説明

細菌の付着およびストレス耐性を修飾する方法および組成物

対象となる基質への細菌の付着を改善する、および/または細菌のストレス耐性を改善する方法および組成物を提供する。本方法は、付着適応条件に細菌を暴露すること、ならびにそれによって前記細菌の付着活性および/またはストレス耐性を増加させることを含む。オートインデューサー2の生産が修飾された細菌をさらに提供する。本組成物は、オートインデューサー2生産経路に関与する核酸分子を発現する組換え細菌を含む。オートインデューサー2関連融合タンパク質、抗原性ペプチド、抗体およびベクターをさらに提供する。オートインデューサー2の生産を刺激する、および/または付着適応応答を生じさせる化合物または環境条件をスクリーニングする方法をさらに提供し、付着および/またはストレス耐性が増強された細菌についての様々な使用方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細菌、特にプロバイオティック細菌および乳酸菌、ならびにそれらにおける細胞シグナリングを制御するための方法および構築体に関する。
【背景技術】
【0002】
小腸において、乳酸桿菌は、共生微生物叢の主要、且つ、重要な成分である。その生物から抽出される特定の恩恵および製造業者によって望まれる生体処理特性に基づいて、食品または栄養補助食品での使用に選択されるプロバイオティック培養菌として、様々な乳酸桿菌属(Lactobacillus)種が使用されている。すべてのプロバイオティック培養菌が同じ特性を示すとは限らず、これらの株の選択およびそれらの恩恵の解明が最優先事項となる。乳酸菌および特に乳酸桿菌は、様々な健康促進効果の見込まれる因子として食品に配合される一般的な属である。
【0003】
乳酸菌(LAB)は、様々な環境的ニッチにおいて天然に見出され、そこでは複雑な微生物群集のメンバーとして存在する。それぞれのニッチでの生存は、温度、pH、栄養利用能および細胞集団密度などの可変条件を感知し、それらに応じる菌の能力に依存する。LABが占有することの多い主要ニッチの1つは、哺乳動物の胃腸管(GIT)である。多数のシグナル伝達経路が、付着因子、ストレス応答遺伝子、ならびにGITの様々な区画内でのLABの生存および競争を促進する他の遺伝的決定因子の発現を制御している可能性が高い。グラム陽性およびグラム陰性病原菌と共に、一部の腸内乳酸桿菌は、腸上皮および粘膜層とそれらの中で凝集する能力を有する。この凝集は、数ある中でも競合的排除、免疫修飾およびバイオ治療薬の送達を含む、一定のプロバイオティック特性の実現に重要であると考えられる。この凝集に関与する分子メカニズムは理解されていないが、そのプロセスが複雑であり、宿主特異的要因、細菌特異的要因および環境要因を含むことは明白である。
【0004】
一部の腸内乳酸桿菌は、腸上皮上および粘膜層中で、グラム陽性およびグラム陰性病原菌と共に凝集する能力を有する。腸上皮および粘膜層の表面にコロニーを形成する能力は、プロバイオティック細菌に、常在菌叢および病原微生物叢に勝る明確な利点をもたらすことができる。特に興味深いのは、プロバイオティック細菌が生き残り、場合によっては腸管の動的環境にコロニーを形成するというメカニズムである。pH、増殖期および他の微生物の存在を含む、付着に影響を及ぼす一定の環境要因が研究されている。
【0005】
乳酸桿菌は、それら自体の増殖必要条件を満たすことと、宿主防御(胃酸の衝撃を含む)および競合する微生物叢よってもたらされる厳しい条件を生き残ることとのバランスを保たなければならない(Tannock(2005)Appl.Environ.Microbiol.71:8419−8425)。しかし、これらの侵撃要因が、腸内環境の中で様々な物質と凝集する乳酸桿菌の能力に対してどのように影響を及ぼすかについては、ほとんど判っていない。
【発明の開示】
【0006】
対象となる基質への細菌の付着を改善する、および/または細菌のストレス耐性を改善する方法および組成物を提供する。本方法は、付着適応条件に細菌を暴露すること、ならびにそれによってその細菌の付着および/またはストレス耐性を増加させることを含む。オートインデューサー2(AI−2)のレベルが修飾された細菌をさらに提供する。本組成物は、オートインデューサー2生産経路に関与する核酸分子を発現する組換え細菌を含む。オートインデューサー2関連融合タンパク質、抗原性ペプチド、抗体およびベクターをさらに提供する。オートインデューサー2の生産を刺激する、および/または付着適応応答を生じさせる化合物または環境条件をスクリーニングする方法をさらに提供し、付着および/またはストレス耐性が増加された細菌についての様々な使用方法も提供する。
【0007】
本明細書中の図面および以下に記載する本明細書で本発明をさらに詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
ここで、本発明のすべてではないが一部の実施形態を示す添付の図面を参照して、本発明をさらに詳細に説明する。実際、これらの発明は、多数の異なる形態で実施することができ、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈すべきではない。どちらかといえば、これらの実施形態は、本開示が該当法的要件を満たすために提供するものである。全体を通して、同じ番号が同じ要素を指す。
【0009】
上述の説明および関連する図に与えられている技術の恩恵を有する、本発明に関係する、本明細書に記載の本発明の多数の変更および他の実施形態が、当業者には思い浮かぶ。従って、開示する特定の実施形態および変更に本発明を限定すべきではなく、添付の特許請求の範囲には他の実施形態が含まれると解釈されることは、理解されるはずである。ここでは特定の用語を用いているが、それらは、一般的、且つ、説明的な意味のみで用いられており、限定を目的とするものではない。
【0010】
本明細書において、本明細書および特許請求の範囲を通して用いている「a」、「an」および「the」は、単数または複数であり得る。例えば、「a」細胞は、単一の細胞または非常に多数の細胞を意味することができる。
【0011】
また、本明細書において「および/または」は、関連して挙げられている用語の1つ以上についての任意およびすべての可能な組み合わせを言及し、及びそれらを包含し、ならびにその選択肢(「または」)で解釈する場合には組み合わせの欠如を指す。
【0012】
I.概要
本発明は、対象となる基質への細菌の付着を改善する、および/または細菌のストレス耐性を改善する、方法および組成物を提供する。胃腸管または尿生殖路の細胞に対するプロバイオティック細菌などの共生生物の付着増加は、腸、尿生殖路および創傷部位における感染のリスクの低減に用いられている。同様に、プロバイオティック生物の生存率を腸管の過酷な環境の中で増加させるような、プロバイオティック生物のストレス耐性の改善は、腸、尿生殖路および創傷部位における感染のリスクの低減にさらに役立つ。
【0013】
1つの実施形態において、本発明は、「付着適応条件」を特定した。本明細書において、「付着適応条件」は、細菌の基質への付着を改善する任意の物理的、化学的、生物学的または類似の条件を含む。本発明は、これらの付着適応条件への細菌細胞のプレコンディショニングが、付着の増加および/またはストレス耐性の増加をもたらすことを証明した。本明細書において、細菌の改善された付着特性は、「付着適応応答」または「AAR」と呼ぶ。付着適応条件下でそのレベルおよび/または活性が修飾されるポリペプチドおよびポリヌクレオチドは、本明細書では、「付着適応応答関連」または「AAR関連」ポリペプチドまたはポリヌクレオチドと呼ぶ。様々なAAR関連ポリヌクレオチドおよびポリペプチドを本明細書において開示する。下の表8および9参照。追加のAAR関連ポリヌクレオチドおよびそれらのコードされるポリペプチドを、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、33、34、35、36、37および38に示す。
【0014】
細菌のオートインデューサー2経路を修飾し、それによってその細菌の付着および/またはストレス耐性を修飾する方法および組成物をさらに提供する。より具体的には、細菌におけるオートインデューサー2(AI−2)生産経路のポリヌクレオチドおよびポリペプチドを提供する。多くの場合、細菌細胞は、オートインデューサーの密度依存性認知と、それに続く遺伝子発現の変化を含む菌体密度感知メカニズムによって情報伝達する。同一種内および異種間で情報伝達するために用いられ得る1つの重要な菌体密度システムは、メチオニンから4つの酵素的段階により生産される、オートインデューサー2(AI−2)と呼ばれるフラノシルホウ酸ジエステルに基づく。AI−2は、非常に多数の種において、ビルレンス因子、DNAプロセッシング、細胞形態、運動、生物膜形成、毒素生産、発光および細胞分裂を含む様々な表現型の発現を調節する(Xavier et al.(2003)Curr.Opin.Microbiol.6:191−197)。従って、AI−2経路におけるポリペプチドのレベルおよび/または活性の修飾を可能にし、それによって様々な細菌表現型を修飾する能力をもたらす方法および組成物を提供する。このAI−2経路のポリヌクレオチドおよびポリペプチド配列を、配列番号1、2、3、4、13、14、15、16、21または22に示す。このような配列を、本明細書では、「AI−2関連配列」と呼ぶ。
【0015】
II.AI−2関連およびAAR関連ポリペプチドおよびポリヌクレオチド
本発明の様々なAAR関連およびAI−2関連ポリヌクレオチドおよびポリペプチドを利用する組成物を提供する。さらに、本発明は、これらのAI−2関連またはAAR関連配列のフラグメントおよび変異体を提供し、それらも本発明の方法を実施するために使用することができる。本明細書において、用語「遺伝子」および「組換え遺伝子」は、オープンリーディングフレームを含む核酸分子、特に、AI−2の生産またはAARに関与するタンパク質をコードするものを指す。本発明の単離されている核酸分子は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、34、36または38に記載のAI−2関連またはAAR関連タンパク質をコードする核酸配列、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、33、35または37に記載の核酸配列、ならびにこれらの変異体およびフラグメントを含む。本発明は、下で説明するようなアンチセンス核酸分子も包含する。
【0016】
AI−2の生産またはAARに関与する、単離されているポリペプチドおよびタンパク質、ならびにこれらの変異体およびフラグメントを包含し、ならびにそれらのポリペプチドを生産するための方法を包含する。本発明のために、用語「タンパク質」および「ポリペプチド」は、同義で用いる。例示的なAI−2関連ポリペプチドとしては、配列番号2、4、14、16、22が挙げられる。例示的なAAR関連ポリペプチドとしては、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、34、36および38が挙げられる。
【0017】
「AI−2の生産」または「付着適応応答(AAR)」は、標準的なアッセイ法に従って、インビボまたはインビトロで判定した場合の生物学的または機能的活性を指す。例えば、AI−2の生産は、レポーター株ビブリオ・ハーベイ(Vibrio harveyi)およびオートインデューサ・バイオアッセイを用いて測定することができる(DeKeersmaecker et al.(2003)Microbiology 149:1953−6)。追加のアッセイは、例えば、本明細書における他の箇所で説明する付着適応条件下での細菌生存または増殖の測定を含む。
【0018】
本発明の細菌および方法は細菌発酵に有用であり、例えば、AI−2の生産を刺激することまたは発酵プロセスを行うための基質に対する細菌の付着もしくはその基質上での細菌の生物膜形成を促進することが望まれる。
【0019】
本発明の細菌はプロバイオティック細菌として有用であり、例えば、AI−2の生産を刺激することまたは腸もしくは腸壁に対する細菌の付着もしくはその腸もしくは腸壁上での細菌の生物膜形成を促進して、それらから所望の細菌がない他のものを競合的に排除することが望まれる。
【0020】
細菌において細胞シグナリングまたは付着適応応答を誘導する方法は、AI−2の生産を刺激する際、あるいはAI−2の生産を刺激またはプロバイオティック細菌の付着もしくは生物膜形成を促進するために組換え野生型細菌と非組換え野生型細菌の両方を含む細菌の付着または生物膜形成を促進する際、有用である。
【0021】
本発明に包含される核酸およびポリペプチド組成物は、単離されているか、実質的に精製されている。「単離されている」または「実質的に精製されている」は、その核酸もしくはポリペプチド分子、または生物活性フラグメントもしくは変異体が、その自然な状態の核酸分子もしくはタンパク質に付随して、通常、見出される成分を実質的にまたは本質的に含まないことを意図する。このような成分としては、他の細胞材料、組換え生産からの培地、およびタンパク質もしくは核酸の化学合成において使用される様々な化学物質が挙げられる。好ましくは、本発明の「単離されている」核酸は、その核酸を採取した生物のゲノムDNAにおける対象となる核酸に隣接する核酸配列(例えば、5’または3’末端に存在するコード配列)を含まない。しかし、この分子は、その組成物の基本特性に悪影響を及ぼさない何らかの追加の塩基または部分を含んでもよい。例えば、様々な実施形態において、単離されている核酸分子は、それが採取された細胞におけるゲノムDNAに通常は付随する核酸配列を5kb、4kb、3kb、2kb、1kb、0.5kbまたは0.1kb未満含有する。同様に、実質的に精製されているタンパク質は、(乾燥重量で)約30%、20%、10%、5%もしくは1%未満の混入タンパク質または非AI−2関連もしくは非AAR関連タンパク質を有する。そのタンパク質を組換え生産する場合、好ましくは、培地は、そのタンパク質標品の容積の30%、20%、10%または5%未満に相当し、ならびにそのタンパク質が化学的に製造される場合、好ましくは、それらの標品は、AI−2の生産または付着適応条件とは関係がない化学物質前駆体または化学物質を(乾燥重量で)約30%、20%、10%、または5%未満有する。
【0022】
i.フラグメントおよび変異体
本発明は、AI−2関連またはAAR関連タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む、単離されている核酸分子、ならびにそれらにコードされるAI−2関連またはAAR関連タンパク質を提供する。これらのヌクレオチド配列およびコードされるタンパク質のフラグメントおよび変異体も提供する。ヌクレオチド配列またはタンパク質の「フラグメント」は、そのヌクレオチドまたは核酸配列の一部を意図する。
【0023】
本明細書において開示核酸分子のフラグメントは、AI−2関連もしくはAAR関連タンパク質がコードする核酸を同定するためにハイブリダイゼーションプローブとして使用することができ、またはAI−2関連もしくはAAR関連核酸分子のPCR増幅もしくは突然変異におけるプライマーとして使用することができる。マクロまたはマイクロアレイを考慮することができるものを含む物理的基質に核酸のフラグメントを結合させることもできる(例えば、米国特許第5,837,832号、米国特許第5,861,242号)。核酸のこのようなアレイを使用して、遺伝子発現を研究すること、またはターゲット配列と十分な同一性を有する核酸分子を同定することができる。
【0024】
さらに、本発明は、遺伝子の塩基配列決定、その中に含まれている突然変異の研究、および/または遺伝子の発現の分析を可能にさせる核酸アレイまたはチップ、すなわち、固体支持体上に正確に組織化または配列された分子プローブとしての多数の核酸(例えばDNA)を提供する。このようなアレイおよびチップは、それらの非常に小さいサイズ、および分析数から見てそれらの高い能力のため、現在、関心を集めているからである。
【0025】
これらの核酸アレイ/チップの機能は、一般には数平方センチメートル以上のサイズを有する担体に希望どおりに取り付けられる分子プローブ、主としてオリゴヌクレオチドに基づく。分析のために、DNAアレイ/チップにおけるものなどの担体をDMAプローブ(例えば、オリゴヌクレオチド)でコーティングし、それらのプローブをその担体上の所定の場所または位置に配置する。事前に標識された、分析すべきターゲット核酸および/またはそのフラグメント、例えばDNAまたはRNAまたはcDNA、を含有するサンプルをDNAアレイ/チップと接触させて、ハイブリダイゼーションにより2本鎖を形成させる。洗浄段階の後、そのチップの表面の分析により、その標識されたターゲットが放出するシグナルによって、任意のハイブリダイゼーションの位置を突き止めることができる。コンピューター処理によって得られるハイブリダイゼーション・フィンガープリントが得られ、それにより、遺伝子の発現、サンプル中の特定のフラグメントの存在、配列の決定、および/または突然変異の同定などの情報を検索することができる。
【0026】
本発明の1つの実施形態において、ターゲット核酸と、DNAチップ/アレイ上に沈着またはインサイチューで合成されプローブの形態で使用される本発明の核酸とのハイブリダイゼーションは、当分野では周知のような蛍光、放射能または電子検出などによって判定することができる。
【0027】
もう1つの実施形態では、本発明のヌクレオチド配列をDNAアレイ/チップの形態で使用して、AI−2の生産またはAARに関与する遺伝子の発現の分析を行うことができる。この分析は、所与の遺伝子またはヌクレオチド配列を特性付けするための特異性により選択されたプローブを沈着させたDNAアレイ/チップに基づく。分析すべきターゲット配列は、そのチップにハイブリダイズさせる前に標識する。洗浄後、ハイブリダイゼーションを少なくとも二重に行って、その標識された複合体を検出し、定量する。同じプローブに関して得られたシグナル強度の異なるサンプルに対する、および/または同じサンプルだが異なるプローブに対する比較分析により、例えば、そのサンプルから採取したRNAの差次的転写が可能となる。
【0028】
さらにもう1つの実施形態において、本発明のヌクレオチド配列を含むアレイ/チップは、他の微生物に固有のヌクレオチド配列を含むことができ、それによって、サンプル中の微生物の存在についての逐次試験および迅速な同定が可能となる。
【0029】
さらなる実施形態において、本DNAアレイ/チップの原理を用いて、核酸の代わりに本発明のポリペプチドおよび/もしくは抗体でまたはそれらのアレイで支持体をコーティングしたタンパク質アレイ/チップを作製することができる。これらのタンパク質アレイ/チップは、例えば、表面プラズマ共鳴(SPR)によって例えばタンパク質でコーティングされた支持体へのターゲットの親和捕捉により誘導される生体分子相互作用の分析を可能にする。分析すべきサンプルから採取した抗体またはポリペプチドに特異的に結合することができる、本発明のポリペプチドまたは抗体は、サンプル中のタンパク質および/またはペプチドの検出および/または同定のために、タンパク質アレイ/チップにおいて使用することができる。
【0030】
従って、本発明は、反復を含む任意の組み合わせで本発明の様々な核酸を含むマイクロアレイまたはマイクロチップ、ならびに反復を含む任意の組み合わせで本発明の様々なポリペプチドを含むマクロアレイを提供する。反復を含む任意の組み合わせで本発明の様々なポリペプチドと特異的に反応する1つ以上の抗体を含むマイクロアレイも提供する。
【0031】
「核酸分子」とは、ヌクレオチド類似体を使用して産生させるDNA分子(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)およびRNA分子(例えば、mRNA)ならびにDNAまたはRNAの類似体を意図する。核酸分子は、1本鎖である場合もあり、2本鎖である場合もあるが、好ましくは、2本鎖DNAである。AI−2関連またはAAR関連タンパク質をコードする核酸分子のフラグメントは、生物学的に活性であるタンパク質フラグメントをコードすることができ、または下で説明するようなハイブリダイゼーションプローブもしくはPCRプライマーとして使用することができる。本明細書に開示されたポリペプチドの生物活性フラグメントは、本発明のヌクレオチド配列のうちの1つについての一部分を単離し、AI−2関連またはAAR関連タンパク質のコードされる部分を(例えば、インビトロでの組換え発現により)発現させ、そしてAI−2関連またはAAR関連タンパク質のコードされる部分の活性を評価することによって、作製することができる。AI−2関連またはAAR関連タンパク質をコードする核酸分子のフラグメントは、本明細書に開示するような完全長AI−2関連またはAAR関連ヌクレオチド配列中に存在する、少なくとも15、20、50、75、100、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600のヌクレオチドまたはヌクレオチドの総数までを含む(例えば、配列番号1については693、配列番号3については942、配列番号13については1116、配列番号15については471など)。
【0032】
アミノ酸配列のフラグメントは、AI−2の生産にまたはAARに関与するポリペプチドに対する抗体を産生させるための免疫原としての使用に適するポリペプチドフラグメントを含む。フラグメントは、本発明のAI−2関連もしくはAAR関連タンパク質または部分長タンパク質のアミノ酸配列と十分に同一な、またはそれらに由来したアミノ酸配列を含むペプチドであって、AI−2関連またはAAR関連タンパク質の少なくとも1つの活性を示すペプチドを含むが、本明細書に開示する完全長AI−2関連またはAAR関連タンパク質より少ないアミノ酸を含む。1つの実施形態において、前記フラグメントは、生物活性であるポリペプチドを含むことができる。ポリペプチドの生物活性部分は、本発明の完全長タンパク質の少なくとも1つの活性(例えば、AI−2の生産またはAARに関連した活性)を示すものである。AI−2関連またはAAR関連タンパク質の生物活性部分は、例えば、10、25、50、100、150、200、250、300、400、500の連続するアミノ酸の長さであり、または本発明の完全長AI−2関連またはAAR関連タンパク質中に存在するアミノ酸の総数まで(例えば、配列番号2については231、配列番号4については314、配列番号14については372、配列番号16については157など)であるポリペプチドであり得る。このような生物活性タンパク質は、組換え法によって作製することができ、天然AI−2関連またはAAR関連タンパク質の機能的活性の1つ以上について評価することができる。本明細書において、フラグメントは、偶数の配列番号2〜22、34、36または38の少なくとも5つの連続するアミノ酸を含む。しかし、本発明は、他のフラグメント、例えば、アミノ酸数が6、7、8、9、10、20、50、100、200、300、400より多いまたは500より多い、タンパク質中の任意のフラグメントを包含する。
【0033】
本発明のAAR関連配列は、フィブロネクチン結合タンパク質をコードする配列番号19および20;エキソ多糖類の生産に関与するタンパク質をコードする配列番号33、34、35および36;ならびにリポタイコ酸および壁タイコ酸のD−アラニンエステル化に関与するタンパク質をコードする配列番号37および38を含む。特定の実施形態において、配列番号19または20の生物活性変異体またはフラグメントは、フィブロネクチン、ムチンまたは細胞外基質分子への結合を含む、腸粘膜への結合活性を有し続ける。この活性についてのアッセイ方法は、公知である。例えば、その変異体のフィブロネクチン結合活性は、血漿フィブロネクチンのキモトリプシン細胞結合フラグメントであるFN−120でコーティングされた蛍光微小球体を使用してアッセイすることができる。例えば、Schultz and Armant(1995)J.Biol.Chem.270(19):11522−31参照。配列番号33、34、35または36の生物活性変異体またはフラグメントは、エキソ多糖類の生産に関与し続ける。エキソ多糖類の生産は、Mozi et al.,(2001)J.Appl.Microbiol.91(1):160−167に記載されているフェノール/硫酸定量法によって推定することができる。配列番号37または38の生物活性変異体またはフラグメントは、細菌におけるリポタイコ酸のD−アラニン化(D−alanation)に関与し続ける。D−アラニンの取り込みは、O’Brien et al.,(1995)Microbios 83(335):119−137によって記載された方法に従って測定することができる。
【0034】
ヌクレオシドホスホリラーゼ(pfs)をコードする配列番号1および2;SAM依存性メチルトランスフェラーゼ(SAM−MT)をコードする配列番号3および4;メチオニンアデノシルトランスフェラーゼ(metE)をコードする配列番号13および14;S−リボシルホモシステイナーゼ(luxS)をコードする配列番号15および16;ならびにメチオニンアデノシルトランスフェラーゼ(metK)をコードする配列番号21および22を含む本発明の他のAAR関連配列は、AI−2の生産に関与する酵素を含む。特定の実施形態において、配列番号1、2、3、4、13、14、15、16、21または22の生物活性変異体またはフラグメントは、それぞれ、上に挙げた酵素的活性を有し続ける。これらの酵素の各々についての活性に関するアッセイ方法は、公知である。例えば、metK活性は、Posnick and Samson(1999)J.Bacteriol.181(21):6756−6762に記載されている方法に従って、高速液体クロマトグラフィーを使用してS−アデノシルトランスフェラーゼの生産を定量することにより、測定することができる。SAM−MTのメチル供与活性は、Borchardt et al.(1974)J.Med.Chem.19(9):1104−1110の方法に従ってアッセイすることができる。MTA/SAHヌクレオシド活性は、Della−Ragione et al.(1995)Biochem.J.232:335−341およびCornell et al.(1996)Biochem.J.317:285−290によって記載されたように、14C−メチルチオアデノシンから14C−メチルチオリボースへの転化を追跡することにより、測定することができる。MetE活性は、Hondorp and Matthews(2004)PLoS Biol.2(11):e336によって記載されたアッセイに従って、測定することができる。LuxS活性は、本明細書における他の箇所で説明するようなビブリオ・ハーベイレポーターアッセイを用いて測定することができる。
【0035】
様々なヌクレオチドおよびアミノ酸配列が、本発明に包含される。「変異体(variant)」は、十分に同一な配列を意図する。従って、本発明は、偶数の配列番号2〜22、34、36もしくは38におけるAI−2関連もしくはAAR関連タンパク質をコードするヌクレオチド配列と十分に同一である単離された核酸分子、または奇数の配列番号1〜21、33、35もしくは37の核酸分子もしくはその相補体にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子を包含する。変異体は、本発明のヌクレオチド配列によってコードされる変異ポリペプチドも含む。加えて、本発明のポリペプチドは、偶数の配列番号2〜22、34、36もしくは38に提示するアミノ酸配列と十分に同一であるアミノ酸配列を有する。「十分に同一な」は、1つのアミノ酸配列またはヌクレオチド配列が、第二のアミノ酸配列またはヌクレオチド配列と比較したとき、十分なまたは最小限の数の等価または同一アミノ酸残基またはヌクレオチドを含有すること、すなわち、共通の構造ドメインを提供する、および/または共通の機能的活性を示すことを意図する。保存的変異体は、遺伝子コードの縮重に起因して異なるヌクレオチド配列のものを含む。
【0036】
一般に、偶数の配列番号2〜22、34、36もしくは38のアミノ酸配列のいずれかと、または奇数の配列番号1〜21、33、35もしくは37のヌクレオチドのいずれかと、それぞれ、少なくとも約45%、55%または65%の同一性、少なくとも約70%または75%の同一性、少なくとも約80%、85%または95%、少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または99.5%の配列同一性を有するアミノ酸配列またはヌクレオチド配列を、本明細書では、十分に同一と定義する。本発明によって包含される変異タンパク質は、生物活性である。すなわち、天然タンパク質の所望の生物活性を保持している。本発明のタンパク質の生物活性変異体は、1〜15ほどの少ないアミノ酸残基、1〜10ほどの少ない、例えば6〜10、5ほどの少ない、4、3、2またはさらに1ほどの少ないアミノ酸残基がそのタンパク質と異なることがある。
【0037】
天然変異体が、集団(例えば、乳酸菌集団)内に存在することもある。このような変異体は、周知の分子生物学的技法、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)および下で説明するようなハイブリダイゼーションを用いて同定することができる。AI−2関連またはAAR関連タンパク質をなおコードする、合成により誘導されたヌクレオチド配列、例えば、部位特異的突然変異誘発またはPCR媒介突然範囲誘発によって産生された配列も、変異体として含まれる。1つ以上のヌクレオチドまたはアミノ酸置換、付加または欠失を、本明細書に開示するヌクレオチドまたはアミノ酸配列に導入することができるので、コードされるタンパク質にその置換、付加または欠失が導入される。付加(挿入)または欠失(トランケーション)を、天然タンパク質のN末端もしくはC末端において、または天然タンパク質の1つ以上の部位において行うことができる。同様に、1つ以上のヌクレオチドまたはアミノ酸の置換を、天然タンパク質における1つ以上の部位で行うことができる。
【0038】
例えば、保存的アミノ酸置換を、1つ以上の予測される、好ましくは非必須アミノ酸残基において行うことができる。「非必須」アミノ酸残基は、生物活性を変えずにタンパク質の野生型配列から変えることができる残基であり、これに対して「必須」アミノ酸は、生物活性に必要とされる。「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、類似した側鎖を有するアミノ酸残基で置換されているものである。類似した側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当分野では公知である。これらのファミリーとしては、塩基性側鎖(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)を有するアミノ酸、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)を有するアミノ酸、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)を有するアミノ酸、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)を有するアミノ酸、β分枝側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)を有するアミノ酸および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸が挙げられる。このような置換を保存アミノ酸残基に対して、または保存モチーフ内に存するアミノ酸残基に対して行うことは、そのような残基がタンパク質の活性に必須である場合にはできない。
【0039】
あるいは、例えば飽和突然変異誘発により、AI−2関連またはAAR関連コード配列の長さのすべてまたは一部に沿ってランダムに突然変異させることができる。これらの突然変異体は、組換え技術により発現させることができ、ならびに標準的なアッセイ法を用いてAI−2関連またはAAR関連保護活性についてアッセイすることにより生物活性を保持するものをスクリーニングすることができる。突然変異誘発方法およびヌクレオチド配列改変方法は、当分野では公知である。例えば、Kunkel(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:488−492;Kunkel et al.(1987)Methods in Enzymol.Molecular Biology(MacMillan Publishing Company,New York)およびこれらの中にある参考文献参照。変異体をコードするDNAにおいて成される突然変異は、そのリーディングフレームを破壊してはならず、好ましくは、二次mRNA構造を生じさせることがある相補領域を作らない。欧州特許出願公開第75,444号参照。関心のあるタンパク質の生物活性に影響を及ぼさない適切なアミノ酸置換に関するガイダンスは、Dayhoff et al.(1978)Atlas of Protein Sequence and Structure(Natl.Biomed.Res.Found.,Washington,D.C.)(これは、参照により本明細書に組み込まれる)において見出すことができる。
【0040】
本明細書に包含されるタンパク質配列の欠失、挿入および置換は、そのタンパク質の特性の根本的な変化を生じさせないと予想される。しかし、その置換、欠失または挿入の正確な効果を、そうするに先立って予測することが困難である場合、その効果を慣例のスクリーニングアッセイによって評価することとなることは、当業者には理解される。すなわち、変更された配列の活性と元の配列の活性を比較することによって、その活性を評価することができる。例えば、AI−2の生産にまたはAARに関与するポリペプチドの変異体およびフラグメントの活性は、本明細書における他の箇所で開示する方法を用いてAI−2の生産についてアッセイすることにより、測定することができる。
【0041】
本発明の変異ヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、突然変異誘発および組換え誘発手順、例えばDNAシャッフリング、から誘導された配列も包含する。このような手順で、1つ以上のAI−2関連またはAAR関連タンパク質コード領域を用いて、所望の特性を有する新規AI−2関連またはAAR関連タンパク質を作ることができる。このようにして、実質的な配列同一性を有し、インビトロまたはインビボで相同的に組換えられる配列領域を含む、関連する配列のポリヌクレオチド集団から、組換えポリヌクレオチドのライブラリを作製することができる。例えば、このアプローチを用いて、関心のあるドメインをコードする配列モチーフを、本発明のAI−2関連またはAAR関連遺伝子と他の既知AI−2関連またはAAR関連遺伝子の間でシャッフリングして、関心のある改善された特性、例えば、酵素の場合には増加したKm、を有するタンパク質をコードする新規遺伝子を得ることができる。このようなDNAシャッフリングについての戦略は、当分野では公知である。例えば、Stemmer(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:10747−10751;Stemmer(1994)Nature 370:389−391;Crameri et al.(1997)Nature Biotech.15:436−438;Moore et al.(1997)J.Mol.Biol.272:336−347;Zhang et al.(1997)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:4504−4509;Crameri et al.(1998)Nature 391:288−291;ならびに米国特許第5,605,793号および同第5,837,458号参照。
【0042】
本発明のAI−2関連またはAAR関連タンパク質の変異体は、AI−2関連またはAAR関連タンパク質の突然変異体、例えば欠失突然変異体、のコンビナトリアルライブラリをスクリーニングすることによって、同定することができる。1つの実施形態では、AI−2関連またはAAR関連変異体の多彩なライブラリが、核酸レベルでのコンビナトリアル突然変異誘発によって作製され、多彩な遺伝子ライブラリによってコードされる。例えば、合成オリゴヌクレオチドの混合物を遺伝子配列に酵素によりライゲートすることによって、AI−2関連またはAAR関連変異体の多彩なライブラリを作製することができるので、可能性のあるAI−2関連またはAAR関連配列の縮重セットを、個々のポリペプチドとして、あるいはその中にそのAI−2関連またはAAR関連配列のセットを含有する(例えば、ファージディスプレイのための)より大きい融合タンパク質のセットとして発現させることができる。可能性のあるAI−2関連またはAAR関連変異体のライブラリを縮重オリゴヌクレオチド配列から生じさせるために用いることができる様々な方法がある。縮重遺伝子配列の化学合成は、自動DNA合成装置において行うことができ、その後、その合成遺伝子を適切な発現ベクターに連結する。縮重遺伝子セットの使用により、1つの混合物で、可能性のあるAI−2関連またはAAR関連配列の所望のセットをコードするすべての配列を生じさせることができる。縮重オリゴヌクレオチドを合成するための方法は、当分野では公知である(例えば、Narang(1983)Tetrahedron 39:3;Itakura et al.(1984)Annu.Rev.Biochem.53:323;Itakura et al.(1984)Science 198:1056;Ike et al.(1983)Nucleic Acids Res.11:477参照)。
【0043】
加えて、AI−2関連またはAAR関連タンパク質コード配列のフラグメントのライブラリを使用して、AI−2関連またはAAR関連タンパク質の変異体のスクリーニングおよびその後の選択のためにAI−2関連またはAAR関連フラグメントの多様な集団を生産することができる。1つの実施形態において、コード配列フラグメントのライブラリは、ニックの導入が1分子につき約1回しか発生しない条件下でヌクレアーゼを用いてAI−2関連またはAAR関連コード配列の2本鎖PCRフラグメントを処理するステップと、2本鎖DNAを変性させるステップと、そのDNAを復元して異なるニックを導入された産物によるセンス/アンチセンス対を含むことができる2本鎖DNAを形成するステップと、S1ヌクレアーゼでの処理によって1本鎖部分を再形成された2本鎖から除去するステップと、そして得られたフラグメントライブラリを発現ベクターに連結するステップとによって作製することができる。本方法により、AI−2関連またはAAR関連タンパク質の様々なサイズのN末端および内部フラグメントをコードする発現ライブラリを得ることができる。
【0044】
点突然変異または欠失によって作製されるコンビナトリアルライブラリの遺伝子産物をスクリーニングするための、および選択された特性を有する遺伝子産物についてcDNAライブラリをスクリーニングするための幾つかの技法が、当分野において公知である。このような技法は、AI−2関連またはAAR関連タンパク質のコンビナトリアル突然変異誘発によって作製された遺伝子ライブラリの迅速なスクリーニングに適応できる。大きな遺伝子ライブラリをスクリーニングするための、ハイスループット分析に適用できる、最も広く用いられている技法は、一般に複製可能な発現ベクターに遺伝子ライブラリをクローニングするステップと、その得られたベクターライブラリで適切な細胞を形質転換するするステップと、所望の活性の検出により、産物が検出された遺伝子をコードするベクターの単離が助長される条件下でコンビナトリアル遺伝子を発現させるステップとを含む。リカーシブ・アンサンブル・ミュータジェネシス(REM)、ライブラリ内の機能的突然変異体の頻度を増す技法を、スクリーニングアッセイと併用して、AI−2関連またはAAR関連変異体を同定することができる(Arkin and Yourvan(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:7811−7815;Delgrave et al.(1993)Protein Engineering 6(3):327−331)。
【0045】
ii.配列同一性
AI−2関連またはAAR関連配列は、保存された機能的特徴を有する分子のファミリーのメンバーである。「ファミリー」は、十分なヌクレオチド配列またはアミノ酸配列同一性を有する2つ以上のタンパク質または核酸分子を意図する。非常に異なるグループを含むファミリーは、サブファミリーに分けることができる。クランは、共通の祖先を有すると考えられるファミリーのグループである。クランのメンバーは、多くの場合、類似した三次構造を有する。「配列同一性」は、2つの配列を整列比較させたとき、少なくとも1つの特定比較ウインドウに関して最大応答が同じであるヌクレオチドまたはアミノ酸残基を意図する。「比較ウインドウ」は、最適なアラインメントのための2つのヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の連続セグメントと解釈し、この場合、第二の配列は、第一の配列と比較すると、付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含有してもよい。一般に、核酸アラインメントのための比較ウインドウは、少なくとも20の連続するヌクレオチドの長さであり、場合によっては、30、40、50、100またはそれより長いことがある。アミノ酸配列アラインメントのための比較ウインドウは、少なくとも6の連続するアミノ酸の長さであり、場合によっては、10、15、20、30またはそれより長いことがある。ギャップの包含に起因する高い類似性を回避するために、一般にはギャップペナルティーが導入され、マッチ数から減算されることは、当業者には理解される。
【0046】
ファミリーメンバーは、同じ種からのものであってもよいし、または異なる種からのものであってもよく、ならびに相同タンパク質および異なるタンパク質を含むことができる。多くの場合、ファミリーのメンバーは、共通の機能的特徴を示す。相同体は、下で開示するストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下での標準的なハイブリダイゼーション法に従ってハイブリダイゼーションプローブとしてcDNAまたはその一部を使用することにより、本明細書に開示するAI−2関連またはAAR関連核酸配列とのそれらの同一性を基に単離することができる。
【0047】
2つのアミノ酸またはヌクレオチド配列の同一性パーセントを決定するために、アラインメントを行う。2つの配列の同一性パーセントは、比較ウインドウ内の2つの配列によって共有されている同一残基の数の関数である(すなわち、同一性パーセント=同一残基数/総残基数×100)。1つの実施形態において、これらの配列は、同じ長さである。下で言及するものに類似した方法を使用して、2つの配列間の同一性パーセントを決定することができる。これらの方法は、ギャップを割り当てて、または割り当てずに用いることができる。点検により手作業でアラインメントを行うこともできる。
【0048】
アミノ酸配列が保存的置換の点で異なる場合には、その同一性パーセントを上方調整してその置換の保存的性質を較正することができる。この調整を行う手段は、当分野では公知である。一般には、完全なミスマッチではなく部分的なミスマッチとして保存的置換をスコアし、それによって配列同一性パーセンテージを増加させる。
【0049】
数学的アルゴリズムを用いて、2つの配列の同一性パーセントを決定することができる。数学的アルゴリズムの非限定的な例は、Karlin and Altschul(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873−5877におけるような修飾されたKarlin and Altschul(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264のアルゴリズム;Myers and Miller(1988)CABIOS 4:11−17のアルゴリズム;Smith et al.(1981)Adv.Appl.Math.2:482の局所アラインメントアルゴリズム;Needleman and Wunsch(1970)J.Mol.Biol.48:443−453の大域アラインメントアルゴリズム;ならびにPearson and Lipman(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444−2448の局所アラインメントの検索法(the search−for−local alignment−method)である。
【0050】
これらの数学的アルゴリズムに基づく様々なコンピューターによる計算環境が、配列同一性の決定を可能にするように設計されている。Altschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403のBLASTプログラムは、上記KarlinおよびAltschul(1990)のアルゴリズムに基づく。本発明のヌクレオチド配列と相同であるヌクレオチド配列を得るための検索は、BLASTNプログラム、スコア=100、ワード長=12で行うことができる。本発明のタンパク質またはポリペプチドをコードする配列と相同なアミノ酸配列を得るためには、BLASTXプログラムを用いることができる(スコア=50、ワード長=3)。ギャップ付きのアラインメントは、Altschul et al.(1997)Nucleic Acids Res.25:3389に記載されているように、(BLAST 2.0における)Gapped BLASTを用いて得ることができる。分子間の遠い関係を検出するためには、PSI−BLASTを用いることができる。上記Altschul et al.(1997)参照。BLASTプログラムのすべてについて、それぞれのプログラムのデフォルトパラメーターを用いることができる。www.ncbi.nlm.nih.gov.参照。検討のために手作業でアラインメントを行うこともできる。
