移植後に接触させることを含むことができる。
【0019】
本明細書において使用される、移植細胞集団育成を”促進する”とは、対象に移植される、又は既に移植された移植細胞集団の残存、及び/又は増殖を維持すること、延長すること、及び/又は改善することを含む。更に、用語”育成”とは、典型的にin vivoにおいて移植細胞集団中の細胞の正常機能を維持することを言うが、当該用語はin vitroでも同じように含まれることを意味する。用語”延長する”とは、未処理の同様の移植細胞集団と比較して、本発明の方法を用いる処理により保存された移植細胞集団を意味する。一方、特定の理論に拘束されることを望まないならば、移植のための移植細胞集団と本発明の化合物を接触させることは、プログラム細胞死を阻害し、それにより移植細胞集団の生育を延長させると信じられる。
【0020】
本明細書において使用される”移植細胞集団”とは、制限されずに、対象に移植された又は移植され得る、個々の細胞の集団、並びに組織及び/又は臓器に存在する細胞の集団を含む。そのようなものとして、移植細胞集団の細胞は、組織及び/又は臓器中で見出されるマトリックス構造(例えば、タンパク質類、多糖類、ペプチド類、及び他の分子)を含むことができる。本明細書中で使用される"a"、"an"、"the"、"少なくとも一つ"及び"1つ以上"とは、同義的に使用される。
【0021】
病態を有す対象は、パーキンソン病及びアルツハイマー病のような神経変性疾患を有する症状;ハンチントン病;多発性硬化症;筋萎縮性側索硬化症;小脳失調症;リソソーム貯蔵障害;癌;先天性欠損症;臓器及び/又は組織移植が必要である症状;脊髄損傷;卒中、虚血性腎疾患及び心疾患等の虚血性傷害;熱傷;自己免疫性疾患;糖尿病;変形性関節症及び関節リウマチというわずかな病名の炎症性疾患;を含む移植細胞集団の生育を改善することにより利益を享受することができる。しかしながらこのリストは完全なものではなく、そして移植される移植細胞集団の生育を改善することにより利益を享受することが公知である他の病態も、本発明の範囲内において検討される。
【0022】
本明細書において定義されるように、移植細胞集団の生育の促進を測定することに関する評価は、移植細胞集団中の細胞のATPレベル及びタンパク質合成能力の測定により成すことができる。ATPレベルは移植中及び移植後のエネルギー生産に影響を与える。タンパク質合成能力は、いくつかの複雑な生物学的経路の統合を要求するため、細胞の成育の一般的な指標である。
【0023】
好適には、移植細胞集団は、対象へ移植するためのドナーから得られた移植細胞集団を含むことができる。移植細胞集団は子供、成人、又は胎児の組織から由来してよい。好適には移植細胞集団は、制限されずに血液及び全ての血液成分由来細胞(赤血球、白血球、血小板、血清、造血幹細胞;脳及び脊髄組織、ニューロン、グリア、並びに神経幹細胞を含む中枢神経組織;神経節、下垂体後葉、副腎髄質、及び松果体を含む末梢神経組織;皮膚、皮膚幹細胞、靭帯、腱、及び繊維芽細胞を含む結合組織;骨格筋、骨格筋幹細胞、平滑筋、及び心組織又はそれらから由来する細胞を含む筋肉組織;脳下垂体前葉、甲状腺、副甲状腺、副腎皮質、膵臓及びその下位区分(例えば、島細胞)、精巣、卵巣、胎盤、及びそれらの組織の個々の部分である内分泌腺細胞を含む内分泌腺組織;動脈、静脈、毛細血管、及びそれらの血管由来の細胞を含む血管;肺組織;心組織;脳組織;心臓弁;肝臓;腎臓;腸;骨;血液細胞、骨髄、及び脾臓を含む免疫組織;脂肪組織由来の成人前駆細胞(例えば成人幹細胞)を含む脂肪組織;眼及び眼の部分;生殖器官組織;及び尿路組織を含む)の集団を含むことができる。全臓器は移植細胞集団の典型的な形態である。
【0024】
本明細書において使用される用語”臓器”とは、例えば腎臓、肝臓、脳、又は心臓;多細胞臓器由来の細胞懸濁物;及び血液細胞又は造血前駆細胞の懸濁物等の無傷の多細胞臓器の全て又は一部を含むことを意味する。本明細書において使用される”組織”とは、移植細胞集団とそれらを介在する細胞内マトリックス(例えばコラーゲン、タンパク質類、多糖類等)との集合を含むことを意味する。移植細胞集団は、それらが由来する組織及び/又は臓器から分離及び/又は単離された個々の細胞を含むこともできる。
【0025】
移植細胞集団に関しては、分化細胞及び/又は前駆細胞(例えば未分化細胞)を含むことができる対象へ移植するための移植細胞集団から分離及び/又は単離された細胞を含む。実施例の目的の分化細胞は、制限されずに、心筋細胞、筋細胞、平滑筋細胞、上皮細胞、ニューロン(ドーパミンニューロンを含む)、膵細胞、骨髄細胞、肝細胞及び非肝細胞を含む本明細書において検討された細胞を含むことができる。実施例の目的の前駆細胞は、制限されずに、幹細胞、多能性幹細胞、胚幹細胞、及び成人幹細胞を含むことができる。
【0026】
好適には、本発明において有用である移植細胞集団の細胞は、制限されずに自家細胞、他家細胞、異種細胞、又はそれらの組合せを含む。上記検討の通り、細胞は組織及び/又は臓器の部分から由来するそれらの細胞も含むことができる。従って本発明のための細胞は、自家組織、他家組織、異種組織、及び/又はそれらの組合せの少なくとも一部を含むことができ、ここでの当該組織を対象へ移植することができる。
【0027】
本明細書において使用される”対象”とは、哺乳動物を含むことができる。好適には本明細書において使用される対象はヒトである。本明細書において使用される”ドナー”とは生物学的材料、例えば対象への移植のための細胞集団(臓器を含む)の一部、又は全ての起源として使用される哺乳動物を含むことができる。ドナーは、制限されずに、ヒト、ブタ、非ヒト霊長類、ウシ、又はそれらの組合せを含むことができる。更に、当該ドナーは細胞集団を与えている間、生きていることができる。
【0028】
更に、本明細書において移植のために定義された移植細胞集団は、任意の種から由来することができることが理解されている。本発明は、例えばヒト及び他のヒトドナー等の対象における同一種移植(同種移植、並びに自家移植又は他家移植)、或いは他種(例えば羊、ブタ、ウシ、又は非ヒト霊長類)からヒト対象への移植(異種移植)において使用するための移植細胞集団の保存に有用である。移植のためのかかる移植細胞集団は、制限されずに、心臓、肝臓、腎臓、肺、膵臓、膵ランゲルハンス島、脳、角膜、骨、腸、皮膚、血液、及びかかる臓器及び組織からの細胞を含む。
【0029】
好適には、移植細胞集団を本発明の1つ以上の有効量の化合物と接触させることは、in vitro及び/又はin vivoにおいて成すことができる。例えば、移植細胞集団をin vivo(以前に移植細胞集団を移植した対象)において本発明に係る化合物と接触させることができる。本発明を達成する1つの好適な方法は、本発明の1つ以上の化合物により移植細胞集団のドナーを処理することを含む。
【0030】
本発明の1つの観点では、移植細胞集団のドナーを、ドナー由来の移植細胞集団の摘出前(in vivo)、摘出中(in vivo)又は摘出後(in vitro)に本発明の化合物により処理することができる。従って、移植細胞集団を、ドナーにおいて(in vivo)、本発明の化合物と接触させることができる。或いは、移植細胞集団をドナーから摘出している間に、又は一度ドナーから移植細胞集団が摘出された場合に、本発明の化合物と接触させることができる。例えば一部の臓器を提供するドナーに対する利益は、一部の臓器の摘出前、及び/又は摘出後、本発明の化合物を投与することにより実現され得る。本来ならば移植細胞集団の採取、貯蔵、成長及び/又は移植の間に本発明の化合物と接触させる移植細胞集団を、好適には、かん流し、及び/又は浸す。
【0031】
更に、本発明の化合物を、移植細胞集団を受容する対象を処理するためにin vivoにおいて使用できる。これは対象へ移植細胞集団を移植する前(in vivo/in vitro)、移植する間(in vivo)又は移植後(in vivo)に成すことができる。従って、移植細胞集団を受容する対象は、本発明の化合物による処理を受けることも可能である。例えば、対象へ移植細胞集団を移植する前(即ち、細胞集団移植前)、移植している間(即ち、移植細胞集団を移植している時)、及び/又は移植した後(即ち、細胞集団移植後)、対象は本発明の化合物の投与によって、当該化合物により全身的又は局所的に処理され得る。
【0032】
更なる実施例では、対象に移植細胞集団を移植した後、移植細胞集団をin vivoにおいて本発明に係る化合物と接触させることができる。従って、一度、移植細胞集団が対象に移植されたならば、移植細胞集団は本発明の化合物と接触することができる。更に、本明細書における検討の通り、in vivo/in vitro処理計画の様々な組合せにおいて、本発明の化合物を使用することが可能である。
【0033】
詳細な例では、対象の移植の受け入れを増強させる免疫抑制剤の投与を、移植前予め決められた時間に開始することができる。移植前に速やかに、対象に本発明の1つ以上の化合物を投与してよい。その後ドナー他家移植細胞集団を本発明の少なくとも1つの化合物(例えば、タウロウルソデオキシコール酸(TUDCA))を含む溶液と共に流すことができる。標準的な外科技術による移植によれば、対象は典型的に一般の免疫抑制剤及び任意に本発明の化合物を維持される。免疫応答に関する臨床的サイン及び徴候に基づき、免疫抑制剤の投与を減少できる。
【0034】
本明細書において使用される用語“有効量”とは、移植細胞集団の育成を促進する効果があるであろう本発明の化合物の有用投与レベルを含む。本発明者等は理論に拘束されることを望まないが、“有効量”とは、移植される細胞、及び/又は移植された細胞のアポトーシスを有効に予防、減少、阻害、又は抑制するものである。
