説明

組成物およびその使用方法

医薬組成物は、(a)抗菌効果を有する量のメトロニダゾール、および(b)例えばブトコナゾールまたは薬学的に許容されるその塩もしくはエステルを含む抗真菌効果を有する量の抗真菌剤を含む。組成物は、外陰膣表面に単位投与量にて適用するよう適合され、少なくとも1つの非リポイド内相および外陰膣表面に対して生体接着性の少なくとも1つのリポイド外相を有する。組成物は、細菌性腟症および外陰膣カンジダ症の混合感染を治療するための外陰膣表面に対する投与に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗真菌剤および抗菌剤の膣送達のために適切な医薬組成物に関する。さらに本発明は、外陰膣系の真菌および細菌の混合感染に罹患した女性におけるかかる組成物を使用する治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
伝染性膣炎は、膣の微生物感染に関連する範囲の症状、およびそれに付随する時には外陰部まで及ぶ炎症を包含する。伝染性膣炎は、米国において年間推定1500万件の診療所訪問を占めており、特にカンジダ感染のための市販薬が入手可能であるので、多くの付加的な症例が医師の診断なしに薬で治療される。
【0003】
膣炎に関わる感染因子は、
(a)真菌、より具体的には酵母、特に1つまたは複数のカンジダ・アルビカンス、カンジダ・デュブリニエンシス(C.dubliniensis)、カンジダ・グラブラータ、カンジダ・ケフィール(C.kefyr)、カンジダ・クルセイ、カンジダ・ルシタニエ(C.lusitaniae)、カンジダ・ネオフォルマンス、カンジダ・パラシロープシス(C.parasilopsis)およびカンジダ・トロピカリス(その中で最も一般的なものはカンジダ・アルビカンス)を含むカンジダ属の種と;
(b)細菌、一般的には1つまたは複数のバクテロイデス属の種、膣ガードネレラ、モビルンカス属(Mobiluncus)の種、マイコプラズマ・ホミニス(Mycoplasma hominis)およびペプトストレプトコッカス属(Peptostreptococcus)の種(一般には膣ガードネレラが最も優勢)を含む多様な種と;および
(c)原虫類(特に膣トリコモナス)と、を含む。
【0004】
本明細書において総称として外陰膣カンジダ症(VVC)と呼ばれるカンジダ感染は、膣炎の最もよく知られている原因であり、女性の約75%が生涯の間に少なくとも一度は罹患すると考えられている。一般にVVCは性感染しない。細菌性膣症(BV)(細菌感染によって引き起こされる膣症状または外陰膣症状に対して本明細書において使用される総称)は、他の伝播様式でも起こりうるが、一般に性感染症と考えられている。VVCおよびBVの症状は、炎症(例えば、発赤、灼熱感および/またはそう痒として現われる)、性交疼痛および異常分泌物を含み、BVの場合には分泌物が魚臭を有する傾向がある。他の診断基準は、VVCでは膣のpHが約4.7より低いまたはBVでは約4.7より高いこと、およびBVでは「クルー細胞」(顆粒状外観を有する上皮細胞)の存在を含む。
【0005】
VVCは、典型的には厄介で、患者をしばしば非常に悩ますものであるが、めったに深刻な症状または生命を脅かす症状の発症には比較的関係しない。一方、BVは治療しない場合、子宮頚管炎、骨盤内炎症性疾患、子宮頸部形成異常、尿路感染、術後感染、HIVおよびHSV−2を含むウィルス感染に対する感受性の増加、ならびに妊婦における早産、予定日前の膜破裂、羊水内感染、予定日前分娩ならびに分娩後子宮内膜炎のような重篤症状をもたらす可能性がある。
【0006】
細菌感染およびカンジダ感染は共存しうる。細菌およびカンジダの混合(本明細書において「BV/VVC」)感染症は、膣炎症例中では最大約5分の1生じる。例えば、反復症状をともなう35人の患者における症候性膣炎の132回の症状発現においては、15%はBV/VVC混合感染を伴っていることが、非特許文献1により報告された。
【0007】
他の研究(非特許文献2)では、VVCを治療するところであった95人の女性のうちで、34%はVVC単独への感染、19%はBV単独への感染、および19%はBV/VVCへの混合感染が確認されたことが報告された。
【0008】
そのような混合感染が診断されないということ、ならびにあたかも真菌感染単独または細菌感染単独に対するかのように、大衆薬治療または処方薬物治療が行なわれることは、重要な問題である。カンジダ・アルビカンスのような真菌および膣ガードネレラのような細菌は両方とも日和見病原体であり、したがって混合感染の場合には、一方の除去により他方の急速な集団増加がもたらされる可能性がある。したがって、例えば、ブトコナゾールのような抗真菌剤でのみ局所治療されたBV/VVC混合感染は、急速に深刻なBV感染になりえ、次に、さらなる局所適用または全身的な(例えば経口抗生物質)治療のどちらかでの、フォローアップ抗菌性治療を必要とする。そのような誤診が含む意味は、特に治療しない場合のBVが導く重篤症状を考慮すると重要である。
【0009】
したがって、BV/VVC混合感染を便利に効果的に治療する医薬品およびその使用方法のための必要性が、当技術分野において存在する。
【0010】
Rileyその他による特許文献1は、非リポイド内相およびリポイド性連続外相を有する単位セルにより構成される、膣薬剤送達のための制御放出システムを提案する。活性薬剤は少なくとも内相中に存在する。
【0011】
Rileyによる特許文献2は、活性薬剤としてメトロニダゾールにより例示される抗真菌性イミダゾールを有する、かかる膣送達システムを提案する。
【0012】
非特許文献3は、その中でVagiSiteシステムとして公知の生体接着性局所用薬物送達系を、膣腔における活性薬物実体の投与のための送達プラットフォームを提供する高内相比率油中水滴型エマルジョン系として記載する。そこでは、硝酸ブトコナゾールを2重量%含むジャイナゾール(Gynazole)−1(登録商標)抗真菌剤膣クリーム中へのVagiSiteシステムの組み入れが開示される。
【0013】
Levineその他による特許文献3は、治療薬剤(子宮収縮抑制薬テルブタリンが例示される)、および生体接着性であり架橋され水膨潤可能であるが水不溶性のポリカルボフィルのようなポリカルボン酸より構成され、膣粘膜を介した薬剤の制御された持続放出を与えるように設計された、膣内投与のための組成物を提案する。組成物の投与は有害な血中濃度を伴わずに局所組織濃度を達成することが述べられる。