【0051】
配列同一性パーセントを決定するために用いることができるもう1つのプログラムは、ALIGNプログラム(バージョン2.0)であり、これは、上記MyersおよびMiller(1998)の数学的アルゴリズムを用いている。アミノ酸配列を比較するときには、このプログラムとともにPAM120 重量剰余テーブル、12のギャップ長ペナルティー、および4のギャップペナルティーを用いることができる。
【0052】
ALIGNおよびBLASTプログラムに加えて、BESTFIT、GAP、FASTAおよびTFASTAプログラムは、GCG Wisconsin Genetics Software Package バージョン10(米国、カリフォルニア州、サンディエゴ、9685 Scranton Rd.のAccelrys Inc.から入手できる)の一部であり、配列アラインメントを行うために用いることができる。好ましいプログラムは、上記NeedlemanおよびWunsch(1970)のアルゴリズムを用いたGAP バージョン10である。別様に述べない限り、本明細書において与える配列同一性類似性値は、以下のパラメーターでGAP バージョン10を用いて得た値を指す:50のGAP Weightおよび3のLength Weightおよびnwsgapdna.cmpスコアマトリックスを用いるヌクレオチド配列についての同一性%および類似性%;8のGAP Weightおよび2のLength WeightおよびBLOSUM62スコアマトリックスを用いるアミノ酸配列についての同一性%および類似性%;または任意の等価プログラム。「等価プログラム」は、問題となる任意の2つの配列について、GAP バージョン10によって生成された対応するアラインメントと比較したとき、同一のヌクレオチドまたはアミノ酸残基マッチおよび同一の配列同一性パーセントを有するアラインメントを生成する任意の配列比較プログラムを意図する。
【0053】
BLASTN、FASTA、BLASTPまたは類似のアルゴリズムによって生成された照会配列へのデータベース内の配列のアラインメントは、一般に、「ヒット」と呼ばれている。BLASTN、FASTA、BLASTPまたは類似のアルゴリズムにより生成された照会配列による1つ以上のデータベース配列に対するヒットによって、配列の類似した部分がアラインされ、同定される。データベース配列へのヒットは、一般に、照会配列の配列長のほんの数分の一、すなわち、照会配列の一部またはフラグメントに関するオーバーラップを表す。しかし、このオーバーラップは照会配列の全長を表すこともあり得る。データベース内の配列に対するBLASTN、FASTAまたはBLASTPアルゴリズムによって生成された照会配列へのアラインメントにおけるヒットは、一般に、類似性の程度および配列オーバーラップの長さの順に並べられる。
【0054】
照会配列へのBLASTN、FASTAまたはBLASTPアルゴリズムによって整列比較されたポリヌクレオチドおよびポリペプチドのヒットは、「Expect」値を生じさせる。このExpect値(E値)は、一定サイズのデータベースを検索するときに一定数の連続配列に関して見ることをランダムに「予期する」ことができる、ヒットの数を示す。Expect値は、GENBANK(登録商標)またはEMBLデータベースなどのデータベースへのヒットが、真の類似性を示しているかどうかを判定するための、有意性閾値として用いられる。例えば、ポリヌクレオチドヒットに割り当てられた0.1のE値は、GENBANK(登録商標)データベースサイズのデータベースにおいて、その配列の整列比較された部分に関して類似スコアとの0.1のマッチを見ることをランダムに予期できるという意味に解釈される。この基準により、整列比較され、マッチしたポリヌクレオチド配列部分は、同じである確率95%を有する。整列比較され、マッチした部分に関して0.01以下のE値を有する配列については、BLASTNまたはFASTAアルゴリズムを用いてGENBANK(登録商標)データベースにおいてランダムにマッチを見つける確率は、1%以下である。
【0055】
本発明の実施形態によると、本発明の「変異」ポリヌクレオチドおよびポリペプチドは、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列と比較したとき、約0.01以下のE値を生じさせる配列を含む。すなわち、変異ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、本明細書に記載するパラメーターに設定したBLASTN、FASTAまたはBLASTPアルゴリズムを用いて0.01以下のE値を有すると測定された、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドと同じである確率少なくとも99%を有する任意の配列である。他の実施形態において、変異ポリヌクレオチドは、本明細書に記載するパラメーターに設定したBLASTNまたはFASTAアルゴリズムを用いて0.01以下のE値を有すると測定された、本発明のポリヌクレオチドと同じである確率少なくとも99%を有する、本発明のポリヌクレオチドと同数のまたはそれより少ない核酸を有する配列である。同様に、変異ポリペプチドは、本明細書に記載するパラメーターに設定したBLASTPアルゴリズムを用いて0.01以下のE値を有すると測定される、本発明のポリペプチドと同じである確率少なくとも99%を有する、本発明のポリペプチドと同数またはそれより少ないアミノ酸を有する配列である。
【0056】
上述のように、同一性パーセンテージは、本明細書に記載する実行パラメーターに設定したBLASTN、FASTAまたはBLASTPアルゴリズムを用いて配列をアラインし、アラインした部分に関して同一核酸またはアミノ酸数を同定すること;その同一核酸またはアミノ酸数を、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の全核酸またはアミノ酸数で割ること;そしてその後、100を掛けて同一性パーセントを決定することによって決定される。例えば、220の核酸を有する本発明のポリヌクレオチドは、本明細書に記載するパラメーターを用いてBLASTNアルゴリズムにより生成されたアラインメントにおける23のヌクレオチドのストレッチに関して、520の核酸を有するGENBANK(登録商標)データベース内のポリヌクレオチド配列へのヒットを有する。23のヌクレオチドのヒットは、21の同一ヌクレオチド、1つのギャップおよび1つの異なるヌクレオチドを含む。従って、GENBANK(登録商標)ライブラリにおけるそのヒットに対する本発明のポリヌクレオチドの同一性パーセントは、21/220×100、すなわち9.5%である。従って、GENBANK(登録商標)データベースにおけるポリヌクレオチド配列は、本発明のポリヌクレオチドの変異体ではない。
【0057】
iii.相同配列の同定および単離
本明細書に記載のAI−2関連またはAAR関連ヌクレオチド配列とのまたはそれらのフラグメントおよび変異体との配列同一性を基に同定されたAI−2関連またはAAR関連ヌクレオチド配列は、本発明に包含される。PCRまたはハイブリダイゼーションなどの方法を用いて、cDNAまたはゲノムライブラリから配列、例えば本発明の配列と実質的に同一である配列、を同定することができる。例えば、Sambrook et al.(1989)Molecular Cloning:Laboratory Manual(2d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York)およびInnis et al.,(1990)PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications(Academic Press,New York)参照。このようなcDNAおよびゲノムライブラリの構築方法は、当分野では一般に知られており、上記参考文献にも記載されている。
【0058】
ハイブリダイゼーション法において、ハイブリダイゼーションプローブは、ゲノムDNAフラグメントであってもよいし、cDNAフラグメントであってもよいし、RNAフラグメントであってもよいし、または他のオリゴヌクレオチドであってもよく、これらは、本明細書に開示する既知ヌクレオチド配列のすべてまたは一部からなり得る。加えて、これらは、検出可能な基、例えば32P、または任意の他の検出可能なマーカー、例えば他の放射線同位元素、蛍光化合物、酵素もしくは酵素補因子で標識することができる。ハイブリダイゼーション用のプローブは、本明細書に開示する既知AI−2関連またはAAR関連ヌクレオチド配列に基づく合成オリゴヌクレオチドを標識することによって作製することができる。加えて、既知AI−2関連またはAAR関連ヌクレオチド配列またはコードされたアミノ酸配列中の保存ヌクレオチドまたはアミノ酸残基に基づき設計した縮重プライマーを用いることができる。一般に、このハイブリダイゼーションプローブは、ストリンジェントな条件下で、本発明のAI−2関連もしくはAAR関連ヌクレオチド配列またはそのフラグメントもしくは変異体の少なくとも約10、好ましくは約20、さらに好ましくは約50、75、100、125、150、175、200、250、300、350または400の連続するヌクレオチドにハイブリダイズする一定領域のヌクレオチド配列を含む。様々な条件下で特異的なハイブリダイゼーションを達成するために、このようなプローブは、AI−2関連またはAAR関連タンパク質配列の中に一意的な配列を含む。ハイブリダイゼーション用のプローブの作製方法は、当分野において一般に知られており、Sambrook et al.(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York)に開示されている(これは、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0059】
1つの実施形態では、AI−2関連またはAAR関連タンパク質をコードする全ヌクレオチド配列をプローブとして使用して、新規AI−2関連またはAAR関連配列およびメッセンジャーRNAを同定する。もう1つの実施形態において、このプローブは、本明細書に開示するヌクレオチド配列のフラグメントである。一部の実施形態において、ストリンジェントな条件下でこのプローブにハイブリダイズするヌクレオチド配列は、少なくとも約300、325、350、375、400、425、450、500、550、600、650、700、800、900、1000、1500以上のヌクレオチドの長さであり得る。
【0060】
従って、本明細書に開示するAI−2関連またはAAR関連ヌクレオチド配列ならびにそれらのフラグメントおよび変異体に加えて、本発明の単離された核酸分子は、本明細書に開示するAI−2関連もしくはAAR関連ヌクレオチド配列またはそれらのフラグメントおよび変異体から得られる全または部分配列とのハイブリダイゼーションによって他の生物または細胞から同定され、単離された相同DNA配列も包含する。
【0061】
実質的に同一の配列は、ストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズする。「ストリンジェントな条件」は、あるプローブが、検出できるほど多く他の配列よりそのターゲット配列にハイブリダイズする条件を意図する(例えば、バックグラウンドで少なくとも2倍)。一般に、ストリンジェントな条件は、少なくとも約60%、65%、70%または少なくとも約75%の配列同一性を有するヌクレオチドが一般に互いにハイブリダイズしたままである、ハイブリダイゼーションおよび洗浄についての条件を包含する。ストリンジェントな条件は、当分野では公知であり、Ausubel et al.,eds.(1989)Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley & Sons,New York)において見出すことができる。ハイブリダイゼーションは、一般に、約24時間未満、通常は約4から約12時間、行われる。
【0062】
ストリンジェントな条件は、配列依存性であり、異なる環境では異なる。完全長または部分核酸配列を用いて、本発明に包含される相同体およびオーソログを得ることができる。「オーソログ」は、共通の祖先遺伝子に由来する遺伝子であって、種分化の結果として異なる種において見出される遺伝子を意図する。異なる種において見出される遺伝子は、それらのヌクレオチド配列および/またはそれらのコードされているタンパク質配列が、本明細書の他の箇所で定義する実質的同一性を共有する場合、オーソログと考える。オーソログの機能は、多くの場合、種間で高度に保存される。
【0063】
プローブを用いるとき、ストリンジェントな条件は、塩濃度が、pH7.0から8.3でNaイオン約1.5M未満、一般には約0.01から1.0MのNaイオン濃度(または他の塩)であり、温度が、短いプローブ(例えば、ヌクレオチド数10から50のもの)については少なくとも約30℃および長いプローブ(例えば、ヌクレオチド数50より大きいもの)については少なくとも約60℃である条件である。
【0064】
ハイブリダイゼーション後の洗浄は、特異性を制御する手段になる。その2つの重要な要因は、最終洗浄溶液のイオン強度および温度である。完全長またはほぼ完全長ターゲット配列にハイブリダイズする配列の検出のために、ストリンジェント条件下での温度は、被定義イオン強度およびpHで特定の配列についての熱融点(Tm)より約5℃低くなるように選択される。しかし、ストリンジェントな条件は、本明細書において別様に限定されるような所望のストリンジェンシー度に依存して、そのTmより1℃から20℃低い範囲の温度を包含する。DNA−DNAハイブリッドについてのそのTmは、MeinkothおよびWahl(1984)Anal.Biochem.138:267−284の式:Tm=81.5℃+16.6(logM)+0.41(%GC)−0.61(%ホルム)−500/Lを用いて決定することができ、式中、Mは、一価カチオンのモル濃度であり、%GCは、そのDNA中のグアノシンおよびシトシンヌクレオチドのパーセンテージであり、%ホルムは、そのハイブリダイゼーション溶液中のホルムアミドのパーセンテージであり、ならびにLは、そのハイブリッドの塩基対での長さである。このTmは、相補ターゲット配列の50%が、完全にマッチしたプローブにハイブリダイズする(被定義イオン強度およびpHの下での)温度である。
【0065】
様々な相同度を有する配列を検出する能力は、ハイブリダイゼーションおよび/または洗浄条件のストリンジェンシーを変えることによって得ることができる。100%同一(相同プロービング)である配列をターゲットにするには、ミスマッチングを許さないストリンジェンシー条件を達成しなければならない。ヌクレオチド残基のミスマッチングの発生を許すと、より低い類似性度を有する配列を検出し得る(非相当プロービング)。1%のミスマッチングごとに、Tmが約1℃低下される。従って、ハイブリダイゼーションおよび/または洗浄条件は、目標同一性パーセンテージの配列のハイブリダイゼーションを可能にさせるように操作することができる。例えば、95%以上の配列同一性を有する配列が好ましい場合、Tmは、10℃低下され得る。2つのヌクレオチド配列がコードするポリペプチドが、実質的に同一である場合、2つのヌクレオチド配列は、実質的に同一であり得るが、ストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズすることはできない。この状況は、例えば、その遺伝子コードの最大コドン縮重を用いて核酸のコピーを作る場合に生じ得る。
【0066】
例示的な低ストリンジェンシー条件は、37℃で30〜35%ホルムアミド、1MのNaCl、1%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)の緩衝溶液でのハイブリダイゼーション、および50から55℃で1×から2×SSC(20×SSC=3.0MのNaCl/0.3Mのクエン酸三ナトリウム)中での洗浄を含む。例示的な中等度ストリンジェンシー条件は、37℃で40〜45%ホルムアミド、1.0MのNaCl、1%SDS中でのハイブリダイゼーション、および55から60℃で0.5×から1×SSC中での洗浄を含む。例示的な高ストリンジェンシー条件は、37℃で50%ホルムアミド、1MのNaCl、1%SDS中でのハイブリダイゼーション、および60から65℃で0.1×SSC中での洗浄を含む。場合により、洗浄緩衝液は、約0.1%から約1%のSDSを含んでもよい。ハイブリダイゼーションの継続時間は、一般に約24時間未満、通常は約4から約12時間である。核酸のハイブリダイゼーションの詳細なガイドは、Tijssen(1993)Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology−Hybridization with Nucleic Acid Probes,Part I,Chapter 2(Elsevier,New York);およびAusubel et al.,eds.(1995)Current Protocols in Molecular Biology,Chapter 2(Greene Publishing and Wiley−Interscience,New York)において見出される。Sambrook et al.(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2d ed.;Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York)参照。
【0067】
PCRアプローチにおいて、関心のある任意の生物から抽出されたcDNAまたはゲノムDNAからの対応するDNA配列を増幅するために、PCR反応に使用するためのオリゴヌクレオチドプライマーを設計することができる。PCRプライマーは、好ましくは少なくとも約10のヌクレオチドの長さ、最も好ましくは少なくとも約20のヌクレオチドの長さである。PCRプライマーおよびPCRクローニングを設計するための方法は、当分野において一般に知られており、Sambrook et al.(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York)に開示されている。Innis et al.,eds.(1990)PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications(Academic Press,New York);Innis and Gelfand,eds.(1995)PCR Strategies(Academic Press,New York);およびInnis and Gelfand,eds.(1999)PCR Methods Manual(Academic Press,New York)も参照のこと。公知PCR法としては、対合プライマー、ネステッドプライマー、単一部位特異的(single specific)プライマー、縮重プライマー、遺伝子特異的プライマー、ベクター特異的プライマー、部分ミスマッチプライマーなどを用いる方法が挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
iv.アンチセンスヌクレオチド配列
本発明は、アンチセンス核酸分子、すなわち、あるタンパク質をコードするセンス核酸に相補的(例えば、2本鎖cDNA分子のコード鎖に相補的またはmRNA配列に相補的)である分子も包含する。従って、アンチセンス核酸は、センス核酸に水素結合することができる。アンチセンス核酸は、全AI−2関連またはAAR関連コード鎖に相補的である場合もあり、またはその一部だけに、例えば、そのタンパク質コード領域のすべてもしくは一部(またはオープンリーディングフレーム)に相補的である場合もある。アンチセンス核酸分子は、AI−2関連またはAAR関連タンパク質をコードするヌクレオチド配列のコード鎖の非コード領域に対してアンチセンスである場合もある。前記非コード領域は、そのコード領域に隣接しており、且つ、アミノ酸に翻訳されない、5’および3’配列である。アンチセンスヌクレオチド配列は、ターゲット遺伝子の発現を中断させる際に有用である。対応する配列と70%、80%または85%の配列同一性を有するアンチセンス構築物を使用してもよい。
【0069】
本明細書に開示するAI−2関連またはAAR関連タンパク質をコードするコード鎖配列(例えば、奇数の配列番号1〜21、33、35または37)の場合、ワトソンおよびクリックの塩基対合の法則に従って、本発明のアンチセンス核酸を設計することができる。このアンチセンス核酸分子は、AI−2関連またはAAR関連mRNAの全コード領域に相補的である場合もあるが、より好ましくは、AI−2関連またはAAR関連mRNAのコード領域の一部のみまたは非コード領域に対してアンチセンスであるオリゴヌクレオチドである。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えば、約5、10、15、20、25、30、35、40、45もしくは50のヌクレオチドの長さである場合があり、または100、200以上のヌクレオチドの長さである場合もある。本発明のアンチセンス核酸は、当分野において公知の化学合成および酵素的ライゲーション手順を用いて構築することができる。
【0070】
本発明のアンチセンス核酸分子は、α−アノマー核酸分子である場合がある(Gaultier et al.(1987)Nucleic Acids Res.15:6625−6641)。このアンチセンス核酸分子は、2’−o−メチルリボヌクレオチド(Inoue et al.(1987)Nucleic Acids Res.15:6131−6148)またはキメラRNA−DNA類似体(Inoue et al.(1987)FEBS Lett.215:327−330)も含むことができる。本発明は、相補的領域を有するmRNAなどの1本鎖核酸を切断することができるリボヌクレアーゼ活性を有する触媒RNA分子である、リボザイムも包含する。本発明は、三重らせん構造を形成する核酸分子も包含する。一般に、Helene(1991)Anticancer Drug Des.6(6):569;Helene(1992)Ann.N.Y.Acad.Sci.660:27;およびMaher(1992)Bioassays 14(12):807参照。
【0071】
一部の実施形態において、本発明の核酸分子は、塩基部分、糖部分またはリン酸骨格で改変して、例えば、その分子の安定性、ハイブリダイゼーションまたは溶解性を改善することができる。本明細書において、用語「ペプチド核酸」または「PNA」は、そのデオキシリボースリン酸骨格が擬似ペプチド骨格によって置換されており、且つ、4つの天然核酸塩基のみが保持されている核酸模倣体、例えばDNA模倣体を指す。PNAの中性骨格は、低イオン強度条件下でDNAおよびRNAに特異的にハイブリダイズできることが証明された。PNAオリゴマーの合成は、例えば、Hyrup et al.(1996)上記;Perry−O’Keefe et al.(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:14670に記載されているような、標準的な固相ペプチド合成プロトコルを用いて行うことができる。
【0072】
もう1つの実施形態において、AI−2関連またはAAR関連分子のPNAは、例えば、親油性基もしくは他のヘルパー基をPNAに結合させることによって、PNA−DNAキメラの形成によって、またはリポソームもしくは当分野では公知の他のドラッグデリバリー技術の使用によってそれらの安定性、特異性または細胞取り込みを向上させるように、改変することができる。PNA−DNAキメラの合成は、Hyrup(1996)上記;Finn et al.(1996)Nucleic Acids Res.24(17):3357−63;Mag et al.(1989)Nucleic Acids Res.17:5973;およびPeterson et al.(1975)Bioorganic Med.Chem.Lett.5:1119に記載されているとおり、行うことができる。
【0073】
v.融合タンパク質
本発明は、AI−2関連またはAAR関連キメラまたは融合タンパク質も含む。AI−2関連またはAAR関連「キメラタンパク質」または「融合タンパク質」は、非AI−2関連またはAAR関連ポリペプチドに動作可能に連結されているAI−2関連またはAAR関連ポリペプチドを含む。「AI−2関連」または「AAR関連ポリペプチド」は、AI−2の生産にまたはAARに関与するポリペプチドに対応するアミノ酸配列を有するポリペプチドを指し、これに対して「非AI−2関連」または「非AAR関連ポリペプチド」は、AI−2の生産にまたはAARに関与し、且つ、同じまたは異なる生物に由来するポリペプチドと実質的に同一でないタンパク質に対応するアミノ酸配列を有するポリペプチドを指す。AI−2関連またはAAR関連融合タンパク質の中で、AI−2関連またはAAR関連ポリペプチドは、好ましくはAI−2関連またはAAR関連タンパク質の少なくとも1つの生物活性部分を含む、AI−2関連またはAAR関連タンパク質のすべてまたは一部に相当し得る。この融合タンパク質の中で、用語「動作可能に連結されている」は、AI−2関連またはAAR関連ポリペプチドと非AI−2関連またはAAR関連ポリペプチドとが、インフレームで互いに連結していることを示すことを意図する。前記非AI−2関連またはAAR関連ポリペプチドは、前記AI−2関連またはAAR関連ポリペプチドのN末端またはC末端に連結させることができる。
【0074】
連結されたコード配列の発現により、融合タンパク質を形成する2つの連結された異種アミノ酸配列を生じる。担体配列(非AI−2関連またはAAR関連ポリペプチド)は、細菌宿主における融合タンパク質の発現を強化または増加させる担体ポリペプチドをコードすることができる。担体配列によってコードされる融合タンパク質の部分、すなわち、担体ポリペプチドは、タンパク質フラグメントであってもよく、機能的部分全体であってもよく、またはタンパク質配列全体であってもよい。加えて、前記担体領域またはポリペプチドは、抗体で、またはその担体ポリペプチドに対する特異的なアフィニティー精製で、融合タンパク質を精製する際に使用することができるように設計することができる。同様に、前記担体ポリペプチドの物理的特性を利用して、その融合タンパク質を選択的に精製することができる。
【0075】
関心のある特定の担体ポリペプチドとしては、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、マルトース結合タンパク質(MBP)、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、N末端ヒスチジン(His)タグなどが挙げられる。このリストは、限定的なものと解釈すべきではない。そのAI−2関連またはAAR関連タンパク質の発現を強化する任意の担体ポリペプチドを、融合タンパク質として、本発明の方法において使用することができるからである。
【0076】
1つの実施形態において、前記融合タンパク質は、AI−2関連またはAAR関連配列がGST配列のC末端に融合している、GST−AI−2関連またはAAR関連融合タンパク質である。もう1つの実施形態において、前記融合タンパク質は、AI−2関連またはAAR関連タンパク質のすべてまたは一部が多数の免疫グロブリンタンパク質ファミリーに由来する配列に融合している、AI−2関連またはAAR関連免疫グロブリン融合タンパク質である。本発明のAI−2関連またはAAR関連免疫グロブリン融合タンパク質を免疫原として使用して、被験対象において抗AI−2関連またはAAR関連抗体を生産すること、AI−2関連またはAAR関連リガンドを精製すること、およびスクリーニングアッセイにおいてAI−2関連またはAAR関連タンパク質とAI−2関連またはAAR関連リガンドとの相互作用を阻害する分子を同定することができる。
【0077】
特定の担体ポリペプチドが、その精製計画を念頭において選択されることは、当業者には理解される。例えば、Hisタグ、GST、およびマルトース結合タンパク質は、それらを結合させ溶離することが可能な、容易に利用できる親和性カラムを有する担体ポリペプチドの代表である。従って、担体ポリペプチドが、N末端Hisタグ、例えばヘキサヒスチジン(His6タグ)である場合、そのAI−2関連またはAAR関連融合タンパク質は、金属キレート樹脂、例えばニッケルニトリロ三酢酸(Ni−NTA)、ニッケルイミノ二酢酸(Ni−IDA)、およびコバルト含有樹脂(Co−樹脂)、を含むマトリックスを使用して精製することができる。例えば、Steinert et al.(1997)QIAGEN News 4:11−15参照(これは、その全体として、参照により本明細書に組み込まれる)。担体ポリペプチドが、GSTである場合、そのAI−2関連またはAAR関連融合タンパク質は、グルタチオン−アガロースビーズ(SigmaまたはPharmacia Biotech)を含むマトリックスを使用して精製することができ、担体ポリペプチドが、マルトース結合タンパク質(MBP)である場合、そのAI−2関連またはAAR関連融合タンパク質は、アミロースで誘導体化されたアガロース樹脂を含むマトリックスを使用して精製することができる。
【0078】
好ましくは、本発明のキメラまたは融合タンパク質は、標準的な組換えDNA法によって生産される。例えば、異なるポリペプチド配列をコードするDNAフラグメントをインフレームで互いにライゲートすることができ、またはその融合遺伝子を、例えば自動DNA合成装置で合成することができる。あるいは、2つの保存的遺伝子フラグメント間の相補的オーバーハングを生じさせるアンカープライマーを使用して、遺伝子フラグメントのPCR増幅を行うことができ、その後、それをアニールし、再び増幅して、キメラ遺伝子配列を作成することができる(例えば、Ausubel et al.,eds.(1995)Current Protocols in Molecular Biology(Greene Publishing and Wiley−Interscience,New York)参照)。さらに、AI−2関連またはAAR関連コード核酸は、それを既存の融合部分にインフレームで連結させるように市販の発現ベクターにクローニングすることができる。
【0079】
一般に、融合タンパク質発現ベクターは、担体ポリペプチドの除去が容易であり、AI−2関連またはAAR関連タンパク質がそれに付随する天然の生物活性を維持できるように設計される。融合タンパク質を切断するための方法は、当分野では公知である。例えば、Ausubel et al.,eds.(1998)Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley & Sons,Inc.)参照。融合タンパク質の化学的切断は、試薬、例えば臭化シアン、2−(2−ニトロフェニルスルフェニル)−3−メチル−3’−ブロモインドレニン、ヒドロキシルアミン、または低pHで達成することができる。化学的切断は、不溶性融合タンパク質以外を切断するために、しばしば変性条件下で達成される。
【0080】
担体ポリペプチドからのAI−2関連またはAAR関連ポリペプチドの分離が望まれ、これらの融合ポリペプチド間の接合点での切断部位が自然には発生しない場合、担体ポリペプチドの酵素的切断および除去を助長する特定のプロテアーゼ切断部位を含むように融合構築物を設計することができる。本方法では、関心のある酵素に特異的な切断部位を有するペプチドについてのコード配列を含むリンカー配列を、その担体ポリペプチドについてのコード配列(例えば、MBP、GST、SOD、またはN末端Hisタグ)とAI−2関連またはAAR関連ポリペプチドについてのコード配列の間にインフレームで融合させることができる。切断部位に対する特異性を有する適切な酵素としては、Xa因子、トロンビン、エンテロキナーゼ、レミン、コラゲナーゼ、およびタバコエッチウイルス(TEV)プロテアーゼが挙げられるが、これらに限定されない。これらの酵素の切断部位は、当分野では周知である。従って、例えば、AI−2関連またはAAR関連ポリペプチドから担体ポリペプチドを切断するためにXa因子を使用しようとする場合、Xa因子感受性切断部位をコードするリンカー配列、例えば配列IEGR(例えば、Nagai and Thogersen(1984)Nature 309:810−812,Nagai and Thogersen(1987)Meth.Enzymol.153:461−481、およびPryor and Leiting(1997)Protein Expr.Purif.10(3):309−319参照(これらは、参照により本明細書に組み込まれる))を含むように、その融合構築物を設計することができる。AI−2関連またはAAR関連ポリペプチドから担体ポリペプチドを切断するためにトロンビンを使用しようとする場合、トロンビン感受性切断部位をコードするリンカー配列、例えば配列LVPRGSまたはVIAGR(例えば、それぞれ、Pryor and Leiting(1997)Protein Expr.Purif.10(3):309−319、およびHong et al.(1997)Chin.Med.Sci.J.12(3):143−147参照(これらは、参照により本明細書に組み込まれる))を含むように、その融合構築物を設計することができる。TEVプロテーゼについての切断部位は、当分野では公知である。例えば、米国特許第5,532,142号(これは、その全体として、参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている切断部位を参照のこと。Ausubel et al.,eds.(1998)Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley & Sons,Inc.),Chapter 16における考察も参照のこと。
【0081】
vi.抗体
本発明の単離されているポリペプチドは、AI−2関連もしくはAAR関連タンパク質に特異的に結合する抗体を産生させるために、またはAI−2関連もしくはAAR関連ポリペプチドに対するインビボでの抗体の生産を刺激するために、免疫原として使用することができる。完全長AI−2関連またはAAR関連タンパク質を免疫原として使用することができ、または、代わりになるべきものとして、本明細書に記載するようなAI−2関連またはAAR関連タンパク質の抗原性ペプチドフラグメントを使用することができる。AI−2関連またはAAR関連タンパク質の抗原性ペプチドは、偶数の配列番号2〜22、34、36または38に示すアミノ酸配列の少なくとも8、好ましくは10、15、20または30のアミノ酸残基を含み、ならびにAI−2関連またはAAR関連タンパク質のエピトープを包含するので、そのペプチドに対して産生させた抗体はAI−2関連またはAAR関連タンパク質と特異的免疫複合体を形成する。前記抗原性ペプチドに包含される好ましいエピトープは、そのタンパク質の表面に位置するAI−2関連またはAAR関連タンパク質の領域、例えば親水性領域である。
【0082】
vii.アッセイ
サンプルにおける本開示ポリペプチドおよび/または核酸分子の発現ならびにそれらの開示活性を検出するための診断アッセイを開示する。サンプル中の、本開示ポリペプチドを含む本開示核酸またはタンパク質の存在または不在を検出するための、例示的な方法は、食品/乳製品/飼料製品、スターターカルチャー(マザー、種、バルク/セット、濃縮したもの、乾燥したもの、凍結乾燥したもの、冷凍したもの)、培養食品/乳製品/飼料製品、栄養補助食品、バイオプロセッシング発酵物、またはプロバイオティック材料を消化した被験対象からサンプルを得ること、およびその開示ポリペプチドまたは核酸(例えば、その開示核酸またはそのフラグメントを含むmRNAもしくはゲノムDNA)を検出することができる化合物または作用因子と被験対象からのサンプルを、そのサンプル中のその開示配列の存在が検出されるように接触させることを含む。その食品、栄養補助食品、培養物、製品または被験対象からのサンプルで得た結果を、対照となる培養物、製品または被験対象からのサンプルで得た結果と比較することができる。
【0083】
開示するヌクレオチド配列を含むmRNAまたはゲノムDNAを検出するための1つの作用因子は、そのmRNAまたはゲノムDNAの開示ヌクレオチド配列にハイブリダイズさせることができる標識核酸プローブである。この核酸プローブは、例えば、開示核酸分子、例えば、奇数の配列番号1〜21、33、35、37またはその一部分の核酸、例えば、少なくとも15、30、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500以上のヌクレオチドの長さであり、その開示核酸配列を含むmRNAまたはゲノムDNAにストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズするために十分な核酸分子であり得る。本発明の診断アッセイにおいて使用するための他の適するプローブを本明細書で説明する。
【0084】
開示ポリペプチド配列を含むタンパク質を検出するための1つの作用因子は、その開示ポリペプチドに結合することができる抗体、好ましくは検出可能な標識を有する抗体である。抗体は、ポリクローナルであってもよいし、またはより好ましくはモノクローナルであってもよい。無標識の抗体またはそのフラグメント(例えば、FabもしくはF(abN)2)を使用することができる。プローブまたは抗体に関して、用語「標識された」は、そのプローブまたは抗体に検出可能な物質をカップリングさせること(すなわち、物理的に連結させること)によるそのプローブまたは抗体の直接標識付け、ならびに直接標識される別の試薬との反応性によるそのプローブまたは抗体の間接的標識付けを包含することを意図する。関節的標識付けの例としては、蛍光標識二次抗体を使用する一次抗体の検出、および蛍光標識ストレプトアビジンで検出することができるようなビオチンでのDNAプローブの末端標識付けが挙げられる。
【0085】
用語「サンプル」は、被験対象に存在するまたは被験対象から単離された組織、細胞および生体液、ならびにスターターカルチャーもしくはそのような培養物を有する食品からの、またはそのような培養物の使用から誘導された細胞を含むことを意図する。すなわち、本発明の検出方法を用いて、サンプル中の開示配列を含むmRNA、タンパク質またはゲノムDNAをインビトロでも、インビボでも検出することができる。開示する配列を含むmRNAのインビトロ検出法としては、ノーザンハイブリダイゼーションおよびインサイチューハイブリダイゼーションが挙げられる。開示ポリペプチドを含むタンパク質のインビトロ検出法としては、酵素結合免疫吸着法(ELISA)、ウエスタンブロット、免疫沈降法および免疫蛍光法が挙げられる。開示するヌクレオチド配列を含むゲノムDNAのインビトロ検出法としては、サザンハイブリダイゼーションが挙げられる。さらに、開示ポリペプチドを含むタンパク質のインビボ検出法としては、その開示ポリペプチドに対する標識抗体の被験対象への導入が挙げられる。例えば、この抗体は、被験対象におけるその存在および位置を標準的な撮像法によって検出することができる放射活性マーカーで、標識することができる。
【0086】
1つの実施形態において、上記サンプルは、プロバイオティック材料を消費した被験対象からのタンパク質分子を含有する。あるいは、上記サンプルは、スターターカルチャーからのmRNAまたはゲノムDNAを含有することができる。
【0087】
本発明は、サンプル中の、開示ポリペプチドを含む開示核酸またはタンパク質の存在を検出するためのキットも包含する。このようなキットを使用して、本発明の特異的ポリペプチドを発現する微生物が、食品もしくはスターターカルチャー中に、またはプロバイオティック材料を消費した被験対象に存在するかどうかを判定することができる。例えば、本キットは、サンプル中の開示ポリペプチドまたはmRNAを検出することができる標識された化合物または因子、ならびにサンプル中の開示ポリペプチドの量を判定するための手段(例えば、開示ポリペプチド、例えば奇数の配列番号1〜21、33、35または37をコードするDNAに結合している、開示ポリペプチドまたはオリゴヌクレオチドプローブを認識する抗体)を含むことができる。キットは、このような化合物の使用を詳述する取扱説明書も含むことができる。
【0088】
抗体ベースのキットの場合、そのキットは、例えば、(1)開示ポリペプチドに結合する第一抗体(例えば、固体支持体に取り付けられているもの);および場合によっては、(2)開示ポリペプチドまたは前記第一抗体に結合し、且つ、検出可能な作用因子にコンジュゲートされている別の第二抗体を含むことができる。オリゴヌクレオチドベースのキットの場合、そのキットは、例えば、(1)開示核酸配列にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、例えば検出可能に標識されたオリゴヌクレオチド、または(2)開示核酸分子を増幅させるために有用な一対のプライマーを含むことができる。
【0089】
このキットは、例えば、緩衝剤、保存薬、またはタンパク質安定剤も含むことができる。このキットは、検出可能な作用因子(例えば、酵素または基質)を検出するために必要な成分も含むことができる。このキットは、含まれている試験サンプルをアッセイし、比較することができる対照サンプルまたは一連の対照サンプルも含むことができる。このキットの各成分は、通常は個々の容器に封入されており、その様々な容器のすべてが、使用のための取扱説明書と共に単一のパッケージの中にある。
【0090】
1つの実施形態において、このキットは、例えば米国特許第5,412,087号および同第5,545,531号ならびに国際公開番号WO 95/00530(これらは、参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているもののような、アレイフォーマットで多数のプローブを含む。このアレイにおいて使用するためのプローブは、国際公開番号WO 95/00530に開示されているようにそのアレイの表面で直接合成することができ、またはそのアレイ表面に固定される前に合成することもできる(Gait,ed.(1984),Oligonucleotide Synthesis a Practical Approach IRL Press Oxford,England)。それらのプローブは、当業者には周知の技法、例えば、米国特許第5,412,087号に記載されているものを用いて、その表面に固定することができる。プローブは、核酸もしくはペプチド配列、好ましくは精製されたもの、または抗体であり得る。
【0091】
それらのアレイを使用して、生物、サンプルまたは製品を、それらのゲノム、cDNA、ポリペプチドまたは抗体含有率(特定の配列またはタンパク質の存在または不在を含む)、ならびにこれらの材料の濃度について、スクリーニングすることができる。捕捉プローブへの結合は、例えば、開示核酸配列を含む核酸分子、開示するアミノ酸配列を含むポリペプチド、または抗体に取り付けた標識から発生されるシグナルによって検出される。本方法は、開示核酸、ポリペプチドまたは抗体を含む分子を、複数の捕捉プローブを有する第一アレイおよび異なる複数の捕捉プローブを有する第二アレイと接触させることを含むことができる。各ハイブリダイゼーションの結果を比較して、第一サンプルと第二サンプルの間の発現の相違を分析することができる。第一の複数の捕捉プローブは、対照サンプル、例えば野生型乳酸菌、または対照被験体、例えば食品、健康補助食品、スターターカルチャーサンプルもしくは生体液からのものであり得る。前記第二の複数の捕捉プローブは、実験サンプル、例えば突然変異型乳酸菌、またはプロバイオティック材料を消費した被験体、例えばスターターカルチャーサンプルもしくは生体液からのものであり得る。
【0092】
これらのアッセイは、望ましくない材料の検出が必須である場合に、微生物の選択および品質制御手順において特に有用であり得る。特定のヌクレオチド配列またはポリペプチドの検出は、食品、発酵製品、または産業微生物、またはプロバイオティック細菌を消費した動物もしくはヒトの消化器系に存在する微生物の、遺伝子組成を決定する際にも有用であり得る。
【0093】
開示ポリペプチドおよび/または核酸分子の発現を検出するためのアッセイは、AI−2の検出および/または定量も含むことができる。AI−2の検出方法は、本明細書の他の箇所で説明する。付着、例えば、付着適応条件に反応しての付着を測定するためのアッセイは、本発明のポリペプチドの発現を評価するために測定され得る。このような方法も、本明細書の他の箇所で説明する。
【0094】
III.組換え発現ベクターおよび宿主細胞
本発明の核酸分子は、ベクター、好ましくは発現ベクターに含めることができる。「ベクター」は、それに連結された別の核酸を輸送することができる核酸分子を指す。発現ベクターは、1つ以上の調節配列を含み、それらが動作可能に連結されている遺伝子の発現を指示する。「動作可能に連結されている」は、関心のあるヌクレオチド配列が、(例えば、インビトロ転写/翻訳システムにおいて、またはそのベクターが宿主細胞に導入されるときには宿主細胞において)そのヌクレオチド配列の発現を可能にさせるように調節配列に連結されていることを意図する。用語「調節配列」は、制御できる転写プロモーター、オペレータ、エンハンサ、転写ターミネータ、および他の発現制御要素、例えば翻訳制御配列(例えば、Shine−Dalgarnoコンセンサス配列、開始および停止コドン)を含むことを意図する。これらの調節配列は、例えば、使用される宿主細胞に依存して異なる。
