説明

組換えにより産生したヒト第VIII及び第IX因子

ヒトグリコシル化パターンを有するが、N−グリコリルノイラミン酸及び/又は糖質基Galα−3Galを欠く、組換えヒト第VIII因子又は第IX因子のタンパク質。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトと同様のグリコシル化パターンを有する、組換えにより産生したヒト第VIII因子及び/又は第IX因子の糖タンパク質に関する。
【背景技術】
【0002】
糖タンパク質は、動物界及び植物界並びに微生物において豊富である。糖タンパク質の糖質部分は、たとえば、細胞間認識、細胞情報伝達(cell signaling)、タンパク質の構造、タンパク質の保護、タンパク質の安定化、及びタンパク質とタンパク質との相互作用に重要な役割を担うような多重機能を有することが示されている。ほとんどの糖タンパク質の糖鎖は、アスパラギン残基の遊離アミノ基に結合するN−アセチルグルコサミン(GlcNAc)(N−結合型糖質)又はセリン若しくはトレオニン残基のヒドロキシル基に結合するN−アセチルガラクトサミン(GalNAc)(O−結合型糖質)のいずれかによってタンパク質に結合される。各部位での糖質部分は、複合体構造を形成する幾つかの単糖単位で構成されることが多い。ほとんどの糖タンパク質は、1つの分子に幾つかの異なった糖鎖を含有する。アスパラギン−結合型の糖質の構造には3つの型がある:高マンノース型と複合体型とハイブリッド型である。これらすべてが共通の五糖類のコア、Manα1−6(Manα1−3)Manβ1−4GlcNAcβ1−4GlcNAcを有する。高マンノース型構造では、さらにマンノース単位がこのコアに結合し、複合体型構造では、フコース、ガラクトース、N−アセチルグルコサミン及びシアル酸が一般に見い出される。単糖単位の2以上のアンテナが共通のコアから伸びてもよい。糖鎖のハイブリッド型は高マンノース型及び複合体型の双方のアンテナを含有する。
【0003】
血友病は、血液の凝固(clotting)又は凝集(coagulation)を制御する生体の能力を損傷する一群の遺伝性の遺伝病である。その最も一般的な形態である血友病Aでは、凝固第VIII因子が欠損する。血友病Bでは、第IX因子が欠損する。血友病Aは男子出生の5,000〜10,000人におよそ1人生じる一方で、血友病Bは約20,000〜34,000人におよそ1人生じる。第VIII因子タンパク質は、第IXa因子が第X因子を活性型に変換する血液凝固における必須の補因子である。第VIII因子及び第IX因子の欠損はそれぞれ、血漿由来の第VIII因子及び第IX因子の濃縮物又は組換えにより産生した第VIII因子と第IX因子によって治療することができる。第VIII因子又は第IX因子の濃縮物による治療によって血友病患者の正常な生活がもたらされている。しかしながら、特定の比率の血友病Aの患者は注入された第VIII因子産物に対する阻害抗体を発生させ、治療効果の阻害を生じる。近年、ハムスターの細胞株で産生された組換え産物がさらに頻繁に使用されるようになっている。しかしながら、一部の報告は、これらの産物が血漿由来のものよりも阻害物質形成の高い発生率の原因となっていることを示唆しているようである(エティングシャウセン及びクレウズ(Ettingshausen and Kreuz), 2006;ヘイ(Hay), 2006)。
【0004】
第VIII因子の初期の形態はA1−A2−B−A3−C1−C2のように記載されるドメインから成る約300kDaの単鎖である(ギッシャーら(Gitschier et al.), 1984;トーレら(Toole et al.), 1984;ベハーら(Vehar et al.), 1984; ウッドら(Wood et al.), 1984)。該タンパク質は血中に分泌される前にプロッセッシングを受け、A1−A2ドメインから成る約200kDaの重鎖、及びBドメインの主要部分、並びにA3−C1−C2ドメインから成る80kDaの軽鎖を生じる(ここで完全長第VIII因子と呼ぶ)。Bドメインは、第VIII因子の凝集活性に無くてもよいことが示されている(アンデルソンら(Andersson et al.), 1986;ブリンクハウスら(Brinkhous et al.),1985;ピットマン(Pittman et al.), 1993)。従って、血友病Aの治療についての治療用途にBドメインを欠失した第VIII因子を使用することが可能である(コーター及びベドロシアン(Courter and Bedrosian), 2001)。
【0005】
