説明

組成分析のためのフラクションコレクター

LCカラムから流れ出る溶離液流18内でフラクション採取を制御する方法および装置。トリガー式検出器12は、溶離液流18内のクロマトグラフピークの特徴に従って、目標物質の存在を認識し、フラクションコレクター14をトリガーするための遅延タイマ15を始動する。廃液流検出器16は、フラクションコレクター14から流れる廃液流20のピークを検出するために、フラクションコレクター14から任意の距離に配設される。フラクションコレクター作動のシグネチャは、廃液流検出器16によって見られ、目標成分の最低採取のために、遅延時間が調整されることが可能になる。廃液流検出器16によって検出される、ピークまたは残りのピークの特徴が有るか、無いかは、溶離液流18の目標成分が、フラクションコレクター14によって意図されるように採取されたことを確認するために使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体システムに関し、特に、液体クロマトグラフ(「LC」)溶離液流におけるフラクション採取に関する。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフは、化合物の組成を分析するのに一般に使用され、それによって、分析される化合物を含有する溶液が、液体クロマトグラフ(LC)カラムを通して圧力下に置かれる。LCカラムは、加圧された溶液と相互作用し、溶液中の化学物質の組成に特徴的であるような方法で流体流量に影響を与えるように特別に構成される。それによって、成分は、その化学組成および対応する流量に従って溶液内で分離する。LCカラムからの溶離液は、通常、著しく希薄な液体相の状態である。分離された成分は、検出器装置上で、「クロマトグラフピーク」として現れる。
【0003】
液体クロマトグラフ分析では、ハードウェア、ソフトウェア、および化学物質の、組み合わせ式実施態様を含む適切な分離戦略の選択によって、注入された試料の個別成分への分離がもたらされ、個別の成分は、カラムから溶離(elute)してかなり明瞭なゾーンまたは「バンド」になる。これらのバンドが検出器を通過する時に、検出器出力が、通常電気信号の形態で生成される。時間変化する電気信号によって表すことができる溶離バンド内の分析物濃度のパターンは、用語「クロマトグラフピーク」(または「ピーク」)を生じる。バンドの中心が検出器を通過する時間である「保持時間」によって、ピークを、特徴付けることができる。多くの用途において、ピークの保持時間は、標準物質およびキャリブラントによる関連する分析に基づいて溶離分析物のアイデンティティを推測するのに使用される。ピークについての保持時間は、分析物の移動相組成、および、LCカラムを通過した移動相の累積体積によって強く影響される。
【0004】
さらなる試験および評価のために、HPLCの複合混合物の分離から特定の成分(複数可)を分離し、採取することが望ましいことが多い。たとえば、候補薬物分子の生物学的活動または他の特性を評価するのに、純粋な成分の試料が必要とされる場合がある。
【0005】
溶離液流から精製された試料を物理的に採取する従来の方法は、流れの一部または「フラクション」を、指定された時間に採取容器内に分流させることが可能なフラクションコレクターを採用する。フラクションコレクターを開けるための指定された時間は、理想的には、溶離液流の濃縮成分がフラクションコレクターに到達するのに対応する。
【0006】
当技術分野で知られているように、LC溶離液流におけるフラクションコレクターのタイミングは、特定の成分濃縮部(ピーク)の検出によってタイマを始動するトリガー式検出器を設置することによって制御することができる。フラクションコレクターは、ある遅延時間経過後にトリガーされる。
【0007】
ピークがフラクションコレクターに達する前にピークを検知する任意の検出器は、フラクションコレクターをトリガーするのに使用することができる。UV検出器は、UV誘導式精製またはフラクション採取システムにおけるトリガー式検出器として一般に使用される。質量分析装置は、質量誘導式精製またはフラクション採取システムにおけるトリガー式検出器として一般に使用される。これらの検出器は、特定の成分の存在を示すシグネチャ(signature)ピークを認識し、フラクションコレクターをトリガーして、溶離液流から所望の成分のみを採取することができる。トリガー式検出器は、UV検出器などの非破壊検出器である場合、フラクションコレクターの上流に設置することができる。しかし、トリガー式検出器は、必ずしも、フラクションコレクターのすぐ上流に設置されない。トリガー式検出器はまた、分配流の他の分岐がフラクションコレクターに誘導される分配流の他の分岐内に設置することができる。たとえば、質量分析装置などの破壊検出器がトリガー式検出器として使用される場合、破壊検出器は、溶離液流の別個の分岐内に設置されなければならない。
【0008】
遅延時間は、トリガー式検出器におけるピークの出現と、フラクションコレクターへのピークの到達との間の時間である。この時間は、関連する接続配管内の流量および流体容積によって決まる。溶離液流の遅延時間は、可視の染料などの知られているキャリブラントを上流の場所で注入し、トリガー式検出器による染料の検出と、フラクションコレクターへの染料の到達との間の経過時間を記録することによって求めることができる。この較正方法の1つの欠点は、正確な遅延時間が使用されていることを調べることが望まれる時はいつでも、特別なキャリブラント染料が注入されなければならないことである。たとえば、なんらかの理由による流量の変化によって、気づかれない可能性がある遅延時間の変化が引き起こされることになる。
【0009】
質量分析装置は、溶離液流の組成を分析するのに一般に使用される。Fischer他に対する米国特許第6,406,633号明細書(「Fischer‘633」)およびFischer他に対する米国特許第6,106,710号明細書(「Fischer‘710」)は、溶離液流の一部を、液体クロマトグラフカラムから質量分析装置へ誘導し、質量分析装置によって所望の成分(ピーク)を検出するフラクション採取システムを開示する。Fischerの開示の装置は、図1に概略的に示される。質量分析装置52は、流れを別個に分岐した状態でフラクションコレクター54の作動を制御するために、遅延タイマをトリガーする。溶離液流は、液体クロマトグラフカラム51から分配器57に流れ、分配器57は、溶離液流を分流し、一方の分岐を質量分析装置52へ、別の分岐をフラクションコレクター54へ誘導する。たとえ、Fischer‘633およびFischer‘710に開示される質量分析装置52が、フラクションコレクター54のすぐ上流ではなく、別個の流れ分岐53内に配設されていても、流れの各分岐内の流量が予測可能な方法で関連しており、かつ、ピークがフラクションコレクターに達する前に質量分析装置によってピークが検出される場合、質量分析装置54は、フラクションコレクター54の開放を計時するのに使用することができる。下流の検出器55は、フラクションコレクター54の近くに配設される。下流の検出器55におけるピークの検出によって、上流での試料の検出と、フラクションコレクターに近い下流地点における試料の到達との間の経過時間を測定することによって、ピークの流量を求めることが可能になる。Fischer‘633およびFischer‘710に記載される下流の検出器55は、UV検出器などの非破壊検出器である。