【0095】
上記ベクターは、宿主細胞において独立に複製されることもあり(エピソームベクター)、または宿主細胞のゲノムに組み込まれ、その宿主ゲノムと一緒に複製されることもある(非エピソーム哺乳動物ベクター)。一般に、組み込みベクターは、細菌染色体と相同性の配列を少なくとも1つ含み、それによって、そのベクターの相同DNAとその細菌染色体の間の組換えが発生し得る。組み込みベクターは、バクテリオファージまたはトランスポゾン配列も含んでもよい。エピソームベクター、すなわちプラスミドは、追加のDNAセグメントを連結することができる環状2本鎖DNAループである。宿主内での安定な維持が可能なプラスミドは、一般に、組換えDNA法を用いるときの発現ベクターの好ましい形態である。
【0096】
本発明に包含される発現構築物またはベクターは、宿主細胞における核酸の発現に適する形態で、本発明の核酸構築物を含む。原核宿主細胞における発現は、本発明に包含される。発現ベクターの設計が、形質転換される宿主細胞の選択、所望されるタンパク質の発現レベルなどのような因子に依存し得ることは、当業者に理解される。本発明の発現ベクターを宿主細胞に導入して、本明細書に記載するような核酸によってコードされる、融合タンパク質またはペプチドを含むタンパク質またはペプチド(例えば、AI−2関連またはAAR関連タンパク質、AI−2関連またはAAR関連タンパク質の突然変異形、融合タンパク質など)を生じさせることができる。
【0097】
調節配列としては、ヌクレオチド配列の構成的発現を指示するもの、ならびに一定の環境条件下でのみヌクレオチド配列の誘導発現を指示するものが挙げられる。細菌プロモーターは、細菌RNAポリメラーゼに結合することができ、且つ、mRNAへのコード配列(例えば、構造遺伝子)の下流(3’)転写を開始させることができる、任意のDNA配列である。プロモーターは、通常はそのコード配列の5’末端に隣接して配置される、転写開始領域を有する。この転写開始領域は、一般に、RNAポリメラーゼ結合部位および転写開始部位を含む。細菌プロモーターは、オペレータと呼ばれる第二のドメインも有してもよく、これは、RNA合成が開始する隣接RNAポリメラーゼ結合部位と重なってもよい。このオペレータは、負の調節性(誘導性)転写を可能にする。例えば、遺伝子リプレッサータンパク質がこのオペレータに結合し、それによって特定の遺伝子の転写を阻害することができる。構成的発現は、負の調節要素、例えばオペレータの不在時に発生し得る。加えて、正の調節は、遺伝子アクチベータタンパク質結合配列によって達成することができ、これは、存在する場合、通常、RNAポリメラーゼ結合配列に隣接している(5’)。
【0098】
遺伝子アクチベータタンパク質の例は、大腸菌におけるlacオペロンの転写の開始を助けるカタボライト活性化タンパク質(CAP)である(Raibaud et al.(1984)Annu.Rev.Genet.18:173)。従って、調節された発現は正または負のいずれかであり、それによって、転写は増進または減少する。正および負の調節要素の他の例は、当分野では周知である。タンパク質発現系に含めることができる様々なプロモーターとしては、T7/LacOハイブリッドプロモータ、trpプロモーター、T7プロモータ、lacプロモーターおよびバクテリオファージラムダプロモータが挙げられるが、これらに限定されない。負のプロモーターまたは異種プロモーターを含む任意の適するプロモーターを使用して、本発明を行うことができる。異種プロモーターは、構成的に活性であってもよく、または誘導性であってもよい。異種プロモーターの非限定的な例は、KullenおよびKlaenhammerの米国特許第6,242,194号に与えられている。
【0099】
代謝経路酵素をコードする配列は、特に有用なプロモーター配列を提供する。例としては、糖代謝酵素、例えばガラクトース、ラクトース(lac)(Chang et al.(1987)Nature 198:1056)およびマルトースに由来するプロモーター配列が挙げられる。追加の例としては、生合成酵素、例えばトリプトファン(trp)(Goeddel et al.(1980)Nucleic Acids Res.8:4057;Yelverton et al.(1981)Nucleic Acids Res.9:731;米国特許第4,738,921号;EPO公開第36,776号および同第121,775号)に由来するプロモーター配列が挙げられる。β−ラクタマーゼ(bla)プロモーター系(Weissmann,(1981)「The Cloning of Interferon and Other Mistakes,」 in Interferon 3(ed.I.Gresser);バクテリオファージラムダPL(Shimatake et al.(1981)Nature 292:128);アラビノース誘導性araBプロモーター(米国特許第5,028,530号);およびT5(米国特許第4,689,406号)プロモーター系も、有用なプロモーター配列を提供する。大腸菌発現系を論じているBaLBAs(2001)Mol.Biotech.19:251−267も参照のこと。
【0100】
加えて、自然には発生しない合成プロモーターも細菌プロモーターとして機能する。例えば、1つの細菌またはバクテリオファージプロモータの転写活性化配列を、別の細菌またはバクテリオファージプロモータのオペロン配列と連結させて、合成ハイブリッドプロモータを作ることができる(米国特許第4,551,433号)。例えば、tac(Amann et al.(1983)Gene 25:167;de Boer et al.(1983)Proc.Natl.Acad.Sci.80:21)およびtrc(Brosius et al.(1985)J.Biol.Chem.260:3539−3541)プロモーターは、lacリプレッサーによって調節される、trpプロモーター配列とlacオペロン配列の両方からなる、ハイブリッドtrp−lacプロモーターである。このtacプロモーターは、誘導性調節配列であるという追加の特徴を有する。従って、例えば、イソプロピル−1−チオ−β−D−ガラクトシド(IPTG)の添加により、細胞培養物においてtacプロモーターに動作可能に連結されているコード配列の発現を誘導することができる。さらに、細菌プロモーターは、細菌RNAポリメラーゼに結合し、転写を開始させる能力を有する非細菌起源の自然発生プロモーターを含むことができる。非細菌起源の自然発生プロモーターを相溶性RNAポリメラーゼとカップリングさせて、原核生物において幾つかの遺伝子の高レベルの発現を生じさせることもできる。バクテリオファージT7 RNAポリメラーゼ/プロモーター系は、カップリングさせるプロモーター系の一例である(Studier et al.(1986)J.Mol.Biol.189:113;Tabor et al.(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.82:1074)。加えて、ハイブリッドプロモータは、バクテリオファージプロモータおよび大腸菌オペレータ領域から構成することもできる(EPO公開第267,851号)。
【0101】
上記ベクターは、そのプロモーターのためのリプレッサー(またはインデューサ)をコードする遺伝子を追加的に含有してもよい。例えば、本発明の誘導性ベクターは、LacIリプレッサータンパク質をコードする遺伝子を発現させることによって、Lacオペレータ(LacO)からの転写を調節することができる。他の例としては、pRecAの発現を調節するためのlexA遺伝子の使用、およびptrpを調節するためのtrpOの使用が挙げられる。抑制の程度を増加させる(例えば、lacIq)または誘導の様式を変更する(例えば、ラムダpLを熱誘導性にするラムダCI857、またはラムダpLを化学的誘導性にするラムダCI+)そのような遺伝子の対立遺伝子を利用することができる。
【0102】
機能性プロモーター配列に加えて、効率的なリボソーム結合部位も融合構築物の発現に有用である。原核生物において、このリボソーム結合部位は、Shine−Dalgarno(SD)配列と呼ばれ、開始コドン(ATG)と、その開始コドンの上流3〜11ヌクレオチドに位置する長さ3〜9ヌクレオチドの配列とを含む(Shine et al.(1975)Nature 254:34)。このSD配列は、そのSD配列と細菌16S rRNAの3’末端の間の塩基の対合によって、mRNAのそのリボソームへの結合を促進すると考えられる(Steitz et al.(1979)「Genetic Signals and Nucleotide Sequences in Messenger RNA,」 in Biological Regulation and Development:Gene Expression(ed.R.F.Goldberger,Plenum Press,NY)。
【0103】
AI−2関連またはAAR関連タンパク質は、細菌においてAI−2関連またはAAR関連ポリペプチドの分泌を生じさせるシグナルペプチド配列フラグメントを含むタンパク質をコードするキメラDNA分子を作ることによって、細胞から分泌させることもできる(米国特許第4,336,336号)。一般に、このシグナル配列フラグメントは、その細胞からのタンパク質の分泌を指示する疎水性アミノ酸からなるシグナルペプチドをコードする。このタンパク質は、増殖培地(グラム陽性菌)に分泌されるか、細胞の内膜と外膜の間に位置するペリプラズム間隙(グラム陰性菌)に分泌される。好ましくは、インビボまたはインビトロいずれかで切断することができるプロセッシング部位が存在し、これは、そのシグナルペプチドフラグメントとAI−2関連またはAAR関連タンパク質の間にコードされている。
【0104】
適するシグナル配列をコードするDNAを、分泌細菌タンパク質の遺伝子、例えば、大腸菌外膜タンパク質遺伝子(ompA)(Masui et al.(1983)FEBS Lett.151(1):159−164;Ghrayeb et al.(1984)EMBO J.3:2437−2442)および大腸菌アルカリホスファターゼシグナル配列(phoA)(Oka et al.(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.82:7212)から誘導することができる。他の原核性シグナルとしては、例えば、ペニシリナーゼからのシグナル配列、Ipp、または耐熱性エンテロトキシンIIリーダーが挙げられる。
【0105】
L.アシドフィルス(L.acidophilus)などの細菌は、アミノ酸メチオニン(これは、原核生物では、N−ホルミルメチオニンへと改変される)を特定する開始コドンATGを利用する。細菌は、代替開始コドン、例えば、バリンおよびロイシンをそれぞれコードするコドンGTGおよびTTGも認識する。しかし、それらが開始コドンとして用いらるとき、これらのコドンは、それらが通常コードするアミノ酸の組み込みではなくメチオニンの組み込みを指示する。ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)NCFMは、これらの代替開始部位を認識し、メチオニンを第一アミノ酸として組み込む。
【0106】
一般に、細菌によって認識される転写停止配列は、調節領域であり、これらの領域は、翻訳停止コドンに対して3’に位置し、従って、プロモーターと共に、そのコード配列に隣接する。これらの配列は、DNAによってコードされているポリペプチドに翻訳することができるmRNAの転写を指示する。多くの場合、転写停止配列は、転写の停止を助長するステムループ構造を形成することができるDNA配列(約50のヌクレオチドのもの)を含む。例としては、強力なプロモーターを有する遺伝子、例えば大腸菌におけるtrp遺伝子および他の生合成遺伝子に由来する転写停止配列が挙げられる。
【0107】
発現ベクターは、AI−2関連またはAAR関連配列を挿入するための複数の制限部位を有し、そのため、調節領域の転写調節下にある。細胞内でベクターの維持を保証する選択可能マーカー遺伝子も発現ベクターに含めることができる。好ましい選択可能マーカーとしては、アンピシリン、クロラムフェニコール、エリスロマイシン、カナマイシン(ネオマイシン)およびテトラサイクリンなどの薬物に対する耐性を付与するもの(Davies et al.(1978)Annu.Rev.Microbiol.32:469)が挙げられる。選択可能マーカーは、最小培地を用いて、または毒性代謝生成物の存在下で細胞を増殖させることもでき、ならびに生合成遺伝子、例えばヒスチジン、トリプトファンおよびロイシン生合成経路にあるものを含んでもよい。
【0108】
本明細書において、配列に関して「異種の」は、外来種起源の配列、または同じ種からの場合には、人間による計画的介入によって組成および/もしくはゲノム座がその天然形から実質的に改変されている配列を指す。例えば、異種ポリヌクレオチドに動作可能に連結されているプロモーターは、そのポリヌクレオチドが採取された種とは異なる種からのものであり、または、同じ/類似した種からのものである場合には、一方もしくは両方が、それらの元の形態および/もしくはゲノム座から実質的に改変されており、あるいはそのプロモーターは、その動作可能に連結されているポリヌクレオチドについての天然プロモーターではない。
【0109】
調節領域は、天然のもの(相同)であってもよく、または宿主細胞および/もしくは本発明のヌクレオチド配列とは異質(異種)であってもよい。調節領域は、天然であってもよく、または合成であってもよい。調節領域が、宿主細胞とは「異質」または「異種」である場合、その調節領域が導入される天然細胞には該当する領域がないことを意図する。調節領域が、本発明のAI−2関連またはAAR関連ヌクレオチド配列とは「異質」または「異種」である場合、その調節領域が、本発明の動作可能に連結されているAI−2関連またはAAR関連ヌクレオチド配列について天然または自然発生領域ではないことを意図する。例えば、この領域は、ファージ由来であり得る。異種調節領域を用いて配列を発現させるほうが好ましいが、天然領域を用いることもできる。このような構築物は、場合によっては、宿主細胞内のAI−2関連またはAAR関連タンパク質の発現レベルを変えるように発現される。従って、宿主細胞の表現型を変えることがある。
【0110】
発現カセットを作製する際、様々なDNAフラグメントを操作して、適正な配向で、および適切な場合には適正なリーディングフレーム内にDNA配列を提供することができる。この目的に向けて、アダプターまたはリンカーを利用してDNAフラグメントを連結することもあり、または適便な制限部位、余分なDNAの除去または制限部位の除去などを生じさせるために他の操作を必要とすることもある。このために、インビトロ突然変異誘発、プライマー修復、制限、アニーリング、再置換、例えば転位および転換を必要とすることがある。
【0111】
本発明は、アンチセンス配向で発現ベクターにクローニングされた本発明のDNA分子を含む組換え発現ベクターをさらに提供する。すなわち、AI−2関連またはAAR関連mRNAに対してアンチセンスであるRNA分子の発現を(そのDNA分子の転写によって)可能にさせる様式で、DNA分子を調節配列に動作可能に連結させる。アンチセンス配向でクローニングされた核酸に動作可能に連結させる調節配列を選択して、そのアンチセンスRNA分子の連続または誘導性発現を指示することができる。このアンチセンス発現ベクターは、高効率調節領域の制御下でアンチセンス核酸が生産される組換えプラスミドまたはファージミドの形態であり得、その活性は、そのベクターが導入される細胞タイプによって決定され得る。アンチセンス遺伝子を用いる遺伝子発現の調節の考察については、Weintraub et al.(1986)Reviews−Trends in Genetics,Vol.1(1)を参照のこと。
【0112】
あるいは、上で説明した成分の幾つかを形質転換ベクターに共に組み込むことができる。一般に、形質転換ベクターは、上で説明したように、レプリコン内で維持されるまたは組み込みベクターに発達する選択可能マーカーからなる。
【0113】
IV.微生物または細菌宿主細胞
関心のある任意の細菌を本発明の方法および組成物において使用することができる。本発明の特定の実施形態において、本方法に利用される細菌は、プロバイオティック細菌である。「プロバイオティック」は、胃腸管を生きたまま通過し、被験対象に対して有益な影響を及ぼす、生きている微生物を意図する。本明細書において、「プロバイオティック特性」は、腸機能および安定性強化;感染性および非感染性疾患に対する防護改善;免疫系修飾;乳糖不耐症緩和;消化および栄養吸収改善;血中コレステロール減少;アレルギーリスク減少;ならびに尿路感染リスク減少を含む。一部の実施形態において、細菌における付着、ストレス耐性またはAI−2生産の増加は、その細菌の少なくとも1つのプロバイオティック特性の改善をもたらす。
【0114】
本発明の他の実施形態において、前記細菌は、乳酸菌である。本明細書において、「乳酸菌」は、以下から選択される属からの細菌を意図する。アエロコッカス属(Aerococcus)、カルノバクテリウム属(Carnobacterium)、腸球菌属(Enterococcus)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、乳酸桿菌属(Lactobacillus)、リューコノストック属(Leuconostoc)、オエノコッカス(Oenococcus)、ペジオコッカス属(Pediococcus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、メリソコッカス属(Melissococcus)、アロイオコッカス属(Alloiococcus)、ドロシグラヌラム属(Dolosigranulum)、ラクトスフェラ属(Lactosphaera)、テトラゲノコッカス属(Tetragenococcus)、ヴァゴコッカス属(Vagococcus)、およびヴェイセラ属(Weissella)(Holzapfel et al.(2001)Am.J.Clin.Nutr.73:365S−373S;Sneath,ed.(1986)Bergey’s Manual of Systematic Bacteriology Vol 2,Lippincott,Williams and Wilkins,Hagerstown,MD)。
【0115】
さらに他の実施形態では、乳酸桿菌属(Lactobacillus)を使用する。「乳酸桿菌属」は、L.カゼイ(L.casei)、L.ラムノーサス(L.rhamnosus)、L.ジョンソニイ(L.Jonsonii)、L.ガセリ(L.gasseri)、L.アシドフィルス(L.acidophilus)、L.プランタルム(L.plantarum)、発酵乳酸桿菌(L.fermentum)、L.サリバリウス(L.salivarius)、ブルガリア菌(L.bulgaricus)、およびWoodらによって概説された(Holzapfel and Wood,eds.(1995)The Genera of Lactic Acid Bacteria,Vol.2.,Springer,New York)非常に多数の他の種を含む(しかし、これらに限定されない)、乳酸桿菌属からの任意の細菌を意味する。
【0116】
異種遺伝子を含有する細菌の生産、そのような細菌のスターターカルチャーの作製、および基質、特に食品基質、例えばミルクを発酵させる方法は、Mayra−Makinen and Bigret(1993)Lactic Acid Bacteria.Salminen and von Wright eds.Marcel Dekker,Inc.New York.65−96.;Sandine(1996)Dairy Starter Cultures Cogan and Accolas eds.VCH Publishers,New York.191−206;Gilliland(1985)Bacterial Starter Cultures for Food.CRC Press,Boca Raton,Floridaに記載されているものを含む(しかし、これらに限定されない)公知の技術に従って行うことができる。
【0117】
「発酵」は、一般に嫌気性条件下でガスを発生させながら進行する、微生物による有機化合物のエネルギー供給性代謝破壊を意図する。
【0118】
本発明の核酸分子またはアミノ酸配列は、当分野において公知の方法によって宿主細胞に導入することができる。「導入」は、従来の形質転換もしくはトランスフェクション法による、またはファージ媒介感染による原核細胞への導入を意図する。本明細書において、用語「形質転換」、「形質導入」、「コンジュゲーション」および「プロトプラスト融合」は、リン酸カルシウムもしくは塩化カルシウム共沈、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、リポフェクションまたはエレクトロポレーションを含む宿主細胞に異種核酸(例えば、DNA)を導入するための当分野で認知されている様々な技法を指すことを意図する。宿主細胞を形質転換またはトランスフェクトするために適する方法は、Sambrook et al.(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York)および他の実験マニュアルにおいて見出すことができる。
【0119】
本発明のAI−2関連またはAAR関連ポリペプチドを生産するために使用することができる細菌細胞は、Sambrook et al.(1989)Molecular Cloning,A Laboratory Manual(2d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York)に一般に記載されているような、適する培地で培養する。
【0120】
本発明に包含される細菌株は、本発明の少なくとも1つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列を含む細菌の生物学的に純粋な培養物であるものを含む。これらの株としては、ラクトバチルス・アシドフィルス、L.ガセリ、L.ジョンソニイ、またはL.プランタルムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0121】
異種発現制御配列またはプロモーターは、公知の技術に従って、例えば、相同組換えによるターゲティング挿入または「遺伝子活性化」によって、所望のヌクレオチド配列と作動可能に会合させることができる。例えば、米国特許第6,391,633号および同第6,569,681号参照。
【0122】
「被験細菌または細胞」は、関心のある遺伝子についてのゲノム改変、例えば形質転換が行われたもの、そのように改変された細胞の子孫であり、その改変を含む細胞、または付着適応条件に付された細菌である。「対照」または「対照細胞」または「対照細菌」は、被験細菌の表現型の変化を測定するための基準点となる。
【0123】
対照細菌は、例えば、(a)野生型細菌、すなわち、被験細菌を生じさせる遺伝子改変のための出発原料と同じ遺伝子型の野生型細菌;(b)出発原料と同じ遺伝子型のものであるが、ヌル構築物(すなわち、関心対象である特性に対して既知の効果を有さない構築物、例えば、マーカー遺伝子を含む構築物)で形質転換された細菌;(c)被験細菌と遺伝子的に同一であるが、付着適応条件またはAI−2生産を修飾する条件もしくは刺激に暴露されていない細菌;または(d)関心のある遺伝子を発現しない条件下にある被験細菌それ自体を含むことができる。
【0124】
V.方法
i.付着適応応答の修飾
1つの実施形態において、本発明は、同定された「付着適応条件」を有する。本明細書において、「付着適応条件」は、基質への細菌の付着を増進させる任意の物理的、化学的、生物学的または類似の条件を含む。付着は、例えば、細菌を所望の細胞密度まで培養し、その後、その細菌の付着応答を強化する条件下でその細菌をインキュベートすることによって、修飾することができる。本発明のために、「培養」または「細胞培養」は、合成環境で増やされた細菌を表すことを意図する。培養条件(例えば、増殖培地、pH、温度)は、細菌タイプごとに幅広く異なり、また、特定の細菌タイプについての条件の変化により、異なる表現型を発現させることもできる。一般に、細菌は、細菌増殖を促進するために好適な条件で培養される。細菌は、最小培地(増殖のために細菌が必要とする任意の増殖因子を含む的確な栄養を含有するもの)または複合培地(細菌の増殖のために必要とされ得る全範囲の増殖因子を通常含有するもの)において培養することができる。ある生物の増殖を防止する一方で他の増殖を増進させるように、培地の物理的条件、例えば、pHおよび温度を調整することもできる。
【0125】
特定の実施形態において、細菌培養条件は、Mann−Rogosa−Sharpe(MRS)培地中、37℃または42℃での嫌気培養を含む。この培地は、その培地中の糖源としてグルコースの代わりにガラクトースまたは他の適する炭水化物を用いるように変更することができる。細菌は、付着適応条件に暴露する前、初期対数増殖期(0.4以下の600nmでの光学密度(OD600)を有すると定義する)、中期対数増殖期(約0.4、0.5、0.6、0.7、0.8または0.9のOD600)、または後期対数増殖期(0.9より大きいOD600)に回収することができる。特定の実施形態において、細胞は、約0.6のOD600で回収される。細菌細胞は、例えば、遠心分離または他の適切な装置での沈降によって回収し、適する培地に再び懸濁させる。
【0126】
その後、それらの回収した細菌細胞は、付着適応条件下でのインキュベーションによって(すなわち、付着適応条件下で細菌細胞をインキュベートすることによって)プレコンディショニングすることができ、その結果、対象となる基質への付着が増加する。「インキュベートすること」または「インキュベーション」は、特定の反応(例えば、付着適応応答)を促進するために、特定の条件(すなわち、付着適応条件)下で細菌集団を維持することを指す。付着適応条件としては、例えば、細菌の付着を増加させるために十分な時間の、細菌のインキュベーションを含むことができる。一部の実施形態では、本発明の細菌は、少なくとも約30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、100または120分間、インキュベートする。他の実施形態では、希釈液(例えば、MRS培地)のミリリットル当たり約1.5×108から約1×1010のコロニー形成単位(cfu/mL)[約2.0×108、3.0×108、4.0×108、5.0×108、6.0×108、7.0×108、8.0×108、9.0×108、1.0×109以上のcfu/mLを含む]の密度に細胞が濃縮された条件下で、細菌をインキュベートする。特定の実施形態において、その濃度は、1.0×108cfu/mLより大きい。さらなる実施形態は、4.5、4.0、3.5および3.0を含む5未満のpHに調整した培地中でのインキュベーションを含む。特定の実施形態では、約7.0から約4.5の範囲内でpHを自然に低下させる。対象となる基質への細菌の接触前のこれらまたは他の適する条件下での細菌細胞のインキュベーション(「プレコンディショニング」)は、そのインキュベーション条件に依存して、そのプレコンディショニングした細菌の対象となる基質への付着を増進させることもあり、または減少させることもできる。例えば胃腸管または尿生殖路の細胞を含む、関心のある任意の基質を、利用することができる。
【0127】
付着の増加は、適した対照(例えば、付着適応条件に暴露されていない細菌)と比較したときの、対象となる基質への付着の任意の実質的に有意な増加を含む。特定の実施形態において、この増加は、少なくとも約90%、100%、120%、130%、140%、150%、200%、250%以上(これらに限定されない)を含むことができる。付着の増加は、例えば、プレコンディショニングした細菌を適するターゲット(すなわち、上皮または粘膜細胞)と接触させ、その対象となる基質に付着している細菌数をカウントすることによって、インビトロでアッセイすることができる。付着の増加は、プレコンディショニングした細菌への暴露に対する宿主の応答をモニターすることによってインビボでアッセイすることができる。例えば、付着適応条件下でプレコンディショニングされたプロバイオティック細菌の付着は、プロバイオティック特性の改善、例えば、腸機能および安定性強化;感染性および非感染性疾患に対する防護改善;免疫系修飾;乳糖不耐症緩和;消化および栄養吸収改善;血中コレステロール減少;アレルギーリスク減少;ならびに尿路感染リスク減少をモニターすることによってアッセイすることができる。細菌の付着をインビボで測定するためのさらなる方法は、Leffler et al.(1995)Methods Enzymol.253:206−220に記載されている。
【0128】
一部の実施形態において、付着の増加は、配列番号19、20、33、34、35、36、37もしくは38またはこれらの変異体およびフラグメントのうちの少なくとも1つの発現の修飾を含む。さらなる実施形態は、これらの配列のうちの2つ、3つ、4つ以上の発現の修飾を含む。付着の修飾は、本発明のポリヌクレオチドを導入した細菌における本発明のポリヌクレオチドの発現を、本明細書の他の箇所で定義するような対照細菌における同ポリヌクレオチドの発現と比較することにより測定することができる。これらの配列の発現の測定方法は、当分野では公知であり、本明細書の他の箇所で論じている。
【0129】
ii.AI−2生産の修飾
本発明の組成物および方法を用いて、細菌におけるAI−2の生産を修飾することができる。「修飾する」、「改変する」または「変更する」は、ターゲット生物学的活性のアップレギュレーションまたはダウンレギュレーション、特に、活性のアップレギュレーションを意図する。本発明の核酸分子およびポリペプチドは、乳酸菌、特に、栄養物摂取または健康促進特性を有する食物を発酵させるために使用される乳酸菌の生物活性の修飾に有用である。本発明のポリヌクレオチドからの発現のアップレギュレーションまたはダウンレギュレーションを包含する。アップレギュレーションは、多数の遺伝子コピーを生じさせること、調節要素を変更することにより発現を修飾すること、転写もしくは翻訳メカニズムを促進すること、または他の手段によって達成することができる。ダウンレギュレーションは、公知のアンチセンスおよび遺伝子サイレンシング技術を用いることによって達成することができる。
【0130】
特定の実施形態において、本発明は、少なくとも1つの異種AI−2関連核酸分子(すなわち、配列番号1、3、13、15もしくは21)またはその生物活性変異体もしくはフラグメントを含む細菌を提供する。さらなる実施形態は、上で説明したようなAI−2関連核酸分子を少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つまたは少なくとも5つ含む細菌を含む。細菌におけるこれらの異種配列の発現は、適切な対照細菌と比較したとき、それらより増加したレベルのオートインデューサー2を生じさせる。本明細書において、オートインデューサー2の増加は、対照と比較してAI−2の任意の有意な増加を含む。特定の実施形態において、この増加は、適切な対照と比較したときのAI−2生産の少なくとも約90%、100%、120%、130%、140%、150%、200%、250%以上(これらに限定されない)の増加を含むことができる。AI−2生産に関するこの増加についてのアッセイ方法は、本明細書の他の箇所で詳細に論じる。
【0131】
AI−2生産の増加を有する本発明の細菌は、対象となる基質への付着増加を示すことができ、および/またはストレス耐性改善も示すことができる。
【0132】
本発明のポリペプチドを発現する微生物は、乳加工および発酵加工における添加剤として有用である。ポリヌクレオチド配列、コードされるポリペプチド、およびそれらを発現する微生物は、乳由来の製品、例えばチーズ、ヨーグルト、発酵乳製品、サワーミルクおよびバターミルクの製造に有用である。本発明のポリペプチドを発現する微生物は、プロバイオティック生物であってもよいし、乳酸菌であってもよいし、または関心のある任意の他の細菌宿主であってもよい。
【0133】
iii.ストレス耐性および/または付着の改善
上で論じたように、本発明は、改善されたストレス耐性および/または付着活性を有する細菌を提供する。本明細書において、対象となる基質への付着の改善は、適切な対照と比較したときの付着の90%、100%、120%、130%、140%、150%、200%、250%以上(これらに限定されない)の増加を含む、対象となる基質への付着の任意の有意な増加を含む。例えば胃腸管または尿生殖路の細胞を含む関心のある任意の基質を、利用することができる。特定の実施形態において、前記細胞は、上皮細胞または粘膜細胞を含む。前記細胞をインビトロまたはインビボで前記細菌と接触させることができることは、さらに理解される。
【0134】
本明細書において、細菌のストレス耐性改善は、適切な対照と比較したときの生存の約90%、100%、120%、130%、140%、150%、200%、250%以上(これらに限定されない)の増加を含む、ストレス条件下での細菌の生存の任意の有意な増加を含む。
【0135】
改善された付着および/または改善されたストレス耐性を有する本発明のプロバイオティック細菌は、被験対象の健康促進のための用途に役立つ。いずれかの作用メカニズムによる制約を受けるつもりないが、被験対象に投与するとこれらの強化された特性を有するプロバイオティック細菌は、付着を阻止し、病原体と競争することができ、宿主細胞免疫防御を刺激することができ、および/またはその病原体からのビルレンス因子の生産を「沈黙させる」細胞シグナリング事象を誘発することができる。従って、プロバイオティック生物のストレス耐性および/または付着活性を改善することは、さらに、腸、尿生殖路および創傷部位の感染のリスクの低減を助長する。
【0136】
ストレス耐性増加および/または付着増加を有するプロバイオティック細菌をその必要がある任意の被検者に投与することができる。例えば、前記被験対象は、哺乳動物、ヒト、家畜または農業動物を含むことができる。経鼻、経口、経膣または経肛門投与することができる。粘膜投与が好ましくない状況では、当業者の能力の範囲内の他の適する手段、すなわち、非経口経路(静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内経路)によって前記細菌を投与することができる。
【0137】
改善されたストレス耐性および/または改善された付着を有する本発明の細菌が、さらに、治療活性を有する少なくとも1つのポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドを発現できることは理解される。「治療活性」は、そのポリペプチドが被験対象に送達されたときの生物学的効果が、その被験対象にとって有益であることを意図する。投与は、好ましくは、「治療有効量」であり、これは、被験対象に恩恵を示すために十分な量である。このような恩恵は、少なくとも1つの症状の少なくとも1つの改善であり得る。予防的状況では、この量は、個体に対する後の病原体の攻撃の悪影響を、例えば免疫応答を強化させることにより減少させるために十分な量であり得る。投与される実際の量、投与速度および時間経過は、投与の目的、例えば、その攻撃の性質および激しさを考慮して探られる生物学的効果に依存する。これは常例的最適化の対象である。予防接種を含む治療の処方、例えば、投薬量の決定などは、一般医および他の医師の責任の範囲内である。
【0138】
治療活性を有し、且つ、改善された付着活性または改善されたストレス耐性を有するプロバイオティック細菌において発現させることができるポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドとしては、例えば、インスリン;成長ホルモン;プロラクチン;カルシトニン;黄体形成ホルモン;副甲状腺ホルモン;ソマトスタチン;甲状腺刺激ホルモン;血管作用性腸管ポリペプチド;逆平行4αヘリカルバンドル構造を採用している構造群1サイトカイン、例えば、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、GM−CSF、M−CSF、SCF、IFN−γ、EPO、G−CSF、LIF、OSM、CNTF、GH、PRLまたはIFN−α/β;TNFファミリーのサイトカイン、例えば、TNFα、TNFβ、CD40、CD27またはFASリガンド;IL−1ファミリーのサイトカイン;線維芽増殖因子ファミリー;血小板由来増殖因子;形質転換増殖因子βおよび神経増殖因子;各々が細胞外領域内の少なくとも1つのEGFドメインを含有する大きな膜貫通型前駆体分子として生産される短鎖α/β分子を含む構造タイプ3のサイトカイン、例えば、表皮成長因子ファミリーのサイトカイン;保存システイン残基の周りに集まったアミノ酸配列(C−CもしくはC−X−Cケモカインサブグループ)の保有を特徴とするケモカイン、またはインスリン関連サイトカイン;異なるドメイン、例えばEGF、免疫グロブリン様およびクリングルドメインからなるヘレグリンまたはニューレグリンなどのモザイク構造を示す、構造タイプ4のサイトカインを挙げることができる。あるいは、上記生物活性ポリペプチドは、上で定義したような生物活性ポリペプチドについての受容体またはアンタゴニストであり得る。特定の実施形態において、治療活性を有するポリペプチドは、抗原を含む。非病原菌において発現させることができるさらなる治療用ポリペプチドは、例えば、米国特許出願第20030202991号;Vandenbroucke et al.(2004)Gastroenterology 127:667−8;Huyghebaert et al.(2005)Eur J Pharm Biopharm 59:9−15;Steidler et al.(2000)Science 289:1352−1355;Steidler et al.(2001)The Scientific World 1:215−217;米国特許出願第20020019043号(これらの各々が、それら全体として、参照により本明細書に組み込まれる)。特定の用途では、治療用ポリペプチドをプロバイオティック細菌から分泌されるように工学することができることは、理解される。
【0139】
iv.スクリーニング方法
細菌の基質への付着を増加させる化学物質または環境条件をスクリーニングする方法を提供する。本方法は、付着を増加させると推測される、および/またはAI−2生産を増加させると推測される環境条件にその細菌を付すステップと、前記細菌を基質に接触させるステップとを含む。その環境条件に付されていない同じ細菌の付着と比較した、その環境条件に付された細菌のその基質への付着の増加は、その環境条件がその細菌の付着の増加に有効であることを示す。
【0140】
様々な候補化学物質または環境条件をこのスクリーニング法において用いることができる。このような条件としては、AI−2のインデューサ/サプレッサまたはAI−2の生産に関与する任意の遺伝子、微生物作用因子(例えば、原核生物および真核生物)、温度、濃度、付着適応条件でのインキュベーション時間、インキュベーション培地の組成(例えば、増殖因子、炭水化物、アミノ酸、塩、無機質などの存在、存在度および/またはタイプ)、細胞密度、またはpHが挙げられるが、これらに限定されない。候補物質は、化合物、化合物の混合物、または生体高分子であり得る。このような候補物質は、例えば、化合物ライブラリおよびペプチドライブラリなどを含む様々な物質バンクに含まれていることがある。
【0141】
このプロセスによって同定される条件または化合物は、発酵もしくはプロバイオティック細菌において、または本明細書に記載する他のいずれかの方法において使用するために、AI−2を生産するようにまたは付着もしくは生物膜形成を促進するように、細菌(組換え野生型細菌と非組換え野生型細菌の両方を含む)を刺激する。
【0142】
以下に記載する実施例において本発明をより詳細に説明する。
実験
【実施例1】
【0143】
<アミノ酸配列のGapped BlastP分析>
Gapped BlastPアラインメント法および本明細書に開示するパラメーターを用いて、本発明の配列をアラインした。表1は、これらの配列の主要なBlastの結果をまとめたものである。
【0144】
Gapped BlastPアミノ酸配列アラインメントは、配列番号14(アミノ酸数372、ORF LBA1080)が、アミノ酸11〜371と、メチオニンシンターゼII(コバラミン依存性)タンパク質であるロイコノストック・メセンテロイデス亜種メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides subsp.mesenteroides)からのタンパク質(アクセッション番号ZP_00064070.1)との約55%の同一性;アミノ酸5〜372と、メチオニンシンターゼII(コバラミン依存性)タンパク質であるラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)からのタンパク質(アクセッション番号ZP_00046311.1)との約47%の同一性;アミノ酸7〜372と、クラミドフィラ・ニューモニエ(Chlamydophila pneumoniae)からの仮説タンパク質(アクセッション番号NP_224351.1)との約46%の同一性;アミノ酸4〜372と、ラクトバチルス・ジョンソニイ(Lactobacillus johonsonii)からの仮説タンパク質(アクセッション番号NP_965623.1)との44%の同一性;およびアミノ酸9〜372と、メチオニンシンターゼII(コバラミン依存性)タンパク質であるオエノコッカス・オエニ(Oenococcus oeni)からのタンパク質(アクセッション番号ZP_00069898.1)との45%の同一性を有することを示した。
【0145】
Gapped BlastPアミノ酸配列アラインメントは、配列番号16(アミノ酸数157、ORF LBA1081)が、アミノ酸1〜157と、オートインデューサー2生産タンパク質LuxSであるラクトバチルス・ジョンソニイからのタンパク質(アクセッション番号NP_965624.1)との約87%の同一性;アミノ酸1〜157と、オートインデューサAI2合成に関与するLuxSタンパク質であるラクトバチルス・ガセリからのタンパク質(アクセッション番号ZP_00046310.1)との約87%の同一性;アミノ酸4〜157と、LuxSオートインデューサー2シンターゼであるストレプトコッカス・ボビス(Streptococcus bovis)からのタンパク質(アクセッション番号dbj|BAD06876.1)との約76%の同一性;アミノ酸1〜157と、オートインデューサ生産タンパク質であるラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)からのタンパク質(アクセッション番号NP_784522.1)との77%の同一性;およびアミノ酸4〜157と、オートインデューサー2生産タンパク質である化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)からのタンパク質(アクセッション番号NP_269689.1)との73%の同一性を有することを示した。
【0146】
Gapped BlastPアミノ酸配列アラインメントは、配列番号18(アミノ酸数444、ORF LBA169)が、アミノ酸49〜444と、S層タンパク質前駆体であるラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)からのタンパク質(アクセッション番号sp|P35829|SLAP_LACAC)との約95%の同一性;アミノ酸49〜443と、表面層タンパク質であるラクトバチルス・ヘルヴェティクス(Lactobacillus helveticus)からのタンパク質(アクセッション番号emb|CAA62606.1)との約67%の同一性;アミノ酸49〜443と、表面層タンパク質であるラクトバチルス・ヘルヴェティクスからのタンパク質(アクセッション番号emb|CAB46984.1;AJ388558)との約67%の同一性;アミノ酸49〜443と、表面層タンパク質であるラクトバチルス・ヘルヴェティクスからのタンパク質(アクセッション番号emb|CAB46985.1)との66%の同一性;およびアミノ酸49〜443と、表面層タンパク質であるラクトバチルス・ヘルヴェティクスからのタンパク質(アクセッション番号emb|CAB46986.1)との66%の同一性を有することを示した。
【0147】
Gapped BlastPアミノ酸配列アラインメントは、配列番号20(アミノ酸数566、ORF LBA1148)が、アミノ酸4〜564と、ラクトバチルス・ジョンソニイからの仮説タンパク質(アクセッション番号NP_965038.1)との約69%の同一性;アミノ酸4〜566と、真核性snRNPと相同性の予測RNA結合タンパク質であるラクトバチルス・ガセリからのタンパク質(アクセッション番号ZP_00045959.1)との約66%の同一性;アミノ酸4〜556と、真核性snRNPと相同性の予測RNA結合タンパク質(アクセッション番号ZP_00037499.1)との約41%の同一性;およびアミノ酸4〜566と、フィブロネクチン/フィブリノゲン結合タンパク質と相同性であるエンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)からのタンパク質(アクセッション番号NP_814975.1)との約41%の同一性;およびアミノ酸4〜557と、接着タンパク質であるラクトバチルス・プランタルムからのタンパク質(アクセッション番号NP_785358.1)との約41%の同一性を有することを示した。
【0148】
【表1】