血液循環では、完全な第VIII因子は、高分子量タンパク質、フォン・ヴィレブランド因子(vWF)との堅固な複合体で存在する。vWFは酵素ではないので、触媒活性を有さない。その主な機能は、ほかのタンパク質、特に第VIII因子に結合することであり、創傷部位への血小板の付着で重要である。vWFは、総分子量20,000kDaまでの、複数のモノマーから成る大型タンパク質である。血液循環における第VIII因子の担体タンパク質として、vWFはタンパク質分解から第VIII因子を保護し、それによって生体内での第VIII因子の残存を増加させる。さらに、第VIII因子へのvWFの結合は免疫系による第VIII因子の認識に対して保護効果を有し、それによって第VIII因子に対する阻害抗体の発生のリスクを低減することが示唆されている(ゲンサナら(Gensana et al.), 2001;カラス及びタルプセプ(Kallas and Talpsep), 2001)。
【0006】
完全長の第VIII因子は、N−結合型グリコシル化について可能な25の部位で密にグリコシル化されたタンパク質であり、その大半はBドメインに存在する。これらの部位の6つだけがA及びCのドメイン内に局在する。以前公開されたデータは、第VIII因子のA及びCのドメインにおける可能な部位の4つがグリコシル化されることを示した。これらは、重鎖におけるAsn41及びAsn239、並びに軽鎖におけるAsn1810及びAsn2118であった(レンティングら(Lenting et al.), 1998;サンドバーグら(Sandberg et al.), 2001)。O−結合型グリコシル化についての13の部位は完全長の組換え第VIII因子に見い出され、それらのほとんどはBドメインに局在した(レンティングら(Lenting et al.), 1998)。Bドメイン欠失の第VIII因子、レファクト(ReFacto)(登録商標)は、O−結合型の糖鎖で置換される2つの部位を有することが報告された(サンドバーグら(Sandberg et al.), 2001)。
【0007】
ヒトの組換えタンパク質はネズミ細胞株で発現させることが最も多い。このことは、発現にはヒトの遺伝子構築物が使用されるが、タンパク質はネズミのグリコシル化パターンを有することを意味する。そのような例の1つが、これらの細胞株から産生される組換えタンパク質に存在する抗原性糖質基非分枝のGalα1−3Galである(ガリリら(Galili et al.), 1985;ホッケら(Hokke et al.), 1995)。しかしながら、この糖質基は天然のヒト糖タンパク質には存在しない。別の例は、存在するシアル酸型の組成である。ネズミの細胞株に由来する組換えタンパク質は、シアル酸の主要な形態、N−アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)に加えて、ある比率の抗原性シアル酸、N−グリコリルノイラミン酸(Neu5Gc)も含有することが報告されている(ホッケら(Hokke et al.), 1990)。Neu5Gcは、酵素CMP−N−アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼをコードする遺伝子の突然変異のために天然のヒトのタンパク質では普通存在しないが、ほかのすべての哺乳類の糖タンパク質には存在する(チョウら(Chou et al.), 2002)。しかしながら、Neu5Gcは、例えばヒトの癌細胞などの急速に増殖する細胞、及びヒトの胚細胞に存在することが報告されている(カワシマら(Kawashima et al.), 1993;マークイナら(Marquina et al.), 1996;タングボラナンタカルら(Tangvoranuntakul et al.), 2003)。
【0008】
ほとんどのヒトは、Galα1−3Galエピトープ及びNeu5Gcの双方に対する循環抗体を有することが示されている。
【0009】
今日、治療用途のためのヒト組換え第VIII因子産物はすべてネズミの細胞株に由来し、それはそれらがネズミのグリコシル化パターンを有することを意味する。従って、抗原性糖質基、非分枝のGalα1−3Galが、これらの細胞株から産生された第VIII因子産物に存在する可能性がある(ヒロナカら(Hironaka et al.), 1993)。しかしながら、この糖質基は血漿由来のヒト第VIII因子には存在しない。別の例は、ネズミ細胞株由来の第VIII因子における抗原性のシアル酸、N−グリコリルノイラミン酸の存在である。
【0010】
