説明

組換えHCVE2糖タンパク質

本発明は、HVR1可変領域、HVR2可変領域およびigVR可変領域を包含するHCV-E2受容体結合ドメイン(RBD)を含む改変C型肝炎ウイルス(HCV)E2糖タンパク質であって、前記可変領域の少なくとも1つにおいて可変領域の少なくとも一部が可動性リンカー配列で置き換えられている前記改変HCV E2糖タンパク質を提供する。本発明はまた、該改変HCV E2糖タンパク質を含むワクチン組成物およびその使用方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、C型ウイルス(HCV)感染に対する新しい改良された処置に関する。本発明は特に、組換えHCVポリプロテインを投与することをベースとするHCV感染の予防および治療的処置のためのワクチン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
世界保健機関によると、C型肝炎ウイルス(HCV)は世界中でおよそ1億7000万人〜2億人に感染している。政府はHCVがどのように伝染するかについての教育を広めているが、予防プログラムにもかかわらず、HCVは拡散し続けている。HCVに感染している人々のおよそ80%が該ウイルスのキャリアのままである。オーストラリアでは毎年HCVの新規症例が約16,000件報告されており、新たな感染は注射薬使用者の間で最も広く行き渡っている。HCVは、最も一般的な血液感染性のウイルス感染症であり、人口のかなり大きな割合の死因となる。
HCVは罹患者の肝臓とある種の免疫細胞とに感染することが知られている。結果として、HCVは他の種類の肝炎よりもさらに高い頻度で繊維症、肝硬変、脂肪症および肝細胞癌(肝臓がん)のような重度の肝臓疾患をもたらす。HCVは肝臓移植の必要性の主な原因である。該感染の急性期は該感染の無症状性質のため認識されない場合が多く、個人の80%は慢性状態に進行する、と一般的に考えられている。慢性感染症は、免疫系がウイルスに対して適正な免疫応答を生じることができない結果である。
【0003】
現在、HCVのワクチンは存在せず、HCVの治療のための唯一利用可能な治療は坑ウイルス薬および複合薬の開発に頼っている。坑ウイルス薬設計の背後にある概念は、無効にするまたは阻害することができるウイルスタンパク質またはタンパク質の一部を同定することである。中程度または重度の繊維症を患う患者に一般に好まれる標準的処置は、α-インターフェロンとリバビリンの併用を含む。α-インターフェロンとリバビリンの併用療法の坑ウイルス効果は、単回投与の後でも血液中のHCVレベルの急速な低下を誘導する。しかしながら、HCVに対する慣習的なα-インターフェロン療法はいいくつかの不利益を被る。例えば、(i)α-インターフェロン療法が処置の2〜3週間または2〜3ヵ月後に止められた場合、ウイルス量レベルが急速に回復することが知られている;(ii)α-インターフェロン/リバビリンを用いる処置は、インフルエンザ様症候群、赤血球数または白血球数の減少、骨髄抑制、神経精神性作用、特にうつ病および貧血を含む重度の副作用と関係している;(iii)α-インターフェロンが急速に吸収されて身体から排出されるため、効果的な治療は患者に頻繁な投与計画の遵守を要求する;ならびに(v)そのような治療は費用が高額である。
上記不利益の幾つか、特に(iii)の項目に関連するものは、α-インターフェロンを‘PEG化’してα-インターフェロンにポリエチレングリコール分子を結び付けることによって対処されている。リバビリンと組み合わせたPEG化インターフェロンの投与はインターフェロンの半減期を増やし服用の頻度を減らす利点を有しており、それ故患者の服薬遵守に利点を有する。しかしながら、そのような治療法は治療された患者の50%未満にしか効き目がないことが証明されている。HCVの慢性罹患者が増加していることを考慮すると、予防目的および治療目的双方のためのワクチンを開発する必要がある。
【0004】
HCV感染を防御するための奏効するワクチンの開発は捉えどころがない。この困難性について提唱されるひとつの理由は、RNAウイルスであるHCVが遺伝的に不安定でありHCVが高いウイルス変異率を達成して身体の免疫応答から逃れることを可能にするためである。従って、研究者らの挑戦は該ウイルスの保存されている部分を同定することである。
HCVはフラビウイルス科ファミリーの分離属(ヘパシウイルス)に分類されている。HCVは非細胞変性性であり、むしろ免疫応答の引き金を引き、感染を急速に除去するかまたは慢性感染症と肝臓障害とをもたらす炎症性応答を開始する。治療無しにHCV RNAを永続的に除去する感染症の自発的な消散が急性症例の〜30%に起こることはHCVに対する自然免疫を示唆しており、よってワクチン開発の見込みに対する励ましとなる。しかしながら、HCV感染のこの結末の決定要因は未知である。
HCVビリオンは約9.5 kbのプラス・センス一本鎖RNAゲノムを包含する。そのゲノムは3,010〜3,030アミノ酸のただ1つのポリプロテインをコードしている。構造タンパク質はウイルスヌクレオカプシドを形成するコアタンパク質と2つのエンベロープ糖タンパク質E1およびE2とを含む。HCVワクチンの開発に向けた近年の幾つかの取組みは、HCVエンベロープ糖タンパク質E1およびE2に焦点を絞っている。E1およびE2はビリオン表面上に非共有結合性ヘテロ二量体を形成してウイルスの吸着および侵入を仲介し、よって宿主免疫応答の標的を提示することが見出されている。
【0005】
最近の調査は、エンベロープ糖タンパク質E2がCD4+T細胞の表面上のCD81に結合することを示唆している。その結合過程の間、E2は急速なコンホメーション変化を受ける。今日までに、「野生型」のCD81結合レベルを示すことができる適切な改変エンベロープ糖タンパク質を提供できた研究は存在していない。
特許請求の範囲を含め、本明細書中、HCVエンベロープ糖タンパク質E1およびE2のポリペプチド残基の番号付けは全てGenbankアクセッション番号AF 009606のプロトタイプHCV-H77ポリプロテイン配列に基づいている。糖タンパク質E1の成熟型はポリプロテイン残基191から383によって包含されており、糖タンパク質E2の成熟型はポリプロテイン残基384から746によって包含されている。
E2の受容体結合ドメイン(RBD)はポリプロテイン残基384〜661(E2661)によって包含されている。E2661 RBDの組換え型は、トランスフェクト細胞から効率的に分泌され、CD81および他の細胞表面分子と相互作用することができる。E2 RBDは2つの可変領域HVR1(384-410)およびHVR2(474-482)を含む。
E2のN末端に位置する可変領域1は、HCVゲノム中で最も可変性の領域で免疫原性が高く、中和回避変異を急速に集積する。HVR1における高いアミノ酸可変性レベルにも関わらず、ウイルス全体にとって重要な塩基性残基は全体的に保存されている。
【0006】
可変領域2はCys-459〜Cys-486に挟まれた領域内に位置する。本来は7残基配列として説明されていたが、異なるHCV遺伝子型由来のE2配列の比較により、可変領域2は残基461-481から延長している場合があることが示唆される。HVR1と比較して、HVR2の配列はHCV感染した人々の中で相対的に安定であるが、この位置での変異の集積はインターフェロン-α処置への応答性と相関することが示されている。
本発明に通じる研究において、HCVの6つの主要な遺伝子型を表すE2配列のアラインメントはポリプロテイン残基570-580の間にこれまで記載されていない可変領域を明らかにし、この可変領域は遺伝子型の範囲内で相対的に保存されているがアミノ酸の挿入および欠損のため遺伝子型を横断して変動することを本発明者らが見いだした。従って、アミノ酸570-580は遺伝子型間(intergenotypic)可変領域(igVR)と表示される。HCVの全6遺伝子型およびその分岐する分離株に由来する対応領域の調査は、igVRも保存システイン残基(Cys-569およびCys-581)にフランキングされていることを示し、これらの配列がジスルフィド拘束ループを形成することを示唆する。
今日まで適応的免疫応答経路を用いるHCVのワクチン療法は成功してこなかった。HCV治療のための現在の療法および実験的療法の不利益を考慮すると、HCV感染を治療するための細胞性免疫応答を提供することについて満たされていない必要性が存在している。
【0007】
本発明の1つの目的は、HCV感染を予防または治療するための免疫療法的アプローチを提供することである。本発明の更なる目的は、HCV感染を予防または治療するための免疫療法的アプローチを提供することである。本発明の更なる目的は、HCV感染体の天然の細胞受容体にとっての「野生型」結合レベルに近い改変E2糖タンパク質を提供することである。
国際公開第WO 02/22155号広報(Hawaii Biotechnology Group, Inc.)は、宿主細胞内で組換え型で発現される場合に成長培地中への分泌が可能な、HVR1領域を欠く短縮HCV E2ポリプロテインを開示する。そのポリプロテインは、残基662の後のC末端も欠く場合もある。国際公開第WO 03/022880号広報(XTL Biopharmaceuticals Ltd.)もHVR1領域を欠くE2タンパク質の短縮異形を開示する。
前述の議論は、本発明の分野を紹介することを意図するものであって、決して本技術分野における一般常識の状態の承認と解釈すべきでない。本明細書中で参照する文献の書誌的詳細は、発明の詳細な説明の後に提示する。本明細書中のいずれかの先行技術文献についての言及は、その先行技術文献が本技術分野における一般常識の一部となることの同意でも示唆のいずれかの形態でもなく、またそのように扱うべきでもない。
【発明の概要】
【0008】
本明細書と特許請求の範囲を通じて、文脈が他に要求しない限り、“含む” (comprise)という用語およびまたは“含む”(comprisesもしくはcomprising)のような語尾変化は、表示した整数もしくは工程またはそれらの群を包含することを意味するが他の整数もしくは工程またはそれらの群を排除することを意味しないものと理解される。
ある態様では、本発明は、HVR1可変領域、HVR2可変領域およびigVR可変領域を含むHCV-E2受容体結合ドメイン(RBD)を含む改変C型肝炎ウイルス(HCV)E2糖タンパク質であって、前記可変領域の少なくとも1つにおいて該可変領域の少なくとも一部が可動性リンカー配列で置き換えられている前記改変HCV E2糖タンパク質を提供する。
別の態様では、本発明は、HVR1可変領域、HVR2可変領域およびigVR可変領域を含むHCV-E2受容体結合ドメイン(RBD)を含む改変C型肝炎ウイルス(HCV)E2糖タンパク質であって、前記HVR2可変領域の少なくとも一部が除去されているか可動性リンカー配列で置き換えられている前記改変HCV E2糖タンパク質を提供する。
さらに別の態様では、本発明は、HVR1可変領域、HVR2可変領域およびigVR可変領域を含むHCV-E2受容体結合ドメイン(RBD)を含む改変C型肝炎ウイルス(HCV)E2糖タンパク質であって、前記igVR可変領域の少なくとも一部が除去されているか可動性リンカー配列で置き換えられている前記改変HCV E2糖タンパク質を提供する。
【0009】
上で大まかに記載する改変HCV E2糖タンパク質は、HCVビリオン野生型コンホメーションに実質的に近似する糖タンパク質であり、HCV受容体CD81およびコンホメーション依存性抗体と結合する能力を保持する。
また本発明は、上で大まかに記載する改変HCV E2糖タンパク質を医薬として許容される担体または賦形剤と共に含む組成物も提供する。
そのような組成物は、ワクチン組成物として、好ましくはアジュバントを含むワクチン組成物として調剤され得る。
さらに別の態様では、本発明は、上で大まかに記載する改変HCV E2糖タンパク質の有効量を患者に投与することを含む、患者における免疫応答を誘導する方法も提供する。
本態様では、本発明は、上で大まかに記載する改変HCV E2糖タンパク質の有効量を患者に投与することを含む、HCV感染の予防的処置または治療的処置する方法を含む。
更なる態様では、本発明は、患者に免疫応答を誘導することにおける、または患者に免疫応答を誘導するための医薬の製造における、上で大まかに記載する改変HCV E2糖タンパク質の使用を提供する。
本更なる態様では、本発明は、患者のHCV感染の予防的処置もしくは治療的処置における、または患者のHCV感染の予防的処置もしくは治療的処置のための医薬の製造における、上で大まかに記載する改変HCV E2糖タンパク質の使用を含む。
【0010】
また更なる態様では、本発明は、上で大まかに記載する改変HCV E2糖タンパク質を含む、患者の免疫応答を誘導するための薬剤を提供する。
本更なる態様では、本発明は、上で大まかに記載する改変HCV E2糖タンパク質を含む、患者のHCV感染の予防的処置または治療的処置のための薬剤を包含する。
本発明はまた、上に大まかに記載する改変HCV E2糖タンパク質に対して産生された単離抗体も提供する。その抗体はモノクローナルまたはポリクローナルであり得る。
本態様では、本発明は、上述する抗体の有効量を患者に投与することを含む、患者のHCV感染を予防的処置または治療的処置する方法も提供する。
本発明はまた、患者のHCV感染の予防的処置もしくは治療的処置における、または患者のHCV感染の予防的処置もしくは治療的処置のための薬剤の製造における、上述する抗体の使用も提供する。
本態様でも、本発明は、上述する抗体を含む、患者のHCV感染の予防的処置または値陽的処置のための薬剤を提供する。
さらに、本発明は、抗体-抗原複合体の形成を可能にする条件下で患者由来の生物学的サンプルを上述の抗体と接触させることと抗体-抗原複合体を検出することを含み、前記抗体-抗原複合体の形成が前記生物学的サンプルにおけるHCVの存在を示す、患者のHCV感染を検出する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】細胞可溶化物中の一重可変領域欠損含有E1E2の発現およびヘテロ二量化を示す。野生型(pE1E2)、1の可変領域欠損含有pE1E2、または空ベクターでトランスフェクションした293T細胞の代謝的標識した細胞可溶化物を、(i)非還元条件下と(ii)還元条件下(+β-メルカプトエタノール)の両方で[A]坑E1E2ポリクローナル抗体(779)、[B]坑E1モノクローナル抗体(A4)、[C]坑E2モノクローナル抗体(A11)および[D]坑E2コンホメーション依存性モノクローナル抗体(H53)を用いて免疫沈降させた。全てのサンプルを10〜15%SDS-PAGEグラジエントゲル上で泳動させ、ホスホイメージャーを用いて可視化した。このデータは2つの独立した実験を表す。
【図2】遺伝子型1〜6に由来する多様なHCV E2糖タンパク質配列のClustalXアラインメントを示す。認知されている2つの超可変領域であるHVR1およびHVR2と新規可変領域igVRとを強調した(灰色)。HVR2領域とigVR領域とにフランキングする保存システイン残基だけでなく、N末端領域をE2糖タンパク質の残りに固定するのに提案される第一の保存システイン残基をも示す(太字)。CD81結合決定基の位置(囲み)と、広範な中和抗体AP33に対するエピトープの位置を示す。可変領域に付随するN連結グリコシル化部位をも示す(ツリー(tree))。予測される膜貫通ドメインに下線を引く。
【図3】一重可変領域欠損を含むE1E2糖タンパク質の、レトロウイルス性偽型HIV-1粒子への組み込みを示す。[A]代謝的標識したHCV糖タンパク質偽型HIV-1粒子を、野生型ベクター(pE1E2)、可変領域欠損を含むpE1E2ベクターまたは空ベクターをトランスフェクションした293T細胞の組織培養液からペレットにして、溶解した。コンホメーション依存性坑E2モノクローナル抗体E53を用いてE1E2ヘテロ二量体を免疫沈降させた。全てのサンプルを非還元条件下で10-15%SDS-PAGEグラジエントゲル上で分離し、ホスホイメージャーを用いて可視化した。[B]HIV-1構造タンパク質のプロセッシングおよびレトロウイルス性偽型HIV-1粒子への組み込み。HIV-1感染個体由来のIgG(IgG14)を用いて、溶解した代謝的標識HCV糖タンパク質偽型HIV-1粒子から取り出されたHIV構造タンパク質Pr55Gag、p24CA、p66RTおよびp17MAを免疫沈降させた。全てのサンプルを7.5-15%SDS-PAGEグラジエントゲル上で分離し、ホスホイメージャーを用いて可視化した。このデータは2つの独立した実験を表す。
【図4】一重可変領域欠損を含むHCV糖タンパク質偽型HIV-1粒子のHuh-7細胞へ侵入する能力を示す。ベクターNL4-3.LUC.R-E-と、野生型(pE1E2)、可変領域における欠損を含むpE1E2または空ベクターのどれかとでコトランスフェクションした293T細胞由来の組織培養液を、三つ組みでHuh7細胞を感染させるのに用いた。Huh7細胞を溶解し、ルミネッセンス光学部品を取り付けたFluostarを用いてルシフェラーゼ活性(相対光単位)を測定した。平均および標準偏差を三つ組みの感染物から計算した。データは3つの独立した実験を表す。
【図5】一重可変領域欠損を含むHCV E1E2のCD81-LELとの結合能力を示す。[A]細胞内形態のE2のCD81-LELとの結合能力。野生型(pE1E2)、可変領域の欠損を有するpE1E2、または空ベクターをトランスフェクションした293T細胞の代謝的標識細胞溶解物を段階的に2倍希釈して、CD81 MBP-LEL(残基113-201)コーティングしたエンザイムイムノアッセイプレートに施した。結合したE2を、坑E2コンホメーション依存性抗体H53およびウサギ坑マウスホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲートを用いて検出した。450 nmで吸光度値(光学密度)を測定し、620 nmのバックグラウンドを差し引いた。[B]ビリオン組み込みE2糖タンパク質のCD81-LELとの結合。代謝的標識HCV糖タンパク質偽型HIV-1粒子の溶解物を段階的に2倍希釈して、CD81 MBP-LEL(残基113-201)コーティングしたエンザイムイムノアッセイプレートに施した。結合したE2をAについて説明するように検出した。データは2つの独立した実験を表す。
【図6】細胞溶解物における改変一重可変領域欠損を含むE1E2の発現およびヘテロ二量化を示す。野生型(pE1E2)、伸長リンカーを有する一重可変領域欠損を含むpE1E2、または空ベクターでトランスフェクションした293T細胞の代謝的標識細胞溶解物を、[A]坑E1E2ポリクローナル抗体(779)、[B]坑E1モノクローナル抗体(A4)、[C]坑E2モノクローナル抗体(A11)および[D]坑E2コンホメーション依存性モノクローナル抗体(H53)を用いて、(i)非還元条件下と(ii)還元条件下(+β-メルカプトエタノール)で免疫沈降させた。全てのサンプルを10-15%SDS-PAGEグラジエントゲル上で泳動し、ホスホイメージャーを用いて可視化した。データは2つの独立した実験を表す。
【図7】改変一重可変領域欠損を含むE1E2糖タンパク質のHCV糖タンパク質偽型HIV-1粒子への組み込みを示す。[A] NL4-3.LUC.R-E-と野生型(pE1E2)、伸長リンカーを有する一重可変領域欠損を含むpE1E2または空ベクターのどれかとでトランスフェクションした293T細胞の組織培養液から代謝的標識E1E2偽型HIV-1粒子をペレット化し、溶解した。コンホメーション依存性坑E2モノクローナル抗体H53でE1E2ヘテロ二量体を免疫沈降させた。全てのサンプルを非還元条件下10-15%SDS-PAGEグラジエントゲル上で分離し、ホスホイメージャーを用いて可視化した。[B]HIV-1構造タンパク質のプロセッシングおよびHCV糖タンパク質偽型HIV-1粒子への組み込み。HIV-1感染個体由来のIgG(IgG14)を用いて、溶解した代謝的標識E1E2偽型HIV-1粒子由来のHIV-1構造タンパク質Pr55Gag、p17MA、p24CAおよびp66RTを免疫沈降させた。全てのサンプルを7.5-15%SDS-PAGEグラジエントゲル上で分離し、ホスホイメージャーを用いて可視化した。データは2つの独立した実験を表す。
【図8】一重改変可変領域欠損を含むHCV糖タンパク質偽型HIV-1粒子のHuh7細胞への侵入能力を示す。NL4-3.LUC.R-E-と野生型(pE1E2)、伸長リンカーを有する一重可変領域欠損を含むpE1E2または空ベクター(pCDNA4)のどれかとでコトランスフェクションした293T細胞由来の組織培養液を用いてHuh7細胞に三つ組みで感染させた。Huh7細胞を溶解し、ルミネッセンス光学部品を取り付けたFluostarを用いてルシフェラーゼ活性(相対光単位)を測定した。三つ組み感染細胞から平均および標準偏差を算出した。スチューデントのt検定を用いてp値を算出した。データは3つの独立した実験を表す。
