説明

組合せ玩具

【課題】第1の形象玩具の電源に、第2の形象玩具の電源から容易かつ比較的短時間の充電を実現する。
【解決手段】第1の形象玩具1および第2の形象玩具2を備える。第1の形象玩具1は、電源11と、電源11に充電するための充電部13と、電源11から供給される電力で作動する音声出力部15と、電源11の電力の残量を監視する電源監視回路14とを有する。第2の形象玩具2は、電源17と、この電源17に充電するとともに電源17の電力を第1の形象玩具1の充電部13を介して放電するための充放電部19とを有する。そして、第2の形象玩具2の電源17は有機ラジカル二次電池を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の形象玩具同士が接近または接触することにより、一方の形象玩具を他方の形象玩具に反応させて動作させるとともに、他方の形象玩具から一方の形象玩具に電気エネルギーを伝達する組合せ玩具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一組の玩具において、一方の玩具内にセンサーを内蔵して、一方の玩具を他方の玩具を近づけたり接触したりすることで他方の玩具に反応させて動作させるものは数多く知られている。例えば、一方の玩具にはアンテナ、受信部、メモリ部、情報出力部を有し、他方の玩具にアンテナと無線発信回路を内蔵する組合せ玩具の構成が特許文献1に開示されている。この玩具では、玩具と玩具を互いに接近させることによって、一方の玩具が他方の玩具を識別してその情報に基づいて形象玩具を反応させて遊ぶことができる。
【0003】
また、従来の組み合わせ玩具としては、ぬいぐるみの口に磁気センサーが設けられ、磁石を内蔵して食べ物を模した食物玩具を口に近づけたときに、音声回路が作動して音声を発する動物鳴き声おもちゃの構成が特許文献2に開示されている。この組み合わせ玩具では、ぬいぐるみに食物玩具を与えることで、ぬいぐるみを反応させて楽しむことができる。
【0004】
また、他方の玩具にドットコードが設けられ、一方の玩具に内蔵されたドットコードリーダーによって他方の玩具のドットコードを読み取ることで、他方の玩具が何であるかを判断して、一方の玩具が音声を出力する組合せ玩具の構成が特許文献3に開示されている。これらの玩具によれば、ぬいぐるみ玩具に与えられた食物玩具が何であるかをぬいぐるみ玩具が認識して、与えられた食物玩具に関連する音声を出力して擬似的な対話を楽しむことができる。
【0005】
また、一方の装飾具には給電用バッテリーと給電用コネクタが設けられ、他方の装飾具には充電用コネクタと充電式電池と動作部および/または作動部が設けられた一組の装飾具の組合せからなる充電式の装飾具が特許文献4に開示されている。これは2つの装飾具を嵌合させることで、一方の装飾具の給電用バッテリーによって他方の装飾具の充電式電池を充電することで、繰り返して遊びを楽しむことができる。
【特許文献1】特開2000−93664号公報
【特許文献2】特開2003−71141号公報
【特許文献3】特開2005−34444号公報
【特許文献4】実開平6−41795号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1等の従来の組合せ玩具は、一方の形象玩具に電池が内蔵され、他方の形象玩具の情報を読み取るために、読み取り側である一方の形象玩具の電池が消耗した際、電池として一次電池が用いられている場合には電池交換、または二次電池が用いられている場合には充電を行う必要があった。
【0007】
また、一方の形象玩具と他方の形象玩具にそれぞれ二次電池が内蔵される組合せ玩具では、一方側の電池から他方側の電池に充電するのに比較的長い時間を要するので、これらの形象玩具を接触させ続ける時間が長くなってしまう不都合がある。したがって、このような構成は、形象玩具を接触させ続ける時間が比較的長くなる取り扱いであっても支障がない用途に制約されてしまう。
【0008】
また、一方の形象玩具の電源を充電する他方の形象玩具の電源にキャパシタ(コンデンサ)が用いられる構成では、キャパシタの容量が小さすぎるので、他方の形象玩具を多数回、または多くの他の形象玩具を用いて、一方の形象玩具の電源への充電を完了する必要があり、取り扱いが煩雑になる不都合がある。