ヒトの細胞株で組換え第VIII因子タンパク質を製造する方法は先行技術で開示されている。US−A−2006/099685は、少なくとも1つのアデノウイルスE1Aタンパク質を発現するヒト胎児網膜細胞の重要性に着目して、前記細胞において組換え第VIII因子タンパク質を製造する方法に関する。この手順に従って製造される組換えタンパク質は単離されるヒトの対応物とは異なるヒトのグリコシル化のパターンを有すると言われる。
【0011】
WO−A−2007/003582は、目的のタンパク質をコードする遺伝子を運ぶ特定のベクターによって安定に形質転換(トランスフェクト)された、血清及びタンパク質を含まない条件下のヒト細胞株における、ヒト組換えタンパク質、特に血液タンパク質の形質転換(トランスフェクション)及び製造のための方法を提供する。
【0012】
US−A−2003/0077752は、ヒトの第VIII因子の活性を有するグリコシル化タンパク質に関する。この産物のグリコシル化パターンは、α−(2,6)−結合シアル酸、及びコアであるβ−マンノースに結合した分岐するN−アセチルグルコサミンを含有する。
【0013】
EP−A−0774261は、第VIII因子とvWFとの複合体、及びその治療的価値を開示する。
【0014】
モレキュラー・バイオテクノロジー(Molecular Biotechnology)、第34巻(Vol.34),2006,165−178のビー・メイ(B.Mei);ジェネティクス・アンド・モレキュラーリサーチ(Genetics and Molecular Research)7(2):314−325(2008)のブイ・ピカンコ‐カストロ(V.Picanco−Castro)ら;ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・ヘマトロジー(British Journal of Haematology),127,568−575のエム・エイチ・ロドリゲズ(M.H.Rodriguez);グリコバイオロジー(Glycobiology),第18巻(vol.18)no.7,pp.526−539のジー−シーエイチ・ギル(G.−Ch.Gil)並びにWO−A−2008/092643は、ヒト細胞における組換えの第IX因子又は第VIII因子の製造を開示している。
【0015】
治療に使用する際、組換えタンパク質の免疫原性を最小化するために、ヒトのグリコシル化パターンを有する組換えヒト第VIII因子の産物及び組換えヒト第IX因子の産物が望ましい。
【発明の概要】
【0016】
本発明は、ヒトと同様のグリコシル化パターンを有する組換えのヒト第VIII因子又は第IX因子タンパク質に関する。該タンパク質は、シアル酸、N−グリコリルノイラミン酸及び/又は糖質基Galα−3Galを欠く。該タンパク質はまた、非哺乳類細胞株で産生された対応する組換えタンパク質よりもフォン・ヴィレブランド因子に対して良好な結合を示す。ヒトのグリコシル化パターンは、機能特性を改善し、及び/又は免疫原性を減らすので、治療に使用する際、タンパク質に有益な影響を与える。
【0017】
本発明はまた、タンパク質が、非哺乳類細胞株で産生された対応する組換えタンパク質よりもフォン・ヴィレブランド因子に対して良好な結合を示す、ヒトのグリコシル化パターンを有する組換えヒト第VIII因子タンパク質に関する。
【0018】
さらなる実施形態は、以下の記載及びその全体が本明細書に組み入れられる添付のクレームから明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】vWFの表面に渡る3種のバッチ、ヒト−cl rhFVIIIとネズミ−cl rhFVIIIXとネズミ−cl rhFVIIIYの1IUのFVIII:C/mLの2分間注入のセンサーグラムを示す図である。注入はすべてトリプリケート(triplicates)で行った。明確にするために、各FVIII分子について1回の注入のみが示されている。応答はすべて注入の終了で最高の応答を有するFVIII分子の応答に対して標準化した。
【図2】異なったrhFVIII産物を1IU/mL注入の終了の後10秒での標準偏差を伴った標準化された応答を示す図である。ヒト−cl rhFVIIIのバーは3つのヒト−cl rhFVIIIのバッチの平均の応答を表す。応答はすべて注入の終了後10秒での最高の応答を有するFVIII分子の応答に対して標準化した。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を説明する前に、本発明の範囲は添付のクレーム及びその同等物によってのみ限定されるので、本明細書で採用される用語は、特定の実施態様のみを記載する目的で使用され、限定を意図するものではないことが理解されるべきである。