【図9】1つの可変領域の一重改変欠損を含むE2のCD81-LELとの結合能力を示す。[A]野生型(pE1E2)、1つの可変領域の改変欠損を含むpE1E2または空ベクター(pCDNA4)でトランスフェクションした293T細胞の代謝的標識細胞溶解物を、CD81 MBP-LEL(残基113-201)コーティングしたエンザイムイムノアッセイプレートに段階的な2倍希釈で施した。坑E2コンホメーション依存性モノクローナル抗体H53とウサギ坑マウスホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲートとを用いて、結合したE2を検出した。吸光度値を450 nm−620 nm(バックグラウンド)にて読んだ。データは2つの独立した実験を表す。[B]ウイルス溶解物中でCD81-LELと結合しているビリオン組み込みE2糖タンパク質。代謝的標識E1E2偽型HIV-1粒子の溶解物をCD81 MBP-LEL(残基113-201)コーティングしたエンザイムイムノアッセイプレートに段階的な2倍希釈で施し、結合したE2を上述のように検出した。吸光度値を450 nm−620 nm(バックグラウンド)にて読んだ。[C]独立したBの繰り返し。
【図10】多重可変領域欠損を含むE1E2の未成熟形態の発現およびヘテロ二量化を示す。野生型(pE1E2)、多重可変領域欠損を含むpE1E2または空ベクターでトランスフェクションした293T細胞の代謝的標識細胞溶解物を、(i)非還元条件下と(ii)還元条件下(+β-メルカプトエタノール)の両方にて、[A]坑E1E2ポリクローナル抗体(779)、[B]坑E1モノクローナル抗体(A4)、[C]坑E2モノクローナル抗体(A11)および[D]坑E2コンホメーション依存性モノクローナル抗体(H53)で免疫沈降させた。全てのサンプルを10-15%SDS-PAGEグラジエントゲル上で泳動し、ホスホイメージャーを用いて可視化した。データは2つの独立した実験を表す。
【図11】多重可変領域欠損を含むE1E2糖タンパク質のHCV糖タンパク質偽型HIV-1粒子への組み込みを示す。NL4-3.LUC.R-E-と野生型(pE1E2)、多重可変領域欠損を含むpE1E2または空ベクターのどれかとでコトランスフェクションした293T細胞の組織培養液から代謝的標識したE1E2偽型HIV-1粒子をペレット化してから、溶解した。コンホメーション依存性坑E2モノクローナル抗体H53でE1E2ヘテロ二量体を免疫沈降させた。全てのサンプルを非還元条件下10-15%SDS-PAGEグラジエントゲル上で分離し、ホスホイメージャーを用いて可視化した。[B]HIV-1構造タンパク質のプロセッシングおよびHCV糖タンパク質偽型HIV-1粒子への組み込み。HIV-1感染個体由来のIgG(IgG14)を用いて、溶解した代謝的標識E1E2偽型HIV-1粒子由来のHIV-1構造タンパク質Pr55Gag、p17MA、p24CAおよびp66RTを免疫沈降させた。サンプルを還元条件下7.5-15%SDS-PAGEグラジエントゲル上で分離し、ホスホイメージャーを用いて可視化した。データは2つの独立した実験を表す。
【図12】多重可変領域欠損を含むE1E2偽型HIV-1粒子のHuh7細胞への侵入能力を示す。HIV-1ホタルルシフェラーゼベクター(NL4-3.LUC.R-E-)と野生型(pE1E2)、多重可変領域欠損を含むpE1E2または空ベクター(pCDNA4)のどれかとでコトランスフェクションした293T細胞由来の組織培養液を用いて、Huh7細胞を三つ組みで感染させた。Huh7細胞を溶解して、ルミネッセンス光学部品を取り付けたFluostarを用いてルシフェラーゼ活性を測定した。データは3つの独立した実験を表す。
【図13】多重可変領域欠損を含むE2のCD81-LELとの結合能力を示す。[A] 野生型(pE1E2)、多重可変領域欠損を含むpE1E2または空ベクター(pCDNA4)でトランスフェクションした293T細胞の代謝的標識細胞溶解物をCD81 MBP-LEL(残基113-201)コーティングしたエンザイムイムノアッセイプレートに段階的な2倍希釈で施した。坑E2コンホメーション依存性モノクローナル抗体H53とウサギ坑マウスホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲートとを用いて、結合したE2を検出した。吸光度値を450 nm−620 nm(バックグラウンド)にて読んだ。[B]多重可変領域欠損を含むE2のビリオン組み込み形態のCD81-LELとの結合能力。代謝的標識E1E2偽型HIV-1粒子の溶解物をCD81 MBP-LEL(残基113-201)コーティングしたエンザイムイムノアッセイプレートに段階的な2倍希釈で施した。結合したE2を上述のように検出した。吸光度値を450 nm−620 nm(バックグラウンド)にて読んだ。データは2つの独立した実験を表す。
【図14】一重および多重可変領域欠損を含むE2 RBD(残基384-661)の細胞溶解物での発現を示す。[A]野生型(E2-myc)、一重もしくは多重可変領域欠損を含むE2-mycまたは空ベクターのいずれかでトランスフェクションした293T細胞の代謝的標識細胞溶解物を、坑E2コンホメーション依存性抗体H53で免疫沈降させた。[B]上澄み液における一重および多重可変領域欠損を含むE2 RBD(残基384-661)の分泌。野生型(E2-myc)、一重もしくは多重可変領域欠損を含むE2-mycまたは空ベクターのいずれかでトランスフェクションした代謝的標識293T細胞由来の上澄み液を、坑E2コンホメーション依存性抗体H53で免疫沈降させた。全てのサンプルを10-15%SDS-PAGEグラジエントゲル上で分離し、ホスホイメージャーを用いて可視化した。一重可変領域欠損についてのデータは1つの実験に由来する。
【図15】一重可変領域欠損を含むE2 RBD(残基384-661)のCD81-LELとの結合能力を示す。[A] 野生型(E2-myc)、一重可変領域欠損を含むE2-mycまたは空ベクターのいずれかでトランスフェクションした代謝的標識293T細胞由来の細胞溶解物をCD81 MBP-LEL(残基113-201)コーティングしたエンザイムイムノアッセイプレートに段階的な2倍希釈で施した。坑E2コンホメーション依存性抗体H53とウサギ坑マウスホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲートとを用いて、結合したE2を検出した。吸光度値を450 nm−620 nm(バックグラウンド)にて読んだ。[B] 一重可変領域欠損を含む分泌E2 RBD(残基384-661)のCD81-LELとの結合能力。野生型(E2-myc)、一重可変領域欠損を含むE2-mycでトランスフェクションした代謝的標識293T細胞由来の組織培養液をCD81 MBP-LEL(残基113-201)コーティングしたエンザイムイムノアッセイプレートに段階的な2倍希釈で施した。坑E2コンホメーション依存性抗体H53とウサギ坑マウスホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲートとを用いて、結合したE2を検出した。吸光度値を450 nm−620 nm(バックグラウンド)にて読んだ。データは1つの実験に由来する。
【図16】多重可変領域欠損を含むE2 RBD(残基384-661)のCD81-LELとの結合能力を示す。[A] 野生型(E2-myc)、多重可変領域欠損を含むE2-mycまたは空ベクターのいずれかでトランスフェクションした代謝的標識293T細胞由来の細胞溶解物をCD81 MBP-LEL(残基113-201)コーティングしたエンザイムイムノアッセイプレートに段階的な2倍希釈で施した。吸光度値を450 nm−620 nm(バックグラウンド)にて読んだ。[B] 多重可変領域欠損を含む分泌E2 RBD(残基384-661)のCD81-LELとの結合能力。野生型(E2-myc)、多重可変領域欠損を含むE2-mycまたは空ベクターでトランスフェクションした代謝的標識293T細胞由来の上澄み液をCD81 MBP-LEL(残基113-201)コーティングしたエンザイムイムノアッセイプレートに段階的な2倍希釈で施した。吸光度値を450 nm−620 nm(バックグラウンド)にて読んだ。データは1つの実験に由来する。
【図17】E2-mycタンパク質の全長表面発現CD81(full length surface expressed CD81)との結合を示す。全長CD81をコードするベクターでトランスフェクションしたCHO-K1細胞に、293T細胞から産生された等量の単量体分泌E2-mycタンパク質を施した。ヨウ素化9E10で結合したE2-mycを検出し、ガンマカウンターで測定した。3つの独立したアッセイの平均±標準誤差。不等分散を仮定してスチューデントのt検定を用いてE2 Δ23-myc E2構築物との比較によって導き出されたP値。
【図18】E2-mycおよびE2 Δ123-mycがヒトコンホメーション感受性モノクローナル抗体で検出される能力を示す。野生型(E2-myc)およびE2 Δ123-mycを代謝的標識し、E2の3つの免疫原性ドメイン(A、BおよびC)に特異的なコンホメーション依存性ヒトモノクローナル抗体の“CBH”パネルで免疫沈降させた。免疫沈降したタンパク質を非還元条件下SDS-PAGEにより10-15%グラジエントゲルで分析し、続いてホスホイメージャーでスキャンした。
【図19】一重および多重可変領域欠損を含むE1E2ポリプロテインの略図を示す。pE1E2ベクターは、E1およびE2のC末端に膜貫通ドメイン(横縞)を含み且つ表示した(矢印)シグナルペプチダーゼ切断部位シグナルペプチドを有するシグナルペプチドを含むE1(濃い灰色)およびE2(薄い灰色)の全長H77c配列をコードする。E2可変領域(水玉模様)およびHVR1に隣接する保存領域(斜め縞)を−個々にまたは組み合わせて−表示した可動性Gly-Ser-Ser-Gly(GSSG)リンカーモチーフで置き換えた。
【図20】オーバーラップ伸長PCRストラテジーの略図を示す。2つのオリゴヌクレオチド対を用いて可変領域をHCV糖タンパク質鋳型配列(斜め縞)から欠損させた:前記オリゴヌクレオチド対は、表示したHVR1に隣接する5’または3’フラグメントのどちらかを増幅する1つの外部プライマーおよび1つの内部プライマーを各々含む。内部プライマー配列はGly-Ser-Ser-Glyリンカーモチーフ(太字)とそれぞれの5’または3’フラグメントに相補的な短い‘オーバーラップ’配列とを導入する。これらの配列はアニールして第2ラウンドのPCR増幅のための鋳型を形成し、第2ラウンドのPCR増幅は外部プライマーを用いてHVR1欠損糖タンパク質を増幅する。
【図21】伸長リンカーを有する改変一重可変領域欠損を含むHCV E1E2糖タンパク質の略図を示す。pE1E2ベクターはE1およびE2のC末端に膜貫通ドメイン(横縞)を含むE1(濃い灰色)およびE2(薄い灰色)の全長H77c配列をコードする。シグナルペプチダーゼ切断部位も表示する(矢印)。E2可変領域とHVR1に隣接する保存領域(con)を部分的に欠損させて、可動性Gly-Ser-Ser-Glyリンカー配列で置き換えた。
【図22】一重および多重可変領域欠損を含むE2受容体結合ドメイン(E2 RBD661)の略図を示す。pE2661ベクターは、残基384-661(E2-myc)をコードするE2 RBDをコードする。可変領域(水玉模様)とHVR1に隣接する保存配列(斜め縞)を、表示した短い可動性Gly-Ser-Ser-Gly(GSSG)リンカーモチーフで、個々にまたは一緒に置き換えた。これらの構築物のC末端にmycエピトープタグ(縦縞)も導入した。
【図23】HCV糖タンパク質偽型HIV-1粒子を作成するのに用いたストラテジーの略図を示す。E1E2(pE1E2)または可変領域欠損を含むpE1E2をコードするHCV糖タンパク質発現ベクターと、本来のエンベロープ遺伝子を欠失してルシフェラーゼレポーター遺伝子を含むレトロウイルスベクター(HIV-1 NL4-3.LUC.R-E-)を293T細胞へコトランスフェクションさせる。レトロウイルスコアタンパク質は細胞内で集合するため、原形質膜から出芽することによってHCV E1E2糖タンパク質を組み込んでエンベロープが獲得される。次に、これらのビリオンを収集して、Huh7細胞における1ラウンドの感染および複製を行うのに用いる。次に、感染したHuh7細胞内で生じたルシフェラーゼ活性によってE1E2仲介性侵入のレベルを定量する。
【図24】E2-mycタンパク質およびE2 Δ123-mycタンパク質が、HCV感染個体から得られたヒト血清のパネルにより免疫沈降される能力を示す。10-15%ポリアクリルアミドグラジエントゲルで非還元条件下でのSDS-PAGEの後ホスホイメージャーでスキャンすることによって、免疫沈降したタンパク質を分析した。各レーンの下は、HCV RNA状態;BioRad Monolisaアッセイ、Abbot MurexアッセイまたはChiron RIBAアッセイのいずれか1つを用いて検出したHCV特異的抗体の存在;および、血清サンプルについての50%中和抗体力価である。分子量マーカーを左に表示する。
【図25】可変領域欠損を含むE2-mycタンパク質がCD81の組換え大型細胞外ループと相互作用する能力を示す。[A]野生型E2-myc、E2 Δ12-myc、E2 Δ23-myc、およびCD81との相互作用を妨害するL441Mを含むE2-mycが野生型の組換えMBP-LELと相互作用する能力。E2-mycタンパク質をMBP-LELコーティングしたエンザイムイムノアッセイプレート中で連続的に希釈した。データは2つ〜7つの独立した実験の平均であり、野生型E2-myc±標準偏差に対する平均結合率として示す。[B] WT E2-myc、E2 Δ13-mycおよびE2 Δ123-mycが野生型組換えMBP-LEL(実線)またはE2結合を妨害するF186S変異を含む組換えMBP-LEL(破線)と相互作用する能力。データは2つ〜7つの独立した実験の平均であり、野生型E2-myc±標準偏差に対する平均結合率として示す。
【図26】可変領域欠損を含むE2-mycタンパク質が全長表面発現CD81と相互作用する能力を示す。[A] WT E2-myc、E2 Δ12-myc、E2 Δ23-myc、および変異L441Mを含むE2-mycタンパク質が全長CD81トランスフェクトCHO-K1細胞と相互作用する能力。野生型または可変領域欠損したE2-mycタンパク質の希釈物を氷冷したヒトCD81トランスフェクトCHO-K1細胞に施し、氷上で4時間インキュベートした。洗滌の後、1x106 CPM 125I-9E10を加えて、プレートを室温にて1時間インキュベートし、洗滌して、Packardオートガンマカウンターで計数した。示したデータは2つ〜5つの独立した実験の、野生型±標準誤差に対する平均結合率である。[B] WT E2-myc、E2 Δ123-mycおよびE2 Δ13-mycが全長ヒトCD81(実線)トランスフェクトCHO-K1細胞またはF186S-CD81(破線)トランスフェクトCHO-K1細胞と相互作用する能力。示したデータは2つ〜5つの独立した実験の、野生型±標準誤差に対する平均結合率である。
【図27】可変領域欠損を含まない(野生型)あるいは1以上含むE2-hisタンパク質の精製HCV E2タンパク質変種(variant)の4-20%ポリアクリルアミドグラジエントゲルでのSDS-PAGEを示す。クマシーブリリアントブルーで染色することによってタンパク質を可視化した。
【図28】E2-hisタンパク質のブルーネイティブPAGEを示す。精製したタンパク質(10 μg)を未変性条件下にて5-15%ポリアクリルアミドグラジエントゲルで電気泳動させた。電気泳動の後、ゲルを一晩脱染しLicor Odysseyスキャナーで680 nmにてスキャンした。タンパク質標準物質の移動位置は右側に示す。
【図29】精製E2-hisタンパク質のウエスタンブロット分析を示す。精製タンパク質のサンプルに還元SDS-PAGEを行い、続いてニトロセルロースメンブレンに電気泳動転写した。コンホメーション非依存性E2特異的モノクローナル抗体に続いてヤギ坑マウス免疫グロブリン結合Alexafluor680nm(Invitrogen)を用いて、E2タンパク質を検出した。イムノブロットをLicor Odysseyスキャナーでスキャンした。分子量マーカーは左側に示す(kDa)。
【図30】HCV E2-hisタンパク質が組換え型のCD81の大型細胞外ループ(CD81-LEL)と結合する能力を示す。次の[A]または[B]と融合したマルトース結合タンパク質でエンザイムイムノアッセイプレートをコーティングした:[A]CD81の野生型の大型細胞外ループ(残基113-201)(CD81-LEL)、[B]CD81-LELのE2結合部位にF186S変異を含むCD81-LEL。このプレートをウシ血清アルブミンでブロッキングし、次にE2-hisタンパク質の段階希釈物(5 mg/mlウシ血清アルブミンおよび0.05%ツイーン20を含む50 μlのPBS中)と共に2時間インキュベートした。E2特異的モノクローナル抗体およびホースラディッシュペルオキシダーゼ連結ウサギ坑マウス免疫グロブリン(Dako)を用いて、結合したE2-hisタンパク質を検出した。テトラメチルベンジジン塩酸塩基質を用いてプレートを顕色させ(developed)、1 MのHClの添加により停止させた。吸光度を450 nmで測定し、620 nmのバックグラウンドを差し引いた。野生型E2-hisについて得られた最大吸光度で各タンパク質の吸光度値を割って100を乗じることによって結合率を算出した。
【図31】E2-hisタンパク質で2回免疫後に得られたマウス血清の相同E2-his抗原に対する免疫反応性を示す。スノードロップ(galanthis nivalis)(GNA)レクチンでプレコーティングした96ウェルMaxisorbマイクロタイタープレート(Nunc)にE2-hisタンパク質を捕獲した。免疫マウス血清の段階希釈物を免疫に用いた捕獲対応E2タンパク質変種と共にインキュベートし、結合した免疫グロブリンをホースラディッシュペルオキシダーゼ連結ウサギ坑マウス免疫グロブリンで検出した。テトラメチルベンジジン塩酸塩基質を用いてアッセイを顕色し、1 MのHClの添加により停止させた。Fluostarプレートリーダー(BMG technologies)で450 nmにて吸光度値を測定し、620 nmのバックグラウンドを差し引いた。個々の血清の抗体価を、バックグラウンドの5倍の吸光度を与える血清希釈度として決定した。各免疫原群について最大(上のエラーバー)、75thおよび25thパーセンタイル(それぞれボックスの上端および下端)、中央値(ボックス内の水平線)および最小(下のエラーバー)の力価を示す。
【図32】E2タンパク質変種で2回免疫後に得られたマウス血清のE2-his抗原[A]およびE2 Δ123-his抗原[B]に対する免疫反応性を示す。E2-hisタンパク質およびE2 Δ123-hisタンパク質を96ウェルMaxisorbマイクロタイタープレート上に捕獲し、図31に記載のように個々の血清の抗体価を決定した。各免疫原群について最大(上のエラーバー)、75thおよび25thパーセンタイル(それぞれボックスの上端および下端)、中央値(ボックス内の水平線)および最小(下のエラーバー)の力価を示す。
【図33】E2-hisタンパク質で3回免疫後に得られたマウス血清の相同E2-his抗原に対する免疫反応性を示す。E2-hisタンパク質を96ウェルMaxisorbマイクロタイタープレート上に捕獲し、図31に記載のように個々の血清の抗体価を決定した。各免疫原群について最大(上のエラーバー)、75thおよび25thパーセンタイル(それぞれボックスの上端および下端)、中央値(ボックス内の水平線)および最小(下のエラーバー)の力価を示す。
【図34】E2タンパク質変種で3回免疫後に得られたマウス血清のE2-his抗原[A]およびE2 Δ123-his抗原[B]に対する免疫反応性を示す。E2-hisタンパク質およびE2 Δ123-hisタンパク質を96ウェルMaxisorbマイクロタイタープレート上に捕獲し、図31に記載のように個々の血清の抗体価を決定した。各免疫原群について最大(上のエラーバー)、75thおよび25thパーセンタイル(それぞれボックスの上端および下端)、中央値(ボックス内の水平線)および最小(下のエラーバー)の力価を示す。
【図35】E2タンパク質変種で3回免疫後に得られたマウス血清のCon1 E2RBD-his抗原[A]およびJFH1 E2RBD-myc抗原[B]に対する免疫反応性を示す。Con1タンパク質およびJFH1 RBDタンパク質を96ウェルMaxisorbマイクロタイタープレート上に捕獲し、図31に記載のように個々の血清の抗体価を決定した。各免疫原群について最大(上のエラーバー)、75thおよび25thパーセンタイル(それぞれボックスの上端および下端)、中央値(ボックス内の水平線)および最小(下のエラーバー)の力価を示す。