【0014】
Kirschnerその他による特許文献4は、水溶性内相および水不溶性外相を有する本質的には中性pHのエマルジョンより構成され、内相が薬剤(例示的には抗真菌剤または抗菌剤でありうる)で構成される酸性緩衝相を含む、膣薬剤送達に適切な組成物を開示する。その中の実施例Iは、0.75重量%の量の抗菌剤メトロニダゾールを含むそのような組成物を提供する。
【0015】
Rileyによる特許文献5は、活性薬剤を保有できる油中水滴型エマルジョンにより構成される、固形組成物(例えば座剤)を記載する。この組成物が、身体開口部中への挿入に適切であること、ならびに制御放出特性および生体接着特性を有するクリームを形成するために体温で融解することが述べられる。
【0016】
Florasその他による特許文献6では、膣炎の治療のために、抗生物質および抗真菌剤を含む1つまたは複数の薬剤と併用して界面活性剤脂質を投与できることが述べられる。適切であると記載されている抗生物質の例は、アンピシリン、セフトリアキソン、クリンダマイシン、メトロニダゾールおよびテトラサイクリンを含む。適切であると記載されている抗真菌剤の例は、ミコナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、ブトコナゾール、チオコナゾールおよびテルコナゾールを含む。
【特許文献1】米国特許第4,551,148号
【特許文献2】米国特許第5,266,329号
【特許文献3】米国特許出願公開第2004/0234606号
【特許文献4】米国特許出願公開第2003/0180366号
【特許文献5】米国特許第5,055,303号
【特許文献6】米国特許出願公開第2003/0225034号
【特許文献7】国際特許出願公開第WO2005/087270号
【特許文献8】米国特許出願公開第2005/0095245号
【非特許文献1】Redondo-Lopez et al (1990), Sex. Transm. Pis. 17(l):51-53
【非特許文献2】Ferris et al (2002), Obstet. Gynecol. 99(3) :419-425
【非特許文献3】Thompson & Levinson (2002), Drug Delivery Systems & Sciences 2(1), 17- 19
【非特許文献4】Merabet et al. (2005), Expert Opin. Drug Deliv. 2(4):769-777
【非特許文献5】Weinstein et al. (1994), Clin. Ther. 16(6):930-934
【非特許文献6】Amsel et al. (1983), Am, J. Med. 74:14-22
【非特許文献7】Nugent et al. (1991), J. Clin. Microbiol. 29:297-301
【非特許文献8】Fredricks et al (2005), N. Engl. J. Med. 353:1899-1911
【発明の開示】
【0017】
ここで、(a)抗菌効果を有する量のメトロニダゾールと;および(b)抗真菌効果を有する量の抗真菌剤とから構成される医薬組成物を提供する。前記組成物は、外陰膣表面(例えば膣粘膜表面)に適用するよう構成され、少なくとも1つの非リポイド内相およびかかる表面に対して生体接着性の少なくとも1つのリポイド外相を有する。
【0018】
一実施形態において、抗真菌剤は、ブトコナゾールまたは薬学的に許容されるその塩もしくはエステル(例えば硝酸ブトコナゾール)を含む。
【0019】
組成物は典型的に油中水滴型エマルジョンであり、例示的には製薬技術においてクリームと表現される半固形形式で示される。
【0020】
膣粘膜表面に対する投与を容易にするための、かかるクリームおよびアプリケータにより構成される、抗菌性および抗真菌性膣送達システムがさらに提供される。
【0021】
BV/VVC混合感染を治療する方法であって、本明細書記載の医薬組成物の外陰膣表面(例えば膣粘膜表面)への投与により構成される方法がなおさらに提供される。
【0022】
いくつかの実施形態において、そのような方法は、混合感染のための「治癒のための一投与」による治療を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
これらおよび他の実施形態は、以下の発明の詳細な説明においてより十分に説明される。
【0024】
本明細書における有用な組成物の具体的な形式は、例えばクリーム、ゲル、泡、腟錠、ペッサリーまたは座剤、タンポン、リングなどのようなインプラントになりうるが、これらに限定されない。
【0025】
しかしながら、本明細書において特に重要となるのは、上記の特許文献1、特許文献5、特許文献2もしくは特許文献4のいずれにも一般に記載されているような、または本明細書においてさらに記載されるような、油中水滴型エマルジョン形式の組成物である。そのような油中水滴型エマルジョンは、固体形態で例えば膣坐剤として、または半固形形式で例えば膣クリームとして提供することができ、生体接着特性を有する。
【0026】
本明細書において「外陰膣表面」は、膣腔内の粘膜表面、ならびに外陰部および近接した皮膚周辺領域の非粘膜表面を含む女性生殖器の任意の外部表面または内部表面を意味する。いくつかの実施形態において、前記組成物は膣粘膜表面に適用するようさらに特別に構成されており、組成物の外相はそのような表面に対して生体接着性、すなわち粘膜接着性である。
【0027】
一実施形態において、前記組成物は、活性薬剤としてメトロニダゾールおよび抗真菌剤を含み、VagiSiteという名称で、非特許文献3に記載されるような生体接着性膣送達システム、または実質的にそれと同等の膣送達システムとして製剤化される。
【0028】
特許文献7は、本発明に対する先行技術であるとは認めはせずここに本発明の一部として援用するのであるが、抗膣炎医薬品の組み合わせ送達のための選択肢としてのVagiSiteシステムについて述べている。
【0029】