【0009】
そこで、本発明は、電源をそれぞれ有する第1および第2の形象玩具を組み合わせることで、第2の形象玩具に内蔵された電源から第1の形象玩具に内蔵された電源を比較的短時間で充電し、電池交換を不要とし容易に充電を行うことができる組み合わせ玩具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した目的を達成するため、本発明に係る組み合わせ玩具は、電源と、電源に充電するための充電手段と、電源から供給される電力で作動する出力手段と、電源の電力の残量を監視する電源監視回路とを有する第1の形象玩具と、
電源と、この電源に充電するための充電手段と、第1の形象玩具の充電手段を介して放電するための放電手段とを有する第2の形象玩具とを備える。そして、第2の形象玩具の電源は有機ラジカル二次電池を有している。
【0011】
以上のように構成された本発明の組み合わせ玩具によれば、第1の形象玩具と第2の形象玩具とを組み合わせることで、第1の形象玩具の電源に、第2の形象玩具の電源が有する有機ラジカル二次電池から容易に充電され、有機ラジカル二次電池の高速放電能によって比較的短時間の充電が実現される。
【0012】
また、本発明に係る組み合わせ玩具は、電源と、この電源の電力を第2の形象玩具の充電手段を介して放電するための放電手段とを有し、第2の形象玩具の電源に充電するための第3の形象玩具を備えてもよい。この組み合わせ玩具によれば、第3の形象玩具の電源からの電力を、第2の形象玩具を介して、第1の形象玩具に伝達することが可能になり、組み合わせ玩具による遊び方を更に拡張することが可能になる。
【0013】
なお、本発明において用いられる有機ラジカル電池は、活物質である有機ラジカル化合物の酸化還元反応を用いる電池を指している。
【0014】
また、本発明では便宜上、人形玩具と称するが、本発明における人形玩具は、人や鳥等の動物、植物や、ロボットや乗り物等の形態も含めて指している。また、本発明において服飾玩具とは、人形玩具に装着される衣服や装身具(アクセサリー)を含めて指している。また、付属玩具とは、人形玩具に装着される例えば武器等の道具を含めた付属品や、ロボットや乗り物等に接続される接続部品を含めて指している。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、第1の形象玩具と第2の形象玩具とを組み合わせて用いることで、第1の形象玩具の電源に、第2の形象玩具の電源が有する有機ラジカル二次電池から容易に充電し、有機ラジカル二次電池の高速放電能によって比較的短時間の充電を実現することができる。したがって、組み合わせ玩具による遊び方を拡張することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の具体的な実施形態について、図面を参照して説明する。
【0017】
[1]組み合わせ玩具
まず、本発明に係る組み合わせ玩具の基本構成について説明する。なお、以下の説明では、同一または相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0018】
図1は、本実施形態の組み合わせ玩具の一例を示す。図1に示すように、本実施形態の組み合わせ玩具は、第1の形象玩具1と、第1の形象玩具1を充電するための第2の形象玩具2とを備えている。また、本実施形態の組み合わせ玩具は、第2の形象玩具2を充電するための第3の形象玩具3を備えている。
【0019】
第1の形象玩具1は、くまを模したぬいぐるみである人形玩具である。また、第2の形象玩具2は、人形玩具に応じた種々の食べ物を模した食物玩具である。そして、本実施形態の組み合わせ玩具は、食物玩具を人形玩具に模擬的に食べさせて遊ぶ組み合わせ玩具である。また、第3の形象玩具3は、第2の形象玩具2を収納する収納庫玩具、例えば冷蔵庫玩具として構成されている。
【0020】
第1の形象玩具1は、電気二重層キャパシタ(コンデンサ)を有する電源11と、この電源11を充電するための充電回路12および充電コネクタからなる充電部13と、電源11の残存容量を監視する電源監視回路14と、この電源監視回路14による検出結果に基づいて出力を行う出力手段としての音声出力部15とを備えている。
【0021】