【図36】E2-hisタンパク質で3回免疫後に得られたマウス血清の80%中和価(log10)を示す。熱不活化した免疫マウス血清の5倍段階希釈物を1時間、37℃にてH77c HCV糖タンパク質偽型HIV-1ルシフェラーゼレポーターウイルスとプレインキュベートし(1 h)、次に、これを48ウェル組織培養プレートのHuh7細胞の単層に添加した。4時間のインキュベーション(37℃、5% CO2)の後、細胞をPBSで洗滌して培地を交換した。さらに3日のインキュベーション(37℃、5% CO2)の後、細胞を溶解して、ルミネッセンス光学部品を取り付けたフルオスターでルシフェラーゼ活性をアッセイした。個々の血清の中和価を、培地のみとプレインキュベートしたHCV糖タンパク質偽型HIV-1ルシフェラーゼレポーターウイルスと比較して80%中和を生じる血清希釈度として決定した。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔発明の詳細な説明〕
少なくとも1つの可変領域、特に本発明者らによって同定された可変領域igVRがその可変領域の少なくとも一部の除去または欠損およびリンカー配列の任意の挿入によって改変されているHCVビリオンの改変E2コア構造は、HCVの多様な株に対する中和抗体を誘導することができるワクチンとしての実用的用途を有する。該改変E2糖タンパク質の結合効率はHCV受容体CD81と野生型の結合を示し、該改変E2糖タンパク質は、効果的なCD81結合に必要とされるE2細胞外ドメインの複雑なコンホメーション変化を模倣し、その後細胞侵入無しに免疫応答を開始することによってHCV感染を治療する手段を提供する。
ある態様では、本発明は、HVR1可変領域、HVR2可変領域およびigVR可変領域を含むHCV-E2受容体結合ドメイン(RBD)を含む改変C型肝炎ウイルス(HCV)E2糖タンパク質であって、前記可変領域の少なくとも1つにおいて可変領域の少なくとも一部が可動性リンカー配列で置き換えられている前記改変HCV E2糖タンパク質を提供する。
【0013】
別の態様では、本発明は、HVR1可変領域、HVR2可変領域およびigVR可変領域を含むHCV-E2受容体結合ドメイン(RBD)を含む改変C型肝炎ウイルス(HCV)E2糖タンパク質であって、HVR2可変領域の少なくとも一部が除去されているかまたは可動性リンカー配列で置き換えられている前記改変HCV E2糖タンパク質を提供する。
さらに別の態様では、本発明は、HVR1可変領域、HVR2可変領域およびigVR可変領域を含むHCV-E2受容体結合ドメイン(RBD)を含む改変C型肝炎ウイルス(HCV)E2糖タンパク質であって、igVR可変領域の少なくとも一部が可動性リンカー配列で置き換えられている前記改変HCV E2糖タンパク質を提供する。
本明細書中における「HVR1」可変領域および「HVR2」可変領域についての言及は2つの可変領域HVR1(384-410)およびHVR2(461-481)についての言及として理解され、一方、本明細書中における“igVR”可変領域についての言及は本発明者らによって同定された遺伝子型間可変領域igVR(570-580)についての言及として理解される。
【0014】
「可動性リンカー配列」という用語は、該改変糖タンパク質におけるシステイン残基間のジスルフィド架橋結合(disulfide bond linkage)を可能にする短い可動性のポリペプチド配列を指すために用いられ、前記ジスルフィド架橋結合は天然すなわち「野生型」のジスルフィド結合(disulfide linkage)の保持、特にHCV CD81受容体とコンホメーション依存性抗体とに結合する能力の保持をもたらす。適切なリンカー配列は総説(George and Heringa, 2002およびArgos, 1990)で議論されており、GlyとSerのように20以下のアミノ酸残基で構成される場合があり、Gly、Ser、Ala、ThrおよびArgからなる配列群より選択されるアミノ酸、より詳細にはGly-およびSer-Ser-Gly(GSSG)を挙げることができ、またそれらを含み得る。適切なリンカー配列は、一例として、以下の配列を含む:
(Gly)2-Ala-(Gly)2、(Gly)5または(Gly)8 (Sabourinら(2007)を参照);
(Gly)6、(Gly)7または(Gly)10 (YangおよびGruebele(2006)を参照);
Gly-Ser-Gly-Ser-Gly (Diptiら(2006)を参照);
(Gly)4 (Anandaraoら(2006)を参照);
Gly-Ala-Gly (Wyattら(1995)を参照);
(Gly)2-Arg-(Gly)2-Ser (Bellamy-McIntyreら(2007)を参照);
(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)n=3〜4 (Araiら(2006)を参照)ならびに
Ser-(Gly)2-Ser-Gly (Bahramiら(2007)を参照)。
【0015】
好ましい配列は、本明細書中で開示される配列Gly-(Ser)2-Glyである。適切なポリペプチドリンカー配列の選択は当業者にとって日常的な実験の問題であって、本発明の改変HCV E2糖タンパク質は本明細書中で開示される特定のリンカー配列に限定されないことが理解される。いずれかの理論に拘束されることを望むことなく、短い可動性リンカーでHVR1、HVR2およびigVRを置き換えることによって、Cys-569〜Cys-581とCys-459〜Cys-486のジスルフィド架橋形成、例えば、保存E2コアドメイン固有のフォールディングまでが該改変糖タンパク質において実質的に保持される。
本明細書中におけるHCV E2受容体結合ドメインの可変領域の少なくとも一部の「欠損」に対する言及は、該可変領域の配列の少なくとも一部の欠損または除去、および場合により欠損した配列を置き換えるための可動性リンカー配列についての言及として理解される。
本発明の改変HCV E2糖タンパク質は、いずれか適切な方法、特に本明細書中の実施例に記載するような適切なDNA欠損構築物の発現による組換え産物の形態での該改変糖タンパク質の調製を含む方法によって調製することができる。
【0016】
好ましくは、コアE2受容体結合ドメインの第2および第3の可変領域であるHVR2およびigVRが、その可変領域内の少なくとも一部分の残基を除去して可動性リンカー配列を挿入することによって改変される。HVR2領域の少なくとも一部の欠損は、他の可変領域の欠損と組み合わせて、実質的にE1E2ヘテロ二量化を減少させることが見出された。
更なる態様では、3つの可変領域の全てが、それら可変部内の残基の少なくとも一部分を除去してリンカー配列を挿入することにより改変される。
既にHVR1の欠損とHVR2の欠損とを含むE2糖タンパク質からの遺伝子型間可変領域(igVR)の欠損は、HVR1とHVR2の同時欠損のみと比べてCD81への結合を向上させる。
HVR1、HVR2およびigVRはHuh7細胞へのE1E2-pp仲介性ウイルス侵入に全て必要とされることが本発明者らによって見出された。少なくともHVR1、HVR2およびigVRの各々の欠損を含むE1E2-ppは野生型レベルの組換えCD81結合を保持することが見出された。これにより、(a)HCVビリオンの細胞結合を模倣する能力、および(b)免疫性のおとりであり得る超可変免疫優性領域に患者を曝露することなく免疫応答を開始する能力における有意な改善が提示される。
好ましい態様では、全3つの可変領域を欠失して、CD81結合部位に関与する少なくとも3つの不連続性結合因子を集合させるために必要とされるコアE2フォールディングドメインを保持することができる。E2受容体結合ドメインからのHVR1欠損、HVR2欠損およびigVR欠損の様々な組合せの更なる利点は、免疫原としての使用に適する可溶型のE2コアドメインが得られることである。
【0017】
本発明はまた、上で大まかに記載する改変HCV E2糖タンパク質を医薬として許容される担体または賦形剤と共に含む組成物も提供する。
そのような組成物は、ワクチン組成物として、好ましくはアジュバントを含めて調剤することができる。
慣習的な医薬として許容される担体、賦形剤、緩衝剤または希釈剤を本発明のワクチン組成物に含めることができる。概して、本発明のワクチン組成物は、免疫学的有効量の改変HCV E2糖タンパク質と任意のアジュバントを1以上の慣習的な医薬として許容される担体および/または希釈剤と併せて含むであろう。アジュバントの広範囲であるが網羅的でない一覧を、CoxおよびCoulter“Advances in Adjuvant Technology and Application”(Animal Parasite Control Utilizing Biotechnology, Chapter 4, Ed. Young, W.K., CRC Press 1992)、ならびにCoxおよびCoulter“Adjuvants - A Classification and Review of Their Modes of Action”(Vaccine 15(3), 248-256, 1997)で見ることができる。本明細書中で用いられる「医薬として許容される担体および/または希釈剤」には、ありとあらゆる溶媒、分散媒、水溶液、コーティング剤、抗菌剤、坑真菌剤、等張剤、吸収遅延剤などが含まれる。医薬作用物質のためのそのような媒質および薬剤の使用については、本技術分野で周知であり、また一例としてRemington's Pharmaceutical Sciences, 18th Edition(Mack Publishing Company, Pennsylvania, U.S.A)に記載されている。
【0018】
さらに別の態様では、本発明は、上で大まかに記載する改変HCV E2糖タンパク質の有効量を患者に投与することを含む、患者に免疫応答を誘導する方法も提供する。
本態様では、本発明は、上で大まかに記載する改変HCV E2糖タンパク質の有効量を患者に投与することを含む、患者のHCV感染の予防的処置または治療的処置のための方法を含む。
本明細書中の「処置」についての言及は、その最も広い事情に理解される。従って、「予防的処置」という用語は、患者を感染から守るための処置または感染の可能性を減少させるための処置を含む。同様に、感染の「治療的処置」という用語は、感染から完全回復するまで患者を治療することを必ずしも意味するのではなく、感染の症状の改善のほかに感染の重症度の低下または感染の排除を含む。
本発明の改変HCV E2糖タンパク質は有効量で投与される。「有効量」とは、少なくとも部分的に所望の応答を達成するため、あるいは発病を遅延させるため、進行を阻害するため、または感染の発病もしくは進行を全体として中止させるために必要な量を意味する。有効量は、処置される個体の健康および身体状態、処置される個体の人種的背景、所望される保護の程度、該組成物の剤形、医学的状態の評価、ならびにその他関連性のある要素に依存して変動する。有効量は、通例の試行を通じて決定することができる比較的広い範囲に入るであろうことが予想される。必要に応じて、有効量の投与を1回または複数回繰り返すことができる。投与される実際量は、処置される感染症の性質と活性免疫原が投与される速度の双方によって決定されるであろう。
好ましくは患者がヒトであるが、本発明は霊長類および実験室試験動物(例えば、マウス、ウサギ、ラット、モルモット)を含む他の哺乳動物患者の治療ならびに/または予防にまでわたる。
【0019】
本発明によると、改変HCV E2糖タンパク質が好ましくは非経口投与経路によって患者に投与される。非経口投与は、消化管を通らない(つまり、経腸でない)投与経路のいずれをも含み、注射、点滴などによる投与が挙げられる。注射による投与は、一例として、静脈へ(静脈内)、動脈へ(動脈内)、筋肉へ(筋肉内)および皮膚の下へ(皮下)のものを含む。改変HCV E2糖タンパク質は、所望の医薬効果を得るのに充分な用量で徐放製剤または持続放出製剤にて、例えば皮下、皮内または筋肉内に投与されてもよい。
非経口投与に適する組成物は活性成分の無菌水性製剤を好都合に含み、前記製剤は好ましくはレシピエントの血液と等張である。この水性製剤は、適切な分散剤または湿潤剤と懸濁剤を用いて既知の方法に従って調剤することができる。無菌注射製剤は、例えばポリエチレングリコールと乳酸の溶液のように、非経口的に許容される無毒の希釈剤または溶媒の無菌注射溶液または無菌注射懸濁液であってもよい。許容されるビヒクルおよび溶媒の中で使用し得るものは、水、リンガー溶液、適切な炭水化物(例えば、スクロース、マルトース、トレハロース、グルコース)および等張食塩水である。加えて、無菌固定油が溶媒または懸濁媒質として好都合に使用される。この目的のため、合成のモノグリセリドまたはジグリセリドを含む刺激の少ない固定油のいずれをも使用することができる。加えて、オレイン酸のような脂肪酸類は注射可能な調製品における使用を提供する。
更なる態様では、本発明は、患者の免疫応答を誘導することにおける、または患者の免疫応答を誘導するための医薬の製造における、上で大まかに記載する改変HCV E2糖タンパク質の使用を提供する。
【0020】
更なる態様では、本発明は、患者のHCV感染の予防的処置または治療的処置における、または患者のHCV感染の予防的処置または治療的処置のための医薬の製造における、上で大まかに記載する改変HCV E2糖タンパク質の使用を含む。
この更なる態様では、本発明は、上で大まかに記載する改変HCV E2糖タンパク質を含む、患者の免疫応答を誘導するための薬剤を提供する。
この更なる態様では、本発明は、上で大まかに記載する改変HCV E2糖タンパク質を含む、患者のHCV感染の予防的処置または治療的処置のための薬剤を含む。
本発明のある実施態様では、少なくとも領域igVRがその領域における残基の欠損と可動性リンカー配列での置換えを受けた組換えE2糖タンパク質はコンホメーション依存性抗体による認識を向上させることが見出された。加えて、「野生型」E2糖タンパク質との比較研究において、領域igVRの改変は、単独またはHVR1およびHVR2との種々の組合せににおいおて、野生型のE2糖タンパク質の結合性にほぼ等しい全長CD81-LEL(ヒトテトラスパニンCD81の長い細胞外ループ)との結合を示すことが見出された。
【0021】
本発明者らにより、6つの主要な遺伝子型にわたる多種多様なE2糖タンパク質配列のアラインメントが残基560〜581の間に新規な第3の可変領域“igVR”を明らかにしたことが示された。これにより、“igVR”が異なる遺伝子型にわたっては最大の可変性を示すが、一方で、遺伝子型の内で比較的保存されているので厳密には超可変領域でなく、免疫淘汰圧を受けてなさそうであることが示唆される。さらに、それは、この領域内に位置するグルコシル化部位を移動させるが常に維持する一連の挿入または欠損で構成される。本発明者らは、可変領域HVR2と“igVR”の双方が保存システイン残基にフランキングされていることも観察しており、それらの可変領域が前記保存システイン残基間のジスルフィド結合によって安定化された溶媒露出ループを形成し得ると提唱してきた。
本研究内で描写するように、超可変領域はE2糖タンパク質が「開」構造と「閉」構造の間を移行することを可能にする可動性の溶媒露出サブドメインを形成し、前記「開」構造はコアE2ドメイン内に位置する保存CD81結合決定基を露出させることによってCD81結合に対してさらに受容性であることを本発明者らは提唱してきた。実際、CD81結合に際してE2糖タンパク質内のコンホメーション変化が以前に観察されている。加えて、E2糖タンパク質に対する非中和抗体の結合は、中和抗体に対するE2糖タンパク質の感受性を減少させることが実証されており、非中和抗体が前記表面露出超可変領域の可動性を阻害することによってE2コアドメイン内に位置する保存エピトープに対する接近を遮蔽するモデルと矛盾しない。
【0022】
従って、このことは、改変E2コアドメインがE2糖タンパク質内の保存エピトープ(CD81結合決定基を含む)に対する中和抗体を誘導するための有望なワクチン候補を表すことを示唆している。前記保存エピトープは中和されなければHCV複製の間の糖タンパク質複合体の表面で免疫学的なおとりとして作用し得るこれらの表面露出可変領域によって塞がれる。
本発明は、上で大まかに記載する改変HCV E2糖タンパク質に対して産生される単離抗体も提供する。
「抗体」という用語は本明細書中で広く用いられ、改変HCV E2糖タンパク質に特異的に結合するモノクローナル抗体とポリクローナル抗体の双方だけでなく、そのような抗体の抗原結合フラグメント(例えば、改変HCV E2糖タンパク質に特異的な結合活性を保持する抗体のFabフラグメント、F(ab1)2フラグメント、FdフラグメントおよびFvフラグメントが挙げられる)も含む。
所望の特異性を有するモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体は、本技術分野で周知の方法を用いて得ることができる(例えば、HarlowおよびLane“Antibodies, A laboratory manual”Cold Spring Harbor Laboratory Press(1988)を参照)。抗体およびその抗原結合フラグメントを調製する方法は国際公開第WO 02/22155号広報にも記載されている。
【0023】
本発明は、上で記載する抗体の有効量を患者に投与することを含む、患者のHCV感染を予防的処置または治療的処置するための方法も提供する。従って、この方法は患者の受動免疫療法を提供する。
先に記載したように、本発明は、患者のHCV感染の予防的処置もしくは治療的処置における、または患者のHCV感染の予防的処置もしくは治療的処置のための医薬の製造における、上で大まかに記載する抗体の使用も提供する。
この態様ではまた、本発明は、上で大まかに記載する抗体を含む、患者のHCV感染の予防的処置または治療的処置のための薬剤も提供する。
さらに、本発明は上で大まかに記載する抗体のHCV感染の診断における使用を提供する。この態様では、本発明は、抗体-抗原複合体の形成を可能にする条件下にて上で大まかに記載する抗体と患者由来の生物学的サンプルを接触させることおよび抗体-抗原複合体を検出することを含み、前記抗体-抗原複合体の形成は前記生物学的サンプルにおけるHCVの存在を示す、患者のHCV感染を検出する方法を提供する。
好ましくは、抗体が検出可能に標識されている。適切な標識は本技術分野で周知であり、例えば、酵素、放射性同位体、蛍光化合物、コロイド金属、化学発光化合物、燐光発光化合物および生物発光化合物が挙げられる。好ましくは、生物学的サンプルが血液サンプルのような患者由来の体液サンプルである。
本発明の改変HCV E2糖タンパク質は、例えば小分子スクリーニング技術を含む創薬技術に用いることもできる。
本発明は以下の非限定的実施例によってさらに説明される。
【実施例1】
【0024】
本実施例で用いた材料および方法を以下に記載する。
[1.E1E2糖タンパク質の構造および機能における個々の可変領域の役割]
種々の可変欠損変異体についての結果を表1に要約する。
[細胞内E1E2前駆体のフォールディングとヘテロ二量化]
細胞内E1E2生合成における個々の可変領域の役割を調べるため、一重可変領域欠損構築物でトランスフェクションした293T細胞の代謝的標識細胞可溶化物を、E1エピトープおよび/またはE2エピトープに反応性の抗体を用いて免疫沈降させた。これら調製物を非還元条件下と還元条件下の両方で分析して、先に観察された共有結合凝集体の細胞内大集団の中に存在する非共有結合性E1E2ヘテロ二量体を特徴付けた。
坑E1E2ポリクローナル抗体(779)を用いた免疫沈降はE1(〜30 kDa)およびE2(〜70 kDa)糖タンパク質の細胞内総集団を検出し、一重可変領域欠損構築物の各々について生じる効率的な発現およびポリプロテインからの切断を示した(図1Aを参照)。変異体E2糖タンパク質は、野生型よりも小さく一定でない分子量を示した:HVR1con<HVR2および“igVR”<HVR1<WT。これは、HVR1con欠損内に存在することが予測される2つのグリコシル化部位、HVR2および“igVR”の各々の中の1つのグリコシル化部位ならびにHVR1欠損内に存在しないグリコシル化部位の喪失と一致する(図2)。しかしながら、表2に予想されるE2糖タンパク質の骨格の分子量を確かめるのに、これらE2糖タンパク質の脱グリコシル化が必要とされる。〜100 kDaまで移動しているバンドは、宿主のシグナルペプチダーゼによって切断されていないE1E2ポリプロテインを表し、一重HVR2欠損構築物と一重“igVR”欠損構築物の双方でよりはっきりしている(図1A)。これは、HVR2変異体および“igVR”変異体について観察される細胞内総E1およびE2のレベルの低下に反映され、これらの欠損が効果的なポリプロテインプロセッシングであり得ることを示唆している。