【0035】
本明細書において発表する所望される化合物の有用な投与量は、そのin vitro活性、及び動物モデルにおけるそのin vivo活性を比較することにより決定することができる。マウス、及び他の動物、ヒトに対する有効投与量を推定するための方法は、当業界において公知である。
【0036】
しかしながら、任意の特定の対象(又はドナー)及び/或いは移植細胞集団のための特定の“有効量”は多様な因子(使用される特定化合物の活性;移植細胞集団;移植細胞集団がin vitroにおいて維持される場合の採取した、単離した、貯蔵した、及び/又は培養した移植細胞集団がある条件;並びにin vivoにおいて使用する場合、年齢、体重、一般的健康状態、性別、日常の食物、投薬時間、投薬経路、排泄物の割合、薬物組合せ、及び処理される対象(又はドナー)の医療条件の厳格さを含む)に依存することは理解されるであろう。
【0037】
好適には、移植細胞集団を保存の間、本発明の化合物と接触させることができる。移植細胞集団の貯蔵は、維持される移植細胞集団のある条件下を含むことができる。或いは、移植細胞集団の貯蔵は、移植細胞集団が移植細胞集団の成長及び増殖を促進するために置かれた条件下を含むこともできる。いずれかの状況において、移植細胞集団を本発明の有効量の化合物と接触させることができる。
【0038】
移植前の移植細胞集団の残存を増強させるために、本発明の化合物を、対象に移植される細胞培養において用いられる細胞培養培地と共に用いてよい。化合物の濃度は、溶解性及び活性を含む多様な要因に依存するであろう。
【0039】
好適には、本発明の方法は、親水性胆汁酸、それらの塩類、それらの類似物、又はそれらの組合せの使用を含む。本明細書において用いられる親水性胆汁酸は、デオキシコール酸(DCA)よりも更に親水性である。これは水に対してより都合がよく、より親水性の胆汁酸による水とオクタノールの間での区画共効果を評価することにより決定することができる。或いは、より親水性の胆汁酸は高速液体クロマトグラフィーを用いた逆相カラム上でのより早い保持時間を有す。特に好適な親水性胆汁酸はウルソデオキシコール酸を含む。親水性胆汁酸の類似物の例は、結合した胆汁酸誘導体を含む。全ての親水性胆汁酸は本発明の全ての方法に有用ではないが、それらはアポトーシスを誘発することが知られている試薬を用いて細胞培養中のアポトーシスの阻害能を検査することにより容易に評価することができる。2つの特に好適な結合した誘導体は、グリコ-及びタウロ-ウルソデオキシコール酸を含む。
【0040】
ウルソデオキシコール酸(UDCA)は内因性胆汁酸であり、多様な肝疾患治療のために過去数10年に渡り臨床で使用されている。UDCAの結合した誘導体は、ウルソデオキシコール酸3-スルフェート、ウルソデオキシコール酸7-スルフェート、ウルソデオキシコール酸3,7-ジスルフェート、タウロウルソデオキシコール酸(TUDCA)、及びグリコウルソデオキシコール酸を含む。
【0041】
典型的に好適な態様のために本発明に発表された化合物は、医薬組成物に製剤化することができる。その後、本発明の方法に従い、移植細胞集団を本発明の化合物を含む医薬組成物と接触させることができる。更に本発明の化合物を含む医薬組成物は、選定された投与経路で適用される多様な形態で対象に投与することができ、典型的にヒト対象等の哺乳動物に投与することができる。製剤はin vitro細胞培養に適したもの、並びに経口、直腸、膣、局所、鼻腔、眼、非経口(皮下、筋肉内、腹腔内、静脈内、髄腔内(intrathecal)、心室内(intraventricular)、脳組織への直接注入等を含む)投与を含む。
【0042】
製剤は単位投与形態において都合よく存在することができ、且つ製薬業界において周知な任意の方法により調整され得る。典型的にかかる方法は、1つ以上の補助的な成分を含み得る担体と共同して、活性化合物を導くステップを含んで成る。一般的に製剤は、液体担体、細粉砕固形担体、又はその両方と共同して、活性化合物を均等且つ密接にもたらすことにより調製され、その後、必要ならば、当該生産物を所望される製剤に形づける。
【0043】
経口投与に適する本発明の製剤は、パウダーとして、細粒形態で、リポソーム中へ導入された、或いは水溶液又は水性液体もしくは非水性液体中(例えばシロップ、エリキシル、エマルション、又は1服分(a draught))の懸濁物として、アポトーシスを制限する化合物をそれぞれ予め決められた量を含む、例えば錠剤、トローチ剤、カプセル剤、ロゼンジ剤、水剤、又は封入剤(cachets)等の個別の単位として存在し得る。
【0044】
錠剤、トローチ剤、丸剤、カプセル剤等は1つ以上の以下:ガムトラガント、アカシア、コーンスターチ、又はゼラチン等の結合剤;2カルシウムホスフェート等の賦形剤;コーンスターチ、ポテトスターチ、アルギン酸等の崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム等の潤滑剤;スクロース、フルクトース、ラクトース、又はアスパルテーム等の甘味剤;及び天然又は人工の香味試薬も含み得る。単位投与形態がカプセルである場合、それは更に液体担体、例えばベジタブルオイル又はポリエチレングリコールを含んでよい。多様な他の材料はコーティング剤として、或いは固体単位投与形態の物質形態を改良するために存在してよい。例えば、錠剤、丸剤、又はカプセル剤は、ゼラチン、ワックス、シェラック、糖等で覆ってよい。シロップ又はエリキシルは、1つ以上の甘味剤、メチル-又はプロピルパラベン等の保存剤、糖の結晶化を妨げる試薬、多価アルコール等(例えばグリセロール又はソルビトール)の任意の他の成分の溶解性を増加させる試薬、染料、及び香味試薬を含んでよい。任意の単位投与形態を調製する中で使用される材料は、使用量において実質的に無毒である。当該化合物は、所望されるならば徐放製剤及びデバイスに導入されてよい。
【0045】
本発明の方法において使用するに適した化合物は、対象の日常の食物、添加剤、補助剤等の食物中へ直接的に導入することもできる。従って、本発明は更に食物製品を提供する。任意の食品を本目的に適用させることができ、栄養補助剤のもと、又はパン、シリアル、ミルク等の栄養価の強化として使用される食品は既に加工されているが、本発明の使用に都合がよい。
【0046】
非経口投与の適した製剤は、所望される化合物の無菌水性調製を都合よく含み、又は所望される化合物を含む無菌パウダーの分散剤は、好適には対象の血液と等張である。等張試薬(Isotonic agents)は、糖類、緩衝剤類、及び塩化ナトリウムのような塩類を含有する液体調製に含ませることができる。所望される化合物の水溶液は、水の中で調製することができ、任意に非毒性の界面活性剤と混合することができる。所望される化合物の分散剤は、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール等)、ベジタブルオイル、グリセロールエステル、及びそれらの混合物中で調製できる。究極の投与形態は、製造及び保存条件下で、無菌、流動、及び安定であることである。必要な流動性は、例えば分散の場合に適した粒子サイズを採用するリポソームを使用することにより、又は界面活性剤を使用することにより達成することができる。液体調製の殺菌は、任意の都合の良い方法によって達成することができ、好適には濾過殺菌により、所望される化合物の生物学的活性を保存する。パウダーを調製するための好適な方法は、無菌注入可能水溶液の真空乾燥及び凍結乾燥を含んで成る。その後の微生物の不純物は、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール等を含む多様な抗微生物剤、例えば抗バクテリア、抗ウィルス及び抗真菌剤を用いて予防することができる。所望される化合物の延長した時間での吸収は、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンのように遅延させる薬剤を含むことにより達成することができる。
【0047】
鼻腔スプレー製剤は、保存剤及び等張剤と共に所望される化合物の精製された水性溶液を含むことができる。かかる製剤は、好適には、鼻腔粘膜で使用できるpH及び等張状態に調整される。眼の製剤は、pH及び等張要因が眼に好適に適合するように調整されることを除けば、鼻腔スプレーと同じ方法により調製される。直腸又は膣への投与のための製剤はココアバター、或いは水素化された脂肪又は水素化された脂肪カルボン酸等の適した担体とともに坐剤として存在し得る。
【0048】
更に、本発明の化合物を選択的な生物学的特性を増強するために適した機能により修飾することができる。かかる修飾は当業界において公知であり、所定の生物学的系統(例えば血液、リンパ系、中枢神経系、脳)への生物学的浸透を増加させ、経口の生物学的利用能を増加させ、注入による投与を可能にするための溶解性を増加させ、代謝を変更させ、及び仕事率(rate of exertion)を変更させることを含む。更に、所望される化合物は、プロドラックの代謝作用又は他の生物学的プロセスの結果として、対象の身体の中で創り出されるので、化合物はプロドラッグ形態へ変更してよい。プロドラッグ形態のいくつかの例は、ケトン又はアルデヒド基を含む化合物のケタール、アセタール、オキシム、及びヒドラゾン形態を含む。
【0049】
