説明

細胞選別装置

【課題】 血液中の細胞から目的とする細胞を好適に選別することが可能な細胞選別装置を提供する。
【解決手段】 被検体から血液を取り出して体外で循環させる体外循環系10と、血液中に含まれる細胞に測定光を供給し、細胞自体または細胞の核の体積に関する物理量についての細胞情報を光学的に測定する細胞測定部20と、測定された細胞情報を参照して細胞を分離する細胞分離部30とによって細胞選別装置を構成する。細胞分離部30は、細胞測定部20で測定された細胞情報、及び癌細胞などの特定種類の細胞を選別するために設定された選別条件に基づいて、細胞が選別条件を満たす場合にその細胞を分離させ、それ以外の細胞を体外循環系10を介して体内に戻すようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液中の細胞から特定種類の細胞を選別するための細胞選別装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
転移癌の治療や、癌の転移メカニズムの詳細は、未だに解決されていない問題である。例えば、癌細胞は血管を通って他の臓器へと転移することが知られているが、その詳細なメカニズムは解明されていない。血液中の癌細胞を特定し、その数を数える等の方法により、癌の予後の予測や治療効果の評価などに利用できる可能性がある(例えば文献 "The New England Journal of Medicine Vol.351, pp.781-791(2004)" 参照)。また、血液中の癌細胞を除去することで、転移の確率を低下できると推定される。このような血液中の癌細胞の処理に関連して、血液中の細胞の分析について、例えば特許文献1:特公平6−61360号公報、文献2:特公平7−3419号公報に記載がある。
【特許文献1】特公平6−61360号公報
【特許文献2】特公平7−3419号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記した細胞の分析においては、被検体から取り出した血液中の細胞の画像を取得し、その画像を医者や研究者に示すことで、転移癌の治療、診断方法の確立、あるいは転移メカニズムの解明に役立つと考えられる。しかしながら、血液中の全ての細胞について画像を取得する場合、画像を記録するために必要なメモリ量の増大、画像取得あるいは画像処理に必要な時間の長時間化等の問題がある。このような問題を解決するためには、血液中の細胞から癌細胞や異常細胞などの目的とする細胞を選別することが必要となる。
【0004】
一方、上記特許文献1には、特定病型の原因になっている細胞を選別するために、蛍光性抗体、DNAゾンデ、RNAゾンデなどのマーキング物質を用いてマーキングすることが記載されている。しかしながら、このように細胞をマーキングする方法では、特定病型の細胞以外の正常細胞を被検体の体内に戻す場合に、使用したマーキング物質まで体内に戻る可能性がある。このように余分なマーキング物質が被検体の体内に戻ってしまうと、被検体の正常細胞等にダメージを与える等の問題が生じる場合がある。また、特許文献1には、細胞の破壊または不活性化についても記載があるが、この場合、破壊等された細胞の残骸まで体内に戻ってしまう可能性がある。
【0005】
本発明は、以上の問題点を解決するためになされたものであり、血液中の細胞から目的とする細胞を好適に選別することが可能な細胞選別装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するために、本発明による細胞選別装置は、(1)被検体から血液を取り出して体外で循環させ、再び体内に戻す体外循環系と、(2)体外循環系に取り出された血液中に含まれる細胞に測定光を供給し、細胞自体または細胞の核の体積に関する物理量についての細胞情報を光学的に測定する細胞測定手段と、(3)細胞測定手段で測定された細胞情報、及び特定種類の細胞を選別するために設定された選別条件に基づいて、細胞が選別条件を満たす場合にその細胞を分離させ、それ以外の細胞を体外循環系を介して体内に戻すようにする細胞分離手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
上記した細胞選別装置においては、体外循環系に取り出された血液中の細胞に対し、測定光を用いて細胞の体積に関する物理量、または細胞の核の体積に関する物理量についての情報を取得している。このように、光学的な測定手法で体積に関する細胞情報を取得することにより、正常細胞を再び被検体の体内に戻した場合でも、被検体にダメージを与えることが防止される。また、このような方法では、特定種類の細胞(例えば癌細胞)を選別するための処理を単純化かつ短時間化することが可能となる。
【0008】
また、光学的な測定手法で取得された細胞情報に対して所定の選別条件を適用し、細胞情報が測定された細胞を、目的とする細胞が含まれている可能性がある細胞群と、それ以外で再び体内に戻す正常細胞群とに分離している。これにより、血液中の細胞を、余分な物質等を加えることなく好適に選別することが可能となる。なお、上記した体積に関する物理量とは、細胞または細胞の核が空間で占める大きさに関する物理量であり、体積自体の他、例えば厚みなどを含む。また、細胞測定手段及び細胞分離手段については、単一の手段によって両者の機能を実現する構成であっても良い。