【0010】
フラクションコレクター54の計時を実施するために、Fischer‘633は、溶離液流内にキャリブラントを注入し、流れの一方の分岐内の質量分析装置52におけるキャリブラントの到達を計時することによって実験的に求められる遅延時間を開示する。流れの別個の分岐内の、フラクションコレクター54に近接した下流の検出器55におけるキャリブラントの到達もまた計時される。質量分析装置52におけるキャリブラントの到達と、下流の検出器55におけるキャリブラントの到達との間の遅延は、流量情報を提供し、流量情報は、分析される試料が質量分析装置で検出された後に、フラクションコレクターの開放を計時するのに使用することができる。
【0011】
Fischer‘633およびFischer‘710に記載される種々の実施態様はそれぞれ、溶離液流内の物質の存在を識別するために、質量分析装置などの破壊検出器の使用を必要とする。破壊検出器の使用は、溶離液流を、破壊検出器へ流れる分析される流れとフラクションコレクターへ流れる採取流れに分配することを必要とする。Fischer‘633およびFischer‘710はまた、フラクションコレクターの開閉をより正確に計時するため、溶離液流の各分岐の流れをよりよく特徴付けるために、フラクションコレクターの上流における第3検出器の種々の実施態様を開示する。Fischer‘633およびFischer‘710において、第3検出器は、UV検出器などの非破壊検出器として記載される。
【0012】
Fischer‘633およびFischer‘710に記載される種々の実施態様は、フラクションコレクターの近くに非破壊検出器の配置を必要とする。こうした配置は、典型的なフラクションコレクターが、採取容器内に分注するための長いロボットアームを使用するために、使用するのに不利である。検出器がフラクションコレクター分注ヘッドの近くに位置する場合、ロボットアーム上に搭載するのに適した検出器のみを使用することができる。これは、分離される種々の成分を検出するのに使用されることができるが、ロボットアーム上に搭載するのに適さない、標準的なHPLC検出器、たとえば、調整可能なUV検出器の使用を不可能にする。
【0013】
Fischer‘633またはFischer‘710に記載される任意の装置によって、フラクションコレクターのタイミング信号の精度に関する情報は何も提供されていない。さらに、Fischer‘633またはFischer‘710に記載される種々の装置は、所望の成分が、フラクションコレクターによって首尾よく採取されたという確認を可能にしない。Fischer‘633における遅延時間はキャリブラントを使用して求められる。遅延時間は、較正のような時間が繰り返されるまで、試料採取中は不変のままであると仮定されている。
【0014】
Fischer‘633に記載される種々のフラクション採取方法はそれぞれ、フラクションコレクターが作動する前に遅延期間を較正するために、溶離液流内に注入されるキャリブラントの使用を必要とする。いずれのキャリブラントも、分析される物質とは異なる流れ特性を有する可能性があることを当業者は認識するであろう。たとえば、流量の変化または分配比は、較正が実施された後に起こる可能性がある。したがって、較正された遅延期間は、フラクションコレクターにおいて所望の物質の最適でない採取をもたらす誤差を含む可能性がある。たとえ小さなタイミングの誤差でも、フラクションコレクターに、目標物質のほとんど、または、全てを失わせる可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
LCシステムにおいてフラクションコレクターのタイミングを制御するための、これまで知られている方法および装置はどれも、溶離液流内の所望の成分の首尾よい採取を確認する手段を含んでいない。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、LCカラムから流れる溶離液流におけるフラクション採取を制御する方法および装置を提供する。トリガー式検出器は、溶離液流内のクロマトグラフピークの特徴に従って、所定の閾値レベルを超える目標物質の存在を認識する。廃液流検出器は、フラクションコレクターから流れる廃液流のピークを検出するために配設される。所定の閾値レベルを超えた廃液流のピークが有るか、または、無いかで、ピークがフラクションコレクターによって適切に採取されたかどうかを示す。廃液流検出器によって検出されたピークの特徴は、溶離液流の目標成分が、フラクションコレクターによって実際に採取されたことを確認し、目標成分の最適な採取のために、フラクションコレクターのタイミングを較正するのに使用される。タイミング較正は、廃液流検出器のピークシグネチャにおいて、フラクションコレクターのイベント、開閉を認識することによる。タイミング較正は自動化することができる。廃液流検出器が、フラクションコレクターに接近して配置される必要条件は存在しない。廃液流を、精製システムパッケージ内に位置する任意の検出器に導くことができる。
【0017】
本発明の具体的な実施形態は、液体クロマトグラフ(LC)コラムから出る溶離液流から試料成分を採取する方法を提供する。溶離液流は、フラクションの、さらなる分析、分離、または評価のために、流れの特定の一部またはフラクションを採取容器または代替の経路に分流させるようにフラクションコレクターに誘導される。廃液流は、フラクションコレクターから離れる溶離液流の残りを運ぶ。廃液流は、フラクションコレクターが作動する間、流れるのを止める。目標試料成分からのクロマトグラフピークの特徴が、廃液流において検出される。フラクションコレクターを作動するための較正された遅延時間は、廃液流において検出されたピークの特徴に従って計算される。フラクションコレクターのタイミングは、最適なフラクション採取を実施するように調整される。
【0018】
目標成分は、溶離液流内のフラクションコレクターに達する前に、トリガー式検出器によって最初に検出される。フラクションコレクターは、トリガー式検出器によって所望の試料が検出された後、予測遅延時間が過ぎた時、動作される。試料成分のある部分は、廃液流検出器において検出される。フラクションコレクターを開けるのに使用される遅延時間は、廃液流において検出されるクロマトグラフピークの形状を評価し、ピークの特徴に応答して遅延を調整することによって合わせられる。
【0019】
UV検出器などの非破壊光検出器は、本発明の種々の具体的な実施形態における廃液流検出器として使用するのに特に適している。UV検出器により出力されるクロマトグラムは、所望のピークを検出するのに適した波長に合わせられる。UV検出器はまた、本発明によるトリガー式検出器として使用するのに特に好適である。
【0020】