例えば膣粘膜表面に対する生体接着は、本発明の組成物の重要な特性である。理論により拘束されずにいえば、生体接着は、メトロニダゾール、抗真菌剤またはその両方の長期にわたる徐放制御送達を可能にすると考えられている。生体接着をあまりまたは全く示さない従来の膣送達システムに対する長所は、
(a)適用部位からの組成物の漏出の最小化と;
(b)就寝時に限定せず、日中の任意の時間での適用に対する適合性と;
(c)治療過程中の活性薬剤暴露、特に全身暴露の減少と;
(d)満足な臨床効果を与える活性薬剤総量の削減と;
(e)長期間の連続的な活性薬剤放出と;
(f)より迅速な症状の緩和と;および
(g)単一投与の治療を可能にすること
の1つまたは複数を含む。
【0030】
理論により拘束されずにいえば、本発明の組成物の生体接着特性は、少なくとも部分的には、組成物の外相のリポイド性の性質(水分をはじいて、その結果として正常膣分泌物による希釈および除去に対する耐性を持つ)にあると考えられる。重ねて理論により拘束されずにいえば、リポイド外相が内部非リポイド相を隔離する役目をするとさらに考えられ;メトロニダゾール、抗真菌剤またはその両方が内相中に部分的にまたは全体的に存在する実施形態において、活性薬剤の積載(ペイロード)は同様に隔離され、徐々に長期にわたり測定される活性薬剤の放出を可能にする。
【0031】
本明細書において有用なサイト・リリース(Site Release)(登録商標)(SR)システムとして公知の膣送達システムを具体化する組成物の生体接着性および制御放出または徐放特性は、非特許文献4にまとめられた研究において実証されており、本発明に対する先行技術であるとは認めないがここに本明細書の一部として援用する。
【0032】
SRシステムを具体化する膣クリーム組成物の評価において、例えば比較組成物として使用される「従来の」膣クリームは、本明細書において、連続水性相すなわち非リポイド相、および不連続すなわち分散非水性相すなわちリポイド相を有する半固形エマルジョン、すなわち活性薬剤を連続相で可溶化または分散される水中油滴型エマルジョンを指す。典型的には、これは組成物が適用される外陰膣表面との活性薬剤の迅速な接触を可能にするが、外陰膣表面からの組成物の希釈、洗い流しおよび漏出も可能にし、表面とのならびに標的とされる細菌性病原体および/または真菌性病原体との接触時間を減少させる。抗菌剤および/または抗真菌剤により構成される従来の膣クリームは、したがって一般に臨床的に満足な効果を提供するために、繰り返し、例えば1週間当たり約3〜7回投与されなくてはならない。そのような反復適用は、活性薬剤の全身への送達の可能性を増加させ、その結果として有害な副作用の可能性を増加させ、組織の炎症の可能性も増加させる。
【0033】
非特許文献5は、2%の硝酸ブトコナゾールを含む膣クリームの持続時間を研究した。合計16人の健康な女性に、従来の膣クリームまたは生体接着性SRクリームを膣内投与し、婦人科用スワブによって膣腔内に検出される残存クリーム量について7日間にわたり毎日モニターした。持続時間の中央値は、SRクリームについては4.2日、比較された標準的なクリームについては約2.5日と報告された。
【0034】
非特許文献3は、28人の健康な女性に、同一の抗真菌剤を含む従来の抗真菌性の膣クリームまたは生体接着性SRクリームを、いずれの場合においても単一投与として、膣内投与した研究を報告した。膣腔からの製品漏出を評価するために、女性に48時間小型パッドを装着してもらった。報告によれば検討された各時点(投与後3、6、24および48時間)で、製品漏出は、SRクリームよりも従来のクリームでより大きかった。全体として、漏出はSRクリームで50%以上減少した。
【0035】
従来の膣クリームは、患者が数時間仰臥位になり有利なことから、一般的に就寝時での適用を必要とし、それにより膣腔内部のクリームの保持を補助することができる。本発明の膣クリームの生体接着特性および結果的に促進された膣保持力により、日中の任意の都合のよい時間での適用が可能になる。
【0036】
非特許文献3は、膣液を模倣するように設計されたpH4.3酢酸緩衝液を使用して、従来の膣クリーム、およびSRシステムを具体化するクリームの硝酸ブトコナゾール放出特性のインビトロ分析も報告した。従来のクリームは、急速に分解して活性薬剤を直ちに放出し始め、実質的に活性薬剤積載のすべてを1〜4時間以内に放出することが報告された。これとは対照的に、SRクリームは約7日にわたり活性薬剤を継続的に放出することが報告された。
【0037】
本発明の膣クリームの生体接着特性および徐放特性により、比較的少ない用量の活性薬剤で、従来のクリーム形式で投与されるはるかに多い用量の活性薬剤によってもたらされる効果に少なくとも実質的に等しい、臨床的に満足な効果の提供が可能になる。特に本発明のクリームの単一投与は、1回以上、例えば1週間に約3〜約7回繰り返して投与される従来のクリームによって提供される効果に少なくとも実質的に等しい、臨床的に満足な効果の提供を可能にする。この点に関して、一般に医薬品副作用は、用量が増加するにつれて、新しい有害事象の出現または既存の副作用の悪化が起こる、用量相関性であることが注目される。したがって本発明の組成物は、改善された安全性特性を提供する可能性を有する。このことは、全身性送達に起因する副作用に関して特に当てはまる。全身性送達を減少させる傾向がある本組成物によって可能にされた徐放性特性の薬剤節約効果は、さらに、投与位置での治療上効果的な送達を提供する。
【0038】
本発明の組成物は、典型的には単位セルの多重性より構成され、それは送達システムの基本的な反復単位であり、少なくとも本明細書において有用な特性のうちのいくつかを失わずには分割可能ではない。各単位セルは、上で言及された組成物の内相および外相に対応する、内相および外相を有する。本発明の組成物は、例えばエマルジョン、エマルジョン/分散物、ダブルエマルジョン、エマルジョン内の懸濁物、坐剤、泡、クリーム、胚珠(ovules)、挿入剤などとして従来の分類を使用して説明することができる。通常本発明の組成物は、容量で(内相が占める総容量の割合として示される)、例えば約60%より大きい、約70%より大きい、または約75%より大きい高内相比率の媒質を有する油中水滴型エマルジョンの形式である。
【0039】