【0009】
ここで、選別装置は、細胞測定手段で測定された細胞情報と、選別条件とを比較し、その比較結果に基づいて、細胞が選別条件を満たすかどうかを示す分離指示信号を細胞分離手段へと送出する分離指示手段を備えることが好ましい。これにより、細胞情報及び選別条件に基づく細胞の選別、分離を確実に実現することができる。
【0010】
また、具体的な細胞情報の取得方法については、細胞測定手段において、細胞を含む血液の所定領域に対して測定光を照射し、細胞を通過した光を検出して得られた位相差情報を細胞情報とする方法を用いることができる。このように、測定光が細胞を通過したときに生じる位相差情報を体積に関する物理量として測定することにより、余分な物質等を加えることなく、細胞を選別するために必要な細胞または細胞の核の体積または厚みについての情報を好適に取得することができる。また、後述するように、例えば光の散乱強度情報など、位相差情報以外の情報を光学的に測定して細胞の選別を行っても良い。
【0011】
また、選別装置は、上記細胞測定手段及び細胞分離手段に加えて、さらに、細胞分離手段で選別条件を満たすとして分離された細胞に対し、その画像を取得する画像取得手段を備える構成としても良い。このような構成によれば、細胞測定手段で測定された細胞情報を用いて第1段階の細胞の選別を行い、さらに、画像取得手段で取得された画像を用いて第2段階の細胞の選別を行って、高精度で細胞を選別することが可能となる。また、第1段階で選別された細胞のみが画像取得の対象となるので、画像を記録するために必要なメモリ量の増大、画像取得あるいは画像処理に必要な時間の長時間化等の問題の発生を防止することができる。
【0012】
この場合、選別装置は、画像取得手段で取得された細胞の画像を表示する表示手段を備えることが好ましい。このような構成では、表示手段に表示された画像によって、操作者が目視等により、その細胞が特定種類の細胞かどうかを判定することができる。
【0013】
あるいは、選別装置は、あらかじめ用意された特定種類の細胞の情報を参照して、画像取得手段で取得された細胞の画像について解析を行い、細胞が特定種類の細胞かどうかを判定する画像解析手段を備えることが好ましい。このような構成では、細胞の画像を解析することによって、その細胞が特定種類の細胞かどうかを高精度かつ自動で判定することができる。
【0014】
また、選別装置は、画像解析手段あるいは操作者等によって特定種類の細胞として判定された細胞に対して所定の処理を行い、処理がなされた細胞を、体外循環系を介して体内に戻すようにする細胞処理手段を備えることが好ましい。これにより、例えば癌細胞への選択的な薬剤の投与など、様々な操作が可能となる。また、この場合、細胞処理手段において、細胞に対して、細胞が特定の組織へと向かおうとするホーミング機能を発現させるためのホーミング処理を行うこととしても良い。この場合、例えば、ホーミング機能が発現された細胞を薬剤等の運搬の担い手として用いることが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の細胞選別装置によれば、体外循環系に取り出された血液中の細胞に対し、光学的な測定手法で細胞の体積に関する物理量、または細胞の核の体積に関する物理量についての情報を取得するとともに、取得された細胞情報に対して所定の選別条件を適用し、細胞情報が測定された細胞を、目的とする細胞が含まれている可能性がある細胞群と、それ以外で再び体内に戻す正常細胞群とに分離することにより、血液中の細胞から目的とする細胞を好適に選別することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面とともに、本発明による細胞選別装置の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0017】
図1は、本発明による細胞選別装置の一実施形態の構成を概略的に示すブロック図である。本細胞選別装置は、被検体から取り出された血液に対し、血液中の細胞から特定種類の細胞を選別する処理を行うものであり、体外循環系10と、細胞測定部20と、細胞分離部30と、画像取得部40と、細胞処理部50とを備えて構成されている。なお、以下においては、被検体を患者の体とし、特定種類の細胞として癌細胞の選別を行う場合を主な例として、本装置における細胞選別について説明する。
【0018】
体外循環系10は、被検体から血液を取り出して体外で循環させ、再び体内に戻すための循環流路系である。本実施形態においては、体外循環系10は、被検体から取り出された血液が流れて再び体内へと戻る主循環系11と、主循環系11に対してバイパス循環系として設けられて細胞選別に用いられる選別用循環系12とを有している。
【0019】