【0149】
<アミノ酸配列のPFAM分析>
配列番号2(アミノ酸数231、ORF LBA820)は、ほぼアミノ酸2〜222の予測PNP_UDP_1ドメインを含有し、ならびに5’−メチルアデノシンホスホリラーゼ(MTAホスホリラーゼ)ファミリーのメンバーである(PFAMアクセッション PF01048)。
【0150】
配列番号4(アミノ酸数314、ORF LBA931)は、ほぼアミノ酸6〜312のPrmAドメインを含有し、ならびにリボソームタンパク質L11メチルトランスフェラーゼ(PrmA)ファミリーのメンバーである(PFAMアクセッション PF06325)。
【0151】
配列番号14(アミノ酸数372、ORF LBA1080)は、ほぼアミノ酸11〜369の予測メチオニン_syntドメインを含有し、ならびにビタミンB12依存性メチオニンシンターゼタンパク質ファミリーのメンバーである(PFAMアクセッション PF01717)。
【0152】
配列番号16(アミノ酸数157、ORF LBA1081)は、ほぼアミノ酸2〜155に位置する予測LuxSドメインを含有し、ならびにLuxSタンパク質ファミリー(LuxS)のメンバーである(PFAMアクセッション PF02664)。
【0153】
配列番号20(アミノ酸数566、ORF LBA1148)は、ほぼアミノ酸1から425の予測FbpAドメインを含有し、ならびにフィブロネクチン結合タンパク質A(FbpA)ファミリーのメンバーである(PFAMアクセッション PF05833)。
【0154】
配列番号22(アミノ酸数399、ORF LBA1622)は、ほぼアミノ酸2〜102の予測S−アデノシルメチオニンシンセターゼN末端ドメイン(PFAMアクセッション 00438)、ほぼアミノ酸124〜243のS−アデノシルメチオニンシンセターゼ中央ドメイン(PFAMアクセッション 02772)およびほぼアミノ酸245〜384のS−アデノシルメチオニンシンセターゼC末端ドメイン(PFAMアクセッション 02773)を含有する。
【0155】
<細菌株および増殖条件>
乳酸桿菌(Lactobacillus)株を、MRSブロス(ミシガン州デトロイトのDifco Laboratories Inc.)中、または適切な場合には、1.5%寒天を補足したMRS中、37℃または42℃で、嫌気培養した。大腸菌を、Luria−Bertani(LB、Difco)培地中で、または1.5%寒天を補足したLB培地上で、37℃で好気的に増殖させた。1.5%寒天および150μg/mL エリスロマイシン(Em)を補足したブレイン・ハート・インフュージョン(BHI、Difco)培地を、大腸菌形質転換体の選択に使用した。オートインデューサ・バイオアッセイ(AB)培地(Basseler et al.(1993)Mol.Microbiol.9:773−786)を、すべてのビブリオ・ハーベイ(Vibrio harveyi)株の増殖に使用した。適切な場合には、クロラムフェニコール(Cm、5.0μg/mL)およびEm(5.0μg/mLまたは150μg/mL)を選択に使用した。1mL当たりのコロニー形成単位(CFU)は、Whitley Automatic Spiral Plater(英国、ウエストヨークシアのDon Whitley Scientific Limited)を使用して、適切な希釈で判定した。
【0156】
【表2】