本発明の組成物は、約5,000〜約1,000,000センチポアズ、例えば約100,000〜約800,000センチポアズの粘性を有する液体または半固形物を含む。特定の実施形態において、組成物は約5,000〜約750,000センチポアズ、例えば約350,000〜約550,000センチポアズの粘性を有する膣クリームである。膣クリームは一般に半固形の油中水滴型エマルジョンであり、乳化剤を含む。理論により拘束されずにいえば、外陰膣表面(例えば膣粘膜表面)に対する組成物の生体接着は、かかる表面に対して適用された場合に構造完全性を保持するために、組成物が十分な粘性を有することを必要とすると考えられている。他の特性の中でも、粘性を増加することができる任意の成分は、微結晶ワックス、コロイド状二酸化ケイ素、ならびに糖類、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのようなセルロース系ポリマー、ポリエチレングリコール、アクリレート重合体および同種のものを含む様々な薬学的に許容されるポリマーを含む。
【0040】
上述されるような生体接着性クリームを実質的に形成するために、油中水滴型エマルジョンにより構成される固形組成物は、典型的には体温で融解する。
【0041】
内相は典型的には不連続で、上で示されるように非リポイド性である。内相の非リポイド性の性質により、内相を水と混和性にする。例示的に内相は、水、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトールまたはそれらの2つまたは複数の組み合わせを含む。一般に内相は高浸透圧である。内相は、例えば、溶液、懸濁物、エマルジョンまたはその組み合わせの形式をとって、それ自体で単相、二相または多相でありうる。内相は、任意で1つまたは複数の懸濁固体、乳化剤および/または分散剤、浸透圧促進剤、増量剤、希釈剤、緩衝剤、キレート剤、防腐剤、香料、着色料または他の材料を含む。
【0042】
任意で内相は、約2.0〜約6.0、例えば約2.5〜約5.5または約3.5〜約5.0の内部pHへと酸により緩衝される。一実施形態において、内相は、膣環境に対して実質的に最適な内部pH、すなわち実質的な炎症、そう痒もしくは他の不快感を引き起こさない、および/または膣環境を真菌性病原体および細菌性病原体を含む一般的な病原体が生息できないようにするpHへと酸により緩衝される。典型的にはそのようなpHは、約4.0〜約5.0、例えばおよそ4.5である。
【0043】
外相は典型的には連続的で(かかるシステムにおいて近接する単位セルは共通の外相を有する)、上で示されるようにリポイド性である。本明細書において、用語「リポイド性」は、水に不溶性;アルコール、エーテル、クロロホルムまたは他の脂肪溶媒に可溶性;および脂っぽい感触の特性を有する、中性脂肪、脂肪酸、ワックス、リン脂質、ワセリン、一塩基アルコールの脂肪酸エステル、鉱油などを含む有機化合物群のいずれかに関連する。適切な油脂の例は、約5.6〜約68.7センチストーク、例えば約25〜約65センチストークの粘性を有する鉱油、ならびにココナッツオイル、パーム核油、ココアバター、綿実油、落花生油、オリーブ油、パーム油、ヒマワリ油、ゴマ油、トウモロコシ油、紅花油、菜種油(キャノーラ油)および大豆油のような植物油、ならびに天然に由来する短鎖脂肪酸の分画された液体トリグリセリドである。
【0044】
用語「リポイド」は、例えば天然リン脂質および合成リン脂質を含む、両親媒性化合物にも関連しうる。適切なリン脂質は、例えばジオレオイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジペンタデカノイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)およびジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)のようなホスファチジルコリンエステル;ジオレオイルホスファチジルエタノールアミンおよびジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)のようなホスファチジルエタノールアミンエステル;フォスファチジルセリン;フォスファチジルグリセロール;ホスファチジルイノシトール;などを含みうる。
【0045】
一実施形態において、外相はリン脂質成分、例えばレシチン成分、より詳細には精製レシチン成分を含む。理論により拘束されずにいえば、精製レシチンまたは他のリン脂質材料は油中水滴型エマルジョンの油水界面で存在することができ、特に、乳化を不安定にする傾向がある界面活性物質特性を有する活性薬剤が存在している場合には、エマルジョンにより良い安定性を与えることができると考えられている。好ましいレシチンは、最低でも約70%、例えば最低でも約80%のホスファチジルコリンを含む。レシチンのホスファチジルコリン含量は約96%か、またはさらに高くなりうる。食品用レシチンが、具体的な処方において許容されるかどうかは明らかではない。一般に適切な精製レシチンの例は、アメリカンレシチン社(American Lecithin Co.)から入手可能なホスフォリポン(Phospholipon)90(商標)である。
【0046】
リン脂質以外の両親媒性化合物は、本発明の組成物中の乳化剤としても、任意でリン脂質と共に作用することができる。中鎖モノグリセリドおよび長鎖モノグリセリド、ならびにモノオレイン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリン、モノイソステアリン酸グリセリンおよびモノパルミチン酸グリセリンのようなジグリセリド、オレイン酸ポリグリセリル−3のような脂肪酸のポリグルセリルエステル、ならびにPEG−30ジポリヒドロキシステアリン酸のような脂肪酸のポリエチレングリコールエステルおよびポリエチレングリコールジエステルに限定されないがこれらを含む、任意の薬学的に許容される乳化剤またはその組み合わせを使用することができる。そのような薬剤は、組成物中の皮膚軟化剤としてもまた機能することができる。一般に外相における可溶性乳化剤は好ましい。一実施形態において、モノグリセリドおよびジグリセリドの混合物は、単独でまたはステアリン酸アルミニウムのような金属セッケンの添加と共に使用される。
【0047】