選別用循環系12には、上流側から順に予備選別部13、供給部14、測定部21、及び細胞分離部30が設けられている。予備選別部13では、血液中の細胞に対する予備的な選別として、測定対象となる細胞を、赤血球を含む細胞群、及び白血球を含む細胞群のいずれかに選別する。このとき、特定種類の細胞である癌細胞は、白血球を含む細胞群として選別される。したがって、ここでは、白血球を含む細胞群に選別された細胞は、選別用循環系12で後段の供給部14へと送られる。また、赤血球を含む細胞群に選別された細胞は、流路13aを介して主循環系11へと戻される。
【0020】
このような細胞の予備選別の方法としては、具体的には例えば遠心分離法を用いることができる。また、分離装置としては、例えば、血液成分分離装置である GAMBRO.BCT 社製の COBE Spectra、Baxter 社製の Baxter Amicus Separator などがある。あるいは、光の散乱力、勾配力を応用して細胞を分離する方法を用いても良い(例えば文献 "A. Hirai, H. Monjushiro, and H. Watarai,"Laser-Photophoresis of a Single Droplet in o/w Emulsions", Langmuir12, pp.5570-5575 (1997)" 参照)。
【0021】
供給部14は、測定部21に対して、細胞の測定の実行に好適な条件で細胞を含む血液が供給されるように、血液の流れを制御する。ここで、細胞の測定の実行に好適な条件とは、例えば、後段の測定部21において、血液の流れを走査しつつ細胞に対する測定を行う際に、その走査面からみて複数の細胞が重複しないような血液の供給条件をいう。このような供給部14としては、例えば、特表昭57−500995号公報に開示された流路など、特別に設計された流路を用いても良い。また、一般的なフローサイトメータで採用されているシースフローによって層流を作成し、細胞を1つ1つ供給しても良い。
【0022】
測定部21は、測定光源22及び検出装置23とともに、本選別装置における細胞測定部20を構成している。この細胞測定部20は、体外循環系10に取り出された血液中に含まれる細胞に測定光を供給し、細胞自体または細胞の核の体積に関する物理量についての細胞情報を光学的に測定する測定手段である。
【0023】
図1に示した構成では、まず、測定部21中の流路を流れる血液を、測定光源22から供給される測定光を照射することによって走査する。そして、測定光が照射された血液の所定領域を通った細胞からの光を検出装置23で検出することによって、細胞の体積に関する物理量、または細胞の核の体積に関する物理量についての細胞情報を取得する。ここで、検出装置23での検出対象となる細胞からの光としては、具体的には例えば、細胞からの蛍光、反射光、散乱光、通過光などが挙げられ、これらの光から細胞の光学的特性が抽出される。
【0024】
図2は、細胞測定部20における細胞情報の取得方法の一例を示す図である。図2の例では、測定部21内にある細胞Cを含む血液Bの所定領域に対して、測定光源22からの測定光を照射し、細胞Cを通過した光を検出して得られた位相差情報を細胞情報とする方法を用いている。
【0025】
この方法では、図2に測定光の位相の変化を模式的に示すように、血液Bのみの部分を通過した光と、細胞Cを通過した光とで、血液Bと細胞Cとの間での屈折率差、及びそれによる光の遅延によって位相差が生じる。また、測定光が細胞Cを通過する距離は、細胞または細胞の核の体積または厚み等に依存する。したがって、細胞Cを通過した光を検出して位相差情報を取得することにより、細胞を選別するために必要な細胞の体積に関する物理量、または細胞の核の体積に関する物理量についての情報が得られる。
【0026】
測定部21においてその細胞情報が測定された細胞を含む血液は、細胞分離部30へと導入される。細胞分離部30は、細胞測定部20で測定された細胞情報、及び特定種類の細胞(例えば癌細胞)を選別するために設定された選別条件に基づいて、細胞の選別、分離を行う。
【0027】
具体的には、細胞分離部30は、細胞が選別条件を満たす場合、すなわち細胞が特定種類の細胞の可能性がある場合に、その細胞(目的細胞)を分離する。分離された細胞は、後段の撮像部41へと送られる。一方、選別条件を満たす細胞以外の細胞(非目的細胞)については、特定種類の細胞ではないとして、流路30aを介して主循環系11へと戻される。これにより、選別条件を満たさなかった細胞は、体外循環系10を介して再び被検体の体内に戻ることとなる。
【0028】
また、本実施形態においては、細胞測定部20において細胞情報として取得された検出装置23での検出結果情報が、分離指示装置25へと入力されている。また、この分離指示装置25には、上記した特定種類の細胞を選別するために設定された選別条件が、あらかじめ記憶されている。分離指示装置25は、細胞測定部20で測定された細胞情報と、選別条件とを比較し、その比較結果に基づいて、細胞が選別条件を満たすかどうかを示す分離指示信号を送出する。
【0029】