コンホメーション非依存性坑E1モノクローナル抗体(A4)は、還元条件下または非還元条件下で、変異体構築物と野生型構築物の両方について〜30 kDaおよび〜27 kDaにE1ダブレットを沈降させた(図1B)。このE1ダブレットは、先に観察された選択的E1グリコシル化状態またはメッセンジャーRNAスプライシングアイソフォームのどちらかを表している。さらに、E1は非還元条件下で低レベルの野生型E2糖タンパク質を共沈させたが、一方でE1は還元条件下では野生型E2糖タンパク質と変異体E2タンパク質の両方を効率的に共沈させた。これは、A4がE1エピトープを認識し、共有結合している細胞内E1E2複合体内でE1エピトープがより露出していることを示す。
【0025】
コンホメーション非依存性坑E2モノクローナル抗体(A11)は、個々の可変領域欠損構築物の全てについて細胞内E2糖タンパク質の発現を検出した(図1C)。しかしながら、HVR1con欠損またはHVR1欠損を含む変異体E2糖タンパク質のみ、非還元条件下および還元条件下で検出可能な量のE1を共沈させた。これは、HVR2欠損と“igVR”欠損のそれぞれが、細胞内E1E2ヘテロ二量体の形成を直接的にまたは間接的に妨げていることを示す。特に、E2糖タンパク質発現がHVR2欠損と“igVR”欠損の両変異体においてA11により野生型レベルで検出されたことから、このヘテロ二量化の減少は、HVR2欠損と“igVR”欠損とについて観察される低い細胞内総E1およびE2のためではない。加えて、E2は概して低レベルのE1を特に還元条件下で共沈させ、このことは、細胞内E1E2ヘテロ二量体複合体においてA11エピトープが部分的に塞がれることを示唆している。
コンホメーション依存性坑E2モノクローナル抗体(H53)はHCVビリオンの表面上の天然E2を認識することが示されており、よって、このE2種と共沈するE1の量は、機能的非共有結合性E1E2ヘテロ二量体形成の割合についての良い指標である。H53を用いた免疫沈降は、個々の可変領域欠損構築物の全てについて細胞内E2糖タンパク質の発現を検出した(図1D)。これは、挿入したGly-Ser-Ser-Glyリンカーモチーフが、これらE2糖タンパク質内に充分な可動性を提供してコンホメーション依存性エピトープを提示するのに必要とされる天然E2糖タンパク質の固有のフォールディングを保持することを示す。しかしながら、HVR2欠損または“igVR”欠損を含む細胞内E2糖タンパク質がE1を共沈するのに失敗したことは、それら領域が非共有結合的会合E1E2ヘテロ二量体の細胞内アセンブリにおいて直接的または間接的に必要とされることを示唆している。
【0026】
[E1E2糖タンパク質の成熟化と偽型HIV-1粒子への組み込み]
E1E2糖タンパク質成熟化における個々の可変領域の役割を調べるため、ERから脱出して分泌経路を通過する少量のE1およびE2を、これらの複合体を以前に記載された偽型HIV-1粒子へ組み込むことによって濃縮した。これら代謝的標識したE1E2偽型HIV-1粒子を溶解し、コンホメーション依存性坑E2モノクローナル抗体(H53)とHIV-1感染個体由来のIgG(IgG14)を用いて免疫沈降させた。
IgG14を用いた免疫沈降は、一重可変領域欠損構築物がHIV-1構造タンパク質Pr55Gag、p17MA、p24CAまたはp66RTのプロセッシングとビリオン組み込みに影響を及ぼしたことを実証した(図3B)。H53を用いた免疫沈降は、先に記載するような種々の複合型および混成型の炭水化物修飾を含む成熟糖タンパク質に典型的な拡散した分子量バンド(〜70-90 kDa)として、ビリオンに組み込まれたE2糖タンパク質を検出した(図3A)。種々の変異体E2糖タンパク質は、細胞内データについて記載される通り、それら欠損した領域内に位置するグリコシル化部位の喪失を反映して、その相対的分子量において更なるバリエーションを示した(HVR1con<HVR2および“igVR”<HVR1<WT)。全ての変異体E2糖タンパク質をE1E2偽型HIV-1粒子へおおよそ野生型レベルで組み込んだが、有意なE2バンドの減少を示したHVR1conを除いた。これは、E2フォールディング、成熟化および偽型HIV-1粒子への組み込みの完結に対してHRV1に隣接する保存領域が必要とされることを示唆している。
H53を用いた免疫沈降も〜33 kDaと〜31kDa別の低分子量バンドとに移動するタンパク質種を検出し、ビリオン組み込みE1糖タンパク質もダブレットとして移動することを最初に示唆した(図3A)。しかしながら、2つの独立する実験にわたって、低分子量バンドが負の対照(空のもの)の非特異的バンドと共に移動し、よって大きいほうの分子量バンドのみがE1を表す可能性があった。ビリオン組み込みE1糖タンパク質(〜33 kDa)も、先に観察されたように分泌経路の通過の間に獲得した1つまたは2つのE1グリコシル化部位における付加的な炭水化物修飾を反映して、細胞内の種(〜30 kDa)よりもゆっくり移動する。さらに、個別のHVR2欠損と“igVR”欠損を含むビリオン組み込みE2糖タンパク質は検出可能なレベルでE1を共沈することができず、これらの可変領域が機能的E1E2ヘテロ二量体の形成において直接的または間接的に必要とされることを示した。
【0027】
[Huh7細胞へのE1E2仲介性侵入]
機能的非共有結合性E1E2ヘテロ二量体の形成はHuh-7細胞へのE1E2仲介性侵入にとって重大な意味を持つことが示された。ウイルス侵入における個々の可変領域の役割を調べる目的で、先に記載するように、単欠損構築物を用いてE1E2偽型HIV-1粒子を作成してHuh-7細胞へ感染させた。予測したように、HVR1con欠損は、上で観察された偽型HIV-1ビリオンへのE2糖タンパク質組み込みの遅延のため、侵入の全損を与えた(図4)。同様に、HVR2欠損と“igVR”欠損は、機能的E1E2ヘテロ二量体複合体の妨害のため、侵入能力がなかった。しかしながら、HVR1欠損は、野生型のヘテロ二量化レベルとHIV-1ビリオンへのE1E2糖タンパク質組み込みの両方を保持しているにもかかわらず侵入の全損を与え、この領域がE1E2仲介性ウイルス侵入において直接の役割を有する可能性が示唆された。
【0028】
[CD81-LEL結合]
CD81受容体への結合を仲介するのにE2糖タンパク質のみで充分であることが先に実証されており、従って、ヘテロ二量化および/またはウイルス侵入の喪失を示すにもかかわらず、細胞内E2糖タンパク質とビリオン組み込み変異体E2糖タンパク質の両方を、CD81の大型細胞外ループ(LEL残基113-201)に結合する能力について調べた。この実験は、細胞溶解物とウイルス溶解物の両方を先に記載された固相CD81 MBP-LEL(残基113-201)に応用することを伴った。このデータを、非還元条件下でコンホメーション依存性坑E2モノクローナル抗体H53を用いて沈殿させSDS-PAGEにより観察された各ベクターからの単量体E2発現量に対して正規化した;図1D(細胞内)および図3A(ビリオン組み込み)。
一重可変領域欠損を含む全ての細胞外E2糖タンパク質前駆体は、結合の全損を実証したHVR1conを除いて、野生型レベルのCD81-LEL結合を示した(図5A)。これは、挿入したGly-Ser-Ser-GlyリンカーモチーフがHVR1欠損E2糖タンパク質、HVR2欠損E2糖タンパク質および“igVR”欠損E2糖タンパク質の内部に充分な可動性を提供してE2 CD81結合部位を形成することを示しており、これら個々の可変領域がこの機能において必要とされないことを示唆している。また、HVR1に隣接する保存領域を欠く細胞内E2糖タンパク質前駆体(HVR1con)が、H53により認識されるコンホメーション依存性エピトープを維持しているにもかかわらずCD81-LEL結合部位を形成できないことも示す。HVR2欠損と“igVR”欠損の両方の細胞内形態は、野生型と比べて最大CD81-LEL結合の更なる増強を見せたが(図5A)全体的な結合曲線における有意なシフトを示さず、よって、これらの可変領域がCD81-LEL結合を調節するかどうか決定するために追加の独立した実験が必要とされる。
予測したように、HVR1con欠損を含むビリオン組み込みE2糖タンパク質は、そのE1E2偽型HIV-1粒子への組み込みの減少と上記細胞内データの両方を反映して、CD81-LEL結合を仲介できなかった(図5B)。対照的に、HVR1con欠損、HVR2欠損または“igVR”欠損を含むビリオン組み込みE2糖タンパク質は全て少なくとも野生型のCD81-LEL結合レベルを保持しており、これらの変異体E2糖タンパク質が成熟後でもCD81結合部位を保持していることを示していた。興味深いことに、HVR1欠損を含むビリオン組み込みE2糖タンパク質は、野生型と比べて最大CD81-LEL結合の更なる増強を実証して、全体的な結合曲線においておよそ4倍の増加を示した(図5B)。これは、HVR1が、この機能に必要とされていないにもかかわらずビリオン組み込みE2糖タンパク質の内部でCD81-LEL結合をネガティブに調節していることを示唆する。HVR1欠損を含む細胞内E2糖タンパク質前駆体において観察されたこの効果の欠如(図5A)は、先に観察されたように、分泌経路を通じた糖タンパク質成熟化の間に起こるE1E2フォールディングとCD結合部位とにおける変化に反映する。
【0029】
[2.E1E2糖タンパク質の構造および機能に関する伸長リンカーの効果]
[細胞内E1E2前駆体のフォールディングおよびヘテロ二量化]
個々の可変領域欠損を含むE2糖タンパク質のフォールディングを強める目的で、元の構築物から欠損させた幾つかの保存システイン近位残基を再導入することによってGly-Ser-Ser-Glyリンカーを伸長させた。特に、この一連の改変欠損構築物は、この領域の高い可変性のためHVR1対応物を有していない。これらの構築物を、293T細胞内でのE1またはE2糖タンパク質発現およびヘテロ二量化についてパルスチェイス標識と免疫沈降により分析した。
坑E1E2ポリクローナル抗体(779)を用いた免疫沈降は、各伸長リンカー欠損構築物について起こった細胞内発現とE1(〜30 kDa)糖タンパク質およびE2(〜70 kDa)糖タンパク質のポリプロテインからの切断とを検出した(図6A)。ポリプロテイン切断はHVR2 link構築物と“igVR link”構築物において僅かに効率的でないように思われ、これらの欠損がポリプロテインのプロセッシングに影響を及ぼす可能性があることを示唆していた。伸長リンカーは元の構築物から欠損したグリコシル化部位を復元させておらず、よって変異体E2糖タンパク質は、それらグリカンの不在によって与えられた野生型よりも低く一定でない分子量(kDa)を再び示した:HVR1con link<HVR2 linkおよび“igVR link”<WT。しかしながら、表2に予想されるこれらE2糖タンパク質の主鎖の分子量を変化させるのに、これらE2糖タンパク質の脱グリコシル化が必要とされるであろう。
坑E1モノクローナル抗体(A4)は、全ての伸長リンカー構築物についてE1ダブレット(〜30 kDaおよび〜27 kDa)の存在を検出した(図6B)。E1は、非還元条件下で野生型E2糖タンパク質を共沈させるのに失敗したが、非共有結合性E1に対するA4抗体の低感受性を反映して、還元条件下では変異体E2と野生型E2の両方を共沈させた。コンホメーション非依存性坑E2モノクローナル抗体(A11)を用いた沈降は、各伸長リンカー構築物について野生型E2糖タンパク質の発現を検出したが、HVR1con link欠損のみが検出可能な量のE1を共沈させた(図6C)。コンホメーション依存性モノクローナル抗体(H53)も各伸長リンカー構築物について野生型レベルの細胞内E2糖タンパク質を沈降させて、これら変異体がこのコンホメーション依存性エピトープを提示するのに必要とされる天然E2糖タンパク質の固有のフォールディング特性を保持することを示した(図6D)。さらに、伸長“igVR”リンカーは野生型レベルでE1との共沈を回復し、この追加のリンカー領域が非共有結合性E1E2ヘテロ二量体の細胞内アセンブリに対して直接的または間接的に必要とされることを示唆していた。しかしながら、特に、この効果は伸長HVR2リンカー構築物については観察されなかった。
【0030】
[E1E2糖タンパク質の成熟化および偽型HIV-1粒子への組み込み]
伸長リンカーがE1E2糖タンパク質の成熟化およびビリオン組み込みを変化させたか否かを調べるため、先に記載したように、溶解とコンホメーション依存性坑E2モノクローナル抗体(H53)およびHIV-1感染個体由来のIgG(IgG14)を用いた免疫沈降とに先立って、改変した単欠損をE1E2偽型HIV-1粒子に組み込んだ。
IgG14を用いた免疫沈降は、いずれの改変単欠損構築物もHIV-1構造タンパク質のプロセッシングとビリオン組み込みとに影響を及ぼさなかったことを示した(図7B)。H53を用いた沈降は、成熟ビリオン組み込みE2糖タンパク質に典型的な拡散した分子量バンド(〜70-90 kDa)を再度検出した(図7A)。ビリオン組み込み変異体E2糖タンパク質も、細胞内データについて記載されたように、1つまたは2つのグリコシル化部位の喪失によって与えられた野生型種よりも少し低い分子量(kDa)を示した。H53を用いた沈降は、元のHVR1con欠損構築物に不在の4つの保存システイン近位残基を再導入下にもかかわらず、HVR1con link欠損を含むE2糖タンパク質のビリオン組み込みの減少を再度実証した。HVR1con link欠損は、野生型レベルのE2糖タンパク質の偽型HIV-1粒子への組み込みを示したが、細胞内データを反映して依然として検出可能量のE1を共沈させることができなかった(, yet still failed to co-precipitate a detectable amount of E1 reflective of the intracellular data.)。対照的に、伸長“igVR”リンカーを含むウイルス組み込みE2糖タンパク質は野生型レベルのE1を共沈させ、この領域が機能的E1E2ヘテロ二量体の形成において直接的または間接的に必要とされることを示唆した。
【0031】
[Huh7細胞へのE1E2仲介性侵入]
これらの伸長リンカーがHuh-7細胞へのE1E2仲介性侵入を付与したか否かを調べるため、これら改変した単欠損構築物を用いて、先に記載したようにE1E2偽型HIV-1粒子を作成してHuh-7細胞へ感染させた。予測したように、HVR1con link欠損構築物またはHVR2 link欠損構築物における伸長リンカーは侵入活性を回復せず、ビリオンへ組み込まれたかまたはヘテロ二量体であったこれらの変異体E2糖タンパク質のそれぞれについて観察された失敗と一貫性があった(図8)。しかしながら、伸長“igVR”リンカーを含むウイルス組み込みE2糖タンパク質は負の対照(空のもの)と比べて侵入活性の有意な復帰(〜8倍)を示し、そのE1とのヘテロ二量化の回復と一貫性があった。しかしながら、注目すべきは、“igVR link”が野生型(〜10倍)と比べて減少した侵入活性をいまだに示したことである。
【0032】
[CD81-LEL結合]
これらの伸長リンカーを含む細胞内またはウイルス組み込みE2糖タンパク質がCD81-LEL結合を変化させるか否かを調べるため、細胞溶解物とウイルス溶解物の両方を先に記載した固相CD81 MBP-LEL(残基113-201)結合アッセイに用いた。このデータを、H53を用いて沈降させ非還元条件下でSDS-PAGEにより観察した各ベクターからの単量体E2発現量に対して正規化した;図6D(細胞内)および図7A(ビリオン組み込み)。伸長リンカーは、いまだに元のHVR2欠損構築物または“igVR”欠損構築物によって示された野生型レベルかまたは僅かに増強した結合を示したことから、HVR2 link欠損または“igVR link”欠損を含む細胞内E2糖タンパク質のCD81-LEL結合能力を変えるように思われなかった(図9A)。特に、HVR1con link欠損を含む細胞内E2糖タンパク質は負の対照(空のもの)と比べてCD81-LEL結合のほんの少しの回復を示し、この構築物へ再導入された保存システイン近位残基がCD81結合部位の形成に直接的または間接的に貢献し得ることを示唆した。しかしながら、HVR1con link欠損を含むビリオン組み込みE2糖タンパク質はその減少したCD81-LEL結合活性さえも喪失し(図9B)、HIV-1ビリオンへの組み込みの遅延と一貫性があった。HVR2 link欠損構築物または“igVR link”欠損構築物を含むビリオン組み込みE2糖タンパク質はウイルス溶解物においてCD81-LEL結合を維持したが、そのCD81-LEL結合能力について2つの独立するアッセイにわたり矛盾する結果を生じ(図9Bおよび図9C)、従って、これらの結果を検証するために第三の独立したアッセイが必要とされる。
【0033】
[3.E1E2糖タンパク質の構造および機能に関する多重可変領域欠損の効果]
[細胞内E1E2前駆体のフォールディングおよびヘテロ二量化]
E1とのヘテロ二量化の喪失および/またはウイルス侵入の喪失にもかかわらず、コンホメーション依存性モノクローナル抗体H53およびCD81受容体の大型細胞外ループ(LEL)に対する結合によって認識されるように、HVR1、HVR2および“igVR”は細胞内E2糖タンパク質とビリオン組み込みE2糖タンパク質の両方からその固有のフォールディング特性を破壊することなく個々に欠損できることを上記知見は示す。これらの可変領域をさらに特徴付けるためと保存E2コアドメインを描写するために、複数の欠損をE1E2糖タンパク質へ導入して、293T細胞内でパルスチェイス代謝的標識および免疫沈降によって分析した。坑E1E2ポリクローナル抗体(779)を用いた沈降は、多重可変領域欠損構築物の各々について生じた効率的な発現とポリプロテインからのE1(〜30 kDa)糖タンパク質およびE2(〜70 kDa)糖タンパク質の切断を示した(図10A)。これらの変異体E2糖タンパク質も、各HVR2欠損および/または“igVR”欠損の内部のグリコシル化部位の喪失に対応して、野生型種よりも速く移動した:HVR1+2+igVRおよびHVR2+igVR<HVR1+2およびHVR1+igVR<WT。しかしながら、表3に予想されるこれらの糖タンパク質の主鎖の分子量を確かめるのに、これらの糖タンパク質の脱グリコシル化が必要とされる。坑E1モノクローナル抗体(A4)は、可変領域欠損構築物の各々についてE1ダブレット(〜30 kDaおよび〜27 kDa)の存在を再度検出した(図10B)。E1は還元条件下で野生型E2糖タンパク質と変異体E2糖タンパク質の両方を共沈させ、共有結合性E1E2ヘテロ二量体の形成を実証した。非還元条件下で野生型E1E2ヘテロ二量体を検出できなかったことは、非共有結合性E1糖タンパク質に対するA4の低い感受性を反映している。
【0034】
対照的に、前記欠損構築物の各々について野生型レベルの細胞内E2糖タンパク質発現を示すにもかかわらず、コンホメーション非依存性坑E2モノクローナル抗体(A11)は、E1を共沈させる前記多重可変欠損を含むE2糖タンパク質を還元条件下または非還元条件下で検出しなかった(図10C)。コンホメーション依存性坑E2モノクローナル抗体H53も野生型レベルの変異体E2糖タンパク質を沈降させた(図10D)。これは、挿入したGly-Ser-Ser-Glyリンカーモチーフが、多重可変領域欠損の導入にもかかわらず、これら変異体E2糖タンパク質の内部に充分な可動性を提供してこのコンホメーション依存性エピトープを提示することを示す(図10D)。これらの変異体E2糖タンパク質もE1とのヘテロ二量化の喪失を示し、上で観察されたようにE1E2ヘテロ二量体のアセンブリにおいて必要とされるHVR2および/または“igVR”の不在と一致した。
【0035】
[E1E2糖タンパク質の成熟化および偽型HIV-1粒子への組み込み]
多重可変領域欠損がE1E2糖タンパク質の成熟化を変化させるか否かを調べるため、先に記載されたように、多重可変領域欠損をE1E2偽型HIV-1粒子へ導入し、コンホメーション依存性坑E2モノクローナル抗体H53およびHIV-1感染個体由来のIgG(IgG14)を用いる免疫沈降に先立って溶解した。
IgG14沈降は、多重可変欠損のいずれもがHIV-1構造タンパク質のプロセッシングおよびビリオン組み込みに影響を及ぼさなかったことを示した(図11B)。H53を用いた免疫沈降は、成熟ビリオン組み込みE2糖タンパク質に典型的な拡散バンド(〜70-90 kDa)としてE2を再度検出し(図11A)、多重可変領域欠損を含むE2糖タンパク質がHIV-1ビリオンへ野生型レベルで組み込まれることを示した。これらの変異体E2糖タンパク質も、細胞内データについて記載されるようにHVR2欠損および/または“igVR”欠損の内部の1つまたは2つのグリコシル化部位の喪失を反映して、野生型種よりも少しだけ速く移動した。これは、多重可変領域欠損を含むビリオン組み込みE2糖タンパク質が成熟後でさえコンホメーション依存性H53エピトープを保持することを示唆している。また一方、これらの変異体E2糖タンパク質のいずれもが、細胞内データにおいて観察された検出可能量のE1を共沈しなかった。
[Huh7細胞へのE1E2仲介性侵入]
予測したように、多重可変領域欠損を含むE1E2偽型HIV-1粒子はHuh7細胞へ侵入する能力がなかった(図12)。