本発明の化合物をin vivoにおいて運搬することができる場合、化合物の投与レベルは、化合物を運搬する経路に依存され得る。例えば、経口的に運搬される場合、本発明の化合物の投与レベルは、好適には体重のキログラム当り、1日当り約10ミリグラム以上、15ミリグラム以上、又は50ミリグラム以上である。また、経口運搬のための好適な態様での本発明の化合物の投与レベルは、好適には体重のキログラム当り、1日当り約100ミリグラム以下、50ミリグラム以下、又は15ミリグラム以下である。好適には、経口運搬のための本発明の化合物の投与レベルは、体重のキログラム当り、1日当り約10ミリグラムから約100ミリグラムの範囲を有す。1つの例では、経口投与での有効量は、対象当り、1日当り、約500ミリグラムから約1000ミリグラムである。
【0050】
更なる例では、本発明の化合物が経静脈的に運搬される場合、本発明の化合物の投与レベルは、好適には経口的に運搬される場合よりもさらに高い。例えば、本発明の投与レベルは、経静脈的に運搬させる場合、体重のキログラム当り、1日当り、約10ミリグラム以上、15ミリグラム以上、50ミリグラム以上、又は100ミリグラム以上であることができる。また、好適な態様における経静脈的運搬のための本発明の化合物の投与レベルは、好適には、体重のキログラム当り、1日当り、約200ミリグラム以下、100ミリグラム以下、50ミリグラム以下、又は15ミリグラム以下である。好適には、経静脈的運搬のための本発明の化合物の投与レベルは、体重のキログラム当り、1日当り、約10ミリグラムから約200ミリグラムの範囲を有す。
【0051】
本明細書において引用される投与レベルを上回るレベル、又は下回るレベルもまた可能である。本発明の化合物が対象へ運搬される場合、当該化合物を注入、輸液、及び/又は摂取のための1つの投与、又は複数の投与で運搬することができる。
【0052】
対象へ移植するために有益であろう移植細胞集団の生育を促進する1つの例は、パーキンソン病(PD)を有する対象の治療においてである。PDでは、黒質中に変性変化が見出される。当該黒質はドーパミン(正常及び円滑に人々を動かすことができる化学物質)を生産する脳領域である。PDは深刻なドーパミンの不足により特徴づけられる。ドーパミンの欠乏は、PDの徴候を引き起こすと信じられている。本明細書において発表された化合物は、肝細胞及び非肝細胞の両方においてアポトーシスの発端を調節する中で役割を果たすと信じられているが、黒質の変性変化の起源が未知であることから、PDの治療のために用いることができることが期待されていなかった。同様に、移植細胞集団のエングラムのために必要な時間での移植細胞集団のアポトーシスとの関連から、移植細胞集団の生育を促進する中での使用は期待されていなかった。言い換えれば、驚くことに本発明の化合物、及び使用される化合物の量は、対象に起こる移植細胞集団のエングラムのために十分に長く、移植細胞集団のアポトーシスを阻害することができた。更に、移植されたドーパミンニューロンの欠損に関与する原因が未知であることから、移植細胞集団の生育を促進させる中で使用できることが期待されていなかった。
【0053】
実質的なエビデンスでは、アポトーシスはin vitro及びin vivoにおいてドーパミンニューロンの欠損において役割を果たすことを示す。従って、本発明が対象へ移植される細胞の生育の維持において有用であり得る場合の1つの例では、培養中及び移植中のアポトーシス経路を遮断するために、親水性胆汁酸、それらの塩、それらの類似物、又はそれらの組合せの有効量が投与され、ドーパミンニューロン残存の増強、及び黒質移植片の機能の改善を導くであろう。抗アポトーシス剤は、移植前、又は移植後の最初の数日間、アポトーシスを予防し、及び移植片残存を増進するために、移植細胞集団の調製に応用することができる。
【0054】
好適には、ウルソデオキシコール酸(UDCA)、それらの塩、それらの類似物(例えば、複合誘導体タウロウルソデオキシコール酸(TUDCA))、及びそれらの組合せは、PDを有す対象の処理において使用される移植細胞集団の生育を促進するのに有用である。例えば、当業界における標準方法により得られたヒト胚ドーパミンニューロンの懸濁物を、本発明の方法により処理することができ、且つ対象中での神経移植に使用することができる。例えばin vitroにおける処理としての、ヒトドーパミンニューロン(自家再構成)、又は当該対象以外の個体由来のヒトドーパミンニューロン(他家再構成)を、PDの治療又は予防において拡大し、且つ使用することができる。本明細書において開示されるように、移植前に細胞懸濁物にTUDCAを補充する場合、TUDCAは抗アポトーシス特質を示し、黒質移植片残存の増強を導くことができる。これは、TUDCAによる細胞懸濁物の前処理がアポトーシスを減少させることができ、そして移植した細胞の残存を増加させ、行動回復の改善をもたらすことを実証する。
【0055】
本発明の利便さを、以下の実施例により説明する。しかしながら、それらの実施例に引用された詳細な材料及びそれらの量、並びに他の条件、及び詳細事項は、当業界において広く適用するために解釈され、且つ本発明を不当に制限するという意味でない。
【実施例】
【0056】
以下の実施例は、神経移植での細胞のアポトーシスにおける親水性胆汁酸の役割を更に特徴づけ、そして天然での神経保護、及びタウロウルソデオキシコール酸(TUDCA)で誘導される神経保護のメカニズムを述べた。特に、TUDCA処理では、ドーパミンニューロン細胞死及び変質に目立った減少を導いた。更に、デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)で仲介される2'-デオキシウリジン5'-トリホスフェート(dUTP)-ビオチンニック末端標識化(TUNEL)アッセイでは、TUDCA処理された培養中のアポトーシス細胞の数が、コントロールの培養よりも劇的に少ないことを示した。
【0057】
更に、TUDCAによる細胞懸濁物は、移植前の数値と比較した場合、アンフェタミンで誘導される旋回スコアにおいて有意な減少を示した。移植後6週間のコントロールと比較した場合、TUDCA処理群の神経移植におけるチロシンヒドロキシラーゼ(TH)陽性細胞の数の有意な増加(およそ3倍)があった。アポトーシス細胞の数は、移植後4日のコントロール群より、TUDCA処理群における移植片領域でより少なかった。これらのデータは、TUDCAによる細胞懸濁物の前処理が移植細胞のアポトーシスを減少させ、且つ移植細胞の残存を増加させることができ、行動回復をもたらすことを実証する。
【0058】
材料及び方法
実験デザイン
本発明のために、細胞培養及び移植実験を行った。In vitro及びin vivo試験の両方において、無菌条件下のSprague-Dawley (SD)(Charles River Labs, Wilmington, MA)ラット14日胎児胚由来の中脳下部(ventral mesencephalic(VM))組織を発表された通り解剖した(A.Bjorklund等.,Acta.Physiol.Scand.Suppl.522:9-18;1983;P.Brundin等.,In:Conn,P.M.ed.Methods in Neurosciences,Lesions and transplantation.Academic Press,San Diego,Vol7,1991:305-326;E.M.Grasbon-Frodl等.,Brain Res.Bull.39:341-347;1996)。個々の実験のために、採取した組織片を2つの実験群:コントロール群及びTUDCA処理群に均等に分配した。当該試験は、ミネソタ大学のAnimal Care Committeeにより承認され、及びResearch Animal Resourcesの援助下で実施され、施設はAccreditation of Laboratory Animal CareのAmerican Associationにより認可された。
【0059】
細胞培養実験
アポトーシスへのTUDCAの効果、及び血清不存在条件下でのVM組織培養におけるドーパミンニューロンの残存を検査するために、並びにTUDCAの適した投与を決定するために、主にニューロン培養をSDラット胚のVM組織から調製し、そしてTUDCAを付加し、又は付加せずに培養した(Calbiochem,La Jolla,CA,0.15M中に溶解した遊離塩基(ここで”M”はモル濃度である)、NaHCO3緩衝剤)。実験では、TUDCAの用量依存的効果を試験し、そして50μM(マイクロモーラー)の濃度が適していることを見出した。従って、in vitroにおける当該培養培地を2日後血清不存在条件へ切り替えた時、TUDCAを50μMの最終濃度で培養培地に付加した。ニューロン残存及びアポトーシスは、in vitroでの2日間又は7日間の培養におけるTH陽性細胞及びTUNEL陽性細胞を数えることにより決定された。計3つの別個の細胞培養系実験を行った。
【0060】
移植実験
実験開始時で体重約250グラム(g)の計24匹の成体雌性Sprague-Dawley(SD)ラットを、神経移植の対象として使用した。その中の12匹のラットを広範囲に渡る中央線条体(mesostriatal)のドーパミン(DA)系の片側6-ヒドロキシドーパミン(6-OHDA)病変にし、12匹のラットを正常とした。
【0061】
6-OHDA病変ラット及び正常ラットを、無作為にTUDCA処理群(個々の群においてn=6)、又はビヒクルコントロール群(個々の群においてn=6)へそれぞれ割り当てた。ラットを12時間の日-夜サイクルの下で、餌と水に自由に近づけるケージごとに2匹住まわせた。ラットを発表されたNational Institutes of Healthガイドラインに従って維持及び処理した。