本発明の油中水滴型エマルジョン組成物は、生理的温度(およそ37℃)にて典型的には変形可能であるが、従来のクリームとは異なり、膣粘膜表面に対する適用に際して構造完全性を急速に失わない。したがって、一般にそれらは投与後に不快な感覚、またはそうでなければ膣腔からの好ましくない漏出をもたらさない。そのような組成物の物理的崩壊が長期間にわたり起こるにつれて、非水性成分は吸収されるか、または通常知覚されない程度の率で膣腔から放出され、膣分泌物には正常な率を超える実質的な増加を生じさせない。
【0048】
本発明の組成物からのメトロニダゾール、抗真菌剤またはその両方の放出は、1つまたは複数のメカニズムで行われることが可能であり、それらのいずれも本発明を限定しない。かかるメカニズムは、膣粘膜中への拡散(例えば内相から外相を通して);単位セルの破裂;固体粒子の溶解;などを含みうる。放出ダイナミクスは線形または非線形でありうる。
【0049】
各活性薬剤の放出速度に影響を与える組成因子は、内相および外相中に存在する活性薬剤の相対量;内相の比率;内相の浸透圧;内相のpH;外相中の活性薬剤の拡散率に影響を及ぼす外相の両親媒性化合物を含む、リポイド化合物の選択および相対量;活性薬剤が固体粒子の形式である場合には、粒子サイズ;組成物の粘性;などを含みうる。これらの因子の各々は、具体的な状況における放出速度を最適化するために、本明細書の開示に基づいて当業者によって慣例的に変更することができる。内相中に活性薬剤を有し、比較的小さな内相比率を有する組成物において、外相は、活性薬剤が放出される際に通過しなければならない比較的厚い膜を形成する傾向があり、したがって放出速度はそのような組成物において有意に遅延する。
【0050】
各活性薬剤の放出速度に影響を与える生理的な因子は、体液および酵素の量および化学的性質、pH、化学的なバランス、温度、および身体運動から生じる剪断力のような、物理的崩壊率または組成物の構造完全性の消失に影響を与える因子を含む。剪断力は、従来の膣クリームの場合ほど、本発明の組成物の構造完全性に急速にまたは著しく影響しないと考えられる。
【0051】
組成物は、外陰膣表面(例えば膣粘膜表面)に対する適用に際して、約3時間〜約10日の期間にわたりメトロニダゾール、抗真菌剤またはその両方を放出するよう典型的に構成されている。ここに本明細書の一部として援用される開示文書を含む本明細書における開示、特に上記の特許文献1および特許文献2、ならびに特許文献4に加えて、特許文献8(これらは本発明に対する先行技術であるとは認めないが本明細書の一部として援用する)に基づいて、約3時間〜約10日の放出期間を達成するために、当業者は不必要な実験をせずに組成物からの各活性薬剤の放出速度を調整することができる。様々な実施形態において、少なくとも1つの活性薬剤の放出期間は、約12時間〜約10日、1〜約10日、約2〜約10日または約3〜約7日のうちの1つである。
【0052】
したがって広範囲の放出特性が、各活性薬剤について可能となる。一実施形態において、活性薬剤の少なくとも1つは、投与後1日目までに、約2%〜約25%の放出;投与後2日目までに、約15%〜約50%の放出;投与後3日目までに、約25%〜約75%の放出;および投与後4日目までに、約45%〜100%の放出を示す。
【0053】
放出速度は、インビボ検査または任意の適切なインビトロ方法によって決定することができる。例示的なインビトロ方法は、適切な厚さ(例えば70μm)のポリスルホン、酢酸セルロース/硝酸セルロース混合エステルまたはポリテトラフルオロエチレンのような適切な不活性合成膜で通常取り付けられた、フランツ(Franz)セルシステムのようなオープンチャンバー拡散セルシステムを利用する。レセプタ媒質は、対象となる活性薬剤が可溶性の媒質、例えば水/エタノール媒質であるべきである。検査組成物を、膜上に均一に置き(例示的に、約300mgのクリームのような半固形組成物が、25mm直径の膜上での配置のために適量である)、溶媒の蒸発および組成の変化を防止するために閉塞状態を維持する。これは無限投与状態に対応する。レセプタ液のアリコートは、適切な間隔で分析のために取り出され、膜が放出研究の期間を通じてレセプタ液に接触したままにするように、新しいレセプタ液のアリコートと置換される。上で概説されたような放出速度の研究は、典型的には繰り返され、比較のための公知の放出特性を有する標準的な組成物を使用して行なうことができる。
【0054】
本明細書において「放出期間」または同様の語句は、活性薬剤が、吸収および薬理学的(本例においては抗菌または抗真菌)効果(吸収の部位でまたは近くで、例えば膣腔で典型的に起こるそのような効果)に対して利用可能になる期間を指す。したがって「放出期間」は、放出が実質的に開始される(例えば、投与直後から約1時間後、または遅延放出組成物の場合にはそれより遅れて)ときに開始し、活性薬剤が実質的に放出のためにそれ以上利用可能でないときに終了する(例えば、放出期間の開始後約3時間〜約10日)。
【0055】
メトロニダゾール、抗真菌剤またはその両方は、内相および外相のいずれか一方または両方の中に存在することができる。一実施形態において、両方の薬剤は、少なくとも組成物の内相中の実質的部分に存在し、分散形式で、例えば溶解または懸濁され、または非分散形式でありうる。任意で、実質的にメトロニダゾールのすべておよび/または実質的に抗真菌剤のすべては、内相中に存在することができる。一方または両方の薬剤の可溶化は、例えば共溶媒および/または界面活性剤の使用によって達成することができる。典型的にメトロニダゾールは、内相中に可溶化形式で存在するが、抗真菌剤、例示的に硝酸ブトコナゾールは、少なくとも部分的に微粒子形式で、例えば微粉化形式またはナノ粒子形式で存在することができ、内相および/または外相中に粒子懸濁物として分散することができる。様々な実施形態において、メトロニダゾール、抗真菌剤またはその両方は、内相および/または外相内の凝集体またはリポソームに存在する。
【0056】
固体粒子形式で抗真菌剤を有する組成物において、任意の適切な粒子サイズを使用することができる。しかしながら典型的には、粒子の実質的な部分が直径で約250μmよりも大きいときには、高い物理安定度を達成するのが困難かもしれない。したがって、約250μm以下のD90粒子サイズ(粒子の90重量%が規定のサイズよりも小さい)が一般に望ましい。好ましくは、少なくとも粒子の99重量%は、直径で約250μm以下である。