本発明の別の具体的な実施形態では、分配器は、フラクションコレクターの上流に配設され、流れの一部を質量分析装置などの破壊検出器に分流させる。フラクションコレクターを作動させるための遅延タイマは、質量分析装置によって所望のピークが検出されることによって始動することができる。所望の成分の対応する部分がフラクションコレクターに達する前に、所望の成分の一部が質量分析装置に達するように、質量分析装置の流路が、フラクションコレクターの流路より(時間的に)短い場合、質量分析装置によるピークの検出は、先に述べたトリガー検出器と同じ方法で使用することができる。
【0021】
流れの約1/1,000だけが、質量分析装置に誘導され、実際問題として、補給水ポンプは、試料を希釈し、質量分析装置への試料の速度を速めるのに使用される。準備流内の試料の高濃縮部が高過ぎるため、質量分析装置の電気スプレーインタフェース内に直接注入することができない。
【0022】
本発明はまた、分配器の上流に配設された非破壊トリガー式検出器を使用して実施することができる。分配器は、溶離液流の分岐を質量分析装置などの任意のタイプの分析機器へ誘導する。分配器は、溶離液流の別の分岐をフラクションコレクターに誘導する。非破壊トリガー式検出器か、質量分析装置のいずれかが、所望のピークの存在を検出し、フラクションコレクターを動作させるための遅延タイマを始動するのに使用することができる。別法として、非破壊検出器は、破壊検出器に誘導される流れ分岐か、フラクションコレクターに誘導される流れ分岐のいずれかの中で、分配器の下流に位置することができる。
【0023】
廃液ライン検出器として、任意の検出器を使用することができる。先に議論したUV検出器の代わりに、任意の非破壊または破壊検出器を使用することができる。特に、トリガー式検出器として、質量分析装置が採用される時、廃液流の一部は、同じ質量分析装置の第2分析チャネル内にマルチプレクスすることによって、分析されることができる。
【0024】
具体的な実施形態のそれぞれにおいて、廃液流検出器は、フラクションコレクターのタイミングを調整するのに使用される情報を提供する。たとえば、廃液流内で検出されたフルピークは、目標成分がフラクションコレクターによって採取されなかったことを示す。逆に、廃液流内ではなく、トリガー式検出器内で検出されたピークは、フラクションがフラクションコレクターにおいて適切に採取されたことを示す。廃液流内のピーク幅などの特徴は、上流のピークの同様な特徴と比較されることができる。こうした特徴の実質的な一致は、実質的に、ピークの全容積をフラクションコレクターが失ったことを示す。こうした特徴間の部分的な一致は、ピークの一部のみが、フラクションコレクターによって採取されたことを示す。フラクションコレクターが開いた状態と開いていない状態での廃液流検出器のピークの形状の間の特定の差は、フラクションコレクターによる目標試料の最適容積の採取を可能にする、精密な作動時間調整を決定するのに使用することができる。
【0025】
少なくとも1つの具体的な実施形態では、目標試料の上流での検出と、フラクションコレクターの作動との間の遅延期間は、セットアップ操作中に調整される。フラクションコレクターのタイミングは、検証され、必要な場合には、定期的に、または、フラクションコレクターが作動するたびに、廃液流内で検出されたピークの特徴に従って調整される。
【0026】
別の具体的な実施形態では、トリガー式検出器と廃液流検出器の両方によって検出可能な特性を有するキャリブラント成分は、セットアッププロセス中に、トリガー式検出器の上流で注入される。フラクションコレクターは、キャリブラントのピークを部分的に採取するために、計時されることができる。廃液流内で検出されたキャリブラントのピークの特徴は、フラクションコレクターのタイミングを較正するのに使用することができる。
【0027】
本発明は、液体クロマトグラフ(LC)カラムの溶離液流内の目標試料の採取を確認することによって、従来知られている方法の欠点を克服する。本発明はさらに、目標試料成分の喪失を最小にするよう、フラクションコレクターのタイミングを最適化することによって、従来技術の欠点を克服する。本発明の廃液流検出器からのデータを使用して求められるタイミング情報は、フラクションコレクターのタイミングの連続した再較正を可能にする。
【0028】
本発明による廃液流検出器は、必ずしも、フラクションコレクターの近く、または、大きくて急速な運動を行うフラクションコレクター分注アーム上には設置されない。むしろ、廃液流検出器は、フラクションコレクター分注アームから離れて設置することができる。これによって、任意の分離したピークに対して動作する標準的なHPLC検出器を使用することが可能になり、従来技術のようにキャリブラント染料に頼る必要がなくなる。さらに、こうした配置は、単一マルチプレクス式廃液流検出器を有する並列フラクションコレクター分注ヘッドの使用を容易にすることによって、従来技術の多くの欠点を克服する。こうした配置はまた、分離される種々の化合物を検出するための、調整可能な波長を有する標準的なUV検出器の使用を可能にする。本発明に従って、廃液流内に検出器を配置することはまた、トリガー式検出器と廃液流検出器の両方について単一マルチチャネル検出器を使用することを可能にする。
【0029】
たとえば、8個の並列流れセルを有する単一UV検出器は、4チャネル精製システム用のトリガー式検出器ならびに廃液流検出器に使用される可能性がある。同様に、8方向マルチプレクス式質量分析装置は、4個の独立したトリガー式チャネルと分析用の4個の廃液ラインを足したものを提供するのに使用される可能性がある。いずれの場合も、4個の独立フラクションコレクターの遅延タイミングを、本発明に従って求めることができる。
【0030】
本発明の種々の実施形態はまた、フラクションコレクターのところか、または、その近くに検出器を配置するか、または、溶離液流の内にキャリブラント成分を注入する必要をなくすことによって、従来知られているフラクションコレクター技法に比べて利点を提供する。本発明はまた、溶離液流内での後の所望の成分の流れ特徴とは異なる可能性があるキャリブラントの流れ特徴に、従来技術が依存していることによって導入されるフラクションコレクターのタイミング誤差をなくす。
【0031】
本発明の、先の特徴および他の特徴および利点は、添付図面と共に行われる、具体的な実施形態の以下の詳細な説明からより完全に理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明は、クロマトグラフ用途に関して詳細に述べられることになり、本発明の実施形態が、工業またはプロセス制御用途も対象とすることが理解される。
【0033】