【0157】
<組織培養>
第40継代と第50継代の間は、Caco−2(ATCC HTB−37、メリーランド州ロックヴィル)細胞のみを使用した。Caco−2細胞の維持に使用したすべての試薬は、Gibco(カリフォルニア州、カールズバッドのInvitrogen Corp.)から入手した。20%(v/v)不活性化(56℃、30分)ウシ胎仔血清(FBS)、0.10mM 非必須アミノ酸および1.0mM ピルビン酸ナトリウムを補足した最小必須培地(MEM)中、95%空気−5%CO2雰囲気で、それらの細胞を常例的に増殖させた。単層をトリプシンで10分間処理し、血球計数器を使用してカウントし、2.0mLの細胞培地中、細胞数1.3×105/ウェルで接種した。Costar 12ウェル組織培養処理プレート(マサチューセッツ州アクトンのCorning Inc.)において、15mm Thermanoxプラスチック製カバーガラス(ニューヨーク州ロチェスターのNalge Nunc International)を用いて、細胞を増殖させた。2日ごとに培地を交換し、14日のインキュベーション後にすべての付着アッセイを行った。
【0158】
<付着アッセイ>
以前に記載された方法(Buck et al.(2005)Appl.Environ.Microbiol.71:8344−8351)に従って、乳酸桿菌株のCaco−2細胞への付着を試験した。簡単に言うと、中期対数期の細菌細胞(OD6000.6)を、3.0μg/mlのEmを伴う10mlのMRS中で調製し、組み込み体に対する選択圧を維持した。10分間、4000×gでの遠心分離によって細胞を除去し、リン酸緩衝食塩液(PBS)で2回洗浄した。付着前に、細菌ペレットを5mLの新たなMRSに再び懸濁させた。付着適応条件のために、中期対数期の培養物からの細胞ペレットを1mLの新たなMRSに約1.0×109cfu/mLで再び懸濁させ、1時間、37℃でインキュベートした。細胞を再び遠心分離し、その単層への添加前に5mLの新たなMRSに再び懸濁させた。15日のCaco−2単層をPBSで2回洗浄し、4×108CFU/mLの濃度の細胞懸濁液で処理した。MRSと細胞株培地の混合物(1:2 v/v)中、37℃で1.5時間、その単層上で細菌をインキュベートした。インキュベーション後、その単層をPBSで5回洗浄し、メタノール中で固定し、グラム染色した。その後、付着細菌細胞を顕微鏡で数えた。各実験につきデュプリケートのカバーガラスをカウントした。一括して提示する最終データは、デュプリケートで少なくとも3回の実験を表す。各カバーガラスについての合計カウントを用い、付着を、lacL(β−ガラクトシダーゼ)遺伝子への挿入物を有する対照株NCK1398(Russell and Klaenhammer(2001)Appl.Environ.Microbiol.67:4361−4364)に対するパーセント(%)として表した。この対照を使用して、Emを用いてすべての突然変異培養およびその親対照を調製して、LuxS-組み込み体に対する選択圧を維持することができた。この付着プロトコルを図2に示す。
【0159】
<付着適応応答>
10mLの対数期(OD6000.7)細胞を遠心分離によって回収し、1mLまたは10mLの、いずれかの新鮮なMann−Rogosa Sharpe(MRS)増殖培地に再び懸濁させ、1時間、37℃でインキュベートした。10mLに再び懸濁させたものを「対照条件」として表し(図1A)、一方、1mLに再び懸濁させたものを「付着適応条件」として表す(図1B)。本発明のために、より少ない(より濃縮された)培地容積(例えば、対照群についての10mL MRSに対して、AAR群についての1mL MRS)でのインキュベーション条件と再懸濁の両方を付着適応条件と考える。濃縮しインキュベートした細胞は、付着の有意な増加を示した(図1)。同じ数の細菌細胞を最初に各ウェルに添加したにもかかわらず、濃縮しインキュベートした細胞についての付着レベルは、濃縮せずインキュベートした対照細胞より少なくとも20倍大きかった。各実験において、細胞は、5mLの新たなMRSに再び懸濁させ、数えて、Caco−2単層に添加した細胞の絶対濃度を決定した。3.8×108〜4.2×108CFU/mLの添加から得られた付着データのみが報告された。細菌付着に関する同様の増加は、付着前の中期対数期細胞のインキュベーションを伴わない10倍濃縮および濃縮を伴わないインキュベーション(37℃、1時間)、ならびに乳酸でpH4.5に調整したMRS中での濃縮を伴わないインキュベーション(37℃、1時間)のいずれによっても得られなかった。1時間のインキュベーションの後、非濃縮細胞のpHは、5.5であり、これに対して濃縮細胞は、pHが4.5に低下した。従って、細胞濃縮とpH低下の併用は、結果としてL.アシドフィルス細胞の付着を有意に、より付着に適する状態にした。本発明者らは、この現象を付着適応応答(Adhesion Adaptive Response)(AAR)と呼ぶ。
【0160】
図3は、付着適応条件に暴露した、およびしていない、選択されたL.アシドフィルスNCFM突然変異株と対照株の付着特性を示すものである。1つのカバーガラスに対して17視野での細胞の合計カウントとしてデータを報告する。各データ点は、デュプリケートで少なくとも2回の実験を表す。β−ガラクトシダーゼ遺伝子への組み込みを含有するL.アシドフィルスNCFMが「対照」としての役割を果たして、すべての突然変異体の増殖中のEm選択を維持する。
【0161】
<マイクロアレイ解析>
単一の20mLのL.アシドフィルス培養物をMRS中で0.6のOD600まで増殖させ、2つの10mLアリコートに分け、8分間、3,150×gでの遠心分離によって回収した。一方のアリコートを10mLの新たなMRSに再び懸濁させ、他方は、1mLの新たなMRSに再び懸濁させた。その後、両方の培養物を1時間、37℃でインキュベートした。インキュベーション後、遠心分離によって細胞を回収し、ドライアイス−エタノール浴で直ちに凍結させた。TRIzol(メリーランド州ロックヴィルのLife Technologies)を使用し、以前に記載されたプロトコル(Azcarate−Peril et al.(2005)Appl.Environ.Microbiol.71:5794−5804)に従って、RNAの単離を行った。RNAの純度および濃度は、アガロースゲルでの電気泳動および標準的な分光光度計測定によって決定した。
【0162】
42℃で一晩、Superscript II 逆転写酵素(カリフォルニア州、マウンテンヴューのClontech Laboratories,Inc.)を使用する、アミノ−アリルdUTP(ミズーリ州、セントルイスのSigma Chemical Co.)の存在下、ランダムヘキサマーでの逆転写により、同一量(25μg)の全RNAををアミノアリル標識し、その後、アミノアリル化したcDNAをN−ヒドロキシスクシンイミド活性化Cy3またはCy5エステル(ニュージャージー州、ピスカタウェイのAmersham Pharmacia Biotech)で蛍光標識した。標識cDNAプローブは、PCR Purification Kit(カリフォルニア州、バレンシアのQiagen)を使用して精製した。標準的なプロトコルを用いて、AA−dUTP標識cDNAへのCy3およびCy5色素のカップリング、ならびにマイクロアレイへのサンプルのハイブリダイゼーションを行った。これらのプロトコルに関する追加情報は、www.tigr.org/tdb/microarray/protocolsTIGR.shtmlのTIGRウェブサイトで見出すことができる。蛍光強度は、Packard Bioscience ScanArray 4000 マイクロアレイスキャナー(ミネソタ州、ラムゼーのGlobal Medical Instruments,Inc)を用いて獲得し、TIFF画像として加工した。シグナル強度は、GSI Luminomics QuantArray 3.0 ソフトウェアパッケージ(マサチューセッツ州、ボストンのPerkinElmer Life and Analytical Sciences,Inc.)を用いて定量した。2枚のスライドガラス(各々、トリプリケートのアレイを有する)を、実験ごとにCy3標識プローブおよびCy5標識プローブに相互にハイブリダイズした(ダイ・スワップ)。スポットを適応定量によって解析した(Azcarate−Peril et al.,2005,上記)。その後、それらの記録されたスポット強度から局所バックグラウンドを引いた。データを中央値法で正規化した。遺伝子当たり6つの比のメジアンを記録した。処理したまたはしていない各遺伝子の複製スポットについての平均絶対ピクセル値間の比は、遺伝子発現の変動倍率(fold change)を表す。2サンプルt検定を用いることで、その変動倍率に関する信頼区画およびP値も計算した。0.05以下のP値を有意とみなした(表3)。
【0163】
【表3A】