【0036】
[CD81-LEL結合]
ヘテロ二量化およびE1E2仲介性ウイルス侵入の喪失にもかかわらず、多重可変領域欠損を含む細胞内E2糖タンパク質およびウイルス組み込みE2糖タンパク質の双方を、先に記載したように固相CD81 MBP-LEL(残基113-201)に細胞溶解物とウイルス溶解物の両方を施すことによって、そのCD81-LELとの結合能力について調べた。このデータを、H53を用いて沈降させて非還元条件下でSDS-PAGEによって観察した各ベクターからの単量体E2発現量について正規化した;図10D(細胞内)および図11A(ビリオンから取り出した)。
多重可変領域欠損を含む細胞内E2糖タンパク質は全て野生型レベルのCD81-LEL結合を示した(図13A)。これは、Gly-Ser-Ser-Glyリンカーモチーフがこれらの変異体E2糖タンパク質の内部に充分な可動性を提供して前駆体CD81受容体結合部位を形成することを示している。加えて、HVR2および“igVR”二重欠損を含むE2糖タンパク質(pE1E2 Δ23)は、2つの独立した実験にわたって最大CD81結合の更なる増強を示した。これは個々のHVR2変異体および“igVR”変異体において観察された同じ効果と一致しているが、同様に、全体的な結合曲線は増加しておらず、よってこの効果の統計的有意性を決定するために追加の独立したアッセイが必要とされる。
多重可変領域欠損を含むビリオン組み込みE2糖タンパク質は全てCD81-LEL結合を維持し(図13B)、挿入リンカーモチーフが、成熟化の後でさえCD81結合部位を提示するそれら糖タンパク質の内部に充分な可動性を提供することを再度示した。これにより、HVR1、HVR2および“igVR”はこの機能に必要とされないことが再度示唆され、細胞内データと個々の可変領域欠損について得られた細胞内データの両方を反映した。重要なことに、これにより、三重可変領域欠損を含むE2糖タンパク質はCD81-LEL結合に必要とされる全ての構造的および機能的な決定基を包含し、従って最小E2コアドメインを構成することが実証される。これらのビリオンから取り出された二重または三重可変領域欠損を含むE2糖タンパク質も野生型と比べて最大CD81-LEL結合活性の僅かな減少または増強をそれぞれ示したが、一方で、これら変異体のいずれもが全体的な結合曲線における有意な増加を示さなかった。
【0037】
[4.E2受容体結合ドメイン(E2 RBD661myc)の構造および機能における可変領域の役割]
[フォールディングおよび分泌]
上記の結果は、コンホメーション依存性モノクローナル抗体H53またはCD81-LELとの結合によって認識されるように、3つの可変領域全ての同時欠損はE2糖タンパク質の固有のフォールディングを破壊しないことを示し、この構築物がE2コアドメインを構成することを強く示唆している。しかしながら、全長E2糖タンパク質との関連において、膜貫通領域と膜近位領域の両方の存在がこのコアE2構造物を結晶化することを困難にするであろう。従って、一重可変領域欠損と多重可変領域欠損の両方を、可溶性且つ高レベルの発現を受け入れられるE2受容体結合ドメイン(E2 RBD661myc)へ導入した。一重可変領域欠損または多重可変領域欠損を含むE2 RBD661myc糖タンパク質を293T細胞内で代謝的標識し、コンホメーション依存性坑E2モノクローナル抗体(H53)を用いる免疫沈降により細胞内タンパク質と分泌タンパク質の両方を分析した。
H53は、全ての一重可変領域欠損構築物および多重可変領域欠損構築物について野生型レベルの細胞内E2 RBD661myc(〜50 kDa)を沈殿させ、これら変異体糖タンパク質の各々が効率的に発現されることを示した(図14A)。これらの細胞内E2 RBD661myc糖タンパク質も野生型構築物より低い一定でない分子量を示し、全長E1E2ヘテロ二量体の構成において観察された欠損領域内に位置するグリコシル化部位の喪失と一致した。しかしながら、表4に予想されるこれら短縮糖タンパク質の分子量を確かめるのに、これらの短縮糖タンパク質の脱グリコシル化が必要とされる。さらに、H53はE2 RBD661mycの分泌型に対応する拡散した分子量バンド(〜55-65 kDa)を沈降させ(図14B)、分泌経路の通過の間に獲得される種々の複合型および混成型の炭水化物修飾を反映した。一重または多重可変領域欠損を含む全てのE2 RBD661myc糖タンパク質は、効率的に分泌されることが示され、また細胞内データについて記載された一定でない分子量(kDa)を示した。これらの結果は全体として、可変領域を−個別にまたは組み合わせて−E2 RBD661mycから欠損させることができることと、コンホメーション依存性坑E2抗体H53によって検出されたように、細胞内E2の受容体結合ドメインと分泌E2の受容体結合ドメインの両方の固有のフォールディングを保持できることを裏付ける。
【0038】
[CD81-LEL結合]
一重可変領域欠損および多重可変領域欠損を含むE2受容体結合ドメインがCD81-LELと結合するか否かを決定するため、細胞内E2 RBD661myc溶解物と分泌E2 RBD661myc溶解物の両方を先に記載した固相CD81 MBP-LEL(残基113-201)結合アッセイに用いた。このデータを、H53を用いて沈降させてSDS-PAGEにより観察した各ベクターからの単量体E2の発現量に対して正規化した;図14A(細胞内)および図14B(分泌)。
一重可変領域欠損を含むE2 RBD661mycの細胞内型と分泌型の両方がCD81-LEL結合を示したが、全長E2糖タンパク質に関して観察されたように、HVR1con欠損はCD81-LEL結合の全損を与えた(図15Aおよび図15B)。一重HVR1欠損を含むE2糖タンパク質の分泌型も野生型と比較してCD81-LEL結合の付加的な増強を示し、成熟ビリオン由来の形態の全長E2糖タンパク質について得られたデータと一致した。重要なことに、三重可変領域欠損(HVR1+HVR2+igVR)を含むE2 RBD661mycの細胞内型と分泌型の両方が野生型レベルのCD81-LEL結合を保持し(図16Aおよび図16B)、この糖タンパク質種が全ての構造的および機能的CD81結合決定基を包含して最小のまたはほぼ最小のE2コア受容体結合ドメインを構成することを裏付けた。
【0039】
[5.同時HVR欠損を含むE2 RBD661の細胞表面発現した全長CD81との結合]
多重HVR欠損を有する分泌E2 RBD661タンパク質の細胞表面発現した全長CD81と結合する能力を決定した。ヒトCD81をコードするベクターでCHO-K1細胞をトランスフェクションした。トランスフェクション48時間後、細胞を氷上に置いて、等量のE2を細胞に添加した。4時間後、放射ヨウ素標識したMAb 9E10で結合したE2を検出して、結合したE2の量を定量した。結果(図17)は、野生型および・HVR2+igVR欠損E2 RBD661が同じレベルで全長CD81と結合したことを示す。対照的に、・HVR1+2-E2 RBD661のCD81との結合は有意に減少した(p=0.038);構築物E2 ・123-mycにおけるigVRの更なる欠損は野生型のCD81結合活性を回復させた(p=0.11)。これらのデータは、3つの可変領域がE2のCD81結合活性を破壊することなく同時に欠損させることができることを示す。興味深いことに、E2 RBD661からのHVR1およびHVR2の同時欠損はCD81結合の減少につながったが、この欠陥はigVRの更なる欠損により矯正された。
【0040】
[6.同時HVR欠損を有するE2 RBD661がヒトコンホメーション感受性モノクローナル抗体により認識される能力]
野生型E2-mycおよびE2 ・123-mycを35S-Met/Cysで放射性標識してヒトコンホメーション感受性モノクローナル抗体のパネルを用いて免疫沈降させ(Keck et al., 2004)、非還元SDS-PAGEによって分析した。このコンホメーション依存性MAbのパネルは、E2-A、BおよびCの3つの別々の免疫原性ドメインに該当するコンホメーションエピトープに特異的である(Keck et al., 2004)。E2・・123-mycタンパク質は野生型E2-mycタンパク質と同様の免疫原性プロフィールを示し(図18)、全3つの可変領域を欠くE2-mycがE2の前記3つの別々の構造的および機能的ドメインに特異的であるコンホメーションエピトープを保持することを示した。このデータはKeckらによって先に公表されたデータと一致し、前記ドメインにおけるHVR1関与の欠如も示した(Keck et al., 2004)。このデータはこれらの知見を拡張して、HVR2およびigVRも前記ドメインに関与しないことを示唆する。
【0041】
[7.考察]
本研究の過程において、認知されている2つのE2可変領域のHVR1とHVR2および新規可変領域“igVR”を独立に欠損させて、E1E2生合成、ヘテロ二量化、CD81結合およびウイルス侵入におけるこれらの領域の役割をさらに調べた。これらの可変領域欠損を含む全てのE2糖タンパク質は、コンホメーション依存性モノクローナル抗体H53により認識される野生型糖タンパク質の固有のフォールディング特性を保持することが示された。HVRおよび“igVR”はヘテロ二量化に必要とされることがさらに示され、3つの可変領域全てがウイルス侵入のCD81結合前または結合後の段階において必要とされることが示された。また、個々の可変領域のどれもがCD81結合に必要でないこと、CD81結合特性を保持したまま3つ全てをE2糖タンパク質から同時に欠損させることができることも実証された。
エンベロープ糖タンパク質E1およびE2はHCVゲノムにおいて、特に超可変領域1(HVR1)−E2糖タンパク質のN末端に位置する高度に可変性の〜27アミノ酸配列−において最大の遺伝的多様性を示す。ここで、HVR1(ポリプロテイン残基387-408)の欠損は野生型レベルのヘテロ二量化と偽型HIV-1粒子へのE1E2組み込みとを保持しているにもかかわらずE1E2仲介性侵入の喪失をもたらすことが示され、HVR1領域がウイルス侵入において直接的な役割を有することが示唆された。しかしながら、HVR1が機能的E1E2ヘテロ二量体またはE2受容体結合ドメイン(E2 RBD661myc)のどちらかの構成においてCD81-LEL結合に必要とされないことも示され、HVR1がウイルス侵入のCD81結合前または後の別の段階に関与することが示された。このことは、HVR1(ポリプロテイン残基384-410)の欠損がSR-B1受容体へのE2結合を除去すると報告した先の研究と一致しており、この領域がウイルス侵入で必要不可欠なSR-B1接触に必要とされる可能性があることを示唆している。
【0042】
しかしながら、本知見は、HVR1を欠くHCV偽型粒子(HCVpp)がウイルス侵入におけるHVR1領域の必要不可欠な役割と矛盾してHuh7細胞への侵入を減少したレベルであるが仲介することを示した他の幾つかの研究に反する。また、SR-B1の天然のリガンドである高密度リポタンパク質(HDL)の存在下で観察されたHCVpp感染性の増強はHVR1の欠損に効かないことも報告されている。これは、この効果がHCV粒子のHDLとの結合に因るものであるか否か未確定のままであるが、HVR1がこの機能に必要不可欠であるよりもむしろ感染性を促進することを示唆している。加えて、最近の研究では、HVR1内の全ての保存塩基性残基の置換がHCVpp侵入を有意に減少させることが見出されたが、HVR1内の保存塩基性残基がCD81-LEL結合に関与することもSR-B1結合のHDL増強と相関することも見出されてはいない。従って、ウイルス侵入におけるHVR1の正確な役割は不明のままである。
また、HVR1の欠損は、先の研究と一致して、CD81結合を有意に増強する(およそ4倍)ことも示された。これは、HVR1が、この機能に必要とされていないにも関わらず、E2糖タンパク質内の保存CD81結合部位の近づきやすさを負に調節することを示唆している。これは、最近同定されたHVR1とHVR2の間に位置する保存CD81結合決定基G436WLAGLFYと矛盾しない。加えて、広範な中和抗体AP33は、HVR1(ポリプロテイン残基412-423)に直接隣接する保存されたエピトープを認識し、CD81とE2糖タンパク質の提示範囲との相互作用を阻害することが示された。保存I411残基を含むHVR1欠損の拡張も、CD81結合の増強よりもむしろ減少を付与することが示され、この領域がこの機能にさらに関係付けられた。同様に、隣接保存領域を含むHVR1欠損の拡張(HVR1con、ポリプロテイン残基387-428)はCD81結合部位の形成において重要なE2糖タンパク質のフォールディングおよび成熟化を妨害することが示された。さらに、この保存領域に位置する残基W420もCD81結合に関与することが示された。
【0043】
HVR1に隣接するこれらの高度に保存された領域の位置は、この超可変領域がウイルス侵入を仲介することと宿主免疫系に対するこれらの保存残基の近づきやすさを調節してAP33のような広範な中和抗体による認識を免れることの二重の機能を果たすことを示唆する。実際、先の研究では、HVR1の欠損が中和抗体および中和血清に対するエンベロープ糖タンパク質複合体の感受性の増加をもたらすことが見出された。従って、HVR1はE2糖タンパク質の保存コアドメインの外側にある溶媒露出サブドメインを形成することが、受容体結合におけるHVR1の調節的役割と免疫優性応答の誘導の両方と矛盾せずに提唱された。この提唱された保存コアドメインをさらに特徴付ける目的で、残りのE2可変領域であるHVR2と“igVR”も欠損させた。HVR1欠損について観察されたように、個々にHVR2領域および“igVR”領域を欠くE2糖タンパク質は両方とも、コンホメーション依存性モノクローナル抗体H53により検出されて、野生型糖タンパク質の固有のフォールディング特性を保持した。
しかしながら、興味深いことに、HVR2と“igVR”はヘテロ二量化に必要とされることが示され、従って、これらの領域の欠損はHuh7細胞へのE1E2仲介性侵入の全損を示した。これは、E2糖タンパク質内のこれらの領域が直接へテロ二量体接触に関与するか、あるいは、この機能に間接的に必要とされるアロステリック効果を調節することが示唆される。従って、これらの領域の役割をさらに調べるため、幾つかの保存システイン近位残基をHVR2欠損構築物および“igVR”欠損構築物へ再導入してそれらの構築物のリンカーモチーフを伸長し、よってE2糖タンパク質のフォールディングを増強させた。“igVR”リンカーの伸長は、E1との野生型レベルのヘテロ二量化と有意なレベルのE1E2仲介性侵入(〜8倍)とを回復することが見出されたが、この効果はHVR2には観察されなかった。この知見は、igVR領域から喪失した5つのグリシン残基のうちの2つがGly-Ser-Ser-Glyリンカーモチーフの導入によってさらに相殺され、結果としてigVR領域内の5つのアミノ酸の全欠損のみに終わった比較的短い長さの“igVR”欠損を反映し得る。ヘテロ二量化における“igVR”リンカーの役割も遺伝型内で観察されたその保存と矛盾しない。特に、伸長“igVR”リンカー構築物は野生型(〜10倍)と比べて侵入活性の減少をなおも示し、これは恐らく、先にHCVpp侵入を減少させることが観察されたこの領域内の保存N連結グリコシル化部位の不在のためである。
【0044】
さらに、HVR2欠損と“igVR”欠損のどちらかを含むE2糖タンパク質が野生型のCD81結合レベルを保持することが示され、HVR1で観察されたように、これらの領域がこの機能に必要とされないことを示している。先の研究は、HVR2を標的とするモノクローナル抗体がE2糖タンパク質のCD81との結合を阻害することを示し、この領域がCD81結合決定基を形成するが、本知見に基づくと、前記抗体がこの領域に隣接するG436WLAGLFY CD81結合決定基を塞ぐ立体効果を作り出している可能性がさらに高い。従って、ヘテロ二量化および/またはウイルス侵入の喪失にかかわらず、HVR1、HVR2および“igVR”は全てE2糖タンパク質から固有のフォールディング特性を破壊することなく独立に欠損させることができ、実際、CD81結合を保持したまま3つの可変領域全てを同時欠損させることができることがさらに示された。これは、これらの可変領域が、確認されたHCV受容体CD81との結合に必要とされる保存された構造的および機能的決定基を取り囲むE2コアドメインの外側に溶媒露出されたサブドメインを形成するという仮説を強く支持する。
興味深いことに、HVR2欠損と“igVR”欠損のどちらかと組み合わせてHVR1欠損を含むE2糖タンパク質は、個々のHVR1欠損について観察されたCD81-LEL結合の著しい増強を示さないことも観察された。先の研究は、HVR1およびHVR2の異なるサブタイプ由来の対応配列の組合せでの置換は、個々のHVR1かまたはHVR2の置換については観察されないCD81結合の増加か減少のどちらかを(導入された株および基幹株(backbone strain)に依存して)達成することを示した。これらのデータをまとめると、これらの領域の間に分子内相互作用が存在してCD81結合を調節すること、それらが固有の可動性構造を取りこれらの接触をもてなすことを示唆する。これは、HVR1とHVR2との間に直接位置する保存CD81結合決定基G436WLAGLFY443の最近の同定ならびにHVR1および(より少ない程度で)HVR2の双方によって誘導された免疫優性応答によってさらに支持され、表面露出サブドメインとしてのそれらの位置が細胞吸着において調節機能を果たす可能性があることと矛盾しない。このHVR1および“igVR”二重欠損について観察された同じ効果は、これらの共同的な相互作用に“igVR”領域も寄与している可能性があることを示唆している。
【0045】
このデータを説明する1つの仮説として、可変領域がE2糖タンパク質の‘開’構造と‘閉’構造(前者は、本研究の中で記載されるコアE2ドメイン内に位置する保存CD81結合決定基を露出することによってCD81結合に対してさらに受容性である)との間の行き来を可能にする可動性の溶媒露出サブドメインを形成することが提唱される。実際、CD81結合に際してE2糖タンパク質内部のコンホメーション変化が以前に観察されていた。加えて、非中和抗体のE2糖タンパク質への結合は中和抗体に対するE2糖タンパク質の感受性を減少させることが示されており、これは、非中和抗体がこれらの表面露出可変領域の可動性を阻害し従ってE2コアドメイン内部に位置する保存エピトープへの接近が遮断されるモデルと矛盾しない。従って、改変E2コアドメインはE2糖タンパク質内部の保存エピトープ(CD81結合決定基を含む)に対する中和抗体を誘導するための有望なワクチン候補を表す。中和されなければ、これらのE2糖タンパク質内部の保存エピトープはHCV複製の間に糖タンパク質複合体の表面で免疫学的おとりとして作用し得る表面露出可変領域によって塞がれている。
HVR2欠損または“igVR”欠損を含むE2糖タンパク質において観察されたヘテロ二量化の喪失は、これらの糖タンパク質の内部で単一のコンホメーション依存性モノクローナル抗体H53によって認識できないコンホメーション変化が起こっていることを示唆する。従って、以前にE2糖タンパク質内部の3つの主要免疫原性領域を同定するために用いられたコンホメーション依存性抗体のパネルを入手して、これらの可変領域によって仲介される糖タンパク質の構造および機能のより微妙な変化を調べた。この結果は、E2 RBD 661mycの構成においてドメインA、BおよびCに対するモノクローナル抗体が3つの可変領域全ての同時欠損を含むRBDに対して野生型レベルの反応性を保持することを示す。これにより、E2 ・123-myc・123RBD構築物が天然E2 RBDの固有のコアドメインフォールディング特性を保持することがさらに示唆される。
【0046】
[8.材料および方法]
[可変領域欠損変異体の構築]
[ベクター]
E1E2ヘテロ二量体へE2可変領域欠損を導入することを目的として、HCVベースの発現ベクターpE1E2H77cを入手した(Drummer et al., 2003)。pE1E2H77cベクターは、文献に記載されるように(Drummer et al., 2003)、E1E2ポリプロテイン残基165-746をコードしている全長pCV-H77c(遺伝子型1a)感染性クローン(Yanagi et al., 1997)由来のDNA配列を含有する。ER標的化と糖タンパク質切断を確実にするために、この配列は、未成熟コアタンパク質のC末端に位置するE1シグナルペプチド配列と全長E1およびE2ポリプロテイン配列とを含む(図19)。このDNAフラグメントを、哺乳動物系における発現のために翻訳エンハンサー配列とサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターの双方を含むpCDNA4HisMaxベクター(Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)の骨格内にクローニングした。前記ベクターは細菌細胞における選択のためのアンピシリン耐性遺伝子も含有する。