【0021】
この明細書及び添付のクレームで使用される場合、単数形態「不定冠詞(a)」、「不定冠詞(an)」及び「定冠詞(the)」は、文脈が明確に記載しない限り、複数の対象を含む。
【0022】
また、用語「約」は、適用可能な場合、与えられる値の+/−2%の偏差、好ましくは、数値の+/−5%、最も好ましくは+/−10%を示すために用いられる。
【0023】
本発明の背景において、「欠く」という用語は、特定の特性又は特徴がないこと、並びに、たとえば、HPAEC−PAD(パルスアンペロメトリック検出による高速アニオン交換クロマトグラフィ)のような、しかしこれに限定されない標準の液体クロマトグラフィ法で検出可能ではない特定の特性又は特徴がないことを意味する。
【0024】
本発明の背景において、「シアル酸」という用語は、9炭素のカルボキシル化糖類のファミリーの任意のメンバーに関する。シアル酸ファミリーの最も一般的なメンバーは、N−アセチル−ノイラミン酸(2−ケト−5−アセトアミド−3,5−ジデオキシ−D−グリセロ−D−ガラクトノヌロピラノス−1−オン酸(N-acetyl-neuraminic acid (2-keto-5-acetamido-3,5-dideoxy-D-glycero-D-galactononulopyranos-1-onic acid)(Neu5Ac、NeuAc又はNANAと略されることが多い)である。ファミリーの第2のメンバーは、NeuAcのN−アセチル基がヒドロキシル化されている、N−グリコリルノイラミン酸(N-glycolyl-neuraminic acid)(Neu5Gc又はNeuGC)である。
【0025】
本発明の背景において、「親和性」という用語は、それによって特定の原子又は分子が凝集する又は結合する傾向を有する現象に関する。たとえば、リガンドとタンパク質との間の親和性、すなわち、リガンドがどれだけ強固に特定のタンパク質に結合するのかを記載するために、平衡解離定数(KD)が一般に用いられる。KDはモル単位(M)を有し、それは、特定のタンパク質の結合部位が半分占有されるリガンドの濃度、すなわち、結合したリガンドを伴うタンパク質の濃度が結合したリガンドを伴わないタンパク質の濃度と等しいリガンドの濃度に相当する。KDが小さければ小さいほど、リガンドは強固に結合し、又はリガンドとタンパク質との間の親和性が高い。たとえば、ナノモル(nM)のKDを有するリガンドは、マイクロモル(μM)のKDを有するリガンドよりも特定のタンパク質により強固に結合する。
【0026】
本発明の背景において、「結合能」という用語は、組換えヒト第VIII因子がフォン・ヴィレブランド因子(vWF)に結合することができる程度に関係し、すなわち、それは、vWFに結合する能力を有する産物における第VIII因子の分子の数に関係する。結合能は、当業者に周知の方法によって推定することができる。
【0027】
本発明の背景において、「不死化ヒト細胞株」という用語は、生物体から直接採取された一次細胞ではないヒト細胞を指す。特に、それは、適切な新鮮培地及び空間を前提として無限に増殖し、ヘイフリック限界(Hayflick limit)(すなわち、テロメアが決定的な長さに達したために停止する以前に細胞が分裂する回数)から免れた永続的に確立された細胞培養物を指す。
【0028】
本発明は、新規の組換えヒト第VIII因子及び/又は第IX因子の糖タンパク質を提供する。本発明の組換えにより産生される第VIII因子及び/又は第IX因子のタンパク質がヒト細胞で産生されるということは、該タンパク質がヒトと同様のグリコシル化パターンを有することを意味する。従って、当業者はヒトの第VIII因子及び/又は第IX因子がヒトのグリコシル化パターンを示すことを期待するであろう。
【0029】
しかしながら、驚くべきことに、本発明の組換えにより産生される第VIII因子及び/又は第IX因子タンパク質は、抗原性のシアル酸N−グリコリルノイラミン酸及び/又は抗原性の糖質基Galα−3Galを欠くことが見い出されている。ヒト癌細胞又は急速に増殖するヒト胎児細胞は、N−グリコリルノイラミン酸を発現することが分かっているので、それらは、ヒト不死化胎児細胞株で産生されたから、組換えにより産生される第VIII因子及び/又は第IX因子タンパク質はN−グリコリルノイラミン酸を有することが予想された。この特性及び/又は抗原性の糖質基Galα−3Galの欠如及び組換え第VIII因子及び/又は第IX因子タンパク質の全体的なヒトのグリコシル化パターンは、それが免疫原性を減らし、かつタンパク質の機能的特性を改善することから、産物に有益な影響を有することが予想されるであろう。組換え第VIII因子のそのような特性の1つは、フォン・ヴィレブランド因子(vWF)へのさらに良好な結合である。