【0057】
約5μmよりも小さな粒子サイズは有用でありうるが、粒子サイズ減少に対する費用は、かかる粒子サイズでの安定性または有効性におけるいかなる改善にも見合わない可能性がある。それにもかかわらず、所望されるならば、0.4μm(400nm)または50nmという小さい粒子サイズを使用することができる。
【0058】
抗菌性に効果的な任意の量のメトロニダゾールを使用することができるが、典型的には膣クリーム調製において、約0.1〜約4重量%、例えば約0.5〜約1.5重量%のメトロニダゾール量が有用だと分かるであろう。
【0059】
抗真菌剤は、外陰膣系の真菌(特にカンジダ性)感染の治療に有用な、当技術分野において公知の任意の抗真菌剤を含むことができる。例示的な抗真菌剤は、アトバクオン、グリセオフルビン、ナイスタチン、ポリミキシンB、テルビナフィン、ならびにブトコナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、フルコナゾール、イソコナゾール、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、オキシコナゾール、ラブコナゾール、サペルコナゾール、セルタコナゾール、スルコナゾール、テルコナゾール、チオコナゾールおよびボリコナゾール、薬学的に許容されるその塩およびエステル、その混合物および同種のもののようなイミダゾール化合物およびトリアゾール化合物を含むが、これらに限定されない。一実施形態において、抗真菌剤は、ブトコナゾールまたは薬学的に許容されるその塩もしくはエステルを含むかまたは本質的にそれらから成る。特定の実施形態において、抗真菌剤は、硝酸ブトコナゾールを含むかまたは本質的にそれから成る。抗真菌剤は、抗真菌効果を有する量にて組成物中に存在する。
【0060】
文脈が他を意図しない限り、ブトコナゾールまたはその塩もしくはエステルの量は、硝酸ブトコナゾール同等量として本明細書において示される。抗真菌性に効果的な任意の量のブトコナゾールまたはその塩もしくはエステルを使用できるが、典型的には膣クリーム調製において、約0.5〜約6重量%、例えば約1〜約3重量%の硝酸ブトコナゾール同等量が有益だと分かるであろう。
【0061】
本明細書において活性薬剤に適用される、用語「抗菌性」または「抗真菌性」は、必ずしも互いに排他的ではないことが当業者によって認識されるであろう。特定の薬剤は、ある程度まで、抗真菌および抗菌活性の両方を示すことが可能である。本明細書において、メトロニダゾールは主にその抗菌活性が利用されるだけでなく、抗原虫(抗トリコモナス性を含む)活性と同様に、有益な抗真菌性(抗カンジダ性を含む)を有する。したがって、いくつかの付加的な利点は、カンジダ・アルビカンスのような真菌性病原体に対する抗真菌剤(例えばブトコナゾール)の活性を追加することで可能となる。
【0062】
一実施形態において、メトロニダゾールは、少なくとも組成物の内相中の実質的部分に存在し、実質的にその中に可溶化され、抗真菌性、例示的に硝酸ブトコナゾールは、内相中の少なくとも実質的部分に同様に存在するが、実質的に微粒子形式であり、その中に懸濁される。
【0063】
本発明の膣クリーム組成物の具体的な一例は、約0.75重量%の量のメトロニダゾールおよび約2重量%の量の硝酸ブトコナゾールを含む。組成物は(i)少なくとも1つの非リポイド内相と、(ii)膣粘膜表面に対して生体接着性の少なくとも1つのリポイド外相と、および(iii)例えばリン脂質により構成される乳化剤とを有する。メトロニダゾールは、可溶化形式で内相中の少なくとも実質的部分に存在し、硝酸ブトコナゾールは、約250μm以下のD90粒子サイズの微粒子形式で内相中の懸濁物の少なくとも実質的部分に存在する。
【0064】
例示的に、本発明の膣クリーム組成物中の賦形剤成分は、水、ソルビトール(例えば、ソルビトール溶液の形式で)、レシチン、少なくとも1つの長鎖モノグリセリド(例えばモノオレイン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリン、モノイソステアリン酸グリセリンまたはモノパルミチン酸グリセリン)、少なくとも1つのポリグリセリン脂肪酸エステルまたはポリエチレングリコール脂肪酸エステル(例えばオレイン酸ポリグルセリル−3またはPEG−30ジポリヒドロキシステアリン酸)、キレート剤(例えばエデト酸2ナトリウム)、少なくとも1つの抗菌性保存剤(例えばメチルパラベンおよび/またはプロピルパラベン)、鉱油ならびに微結晶ワックスを含みうる。
【0065】
本明細書において記載されるように、本発明の組成物の単位投薬量は、外陰膣表面(例えば膣粘膜表面)に対する単一投与のために適切な量である。患者のために最も便利なように、組成物は単位用量アリコートで、通常個別にパッケージにされて提供されるが、これは本発明の必要条件ではない。所望されるならば、多量または少量、例えば少量では約0.1gまたは多量では約25gを使用することができるが、膣クリームの都合のよい単位用量アリコートは約1〜約10gの量である。特に適切な単位投薬量の膣クリームは約3〜約6g、例えば約5gである。単位投薬量がより少ない場合には、組成物中の活性薬剤濃度を増加すること、およびその逆も望ましいであろう。
【0066】
便利なように、本発明の膣クリームの単位投薬量は、あらかじめ充填された容器またはアプリケータ、例えばミズーリ州セントルイスのKVファーマシューティカル社(KV Pharmaceutical Co.)のジャイナゾール−1(登録商標)膣クリームのために使用されるものと同じようなアプリケータに入れて提供することができる。
【0067】
本発明の膣クリーム組成物により構成される抗菌性および抗真菌性の送達システム、例えば使い捨てのアプリケータ、より具体的には組成物の単位投薬量をあらかじめ充填された使い捨てのアプリケータは、本発明の一実施形態である。
【0068】
膣クリーム形式での本発明の組成物を、製薬クリームの調製のための公知のバッチ操作または連続操作によって調製することができる。従来のエマルジョン調製におけるように、ミキサー、ホモジナイザー、ミル、衝突面、超音波、振盪または振動の使用によって、剪断力を成分に対して適用する。しかしながら従来のエマルジョンとは異なり、本発明の油中水滴型エマルジョンは、過剰エネルギーによるエマルジョン破壊を防止するために、比較的低レベルでの混合剪断を使用して通常は調製されるべきである。