【表3B】

【0164】
付着適応条件に暴露されたL.アシドフィルスNCFMのマイクロアレイ解析(表3)は、種間シグナル、オートインデューサー2(AI−2)の生産増加を示唆している。メチオニンからのAI−2の生産の経路における最初の遺伝子(metK)および最後の遺伝子(luxS)(図4参照)が、有意に減少される。加えて、AI−2の輸送に関与すると推定されるABC輸送体クラスタが誘導された。
【0165】
<オートインデューサー2生合成経路>
L.アシドフィルスNCFMのさらなる分析により、メチオニンからのAI−2の生産の生合成経路における各遺伝子との相同性を示す4つのORF(LBA1622、LBA0931、LBA0820、LBA1081)が明らかになった(図4)。MetKは、メチオニンをS−アデノシルメチオニン(SMA)に転化させ、またこれは、LBA1622(配列番号21)によってコードされていると推定される。SAM依存性メチルトランスフェラーゼ(LBA931、配列番号3によりコードされている)によってSAMからメチル基を除去して、S−アデノシルホモシステイン(SAH)を形成し、その後、それをMTA/SAHヌクレオシダーゼ、Pfs(LBA820、配列番号1によりコードされている)によって解毒して、S−リボシルホモシステイン(SRH)およびアデニンを形成する。LuxS(LBA1081、配列番号15によりコードされている)は、SRHをホモシステインおよび4,5−ジヒドロキシ−2,3−ペンタンジオンに転化させ、この4,5−ジヒドロキシ−2,3−ペンタンジオンが環化し、ホウ素を取り入れて、AI−2を形成する(Winzer et al.(2002)Microbiology 148:909−922)。ホモシステインは、luxS同族体、LBA1081のすぐ上流に位置するMetE(LBA1080、配列番号13によりコードされている)によって、最終的にメチル化されて、メチオニンに戻る。−16.2kcalの自由エネルギーを有する2つのORFの間のターミネータは、LBA1080およびLBA1081が、別々に発現されることを示唆している。
【0166】
表4は、メチオニンからのAI−2の生産の完全経路を有する、ゲノム配列データを入手できる他の乳酸桿菌を列挙するものである。
【0167】
【表4】

【0168】
L.アシドフィルスNCFM(Altermann et al.(2005)Proc.Natl.Acad. Sci.USA 102:3906−3912)、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・ジョンソニイNCC533(Pridmore et al.(2004)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101:2512−2517)、およびラクトバチルス・プランタルムWCFS1(Kleerebezum et al.(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 100:1990−1995)についての、メチオニンからのAI−2の合成のための経路における各酵素と類似性を示すタンパク質をコードする多数の予測されるORFを列挙する。L.アシドフィルスNCFMは、luxSの2つのコピーを隠し持っていると予測されるが、それらのORFのうちの一方は、発現シグナル、例えばプロモーターまたはリボソーム結合領域を含有しない。
【0169】
<AI−2生産>
選択された細菌株の上清からのオートインデューサー2の検出は、以前に記載された(DeKeersmaecker and Vanderleyden,2003,上記)とおり行ったが、次のような修正を施した。乳酸菌によって生産されたAI−2の検出は、使用済み培養上清のpH低下、およびレポーター株V.ハーベイBB170におけるluxオペロンに対するグルコースによるカタボライト抑制のため、問題が多い(DeKeersmaecker and Vanderleyden,2003,上記)。従って、オートインデューサー2の検出に用いたすべての乳酸桿菌集団は、グルコースではなく1%ガラクトースを含有する変性MRS(mMRS)中で増殖させた。指定の時間点で、4mLアリコートを回収し、OD600を測定し、4,000×gでの10分間の遠心分離によって無細胞上清を単離した。上清のpHを2NのNaOHで中和してpH6.5にし、0.2μm膜に通して濾過した。調製した上清は、そのタイムコース実験の最後まで4℃で保管し、各培養物からのすべてのサンプルは、別々の96ウェルマイクロタイタープレートで一斉にアッセイした。レポーター株V.ハーベイBB170(Azcarate−Peri,2005,上記)をオートインデューサ・バイオアッセイ(AB)培地で一晩増殖させ、新たなAB中で洗浄し、再び懸濁させてOD6000.5にした。10μLの無菌上清を、96ウェルプレートの各ウェルにおいて、レポーター株BB170の1/1000希釈物(90μL)と混合した。蛍光マイクロタイタープレーターリーダー(ノースカロライナ州、ダラムのFLUOUStar Optima,BMG Technologies)において、30℃で10分ごとに6時間、発光を測定した。少なくとも6つの標準時間点を平均し、野生型から得た平均値を、LuxS-突然変異体から得た平均値で割ることによって、誘導倍率(fold induction)を計算した。各サンプルを少なくとも3つの独立したウェルで測定し、各データ点は3つの独立したサンプルを表す。
【0170】
L.アシドフィルスNCFMの増殖期中、いつAI−2が生産されたかを判定するために、上清をトリプリケートの培養物から、0、3、6、9、12、16、20、24、36および48は時間の時間点で回収した。L.アシドフィルスの増殖中のAI−2生産を図5に示す。pHの急速な低下と同時に、AI−2生産の顕著な増加が、対数増殖期を通して発生する。定常期に入ると、その上清のAI−2活性は、48時間まで一定レベルを維持する(図5)。
【0171】
<luxS遺伝子の挿入不活性化>
L.アシドフィルスNCFM染色体DNAをテンプレートとして使用し、プライマー1081−IF(5’−GATCA GATCT AAGTT AAGGC ACCTT ACG−3’、配列番号23)および1081−IR(5’−GATCT CTAGA TTTCG AATGG GTCAT CAC−3’、配列番号24)でのPCRを用いて、LBA1081(luxS)の471bp内部フラグメントを増幅した。その内部フラグメントを組み込みベクターpORI28(Law et al.(1995)J.Bacteriol.177:7011−7018)にクローニングし、その後、温度感受性ヘルパープラスミドpTRK669(Russell and Klaenhammer,2001,上記)を含有するL.アシドフィルスNCFMに、エレクトロポレーションによって形質転換した。その後、組み込み体の選択のための段階を、Russell and Klaenhammer,2001,上記、に従って行った。そのプラスミドの組み込み成功は、標準的なプロトコルを用いる接合部フラグメントのPCRおよびサザンハイブリダイゼーション分析によって確認した。
【0172】
中期対数増殖期からの細菌細胞およびAAR条件に暴露した細胞を使用して、LuxS-突然変異株、NCK1765をCaco−2細胞に付着能力について検査した。中期対数期細胞を、中期対数期からのCaco−2細胞に直接添加したとき、LuxS-突然変異株について、対照と比較して58%の付着減少(スチューデントt検定、p<0.001)が観察された(図6)。β−ガラクトシダーゼの組み込みを隠し持つL.アシドフィルスNCFMの誘導体(NCK1398)を対照として使用して、その突然変異体および対照に対する抗生物圧(antibiotic pressure)を維持することができた。
【0173】
<結論>
L.アシドフィルスNCFMは、インビトロで腸上皮細胞に付着するその生物の能力を劇的に増加させるような形で、環境条件に応答する。これらの付着適応条件に暴露した集団の転写マイクロアレイ解析は、シグナリング分子、AI−2の生産を増加させることを示唆している。L.アシドフィルスNCFMのゲノムの解析により、メチオニンからのAI−2の生産に必要なすべての遺伝子を同定した。L.アシドフィルスNCFMからのAI−2の生産は、V.ハーベイレポーター株を使用して確認した。この経路における最後の遺伝子、luxSを不活性化すると、対数期細胞において付着の減少が観察されたが、LuxS−突然変異株の付着適応応答に関しては対照と比較して差が観察されなかった。このデータは、腸上皮への乳酸桿菌の付着が、様々な因子の密接な相互作用を必要とし得ることを示唆している。AI−2媒介シグナリングは、L.アシドフィルスNCFMの付着能力に寄与するが、菌集団内において付着適応応答を担う唯一の連絡手段ではない。これらのデータは、腸上皮への乳酸桿菌の付着が、様々な因子の密接な相互作用を必要とし得ることを示唆している。AI−2媒介シグナリングは、L.アシドフィルスNCFMの付着能力に寄与するが、菌集団内において付着適応応答を担う唯一の連絡手段ではない。
【実施例2】
【0174】
LuxSおよびAI−2による影響を受ける遺伝子発現のマイクロアレイ解析を多数の異なる微生物種に関して行って、細胞プロセスに対するLuxSの機能を判定した。グルコースの存在下および不在下で増殖させた大腸菌K−12に対するAI−2の影響により、lsrオペロン、メチオニン代謝および炭素利用率と関係がある遺伝子の遺伝子発現が改変されることが明らかになった(12、32)。別の研究は、大腸菌マイクロアレイを用いて、LuxS生産と、細胞の増殖および分裂に関与する遺伝子を関連付けた(9)。ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)のLuxS-突然変異体およびその野生型の転写マイクロアレイ分析は、その生物のストレス応答へのLuxSの関与を包含していた(36)。病原菌株に加えて、幾つかの非病原性株が、AI−2生産に関連した表現型を示した。例えば、マウス胃腸管におけるラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)の生態学的性能が、LuxS-突然変異体では変更された(28)。本研究は、L.アシドフィルスNCFMにおいてLuxSによる影響を受けた遺伝子発現を特定するために全ゲノムマイクロアレイを用いている。ストレス応答、増殖および代謝に関与する多数の遺伝子が、LuxS-突然変異株では特異的に発現される。LuxS-突然変異株の表現型分析により、L.アシドフィルスNCFMの耐熱性および胆汁耐性に対するluxS突然変異の影響を検査した。
【0175】
<細菌株および増殖条件>
乳酸桿菌株をMRSブロス(ミシガン州デトロイトのDifco Laboratories Inc.)中、または適切な場合には、1.5%寒天を補足したMRS中、37℃または42℃で嫌気培養した。AI−2を検出するために、グルコースの代わりに1% w/v ガラクトースを用いたことを除き、MRS成分に従った変性MRS中で乳酸桿菌を増殖させた。大腸菌をLuria−Bertani(LB、Difco)培地中で、または1.5%寒天を補足したLB培地上で、37℃で好気的に増殖させた。1.5%寒天および150μg/mLのエリスロマイシン(Em)を補足したブレイン・ハート・インフュージョン(BHI、Difco)培地を大腸菌形質転換体の選択に使用した。オートインデューサ・バイオアッセイ(AB)培地(5)を、すべてのビブリオ・ハーベイ株の増殖に使用した。適切な場合には、クロラムフェニコール(Cm、5.0μg/mL)およびEm(5.0μg/mLまたは150μg/mL)を選択に使用した。mL当たりのコロニー形成単位(CFU)は、Whitley Automatic Spiral Plater(英国、ウエストヨークシアのDon Whitley Scientific Limited)を使用して、10%MRSブロスでの適切な希釈で判定した。
【0176】
【表5】