図2を参照すると、本発明の具体的な実施形態のシステム流路10が概略的に示される。システム流路10は、直列に配列された、トリガー式検出器12、フラクションコレクター14、および廃液流検出器16を含む。遅延タイマ15は、フラクションコレクター14を作動させる(開閉する)計時された信号を導入するように構成される。液体クロマトグラフカラム(LCカラム)(図示せず)からの溶離液流18は、トリガー式検出器12を通って流れ、フラクションコレクター14上に続く。フラクションコレクター14は、適切な時刻に遅延タイマ15によってトリガーされて、溶離液流18の特定の成分が分流され、採取されるか、または、識別される。フラクションコレクター14によって分流されない溶離液流18の部分は、流路10に沿って続き、廃液流20内に入る。廃液流20は、廃液流検出器16を通って流れる。遅延タイマ16の機能は、クロマトグラフ管理システムソフトウェアによって提供されてもよい。
【0034】
溶離液流18は、溶液中に一連の分離した試料成分を含む。特定の成分は、検出器応答のクロマトグラフピークとして、トリガー式検出器12および廃液流検出器16によって識別可能である。トリガー式検出器12において、溶離液流18内の所望の成分の存在を示すクロマトグラフピークは、フラクションコレクター遅延タイマ15を始動する。所望のピークは、トリガー式検出器をフラクションコレクターに接続する配管の内部容積および溶離液流内の成分の流量に依存する時間遅延後に、フラクションコレクターに到達する。フラクションコレクターは、時間遅延が経過した時に開き、第2遅延後に閉じる。第2遅延は、所定であるか、または、トリガー式検出器12においてピークの後縁の着地(touch−down)によって求めることができる。廃液流検出器16は、溶離液流内の残りのピークを検出する。残りのピークの形状およびタイミングは、フラクション採取の最適なタイミングを確立するための情報を提供し、所望のフラクションが採取されたかどうかを判定するための継続モニタを提供する。廃液流検出器は、成分試料の採取を最適化するための、トリガー式検出器12によるピークの検出と、フラクションコレクター14の開放との間の遅延時間を自動的に微調整することができる信号を提供する。
【0035】
以下に述べるセットアッププロセス中に、フラクションコレクター14は、ピークがフラクションコレクター14に達する前に採取を開始し、ピークが完全に通過する前に採取を停止するために計時されることができる。廃液検出器16は、採取されなかったピークの部分を検知する。廃液流検出器クロマトグラム上での所定の閾値を越える信号の検出は、フラクションコレクターが採取を停止したピーク上の地点を示す。最適フラクションコレクター遅延時間は、ピークがフラクションコレクターによって採取されずに通過することを可能にした後に、廃液流検出器によって得られる基準クロマトグラムと、トレースを比較することによって見出すことができる。
【0036】
本明細書で述べるセットアッププロセスは、廃液流検出器のシグネチャが、フラクションコレクター遅延時間tdelayを確立するのに使用することができる1つの方法である。第1ステップとして、時刻t=0においてトリガー式検出器によって検出されたピークは、フラクションコレクターを開けることなく、廃液流検出器へ流れることが可能になる。時刻tにおいて廃液流検出器によるピークの検出は、閉じたシステムの流れ時間を確立する。接続配管の長さおよび内径から、トリガー式検出器12とフラクションコレクター14との間のシステム容積(V)およびフラクションコレクターと廃液流検出器16との間のシステム容積(V)を推定する。次に、ピークがトリガー式検出器からフラクションコレクターに達する時間は、
est=t/(V+V) (1)
として推定することができる。
【0037】
フラクションコレクター遅延時間が、tsetup=test−Δtfc/2に設定された状態で第2の注入を行う。ここで、Δtfcは、トリガー式検出器によって測定される溶離ピークの幅に最初に設定される、フラクションコレクターが開いたままである時間である。フラクションコレクター遅延時間tdelayをtsetupに設定することによって、フラクションコレクターが、ピークがフラクションコレクターに達する前に採取し始めるようになり、ピークの前縁部分を含めて、採取バイアル内に移動相が分流される。廃液流検出器は、その後、採取されないピークの後縁部分についての反応を示すことになる。tにおけるこの反応の開始は、terrorを計算することを可能にする。terrorは、ピークを正確に採取することになるフラクションコレクター遅延時間tdelayを与えるのに、tsetupが増加しなければならない量である。
error=Δtfc−(t−t) (2)
delay=tsetup+terror (3)
【0038】
具体的な実施形態では、トリガー式検出器12は、マサチューセッツ州ミルフォード(Milford)のWaters Corp.から入手可能なModel2487またはModel2996フォトダイオードアレイなどの、調整可能なUV検出器を備える。WatersのModel2487検出器などのUV検出器は、廃液流検出器16として使用するのに適している。別の具体的な実施形態では、トリガー式検出器12および廃液流検出器16は、単一機器の2つの分析チャネルを使用して実施することができる。たとえば、WatersのModel2488 4または8チャネルUV検出器などの、並列UV検出器上の2チャネル、または、Waters Corporationからのマイクロマス(Micromass)MUX質量分析装置上の2チャネルが、本発明によるトリガー式検出器および廃液流検出器として使用することができる。
【0039】
本発明の具体的な実施形態では、フラクションコレクター遅延タイマ15は、トリガー式検出器、フラクションコレクター、および廃液流検出器に動作可能に接続された、データ取得および制御機能を有するコンピュータを含むデータシステムである。本発明の具体的な実施形態に従って制御タイマ15を実施するデータシステムにおいて使用するための適したソフトウェアは、マサチューセッツ州ミルフォードWaters CorporationからのEmpowerソフトウェア、または、Waters Corporationのマイクロマス事業部から入手可能なMassLynxソフトウェアを含む。
【0040】
廃液流検出器におけるクロマトグラフピークの形状は、フラクションコレクター14が、所望のピークを採取するために適切な時刻に開閉したかどうかを判定するために分析される。採取された試料に関連する廃液流ピークのこうした分析は、以降でさらに詳細に述べる動作をモデリングする、当業者によって理解される数学的機能によって実施することができる。
【0041】
ここで図3を考えると、別の具体的な実施形態のシステム流路10が述べられ、溶離液流18は、液体クロマトグラフカラム19から、質量分析装置24などの破壊検出器に溶離液流の一部を誘導する流れ分配器22へ流れる。溶離液流の残りは、フラクションコレクター14上、および、廃液流検出器16を中に配設されている廃液流20上へと続く。図3に具体的な実施形態は、トリガー式検出器12の機能を質量分析装置24で置き換え、質量分析装置24は、質量分析装置24が、所望のクロマトグラフピークの前縁または閾値を認識することによって、フラクションコレクター遅延タイマをトリガーする。
【0042】