第2の形象玩具2は、有機ラジカル二次電池からなる電源17と、この電源17に充電するとともに電源17の電力を第1の形象玩具1の充電部13を介して放電するための充放電回路18および充放電用コネクタからなる充放電部19とを備えている。また、第1の形象玩具1である人形玩具の口部分の近傍には、第2の形象玩具2の充放電部19が当接される充電部13、および音声出力部15が配置されている。
【0022】
なお、第2の形象玩具2は、電源17に充電するための充電回路および充電用コネクタからなる充電部と、電源17の電力を第1の形象玩具1の充電部13を介して放電するための放電回路および放電用コネクタからなる放電部とをそれぞれ独立して備える構成が採られてもよい。
【0023】
第3の形象玩具3は、例えば交流電源(不図示)に電気的に接続された電源21と、この電源21の電力を第2の形象玩具2の充放電部19に伝達するための放電回路22および放電コネクタからなる放電部23とを備えている。
【0024】
図1は上述の構成において、第2の形象玩具2の電源17から第1の形象玩具1の電源11に電力を伝達する例を示す。上述した組み合わせ玩具によれば、食物玩具を人形玩具の口に当接させることで、食物玩具側に設けられた充放電部19と人形玩具側に設けられた充電部13を通じて、食物玩具の電源17に蓄えられた電力を人形玩具側の電源11に充電することができる。
【0025】
また、人形玩具は、電源11の充電が完了したことを電源監視回路14が検出したときに、この検出結果に基づいて音声出力部15によって、例えば「もう食べられないよ」等の音声を再生させて充電が完了したことを知らせることができる。同様に、人形玩具は、電源11の電力の残存容量が消耗してしまう間際であることを電源監視回路14が検出したときに、音声出力部15から例えば「おなかが空いたよ」等の音声を再生させて、充電を促すことができる。
【0026】
また、第2の形象玩具2は、第3の形象玩具3である収納庫玩具に収納され、食物玩具の充放電部19が、収納庫玩具の放電部23に当接されることで、電源21から食物玩具の電源17に充電することができる。
【0027】
なお、第1の形象玩具1は、電源11が、有機ラジカル二次電池を有する構成が採られてもよく、また第3の形象玩具3の電源21が、有機ラジカル二次電池を有し、他の充電機器で充電されるように構成されてもよい。
【0028】
また、第1の形象玩具1と第2の形象玩具2との間、第2の形象玩具2と第3の形象玩具3との間において、放電部と充電部とが非接触方式で充電を行う構成が採られてもよい。また、第1の形象玩具1は、音声出力部15が、人形玩具を動作させる駆動機構と連動して音声を出力するように構成されることで、人形玩具の空腹感や満腹感をより一層現実的に表現することができる。なお、出力手段としては、音声出力部や駆動機構に限られず、例えば発光ダイオードによる発光等の他の出力形態が採られてもよい。また、人形玩具の形態としては、動物に限らず、例えばロボット玩具や乗り物等でもよいことは勿論である。さらに、本実施形態の組み合わせ玩具は、充電動作と同時に食物玩具の集積回路等に記憶されていた情報が人形玩具に読み込まれるように構成することで、例えば食物玩具の種類等に応じて、人形玩具の音声出力部15の動作を変化させてもよい。
【0029】
[2]薄型の有機ラジカル二次電池
次に、本実施形態の組み合わせ玩具の電源に用いられる有機ラジカル二次電池について説明する。図2は有機ラジカル二次電池を示す斜視図であり、図3は、有機ラジカル二次電池を示す分解斜視図である。
【0030】
有機ラジカル二次電池105の基本構成は、安定ラジカル化合物を正極活物質としたラジカル正極202と、多孔質ポリプロピレンやセルロースなどからなるセパレータ203と、金属リチウムなどからなる負極204と、正極202に接続された正極リード205と、負極204に接続された負極リード206と、電解液(不図示)と、これらを封止する一対の外装用フィルム201とを備えて構成されている。外装用フィルム201としては、水蒸気透過性が低いアルミラミネートフィルムなどが使用される。
【0031】
ラジカル正極
ラジカル正極202における正極活物質として、還元状態において式(1)で表わされるニトロキシドラジカル基、酸化状態において式(2)で表わされるオキソアンモニウム(ニトロキシドカチオン)基を部分構造として分子中に有するニトロキシドラジカルポリマーを用いることができる。