プライマー5’-CCGAAGCTTCCACCATGGGAGTGGAGGGCTGC-3’と5’-GGCTCTAGATTAGTACACGGAGCTGTTCCG-3’を用いて、pcDM8-TAPA-1 (Levy et al., 1998)30)からPCRによりCD81オープンリーディングフレームを増幅した。HindIIIとXbaI(下線で示す)を用いてPCR産物をpcDNA3にクローニングし、プラスミドpcDNA3-CD81を作製した。
可溶性E2受容体結合ドメイン(E2 RBD661)内の可変領域の特徴付けを可能にするため、HCVベースの発現ベクターpE2661も入手した(Drummer et al., 2002)。pE2661ベクターは、文献に記載されるように(Drummer et al., 2006)2002)、HCVポリプロテイン残基384-661をコードするpCV-H77c DNA配列を含有する。この配列は、CD81受容体結合とSR-B1受容体結合とを保持することが示されている(Pileri et al., 1998, Scarselli et al., 2002, Pileri et al., 1998)E2糖タンパク質の独立性フォールディングサブドメインをコードする。このDNA産物を、効率的なER標的化とE1非存在下でのE2 RBD661のシグナル切断とを確実にするように設計された組織プラスミノーゲンアクチベーター(tpa)リーダー配列のC末端でpCDNA3ベクター(Invitrogen)骨格へクローニングした(E2-myc)。このベクターは、哺乳動物細胞での発現用のCMVプロモーターおよび細菌細胞での選択を容易にするためのアンピシリン耐性遺伝子も含有する。
【0047】
[オーバーラップ伸長PCR]
オーバーラップ伸長PCRは、DNAの大きなセグメントの欠失を容易にする二段階ストラテジーである(図20)(Horton et al., 1989)。第一ラウンドでは、pE1E2H77cベクターを鋳型として用いて、全長E1E2ポリプロテインへ個々の可変領域欠損を導入した。この段階は、2つのオリゴヌクレオチド対を必要とした(Geneworks, Ann Arbor, MI, USA);各対は、可変領域の上流(5’)または下流(3’)のどちらかの配列の増幅に関与する1の外部プライマーと1の内部プライマーとを含む。内部オリゴヌクレオチドプライマーは、Gly-Ser-Ser-Glyリンカーに加えて、対応する5’または3’フラグメントに相補的な短いオーバーラップ配列を導入するように設計した(表5)。一度生成させたら、これらの第一ラウンドの5’PCR産物と3’PCR産物とを、第二ラウンドのPCR反応に加える前にアガロースゲル電気泳動で単離して精製した。第二ラウンドは、5’フラグメントと3’フラグメントの重複する相補性配列を介して5’フラグメントと3’フラグメントとをアニールさせて、関連する外部プライマーによる伸長および増幅のための鋳型を形成した。鋳型ベクターへ戻しクローニング(cloning back)を容易にするために、外部プライマーも唯一のEcoR1/XbaI制限エンドヌクレアーゼ部位を含んでいた。
【0048】
[E1E2可変領域欠損構築物]
オーバーラップ伸長PCRストラテジーを用いて、表5に要約し且つ図20に表した一重可変領域欠損を作成した。特に、2つの選択的HVR1欠損構築物であるHVR1とHVR1conを設計して、この領域をさらに調査した。HVR1欠損はポリプロテイン残基387〜408間の超可変セグメントを欠き、一方、HVR1conは、このN末端領域を糖タンパク質の残りに固定することが提唱されるE2の第一の保存システイン残基に至るまでの隣接領域(ポリプロテイン残基387-428)を取り囲むようにHVR1欠損を拡張した。HVR1の最初の3つのアミノ酸(E384TH)もこれらの構築物中で保持されており、糖タンパク質生合成の間にE1とE2の間を効率的に切断することを確実にした。HVR2欠損と“igVR”欠損はそれぞれ、ポリプロテイン残基460-485および570-580を包含した。
E2糖タンパク質のフォールディングを増強するため、オーバーラップ伸長PCRを用いて第二系列の改変一重可変領域欠損構築物を作製した(図21)。このストラテジーは一組の改変内部オリゴヌクレオチドプライマーを利用して、表2に要約し図21に表すように元の構築物から欠損させた幾つかの保存システイン近位残基を再導入することによってGly-Ser-Ser-Glyリンカーモチーフを伸長させた。特に、この改変・HVRlink E1E2系列は、この領域内に位置するいずれかの保存残基を欠くことから、HVR1欠損構築物を欠く。
最小E2コアドメインを描く目的で、図19に表すように、多重HVR1、HVR2および“igVR”欠損をE1E2ポリプロテインの構成に導入した。これらの多重欠損構築物をオーバーラップ伸長PCRを用いて再度作製したが、表3に概略を示すように関連する一重または二重可変領域欠損構築物を野生型pE1E2H77cベクターの代わりの鋳型として利用した。
【0049】
[E2 RBD661myc可変領域欠損構築物(E2-nyc)]
一重および多重可変領域欠損を可溶性E2受容体結合ドメイン(E2 RBD661myc)との関連において特徴付ける目的で、標準的なPCRを用いて、表4に概略を示し図22に表すように一重および多重可変領域欠損を含む全長E1E2構築物からポリプロテイン残基384〜661を増幅した。これらのPCR産物のpE2661ベクターへのクローニングを容易にするために、C末端mycエピトープタグとただ1つのNheI/XbaI制限エンドヌクレアーゼ部位とを導入するようにオリゴヌクレオチドプライマーを設計した。
全てのPCR反応は、表6に要約した条件下でExpand High Fidelity PCRシステム(Invitrogen)を用いてBiometra Thermocycler(Biometra, Goettingen, Germany)で実施した。
[アガロースゲル電気泳動]
DNA産物を、TAE(0.001M EDTAおよび0.04M トリス-酢酸)を入れたBio-Radゲル槽(Bio-Rad Laboratories, Hercules, CA, USA)を用いてアガロースゲル電気泳動によって単離した。UV光の下でDNAの可視化を可能にするために、エチジウムブロミド(0.5 μg/mL)を用いて1%(w/v)DNAグレードアガロースを含むTAEを作製した(Sambrook and Russel, 2001)。オレンジGゲルローディングダイ(1%(w/v)オレンジG(Sigma, St Louis, MO, USA)、50%(v/v)グリセロール)を用いてDNAサンプルを20%(v/v)で作製した。アガロースゲルを100 V、23 mAにて30〜40分間泳動し、GelDOCシステム(Bio-Rad)を用い1 kbプラスDNAマーカー(Invitrogen)を参照してDNAフラグメントのサイズを確かめ定量した。続いて、確認したDNAフラグメントを、製造者の使用説明書に従って、Mo Bio PCRクリーンアップキット(Mo Bio, Carlsbad, CA, USA)を用いてPCR反応液から、あるいはMo Bioゲルスピンキット(Mo Bio)を用いてアガロースゲルから精製した。
[DNAの制限エンドヌクレアーゼ消化]
New England Biolabs制限エンドヌクレアーゼを用い製造者の使用説明書に従って(New England Biolabs, Ipswich, MA, USA)全てのDNAを消化した。消化したベクターを、シュリンプアルカリホスファターゼで30分間37℃にて脱リン酸化して、セルフアニーリングを減少させた。
【0050】
[プラスミド構築物のライゲーションおよび形質転換]
消化した挿入断片とベクターDNAをT4 DNAライゲースシステム(Invitrogen)を用いておよそ4:1の比率で一緒にライゲーションし、4℃にて16時間インキュベートした。酢酸ナトリウム沈降法(3M Na-酢酸 pHおよび100%エタノール)(Sambrook and Russel, 2001)を用いてDNAライゲーション産物を単離し、滅菌蒸留水中で1時間再懸濁させた。1 mmエレクトロポレーションキュベット(BTX, Holliston, MA, USA)と2.0 V、200 Ω、25 μFにセットしたGene Pulser Electroporator(BioRad)とを用いてライゲーション産物を20 μLのエレクトロポレーションコンピテントDH10B E.coli細胞(New England Biolabs)に形質転換した。次に、電気処理したDH10B細胞をルリア-ベルターニ培地(LB)(1%(w/v)トリプトン、0.5%(w/v)酵母エキス、0.5%(w/v) NaCl)へ移して1時間、37℃にて回復させた。次に、50 μg/mLのアンピシリンを含むLB寒天プレート(LB、5%(w/v)寒天)上に広げて蒔き、37℃で16時間インキュベートして形質転換した細胞を選択した(Sambrook and Russel, 2001)。
[コロニーPCR]
所望のDNAを含む形質転換コロニーを速くスクリーニングする目的で、コロニーPCR用に各LB寒天プレートからおよそ20コロニーを選択した(Sambrook and Russel, 2001)。Taqポリメラーゼシステム(Invitrogen)と適切な外部プライマーとを用いて表6に明記する条件下Biometraサーモサイクラー(Biometra)内でコロニーPCRを行った。陽性の挿入断片を含むコロニーを上述するアガロースゲル電気泳動によって同定した。
[プラスミドDNAの小規模調製]
次に、Mo Bioミニプレップキット(Mo Bio)を用い製造者の仕様書に従ってアルカリ溶解法を用いて、陽性コロニーからのプラスミドDNAの小規模調製品を生成した。上述の制限エンドヌクレアーゼ消化およびアガロースゲル電気泳動によって、挿入断片を確認した。
【0051】
[DNAシークエンシング]
全てのプラスミドDNA挿入断片の配列を、関連するシークエンシングプライマーとPRISM BigDyeターミネータミックス(バージョン3.1)(Applied Biosystems, Foster City, CA, USA)とを用いてMicromon反応セットアッププロトコール(Micromon, Victoria, Australia)に従って確認した。全てのシークエンシング反応を表6に概要を示す条件下でBiometraサーモサイクラー(Biometra)内で行い、得られたDNAをMicromon反応クリーンアッププロトコール(Micromon)に従って調製した。配列の解析をMicromonシークエンシング施設にて3730Sジェネティックアナライザー(Applied Biosystems)で行った。
[プラスミドDNAの大規模調製および定量]
次に、確認したクローン由来のプラスミドDNAをアルカリ溶解法をベースとするQiagenミディプレップキット(Qiagen, Hilden, Germany)を用い製造者の仕様書に従って大規模で単離した。この大規模プラスミドDNA調製品をフェノール-クロロホルム(1:1)を用いて精製し、DNAを含む上方の相を得るために10000×gで3分間遠心分離し、クロロホルム(50%(v/v))を用いて繰り返した。精製したDNAを酢酸ナトリウム(10%(v/v))および2.5容量の100%エタノールを用いて70℃で30分間濃縮した。DNAを10000×gで15分間によりペレットにして70%沈殿法で2回洗滌し、100 μLのTEに再懸濁させた。バイオフォトメーター(Eppendorf, Hamburg, Germany)を260 mmで用いて、全てのDNA濃縮物を測定した
本研究の間、全ての細菌作業は37℃にセットしたオービタルシェーカー(Ratek Instruments, Victoria, Australia)またはインキュベーター(Memmet, Schwabach, Germany)を利用した。
【0052】
[生化学的アッセイおよび機能的アッセイ]
[細胞培養]
本研究ではヒト繊維芽細胞由来の293Tヒト胚腎細胞(HEK 293T)を用いて、高いトランスフェクション効率を確実にし、優良なレベルの細胞タンパク質発現を達成した。ヒト肝臓の肝細胞はHCVの第一の標的であり、よってヒト肝細胞癌細胞株であるHuh7を本研究におけるモデル肝細胞系として用いた。さらに、Huh7細胞株は、サブゲノムHCVレプリコンをサポートすることが実証されており、HCVpp侵入に対して非常に許容状態であって細胞培養増殖HCV(HCVcc)をサポートすることができ、Huh7細胞株はin vivoのHCVトロピズムに必要とされる全ての細胞因子を含むことが示唆されている(ZhongBartosch et al., 2005, Wakita et al., 20052003a, Lindenbach et al., 2005b, Lohmann et al., 1999, LindenbachWakita et al., 2005a, Zhong et al., 2005, Bartosch et al., 2003a)。
全ての細胞をDMF10(ダルベッコ基礎培地(Invitrogen)、10%(v/v)の熱不活化したウシ胎児血清(Invitrogen)、2 mM L-グルタミン(GE Healthcare, Bukinghamshire, UK)、1 M HEPES緩衝液(Invitrogen)、ゲンタマイシン(GE Healthcare)および2 μg/mL ミノサイクリン塩酸塩(Sigma))中で維持した。これらの細胞を、その単層を剥がすために0.025%(v/v)トリプシンを含むPBS-EDTA(リン酸緩衝液(PBS)-エチレンジアミン四酢酸(EDTA))を用いて、75 cm2または150 cm2のファルコンフラスコ中で3〜4日ごとに継代培養した。全ての細胞をThermoダイレクトヒートCO2インキュベーター内で5%CO2で37℃にて(Thermo, Waltham, MA, USA)インキュベートした。本研究の間、全てのベクターは、先に記載されるように(Drummer et al., 2003)FuGene6トランスフェクション試薬(Roche)を用いて、6ウェル培養皿に蒔いたHEK 293T細胞へトランスフェクションさせた。
【0053】
[抗体]
コンホメーション非依存性抗E1モノクローナル抗体であるA4とコンホメーション非依存性坑E2モノクローナル抗体であるA11は、Jean Dubuisson博士およびHarry Greenberg博士から寄贈された(Dubuisson et al., 1994)。坑E2コンホメーション依存性モノクローナル抗体であるH53もJean Dubuisson博士からの寄贈品であった(Deleersnyder et al., 1997)。坑E1E2ポリクローナル抗体である779は、HCV遺伝型1a感染個体の血漿から精製して得た(Drummer and Poumbourios,未公表)。HIV-1感染個体由来の免疫グロブリンG(IgG14)と坑mycモノクローナル抗体である9E10も入手した(Drummer et al., 2002, Drummer et al., 2003)。3つの別個の免疫原ドメインE2 A、BおよびCに相当する(representing)コンホメーションエピトープに特異的なコンホメーション依存性ヒトMAbのパネルはSteven Foung博士から入手した(Keck et al., 2004)。
【0054】
[E1E2偽型HIV-1粒子侵入アッセイ]
異種レトロウイルスまたはレンチウイルスコア粒子による機能的HCVエンベロープ糖タンパク質の組み込みおよび露呈(display)は、シュードタイピングと呼ばれ、これらの変異を全長HCVゲノムに導入することなく変異体E1E2糖タンパク質を特徴付ける比較的速く簡便な方法を提供する(Drummer et al., 2003, Bartosch et al., 2003b)2003a, Drummer et al., 2003)。このストラテジーは、E1E2発現ベクターと本来のエンベロープ遺伝子を欠失しレポーター構築物を含むレトロウイルス性またはレンチウイルス性発現ベクターの両方をコトランスフェクションすることを含む(図23)。ウイルスコアタンパク質は細胞内部で組み立てられるため、前記粒子は原形質膜から出芽することによってエンベロープを獲得して、その本来のエンベロープ複合体の代わりに細胞表面に存在するHCVエンベロープ糖タンパク質を組み込む。これらのE1E2偽型粒子(HCVpp)は1ラウンドだけE1E2仲介性の感染および複製を経験することができ、前記感染および複製は感染細胞内部のレポーター遺伝子の活性を測定することによって定量できる。本研究の間、ヒト免疫不全症ウイルス(HIV-1)ホタルルシフェラーゼベクターであるHIV-1 NL4-3.LUC.R-E- (He and Landauet al., 1995)を用いて、以前に記載されたように(Drummer et al., 2003)Huh-7細胞の感染用のE1E2偽型ウイルスを作製した。
293T細胞を6ウェル培養皿(Nalge Nunc)に350 000細胞/ウェルで蒔き、1 μgのNL4-3.LUC.R-EとpE1E2H77c(野生型)、p・HVR E1E2または空のpCDNA4HisMaxベクター(負の対照)のいずれか1 μgとでコトランスフェクションした。3日間のインキュベーションの後、E1E2偽型HIV-1粒子を含む組織培養液を収集し、Minisart 0.45 μm無菌シリンジフィルター(Sartorius, Goettingen Germany)を用いて濾過した。次に、濾過生成物を用いて、48ウェル培養皿(Nalge Nunc)に30 000細胞/ウェルで蒔いたHuh-7細胞を三つ組みで感染させた。37℃で4時間のインキュベーションの後で接種材料を除去し、細胞をDMF10中でさらに3日間培養してから細胞培養物溶解試薬(Promega, Madison, WI, USA)で溶解した。細胞溶解物を、細胞残屑を取り除いてから96ウェルプレート(BMG Labtech, Offenburg, Germany)に移し、Steady-Gloルシフェラーゼ試薬システム(Promega)とルミネッセンス光学部品を取り付けたFluostar(BMG Labtech)とを用いてルシフェラーゼ活性について分析した。三つ組みの感染物から平均ルシフェラーゼ活性(相対光単位)を算出し、それに従って標準偏差を算出した。
【0055】
[放射性免疫沈降(RIP)]
[放射性標識]
細胞内E1E2生合成における可変領域の役割を解析する目的で、6ウェル培養皿(Nalge Nunc)に500 000細胞/ウェルで蒔いた293T細胞をpE1E2(野生型)、1以上の可変領域欠損を含むpE1E2または空のpCDNA4ベクター(負の対照)のいずれか2 μgでトランスフェクションした。トランスフェクション24時間後、細胞を150 μCiのトランス-35S-ラベル/ウェル(Santa Cruz Biotechnology, Santa Cruz, CA, USA)を含むL-システインおよびL-メチオニン欠損DMF10:DMEM(MP Biomedicals)、10%(v/v)の加熱不活化したウシ胎児血清(Invitrogen)および2 mM L-グルタミン(GE Healthcare)を用いて30分間、37℃でパルスチェイス代謝的標識した。次に、細胞をDMF10中37℃にて4時間追跡し、PBS中で洗滌してRIP溶解緩衝液(0.6 M KCl、0.05 M トリス pH 7.4、1 mM EDTA、0.02%アジ化ナトリウム、1%トライトンX-100)中で溶解した。細胞溶解物を、冷却したベンチトップ遠心分離機(Heraeus, Hanau, Germany)中で4℃にて10分間遠心分離することによって残存する細胞残屑を除去した。
偽型HIV-1粒子へ組み込まれる成熟E1E2ヘテロ二量体を豊富にするため、6ウェル培養皿に350 000細胞/ウェルで蒔いた293T細胞を、1 μgのpNL4-3.LUC.R-E-とpE1E2(野生型)、1以上の可変領域欠損を含むpE1E2または空のpCDNA4ベクター(負の対照)のいずれか1 μgとでトランスフェクションした。トランスフェクション24時間後、細胞を75 μCiのトランス-35S-ラベル/ウェル(Santa Cruz Biotechnology)を含むL-システインおよびL-メチオニン欠損DMF10を用いて16時間、37℃で代謝的標識した。次に、組織培養液を収集してMinisart 0.2 μmシリンジフィルター(Sartorius)を通して濾過し、Beckman L-90超遠心分離機(SW41ローター、Beckman Coulter, Fullerton, CA, USA)を用いて25 000 xgで2時間、4℃でのショ糖密度勾配(25%スクロース(v/v)を含むPBS)を通じてビリオンを濃縮した。上清を除去して、RIP溶解緩衝液中でビリオンを溶解させた。