図3の実施形態における流れ分配器22の存在は、分配器および質量分析装置の下流の溶離液流18の流量に影響を与え、それによって、図2に具体的な実施形態のシステム流路について必要とされるものとは異なる遅延時間を必要とする。それでも、フラクションコレクター作動時間の較正は、本明細書に述べる本発明の方法に従って図3の実施形態で実施することができ、遅延時間は、システム流路10における付加的な経路部の作用を補償するように決定することができる。分配された流れが含まれる時には、流量は、より変化を受け易い。本発明によって可能にされるタイミング較正の自動チェックおよび微調整は、特に価値がある。
【0043】
フラクションコレクターのタイミングの較正、および廃液流検出器から出力されるクロマトグラムを使用したフラクションコレクターによる試料採取の確認は、図4a〜4gを参照して述べられる。7つの異なるコントローラ遅延状況に対応する、具体的な7つのクロマトグラムのセットが示される。図4a〜4gのコラムは、時間増分量を表し、検討中のピークは、第1コラム81で表される期間中にトリガー式検出器を通過し(三角形として図示される)、検討中のピークは、第2コラム83で表される期間中にフラクションコレクターを通過し、検討中のピークは、第3コラム85で表される期間中に廃液流検出器を通過する。ピークが、第2コラム83に示すフラクションコレクターを通過する時に、クロマトグラムは実際には取得されないことが留意されるべきである。むしろ、第2コラム83は、ピークがフラクションコレクターを通過する時にフラクションコレクターの仮想の光検出器によって検出されることになる、検討中のピークの形状を示す。
【0044】
図4aで表される第1コントローラ遅延条件は、フラクションコレクターがトリガーされない時に起こる。これは、たとえば、フラクションコレクターが閉じている時に、ピークが、トリガー式検出器から廃液流検出器まで通過する時間tを確立するための実験が実施される時に起こる。この議論のために、全ての時間は、トリガー式検出器がピークの前縁を検出する時のt=0を基準にする。ピーク82の前縁80は、トリガー式検出器によって検出され、遅延タイマを時刻t=0で開始させる。ピーク82’の前縁80’は、時刻tdelayでフラクションコレクターに到達する(時刻tdelayはまだ確立されていない)。フラクションコレクターを開くための信号が存在しないため、全てのピーク82”が、廃液流内を流れ続け、その前縁80”は、廃液流検出器によって検出されて、tが確立される。t=0においてトリガー式検出器によって検出されたピーク82用のクロマトグラムは、フラクションが採取されないため、tにおいて廃液流検出器によって検出されたピーク82”用のクロマトグラムと実質的に同じである。
【0045】
図4bは、ピークがフラクションコレクターに達する前にフラクションコレクターを開閉させるコントローラ遅延状況を示す。所望の成分の無い状態での溶離液流の移動相部分は、ピークに先立って採取容器内に分流される。したがって、クロマトグラム信号86’および86”は、82’および82”と同じである。クロマトグラム信号86’および86”は、遅延タイミング情報を提供しない。フラクションコレクターのタイミング信号88は、フラクションコレクター開信号tsetupに対応する前縁89およびフラクションコレクター閉信号に対応する後縁90を有する。フラクションコレクターが開いている期間(Δtfc)は、タイミング信号88の幅92によって表される。
【0046】
図4cは、フラクションコレクターを開閉するのに最適な時間より早いが、フラクションコレクターに、ピーク94’の前縁部98を採取させるには十分に遅くに起こるタイミング信号96から生じるクロマトグラムを表す。これは、適切な遅延時間を計算するのに必要とされる情報を提供する。フラクションコレクターは、ピーク94の任意の部分がフラクションコレクターに達する前に、時刻tsetup97に開く。ピークに先立つ移動相およびピーク94’の前縁部98は、フラクションコレクターが閉じる前に採取される。フラクションコレクターは、時間tsetup+Δtfc100で閉じる。ピークの大幅な部分94”は廃液流に向かう。
【0047】
ピークを最適に採取するために、フラクションコレクターは、ピーク94’の前縁閾値がフラクションコレクターに到達することによって開いたであろう。フラクションコレクターが閉じることによる、廃液流検出器クロマトグラムにけるイベントは、時間tにある。その結果、廃液流検出器クロマトグラム94”は、フラクションコレクターにおけるピーク前縁閾値の到達後の時間t−t95に実際に閉じたことを示す。したがって、遅延時間の誤差は、terror=Δtfc−(t−t)である。フラクションコレクターをトリガーするための最適時間は、tdelay=tsetup+terror=tsetup+Δtfc−(t−t)である。
【0048】
図4dに示す廃液流検出器信号は、実質的に最適時間にフラクションコレクターが開いた時に起こり、ピークが実際に採取されたことを確認する。フラクションコレクターのタイミング信号106の前縁104は、フラクションコレクターにおける所望のピーク110’の前縁108の到達に対応する。フラクションコレクターのタイミング信号106の後縁112は、所望のピークの後縁114の通過に対応する。採取が開始され、フラクション採取が進むにつれて、採取が廃液流内でフリーズされる前に、ピークの前縁は、フラクションコレクターを通過する。フラクションコレクターが閉じる(採取が終了する)と、ピークの後縁の残りが、前縁の残りと接触させられる。それらは共に、廃液流検出器に流れる。フラクションの大部分が採取されたため、ピークのほんのわずかな残りの体積116が、廃液流クロマトグラム上に示される。
【0049】
図4eは、フラクションコレクターを開閉するのに最適な時間より遅いが、フラクションコレクターに、ピーク122’の後縁部120を採取させるには十分に早くに起こるタイミング信号118から生じるクロマトグラムを表す。フラクションコレクターは、ピーク122’の前縁部126がフラクションコレクターを通過した後に、時刻tsetup124に開く。ピークの前縁部分は、廃液流検出器に先立って廃液ラインでフリーズされる。ピーク122’の後縁部120が採取され、期間Δtfc後にフラクションコレクターが閉じる。Δtfcの遅延後に、ピークの前縁部126’は、廃液流内に流れ、廃液流検出器によって検出される。フラクションコレクターが閉じることによる、廃液流検出器クロマトグラム上のイベントは、時間tにある。タイミング誤差は、等式terror=t−(t+Δtfc)に従って計算することができる。フラクションコレクターの後の動作は、tdelay=tsetup+terror、または、等価的に、tdelay=tsetup+Δtfc−(t−t)に従って、本明細書に述べるように調整することができる。この場合のterrorは負であることに留意されたい。
【0050】
図4cおよび4dの具体的な実施形態では、フラクションコレクターイベントは、廃液流クロマトグラムの時間tで起こる。フラクションコレクターが早く開くと、図4c、イベントは、残りのピークの開始にあり、フラクションコレクターが遅く開くと、イベントは、残りのピークの終わりにある。図4eにおいて、フラクションコレクター開時間Δtfcによる残りのピークの遅延は、2つの場合を識別する。フラクションコレクターのタイミングの遅れおよび進みは、フラクションコレクターを開くために遅延タイマを始動するのに使用される、トリガー式検出器におけるピークの検出に関して測定されることが留意されるべきである。