【0032】
【化1】

【0033】
これらのニトロキシドラジカルポリマーの代表的な構造の例を以下に示す。
【0034】
【化2】

【0035】
ニトロキシドラジカルポリマーの重量平均分子量は、500以上であることが好ましく、さらには5000以上であることがより好ましい。これは、重量平均分子量が500以上であると電池用電解液に溶解しづらくなり、さらに重量平均分子量5000以上になるとほぼ不溶となるからである。重合体の形状としては、鎖状、分岐状、網目状のいずれでもよい。また、架橋剤で架橋したような構造でもよい。
【0036】
また、ニトロキシドラジカルポリマーは、単独で用いることができるが、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、他の活物質と組み合わせて用いてもよい。
【0037】
また、ニトロキシドラジカルポリマーを用いて電極を形成する場合に、インピーダンスを低下させる目的で、導電補助剤を混合させることもできる。導電付与剤の材料としては、グラファイト、カーボンブラック、アセチレンブラック等の炭素質微粒子、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリアセン等の導電性高分子が挙げられる。
【0038】
また、必要に応じて、ニトロキシドラジカルポリマー、導電付与剤の結びつきを強めるために、結着剤を用いることもできる。このような結着剤としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ビニリデンフロライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフロライド−テトラフルオロエチレン共重合体、スチレン・ブタジエン共重合ゴム、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、各種ポリウレタン等の樹脂バインダーが挙げられる。
【0039】
ラジカル正極は、正極集電体上に形成することができる。正極集電体としては、ニッケルやアルミニウム、銅、金、銀、アルミニウム合金、ステンレス、炭素等からなる箔、金属平板状を用いることができる。
【0040】
負極
負極204としては、リチウム金属、リチウム合金や、黒鉛などの炭素材料を用いることができる。これらの形状としては特に限定されるものではなく、例えば、薄膜状、粉末を固めたもの、繊維状のもの、フレーク状のもの等であってもよい。また、これらの負極活物質を単独、もしくは組み合わせて使用することができる。
【0041】
負極の各構成材料間の結びつきを強めるために、結着剤を用いることもできる。このような結着剤としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ビニリデンフロライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフロライド−テトラフルオロエチレン共重合体、スチレン・ブタジエン共重合ゴム、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、部分カルボキシ化セルロース、各種ポリウレタン等が挙げられる。
【0042】
負極は、ニッケルやアルミニウム、銅、金、銀、アルミニウム合金、ステンレス、炭素等からなる箔、金属平板などの上に形成されたものを用いることができる。
【0043】
電解質
電解質は、負極204と正極202の両極間の荷電担体輸送を行うものであり、一般には20℃で10-5〜10-1S/cmのイオン伝導性を有していることが好ましい。電解質としては、例えば電解質塩を溶剤に溶解した電解液を利用することができる。電解質塩として、例えばLiPF6、LiClO4、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO22、LiN(C25SO22、LiC(CF3SO23、LiC(C25SO23等の従来公知の材料を用いることができる。
【0044】