【0030】
一実施形態では、本発明は、ヒトのグリコシル化パターンを有し、かつ抗原性のN−グリコリルノイラミン酸及び/又はGalα1−3Galを欠く組換え第VIII因子又は第IX因子に関する。
【0031】
別の実施形態では、本発明は、抗原性のN−グリコリルノイラミン酸及び/又はGalα1−3Galを欠き、たとえば、チャイニーズハムスターの卵巣(CHO)細胞及び幼若ハムスターの腎臓(BHK)細胞などのネズミ細胞、しかし、これらに限定されない非ヒト哺乳類細胞で産生される組換え第VIII因子タンパク質よりも良好なvWFへの結合を示す組換え第VIII因子タンパク質に関する。さらに良好な結合は、非ヒト哺乳類細胞で産生される組換え第VIII因子よりも高いヒトvWFへの親和性に関係する。特定の実施形態の1つでは、vWFへの親和性は、非ヒト哺乳類細胞で産生される組換え第VIII因子よりも少なくとも約10〜60%高く、好ましくは約20%、30%、40%、50%又は60%高い。
【0032】
親和性は平衡解離定数(KD)によっても推定することができる。従って、本発明のさらに別の実施形態では、組換えタンパク質とvWFの間の親和性は、たとえば、チャイニーズハムスターの卵巣(CHO)細胞及び幼若ハムスターの腎臓(BHK)細胞などのネズミ細胞、しかし、これらに限定されない非ヒト哺乳類細胞で産生される組換え第VIII因子よりも低いKDを有する。
【0033】
さらに、vWFへのさらに良好な結合は結合能に関係する。従って、本発明は、たとえば、チャイニーズハムスターの卵巣(CHO)細胞及び幼若ハムスターの腎臓(BHK)細胞などのネズミ細胞、しかし、これらに限定されない非ヒト哺乳類細胞で産生される組換え第VIII因子よりも高いvWFへの結合能を有する組換えにより産生される第VIII因子糖タンパク質に関する。特定の実施形態の1つでは、vWFへの結合能は同一実験で調べたとき、非ヒト哺乳類細胞で産生される組換え第VIII因子よりも少なくとも約10〜60%高く、好ましくは約20%、30%、40%、50%又は60%高い。
【0034】
抗原性のシアル酸、N−グリコリルノイラミン酸及び/又は抗原性の糖質基Galα−3Galを欠いている本発明に係る組換え第VIII因子は、一実施形態では、天然の第VIII因子のBドメインを部分的に又は全体的に欠いている天然の第VIII因子の欠失誘導体である。一実施形態では、欠失Bドメインは、10〜25、好ましくは14〜20のアミノ酸残基を含むリンカーペプチドによって置き換えられる。Bドメイン欠失誘導体及びリンカーについてのさらなる詳細については、その全体が本明細書に組み入れられるWO−A−01/70968及びWO−A−2007/003582を参照のこと。
【0035】
従って、本発明は、ヒトと同様のグリコシル化パターンを有し、かつたとえば、チャイニーズハムスターの卵巣(CHO)細胞及び幼若ハムスターの腎臓(BHK)細胞などのネズミ細胞、しかし、これらに限定されない非ヒト哺乳類細胞で産生される組換え第VIII因子よりも良好なvWFへの結合を有する組換え第VIII因子糖タンパク質に関する。vWFへのさらに良好な結合はvWFへの親和性及び上記で定義されたような結合能に関係する。
【0036】
一実施形態では、ヒトと同様のグリコシル化パターンを有し、かつ非ヒト哺乳類細胞で産生される組換え第VIII因子よりも良好なヒトvWFへの結合を有する組換えタンパク質は、天然の第VIII因子のBドメインを部分的に又は全体的に欠いている天然の第VIII因子の欠失誘導体である。一実施形態では、欠失Bドメインは、10〜25、好ましくは14〜20のアミノ酸残基を含むリンカーペプチドによって置き換えられる。Bドメイン欠失誘導体及びリンカーについてのさらなる詳細については、その全体が本明細書に組み入れられるWO−A−01/70968及びWO−A−2007/003582を参照のこと。
【0037】
上記で定義されたような組換えヒト第VIII因子及び/又は第IX因子の糖タンパク質は、ヒト細胞株、好ましくは不死化されたヒト細胞株において産生される。そのような細胞株の非限定例は、腎臓、膀胱、肝臓、肺、心筋、平滑筋、卵巣、網膜、神経及び胃腸の細胞株である。
【0038】