分離指示信号は細胞分離部30に入力され、細胞分離部30において、分離指示信号の指示内容にしたがって細胞の分離、選別が行われる。この分離指示信号としては、例えば細胞が選別条件を満たす場合に細胞の分離を指示するトリガー信号がある。あるいは、それ自体で細胞の分離作用を有する信号を分離指示信号として用いても良い。分離作用を有する信号としては、例えば、光ピンセットのような光の散乱力、勾配力を持つ光線信号、あるいは、セルソータに使用されているような液滴を偏向させるための電界などが挙げられる。
【0030】
なお、分離指示装置25から細胞分離部30への分離指示信号については、測定部21から細胞分離部30に細胞が到達する時間を考慮して信号を送出することが好ましい。また、細胞分離部30で分離される特定種類の細胞の可能性がある細胞群については、特定種類の細胞のみの細胞群、あるいは、特定種類の細胞を含む細胞群のいずれであっても良い。特定種類の細胞を含む細胞群としては、例えば、癌細胞と、その周りに大量に存在する白血球細胞とを含む細胞群がある。
【0031】
細胞分離部30において、特定種類の細胞の可能性があるとして分離された細胞は、撮像部41へと導入される。撮像部41は、撮像装置42とともに、本選別装置における画像取得部40を構成している。この画像取得部40は、細胞分離部30で選別条件を満たすとして分離された細胞に対し、その画像を取得する取得手段である。ここでは、撮像部41内の細胞に対して適当な照明光をあて、レンズの付いたCCDカメラなどの撮像装置42によって細胞を撮影することで、その画像データを取得する。また、この細胞の画像データの取得は、必要に応じて顕微鏡等を通して行われる。
【0032】
撮像装置42で取得された細胞の画像データは、画像解析装置45へと入力される。画像解析装置45は、例えばコンピュータから構成され、画像データをメモリに記憶させて蓄積する画像蓄積手段としての機能と、画像データに対して必要な解析を行う画像解析手段としての機能とを有する。また、この画像解析装置45には、表示装置46が接続されている。表示装置46は、画像取得部40で取得された細胞の画像を操作者に対して表示する表示手段である。
【0033】
画像解析装置45は、細胞の画像を操作者に表示する場合には、蓄積されている画像データから必要なデータを表示装置46へと送って画像を表示させる。この場合には、操作者は、表示された細胞の画像を参照して、細胞が特定種類の細胞かどうかを判定することができる。
【0034】
また、画像解析装置45は必要に応じて、所定の解析方法で細胞の画像についての解析を行う。具体的には、この画像解析装置45には、選別対象となっている特定種類の細胞についての情報があらかじめ用意されている。画像解析装置45は、この特定種類の細胞の情報を参照して、細胞の画像について解析を行い、細胞が特定種類の細胞かどうかを判定する。
【0035】
撮像部41において画像取得が行われた細胞は、細胞処理部50へと導入される。この細胞処理部50では、操作者による手動での判定結果、または画像解析装置45による自動での判定結果を参照し、特定種類の細胞として判定された細胞に対して、必要に応じて細胞の破棄、標識、無害化等の所定の処理が行われる。また、さらに必要であれば、細胞処理部50に導入されて処理がなされた細胞は、流路50aを介して主循環系11へと戻される。この場合、所定の処理がなされた細胞は、体外循環系10を介して再び被検体の体内に戻ることとなる。また、処理がなされなかった細胞は、体外循環系10には戻らずに捨てられる。
【0036】
上記実施形態による細胞選別装置の効果について説明する。
【0037】
図1に示した細胞選別装置においては、体外循環系10に取り出された血液中の細胞に対し、細胞測定部20において、測定光源22から供給される測定光を用いて細胞の体積に関する物理量、または細胞の核の体積に関する物理量についての情報を取得している。このように、光学的な測定手法で細胞情報を取得することにより、例えばマーキング物質などの余分な物質等を血液中に加える必要がなくなるので、正常細胞を再び被検体の体内に戻した場合でも、それによって被検体に不要なダメージを与えることが防止される。なお、細胞または細胞の核の体積に関する物理量とは、細胞または細胞の核が空間で占める大きさに関する物理量であり、体積自体の他、例えば厚みなどを含む。
【0038】
また、光学的な測定手法で取得された上記の細胞情報に対して、目的とする特定種類の細胞の特性等に応じて設定された選別条件を適用し、細胞分離部30において、細胞情報が測定された細胞を、目的とする細胞が含まれている可能性がある細胞群と、それ以外で再び体内に戻す正常細胞群とに分離している。これにより、血液中の細胞を好適に選別することが可能となる。また、このような方法では、血液中の全ての細胞について画像を取得して目的の細胞を選別する方法に比べて、癌細胞などの特定種類の細胞を選別するための処理を単純化かつ短時間化することが可能となる。
【0039】
具体的に説明すると、例えば選別対象となる特定種類の細胞として癌細胞を想定した場合、癌に侵された白血球は、通常の白血球の数倍〜10倍程度のサイズ(体積)であり、正常細胞と癌に侵された白血球とでは、光が通過する場合の光路長などの光学的特性が異なる。したがって、上記のように細胞または細胞の核の体積または厚み等についての情報を、位相差情報の測定などによって光学的に測定することにより、癌細胞を選別することができる。また、一般に、癌化した細胞は、核が肥大化することが良く知られており、前方散乱光が核の大きさに依存する(例えば、文献 "A. Dunn, J. Biomed. Optics Vol.2, pp.262-266 (1997)" 参照)。したがって、このことを利用して、光の散乱強度情報から癌細胞と正常細胞とを見分けても良い。