電解液に溶剤を用いる場合、溶剤としては例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、スルホラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の有機溶媒を用いることができる。これらの溶剤を単独もしくは2種類以上を混合して用いることもできる。
【0045】
さらに、電解質として固体電解質を用いることもできる。これら固体電解質に用いられる高分子化合物としては、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−エチレン共重合体、フッ化ビニリデン−モノフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン三元共重合体等のフッ化ビニリデン系重合体や、アクリロニトリル−メチルメタクリレート共重合体、アクリロニトリル−メチルアクリレート共重合体、アクリロニトリル−エチルメタクリレート共重合体、アクリロニトリル−エチルアクリレート共重合体、アクリロニトリル−メタクリル酸共重合体、アクリロニトリル−アクリル酸共重合体、アクリロニトリル−ビニルアセテート共重合体等のアクリルニトリル系重合体、さらにポリエチレンオキサイド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体、これらのアクリレート体やメタクリレート体の重合体などが挙げられる。これらの高分子化合物に電解液を含ませてゲル状にしたものを用いても、高分子化合物のみをそのまま用いてもよい。
【0046】
セパレータ
ラジカル正極、および負極が接触しないようにポリエチレン、ポリプロピレン等からなる多孔質フィルム、セルロース膜、不織布などのセパレータ203を用いることもできる。
【0047】
電池形状
本発明において、有機ラジカル二次電池の形状は特に限定されるものではなく、従来公知のものを用いることができる。電池形状としては、例えば円筒型、角型、コイン型、およびシート型(フィルム型)等が挙げられる。このような電池は、上述した正極、負極、電解質、セパレータなどを、電極積層体あるいは巻回体を金属ケース、樹脂ケース、あるいはアルミニウム箔などの金属箔と合成樹脂フィルムからなるラミネートフィルム等によって封止することによって作製される。しかしながら、本発明はこれらの形態に限定されるものではない。薄くしやすいという観点から、電池形状は、ラミネートフィルムによって封止されたフィルム型等を採ることが好ましい。
【0048】
[3]有機ラジカル二次電池の作製例
次に、有機ラジカル二次電池の作製例について説明する。
【0049】
(ラジカルポリマーの合成例)
上記式(5)で表されるラジカルポリマーの合成例を以下に示す。
まず、モノマー(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−ビニルオキシ−1−オキシル)を合成した。このモノマーの合成は、イリジウム触媒存在下、相当するラジカルを有するアルコールと酢酸ビニルを加熱還流する方法を用いて行った。具体的には、ジャーナル オブ ジ アメリカン ケミカル ソサエティ(Journal of The American Society、124巻,1590〜1591頁(2002年)、石井康敬ら)や特開2003−73321公報に記載の方法に従って、モノマーを合成した。
【0050】
次に、この2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−ビニルオキシ−1−オキシル(モノマー)の重合を、下記式(8)で表される反応により行った。その具体的な方法について以下に示す。
【0051】
【化3】

【0052】
微粉化した上述のラジカルポリマーを1.68g、炭素粉末(VGCF;昭和電工社製)を0.6g、カルボキシメチルセルロース(CMC;ダイセル社製)を96mg、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE;ダイキン工業社製)を24mgと、水7.2mLをホモジナイザーにて攪拌することにより、均一なスラリー状に調整した。このスラリーを電極作製用コーターにて、アルミ箔(厚さ20μm:正極の集電体層)上に塗布し、さらに80℃で3分間、乾燥して厚さ100μmのラジカル正極層を形成した。
【0053】