【0177】
<DNA操作法>
全乳酸桿菌ゲノムDNAをWalkerおよびKlaenhammerの方法(31)に従って単離した。エンドヌクレアーゼ制限、ライゲーション、DNA修飾および形質転換については標準的なプロトコルを用いた(23)。大腸菌形質転換体のスクリーニングを目的としたプラスミド調製は、Zhouらの方法(37)に従った。QIAprep Spin kitをその製造業者の使用説明書(カリフォルニア州、バレンシアのQIAGEN Inc.)に従って用いて、大規模プラスミド調製を行った。PCRは、Taq DNAポリメラーゼPCRシステム(インディアナ州、インディアナポリスのRoche Applied Science)を使用し、その製造業者の推奨に従って行った。PCRプライマーは、Integrated DNA Technologies(アイオワ州、コーラルヴィル)によって合成されたものであり、適切な場合には、将来のクローニング段階を助長するために、それらのプライマーの5’末端に制限部位を設計した。Zymoclean Gel DNA Recovery kit(カリフォルニア州、オレンジのZymo Research)を使用して、1.0%アガロースからDNAフラグメントを抽出した。エレクトロコンピテント乳酸桿菌細胞をWalkerらによって記載された(30)とおり調製した。標準的なプロトコルを用いて、ゲノムDNAのサザンハイブリダイゼーションを行った。
【0178】
【表6】

【0179】
<LuxXの無マーカー不活性化>
L.アシドフィルスNCFMのLuxS-突然変異株を、以前に記載されたプロトコル(2、6)に従って、luxS(LBA1081)内の97bpを欠失させて構築した。簡単に言うと、luxSを含有する1,243bpフラグメントを、プライマーLuxS−EFおよびLuxS−ER(表6)を使用して増幅した。その後、そのフラグメントをpORI28のXbaIおよびBglII部位に連結した。大腸菌EC1000において形質転換体を選択し、pORI::LuxSbigを単離した。プライマーLuxS−delFおよびLuxS−delR(表6)(各々、その5’末端に大腸菌酵素認識部位を有する)を使用して、インバースPCR(Expand High Fidelity PCR system、インディアナ州、インディアナポリスのRoche Applied Science)をそのプラスミドに対して行った。得られた2.7kbpのPCR産物を、QiagenのPCR精製キットを使用してクリーニングし、37℃で18時間、大腸菌で消化した。Zymoclean Gel DNA Recovery Kit(Zymogen)でのゲル精製後、その産物を16時間、16℃でセルフライゲーションした。その後、得られたプラスミド、pTRK884を大腸菌EC1000に形質転換し、PCR増幅でプラスミドの構築を確認した。温度感受性ヘルパープラスミド、pTRK669を含有するL.アシドフィルスNCFMを、その後pTRK884で電気形質転換し(electrotransformed)、Russell and Klaenhammerによって以前に記載された方法(22)に従って組み込み体を選択した。選択された組み込み体を非選択培地で6回継代させて、第二の交差事象を発生させ、その後、抗生物質不含のMRSにプレーティングした。コロニーをEm感受性についてスクリーニングし、欠失領域に隣接するプライマーLuxS−delNFおよびLuxS−delNRを使用してコロニーPCRを行った。その欠失領域のPCR増幅、およびluxSの内部フラグメントをプローブとして使用するサザンハイブリダイゼーションアッセイによって、NCK1818における遺伝子置換による欠失を確認した。
【0180】
最近までは、乳酸桿菌における部位特異的遺伝子不活性化は、プラスミド組み込み戦略を用いて行われてきた。プラスミド組み込みの維持には、選択培地中での増殖が必要である。しかし、プラスミド組み込みも、選択増殖も、マイクロアレイ解析によって得られる遺伝子発現結果に影響を及ぼすことがある。従って、二重交差相同組換えアプローチを用いた無マーカー戦略を用いて、L.アシドフィルスNCFMにおけるluxS(LBA1081)を不活性化した。得られた突然変異株のluxS遺伝子、NCK1818は、97bp内部領域を欠き、追加の大腸菌制限部位を含有した。その欠失領域を選択して、リーディングフレームを破壊し、非機能的遺伝子産物を生じさせた。欠失領域のPCR分析、およびluxSの内部フラグメントをプローブとして使用するサザンハイブリダイゼーションによって、遺伝子置換を確認した。V.ハーベイレポーターアッセイ(5)によって判定したところ、NCK1818は、Em感受性であり、AI−2を生産しなかった。以前に、luxS組み込み突然変異体を負の対照として使用して、L.アシドフィルスNCFMによるAI−2発現のパターンが決定された(8)。NCK1818を負の対照として使用して、L.アシドフィルスNCFMの増殖中に同じパターンのAI−2生産が観察された。
【0181】
<AI−2検出>
選択された細菌株の上清からのオートインデューサー2の検出を、以前に記載された(8)とおりに行った。簡単に言うと、指定された各々の時間点で回収した細菌集団からの上清を、2N NaOHでpH6.5に調製し、0.2μm膜に通して濾過した。レポーター株ビブリオ・ハーベイBB170(3)をオートインデューサ・バイオアッセイ(AB)培地中で一晩増殖させ、新たなAB中で洗浄し、再び懸濁させてOD6000.5にした。試験培地からの10μLの無菌上清を、96ウェルプレートの各ウェルにおいて、レポーター株BB170の1/1000希釈物 90μLと混合した。蛍光マイクロタイタープレートリーダー(ノースカロライナ州、ダラムのFLUOUStar Optima,BMG Technologies)において、30℃で10分ごとに6時間、発光を測定した。V.ハーベイ発光曲線からの少なくとも6つの標準時間点を平均し、野生型から得た平均値を、LuxS-突然変異体から得られた平均値で割ることによって、誘導倍率を計算した。そのレポーター株がそれ自体のAI−2生産に反応する前の、発光が一定レベルになった時間点を選択した。各サンプルを少なくとも3つの独立したウェルで測定した。各データ点は、2つの独立した実験を表す(表7)。
【0182】
<RNA単離>
冷凍保存培養物からのL.アシドフィルスNCFMとNCK1818の両方を、V.ハーベイレポーター株におけるluxオペロンに対するグルコースによるカタボライト抑制を防止するために第一級炭素源としてガラクトースを使用している半合成培地に、2回移した。両方の株の400mLの培養物に定常期(16時間)培養物からの1%を接種し、37℃で増殖させた。OD6000.2で、5mLのサンプルをCFU判定およびpH測定のために得た。その後、各株の6つの10mLサンプルをドライアイスで急冷し、10分間、3,150×gでの遠心分離によって4℃で細胞ペレットを回収した。AI−2検出のために、すべての時間点で遠心分離後の各株からの上清を確保した。最後の2つのサンプリング点(OD6000.7およびOD6001.2)で、5mLのサンプルをプレーティングおよびpH判定のために各培養物から回収し、その後、2つの10mLサンプルを各培養物から回収し、上で説明したとおりに処理した。細胞ペレットからのRNAの単離は、TRIzol(メリーランド州ロックヴィルのInvitrogen Life Technologies)を使用して、以前に記載された(3)とおり行った。RNAの純度および濃度は、1.0%アガロースゲルでの電気泳動および標準的な分光光度計測定によって決定した。両方の株の2つの生物学的複製物からRNAを単離した。
【0183】
【表7】

【0184】
<cDNA生産およびマイクロアレイハイブリダイゼーション>
3つの選択されたサンプリング点の各々におけるLuxS-突然変異株および野生型株の遺伝子発現分析を、全ゲノムDNAマイクロアレイ(3)を用いて行った。L.アシドフィルスNCFMゲノムからの1,889の予測ORFのPCR産物(1)を、ULTRA GAPSガラススライド(マサチューセッツ州、アクロンのCorning Inc.)上にトリプリケートでスポッティングした。第一標準cDNA合成および標識をSuperScript Indirect cDNA Labeling System(Invitrogen)で行った。簡単に言うと、42℃で3時間、SuperScript III逆転写酵素を使用して、アミノ変性ヌクレオチドの存在下、ランダムヘキサマーで逆転写することにより、等量(20μg)のRNAをアミノアリル標識した。第一標準cDNAをS.N.A.P.カラムで精製し、沈殿させ、N−ヒドロキシスクシンイミド活性化Cy3またはCy5エステル(ニュージャージー州、ピスカタウェイのGE Healthcare Lice Sciences)で標識し、S.N.A.P.カラムで再び精製した。得られた標識cDNAを、TIGR(www.tigr.org/tdb/microarray/protocolsTIGR.shtml)により概説されているプロトコルに従って、マイクロアレイスライドにハイブリダイズした。ハイブリダイゼーションは、シングルラウンドロビンパタンに従って行い、そのためすべての可能な直接ペアワイズ比較はアンバランス設計で行った。合計15の異なるハイブリダイゼーションを3つの異なるサンプリング点(OD6000.2、OD6000.7およびOD6001.2)および2つの異なる株(L.アシドフィルスNCFMおよびNCK1818)で行った。
【0185】
<マイクロアレイデータ解析>
General Scanning ScanArray 4000 Microarray Scanner(Packard Biohcip BioScience,Biochip Technologies LLC,Mass.)を使用して、蛍光強度を取得し、TIFF画像として行った。QuantArray 3.0ソフトウェアパッケージ(Packard BioScience)を用いてシグナル強度を定量し(バックグラウンド減算を含む)、スポットの反復測定値を平均した。得られた生データをSAS(ノースカロライナ州、ケアリーのSAS Institute)にインポートし、log2変換し、正規化混合モデル分散分析(ANOVA)に当てはめて、データを平均強度に集中させた。その後、遺伝子特異的混合モデルANOVAをその正規化データに対して行い、この場合は、色素、株および時間を固定効果とみなし、アレイ効果をランダム効果とみなした(34)。2つの異なる処理についての得られた最小二乗推定値間の差は、それら2処理間の遺伝子発現のlog2変換比に類似している。色素効果、株効果、時間効果、および株と時間の総合効果(株*時間)についての差を計算した。これらの差およびそれらの標準誤差を用いてt検定を行い、P<0.05を有意とみなした。それらの推定値および−Log10(P値)とJMP 5.0(SAS Institute)を用いて各比較についてのvolcano−plotを作成して、処理とその結果の統計学的有意性の間の対比を視覚化した。
【0186】
LuxS生産に応じて特異的に発現する遺伝子を研究するために、初期、中期、後期指数増殖期における野生型とLuxS-突然変異体の間の発現の差を試験するマイクロアレイ設計を開発した。L.アシドフィルスNCFMについての増殖中のAI−2生産は、以前に判定されている(8)。そのデータから、3の増殖点をRNA単離のために選択した。AI−2が蓄積される前(OD6000.2);AI−2の急速な生産中(OD6000.7);およびAI−2の生産が遅速し、上清中のAI−2のレベルは未だ高いが一定している(OD6001.2)。各時間点での両方の株からデュプリケートでRNAを単離し、V.ハーベイレポーターアッセイを用いてAI−2活性を判定した。合計で6点を可能なすべての比較ペア(15のハイブリダイゼーション)で互いに比較した。二段階混合モデルANOVAを用いて発現データの分析を行い、最小二乗平均比は、1.8の変動倍率でおよびP<0.05で有意とみなした(表9)。
【0187】
最初の2つの時間点での各々の特異的発現ORFをそれらのCOG分類に従ってグループ分けした(図8)。全体の42%を占める、NCFMにおいて最高の過発現遺伝子数を有する2つのCOG分類は、リボソーム構造およびバイオジェネシス(J)ならびに複製、組換えおよび修復(L)と解釈された。対照的に、LuxS-突然変異体における過発現遺伝子の40%は、機能不明(S)と類別された。LuxS-突然変異体と比較したときの、NCFMにおける正常な増殖および代謝と関係がある遺伝子の発現増加は、LuxSがこれらの遺伝子の多くについての発現に直接または間接的に正の影響を及ぼすことを示唆する。発現がLuxSによる負の影響を受けた遺伝子の機能は、これらのデータからははっきりしない。培地中のAI−2のレベルがもはや増加しない後期対数期(OD6001.2)では、NCFMまたはLuxS-突然変異体において、検査した条件下で遺伝子が有意に特異的に発現されることはなかった。
【0188】
混合型モデル分析と組み合わせたラウンドロビンマイクロアレイ設計を用いて、L.アシドフィルスNCFMの遺伝子発現に対する株の効果、時間の効果、および株と時間両方の総合効果(株*時間)を比較した。AI−2が培地中ではっきりと感知できるほど蓄積し始める前に(OD6000.2)、84のORFがNCMFにおいて有意に過発現された(表8a)一方で、LuxS-突然変異体では13のORFしか有意に発現されなかった(表8b)ことが、株と株の比較により明らかになった。初期対数期(OD6000.2)における突然変異体と比較してNCFMにおいて最も多く誘導された遺伝子は、シグナル伝達と関係があると推定されるrelA(3.14倍)、および推定翻訳開始因子であるIF−2(3.14倍)であった。AI−2が急速に蓄積していく中期対数期(OD6000.7)では、NCFMでは3つのORF(LBA1497、LBA1796、LBA1798)しか有意に過発現されず、LuxS−突然変異体では、4つのORF(LBA0026、LBA0089、LBA0568およびLBA1596)が過発現された。興味深いことに、最初に2つの時間点の両方で有意に特異的に発現された唯一のORFは、バクテリオシンのエクスポートと以前に関連付けられたABC輸送体(10)である、labT(LBA1796)であった。初期対数期において、labTは、LuxS-突然変異体と比較して、NCFMでは2.53倍過発現され、中期対数期では2.10倍過発現された。隣接する二成分調節系の応答調節因子(LBA1798)も、中期対数期において、前記突然変異体と比較してNCFMでは過発現された。これに関連して、LuxS-株をバクテリオシン生産について分析し、野生型と同レベルのバクテリオシン生産を惹起することが判明した。加えて、同質遺伝子型labT突然変異株をAI−2生産について検査し、野生型と同レベルでAI−2を生産することが判明した。
【0189】
【表8A】

【表8B】

【0190】
【表9A】

【表9B】

【0191】
【表10A】

【表10B】

【表10C】

【表10D】

【0192】
トレハロースヒドロラーゼ、terC(LBA1014)は、早期対数期に、LuxS-突然変異株と比較してNCFMでは2.56倍過発現された。以前の研究は、L.アシドフィルスTreC-突然変異体のトレハロースでの不十分な増殖を報告している(11)。従って、様々な糖を含有するmMRS培地でのL.アシドフィルスNCFMおよびLuxS-突然変異体の最大成長速度を測定して、糖利用率に対するluxS突然変異の起こり得る影響を判定した(表10)。MRSまたはグルコースもしくはトレハロースを含有するmMRSで株を成長させたとき、luxS突然変異は増殖に影響を及ぼさなかった。しかし、LuxS-突然変異体は、ラクトースにおいても、スクロースにおいても、NCFMと比較して低い最大増殖速度を示した。
【0193】
【表11】