【0062】
TUDCA処理ラットのため、黒質組織をトリプシン処理し解離した時、50μM濃度のTUDCAを培地に付加した。その後TUDCAを含む2マイクロリットルの細胞懸濁液を、定位的にSDラットの線条体へ注入した。コントロール動物のために、同量のビヒクル溶液を培地に付加した。移植実験の第1の系では、神経移植を受けた正常ラットを、移植後4日で処理し、移植片領域でのアポトーシスを決定するため、脳部分を末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)で仲介されるdUTP-ビオチンニック末端標識化(TUNEL)アッセイのために調製した。移植実験の第2の系では、アンフェタミン誘導旋回検査を、移植前の6-OHDA病変の完全性を評価するために使用し、そして神経移植の機能効果をモニターするために移植後2週間及び6週間繰り返した。ラットを旋回行動検査の最後のセッション後に処理し、脳組織をチロシンヒドロキシラーゼ(TH)-免疫細胞化学のために処理した。移植における移植片残存をTH-陽性ニューロンの数を数えることにより評価した。
【0063】
腹側中脳組織培養
個々の実験系のために、貯蔵した24−32個の胚由来のVM組織を0.1%トリプシン(Sigma,St.Louis,MO)/0.05%DNase(Sigma,St.Louis MO)中で、摂氏37度(℃)で、20分間、培養し、そして機械的に1ミリリットル(ml)Gilsonピペット用いて解離した。解離後、当該細胞を1分当り、600回転(rpm)、5分間遠心分離し、そしてペレットをDulbecco's Modified Eagle's Medium(DMEM)(Gibco,Carlsbad,CA)中で再懸濁させた。解離した細胞の細胞数と生育能を、トリパンブルー色素排除を用いる血球計算板により評価した。100,000細胞/cm2(ウェル当り178,000細胞)の数を、4つのウェルチャンバースライド(Nunc, Rochester, NY)上へプレートし、1ミリリットル当り10ミリグラム(mg/ml)のポリ-d-リシン(Sigma,St.Louis MO)で予め覆った。解離した細胞の成育能は、95%以上であった。細胞培養は2日間、DMEM中で、10%ウシ胎仔血清を補充し、37℃で、95%空気/5%CO2湿度環境において培養した。2日後、in vitroにおいて、当該培養培地をDMEM/Ham's F12(1:1)混合物(Gibco,Carlsbad,CA)から成る血清不存在N2培地へ切り替えた。
【0064】
この時点で、いくつかの培養にTUDCAを補充した。
【0065】
片側6-ヒドロキシドーパミン病変
6-OHDA(塩酸塩、Sigma,St.Louis MO)の2つの注入は、以前に発表された通りに(W.-M.Duan等.,Neuroscience 57:261-274;1993)、equithesin麻酔(0.3ml/100g体重、腹腔内)下で右上行性中央線条体(right ascending mesostriatal)のDA経路中になされた。簡潔には、2.5マイクロリットル(μl)の6-OHDA(0.2mg/mlのアルコルビン酸塩中に、3マイクログラム/マイクロリットル(μg/μl)、遊離塩基)の第一の注入は、以下の調整:ブレグマへ4.4ミリメートル(mm)下に;中線へ1.2mm横に;硬膜表面へ7.8mm腹側に;両耳間のラインの2.4mm下に配置したtooth-barで実施した。2μlの6-OHDAの第二の注入は、以下の調整;ブレグマへ4.0ミリメートル(mm)下に;中線へ0.8mm横に;硬膜表面へ8.0mm腹側に;両耳間のラインの3.4mm上に配置したtooth-barで実施した。回収される前に6-OHDAを1μl/分の速度で注ぎ、そしてカニューレを更に4分間置いたまました。
【0066】
アンフェタミン誘導旋回検査
病変手術後2から3週間、ラットに生理食塩水中のキログラム当り5ミリグラム(mg/kg)のd-硫酸アンフェタミン(Sigma,St.Louis MO)を腹腔内に投与し、そしてそれらの旋回行動を、自動化した旋回計(rotometer)器中で、90分間モニターした(U.Ungerstedt等.,Brain Res.24:485-493;1970)。少なくとも7つの1分当りの病変側に向かった全同側回転のネット旋回非対称を示した12匹のラットを選定し、そしてネット旋回非対称スコアにより均衡化された2群に分配した(病変側とは対側の回転の数を、病変側と同側の回転の数から差し引いた)。その後旋回検査を、上記の実験デザインの通り、2つの異なる時点で繰り返した。ラットは機能的な移植片を有すると考えられる移植前値の50%未満の旋回非対称での減少を示した。
【0067】
黒質組織の調製及び移植
細胞懸濁技術を、以前に発表された通り神経移植を実施するために使用した(A.Bjorklund等.,Acta.Physiol.Scand.Suppl.522:9-18;1983;P.Brundin等.,In:P.M.Conn,ed.,Methods in Neurosciences,Lesions and Transplantation,Academic Press,San Diego,Vol7,1991:305-326)。簡潔には、頭部から臀部まで13-14mmの長さの14日の妊娠期間に相当する胚を有すVM組織を胚から得た。ドナー組織の解剖及び調製をHank's均衡化塩溶液(HBSS)(Gibco,Carlsbad,CA)において、無菌条件で実施した。深い抱水クロラール麻酔(250mg/kg、腹腔内)下にある動物から子宮角を子宮摘出により摘出し、そしてHBSSを含むプラスチックチューブ中に設置した。胚を子宮から摘出し、そして胚脳を個々に暗い背景のペトリ皿に移動させた。VMを、解剖顕微鏡下で、虹彩切除鋏及び細いwatchmaker's鉗子を用いて、個々の脳から切除した。当該切除片を貯蔵し、そして0.1%トリプシン(Sigma,St.Louis MO)/0.05%DNase(Sigma,St.Louis MO)/HBSSにおいて、摂氏37度で、20分間培養した。4-5回0.05%DNase/HBSSですすいだ後、当該組織を、火造りパスツールピペット(0.5-1.0ミリリットルの内部直径を有す)を用いて単細胞とより小さな細胞集団の混合物へと穏やかに解離させた。細胞懸濁物の最終溶液を、それぞれ切除したVM組織片を付加したHBSSを5マイクロリットルになるように調整した。移植前及び移植後、当該細胞懸濁物の成育能をトリパンブルー色素排除法により評価した。本研究での全ての細胞懸濁物の成育能は、95%を超えた。
【0068】
細胞懸濁物(VMの1/3に相当するおよそ100,000細胞を含む)の2ミリリットルの一つの沈殿物を、Kopf stereotaxic frameに固定したequithesin(3ml/kg、腹腔内)麻酔した対象ラットの右線条体中に定位的に移植した。スチールカニューレ(内部直径=0.25mm、外部直径=0.47mm)を備えた10マイクロリットルHamilton microsyringe (Hamilton Co.,Reno,NV)を用いた注入は、以下:ブレグマへ1.0mm吻側に;中線へ3.0mm横に;硬膜表面へ4.5mm腹側に、ゼロで配置したtooth-barで調整された。注入は2分かけて実施し、そして注射針を引き抜く前に更に2-4分間左側に置いた。
【0069】
免疫細胞化学
アビジン-ビオチン複合免疫ペルオキシダーゼ技術は、以前発表された通り免疫細胞化学的染色を視覚化するために用いた(W.-M.Duan等.,Neuroscience100:521-530;2000)。細胞培養実験のための培養をリン酸緩衝生理食塩水(PBS、0.2モル濃度、pH7.4)で一回すすぎ、引き続き4%のホルムアルデヒドで20分間、室温で固定した。その後培養を免疫細胞化学的に処理した。移植実験のためにラットを、致死量(500mg/kg、体重、腹腔内)の抱水クロラールで深い麻酔にかけ、そして噴門経由で(transcardially)、0.1モル濃度のPBSによりかん流し、引き続き冷却4%ホルムアルデヒドによりかん流した。その後脳を摘出し、そして同一の固定剤中で4時間、後固定化し、そして20%スクロース中に、摂氏4度で、それらが沈むまで置いた。切片を、凍結スライドマイクロトーム上で30マイクロメーターの厚さで冠状にカットした。移植片領域の至るところにある4つの隣接した切片の一式を4つのガラス瓶に集めた。以下の第一の抗体を、TH(1:500Pel-Freez,Rogers AR)に対して使用した。ビオチン化したヤギ抗ウサギ(ラットに吸収された)免疫グロブリン(1:200)(Vector Laboratories,Inc.,Burlingame,CA)を第二の抗体として使用した。切片をABC溶液(Vectastain ABC Elite kit,Vector Laboratories Inc.)中で培養し、引き続き3,3'-ジアミノベンジジン溶液(Vectastain DAB kit, Vector Laboratories Inc.)による発育により培養し、免疫反応性産物を可視化する。染色後、切片を超凍結顕微鏡用スライド(Fisher Scientific,Pittsburgh, PA)上にのせ、等級化されたアルコール濃度を上げることを通して脱水し、キシレン中で氷解し、そしてDPX封入剤(Fluka、スイス)を用いてスリップをカバーした。
【0070】
末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ仲介dUTP-ビオチンニック末端標識化アッセイ