特定の実施形態の1つでは、本発明のタンパク質は、不死化されたヒト胎児性腎臓細胞株(HEK)において産生される。そのような細胞株の非限定例は、HEK293(ATCC CRL−1573;DSM ACC 305;ECACC ref:85120602)、HEK293T(ATCC CRL 11268;DSM ACC 2494)及びHEK293F(インビトロジェンR79007)である。特定の実施形態の1つでは、ヒト細胞株はHEK293F(インビトロジェンR79007)である。
【0039】
さらに別の実施形態では、本発明は、たとえば、チャイニーズハムスターの卵巣(CHO)細胞及び幼若ハムスターの腎臓(BHK)細胞などのネズミ細胞、しかし、これらに限定されない非ヒト哺乳類細胞で産生されるヒト組換え第VIII因子又は第IX因子に比べて低い免疫原性を有する上記で定義されたような組換えタンパク質に関する。
【0040】
本発明はまた、薬学上許容可能な賦形剤との混合物において上記で定義されたような本発明のタンパク質を含む医薬組成物にも関する。医薬組成物は、治療有効量で組換え第VIII又はIX因子タンパク質を含む。投与量及び治療期間は、第VIII因子及び/又は第IX因子の欠損の重症度、出血の位置及び程度、並びに患者の臨床症状に左右される。個々の患者は第VIII因子及び第IX因子への応答で異なってもよく、異なったレベルでの生体内の回復を達成してもよく、異なった半減期を示してもよい。投与される用量は当該技術の当業者によって患者の臨床的な応答に対して漸増されるべきである。阻害物質の存在下では、さらに高い用量又は適切な特定の治療が求められてもよい。投与される第VIII因子又は第IX因子の単位数は、国際単位(IU)で表され、それは、第VIII因子又は第IX因子産物についての現在のWHO基準に関係する。血漿における第VIII因子の活性は、パーセンテージ(正常なヒト血漿に対する)又は国際単位(血漿における第VIII因子についての国際基準に対する)のいずれかで表される。
【0041】
第VIII因子活性の1国際単位(IU)は、正常なヒト血漿1mLにおける第VIII因子活性の量に概ね相当する。第VIII因子の必要とされる投与量の算出は、体重kg当たり1IUの第VIII因子が血漿の第VIII因子活性を約2IU/dL上げるという実験による知見に基づく。
【0042】
血友病Aの治療における投与される用量及び適用頻度は、個々の患者の臨床効果に依存する。通常の予防的用量は、2〜3日ごとに20〜40IU/体重kgである。
【0043】
一実施形態では、本発明は、第VIII因子及び/又は第IX因子に関連する疾患、たとえば血友病A及び血友病Bの治療のための方法であって、上記で定義したような組換えタンパク質が、治療上許容可能な量で、薬学上許容可能な賦形剤と共に投与される、方法に関する。薬学上許容可能な賦形剤は当業者に周知である。
【0044】
本発明はまた、第VIII因子及び/又は第IX因子に関連する疾患、たとえば血友病A及び血友病Bの治療のための、上記で定義したような組換えタンパク質の使用にも関する。本発明に係る組換えタンパク質は、たとえば、皮下又は静脈内への注射及び点滴、しかし、これらに限定されない当該治療分野における標準方法によって投与することができる。
【0045】
別の実施形態では、本発明は、第VIII因子及び/又は第IX因子に関連する疾患、たとえば血友病A及び血友病Bの治療のための薬剤を製造するための上記で定義したような組換えタンパク質の使用に関する。たとえば、皮下又は静脈内への注射及び点滴、しかし、これらに限定されない当該治療分野における標準方法によって薬物を投与することができる。
【0046】
さらに別の実施形態では、本発明は、タンパク質が組換え第VIII因子である上記で定義したようなタンパク質とフォン・ヴィレブランド因子との間の複合体に関する。複合体は本発明のタンパク質とvWFとの間の改善された結合親和性を有し、生体内での組換え第VIII因子の延長された残存をもたらす。
【0047】
今や、以下の非限定の実施例において本発明をさらに説明する。
【実施例1】
【0048】
EP−A−1739179(シュロダーら(Schroeder et al.), 2007b;シュロダーら(Schroeder et al.), 2007a)に記載された方法に従ってヒト細胞株HEK293Fにおいて、ヒトのBドメインを欠失した第VIII因子、ヒト細胞株組換えヒト第VIII因子(ヒト−cl−rhFVIII)を産生した。精製工程は、5つのクロマトグラフィ工程から成り、高純度の第VIII因子タンパク質を生成した(ウィンゲら(Winge et al.), 2008)。