【0194】
初期から中期対数期の各株の転写プロフィールも検査した(図9)。両方の株において、初期から中期対数期へと、遺伝子の発現が類似した数(NCFMで27およびLuxS-突然変異体で41)増加した。12の遺伝子の発現が両方の株で増加し、これらは、糖代謝遺伝子(LBA0874、LBA1012、LBA1812およびLBA1974)および推定ミオシン交差反応性抗原(LBA555)を含んでいた。突然変異株での97遺伝子と比較して、野生型株では24の遺伝子しか初期から中期対数期へと発現は減少しなかった。再び、中期から後期対数期へと、両方の株において類似した数の遺伝子の発現が増加したが、野生型では45の遺伝子がこの増殖期中に発現が減少し、LuxS-突然変異体では15しか減少しなかった。これらの結果は、AI−2が、増殖の初期段階の間の遺伝子の発現の増加または維持に責任を負うことを示唆している。AI−2が培地に不足していると、有意な数の遺伝子の発現が初期対数期中に減少するようである。
【0195】
<ストレス実験>
L.アシドフィルスNCFMとNCK1818の両方をMRSブロス中、37℃で、その集団がOD6000.2、0.7および1.2に達するまで増殖させ、達した時点で、細胞をストレス耐性実験のために回収した。
【0196】
胆汁耐性。所定のサンプリング点で、各培養物を希釈し、0.75、1.0または2.0%(w/w)Oxgall(カリフォルニア州、サンホセのBD Biosciences)を補足したMRS寒天上にデュプリケートでプレーティングした。それらのプレートを48時間、嫌気培養し、CFU/mLおよび生存パーセントを計算した。各アッセイをトリプリケートで行った。
【0197】
耐熱性。各株を250mLのMRSブロス中で増殖させ、各サンプリング点において、21℃で10分間、3,150×gでの遠心分離により各集団から10mLの菌液を回収した。遠心分離後、上清を廃棄し、菌体ペレットを10mLの新たなMRSに再び懸濁させ、プレインキュベートして55℃にした。0、10、20、30および45分の時間点でサンプルを取り、希釈し、デュプリケートでプレーティングした。各アッセイをトリプリレートで行った。
【0198】
統計解析。上記の実験から得たデータを、スチューデントt検定を用いて解析し、P<0.05を有意とみなした。
【0199】
L.アシドフィルスNCFMの様々なストレス応答へのLuxSの関与を検査した。2.0%Oxgall(脱水した新たな胆汁)を補足したMRS寒天上での増殖は、細菌集団をOD6000.2でプレーティングしたとき、NCFMと比較して、LuxS-突然変異体の増殖を有意に減少させた。OD6000.7集団からの細胞をプレーティングしたとき、1.0%Oxygallを補足したMRS上でのLuxS-株において、増殖の有意な減少が観察された。最終時間点、OD6001.2から回収した菌は、Oxygallでの増殖の相違を示さなかった(図10)。これらの結果は、AI−2生産は、中期対数期を通して胆汁耐性と相関関係を有するが、LuxS-集団が定常期に達すると、AI−2の不在に起因して胆汁への感受性は存在しなくなることを示している。
【0200】
加えて、OD6000.2およびOD6000.7から回収した集団を55℃熱ストレスに暴露したとき、LuxS-突然変異体のほうが、感受性が高かった(図11)。最終時間点、OD6001.2で回収したLuxS-突然変異体の菌集団は、NCFMと比較して有意な減少を示さなかった。この熱ストレス生存パターンは、増殖の初期および中期対数期中はストレス応答へのAI−2の関与を包含しているが、細胞が、本質的にさらに耐熱性である定常増殖期へと菌集団が近づくにつれてこうしたパターンは見られなくなる。
【0201】
<バクテリオシン生産>
L.アシドフィルスNCFMとNCK1818の両方の5μLをMRS寒天上にスポッティングし、嫌気チャンバー内で一晩、37℃でインキュベートした。翌日、100μLの指示株ラクトバチラス・デルブリッキー(Lactbacillus delbrueckii)(NCK235)を10mLの溶融MRS重層寒天(0.75% w/v)に添加し、その寒天プレートの表面に均等に注いだ。24時間のインキュベーションの後、ラクタシンBの拮抗活性を示す阻害ゾーンを評価した。
【0202】
<増殖曲線>
L.アシドフィルスNCFMおよびNCK1818を、両方とも冷凍保存培養物からMRSおよび変性MRS(mMRS)に3回移した。この試験で使用したmMRS培地は、市販のMRSについての成分(メリーランド州、スパークスのBecton,Dickinson and Company)に従うものであったが、デキストロースの代わりに、1%(w/v)のグルコース、ラクトース、トレハロースまたはスクロースのいずれかを用いた。増殖曲線は、各々を補足した半合成培地またはMRSブロスの200μLを含有した96ウェルプレート(Corning)において37℃で実行した。培養物を16時間増殖させ、15分ごとにトリプリケートのウェルでOD600を測定した。プレートを37℃でインキュベートし、FLUOStar OPTIMAマイクロタイタープレートリーダー(BMG Labtech)を使用してA600の変化を時間の関数として判定することによって自動的に増殖をモニターした。0.99の相関係数(r2)と指数増殖中の線形回帰線の傾きから、最大比増殖速度を計算した。各点は、3つの独立した培養物の平均値を表した。
【0203】
<結論>
本出願は、異なる増殖段階でのLuxSレギュロンの転写分析の初めての報告である。AI−2により改変された遺伝子発現の以前のマイクロアレイ研究は、外因性AI−2に対するLuxS-突然変異株の応答を研究したもの(DeLisa et al.(2001)Journal of Bacteriology 183:5239−5247)または単一増殖点を同定し、挿入突然変異体と野生型との転写の相違を分析したもの(Merritt et al.(2003)Infect Immun 71:1972−9;Wang et al.(2005)Journal of Bacteriology 187:8350−8360;Yuan et al.(2005)Infect.Immun.73:4146−4154)の、いずれかであった。これらのアプローチは、単点ではAI−2により調節される遺伝子を首尾よく同定することができるが、その発現プロフィールは、LuxSレギュロン構成の一側面しか表していない。LuxSによる影響を受ける遺伝子発現をさらに完全に理解できるように、本発明者らは、転写分析のために、L.アシドフィルスNCFMの増殖期を通して3つの時間点を選択した。第一のサンプリング点、OD6000.2において、増殖培地中で検出されたAI−2活性は最小であった。これらの集団は、対数増殖期の初期段階にあったためである。中期対数増殖中の第二のサンプリング点(OD6000.7)は、その培地にAI−2が急速に蓄積している間に取った。最終サンプリング点については、細胞をOD6001.2、後期対数期に回収し、これはAI−2レベルがその培地中でピークに達した約30分後であった。上で説明したように、これらの点は、AI−2の生産前、生産中、および生産後の遺伝子発現を表すように選択した。この研究で使用したLuxS-株は、遺伝子欠失突然変異体であり、従って、選択された外因性成分の組み込みまたは培地への添加によって生じる多形質発現の影響は一切ないと予想された。
【0204】
特異的に発現される非常に多数の遺伝子が、初期対数増殖期中に同定された。LuxS-株と比較して野生型において比較的多い数の遺伝子が誘導された。これは、AI−2が、増殖初期の間に一定の遺伝子の発現を助長することを示している。これらの遺伝子大多数が、転写、翻訳および複製に関係するものであった。F10−ATPアーゼ(Kullen and Klaenhammer(1999)Mol.Microbiol.33:1152−1161)(LBA772〜LBA779)をコードするオペロンの3つの遺伝子(LBA772、LBA773およびLBA775)が、野生型株において過発現された。トレハロースヒドロラーゼ(treC、LBA1014)も野生型での発現増加が示されているが、トレハロースはこの培地には存在しなかった。AI−2の不在は、トレハロースでのNCFMの増殖に影響を及ぼさなかった(表5)が、TreB-(輸送体)も、TreC-突然変異株も、トレハロースでは増殖することができなかった(Duong et al.(2006)Appl.Environ.Microbiol.72:1218−1225)。これらの予測エネルギー生産系の特異的発現は、さらに、LuxSと増殖および代謝とを結びつけた。DeLisa et al.(2001,Journal of Bacteriology 183:5239−5247)によって得られた類似の結果は、AI−2と細胞分裂、DNAプロセッシングおよび形態学的プロセスの調節とを関係付けた。
【0205】
正常な増殖および代謝プロセスに加えて、LuxSは、様々な細胞表面因子の発現に影響を及ぼす。推定菌体外多糖類(EPS)オペロンの2つの遺伝子(LBA1735およびLBA1736)も、初期対数期に野生型において特異的に発現された。Caco−2細胞への付着に関与することが以前に示された(Buck et al.(2005)Appl.Environ.Microbiol.71:8344−8351)推定フィブロネクチン結合タンパク質も、初期対数期の間にAI−2によって誘導された。フィブロネクチンは、ヒト腸細胞外基質(ECM)の一成分であり、腸内環境における細菌細胞の付着のターゲットに成り得る(Kapczynski et al.(2000)Curr.Microbiol.41:136−41)。ラクトバチルス・ロイテリのLuxS-突然変異株は、マウス胃腸管内で生態学的性能低下を示した(Tannock,2005,上記)。成長期の初期に細胞表面の発現を調節することにより、様々な細菌群集との相互作用または腸管内での生態学的性能に予め適応させることができる。
【0206】
腸内微生物の細胞表面会合分子は、宿主によって認識され、ならびに炎症反応と腸恒常性の維持の両方において重要であり得る(Rakoff−Nahoum et al.(2004)Cell 118:229−241)。これらの細菌表面分子のうちの1つ、リポタイコ酸は、細胞膜に結合しており、細胞壁を通して広がって、それ自体がその細菌の生育環境となる。乳酸桿菌におけるリポタイコ酸の適正なD−アラニン化の原因となるdltオペロンのメンバーであるdltD遺伝子(LAB1923)は、初期対数増殖期にLuxSの存在下で誘導された。ラクトバチルス・プランタルムのDlt-突然変異体を末梢血液単核細胞(PBMC)に暴露すると、前炎症性サイトカインTNFαおよびIL−12の分泌が減少された(Grangette et al.(2005)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A 102:10321−10326)。PBMCによるIL−10の発現は、Dlt-突然変異体への暴露後に増加され、その結果、そのサイトカインのプロフィールが抗炎症反応へと傾く。これらのリポタイコ酸の構造のAI−2による調節は、腸管内での宿主微生物相互作用に一定の役割を果たし得る。
【0207】
AI−2は、細菌におけるストレス応答の調節にも関与すると考えられている(Wen et al.(2004)J.Bacteriol.186:2682−91;Xavier et al.(2005)J.Bacteriol.187:238−248)。従って、ストレス応答と関係があると推定される多数の遺伝子(熱ストレス中に生産された折り畳み異常(misfolded)タンパク質および未成熟ポリペプチドの除去に関与する、dnaK(LBA1247)、grpE(LBA1248)およびclpX(LBA847)を含む)についての発現は、AI−2の影響を受けた。熱ストレス生存に対するAI−2の影響の分析により、野生型株と比較したとき、L.アシドフィルスNCFMのLuxS-突然変異株のほうが、55℃の熱ストレスに対して感受性であることが明らかになった(図11)。この感受性は、その細菌集団が初期または中期対数増殖期からストレスを受けていた場合のみに観察された。これらの結果は、初期増殖段階における熱ショック応答遺伝子の発現増加と一致する。ポルフィロモナス・ジンジバリスの最近の研究では、LuxS-突然変異株のほうが野生型より熱ストレスに対して耐性であった(Xavier,2005,上記)。これは、AI−2による株依存性のストレス応答変化を示唆している。
【0208】
腸内細菌は、胃腸管の過酷な条件を生きたまま通過して、腸内で生き残り続けなければならない。克服せねばならないハードルの1つは、胃領域における胆汁への暴露である。推定胆汁酸塩ヒドロラーゼ(LBA0892)が、初期対数期にLuxSによって誘導された。このLuxS-突然変異株をその胆汁耐性について検査し、初期または中期いずれかの対数増殖期から培養物を回収したときのほうが感受性であることが判明した。後期対数期から回収した培養物は、胆汁耐性に関して、野生型との差を一切示さなかった。これらの結果は、AI−2が、異なる環境条件における増殖および生存に関する機能を有する遺伝子の発現に正の影響を与えることにより、ストレスの多い条件に対して細胞に準備させるように動作することを示している。
【0209】
AI−2は、細胞密度が増加する環境につれて蓄積する菌体密度因子であると報告されているが、AI−2が遺伝子発現に影響を及ぼす増殖期は報告されていない。本発明者らの結果は、AI−2がAI−2の明らかに感知できる蓄積前、初期対数増殖段階に、細胞集団に対して作用することを示唆している。野生型と比較して、LuxS-突然変異株において初期から中期対数増殖期へと発現が減少する遺伝子の数が多いことは、LuxSが増殖期の初期に遺伝子発現に正の影響を及ぼすという仮説を支持している。その増殖期全体を通して遺伝子発現を検査すると、LuxSは、プランクトンの増殖中に自然に遭遇するストレスおよび不活性化条件に対する準備をその集団させているように見える。AI−2が、L.アシドフィルスNCFMの急速な増殖およびストレス応答と関係がある遺伝子の発現に悪影響を及ぼし、ならびに宿主微生物相互作用に正の影響を及ぼすことは明白である。
【図面の簡単な説明】
【0210】
【図1】顕微鏡で観察した、L.アシドフィルスNCFMのCaco−2への付着を示す図である。細菌細胞は、(a)1時間、37℃で、非濃縮条件(1×108CFU/mL)でインキュベートするか、(b)ペレット化し、10倍濃縮条件(1×109CFU/mL)(AAR条件)で1時間、37℃でインキュベートした。
【図2】付着プロトコルを示す図である。
【図3】標準インキュベーション条件(黒)および付着適応条件(斜線)での突然変異株およびNCFM::lacL対照株のCaco−2への付着特性を示す図である。カウントは、顕微鏡視野当たりの付着している細菌の平均として表し、エラーバーは、その平均からの1つの標準偏差を表す。
【図4】L.アシドフィルスNCFMにおけるメチオニンからのAI−2の生産についての経路を示す図である。AI−2の生産のための必須中間体を太字で表し、各酵素をコードするORFをその酵素名の下に列記する。SAM依存性メチルトランスフェラーゼをSAM−MTと略記する。最終段階は、4,5−ジヒドロキシ−2,3−ペンタンジオンのAI−2への非酵素的環状化(circularization)を含む。
【図5】NCFM::lacL対照株と比較した、L.アシドフィルスNCFMのLuxS-突然変異株のCaco−2細胞への付着能力を示す図である。
【図6】滅菌中和上清(斜線の棒グラフ)から検出し、その親株の平均発光/LuxS-突然変異株の平均発光として表した、L.アシドフィルスNCFMの増殖期中に生産されたAI−2を示す図である。OD600(実線と丸)およびpHの降下(破線と三角)によって表されるL.アシドフィルスNCFMの増殖が、対数増殖期中の急速なAI−2生産と同時に起こる。各値は、トリプリケートの実験の平均を表し、エラーバーは、その平均からの1つの標準偏差である。
【図7】付着対応条件に暴露されたおよび暴露されていない、対照株およびL.アシドフィルスNCFMの選択された突然変異株の付着特性を示す図である。
【図8】野生型(パネルA)またはLuxS−突然変異株(パネルB)において過発現された全ORFのCOG分類を図にしたものである。円グラフには、COGグループ(パネルC)をそのグループにおける過発現ORFの数(COG、ORFの#)と共に列挙する。
【図9】(A)初期から中期対数期へまたは(B)中期から後期対数期へとその発現が増加した(斜線なし)または減少した(斜線)ORFの数を示す図である。野生型は、白棒によって表し、LuxS−突然変異株は、灰色の棒グラフによって表す。
【図10】初期対数増殖期(OD6000.2)、中期対数増殖期(OD6000.7)および後期対数増殖期(OD6001.2)において回収したL.アシドフィルスNCFM(斜線なし)およびLuxS−突然変異株(斜線)の胆汁耐性を示す図である。細菌集団を希釈し、0.75%Oxgall(白)、1.0%Oxgall(灰色)または2.0%Oxgall(黒)のいずれかを補足したMRSでプレーティングした。補足していないMRSで増殖したCFU/mLと比較することによって、生存率を計算した。スチューデントt検定によって検出された有意差(P<0.05)をアスタリスク(*)によって表す。エラーバーは、その平均からの1つの標準偏差を表す。
【図11】(パネルA)初期対数増殖期、OD6000.2、(パネルB)中期対数増殖期、OD6000.7、または(パネルC)後期対数増殖期、OD6001.2で回収したときの、55℃での熱ストレス後の野生型集団(白丸)およびLuxS−集団(黒丸)の生存を示す図である。その時間点で検出された統計学的有意差(P<0.05)をアスタリスク(*)によって示す。エラーバーは、その平均からの1つの標準偏差を表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳酸菌の付着を増加させる方法であって、前記乳酸菌の付着を増加させるために十分な期間、少なくとも1×109cfu/mLの濃度で前記細胞をインキュベートすることを含む付着適応条件に前記細菌を暴露することを含む方法。
【請求項2】
前記付着適応条件が、約1時間、約1×109cfu/mLの前記細胞の濃度を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記付着適応条件が、配列番号19、33、35もしくは37からなる群より選択される少なくとも1つのポリヌクレオチド、または配列番号19、33、35もしくは37の配列との少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチドの発現を増加させる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記方法が、前記乳酸菌を基質に接触させることをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記基質が、胃腸管または尿生殖路の細胞を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記細胞が、上皮細胞または粘膜細胞を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
付着増加が、前記乳酸菌の少なくとも1つのプロバイオティック特性を改善する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記細菌が、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、L.ガセリ(L.gasseri)、L.ジョンソニイ(L.Jonsonii)、およびL.プランタルム(L.plantarum)からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記乳酸菌が、治療用ポリペプチドを発現する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記治療用ポリペプチドが、前記細菌とは異種である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記胃腸管または尿生殖路の細胞が、ヒト、家畜または農業動物からのものである、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
前記乳酸菌のストレス耐性を改善する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
請求項1の方法によって生産される乳酸菌。
【請求項14】
請求項2の方法によって生産される乳酸菌。
【請求項15】
請求項13の乳酸菌を含む細菌培養物。
【請求項16】
a)治療用ポリペプチドをコードする核酸を有する乳酸菌を用意するステップと、
b)前記乳酸菌の付着を増加させるために十分な時間、少なくとも1×109cfu/mLの濃度で前記細胞をインキュベートすることを含む付着適応条件に前記乳酸菌を暴露するステップと、
c)前記段階(b)の乳酸菌を被験対象に投与するステップと
を含む、治療用ポリペプチドを被験対象に送達する方法。
【請求項17】
前記付着適応条件が、約1時間、約1×109cfu/mLの前記細胞の濃度を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記細菌が、ラクトバチルス・アシドフィルス、L.ガセリ、L.ジョンソニイ、およびL.プランタルムからなる群より選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記被験対象が、ヒト、家畜または農業動物を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
細菌におけるオートインデューサー2の生産を誘導または増進させる方法であって、
(a)(i)配列番号1に記載のヌクレオチド配列含む核酸分子、
(ii)ストリンジェントな条件下で(a)(i)の核酸の相補体にハイブリダイズする核酸分子(前記ストリンジェントな条件は、50%ホルムアミド、1MのNaCl、1%SDS中、37℃でのハイブリダイゼーション、および0.1×SSC中、60℃から65℃での洗浄を含む)、
(iii)配列番号1に記載のヌクレオチド配列との少なくとも90%の同一性を有する核酸分子、または
(iv)配列番号2との少なくとも90%の同一性を有するポリペプチドをコードする核酸分子、
(b)(i)配列番号3に記載のヌクレオチド配列を含む核酸分子、
(ii)ストリンジェントな条件下で(b)(i)の核酸の相補体にハイブリダイズする核酸分子(前記ストリンジェントな条件は、50%ホルムアミド、1MのNaCl、1%SDS中、37℃でのハイブリダイゼーション、および0.1×SSC中、60℃から65℃での洗浄を含む)、および
(iii)配列番号3に記載のヌクレオチド配列との少なくとも90%の同一性を有する核酸分子、または
(iv)配列番号4との少なくとも90%の同一性を有するポリペプチドをコードする核酸分子、
(c)(i)配列番号15に記載のヌクレオチド配列を含む核酸分子、
(ii)ストリンジェントな条件下で(c)(i)の核酸の相補体にハイブリダイズする核酸分子(前記ストリンジェントな条件は、50%ホルムアミド、1MのNaCl、1%SDS中、37℃でのハイブリダイゼーション、および0.1×SSC中、60℃から65℃での洗浄を含む)、
(iii)配列番号15に記載のヌクレオチド配列との少なくとも90%の同一性を有する核酸分子、または
(iv)配列番号16との少なくとも90%の同一性を有するポリペプチドをコードする核酸分子、
(d)(i)配列番号21に記載のヌクレオチド配列を含む核酸分子、
(ii)ストリンジェントな条件下で(d)(i)の核酸の相補体にハイブリダイズする核酸分子(前記ストリンジェントな条件は、50%ホルムアミド、1MのNaCl、1%SDS中、37℃でのハイブリダイゼーション、および0.1×SSC中、60℃から65℃での洗浄を含む)、
(iii)配列番号21に記載のヌクレオチド配列との少なくとも90%の同一性を有する核酸分子、または
(iv)配列番号22との少なくとも90%の同一性を有するポリペプチドをコードする核酸分子、ならびに
(e)(i)配列番号13に記載のヌクレオチド配列を含む核酸分子、
(ii)ストリンジェントな条件下で(e)(i)の核酸の相補体にハイブリダイズする核酸分子(前記ストリンジェントな条件は、50%ホルムアミド、1MのNaCl、1%SDS中、37℃でのハイブリダイゼーション、および0.1×SSC中、60℃から65℃での洗浄を含む)、および
(iii)配列番号13に記載のヌクレオチド配列との少なくとも90%の同一性を有する核酸分子、
(iv)配列番号14との少なくとも90%の同一性を有するポリペプチドをコードする核酸分子、
からなる群より選択される少なくとも2つの異種核酸分子を前記細菌に導入することを含み、
前記細菌が、対応する対照細菌より多い量のオートインデューサー2を生産する方法。
【請求項21】
前記乳酸菌の付着を増加させるために十分な期間、少なくとも1×109cfu/mLの濃度で前記細胞をインキュベートすることを含む付着適応条件に前記細菌を暴露することをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記付着適応条件が、約1時間、約1×109cfu/mLの前記細胞の濃度を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記細菌が、乳酸菌である、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記細菌が、プロバイオティック細菌である、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
付着増加が、前記細菌の少なくとも1つのプロバイオティック特性を改善する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記乳酸菌が、ラクトバチルス・アシドフィルス、L.ガセリ、L.ジョンソニイ、およびL.プランタルムからなる群より選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記乳酸菌が、治療用ポリペプチドを発現する、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記治療用ポリペプチドが、前記細菌とは異種である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記乳酸菌のストレス耐性を改善する、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
(a)(i)配列番号1に記載のヌクレオチド配列を含む核酸分子、
(ii)ストリンジェントな条件下で(a)(i)の核酸の相補体にハイブリダイズする核酸分子(前記ストリンジェントな条件は、50%ホルムアミド、1MのNaCl、1%SDS中、37℃でのハイブリダイゼーション、および0.1×SSC中、60℃から65℃での洗浄を含む)、および
(iii)配列番号1に記載のヌクレオチド配列との少なくとも90%の同一性を有する核酸分子、または
(iv)配列番号2との少なくとも90%の同一性を有するポリペプチドをコードする核酸分子、
(b)(i)配列番号3に記載のヌクレオチド配列を含む核酸分子、
(ii)ストリンジェントな条件下で(b)(i)の核酸の相補体にハイブリダイズする核酸分子(前記ストリンジェントな条件は、50%ホルムアミド、1MのNaCl、1%SDS中、37℃でのハイブリダイゼーション、および0.1×SSC中、60℃から65℃での洗浄を含む)、および
(iii)配列番号3に記載のヌクレオチド配列との少なくとも90%の同一性を有する核酸分子、または
(iv)配列番号4との少なくとも90%の同一性を有するポリペプチドをコードする核酸分子、
(c)(i)配列番号15に記載のヌクレオチド配列を含む核酸分子、
(ii)ストリンジェントな条件下で(c)(i)の核酸の相補体にハイブリダイズする核酸分子(前記ストリンジェントな条件は、50%ホルムアミド、1MのNaCl、1%SDS中、37℃でのハイブリダイゼーション、および0.1×SSC中、60℃から65℃での洗浄を含む)、および
(iii)配列番号15に記載のヌクレオチド配列との少なくとも90%の同一性を有する核酸分子、または
(iv)配列番号16との少なくとも90%の同一性を有するポリペプチドをコードする核酸分子、
(d)(i)配列番号21に記載のヌクレオチド配列を含む核酸分子、
(ii)ストリンジェントな条件下で(d)(i)の核酸の相補体にハイブリダイズする核酸分子(前記ストリンジェントな条件は、50%ホルムアミド、1MのNaCl、1%SDS中、37℃でのハイブリダイゼーション、および0.1×SSC中、60℃から65℃での洗浄を含む)、および
(iii)配列番号21に記載のヌクレオチド配列との少なくとも90%の同一性を有する核酸分子、または
(iv)配列番号22との少なくとも90%の同一性を有するポリペプチドをコードする核酸分子、ならびに
(e)(i)配列番号13に記載のヌクレオチド配列を含む核酸分子、
(ii)ストリンジェントな条件下で(e)(i)の核酸の相補体にハイブリダイズする核酸分子(前記ストリンジェントな条件は、50%ホルムアミド、1MのNaCl、1%SDS中、37℃でのハイブリダイゼーション、および0.1×SSC中、60℃から65℃での洗浄を含む)、および
(iii)配列番号13に記載のヌクレオチド配列との少なくとも90%の同一性を有する核酸分子、
(iv)配列番号14との少なくとも90%の同一性を有するポリペプチドをコードする核酸分子、
からなる群より選択される少なくとも2つの異種核酸分子を含む細菌であって、対応する野生型細菌より多い量のオートインデューサー2を生産する細菌。
【請求項31】
前記細菌が、乳酸菌である、請求項30に記載の細菌。
【請求項32】
前記細菌が、プロバイオティック細菌である、請求項30に記載の細菌。
【請求項33】
前記乳酸菌が、ラクトバチルス・アシドフィルス、L.ガセリ、L.ジョンソニイ、およびL.プランタルムからなる群より選択される、請求項31に記載の細菌。
【請求項34】
前記乳酸菌が、治療用ポリペプチドを発現する、請求項31に記載の細菌。
【請求項35】
前記治療用ポリペプチドが、前記細菌とは異種である、請求項34に記載の細菌。
【請求項36】
前記乳酸菌のストレス耐性を改善する、請求項31に記載の細菌。
【請求項37】
請求項30の細菌を含む細菌培養物。
【請求項38】
基質への乳酸菌の付着を増加させる環境条件をスクリーニングする方法であって、
a)付着を増加させると推測される環境条件に前記細菌を付すステップと、
b)前記細菌を前記基質と接触させるステップと
を含み、
前記環境条件に付されていない対照細菌の付着と比較して、前記環境条件に付された細菌の前記基質への付着が増加することにより、前記環境条件が前記細菌の付着増加に有効であることを示す、スクリーニング方法。
【請求項39】
前記細菌が、ラクトバチルス・アシドフィルス、L.ガセリ、L.ジョンソニイ、およびL.プランタルムからなる群より選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記基質が、胃腸管または尿生殖路の細胞を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記細胞が、上皮細胞または粘膜細胞を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
細菌の付着を修飾する方法であって、
a)配列番号1、3もしくは21に記載のヌクレオチド配列を含む核酸分子、
b)ストリンジェントな条件下で(a)の核酸の相補体にハイブリダイズする核酸分子(前記ストリンジェントな条件は、50%ホルムアミド、1MのNaCl、1%SDS中、37℃でのハイブリダイゼーション、および0.1×SSC中、60℃から65℃での洗浄を含む)、
c)配列番号1、3もしくは21に記載のヌクレオチド配列との少なくとも90%の同一性を有する核酸分子、または
d)配列番号2、4もしくは22との少なくとも90%の同一性を有するポリペプチドをコードする核酸分子、
からなる群より選択される少なくとも1つの異種核酸分子を前記細菌に導入することを含み、
前記細菌の付着が、(a)、(b)、(c)または(d)の異種核酸分子を含まない細菌の付着と比較した場合に修飾される方法。
【請求項43】
前記細菌が、ラクトバチルス・アシドフィルス、L.ガセリ、L.ジョンソニイ、およびL.プランタルムからなる群より選択される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記基質が、胃腸管または尿生殖路の細胞を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記細胞が、上皮細胞または粘膜細胞を含む、請求項44に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公表番号】特表2008−537885(P2008−537885A)
【公表日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−506757(P2008−506757)
【出願日】平成18年4月14日(2006.4.14)
【国際出願番号】PCT/US2006/014143
【国際公開番号】WO2006/113475
【国際公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(507342320)ノース・キャロライナ・ステイト・ユニヴァーシティ (1)
【Fターム(参考)】