【0040】
細胞測定部20における細胞または細胞の核の体積に関する物理量の測定については、様々な測定方法を用いて良いが、上記したように、細胞を含む血液の所定領域に対して測定光を照射し、細胞を通過した光を検出して位相差情報を取得する方法を用いることが好ましい。このように、測定光が細胞を通過したときに生じる位相差情報を測定することにより、余分な物質等を加えることなく、細胞を選別するために必要な細胞情報を好適に取得することができる。また、このような位相差情報は、後述するように、例えば干渉光学系を用いて測定することが可能である。
【0041】
また、本実施形態では、上記した細胞測定部20及び細胞分離部30に対して、測定された細胞情報と選別条件とを比較し、その結果に基づいて分離指示信号を送出する分離指示装置25を設けている。これにより、細胞情報及び選別条件に基づく細胞の選別、分離を確実に実現することができる。また、この場合、分離指示信号については、上述したように具体的には様々な種類の信号を用いることが可能である。
【0042】
また、本実施形態の細胞選別装置では、細胞測定部20及び細胞分離部30に加えて、さらに、細胞分離部30で選別条件を満たすとして分離された細胞に対し、その画像を取得する画像取得部40を設けている。このような構成は、例えば、細胞分離部30で行われた細胞の選別の精度を上げたい場合に有効である。
【0043】
すなわち、このような構成によれば、細胞測定部20で測定された細胞情報を用いて第1段階の細胞の選別を行い、さらに、画像取得部40で取得された画像を用いて第2段階の選別を行って、高精度で細胞を選別することが可能となる。また、第1段階で選別されて細胞分離部30で分離された細胞のみが画像取得の対象となるので、全ての細胞について画像取得を行う場合等に比べ、画像を記録するために必要なメモリ量の増大、画像取得あるいは画像処理に必要な時間の長時間化等の問題の発生を防止することができる。
【0044】
具体的には、例えば、細胞測定部20及び細胞分離部30での粗い選別により、10個程度の細胞を、10個程度にフィルタリングする。そして、このフィルタリングされた細胞群を母集団として、画像取得部40での画像取得、あるいはさらに取得された画像を用いた細胞の解析、選別等を行う例が考えられる。
【0045】
また、このような構成では、細胞測定部20及び細胞分離部30による細胞選別と、画像取得部40における画像取得とを並列的に処理することが可能である。この場合、例えば、細胞測定部20での測定は高速で行い、後段の画像取得部40での画像取得は高解像度でやや低速で行うことが可能となるなど、細胞選別についての自由度が向上される。ただし、細胞測定部20及び細胞分離部30での選別の精度が充分に高い場合等、不要であれば、後段の画像取得部40を設けない構成としても良い。
【0046】
また、本実施形態では、画像取得部40で取得された細胞の画像を表示するための表示装置46を設けている。このような構成では、表示装置46に表示された画像によって、操作者(例えば医者)が目視等により、その細胞が特定種類の細胞(例えば癌細胞)かどうかを判定することができる。
【0047】
また、画像取得部40に対して画像解析装置45を設け、この画像解析装置45において、あらかじめ用意された特定種類の細胞の情報を参照して、画像取得部40で取得された細胞の画像について解析を行い、細胞が特定種類の細胞かどうかを判定する構成としても良い。このような構成では、細胞の画像を解析することによって、その細胞が特定種類の細胞かどうかを自動で判定することができる。この場合の具体的な解析方法としては、例えば、特定種類の細胞が癌細胞である場合に、あらかじめ記憶された癌に侵された細胞のパターンと、取得された細胞の画像パターンとでパターンマッチング処理を行い、その結果によって癌細胞とそれ以外の細胞とを識別する方法が挙げられる。
【0048】
また、これらの操作者が手動で細胞の判定を行う構成、及び画像解析装置45が自動で細胞の判定を行う構成のいずれにおいても、前段の細胞測定部20及び細胞分離部30においてあらかじめ細胞の選別が行われているため、判定が必要な細胞の数が低減され、その判定作業が大幅に軽減されている。
【0049】
また、本実施形態の細胞選別装置では、細胞測定部20、細胞分離部30、及び画像取得部40の後段に、さらに細胞処理部50を設け、必要に応じて、処理がなされた細胞を体外循環系10を介して体内に戻すように構成している。このような構成では、例えば、癌細胞が特定の組織に選択的に転移する事実を利用して、転移癌病巣へと選択的に薬剤を投与して薬剤治療の効果を向上させるなど、様々な細胞処理が可能となる。
【0050】