【0069】
例示的に、内相および外相はまず別々に調製される。典型的なバッチ操作において、遊星型または他の適切なミキサー中で混合しながら、安定したエマルジョンが形成されるまで、内相は外相に加えられる。添加率および混合速度は、エマルジョンの形成および粘性を最適化するために調整することができる。典型的な連続操作では、混合チャンバー中の最も低い羽根車のレベルに達するまで、外相は複数の羽根車を含む連続ミキサーへと導入される。次に成分への剪断力を適用するため羽根車が回転するように、二つの相を適切な比率でミキサーの底を通して同時に導入する。完成したエマルジョンは、ミキサーの上部を通過して出て来る。混合チャンバーを通過する流速および混合速度は、エマルジョンの形成および粘性を最適化するために調整することができる。
【0070】
本発明の組成物は、外陰部の外部表面に対しておよび/または周辺の皮膚領域に対して局所投与することができる。さらにまたはあるいは、組成物は膣内に投与することができる。一実施形態において、組成物は膣クリームであり、膣粘膜表面に対して上で定義されるような単位投薬量で膣内投与される。
【0071】
本発明の膣クリームは、例えば任意で単一単位投薬量のクリームによりあらかじめ満たされたアプリケータを使って膣腔中の粘膜表面と接触するように投与することができる。仰臥位の患者では、アプリケータの先端は穏やかに膣中に深く、例えば後膣円蓋中に挿入することができ、クリームはアプリケータのプランジャで押し出すことによって先端を通して放出することができる。
【0072】
BV/VVC混合感染を治療する本発明の方法は、本明細書において記載されるように、外陰膣表面(例えば膣粘膜表面)に対して医薬組成物、例えば膣クリーム組成物を投与することを含む。そのような方法は、かかる混合感染から生じる二次的症状の治療のためにも使用することができる。
【0073】
臨床的に満足な効果が得られるまで、そのような方法は組成物の単位投薬量の反復投与を含みうる。しかしながら、臨床的に満足な効果がしばしば単一投与により得られることは、従来の膣クリームに対する本発明の少なくともいくつかの組成物の長所である。単位投薬量の単一投与が臨床的に満足な効果を提供する方法は、「治癒のための一投与」による治療としてしばしば公知であるが、本文脈における用語「治癒」が、感染の完全除去もしくは恒久的除去、またはすべての症状の完全緩和または恒久的緩和を必ずしも意味しないことは認識されるであろう。
【0074】
本明細書における臨床的に満足な効果または「治癒」は、例示的に1つまたは複数の以下の結果によって明示することができる:
(a)4つの臨床的な「Amsel基準」すべての解消、すなわち非特許文献6にて記載されたように、正常膣帯下、膣pH<4.7、ウェットマウントでのクルー細胞が<20%、および「臭気」検査が陰性;
(b)非特許文献7のグラム染色解釈法により、「Nugentスコア」が<4;および
(c)「あなたの見解では、患者は、BV/VVCについて追加投与を現時点で必要とするか?」という質問に対する医師の否定的な回答。
【0075】
一実施形態において、本発明の組成物を使用する治療法は、単一投与によって、本発明の組成物と同一の濃度で同一抗菌剤および抗真菌剤を含む従来の膣クリーム組成物の1週間に約3〜約7回の適用により提供される「治癒」率に少なくとも実質的に等しい、「治癒」率を提供する。
【0076】
本発明の方法は、外陰膣系に現れる、細菌感染および真菌感染の任意の組み合わせ(以下のものに関する感染を含むがこれらに限定されない)の治療のために使用することができる:
(a)真菌、より具体的には酵母、特に1つまたは複数のカンジダ・アルビカンス、カンジダ・デュブリニエンシス、カンジダ・グラブラータ、カンジダ・ケフィール、カンジダ・クルセイ、カンジダ・ルシタニエ、カンジダ・ネオフォルマンス、カンジダ・パラシロープシスおよびカンジダ・トロピカリス(その中で最も一般的なものはカンジダ・アルビカンス)を含むカンジダ属の種と;および
(b)細菌、一般的には1つまたは複数のバクテロイデス属の種、膣ガードネレラ、モビルンカス属の種、マイコプラズマ・ホミニスおよびペプトストレプトコッカス属の種(最も一般的には膣ガードネレラが優勢)を含む多様な種。
【0077】
女性においてBVと同定される細菌種のさらなるリストは、非特許文献8によって報告されており、非特許文献8は本発明に対する先行技術であるとは認めないが本明細書の一部として援用する。
【実施例】
【0078】
以下の実施例は単に例示的であり、いかなる方法でもこの開示を限定しない。
【0079】
以下に詳しく述べられる膣クリーム組成物は、上述されるようなバッチ操作および連続操作を含む、半固形エマルジョンの調製のための当技術分野において公知の任意の方法によって調製することができる。
【表1】

【0080】
本明細書において引用された特許および公報はすべて、全体として本出願の一部として援用される。
【0081】
単語「含む」、「含む(三人称単数)」および「構成される」は、排他的であるというよりはむしろ包括的として解釈されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)抗菌効果を有する量および/または抗原虫効果を有する量のメトロニダゾール;および
(b)抗真菌効果を有する量の抗真菌剤;を含む医薬組成物であって、
外陰膣表面に適用するよう適合され、少なくとも1つの非リポイド内相および外陰膣表面に対して生体接着性の少なくとも1つのリポイド外相を有する組成物。
【請求項2】