【0071】
TUNELアッセイを、以前発表された通り、in situでのアポトーシス検出キット(ApopTagの商標で販売されている)を製造業者のプロトコール(Intergen,Purchase,NY)に従い使用することにより実行した(W.-M.Duan等.,Neuroscience100:521-530;2000)。簡潔には、移植組織を含む3-4の切片を、移植後4日の個々の移植動物から選定した。それらを以下の染色プロトコールに従うために、超凍結顕微鏡用スライド(Fisher Scientific, Pittsburgh, PA)上にのせた。当該切片をPBS中の3%過酸化水素中で最初にクエンチして内因性ペルオキシダーゼを除去し、その後続けて、ジゴキシゲンン溶液に対するTdT酵素及びペルオキシダーゼ-結合抗体の作用強度の中で培養した。3,3'-ジアミノベンジジン(Sigma,St.Louis MO)を、反応産物を視認化するための色素原として使用した。メチルグリーンによる対比染色の後、当該切片をアルコール中で脱水し、そしてキシレン中で氷解し、そしてPermount封入剤(Fisher Scientific,Fair Lown,NJ)用いてスリップをカバーした。
【0072】
形態学的評価
結果の解釈において被験者の偏りを回避するために、形態学的評価の全てを、盲検方法で染色した切片上で、明視野照明を有す顕微鏡下で実施した(W.-M.Duan等.,Neuroscience100:521-530;2000)。
【0073】
細胞カウント
細胞培養実験のために、以前発表された通り(E.M.Grasbon-Frodl等.,Brain Res.Bull.39:341-347;1996)、TH-陽性細胞の数及び細胞総数を、400-平方μmの目盛り格子の補助により、20倍及び40倍の倍率でそれぞれ評価した。体系的にそれぞれの培養ウェルの表現領域をサンプル化するために、8つの分野を選定した。サンプル化した領域を個々のウェルの総面積の1−3%にした。移植実験のために、移植片中のTH陽性ニューロンを、ニコン光学顕微鏡(ニコン、日本)中の10倍対物レンズを用いて、全て4番目の切片上でカウントした。それらが少なくとも1つの神経突起を表す場合、又は視認できる核を有す場合、細胞のみをカウントした。20倍対物レンズを用いて挿入された格子によりTH-免疫反応性細胞の平均直径を計測後、Abercrombie formula(M.Abercrombie,Anat.Rec.94:239-247;1946)に従い、TH-免疫反応性ニューロンの総数を、補正率(2.8)をおよそのカウント数に掛け合わせることにより計算した。
【0074】
TUNEL-陽性細胞カウント
細胞培養実験のために、TUNEL-陽性細胞の数を、400-平方μmの目盛り格子の補助により400倍に拡大して評価した。6つの分野をそれぞれの培養ウェルから体系的に選定した。移植実験のための移植片領域中のTUNEL-陽性細胞を、動物ごとに3-4切片中でカウントした。TUNEL-陽性細胞の平均数は、1の動物の数値で計算して示した。
【0075】
容量分析
線条体内神経移植片の容量を以前に発表された通り(W.-M.Duan等.,Eur.J.Neurosci.10:2595-2606;1998)イメージ分析システムを補助するコンピューターを使用して分析した。簡潔には、移植片を有すTH-免疫染色化切片の全てを、高解像度デジタルカメラ(COOLPIX 950,ニコン、日本)に接続したニコン光学顕微鏡(ニコン、日本)における1倍対物レンズを用いてデジタル化した。イメージを最初に集積し、そしてコンパクトフラッシュ(登録商標)カードに保存した。その後、当該コンパクトフラッシュ(登録商標)カードをPentium(登録商標) III PC(Dell,Dimension XPS T700r,米国)に接続したコンパクトフラッシュ(登録商標)カードリーダーを用いて読み取り、そしてイメージをソフトウェアパッケージ(Scion Image,Version Beta 4.0.2,Scion Corporation,Frederick,MD)を用いて分析した。いずれの切片中の移植片を、スクリーン上、及び測定した表面上に手動で描いた。ピクセルの数を引き続き平方ミリメートルへ変換した。移植容量を移植面積、切片の厚さ、及び頻度に基づき計算した。
【0076】
統計学的分析
テキスト及び図の中のデータは平均±SEMとして表す。統計学的比較は、2つの因子の分散分析(ANOVA)を用いてパラメーター的に実施し;1つの因子のANOVAは、群間比較のためのpost-hoc Scheffe's F-検定又はStudent's t-検定を用いて実施した。統計学的に有意なレベルを、p<0.05と設定した。
【0077】
結果
細胞培養実験
ドーパミンニューロン残存。In vitroにおける2日目に、早期発育段階にあることを示すTH-陽性細胞を短い工程で処理した。いくつかの工程は、それらの近傍にある他の細胞からの工程と連絡する(データは示されていない)。In vitroにおける7日目に、ドーパミンニューロンはより成熟した形態を示した。それらは明確な静脈瘤様腫脹によるいくつかの長い工程を送り出す(データは示されていない)。この時点で、細胞体、及び工程のいくつかでは、位相差顕微鏡の下で、それらの変質が起こっているかもしれない粒状が現れた。7DIVコントロール培養の中で、TH-陽性ニューロン及び全細胞に有意な細胞欠損があった(p<0.01、post-hoc Scheffe's F-検定による一つの因子のANOVA)。実際には、TH-免疫陽性ニューロンの数は、2DIV培養における数のわずか30%であった。この劇的な細胞欠損は、7DIV TUDCA-処理培養において観察されなかった(データは示されていない)。2DIV培養及びTUDCA-処理培養の間で、TH-陽性細胞の数においての差異は見出されなかった(p>0.05)(図1)。TUDCAは用量依存的にこの神経保護的効果を発揮した。
【0078】
アポトーシス。図2において説明されるように、TUNEL-陽性細胞の数は、2DIVコントール及び7DIV TUDCA-処理培養よりも7DIVコントロール培養において有意に高かった(p<0.01,post-hoc Scheffe's F-検定による1つの因子のANOVA)。
【0079】
移植実験
旋回行動。アンフェタミン誘導旋回非対称スコアを図3に要約する。移植後2週間で、6匹のTUDCA-処理ラットのうちの4匹は、ネットモーター(net motor)非対称性において、移植前数値と比較した場合、少なくとも50%減少を示した。対照的に、モーター非対称性において50%減少を見せたコントロール動物はなかった。移植後6週間で、コントロール群及びTUDCA処理群の両群全てのラットは、モーター非対称性スコアにおいて>50%減少を示した。
【0080】
2つの因子のANOVAでは、検査期間中、ネット旋回スコアの有意なX群時間相互作用(Time interaction)を示し(F(l,2)=43.83,p<0.001)、TUDCA-処理ラットがコントロールラットよりも迅速な行動回復を示した。実際に、ネット旋回数値の平均値は、TUDCA-処理群における移植前の数値と比較した場合、移植後2週間後有意に減少した(p<0.01, paired Student's t検定)が、コントロール群と比較した場合減少しなかった(p>0.05)。更に、post-hoc Scheffe's F-検定による一つの因子のANOVAでは、移植後2週間のコントロール群よりもTUDCA-処理群がより低いネット非対称性数値を示すことが明らかにされた(F(1,10)=5.51,p<0.05)。手術後6週間で、両群はモーター非対称性スコア(paired Student's t-検定,p<0.05)を有意に減少させ、両群間にもはやいかなる差異もなかった(一つの因子のANOVA,p>0.05)。
【0081】
移植片残存。移植の大部分は、線条体の中心で、且つ卵型で認識できた。それらは多くのTH-免疫反応性ニューロン及び繊維を含んだ(図4)。移植のいくつかは横たわっている脳梁、及びカニューレ通路に沿った前頭皮質へ誤って行われた。図5は、移植後6週間のコントロール群及びTUDCA処理群における移植片中のTH-免疫反応性ニューロンの数の平均値を要約する。移植片中のTH-免疫反応性ニューロンの数の平均値は、コントロール群よりもTUDCA-処理群において有意に大きかった。コントロール群と比較した場合の移植片中のTH-免疫反応性ニューロンの平均数の3倍を上回る増加を、TUDCA-処理群において観察した(引き続きpost-hoc Scheffe's F-検定,F(l,10)=6.65による1の因子のANOVA検定、p<0.05)。また当該移植片容量は、コントロール群よりもTUDCA-処理群で有意に大きかった(引き続きpost-hoc Scheffe's F-検定,F(1,10)=8.22による1つの因子のANOVA検定、p<0.05)。移植後6週間で、コントロール動物において典型的な形態学的黒質移植片を示す。TH-免疫陽性ニューロンの大部分は、移植片の周辺に位置し、比較的にTH-免疫反応性を欠いた移植片を中心に残す(図4D)。しかしながら、それは、この時点で典型的な形態学的黒質移植片を欠いたTUDCA-処理動物中の移植片であると思われる。大部分のTUDCA-処理動物は移植片領域中でTH-免疫反応性ニューロンの更なる分布を見せた(図4C)。TH-免疫反応性ニューロンは、いくつかの明確に染色された神経突起と共に、多極の細胞体を有す(図4E)。移植片により再度神経支配された宿主線条体の領域を、コントロール群よりもTUDCA処理群により多く見出した(図4A及びB)。