また、そのように特定の組織に選択的に転移する機能を発現していない癌細胞があるような場合には、ホーミングを起こすレセプターを発現させる処理(ホーミング処理)を行うことが好ましい。一般には、細胞処理部50において、細胞に対して、細胞が特定の組織へと向かおうとするホーミング機能を発現させるためのホーミング処理を行うことが好ましい。この場合、例えば、ホーミング機能が発現された細胞を薬剤等の運搬の担い手として用いることが可能となる。また、ホーミングについては、例えば、文献 "T. Tanaka et al., "Chemokines in tumor progression andmetastasis", Cancer Sci. Vol.96, pp.317-322 (2005) の "Chemokines andtumor invasion/metastasis" 節" 、文献 "A. Muller et al., "Involvement of chemokine receptors inbreast cancer metastasis" Nature Vol.410, pp.50-56 (2001)" を参照することができる。
【0051】
次に、上記実施形態による細胞選別装置の具体的な構成例について説明する。図3は、図1に示した細胞選別装置における測定部21の構成の一例を示す図である。この測定部21は、測定対象となる細胞を含む血液が流れる流路系15と、血液中の細胞に対して光学的な測定を行うための干渉光学系60とを有して構成されている。
【0052】
流路系15は、供給部14から所定の条件で供給された血液の流れを測定部21内へと導入する導入流路16と、導入流路16から血液が導入され、細胞測定に用いられるフローセル17と、フローセル17で細胞測定が行われた血液を後段の細胞分離部30へと排出する排出流路18とによって構成されている。図3では、フローセル17における血液の流れは紙面に垂直な方向となる。
【0053】
一方、干渉光学系60は、上流側から順に、ハーフミラー61、ガルバノミラー62、テレセントリックfθレンズ63、64、ガルバノミラー65、及びハーフミラー66によって構成されている。また、このような干渉光学系60において、血液が流れるフローセル17は、テレセントリックfθレンズ63、64の間に配置されている。なお、細胞を一列に流す場合には、ガルバノミラーやテレセントリックfθレンズなどのビーム走査機構光学系を設ける必要はない。
【0054】
測定光源22から供給された測定光L0は、ハーフミラー61によって2つのビームに分岐される。図3の構成例では、ハーフミラー61で反射した光がフローセル17へと照射される照射光L1、ハーフミラー61を透過した光が干渉測定用の参照光L2となっている。これらのうち、参照光L2はフローセル17等を通過せずに、そのまま直進して後段のハーフミラー66へと到達する。
【0055】
照射光L1は、ガルバノミラー62、及びテレセントリックfθレンズ63を介して、フローセル17内を流れる細胞を含む血液の所定領域に対して測定光として照射される。フローセル17を通過した光は、テレセントリックfθレンズ64、及びガルバノミラー65を介してハーフミラー66へと到達する。そして、ハーフミラー66で反射された光L1と、ハーフミラー66を透過した参照光L2とが干渉した干渉光L3が得られる。
【0056】
この干渉光L3の強度を検出装置23で検出することにより、フローセル17内を流れる血液中での細胞の有無、及び細胞がある場合には、その細胞または細胞の核の体積に関する物理量、例えばその厚み、についての情報が取得される。このような干渉光強度を、細胞または細胞の核の体積に関する物理量に対応する細胞情報として取得する場合、例えば、特定種類の細胞を選別する選別条件として強度閾値を設定しておき、この閾値によって特定種類の細胞かどうかの選別を行う方法を用いることができる。
【0057】
なお、干渉光強度は、位相変化量との間で線形関係は成り立たない。したがって、必要があれば、位相シフト法などの手法を用いて位相差量を定量的に計測し(例えば、文献 "K. Creath, "Phase-measurement interferometrytechniques" in Progress in Optics Vol. XXVI, E. Wolf, ed., pp.349-393(1988)"、Y.Zhao, “Phase-resolved optical coherence tomography and optical Dopplertomography for imaging blood flow in human skin with fast scanning speed andhigh velocity sensitivity,” Optics Letter, Vol.25, No.2, (2000) 参照)、あらかじめ決められた位相差量の閾値によって細胞の選別を行っても良い。このとき、位相ノイズが測定誤差を生じさせる場合には、US2005/0105097A1に示されるような種々の位相ノイズ相殺技術を用いてもよい。
【0058】