E2受容体結合ドメイン(E2 RBD661myc)の構成における可変領域の役割を特徴付けるため、6ウェル培養皿(Nalge Nunc)に350 000細胞/ウェルで蒔いた代謝的標識293T細胞を、E2-myc(野生型)、1以上の可変領域欠損を含むE2-mycまたは空のpCDNA3ベクター(負の対照)のいずれか2 μgでトランスフェクションした。トランスフェクション6時間後、細胞を75 μCiのトランス-35S-ラベル/ウェル(Santa Cruz Biotechnology)を用いて1時間、37℃でパルスチェイス代謝的標識し、分泌タンパク質を蓄積させるためOptiMEM血清減少培地(Invitrogen)中で16時間追跡した。次に、この組織培養液を収集してRIP溶解緩衝液中で溶解させ、10,000 xg、4℃の遠心分離によって清澄化した。細胞の単層もPBS中で洗滌し、RIP溶解緩衝液中で溶解させ、上述するように清澄化した。
【0056】
[免疫沈降]
タンパク質の発現を分析するためのコンホメーション感受性ストラテジーとして放射性免疫沈降法を用いた。上述の全てのタンパク質調製品を、関連する抗体の存在下16時間4℃で、BSA(Sigma)と結合したセファロース(GE Healthcare)を用いてプレクリアした。BSA-セファロースを8 000 xgにて10分間ペレット化し、非特異性タンパク質種を除去した。次に、30%(v/v)プロテイン-Gセファロース(GE Healthcare)を含むRIP溶解緩衝液を用いて、抗体に結合したタンパク質を含む上清を1時間室温にて沈殿させ、上述のように遠心分離によって単離して、RIP洗滌緩衝液(0.5 M NaCl、0.05 M トリス pH 7.4、1 mM EDTA、0.02%アジ化ナトリウムおよび1%トライトンX-100)中で3回とPBS中で1回洗滌した。
[SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)タンパク質分離および分析]
全ての免疫沈降物をサンプルローディング緩衝液(0.5 Mトリス pH 6.8、5%(v/v) SDS、10%(v/v)グリセロール、0.05%(w/v)ブロモフェノールブルー)に再懸濁させた。還元条件下(+3%(v/v)β-メルカプトエタノール)または非還元条件下(β-メルカプトエタノールなし)で細胞内溶解物を泳動して、以前に観察された大量の細胞内共有結合E1E2凝集体(Dubuisson et al., 1994)のうちの非共有結合性E1E2種を同定した。ウイルス溶解物中の代謝的標識ウイルス組み込みE1E2を非還元条件下で泳動し、一方HIV-1構造タンパク質を還元条件下で泳動した。全てのサンプルを100℃にて5分間変性させて、ミニプロテインII SDS-PAGEシステム(BioRad)を用いプレステイン広範囲タンパク質マーカー(BioRad)を参照して10-15%SDS-PAGEポリアクリルアミドグラジエントゲル上で分離した(7.5-15%グラジエントゲル上で分離したIgG14サンプルを除く)。電気泳動は1x電極緩衝液(0.2 Mトリス-HClおよび2 M グリシン)中、100 V、23 mAで1.5時間行った。次に、SDS-PAGEゲルを10%(v/v)酢酸および10%(v/v)メタノールに浸してサンプルを固定し、真空スラブゲル乾燥機(Hoefer Scientific, San Francisco, CA, USA)を用いて80℃で乾燥させた。35S-トランスラベル(Santa Cruz Biotechnology)で広範囲マーカーの位置に印を付け、FLA-2000ホスホイメージャーおよびソフトウエア(Fuji Film, Tokyo, Japan)を用いてタンパク質の分析および定量を行った。
【0057】
[固相CD81-LEL結合アッセイ]
CD81の大型細胞外ループは、E2糖タンパク質結合を仲介するのに充分であることが示されており(Pileri et al., 1998, Petracca et al., 2000, Pileri et al., 1998)、また、E2相互作用部位を形成する全ての残基を含む(Drummer et al., 2002)。従って、可変領域欠損変異体においてCD81-LEL結合能力を速くスクリーニングするため、本発明者らは、以前に記載された(Drummer et al., 2002)CD81の大型細胞外ループ残基113-201連結マルトース結合タンパク質(MBP)(MBP-LEL)で構成されるキメラを用いて作成した固相結合アッセイを使用した。
簡単にいうと、96ウェルmaxisorb酵素連結免疫吸着剤プレート(Nalge Nunc)を5 μg/mLの二量体CD81 MBP-LELを含むPBSでコーティングし、16時間、4℃にてインキュベートした。MBP-LELを除去して、BSA10PBS(10 mg/mL BSA (Sigma)を含むPBS)中で2時間、37℃にてブロッキングし、非特異的結合を減少させた。次に、プレートをPBST(0.05%ツイーン-20 (Sigma)を含むPBS)中で4回洗滌してから、全てのタンパク質溶解調製物をBSA5PBST(5 mg/mL BSAを含むPBST)による12の2倍段階希釈(at twelve two-fold serial dilutions)で加えた。プレートを2時間室温にてインキュベートし、再度洗滌し、結合したE2をコンホメーション依存性坑E2モノクローナル抗体H53(BSA5PBSTで1:1000希釈)を用いて1時間探索した。PBSTでの更なる洗滌の後、抗体に結合したE2複合体を、ウサギ坑マウス免疫グロブリン-ホースラディッシュペルオキシダーゼコンジュゲート(DAKO)(BSA5PBS/ツイーンで1:1000希釈)を用いて検出し、テトラメチルベンジジン基質(Sigma)を製造者の使用説明書に従って用いて顕色させた。Fluostar(BMG technologies)にて結果物の吸光度値(光学密度)を450 nm−620 nm(バックグラウンド)で読んだ。次に、このデータを、先のセクションでコンホメーション依存性抗体H53によって検出し、可視化し、定量した単量体E2に対して正規化した。
【0058】
(E2-myc-CD81細胞表面結合アッセイ)CHO-K1細胞を12ウェル培養プレートに1.25×105細胞/ウェルで蒔き、24時間後に2 ・gのpcDNA3-CD81でトランスフェクションした。トランスフェクション48時間後、CD81トランスフェクションしたCHO-K1細胞を氷上で冷却し、BSA10PBSで段階希釈した野生型または可変領域欠損を含むE2-mycタンパク質と共に4時間氷上でインキュベートした。次に、細胞をBSA10PBS中で2回洗滌し、107 CHO-K1細胞を用いて2時間氷上でプレクリアした125I-MAb 9E10(106 cpm)と共に1時間インキュベーションした。BSA10PBSでさらに4回洗滌した後、1%SDSを含むPBS中で細胞を溶解してPackard Auto-Gammaカウンターで計数した。
【0059】
【表1−1】

【0060】
表1つづき
【表1−2】

【0061】
【表2】

【0062】
【表3】

【0063】
【表4】

【0064】
【表5】

【0065】
【表6】

【実施例2】
【0066】
[1.HCV感染個体から得た血清のパネルで精査したE2-mycおよびE2 Δ123-mycの抗原構造]
HCV感染個体から得た血清のパネルを用いて、生合成的に標識したE2-mycとE2 Δ123-mycの全体的な抗原プロフィールを免疫沈降によって比較した。先に記載された(Grollo et al., 2006)H77c E1E2偽型レトロウイルス粒子に対する中和抗体の存在について、観察される0〜1,600のにわたる50%中和価で(図24、下のパネル)前記血清をスクリーニングした。E2-mycの抗体反応性パターン(図24、上のパネル)はE2 Δ123-mycの抗体反応性パターン(図24、中のパネル)とほとんど同一であり、2つのタンパク質の巨視的(gross)抗原構造は類似することが示された。
[2.E2-myc野生型および変種タンパク質のCD81結合特性]
分泌E2-mycタンパク質がHCV細胞受容体CD81の大型細胞外ループ(LEL)と相互作用する能力を調べた。このアッセイでは、CD81の大型細胞外ループ(残基113-201;“CD81-LEL”)と融合させた固相マルトース結合タンパク質を用いたELISAで、コンホメーション依存性E2モノクローナル抗体(H53)を用いてCD81-E2-myc結合を検出した。1以上の可変領域の欠損を含むE2-mycタンパク質は野生型レベルのCD81-LEL結合を示し、E2の全体的な折りたたみが欠損によって検出可能な程度に影響されなかったことが再度示された(図25A、図25B)。対照的に、LEL結合部位変異(L441M)を含むE2 L441M-mycとCD81-LELとの間の結合は観察されず、結合アッセイの特異性が確かめられた(図25A)。
【0067】
[3.E2-myc野生型および変種タンパク質がCHO-K1細胞で発現された全長CD81と相互作用する能力]
先に記載された(Drummer et al., 2002)全長CD81発現ベクターでトランスフェクションしたCHO-K1細胞を用いる細胞表面結合アッセイによって、E2-mycタンパク質の全長CD81受容体との相互作用能力を決定した。分泌E2-myc野生型および変種タンパク質を段階希釈して、CD81トランスフェクトCHO-K1細胞と氷上でインキュベートした。洗滌の後、C末端c-mycエピトープタグを対象とする125I標識モノクローナル抗体9E10を用いることにより、結合したE2-mycタンパク質を検出した。アッセイの特異性は、L441M CD81結合部位変異を含むE2 L441M-mycによる野生型CD81トランスフェクトCHO-K1細胞との結合の欠如によって確かめた(図26A)。
図26Aおよび26Bに示す結果は、E2-myc、E2 Δ23-myc、E2 Δ13-mycおよびE2 Δ123-mycが同様のCD81結合特性を有し、一方でHVR1とHVR2の欠損(E2 Δ12-myc)がE2 Δ23-mycによる結合と比較してCD81結合のおよそ50%の減少を引き起こした(p<0.035)ことを示した。対照的に、E2 Δ13-myc(E2-mycのものと同一の結合曲線を示す)とE2 Δ123-mycのCD81結合特性は有意に異ならず(p=0.62)、E2 Δ12-mycでHVR1およびHVR2が存在しない場合にigVRの存在はCD81結合機能を損なうことが示された。HVR1、HVR2およびigVRはE2 RBD661のコアフォールディング特性に必要とされないが、これらのデータは、CD81結合部位が適切に形成されるまたは受容体に完全に接近可能となるような、HVR1とHVR2のうちの1つまたは両方とigVRとの間の機能的相互作用を指し示す。
図25Aおよび25Bでは一重欠損や多重欠損したE2-myc構築物の組換えCD81-LELとの結合におけるバリエーションは検出されなかったが、図26Aおよび26Bでは表面発現CD81との結合における相違が観察され、恐らくは、単離物で発現された場合対天然のテトラスパニンで発現された場合のLEL構造の微妙な相違を反映したのだろう。
【0068】
[4.材料および方法]
[中和アッセイ]
免疫ヒト血清および対照ヒト血清がHCV糖タンパク質偽型HIV-1ルシフェラーゼレポーターウイルスによる1サイクル(single cycle)の感染を中和する能力を次のように決定した。pE1E2プラスミドおよびpNL4.3LUCR-E-プラスミドでHEK-293T単層(6ウェル培養皿の1ウェルあたり350,000細胞)をコトランスフェクションすることによって、HCV糖タンパク質偽型HIV-1ルシフェラーゼレポーターウイルスを調製した(Drummer et al., 2003)。5%のCO2を含む加湿環境で37℃にて3日間のインキュベーションの後、0.45 μm無菌シリンジフィルター(Sartorius)を通して培養上清を濾過した。熱不活化した免疫ヒト血清および対照ヒト血清の希釈物をHCV糖タンパク質HIV-1ルシフェラーゼレポーターウイルスとプレインキュベートし(1h)、次に48ウェル組織培養プレート中のHuh7細胞単層に4つ組みで加えた。4時間のインキュベーション(37℃、5%CO2)の後、細胞をPBSで洗滌して新たな培地に置換した。さらに3日間のインキュベーション(37℃、5%CO2)の後、細胞を溶解し、溶解物を遠心分離によって清澄にしてから、ルミネッセンス光学部品を取り付けたFluostar(BMG)でルシフェラーゼ活性についてアッセイ(Promega)した。個々の血清の中和価を、培地のみとプレインキュベートしたHCV糖タンパク質偽型HIV-1ルシフェラーゼレポーターウイルスと比較して50%の中和を生じる血清希釈度として決定した。
【0069】
[放射性免疫沈降]
6ウェル培養皿に500,000細胞/ウェルで蒔いた293T細胞を、Fugene 6(Roche)を用いてE2-myc発現ベクターでトランスフェクションした。トランスフェクション24時間後、細胞を150 μCiトランス-35S-ラベル/ウェル(Santa Cruz Biotechnology, Santa Cruz, CA, USA)を含むL-システインおよびL-メチオニン欠乏DMF10(DMEM[MP Biomedicals]、10%(v/v)熱不活化ウシ胎児血清[Invitrogen]および2 mM L-グルタミン[GE Healthcare])で標識した。細胞上清を回収した後、標識した分泌タンパク質を0.6 M KCl、0.05 M トリス pH 7.4、1 mM EDTA、0.02%アジ化ナトリウム、1%トライトンX-100に適応させ、BSA(Sigma)と結合させたCNBr活性化セファロース(GE Healthcare)を用いて関連する抗体の存在下で16時間、4℃にてプレクリアした。次に、30%(v/v)プロテイン-Gセファロース(GE Healthcare)を用いて、清澄化した上清中の抗体-抗原複合体を免疫沈降し、RIP洗浄緩衝液(0.5 M NaCl、0.05 M トリス pH 7.4、1 mM EDTA、0.02%アジ化ナトリウムおよび1%トライトンX 100)中で3回、PBS中で1回洗滌した。免疫沈降したタンパク質に10-15%ポリアクリルアミドグラジエントゲル中で非還元条件下SDS-PAGEを行い、ホスホイメージャーでスキャンして可視化した。
[E2-mycタンパク質の一時的発現]
HEK 293T細胞(6ウェル培養プレートの1ウェルあたり350,000細胞)を、Fugene 6(Roche)を用いてE2-myc発現ベクターでトランスフェクションした。トランスフェクション8時間後、トランスフェクション培地をOptimem(Invitrogen)で置換し、5%のCO2を含む加湿環境で37℃にて3日間、細胞をインキュベーションした。組織培養液を0.45 μm孔径フィルターに通して清澄化し、次にCentricon YM30濃縮機(Amersham)でおよそ10倍に濃縮した。
【0070】
[組換えCD81の大型細胞外ループ(CD81-LEL)の結合特性]
E2-mycタンパク質がHCV細胞受容体CD81と相互作用する能力を、固相エンザイムイムノアッセイを用いて調べた。CD81の組換え大型細胞外ループ(残基113-201)と融合させたマルトース結合タンパク質を5 μg/mlで含むPBSを用いてエンザイムイムノアッセイプレート(Nunc Maxisorb(登録商標))を4℃で一晩コーティングした。コーティング溶液を除去し、ウシ血清アルブミン(10 mg/ml)を含むPBS(BSA10PBS)で未占有部位を1時間室温にてブロッキングした。0.05%ツイーン20を含むPBS(PBST)でプレートを4回洗滌した。5 mg/mlウシ血清アルブミンを含むPBS(BSA5PBST)50 μlで分泌E2-mycタンパク質を段階希釈し、2時間インキュベートした。E2特異的モノクローナル抗体に続いてホースラディッシュペルオキシダーゼ連結ウサギ坑マウス免疫グロブリン(Dako)を用いて、結合したE2-mycタンパク質を検出した。テトラメチルベンジジン塩酸塩基質を用いてプレートを顕色させ、1M HClの添加により停止させた。Fluostarプレートリーダー(BMG technologies)で450 nmの吸光度値を測定し、620 nmのバックグラウンドを差し引いた。
[CD81結合特性]
CHO-K1細胞を12ウェル培養プレートに1.25×105細胞/ウェルで蒔いて、24時間後に2 μgのpcDNA3-CD81でトランスフェクションした。トランスフェクション48時間後、CD81トランスフェクトCHO-K1細胞を氷上で冷却し、野生型E2-mycタンパク質または可変領域欠損を含むE2-mycタンパク質のBSA10PBSでの段階希釈物と共に4時間氷上でインキュベートした。次に、細胞をBSA10PBS中で2回洗滌して、107のCHO-K1細胞を用いて2時間氷上でプレクリアした125I-MAb 9E10(106 cpm)と1時間インキュベーションした。さらに4回BSA10PBSで洗滌した後、1%SDSを含むPBS中で細胞を溶解し、Packardオートガンマカウンターで計数した。
【実施例3】
【0071】
[1.精製したE2-his野生型および変種タンパク質のSDS-PAGE分析]
E2-his野生型タンパク質およびE2-his変種タンパク質の精製を還元条件下SDS-PAGEによって評価した。図27は精製した各タンパク質種についてただ1つのバンドを示した。各タンパク質種の移動は欠損させた可変領域の数と一致していた。例えば、3つの可変領域を欠くE2 Δ123-hisは最も速い移動を示した。タンパク質バンドの拡散した性質はE2のグリコシル化と一致する。
[2.精製したE2-hisタンパク質のブルーネイティブPAGE]
ブルーネイティブポリアクリルアミドゲル電気泳動を用いて、精製したE2-his野生型タンパク質およびE2-his変種タンパク質のオリゴマー化状態を分析した。図28は、単量体および二量体に分子量で対応する各E2-hisタンパク質の2つの主要なバンドを示す。
[3.E2-hisタンパク質の免疫検出]
精製したE2-his野生型タンパク質およびE2-his変種タンパク質をウエスタンブロットでコンホメーション非依存性モノクローナル抗体(H52)によって検出した。予想した分子量で移動する主要なタンパク質種が各E2-hisタンパク質変種について現れた(図29)。
【0072】
[4.E2-his野生型および変種タンパク質のCD81結合特性]
精製したE2-hisタンパク質がHCV細胞受容体CD81の大型細胞外ループ(LEL)と相互作用する能力を調べた。このアッセイでは、CD81の大型細胞外ループ(残基113-201;“CD81-LEL”)に融合させた固相マルトース結合タンパク質を用いたELIZAでコンホメーション依存性E2モノクローナル抗体(H53)を用いて、CD81-E2-his結合を検出した。可変領域の一重欠損または多重欠損を含むE2-hisタンパク質は野生型レベルのCD81-LEL結合を表し、E2の全体的なフォールディングは欠損によって検出可能な程度に影響されないことが示された(図30A)。対照的に、E2-hisタンパク質とE2結合部位変異(F186S)を含むCD81-LELとの間の結合が観察されず、結合アッセイの特異性が確かめられた(図30B)。
[5.E2-hisタンパク質変種で2回免疫後に得られたマウス血清の相同E2-his抗原に対する免疫反応性]
E2-his野生型タンパク質およびE2-his変種タンパク質で2回免疫後に得られたマウス血清の固相“相同抗原”(すなわち、特定のマウス群を免疫するのに用いる抗原)に対する免疫反応性をELISAによって調べた。ワクチン接種した動物の各々において、相同固相抗原に対する実質的な抗体結合活性が示された(図31)。対照的に、固相E2-hisタンパク質に対する抗体反応性は、アジュバント単独でワクチン接種したマウスにも各ワクチン接種群から免疫前に得た2つの代表的な対照血清(前採血)にも検出されず(データは示さず)、E2-hisタンパク質を受けた動物が免疫原に特異的な抗体を誘導したことが確かめられた。
【0073】
[6.E2-hisタンパク質変種で2回免疫後に得られたマウス血清のE2-his抗原およびE2Δ123-his抗原に対する免疫反応性]
各ワクチン接種群由来の免疫血清の抗体が固相E2-his(3つの可変領域を含む)に結合する能力を、固相E2 Δ123-his(3つの可変領域を欠く)に対する抗体反応性とELISAで比較した。全ての免疫群について、固相E2-his(図32A)および固相E2 Δ123-his(図32B)に対する実質的な結合力価を観察した(アジュバント単独を除く;データは示さず)。
結合力価における見掛けの差が有意であるかどうかを決定する目的で、種々の免疫群について観察された抗体結合力価のペアワイズ統計解析を行った。表7は、E2-his免疫群について算出した固相E2-hisに対する抗体価が他の免疫群のものと実質的に異なっていたこと(p>0.06)を示す。しかしながら、E2 Δ1-his免疫群対E2 Δ13-his、E2 Δ23-hisおよびE2 Δ123-hisの間に、固相E2-hisに対する抗体反応性の統計的に有意な差が観察された(p≦0.04)。