【0082】
アポトーシス
移植後4日のコントロール群及びTUDCA処理群の移植された領域でのTUNEL-陽性細胞の平均数を図6に要約する。アポトーシス細胞の数は、コントロール群よりもTUDCA-処理群のほうが有意に小さかった(p<0.01,post-hocScheffe's F-検定、F(l,10)=20.06による一つの因子のANOVA検定)。核内のDNA分解による多くの数のアポトーシス細胞は、コントロール群中で群がり、且つ移植片中に位置した(データは示されていない)。数個のアポトーシス細胞だけを、TUDCA-処理群中の移植片中のいくつかのパッチ中で観察した(データは示されていない)。時折、数個の散在したアポトーシス細胞を、両群中の移植片が宿主組織を取り囲む中で見出した。
【0083】
上記の実施例は、TUDCAの適用がin vitro及びin vivoにおけるドーパミンニューロンの残存を促進させることを示す。更に、TUDCAはVM組織培養及び移植におけるアポトーシスを有意に減少させることができ、TUDCAが主に抗アポトーシスメカニズムを通したドーパミンニューロン残存への有益な影響を発揮することを示唆する。コントロール群と比較した場合のTUDCA-処理群における移植片残存の3倍の改良は、行動非対称の迅速な改善を導く。これらの結果は、アポトーシスがドーパミンニューロンの欠損に寄与するという理論に拘束されない、更なる支えとなるエビデンスを裏付け、且つ提供する。この劇的な細胞欠損は、抗アポトーシス剤が、組織調製に適用される場合、又は移植後速やかに適用される場合に予防することができる。
【0084】
中脳培養中のニューロン死が血清喪失により引き起こされる場合、培養系はin vitroモデルにおいてアポトーシスを減少させることが周知である。このin vitroモデルは、抗アポトーシス試薬、及び神経栄養因子のVM組織培養中、及び残存ドーパミンニューロンにおいて発生するアポトーシスへの効果を調査するために広範囲に渡って使用されている(R.L.Branton等.,Exp.Neurol.160:88-98;1999;E.D.Clarkson等.,Neuroreport 7:145-149;1995;E.D.Clarkson等.,Cell Tissue Res.289:207-210;1997;G.S.Schierle等.,Nat.Med.5:97-100;1999;W.M.Zawada等.,Exp.Neurol.140:60-67;1996)。上記のデータは、培養培地が血清不存在条件へ切り替わった後、ドーパミンニューロンの細胞欠損があることを示す。TUNELアッセイ結果は、大部分の細胞欠損が、アポトーシスによりもたらされ得る可能性があることを示唆する。当該データはTUDCAの培養への付加は、アポトーシス細胞の数の減少を導き、そしてドーパミンニューロンの数の増加を導くことも示し、TUDCAが、主に抗アポトーシスメカニズムを通して、ドーパミンニューロンに神経保護的効果を発揮することを示す。
【0085】
早期の研究では、移植後約80-95%の移植されたDAニューロン死が示された(P.Brundin等.,Prog.Brain Res.71:293-308,1987;N.Nakao等.,Proc.Natl.Acad.Sci.米国91:12408-12412,1994;H.Sauer等.,Restor.Neurol.Neurosci.2:123-135,1991;H.Sauer等.,Exp.Brain Res.90:54-62,1992;G.S.Schierle等.,Nat.Med.5:97-100,1999;A.Zuddas等.,Eur.J.Neurosci.3:72-85,1991)。神経移植における細胞死は、近年、移植手順の間の4つの段階において起こることが発見された(P.Brundin等.,Cell Transplant.9:179-195;2000.)。それでもなお、細胞欠損の大多数は、移植後数日以内に起こるというエビデンスが示された(W.-M.Duan等.,Exp.Brain Res.104:227-242,1995;M.Emgard等.,Exp.Neurol.160,279-288,1999;G.S.Schierle等.,Nat.Med.5:97-100,1999;W.M.Zawada等.,Brain Res.786,96-103;1998)。
【0086】
いくつかの因子がこの細胞死に寄与することが実証された。移植手順の間の機械的な損傷、酸素欠乏症、及び栄養不足は迅速な細胞死及び反応性酸素種の産生を導き得る。多種のフリーラジカルは、その後、移植されたドーパミンニューロンのアポトーシス細胞死を引き起こし得る。線条体へ移植される黒質移植片は、他家移植片である。線条体中の新しい環境では好ましい黒質移植片残存がなく、神経移植片は十分な神経栄養支援を欠くであろう。細胞懸濁物の調製の間に使用されるTUDCAを補充した培地は、神経移植片の残存をおよそ3倍に増加させ、そして当該移植片の機能も改善させた。理論に拘束されることは望まないが、これらのデータは移植片中の大部分の細胞欠損がアポトーシスに密接に関連しているというエビデンスを提供する(G.S.Schierle等.,Nat.Med.5:97-100,1999;W.M.Zawada等.,Brain Res.786,96-103;1998)。更に、抗酸化剤、及び例えばTUDCAのような抗アポトーシス剤は、移植された黒質移植片の細胞死を予防する追加の効果を提供するための組合せにおいて使用することができた。
【0087】
行動的影響の早期の開始は処理群において発生し、そして全てのラットは>50%のネットモーター非対称性の減少を示した。行動回復の迅速な開始の隠れたメカニズムを更に評価する必要があるが、制限されない1つの可能性の説明は、それらの抗アポトーシス剤及び神経栄養因子の投与は、移植したドーパミンニューロンの迅速な成熟を促進することができた。更に、以前の研究では、線条体内のTH-陽性移植片ニューロンの一定の数が、50%の行動回復を導くために要求されることが実証され、そして100%を超える軽度なプラトー回復レベルが2000超の範囲にある線条体内TH-陽性移植片ニューロンが見出された。この現象は、ドーパミンニューロンの一定の数が、移植後の早期時点で残存している場合、同様の数の移植されたドーパミンニューロンは、より遅い時点で残存するだろう、との事実に影響され得る(W.-M.Duan等.,Exp.Brain Res.104:227-242,1995;W.-M.Duan等.,Neuroscience 100:521-530,2000)。これらの観察は、移植後の遅い時点よりも、早期時点での神経移植片における細胞欠損を予防するための神経保護的戦略を適用する価値を強調する。細胞数と行動の間の明白な矛盾のための他の可能な説明は、行動修正を誘導するために必要とされるドーパミン神経支配のレベルである。このレベルは、移植された細胞のより多くの残存があるから、TUDCA処理された移植片において早期時点で達成される。追加の工程を確立し、そして宿主線条体を刺激し始める非TUDCA処理細胞として、それらは最終的に運動機能非対称性を修正することができる神経支配を提供するであろうが、TUDCAで処理された細胞と比較して時間スケールが遅延したものであろう。
【0088】
カスパーゼ活性は、アポトーシス中で役割を果たすことが信じられている(G.S.Salvesen等.,Cell 91:443-446,1997)。カスパーゼ活性化経路は、ミトコンドリアに関与する(D.R.Green等.,Science 281:1309-1312,1998;G.Kroemer等.,Nat.Med.6:513-519,2000)。TUDCAはミトコンドリア膨張を妨げ、且つミトコンドリア外膜を崩壊させることが示された。膜安定性は、前-アポトーシス分子、シトクロムC放出、及びシトクロムCに仲介される下流の事象、例えばカスパーゼ活性における変化を導くことを阻害することができる。TUDCAは、線条体組織培養中で、有意に3-ニトロプロピオン酸(3-NP)で仲介される神経細胞死を減少させると信じられている。更に、TUDCAの全身投与は、主にハンチントン病の3-NP病変化ラットモデルにおける抗アポトーシスメカニズムを通した線条体の変質を減少させ、そして神経学的欠損を改善させることができる(C.D.Keene等.,Exp.Neurol.171;351-360,2001)。
【0089】