図4は、図3に示した測定部21に用いられるフローセル17の構成の一例を示す図である。図4中の矢印線S1で示すように、フローセル17への照射光(測定光)L1の照射は、ガルバノミラー62、及びテレセントリックfθレンズ63を用いて、フローセル17内での血液の流れを横切るように走査しつつ行うことが好ましい。また、照射光L1の走査速度に比べて血液の流れが速い場合には、矢印線S2で示すように、速度に応じて斜めに走査する構成としても良い。
【0059】
あるいは、フローセル17を走査する照射光L1のビームを複数本、設けても良い。または、測定部21を複数設ける構成としても良い。この場合、細胞測定のスループットを向上することができる。また、追加のガルバノミラーを設置して、走査面(フローセル)に対する照射光L1の走査を2次元的に行っても良い。また、参照光L2についても、細胞を通過しない条件でフローセル17を通過させる構成としても良い。また、デッドタイムによるスループットの低下に対しては、文献 "James F. Leary "Strategies for rare cell detection andisolation", Methods in Cell Biology Vol.42, pp.331-358 (1994)" で公知なように、アナログパイプディレイ、シフトレジスタ等を追加することで、ある程度回避することが可能である。
【0060】
また、干渉光学系60の具体的な構成については、図3においてはマッハツェンダ干渉計型の構成を例示したが、例えばマイケルソン干渉計型の構成など、他の構成を用いても良い。また、細胞測定部20での細胞の光学的測定については、細胞を通過した光を用いる構成に限らず、細胞の光学的特性が抽出可能なものであれば、例えば細胞からの蛍光、反射光、散乱光、通過光、後方散乱光、前方散乱光、側方散乱光など、様々な光を用いて良い。
【0061】
図5は、図1に示した細胞選別装置における細胞分離部30の構成の一例を示す図である。この細胞分離部30は、導入流路31と、導入流路31から分岐された第1排出流路32及び第2排出流路33とを有して構成されている。また、導入流路31から排出流路32、33への分岐点には、導入流路31から排出流路32、33の一方へと流路を切り換えて細胞を分離するための分離弁35が設けられている。
【0062】
第1排出流路32は、流路30aを介して主循環系11に接続されており、対象細胞が目的とする細胞ではないと判断された場合にこの流路32が選択される。また、第2排出流路33は、撮像部41に接続されており、対象細胞が目的とする細胞(例えば癌細胞)と判断された場合にこの流路33が選択されて、細胞が分離される。また、流路を切り換える分離弁35は、分離指示装置25からの分離指示信号によってその切り換え動作が制御されている。
【0063】
図6は、細胞選別装置における測定部21及び細胞分離部30の他の構成例を模式的に示す図である。本構成例において、測定部21の構成は図3に示したものと同様である。また、細胞分離部30については、排出流路32、33のそれぞれに対してローラポンプ32a、33aが設けられている。また、検出装置23である光検出器23aによって干渉光L3を検出して得られた検出信号は、分離指示装置25であるローラポンプコントローラ25aに入力されており、分離指示装置25からの分離指示信号によってローラポンプ32a、33aが駆動制御される構成となっている。
【0064】
なお、細胞分離部30における具体的な細胞の分離方法については、上記した方法以外にも、例えば、液滴を形成し帯電させて電極によって振り分ける方法など、様々な方法を用いることができる。また、光圧を用いた光ピンセットや、光格子を用いたソーティング(文献 "Nature Vol.426, pp.421-424 (2003)" 参照)などの手法を用いても良い。光ピンセットや光格子を用いる場合、分離指示信号によって光の強度や格子密度を制御する構成としても良い。
【0065】
また、選別対象となる細胞群が比較的単純な場合には、分離指示信号は必要ではなく、一定の強度、一定の格子密度等の状態での光格子だけでソーティングが可能な場合がある(文献 "M. P. MacDonald, G. C. Spalding, and K. Dholakia,"Microfluidic sorting in an optical lattice", Nature Vol.426, pp.421-424(2003)" 参照)。このような構成は、細胞の光学的特性の違いから細胞の分離を行う技術であり、細胞に対する光学的な測定と、細胞の分離とを同時に行うものである。この場合、図1において測定部21等は不要となる。一般に、上記した細胞選別装置においては、細胞測定手段及び細胞分離手段については、単一の手段によって両者の機能を実現する構成であっても良い。
【0066】
また、細胞測定部20で目的とする細胞を検知してから細胞分離部30に到達するまでの時間にばらつきがあり、分離指示信号のタイミングと、細胞が細胞分離部30に到達するタイミングとで、ずれが生じるような場合もありうる。このような場合には、安全のために時間的にマージンをとって、目的細胞にある程度の非目的細胞が混在した状態で細胞を分離しても良い。
【0067】