前記抗真菌剤が、ブトコナゾールまたは薬学的に許容されるその塩もしくはエステルを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が適用するよう適合される前記外陰膣表面が、膣粘膜表面である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記膣粘膜表面に対する前記組成物の適用に際して、前記メトロニダゾールおよび前記抗真菌剤の各々が、約3時間〜約10日の放出期間を有する、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記膣粘膜表面に対する前記組成物の適用に際して、前記メトロニダゾールおよび前記抗真菌剤の各々が、約12時間〜約10日の放出期間を有する、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記薬剤の少なくとも1つが、投与後1日で約2%〜約25%の放出;投与後2日で、約15%〜約50%の放出;投与後3日で、約25%〜約75%の放出;および投与後4日で、約45%〜100%の放出を示す、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
さらに、乳化剤により構成される膣クリームの形式である、請求項3に記載の組成物。
【請求項8】
前記メトロニダゾールが約0.1〜約4重量%の量で存在する、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記メトロニダゾールが約0.5〜約1.5重量%の量で存在する、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
前記抗真菌剤が、ブトコナゾールまたは薬学的に許容されるその塩もしくはエステルを含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項11】
前記ブトコナゾールまたはその塩もしくはエステルが、約0.5〜約6重量%の硝酸ブトコナゾール同等量で存在する、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記ブトコナゾールまたはその塩もしくはエステルが、約1〜約3重量%の硝酸ブトコナゾール同等量で存在する、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
前記乳化剤がリン脂質を含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項14】
前記内相が約2.0〜約6.0の内部pHへと酸により緩衝される、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記内相が、膣環境に対して実質的に最適な内部pHへと酸により緩衝される、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
請求項1に記載の組成物であって、約0.75重量%の量のメトロニダゾールおよび約2重量%の量の硝酸ブトコナゾールを含む膣クリーム形式の前記組成物であり;(i)少なくとも1つの非リポイド内相と、(ii)前記外陰膣表面に対して生体接着性の少なくとも1つのリポイド外相と、および(iii)乳化剤とを有する前記組成物であり;前記メトロニダゾールが、可溶化形式で少なくとも前記内相中の実質的部分に存在し、前記硝酸ブトコナゾールが、約250μm以下のD90粒子サイズの微粒子形式で前記内相中の少なくとも実質的部分に懸濁して存在する組成物。
【請求項17】
前記乳化剤がリン脂質を含む、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
請求項7に記載の組成物およびアプリケータを含む、抗菌性および抗真菌性膣送達システム。
【請求項19】
前記アプリケータが使い捨てである、請求項18に記載の送達システム。
【請求項20】
前記アプリケータが前記組成物の単位投与量にてあらかじめ充填される、請求項18に記載の送達システム。
【請求項21】
前記組成物の前記単位投与量が約1〜約10gである、請求項20に記載の送達システム。
【請求項22】
前記組成物の前記単位投与量が約3〜約6gである、請求項20に記載の送達システム。
【請求項23】
(a)抗菌効果を有する量のメトロニダゾール、および
(b)抗真菌効果を有する量の抗真菌剤
を含む医薬組成物の、外陰膣表面に対して投与するための、細菌性膣症および外陰膣カンジダ症の混合感染を治療する医薬品の調製における使用であって、前記組成物が、少なくとも1つの非リポイド内相および外陰膣表面に対して生体接着性の少なくとも1つのリポイド外相を有する、医薬組成物の使用。
【請求項24】
(a)前記メトロニダゾールが前記組成物の約0.1〜約4重量%の量で存在し;および
(b)前記抗真菌剤がブトコナゾールまたは薬学的に許容されるその塩もしくはエステルを前記組成物の約0.5〜約6重量%の硝酸ブトコナゾール同等量で含む、請求項23に記載の使用。
【請求項25】
前記組成物が投与される前記外陰膣表面が、膣粘膜表面である、請求項23に記載の使用。
【請求項26】
前記組成物が、満足な臨床効果を提供するのに効果的な単一投薬量で適用される、請求項25に記載の使用。
【請求項27】
前記単一投薬量が約1〜約10gである、請求項26に記載の使用。
【請求項28】
請求項23に記載の使用であって、前記医薬品が、前記組成物の約0.75重量%の量のメトロニダゾールおよび前記組成物の約2重量%の量の硝酸ブトコナゾールを含む膣クリーム組成物であり;前記組成物が、(i)少なくとも1つの非リポイド内相と、(ii)前記膣粘膜表面に対して生体接着性の少なくとも1つのリポイド外相と、および(iii)乳化剤とを有し;前記メトロニダゾールが、可溶化形式で前記内相中の少なくとも実質的部分に存在し、前記硝酸ブトコナゾールが、約250μm以下のD90粒子サイズの微粒子形式で前記内相中の少なくとも実質的部分に懸濁して存在し;ならびに、前記医薬品が、単一投薬量約5gの前記膣クリーム組成物において膣粘膜表面に対して投与される、使用。

【公表番号】特表2009−522360(P2009−522360A)
【公表日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−549526(P2008−549526)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際出願番号】PCT/US2006/062652
【国際公開番号】WO2007/079389
【国際公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(504267079)ドラッグテック コーポレイション (7)
【Fターム(参考)】