【0051】
図4fにおいて、フラクションコレクターのタイミング信号130は、ピーク134’が通過した後に、フラクションコレクターを開くことが見てわかる。フラクションコレクターが開くため、その期間の間に、ピーク134”が廃液流内で「フリーズ」される時に、廃液流内の流れが停止する。それに応じて、廃液流内のピーク134”が、Δtfcに対応する期間だけ遅延する時に、全てのピーク134”がフラクションコレクターを通過した後に、タイミング信号130が起こったことを推測することができる。タイミング信号の進みは、必要であるが、全てのピークをフラクションコレクターが失う時には、terrorの大きさを、廃液流クロマトグラムから推測することができない。
【0052】
図4gにおいて、ピークが廃液流検出器に入った後に、フラクションコレクター開信号TFC136が起こる。フラクション採取が開いている間、廃棄流は流れないため、廃液流検出器における吸収は、時間Δtfcの間、フリーズされ、その後、ピークの残りの部分142が廃液流検出器を通過する。図4fと同様に、フラクションコレクターがあまりに遅く開き、ピークが検出されなかったことを推測することができる。このクロマトグラムからは、正確な遅延時間を求めることができない。
【0053】
溶離液流が、トリガー式検出器と廃液流検出器の間を流れる時に、ピークのバンド拡散すなわち広がりが起こることが多いが、廃液流検出器において記録された、先に使用した時間差は、一般に影響を受けない。
【0054】
起こることになるが、図4a〜gのピークは、示すものより広くなる可能性があり、トリガー式検出器、フラクションコレクター、および廃液流検出器におけるピークは、時間的に重なる。これは、上述したように、廃液流検出器クロマトグラムからtdelayを計算する能力に影響を与えない。
【0055】
2つのUV検出器を使用するクロマトグラムの実際の例は、図5a〜8に示される。それらは、図4a〜gの図を使って述べた場合を示す。トリガー式検出器として、ダイオードアレイ検出器WatersのModel2996が使用さえ、廃液流検出器として、WatersのModel2487UV検出器が使用される。両方の検出器が、254nmの吸収を測定した。ピークは、後縁に未分解の重要でない成分を有し(図5a)、上流のピークは、廃液流検出器に達する前に大幅に広がった(図5b)ことに留意されたい。これらの因子は、廃液流検出器クロマトグラムからフラクションコレクター遅延時間を計算するための上述の方法の能力を妨げない。
【0056】
フラクションコレクターは、トリガー式検出器の閾値検出からの絶え間なく増加する遅延時間でトリガーされた。遅延時間クロックは、ピークの閾値がトリガー式検出器によって検出される時に開始する(t=0)ようにトリガーされる。そのため、最適採取のために、フラクションコレクター遅延時間を補正するための全てのタイミング情報は、廃液流検出器シグネチャの観測から生じる。(メモ:図5a〜8上のタイミングマークは、ピークがトリガー式検出器に達する前の任意の地点において始まる)。図5bは、図4aに示す場合と同様の、フラクションコレクターが開かない時の廃液流シグネチャを示す。廃液流シグネチャにおいて、全ての廃液流クロマトグラムに同じ程度に影響を与える、一定のバンドの広がりが明らかである。
【0057】
本発明を具体化した例が示されることになり、トリガー式検出器12は、Waters CorporationによるUV可視フォトダイオードアレイ検出器、Model No.2996であった。廃液流検出器16は、Waters Corporationによる2波長調整可能波長UV可視検出器Model No.2487であった。トリガー式検出器12および廃液流検出器16は共に、254nmの波長で吸収するピークを検出するように構成された。ここで図5a〜bを考えると、本例のトリガー式検出器12および廃液流検出器16によって検出された廃液流クロマトグラム102および上流クロマトグラム101が示される。このラン中に開かなかったフラクションコレクターによってピークのどの部分も採取されない状態で、廃液流ピーク103と上流ピーク105との間の実質的な類似性には一貫性がある。フラクションコレクターが開いたが、早過ぎて、ピークのいずれの部分も採取できなかった場合に、同様な結果が得られたであろう。図4aと4bを比較されたい。
【0058】
図6は、本例の装置によって表現された廃液流クロマトグラム216を示し、トリガー式検出器におけるピークの検出と、フラクションコレクターが開くこととの間の時間遅延は、15秒(tsetup)に構成される。本例では、フラクションコレクターは、ピークがフラクションコレクターに到達した後、0.08分(約5秒)で閉じたことがわかる。廃液流ピーク220の垂直な前縁218は、フラクションコレクターの早期の作動および早期の閉鎖を示す。(図4cの同様な図もまた参照されたい)。ピーク220の前縁部分は、廃液流検出器クロマトグラムによってそれが無いことが立証されるように、フラクションコレクターによって採取された。タイミング遅延誤差(terror)は、Δtfcから5秒を差し引いた時間として計算される。terrorは、tsetupに加算されることができ、所望のフラクションコレクターのタイミングを較正するための、図6で使用されるフラクションコレクター遅延時間が求まる。
【0059】
ここで、図7を考えると、例の装置は、ピークがトリガー式検出器において検出された後、25秒でフラクションコレクターを開けるように構成された(tsetup=25秒)。ピークのほとんどは、フラクションコレクターによって採取され、実質的に最適な較正を示す。廃液流内で検出された小さなピーク222は、主ピークの後縁を表す。本発明の一部の実施形態では、ピークの後縁部分は汚染部を含む可能性があるため、主ピークの後縁を採取することを回避することが望ましい場合がある。この場合のフラクションコレクターのタイミングは、ピークの後縁が廃液流へと通過することを可能にした。
【0060】
図8は、本例の廃液流検出器によって表現されたクロマトグラム224を示し、遅延時間は35秒に設定される。ここで、前縁226は、フラクションコレクターが開く前には廃液流検出器に達する。(図4gの同様な図も参照されたい)。廃液流検出器によるUV吸収は、フラクションコレクターが開いている時間(Δtfc)225中フリーズされる。ピーク223の残り227は、その後、廃液流内に流れ、廃液流検出器によって検出される。
【0061】