【0049】
0.1Mの塩酸を用いて、中に10μgのケトデオキシノヌロソン酸(ketodeoxynonulosonic acid)(KDN;内部標準)を加えた精製した第VIII因子タンパク質のシアル酸(400〜600μg)を酸加水分解した(80℃で1時間)。ドウェックスカチオン交換クロマトグラフィ(Dowex cation exchange chromatography)を用いて生成物を精製し、得られた溶液を凍結乾燥し、水に再懸濁してHPAEC−PADによって分析した。それぞれ5μgのNeu5Ac及びNeuGc、及び10μgのKDNを含有する標準混合物、並びに10μgのKDNによる試薬ブランクを試料と並行して加水分解し、分析した。
【0050】
表1及び表2は、ヒト−cl−rhFVIIIの2つの試料A及びBのNeu5Ac及びNeuGcの分析の結果を示す。シアル酸型NeuGcは検出されないことが示されている。Neu5Acのみが見出された。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

【実施例2】
【0053】
ビアコア3000(Biocore3000)機器による表面プラスモン共鳴を用いてヒトのフォン・ヴィレブランド因子へのヒト−cl rhFVIIIの結合を分析した。ネズミ細胞株に由来する組換え第VIII因子産物X及びY(ネズミ−cl rhFVIIIXとY)を比較物として用いた。
【0054】
CM5センサーチップのカルボキシメチル化したデキストランに1級アミンを介してフォン・ヴィレブランド因子を固定した。結合データを全体的に試料相互作用モデルにフィットさせ、動力学的パラメータ及び親和性を得た。フォン・ヴィレブランド因子への結合及び親和性における動力学を解析した。さらに、ほかの組換え第VIII因子産物と比較したフォン・ヴィレブランド因子に結合するヒトcl−rhFVIIIの能力の定量測定を得た。
【0055】
表3は、ネズミ−cl rhFVIII生成物X及びYと比較したヒト−cl rhFVIIIについて得られた動力学的パラメータ及び親和性を以下に示す。ネズミ−cl rhFVIII産物よりもヒト−cl rhFVIIIはフォン・ヴィレブランド因子に対して約50〜60%有意に高い親和性を有することが示されている。
【0056】
【表3】

n=結合分析の数
【0057】
図1及び図2は、ネズミ−cl rhFVIII産物X及びYと比較したヒト−cl rhFVIIIのフォン・ヴィレブランド因子に結合する能力の定量的測定の結果を示す。mL当たり1国際単位の第VIII因子活性の濃度にて、固定されたフォン・ヴィレブランド因子の同一表面に渡って2分間、各FVIII産物を注入した。結果は、ネズミ−cl rhFVIII産物の場合よりも有意に大きな部分(約40%多い)のヒト−cl rhFVIIがフォン・ヴィレブランド因子に結合することができることを示している。
【0058】
本明細書では特定の実施形態を詳細に開示してきたが、これは説明のみを目的として例により行われたのであって、あとに続く添付のクレームの範囲に関して限定することを意図するものではない。特に、クレームで定義されるような本発明の精神と範囲から逸脱することなく、本発明に対して種々の置換、代替及び改変を行ってもよいことが発明者によって意図されている。
【0059】
(参考文献)
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【0076】
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【0077】
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【0078】
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【0079】
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【0080】
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【0081】
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【0083】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトと同様のグリコシル化パターンを有するが、N−グリコリルノイラミン酸及び/又は糖質基Galα−3Galを欠く、組換えヒト第VIII因子タンパク質又は第IX因子タンパク質。