移植後速やかに死ぬ大部分の移植されたドーパミンニューロンとして、最適な移植利益を得るため、移植片残存を増加させる努力に焦点があてられた。実際に多くの実験的研究では、移植片残存と強く相関する行動回復の範囲が示された(P.Brundin等.,In:S.B.Dunnett and A.Bjorklund,eds.,Functional neural transplantation,New York:Raven Press;1994:9-46;N.Nakao等.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:12408-12412,1994;H.Sauer等.,Exp.Brain Res.90:54-62,1992)。更にパーキンソン病における神経移植による臨床試験では、移植後の徴候改善の範囲が、神経移植片残存及び移植片神経再生の範囲に密接に関連することが実証された(P.Brundin等.,Brain 123:1380-1390,2000;J.H.Kordower等.,J.Comp.Neurol.370:203-230,1996;P.Piccini等.,Nat.Neurosci.2:1137-1140,1999)。多くの数の移植されたドーパミンニューロンは、一般的によりはっきりした臨床的改善をもたらす。しかしながら、Freed等による最近の研究では、臨床改善のための移植ドーパミンニューロンの要求数に関する論争に拍車がかけられた(P.Brundin等.,Nat.Med.7:512-513,2001;S.B.Dunnett等.,Nat.Rev.Neurosci.2:365-369,2001;C.R.Freed等.,N.Engl.J.Med.344:710-719,2001)。パーキンソン病のための胚組織移植の二重盲検プラセボコントロール臨床試験では、彼等は移植された対象の小さい集団では、最終的にジストニー及びジスキネジーを発達させることを報告し、そしてそれらの副作用は移植部位における継続した繊維増生によるものであり、対象脳中の比較的過剰なドーパミンの生産を導くことを主張した。従って彼等はこの問題を解決するために、更なる臨床試験でより少ない組織を移植することを提案した。しかしながら、適度な数のドーパミンニューロンが試験中での2つの死体解剖のケースにおいて残存していることが報告されただけである。更に、他の因子、例えば、組織調製、移植技術、及び移植位置は、移植に関連した副作用の発生に寄与し得る。
【0090】
更なる例として、TUDCAはin vitroにおいて2日後、膵島細胞のアポトーシスを効率的に減少もさせた。TUNEL-陽性細胞の数は、未処理コントロールでおよそ29個であったが、TUDCAに曝された細胞では12個のみであった。TUDCAによるアポトーシスの50%を上回る減少は、単離手順の間のTUDCAへの細胞の暴露後に達成され、その後、in vitroでの培養中で胆汁酸と共に培養した。
【0091】
全患者の完全な開示、特許文献、及び本明細書において引用した刊行物は、参考文献として組み入れられる。前記の詳細な説明及び実施例は、明瞭な理解のためだけに提供した。不用な制限がそこから理解されることはない。本発明は、当業者にとって明確である改変のために示され、且つ記載された厳密な詳説に限定されず、請求項により限定された発明の内部を含むであろう。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】図1は、腹側中脳(VM)組織培養中の残存TH-陽性ニューロン(黒帯)及び全細胞(白帯)へのTUDCA(50μM/ml)の効果を要約する帯図である。帯は3つの独立した実験(個々の培養条件に4つ一組のウェルを有する)の平均±S.E.M.を表す。†*p<0.01は、7DIV+TUDCA培養(post-hoc Scheffe's F-検定による1つの因子のANOVA)と有意に異なる。
【0093】
【図2】図2は、VM組織培養中のアポトーシスへのTUDCA(50μM/ml)の効果を説明する帯図である。帯は3つの独立した実験(個々の培養条件に4つ一組のウェルを有する)の平均±SEMを表す。*p<0.01は、2DIV及び7DIV+TUDCA培養(post-hoc Scheffe's F-検定による1つの因子のANOVA)と有意に異なる。
【0094】
【図3】図3は、コントロール群及びTUDCA処理群の90分検査セッションにおけるネット同側(ipsilateral)アンフェタミン-誘導旋回非対称性(病変の同側を回転させることにより対側の病変を減じる分ごとの十分な回転)を説明する帯図である。ラットを移植前、並びに移植後2週間及び6週間に検査した。個々の帯は群平均を表し、そしてエラー帯はS.E.Mを意味する。移植前の値と比較した場合、*p<0.01(paired Student t-検定)であり、且つ、コントロール群と比較した場合、p<0.05(post-hoc Scheffe's F-検定による1つの因子のANOVA)である。シンボル†‡は、移植前の値と比較した場合、p<0.01(paired Student t-検定)である。
【0095】
【図4】図4A-4Eは、TH-免疫細胞化学のために処理された移植した線条体を通した冠状切片の顕微鏡写真である。写真は移植後6週間にTUDCA-処理群(A、C、及びE)、並びにコントロール群(B及びD)におけるラットを表すことによる典型的な移植を図解する。(A)及び(B)は、低い倍率で移植した脳の概観を実証する。移植片と隣接する宿主線条体領域は、移植されたニューロン由来のTH-免疫陽性繊維によって再神経支配される。Bでのスケール帯=1mm、Dでのスケール帯=100μm及びEでのスケール帯=25μmである。
【0096】
【図5】図5は、移植後6週間のコントロール群及びTUDCA-処理群におけるTH-免疫陽性細胞及び移植容積の平均数の帯図である。帯は群平均値±S.E.Mを表す。TUDCA-処理群と比較した場合、*p<0.01(post-hoc Scheffe's F-検定による1つの因子のANOVA)。である。
【0097】
【図6】図6は移植後4日のコントロール群及びTUDCA-処理群の移植片領域におけるアポトーシス細胞の平均数を説明する帯図である。移植片領域におけるアポトーシス細胞の数は、コントロール群より、TUDCA-処理群において有意に少なかった。アスタリスクは、コントロール群と比較してp<0.01を示す(post-hoc Scheffe's F-検定による1つの因子のANOVA)。エラー帯はS.E.Mを表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移植細胞集団の生育を促進するための方法であって、親水性胆汁酸、それらの塩、それらの類似物、及びそれらの組合せから成る群から選定される有効量の化合物と当該移植細胞集団を接触させることを含んで成る方法。
【請求項2】
前記移植細胞集団の細胞が分化細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記移植細胞集団が前駆細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記接触がin vitroにおいて発生する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記接触がin vivoにおいて発生する、請求項5に記載の方法。
【請求項6】
前記接触が前記移植細胞集団のドナー中で発生する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記化合物と前記移植細胞集団との接触が、対象中へ当該移植細胞集団を移植する前に当該化合物と当該移植細胞集団を接触させることを含んで成る、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記対象がヒトである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記化合物により前記対象を処理することを更に含んで成る、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記化合物により前記対象を処理することが、当該対象に前記移植細胞集団を移植する前に当該対象へ当該化合物を投与することを含んで成る、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記化合物により前記対象を処理することが、当該対象に前記移植細胞集団を移植した後に当該対象へ当該化合物を投与することを含んで成る、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記化合物により前記対象を処理することが、当該対象に前記移植細胞集団を移植した後に当該対象へ当該化合物を投与することを含んで成る、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記対象を処理することが、前記化合物により当該対象を非経口的に処理することを含んで成る、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記対象を処理することが、前記化合物により当該対象を経口的に処理することを含んで成る、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記化合物と前記移植細胞集団を接触させることが、医薬的に許容され得る担体との組合せの中で当該移植細胞集団を接触させることを含んで成る、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記移植細胞集団の細胞が、自家(autologous)細胞、他家(heterologous)細胞、又は異種(xenologous)細胞を含んで成る、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記移植細胞集団の細胞が、自家組織、他家組織、又は異種組織の少なくとも1部分を含んで成る、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記移植細胞集団が臓器である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記臓器が肝臓、腎臓、心臓、肺、又は膵臓である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記対象に前記移植細胞集団を移植した後、前記化合物により当該対象を処理することを更に含んで成る、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記対象に前記移植細胞集団を移植した後、前記化合物により対象を処理することを更に含んで成る、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