ここで図9を考えると、システムフロー図は、本発明の具体的な実施形態に従ってフラクションコレクターを較正する方法を示す。第1のセットアップランが実施され、230で、トリガー式検出器の上流でピークが注入される。ピークは、フラクションコレクターをトリガーすることなく、トリガー式検出器から廃液流検出器へ流れるのが可能になる。トリガー式検出器によるピーク閾値の検出時間t=0および廃液流検出器によるピーク閾値の検出時間tが記録される。これは、トリガー式検出器と廃液流検出器の間の流れ時間についての情報を提供する。その後、第2のセットアップランが実施され、232で、廃液流検出器シグネチャにおいて、フラクション開閉イベントが観測されるような時間tsetupで、フラクションコレクターが、早くまたは遅く意図的にトリガーされる。廃液流シグネチャにおけるこのイベントの時間はtである。これとtとを組み合わせることで、そこからterrorを計算する情報が234で提供される。最後に、フラクションコレクターが較正され、それによって、実質的にピークの全ての採取を容易にするためのtdelayを計算するために、236でterrorがtsetupに加算される。(図4dもまた参照されたい)。terrorの値は、フラクションコレクターが早く開く時に正であるが、フラクションコレクターが遅く開く時に負である。
【0062】
具体的な実施形態は、ピークの識別およびトリガーを提供するために、上流のUV検出器と組み合わせて、UVタイプの廃液流検出器からの出力に関して較正されるフラクションコレクターのタイミング制御信号に関して、本明細書で述べられるが、本発明の方法および装置に従って、廃液流(または、上流)においてピークを検出し、較正情報を提供するために、屈折率検出器または蛍光検出器などの、種々の光検出器を使用することができることを、当業者は理解すべきである。本発明の方法および装置に従って、廃液流(または、分配器を使用して上流)においてピークを検出し、フラクションのタイミングのための較正情報を提供するために、質量分析装置、蒸発式光散乱検出器、または窒素検出器などの破壊検出器を使用することもできることを、当業者は理解すべきである。廃液流内のUV検出器と組み合わせて、上流でフラクションを識別し、遅延タイマを開始させる質量分析装置などの、結合式検出器もまた可能である。
【0063】
本発明の実施形態は、液体クロマトグラフカラムからの溶離液流に関して述べられたが、本発明の方法は、種々の異なる流体分析システムにおいて、計時式採取デバイスを較正するのに使用することができることを、当業者は理解すべきである。
【0064】
閾値または検出されたピークの隆起部(lift−off)の検出に従ってタイミング信号を測定する、本発明の実施形態が、本明細書で述べられるが、本発明に従って、タイミング信号を測定し、フラクションコレクター較正を実施するために、検出されたピークの頂点などの、ピークの他の部分を使用することもできることを、当業者は理解すべきである。
【0065】
本発明は、溶離液流内の単一成分を検出することに関して本明細書に述べられるが、本発明の装置は、溶離液流内の複数の成分のピーク特徴を認識し、複数の成分を採取するようにフラクションコレクターをトリガーするようにプログラムする可能性もあることを、当業者は理解すべきである。
【0066】
本発明は、フラクションコレクターのタイミングを較正し、成分の採取を確認することに関して本明細書に述べられるが、本発明に従って廃液流検出器によって検出される信号の特徴は、多くの他の目的に使用することができることを、当業者は理解すべきである。たとえば、採取された試料の種々の品質が、廃液流クロマトグラムから推測されることができる。本発明の実施形態を、採取された試料の品質が所定の限界から外れる場合、分離ランをシャットダウンするか、または、警告状態をトリガーするようにプログラムすることができる。廃液流検出器はまた、可能なさらなる精製および試験のために、主フラクションコレクター内に採取せずに、成分の採取を廃液流フラクションコレクターへ誘導するのに使用される可能性がある。
【0067】
本発明は、溶離液流内の成分の検出間の時間差を測定することに関して、本明細書で述べられるが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、流量を、同様に測定し、フラクションコレクターのタイミング信号を較正するのに使用することができることを、当業者は理解すべきである。
【0068】
本発明は、本発明の具体的な実施形態に関して先に述べられたが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、実施形態の形態および詳細における、先の、ならびに、種々の他の変更、省略、および付加を行ってもよいことを、当業者は理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】従来技術において知られる液体クロマトグラフ溶離液流内の、フラクションコレクターに近接して下流検出器を含むシステム流れ経路を示す図である。
【図2】本発明の具体的な実施形態による、トリガー式検出器および廃液流検出器を含むシステム流れ経路を示す図である。
【図3】本発明の具体的な実施形態による、質量分析装置および廃液流検出器を含むシステム流れ経路を示す図である。
【図4】フラクションコレクターの作動タイミングに関して、廃液流内で検出される残りのピークの形状を示すタイミング図である。
【図5a】トリガー式検出器によって検出された同じ例示的なピークのクロマトグラムに並置された、廃液流検出器によって検出された例示的なピークのクロマトグラムの図である。
【図5b】トリガー式検出器によって検出された同じ例示的なピークのクロマトグラムに並置された、廃液流検出器によって検出された例示的なピークのクロマトグラムの図である。
【図6】フラクションコレクターが、遅延時間が短過ぎる状態で作動した後に、廃液流内で検出される例示的なピークのクロマトグラムの図である。
【図7】フラクションコレクターが、ほぼ最適のタイミングで作動した後に、廃液流内で検出される例示的なピークのクロマトグラムの図である。
【図8】フラクションコレクターが、遅延時間が長過ぎる状態で作動した後に、廃液流内で検出される例示的なピークのクロマトグラムの図である。
【図9】本発明の具体的な実施形態による較正方法のプロセスフロー図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体流においてフラクションコレクターのタイミングを較正する方法であって、
前記流体流内の所望の成分を、前記成分がフラクションコレクターに到達する前に検出すること、
前記所望の成分の検出によって、フラクションコレクター遅延タイマを始動させること、
前記フラクションコレクター遅延タイマを始動させた後、ある遅延時間が経過した時に、前記フラクションコレクターが開くようにトリガーすること、および、
前記フラクションコレクターからの廃液流内の前記所望の成分を検出することを含み、前記廃液流検出器によって観測されるフラクションコレクター作動シグネチャによって、前記遅延時間が確立されることを可能にする方法。
【請求項2】
前記廃液流内の前記所望の成分の検出時間に従って、前記第1の所定の遅延時間のタイミング誤差を計算すること、
前記タイミング誤差がなくなるように前記遅延時間を調整することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記タイミング誤差は、