【請求項2】
前記タンパク質が、第VIII因子であり、かつ天然の第VIII因子のBドメインを部分的に又は全体的に欠いている天然の第VIII因子の欠失誘導体である、請求項1に記載の組換えタンパク質。
【請求項3】
部分的に又は全体的に欠失したBドメインが、10〜25、好ましくは14〜20のアミノ酸残基を含むリンカーペプチドによって置き換えられている、請求項2に記載の組換えタンパク質。
【請求項4】
前記タンパク質が、組換え第VIII因子であり、かつ非ヒト哺乳類細胞、特にネズミ細胞において産生される組換え第VIII因子よりも高いフォン・ヴィレブランド因子に対する親和性を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組換えタンパク質。
【請求項5】
前記タンパク質が、組換え第VIII因子であり、かつ非ヒト哺乳類細胞、特にネズミ細胞において産生される組換え第VIII因子よりも高いフォン・ヴィレブランド因子に対する結合能を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組換えタンパク質。
【請求項6】
前記タンパク質が、組換え第VIII因子であり、かつ非ヒト哺乳類細胞、特にネズミ細胞において産生される組換え第VIII因子よりも高いフォン・ヴィレブランド因子に対する親和性を有する、請求項1に記載の組換えタンパク質。
【請求項7】
前記タンパク質が、組換え第VIII因子であり、かつ非ヒト哺乳類細胞、特にネズミ細胞において産生される組換え第VIII因子よりも高いフォン・ヴィレブランド因子に対する結合能を有する、請求項6に記載の組換えタンパク質。
【請求項8】
前記タンパク質が、第VIII因子であり、かつ天然の第VIII因子のBドメインを部分的に又は全体的に欠いている天然の第VIII因子の欠失誘導体である、請求項6及び/又は7のいずれか1項に記載の組換えタンパク質。
【請求項9】
部分的に又は全体的に欠失したBドメインが、10〜25、好ましくは14〜20のアミノ酸残基を含むリンカーペプチドによって置き換えられている、請求項8に記載の組換えタンパク質。
【請求項10】
前記タンパク質が、腎臓、膀胱、肝臓、肺、心筋、平滑筋、卵巣、網膜、神経及び胃腸の細胞株からなる群から選択される、ヒト細胞株、特に不死化された細胞株において産生されたものである、前記請求項のいずれか1項に記載の組換えタンパク質。
【請求項11】
前記ヒト細胞株が、HEK293(ATCC CRL−1573;DSM ACC 305;ECACC ref:85120602)及び293F(インビトロジェンR79007)からなる群から特に選択される、ヒト胎児性腎臓細胞株(HEK)である、請求項10に記載の組換えタンパク質。
【請求項12】
HEK293(ATCC CRL−1573;DSM ACC 305;ECACC ref:85120602)及び293F(インビトロジェンR79007)からなる群から選択されるヒト胎児性腎臓細胞株(HEK)において前記タンパク質を産生することによって得られる、前記請求項のいずれか1項に記載の組換えタンパク質。
【請求項13】
第VIII因子及び/又は第IX因子に関連する疾患の治療ための、請求項1〜12のいずれか1項に記載の組換えタンパク質の使用。
【請求項14】
治療有効量で、請求項1〜12のいずれか1項に記載のタンパク質及び薬学上許容可能な賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項15】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の組換え第VIII因子とフォン・ヴィレブランド因子との複合体。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−500250(P2012−500250A)
【公表日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−523430(P2011−523430)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【国際出願番号】PCT/EP2009/060829
【国際公開番号】WO2010/020690
【国際公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(500050402)オクタファルマ アクチェン ゲゼルシャフト (9)
【Fターム(参考)】