次に、このようにして形成された正極を20×20mmの正方形に打ち抜いた。この正極のアルミ箔面に、長さ3cm、幅0.5mmのニッケルリードを溶接した。また、リチウム貼り合わせ銅箔(リチウム厚30μm)を正極同様に20×20mmの正方形に打ち抜いて金属リチウム負極とし、長さ3cm、幅0.5mmのニッケルリードを銅箔面に溶接した。正極、多孔質ポリプロピレンセパレータ(25×25mmの正方形)、負極の順に、ラジカル正極層と金属リチウム負極とを対峙する向きで重ね合わせニッケルリード付電極対とした。
【0054】
続いて、2枚の熱融着可能なアルミラミネートフィルム(縦40mm×横40mm×厚さ0.76mm)の三方を熱融着することで、袋状のケースを形成し、ニッケルリード付電極対をこのケース内に収容した。電解液[1.0mol/LのLiPF6電解質塩を含むエチレンカーボネート(EC)/ジエチルカーボネート(DEC)の混合溶液(混合比EC:DEC=3:7)]をアルミラミネートケースの中に0.5ml収容した。このとき、ニッケルリード付電極のニッケルリードの端部を、1cm程度だけケースの外に引き出し、アルミラミネートケースの未溶着の一辺を熱融着した。これにより、電極と電解液をアルミラミネートケース中に完全に密閉した。
【0055】
以上のように薄型の有機ラジカル二次電池(縦40mm×横40mm×厚さ0.4mm)を作製した。この二次電池を100mAで30秒間の充電を行った後に、0.1mAの定電流で放電した。その結果、平均電圧3.5Vで5時間の放電を行った(エネルギー量1.8mWh)。
【0056】
上述したように、本実施形態の組み合わせ玩具によれば、第1の形象玩具1と第2の形象玩具2とを組み合わせて用いることで、第1の形象玩具1の電源11に、第2の形象玩具2の電源17が有する有機ラジカル二次電池105から容易に充電し、有機ラジカル二次電池105の高速放電能によって比較的短時間の充電を実現することができる。加えて、第2の形象玩具2と第3の形象玩具3とを組み合わせて用いることで、第3の形象玩具3の電源21から、第2の形象玩具2の電源17が有する有機ラジカル二次電池105に容易に充電し、有機ラジカル二次電池105の高速充電能によって比較的短時間の充電を実現することができる。したがって、この組み合わせ玩具によれば、複数の形象玩具を組み合わせる遊び方を拡張することが可能になる。
【0057】
また、本実施形態の組み合わせ玩具によれば、第2の形象玩具2の電源17が有機ラジカル二次電池105を備えることで、薄型、小型、軽量であり、高速な充電放電が可能な組み合わせ玩具用の電源を提供できる。有機ラジカル二次電池は、正極活物質のゲル化による柔軟性により、多様な電池形状を採ることが可能であるので、種々の形状をもつ形象玩具に対応する電源としては最適である。また、有機ラジカル二次電池は、薄型形状に構成することも可能であるため、第2の形象玩具2をカード形状に構成することもできる。
【0058】
以上のように構成された本実施形態の組み合わせ玩具について、更に具体的な構成を説明する。
【0059】
(第1の実施形態)
本実施形態の組み合わせ玩具は、図4に示すように、第1の形象玩具1としての人形玩具と、この人形玩具に対応する第2の形象玩具2としての食物玩具と、この食物玩具を必要に応じて収納する第3の形象玩具3としての冷蔵庫玩具とを備えている。
【0060】
人形玩具は、くまを模したぬいぐるみとされ、電気二重層キャパシタからなる電源11と、充電回路12および充電コネクタを有する充電部13と、電源監視回路14と、音声出力部15とを備えている。そして、人形玩具は、ぬいぐるみの口部分に充電部13および音声出力部15が配置されている。なお、人形玩具の電源11は、有機ラジカル二次電池105を有する構成が採られてもよい。
【0061】
食物玩具は、有機ラジカル二次電池105を有する電源17と、この電源17に充電するとともに人形玩具の充電部13を介して放電するための充放電回路18と充放電用コネクタとを有する充放電部19とを備えている。また、人形玩具には、口部分に、充電部13と音声出力部15が配置されている。
【0062】
冷蔵庫玩具は、例えば交流電源(不図示)に電気的に接続された電源21と、この電源21の電力を食物玩具の充放電部19に伝達するための放電回路22および放電コネクタとを有する放電部23とを備えている。また、冷蔵庫玩具は、食物玩具を収納する複数の収納室25を有しており、この収納室25に、食物玩具の充放電部19が電気的に接続される放電部23が配置されている。