前記所望の成分の一部が前記フラクションコレクターによって採取される時の、前記廃液流内の前記所望の成分の検出時間と、前記廃液流内の前記成分の予想される検出時間とを比較することによって計算される請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記予想される検出時間は、前記フラクションコレクターがトリガーされない時に、前記所望の成分が、トリガー式検出器から廃液流検出器まで流れる時間を測定することによって求められる請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記流体流は、液体クロマトグラフのカラムから流れる溶離液流である請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記所望の成分が前記フラクションコレクターに到達する前に検出することは、UV検出器を使用して実施される請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記所望の成分が前記フラクションコレクターに到達する前に検出することは、前記溶離液流の別個の分岐の質量分析装置を使用して実施される請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記廃液流の前記所望の成分を検出することは、前記UV検出器および前記質量分析装置からなるグループから選択された検出器を使用して実施される請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記計算すること、調整すること、およびトリガーすることは、トリガー式検出器、廃液流検出器、および前記フラクションコレクターと通信するデータシステムによって自動的に実施される請求項2に記載の方法。
【請求項10】
液体クロマトグラフ溶離液流におけるフラクションコレクターのタイミングを較正する方法であって、
前記溶離液流内にフラクションコレクターを設けること、
前記所望の成分が前記フラクションコレクターに到達する前に所望の成分を検出することが可能である、トリガー式検出器を前記溶離液流内に設けること、
前記溶離液流において前記フラクションコレクターの下流に廃液流検出器を設けること、
前記トリガー式検出器によって所望の成分を検出すること、前記フラクションコレクターを閉じたままに保つこと、および、前記所望の成分が、前記廃液流検出器で検出される前の経過時間を測定することによって、閉じたシステムの廃液流検出時間(t)を確立すること、および、
フラクションコレクター遅延時間を推定すること、
前記ピークが前記フラクションコレクターをまだ通過している間に前記フラクションコレクターを動作させること、
前記廃液流検出器によって前記所望の成分の残りのエッジ(t)を検出し、前記エッジの到達時間を測定すること、および、
遅延誤差を計算し、前記推定されたフラクションコレクター遅延時間を補正して、所望のフラクションコレクター遅延時間を決定することによって、遅延誤差(terror)を確立すること、を含む方法。
【請求項11】
前記フラクションコレクター、前記トリガー式検出器、および前記廃液流検出器と通信するデータシステムを設けること、
前記トリガー式検出器および前記廃液流検出器のそれぞれによって前記所望の成分が検出されると、前記トリガー式検出器および前記廃液流検出器からの信号を、データシステムによって受け取ること、および、
前記所望の成分の次の検出によって、自動的に、terrorを計算し、前記フラクションコレクター遅延時間を較正することをさらに含む請求項10に記載の方法。
【請求項12】
液体クロマトグラフ装置であって、
液体クロマトグラフカラムから流れる溶離液流と、
前記溶離液流内に動作可能に配設され、前記溶離液流内の特定の成分を前記トリガー式検出器が検出することによって、フラクションコレクタータイマを始動させるように構成されたトリガー式検出器と、
前記溶離液流内に動作可能に配設され、前記フラクションコレクタータイマに応答して動作可能なフラクションコレクターと、
前記フラクションコレクターが閉じている時に前記フラクションコレクターから流れ去る廃液流と、
前記廃液流内に動作可能に配設された廃液流検出器とを備え、
前記廃液流検出器は、前記特定の成分が前記廃液流を通って流れる時に、前記特定の成分の廃液流クロマトグラムを取得し、フラクションコレクター遅延時間を較正するためのタイミング情報を提供するように構成される装置。
【請求項13】
前記廃液流クロマトグラムのピークの特徴に従ってフラクションコレクターのタイミング誤差を決定し、前記タイミング誤差が減るように前記フラクションコレクタータイマを調整するように構成されたデータシステムをさらに備える請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記トリガー式検出器は、UV検出器を備える請求項12に記載の装置。
【請求項15】
前記トリガー式検出器は、前記フラクションコレクターへ流れない溶離液流分岐内に動作可能に配設される質量分析装置を備える請求項12に記載の装置。
【請求項16】
前記廃液流検出器は、UV検出器および質量分析装置からなるグループから選択された検出器を備える請求項12に記載の装置。
【請求項17】
前記フラクションコレクターが閉じたままに保たれる時に、前記廃液流検出器において、所望の成分の閉じたシステム到達時間(t)を測定すること、および、
前記閉じたシステム到達時間を、前記廃液流検出器によって残りのピークのエッジの検出時間(t)と比較することによって、フラクションコレクターのタイミング誤差を計算するように構成される請求項13に記載の装置。
【請求項18】
前記フラクションコレクターが部分ピークを採取した時に、前記廃液流内で検出される残りのピークのエッジの到達時間(t)を、前記フラクションコレクターが閉じたままに保たれる時に前記廃液流内で検出されるピークの到達時間(t)と比較することによって、タイミング誤差を計算する手段をさらに備える請求項12に記載の装置。
【請求項19】
前記廃液流クロマトグラムの自動分析によって、前記フラクションコレクターによる前記所望の成分の採取を確認する手段をさらに備える請求項12に記載の装置。
【請求項20】
前記トリガー式検出器および前記廃液流検出器は、単一マルチチャネル機器を備える請求項12に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2006−525509(P2006−525509A)
【公表日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−513316(P2006−513316)
【出願日】平成16年4月27日(2004.4.27)
【国際出願番号】PCT/US2004/012769
【国際公開番号】WO2004/098739
【国際公開日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(504438255)ウオーターズ・インベストメンツ・リミテツド (80)
【Fターム(参考)】