パーキンソン病を有するヒトを治療するための方法であって、in vitroにおいて医薬的に許容され得る担体との組合せにある有効量のタウロウルソデオキシコール酸と移植細胞集団を接触させ、ここでの当該移植細胞集団は分化細胞であり;そして当該ヒトへ当該移植細胞集団を移植することを含んで成る方法。
【請求項23】
パーキンソン病を有する対象を治療するための方法であって、ウルソデオキシコール酸、それらの塩、それらの類似物、及びそれらの組合せから成る群から選定された有効量の化合物と移植細胞集団を接触させ、当該移植細胞集団の生育を促進させ;そして対象へ当該移植細胞集団を移植することを含んで成る方法。
【請求項24】
前記ウルソデオキシコール酸類似物が複合誘導体を含んで成る、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記複合誘導体がタウロウルソデオキシコール酸である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記対象がヒトである、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記細胞が分化細胞である、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記細胞が前駆細胞である、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記接触がin vitroにおいて発生する、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
前記接触がin vivoにおいて発生する、請求項23に記載の方法。
【請求項31】
前記接触が前記移植細胞集団のドナー中で発生する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記化合物と前記移植細胞集団を接触させることが、前記対象に当該移植細胞集団を移植する前に当該化合物と当該移植細胞集団を接触させることを含んで成る、請求項23に記載の方法。
【請求項33】
前記化合物により前記対象を処理することを更に含んで成る、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記化合物により前記対象を処理することが、当該対象に前記細胞を移植する前に当該対象に当該化合物を投与することを含んで成る、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記化合物により前記対象を処理することが、当該対象に前記細胞を移植した後に当該対象に当該化合物を投与することを含んで成る、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記化合物により前記対象を処理することが、当該対象に前記細胞を移植した後に当該対象に当該化合物を投与することを含んで成る、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記対象を処理することが、前記化合物により当該対象を非経口的に処理することを含んで成る、請求項23に記載の方法。
【請求項38】
前記対象を処理することが、前記化合物により当該対象を経口的に処理することを含んで成る、請求項23に記載の方法。
【請求項39】
前記化合物と前記移植細胞集団を接触させることが、医薬的に許容され得る担体との組合せにおいて当該移植細胞集団を接触させることを含んで成る、請求項23に記載の方法。
【請求項40】
前記細胞が自家細胞、他家細胞、又は異種細胞を含んで成る、請求項23に記載の方法。
【請求項41】
前記細胞が自家組織、他家組織、又は異種組織の少なくとも1部分を含んで成る、請求項23に記載の方法。
【請求項42】
親水性胆汁酸、それらの塩、それらの類似物、及びそれらの組合せから成る群から選定される化合物により移植細胞集団のドナーを処理することを含んで成る方法。
【請求項43】
前記親水性胆汁酸がウルソデオキシコール酸を含んで成り、及び前記ドナーを処理することが当該ウルソデオキシコール酸により当該ドナーを処理することを含んで成る、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記親水性胆汁酸がタウロウルソデオキシコール酸を含んで成り、及び前記ドナーを処理することが当該タウロウルソデオキシコール酸により当該ドナーを処理することを含んで成る、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記移植細胞集団の前記ドナーが生存している、請求項42に記載の方法。
【請求項46】
前記ドナーを処理することが、当該ドナー由来の前記移植細胞集団の摘出前に前記化合物により当該ドナーを処理することを含んで成る、請求項42に記載の方法。
【請求項47】
前記ドナーを処理することが、当該ドナー由来の前記移植細胞集団の摘出中に前記化合物により当該ドナーを処理することを含んで成る、請求項42に記載の方法。
【請求項48】
前記ドナーを処理することが、当該ドナー由来の前記移植細胞集団の摘出後に前記化合物により当該ドナーを処理することを含んで成る、請求項42に記載の方法。
【請求項49】
前記移植細胞集団が、前記ドナーの臓器の少なくとも1部分である、請求項42に記載の方法。
【請求項50】
前記臓器の少なくとも1部分がドナーの全体臓器である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記ドナーを処理することが、前記化合物により当該ドナーを非経口的に処理することを含んで成る、請求項42に記載の方法。
【請求項52】
前記ドナーを処理することが、前記化合物により当該ドナーを経口的に処理することを含んで成る、請求項42に記載の方法。
【請求項53】
前記化合物により前記ドナーを処理することが、医薬的に許容され得る担体との組合せの中で前記移植細胞集団を接触させることを含んで成る、請求項42に記載の方法。
【請求項54】
親水性胆汁酸、それらの塩、それらの類似物、及びそれらの組合せから成る群から選定される化合物により移植細胞集団のための対象を処理することを含んで成る方法。
【請求項55】
前記親水性胆汁酸が、ウルソデオキシコール酸を含んで成り、及び前記対象を処理することが当該ウルソデオキシコール酸により当該対象を処理することを含んで成る、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記親水性胆汁酸が、タウロウルソデオキシコール酸を含んで成り、及び前記対象を処理することが当該タウロウルソデオキシコール酸により当該対象を処理することを含んで成る、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
前記対象を処理することが、当該対象中に前記移植細胞集団を移植する前に前記化合物により当該対象を処理することを含んで成る、請求項54に記載の方法。
【請求項58】
前記対象を処理することが、当該対象中に前記移植細胞集団を移植する間に前記化合物により当該対象を処理することを含んで成る、請求項54に記載の方法。
【請求項59】
前記対象を処理することが、当該対象中の前記移植細胞集団を処理することを含んで成る、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記対象を処理することが、当該対象中に前記移植細胞集団を移植した後に前記化合物により当該対象を処理することを含んで成る、請求項54に記載の方法。
【請求項61】
前記移植細胞集団が臓器の少なくとも1部分である、請求項54に記載の方法。
【請求項62】
前記臓器の少なくとも1部分が、全体臓器である、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記対象を処理することが、前記化合物により当該対象を非経口的に処理することを含んで成る、請求項54に記載の方法。
【請求項64】
前記対象を処理することが、前記化合物により当該対象を経口的に処理することを含んで成る、請求項54に記載の方法。
【請求項65】
前記化合物により前記対象を処理することが、医薬的に許容され得る担体との組合せの中で前記移植細胞集団を接触させることを含んで成る、請求項54に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2006−514097(P2006−514097A)
【公表日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−571396(P2004−571396)
【出願日】平成15年4月2日(2003.4.2)
【国際出願番号】PCT/US2003/009819
【国際公開番号】WO2004/096123
【国際公開日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(305023366)リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミネソタ (39)
【Fターム(参考)】