【0063】
以上のように構成された組み合わせ玩具では、食物玩具の電源17から人形玩具の電源11に電力を伝達する際に、食物玩具を人形玩具の口に当接させることで、食物玩具側の充放電部19と人形玩具側の充電部13を通じて、食物玩具の電源17に蓄えられた電力を使って人形玩具側の電源11を比較的高速に充電することができる。
【0064】
また、人形玩具は、電源11の充電が完了したことを電源監視回路14が検出したときに、この検出結果に基づいて音声出力部15によって、例えば「もう食べられないよ」等の音声を再生させて充電が完了したことを知らせることができる。同様に、人形玩具は、電源11の電力の残存容量が消耗してしまう間際であることを電源監視回路14が検出したときに、この検出結果に基づいて、音声出力部15から例えば「おなかが空いたよ」等の音声を再生させて、電源11の充電を促すことができる。
【0065】
また、食物玩具は、人形玩具の電源11を充電した後、冷蔵庫玩具の収納室25に収納されることで、冷蔵庫玩具の電源21によって有機ラジカル二次電池105が比較的高速に充電され、人形玩具の電源11を繰り返し充電することが可能になる。したがって、本実施形態の組み合わせ玩具において、食物玩具の有機ラジカル二次電池105は、冷蔵庫玩具の電源21から、人形玩具の電源11への電力の伝達を仲介するように機能する。
【0066】
なお、上述した実施形態では、第2および第3の形象玩具2,3としては食物玩具や冷蔵庫玩具が適用されたが、例えば衣類や装飾玩具等の服飾玩具やタンス玩具等に適用されてもよいことは勿論である。
【0067】
(第2の実施形態)
本実施形態の組み合わせ玩具は、図5に示すように、第1の形象玩具1としてのロボット玩具と、このロボット玩具に装着される第2の形象玩具2としての道具玩具である武器玩具と、第3の形象玩具3として武器玩具が収納される武器庫玩具とを備えて構成されている。
【0068】
ロボット玩具は、有機ラジカル二次電池105を有する電源11と、この電源11に充電するための充電回路12および充電コネクタからなる充電部13と、電源11の有機ラジカル二次電池105の残存容量を監視する電源監視回路14と、各種情報を表示する表示モジュールを有する表示部31とを備えている。また、ロボット玩具には、手の部分に充電部13が配置されている。
【0069】
武器玩具は、有機ラジカル二次電池105を有する電源17と、この電源17に充電するとともにロボット玩具の充電部13を介して放電するための充放電回路18および充放電用コネクタからなる充放電部19とを備えている。
【0070】
武器庫玩具は、例えば交流電源(不図示)に電気的に接続された電源21と、この電源21の電力を食物玩具の充放電部19に伝達するための放電回路22および放電コネクタとを有する放電部23とを備えている。また、武器庫玩具は、武器玩具を収納する複数の収納室25を有しており、この収納室25に、武器玩具の充放電部19が電気的に接続される放電部23が配置されている。
【0071】
以上のように構成された組み合わせ玩具では、武器玩具の電源17からロボット玩具の電源11に電力を伝達する際、武器玩具をロボット玩具の手に握らせて当接させることで、武器玩具側の充放電部19とロボット玩具側の充電部13を通じて、武器玩具の電源17に蓄えられた電力を使ってロボット玩具側の電源11を比較的高速に充電することができる。
【0072】
また、ロボット玩具は、電源11の充電が完了したことを電源監視回路14が検出したときに、この検出結果に基づいて表示部31によって発光や電源11の状態の情報等を表示することで、充電が完了したことを知らせることができる。同様に、ロボット玩具は、電源11の電力の残存容量が消耗してしまう間際であることを電源監視回路14が検出したときに、この検出結果に基づいて、表示部31を発光させたり電源11の残量等の状態を表示したりすることで、電源11の充電を促すことができる。
【0073】
また、武器玩具は、ロボット玩具の電源11を充電した後、武器庫玩具の収納室25に収納されることで、武器庫玩具の電源21によって有機ラジカル二次電池105が比較的高速に充電され、ロボット玩具の電源11を繰り返し充電することが可能になる。したがって、本実施形態の組み合わせ玩具において、武器玩具の有機ラジカル二次電池105は、武器庫玩具の電源21から、ロボット玩具の電源11への電力の伝達を仲介するように機能する。