本発明による細胞選別装置は、上記実施形態及び構成例に限られるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、被検体から血液を取り出して循環させる体外循環系10については、図1においては主循環系11とバイパス循環系12とを設ける構成としたが、人工透析などと同様にシャントを作成し、血液を直接に体外に取り出すように体外循環系を構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、血液中の細胞から目的とする細胞を好適に選別することが可能な細胞選別装置として利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】細胞選別装置の一実施形態の構成を概略的に示すブロック図である。
【図2】細胞測定部における細胞情報の取得方法の一例を示す図である。
【図3】細胞選別装置における測定部の構成の一例を示す図である。
【図4】測定部に用いられるフローセルの構成の一例を示す図である。
【図5】細胞選別装置における細胞分離部の構成の一例を示す図である。
【図6】細胞選別装置における測定部及び細胞分離部の具体的な構成例を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0070】
10…体外循環系、11…主循環系、12…選別用循環系(バイパス循環系)、13…予備選別部、14…供給部、15…流路系、16…導入流路、17…フローセル、18…排出流路、20…細胞測定部、21…測定部、22…測定光源、23…検出装置、25…分離指示装置、30…細胞分離部、31…導入流路、32…第1排出流路、33…第2排出流路、35…分離弁、40…画像取得部、41…撮像部、42…撮像装置、45…画像解析装置、46…表示装置、50…細胞処理部、60…干渉光学系、61、66…ハーフミラー、62、65…ガルバノミラー、63、64…テレセントリックfθレンズ、L0…測定光、L1…照射光、L2…参照光、L3…干渉光。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体から血液を取り出して体外で循環させ、再び体内に戻す体外循環系と、
前記体外循環系に取り出された前記血液中に含まれる細胞に測定光を供給し、細胞自体または細胞の核の体積に関する物理量についての細胞情報を光学的に測定する細胞測定手段と、
前記細胞測定手段で測定された前記細胞情報、及び特定種類の細胞を選別するために設定された選別条件に基づいて、前記細胞が前記選別条件を満たす場合にその細胞を分離させ、それ以外の細胞を前記体外循環系を介して体内に戻すようにする細胞分離手段と
を備えることを特徴とする細胞選別装置。
【請求項2】
前記細胞測定手段で測定された前記細胞情報と、前記選別条件とを比較し、その比較結果に基づいて、前記細胞が前記選別条件を満たすかどうかを示す分離指示信号を前記細胞分離手段へと送出する分離指示手段を備えることを特徴とする請求項1記載の細胞選別装置。
【請求項3】
前記細胞測定手段において、前記細胞を含む前記血液の所定領域に対して前記測定光を照射し、前記細胞を通過した光を検出して得られた位相差情報を前記細胞情報とすることを特徴とする請求項1または2記載の細胞選別装置。
【請求項4】
前記細胞分離手段で前記選別条件を満たすとして分離された前記細胞に対し、その画像を取得する画像取得手段を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の細胞選別装置。
【請求項5】
前記画像取得手段で取得された前記細胞の画像を表示する表示手段を備えることを特徴とする請求項4記載の細胞選別装置。
【請求項6】
あらかじめ用意された前記特定種類の細胞の情報を参照して、前記画像取得手段で取得された前記細胞の画像について解析を行い、前記細胞が前記特定種類の細胞かどうかを判定する画像解析手段を備えることを特徴とする請求項4または5記載の細胞選別装置。
【請求項7】
前記特定種類の細胞として判定された前記細胞に対して所定の処理を行い、前記処理がなされた前記細胞を前記体外循環系を介して体内に戻すようにする細胞処理手段を備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項記載の細胞選別装置。
【請求項8】
前記細胞処理手段において、前記細胞に対して、前記細胞が特定の組織へと向かおうとするホーミング機能を発現させるためのホーミング処理を行うことを特徴とする請求項7記載の細胞選別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−306891(P2007−306891A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−141796(P2006−141796)
【出願日】平成18年5月22日(2006.5.22)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【出願人】(504300181)国立大学法人浜松医科大学 (96)
【Fターム(参考)】