【0074】
また、図示しないが、ロボット玩具の電源が消耗したときに、武器玩具を介して充電が行われるように構成されたが、第2の形象玩具として、武器玩具の代わりに、ロボット玩具側の接続部分に接続される部品玩具が用いられる構成が採られてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】実施形態の組み合わせ玩具の基本構成を説明するための模式図である。
【図2】有機ラジカル電池を示す斜視図である。
【図3】有機ラジカル電池の構成を示す分解斜視図である。
【図4】第1の実施形態の組み合わせ玩具を示す斜視図である。
【図5】第2の実施形態の組み合わせ玩具を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0076】
1 第1の形象玩具
2 第2の形象玩具
3 第3の形象玩具
11 電源
12 充電回路
13 充電部
14 電源監視回路
15 音声出力部
17 電源
18 充放電回路
19 充放電部
105 有機ラジカル電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源と、前記電源に充電するための充電手段と、前記電源から供給される電力で作動する出力手段と、前記電源の電力の残量を監視する電源監視回路とを有する第1の形象玩具と、
電源と、該電源に充電するための充電手段と、該電源の電力を前記第1の形象玩具の前記充電手段を介して放電するための放電手段とを有する第2の形象玩具とを備え、
前記第2の形象玩具の前記電源が有機ラジカル二次電池を有していることを特徴とする組み合わせ玩具。
【請求項2】
電源と、該電源の電力を前記第2の形象玩具の前記充電手段を介して放電するための放電手段とを有し、前記第2の形象玩具の前記電源に充電するための第3の形象玩具を備える請求項1に記載の組み合わせ玩具。
【請求項3】
前記第1の形象玩具の前記電源がコンデンサである請求項1に記載の組み合わせ玩具。
【請求項4】
前記第1の形象玩具の前記電源が有機ラジカル二次電池である請求項1に記載の組み合わせ玩具。
【請求項5】
前記第3の形象玩具の前記電源が有機ラジカル二次電池である請求項2に記載の組み合わせ玩具。
【請求項6】
前記第1の形象玩具の前記出力手段が音声を出力するスピーカを有している請求項1ないし5のいずれか1項に記載の組み合わせ玩具。
【請求項7】
前記第1の形象玩具の前記充電手段、および前記第2の形象玩具の前記放電手段が、非接触状態で充放電を行う請求項1ないし6のいずれか1項に記載の組み合わせ玩具。
【請求項8】
前記第2の形象玩具の前記充電手段、および前記第3の形象玩具の前記放電手段が、非接触状態で充放電を行う請求項2ないし7のいずれか1項に記載の組み合わせ玩具。
【請求項9】
前記第1の形象玩具の前記電源監視回路によって前記第1の形象玩具の前記電源の充電状態を検出し、該検出結果に基づいて前記出力手段が作動される請求項1ないし8のいずれか1項に記載の組み合わせ玩具。
【請求項10】
前記第1の形象玩具が人形玩具であり、前記第2の形象玩具が前記人形玩具に対応する食物玩具であって、前記第1の形象玩具の前記充電手段が前記人形玩具の口部分に配置されている請求項1ないし7のいずれか1項に記載の組み合わせ玩具。
【請求項11】
前記第1の形象玩具が人形玩具であり、
前記第2の形象玩具が、前記人形玩具に装着される服飾玩具または付属玩具である請求項1ないし7のいずれか1項に記載の組み合わせ玩具。
【請求項12】
前記第3の形象玩具は、前記第2の形象玩具を収納する収納庫玩具である請求項2ないし11のいずれか1項に記載の組み合わせ玩具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−154925(P2008−154925A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−349584(P2006−349584)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】