種々の免疫群の固相E2 Δ123-hisに対する抗体結合力価のペアワイズ統計解析は、E2-his免疫群と比較して、E2 Δ123-his免疫群の抗体反応性の高度に有意な増加を明らかにした(p=0.003、表8)。E2 Δ1-his、E2 Δ3-hisおよびE2 Δ12-his免疫群対E2-his免疫群について抗体反応性の統計的に有意な増加が観察され、E2 Δ2-his免疫群に対しE2 Δ1-his免疫群についても抗体反応性の統計的に有意な増加が観察された(p≦0.04)。
[7.E2-hisタンパク質変種で3回免疫後に得られたマウス血清の相同E2-his抗原に対する免疫反応性]
E2-his野生型タンパク質およびE2-his変種タンパク質で3回免疫後に得られたマウス血清の固相“相同抗原”(すなわち、特定のマウス群を面益するのに用いた抗原)に対する免疫反応性をELISAによって調べた。ワクチン接種した動物の各々では相同固相抗原に対する実質的な抗体結合活性が示されたが(図33)、各ワクチン接種群由来の免疫前に得られた2つの代表的な対照血清(前採血)では実質的な抗体結合活性が示されなかった(データは示さず)。さらに、アジュバント単独でワクチン接種したマウスでは固相E2-hisタンパク質に対する抗体反応性が検出されず(データは示さず)、E2-hisタンパク質を受けた動物が免疫原にと気的な抗体を誘導したことが確認された。
【0074】
[8.E2-hisタンパク質変種で3回免疫後に得られたマウス血清のE2-his抗原およびE2Δ123-his抗原に対する免疫反応性]
各ワクチン接種群由来の免疫血清の抗体が固相E2-his(3つの可変領域を含む)と結合する能力を、固相E2 Δ123-his(3つの可変領域を欠く)に対する抗体反応性とELISAで比較した。全ての免疫群(アジュバント単体を除く)について固相E2-hisに対する実質的な結合力価(図34A)と固相E2 Δ123-hisに対する実質的な結合力価(図34B)が観察された (データは示さず)。
結合力価における見掛けの差が有意であるかどうかを決定する目的で、種々の免疫群について観察された抗体結合力価のペアワイズ統計比較を行った。第2の免疫後に得られたデータと対照的に、表9は、E2-his免疫群について算出した固相E2-hisに対する抗体価が他の7つの免疫群のうちE2 Δ123-his(p=0.11)を除く6つの免疫群のものより有意に高かった(p=0.003〜0.04)ことを示した。
種々の免疫群の固相E2 Δ123-hisに対する抗体結合力価のペアワイズ統計解析は、E2 Δ123-his免疫群の抗体反応性において、E2-his免疫群と比較して高度に有意な増加を明らかにした(p=0.0007、表10)。E2-his免疫群対E2 Δ3-his免疫群、E2 Δ12-his免疫群およびE2 Δ23-his免疫群の間にも統計的に有意な差が観察され、E2 Δ1-his免疫群対E2 Δ3-his免疫群、E2 Δ12-his免疫群、E2 Δ23-his免疫群およびE2 Δ123-his免疫群の間にも統計的に有意な差が観察された(p=0.009〜0.022)。
最後に、各免疫群について固相野生型E2-his抗原(すなわち、HVR1、HVR2およびIgVRを含む)に対して得られた平均結合力価を固相E2 Δ123-his抗原(すなわち、HVR1、HVR2およびIgVRを欠き、保存糖タンパク質コアを表す)に対する結合力価と比較した。免疫原がE2RBDの保存コアで反応性抗体を誘導する相対能力を測る目的で、この解析を行った。表11は、E2-his免疫原(〜4.4倍の減少;p=0.0009)およびE2 Δ-his免疫原(〜2倍の減少;p=0.005)によって誘導された坑血清について、固相E2-his抗原と比べて固相E2 Δ123-his抗原に対して有意に低い抗体価を示す。
【0075】
[9.E2-hisタンパク質変種で3回免疫後に得られたマウス血清の固相Con1 E2RBD-his抗原およびJFH1 E2RBD-myc抗原に対する免疫反応性]
遺伝子型1a H77c分離株に由来するE2-his野生型タンパク質およびE2-his変種タンパク質が交差遺伝子型(cross-genotype)反応性抗体を誘導する能力を、固相Con1 E2RBD-his(遺伝子型1b)抗原および固相JFH1 E2RBD-myc(遺伝子型2a)抗原を用いて免疫血清の免疫反応性をELISAで比較することによって決定した。全ての免疫群(アジュバント単独を除く)について、固相Con1 E2RBD-his(図35A)および固相JFH1 E2RBD-myc(図35B)に対する実質的な結合力価が観察された(データは示さず)。
種々の免疫群の固相Con1 E2RBD-hisに対する抗体結合力価のペアワイズ統計解析は、E2 Δ2-his免疫群、E2 Δ3-his免疫群、E2 Δ12-his免疫群およびE2 Δ123-his免疫群について、E2-his免疫群と比較して有意に高い結合力価を明らかにした(p<0.05、表12)。E2 Δ123-his免疫群において誘導されたCon1 E2RBD-his結合力価もE2 Δ1-hisやE2 Δ23-hisによって誘導されたCon1 E2RBD-his結合力価より有意に高かった(p<0.05)。
対照的に、種々の免疫群の固相JFH1 E2RBD-mycに対する抗体結合力価の同様なペアワイズ統計解析は、群の間に有意に異なる結合力価を明らかにしなかった(表13)。この有意性の欠如にも関わらず、上で観察された傾向がこれらの解析においても明らかとなった。
【0076】
[10.中和]
免疫マウス血清や対照マウス血清が相同H77c株E1E2偽型HIV-1ルシフェラーゼレポーターウイルスによる感染の1サイクルを中和する能力を決定した。熱不活化した免疫マウス血清および対照マウス血清の5倍段階希釈物をE1E2偽型HIV-1ルシフェラーゼレポーターウイルスとプレインキュベートし(1h)、次にHuh7細胞の単層と共に4時間インキュベートした。細胞をPBSで洗滌し、新たな培地を加え、さらに3日間のインキュベーション(5%CO2中で37℃)の後、細胞を溶解してルシフェラーゼ活性についてアッセイした。図36は、培地単独と共にプレインキュベートしたHCV糖タンパク質偽型HIV-1ルシフェラーゼレポーターウイルスと比較して80%の中和を与える血清希釈度として決定した個々の血清の80%中和価を示す。E2-his、E2 Δ123-his、E2 Δ23-hisで免疫したマウスの少なくとも80%が、E1E2-HIV-1偽型に対してそれぞれ908、413、140の平均80%中和価で中和抗体を産生した。対照的に、E2 Δ1-hisまたはアジュバント単独で免疫したマウスの少なくとも80%が、それぞれ7、26の平均80%中和価で80%中和活性を欠いた(表14)。
【0077】
[11.考察]
3つの可変領域のうちの1以上の欠損を含むE2-hisタンパク質は、相同抗原に対して反応性の抗体を誘導することができた。免疫血清が3つの可変領域を含む無傷の野生型E2-hisタンパク質に対して反応する能力を3つの可変領域全てを欠くがCD81結合は保持しているコアE2フォールディングユニットを表すE2 Δ123-hisタンパク質に対するものと比較することによって、抗体応答の特異性を調べた。この分析は、E2-hisタンパク質またはHVR1を欠くE2(E2 Δ1-his)で免疫したマウスがE2のコアドメインに対し反応性の抗体を有意に少なく誘導したことを明らかにした。対照的に、HVR1および2を欠くE2-hisタンパク質(E2 Δ12-his)、HVR1およびigVRを欠くE2-hisタンパク質(E2 Δ13-his)、HVR2およびigVRを欠くE2-hisタンパク質(E2 Δ23-his)または3つの可変領域全てを欠くE2-hisタンパク質(E2 Δ123-his)で免疫したマウスで誘導された抗体は、野生型E2-his抗原およびE2 Δ123-his抗原に対して同様に反応した。これは、HVR2およびigVRが、E2の基礎をなす保存コアドメインに存在するエピトープに接近する抗体を邪魔し得ることを示唆する。この仮説を検証するため、遺伝子型1b(Con1)および遺伝子型2a(JF-H1)に由来するHCVの異種単離体を表すE2RBD構築物を合成した。第三のワクチン接種の後に得られたマウス血清の異種E2RBD構築物に対する免疫応答性は、E2 Δ123-his、E2 Δ12-his、E2 Δ3-his、E2 Δ2-hisで免疫したマウスが遺伝子型1b単離体Con1に存在するエピトープに対して有意に高いレベルの交差反応性抗体を誘導したことを明らかにした。遺伝子型2a単離体JF-H1のE2RBDに対する交差反応性抗体も誘導されたが、免疫原群の間の結合力価の差は統計学的に有意ではなかったが上述のものと同様の傾向が観察された。これらのデータは、少なくとも1つの可変領域、好ましくはHVR2および/またはigVRの欠損がE2-hisタンパク質のより広範な中和能力を有する交差反応性抗体を誘導する能力を向上させ得ることを示唆する。
【0078】
HCV E1E2偽型レトロウイルス粒子を用いて、免疫血清が相同ウイルスを中和する能力を調べた。データは、E2 Δ123-hisまたはE2 Δ23-hisでワクチン接種されたマウスが、HVR1のみを欠くE2-hisと比較して平均〜59倍および20倍高い中和抗体価を持つことを示した(それぞれp=0.11およびp=0.002)。HVR1は既にE1E2糖タンパク質複合体の免疫優性領域であることが示されていた。HVR1領域単独の欠損は、重要な型特異性免疫優性エピトープの除去に終わり得る。しかしながら、HVR1欠損した構築物におけるHVR2領域および/またはigVR領域の存在は、基礎をなす潜在的な中和エピトープを遮蔽し得る。従って、野生型E2-hisタンパク質によって誘導された抗体応答は大部分がHVR1領域に向けられているようであり保存コアに向けられていないようである。これは (i)低レベルのE2コアドメイン反応性抗体(図34B)および(ii)低レベルの交差反応性抗体(図35A)によって部分的に反映される。
これらのデータは、HVR2領域および/またはigVR領域の欠損がこれらの可変領域を全く欠損しないまたはHVR1のみを欠くE2 RBD構築物の使用に対して有意な改善点であることを示唆する。少なくともHVR2および/またはigVRあるいは3つの可変領域全てを欠くE2 RBDタンパク質が遺伝子型の範囲内で多岐にわたるHCV株を交差中和することができる抗体に加えて交差遺伝子型中和を誘導し得るようである。1以上の可変領域を欠くE2 RBDタンパク質は、HCV感染の予防または治療のための治療的ワクチン接種ストラテジーまたは予防的なワクチン接種ストラテジーの双方にとって有用なツールであり得る。加えて、これらの可変領域を欠損したE2 RBD構築物が、保存E2コア領域を対象とする抗体の、治療的および予防的な用途のためHCVを中和する新規な特異性を誘導するのにも有用であり得る。
【0079】
[12.材料および方法]
[野生型および変種HCV E2-his cDNAの構築ならびにコードタンパク質の哺乳動物細胞での分泌発現]
[HCV E2-his変種をコードするcDNA発現プラスミドの作成]
野生型E2タンパク質をコードする合成遺伝子フラグメント(残基384-661;株H77c)をGeneart AG (Regensburg, Germany)によって構築した。成熟ポリペプチドの発現培地への分泌を容易にする目的で、野生型E2成熟タンパク質のN末端にインフレームでヒトトリプシノーゲンシグナルペプチド(MNPLLILTFVAAALA)を付加した。翻訳開始を強めるためにN末端の直前にコザック配列を導入し、続く分泌タンパク質の精製を固定化金属アフィニティークロマトグラフィーによって可能にするために(His)6配列をインフレームで追加した。効率的な翻訳終結を確実にするためにC末端のHisタグの後に停止コドンを追加した。この構築物をE2-hisと呼ぶ。E2-his cDNAのコドン使用頻度をホモサピエンス遺伝子のコドンに適応させた。NheI-XhoI消化したpcDNA3.1(Invitrogen)へ該Geneart cDNAをライゲーションする目的で、該cDNAの5’末端にNheI制限部位を3’末端にXhoI制限部位を導入した。
製造者の使用説明書に従ってAccuprime Pfx DNAポリメラーゼ(Invitrogen)と表15に示すプライマーとで標準PCR変異生成手段を用いて、1以上の可変領域がリンカー配列によって置換したE2-his成熟タンパク質の7つの変種をコードするcDNAを構築した。E2-hisのcDNAを構築するのに用いたプライマーの組合せを表16に示す。
具体的なPCRパラメータは次の通りであった:95℃で2分間の変性に続き、95℃で15秒間、64℃で30秒間および68℃で2分間を18サイクル、最後の2分間は68℃でインキュベーション。
Geneart野生型E2-his cDNAを全てのE2-his変種cDNAについてのPCR鋳型として用いた。複数のフラグメントの逐次的オーバーラップPCRを用いて各欠損変種を構築した。一旦各cDNAを完成させたら、それをNheIおよびXhoIで消化し、pcDNA3.1へライゲーションした。Qiagenマキシキットをを用いてプラスミドDNAの大規模調製を実施した。全てのプラスミド構築物のヌクレオチド配列はBig Dye Terminator v3.1 Cycle SequencingおよびApplied Biosystems自動シークエンサーを用いた両方のストランドのシークエンシングによって検証した。
【0080】
成熟野生型E2タンパク質および成熟変種E2タンパク質の配列は次の通りである。
E2-his成熟タンパク質
ETHVTGGNAGRTTAGLVGLLTPGAKQNIQLINTNGSWHINSTALNCNESLNTGWLAGLFYQHKFNSSGCPERLASCRRLTDFAQGWGPISYANGSGLDERPYCWHYPPRPCGIVPAKSVCGPVYCFTPSPVVVGTTDRSGAPTYSWGANDTDVFVLNNTRPPLGNWFGCTWMNSTGFTKVCGAPPCVIGGVGNNTLLCPTDCFRKHPEATYSRCGSGPWITPRCMVDYPYRLWHYPCTINYTIFKVRMYVGGVEHRLEAACNWTRGERCDLEDRDRSE
【0081】
E2Δ1-his成熟タンパク質
ETHQNIQLINTNGSWHINSTALNCNESLNTGWLAGLFYQHKFNSSGCPERLASCRRLTDFAQGWGPISYANGSGLDERPYCWHYPPRPCGIVPAKSVCGPVYCFTPSPVVVGTTDRSGAPTYSWGANDTDVFVLNNTRPPLGNWFGCTWMNSTGFTKVCGAPPCVIGGVGNNTLLCPTDCFRKHPEATYSRCGSGPWITPRCMVDYPYRLWHYPCTINYTIFKVRMYVGGVEHRLEAACNWTRGERCDLEDRDRSE
【0082】
E2Δ2-his成熟タンパク質
ETHVTGGNAGRTTAGLVGLLTPGAKQNIQLINTNGSWHINSTALNCNESLNTGWLAGLFYQHKFNSSGCPERLASCGSSGCWHYPPRPCGIVPAKSVCGPVYCFTPSPVVVGTTDRSGAPTYSWGANDTDVFVLNNTRPPLGNWFGCTWMNSTGFTKVCGAPPCVIGGVGNNTLLCPTDCFRKHPEATYSRCGSGPWITPRCMVDYPYRLWHYPCTINYTIFKVRMYVGGVEHRLEAACNWTRGERCDLEDRDRSE
【0083】
E2Δ3-his成熟タンパク質
ETHVTGGNAGRTTAGLVGLLTPGAKQNIQLINTNGSWHINSTALNCNESLNTGWLAGLFYQHKFNSSGCPERLASCRRLTDFAQGWGPISYANGSGLDERPYCWHYPPRPCGIVPAKSVCGPVYCFTPSPVVVGTTDRSGAPTYSWGANDTDVFVLNNTRPPLGNWFGCTWMNSTGFTKVCGAPPCGSSGCPTDCFRKHPEATYSRCGSGPWITPRCMVDYPYRLWHYPCTINYTIFKVRMYVGGVEHRLEAACNWTRGERCDLEDRDRSE
【0084】
E2Δ12-his成熟タンパク質
ETHQNIQLINTNGSWHINSTALNCNESLNTGWLAGLFYQHKFNSSGCPERLASCGSSGCWHYPPRPCGIVPAKSVCGPVYCFTPSPVVVGTTDRSGAPTYSWGANDTDVFVLNNTRPPLGNWFGCTWMNSTGFTKVCGAPPCVIGGVGNNTLLCPTDCFRKHPEATYSRCGSGPWITPRCMVDYPYRLWHYPCTINYTIFKVRMYVGGVEHRLEAACNWTRGERCDLEDRDRSE
【0085】
E2Δ13-his成熟タンパク質
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【0086】
E2Δ23-his成熟タンパク質
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【0087】
E2Δ123-his成熟タンパク質
ETHQNIQLINTNGSWHINSTALNCNESLNTGWLAGLFYQHKFNSSGCPERLASCGSSGCWHYPPRPCGIVPAKSVCGPVYCFTPSPVVVGTTDRSGAPTYSWGANDTDVFVLNNTRPPLGNWFGCTWMNSTGFTKVCGAPPCGSSGCPTDCFRKHPEATYSRCGSGPWITPRCMVDYPYRLWHYPCTINYTIFKVRMYVGGVEHRLEAACNWTRGERCDLEDRDRSE
【0088】
[細胞培養]
ペニシリン/ストレプトマイシン/ファンギゾン(Invitrogen)を補ったフリースタイル(FreeStyle:商標)発現培地(Invitrogen)中でフリースタイル(FreeStyle:商標)293-F細胞を培養した。全ての細胞を、8%CO2の環境を有する加湿インキュベーター中で37℃にて維持した。
[一時的タンパク質発現]
pcDNA3.1ベースの発現プラスミドと293フェクチン(fectin)トランスフェクション試薬(Invitrogen)とを製造者の使用説明書に従って用いたトランスフェクションによって、各E2-hisタンパク質の一時的発現をフリースタイル(FreeStyle:商標)293-F細胞内で実施した。総容量180 mlの該細胞を最終濃度1×106生存細胞/mlでトランスフェクションし、無菌振盪フラスコ(Corning)中で、8%CO2の環境を有する37℃の加湿インキュベーター内で150 rpmにて回転しているオービタルシェーカー(IKA)上で5日間インキュベートした。トランスフェクション24時間後、細胞培養物に0.5% v/vの最終濃度までトリプトンN1(Organotechnie, France)を補った。トランスフェクション5日後、細胞培養物を典型的に回収した。4-20%トリス-グリシンSDSポリアクリルアミドゲルを用いた細胞培養上清のサンプルの電気泳動とクマシーブルー試薬での染色によるタンパク質の可視化によって、タンパク質の発現を調べた。タンパク質の精製のため、細胞培養上清を2500 rpmでの遠心分離によって回収し、続いて、クロマトグラフィーの前に0.45 μMフィルター(Nalgene)を通過させた。
【0089】
[発現した野生型および変種HCV E2-hisタンパク質の精製]
濾過に次いで、細胞培養上清にニッケルセファロースを用いた固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)を行い、野生型E2-hisタンパク質および変種E2-hisタンパク質を精製した。
精製の手順は下に記載する。
(1.緩衝液)
Ni-MAC緩衝液A
50 mM NaH2PO4 pH 8.0
300 mM NaCl
10 mM イミダゾール
Ni-MAC緩衝液B (溶出)
50 mM NaH2PO4 pH 8.0
300 mM NaCl
500 mM イミダゾール
(2.プロトコール)
1. 手順2〜6を4〜8℃にて実施した。
2. 10 mlのPoly-Prepカラム(Bio-Rad)に入れた1 mlのNiセファロース6 Fast Flow樹脂(GE Healthcare)を5容量のddH2Oで洗浄した。
3. 10 mlのNi-MAC緩衝液Aでカラムを平衡化した。
4. サンプルをカラム上にロードし、ブレークスルー(B/T)を収集した。
5. 10 mlのNi-MAC緩衝液Aでカラムを洗浄した。
6. 5 mlのNi-MAC緩衝液B(溶出)でタンパク質を溶出し、1 mlの画分を収集した。
7. 96ウェルプレートフォーマットBradfordアッセイおよびクマシー染色SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)ゲルを用いてピーク画分を同定した。
8. ピーク画分をプールして、1X PBS中で4℃にて一晩透析した。
9. 透析後、96ウェルプレートフォーマットBradfordアッセイおよび検量線用の1 mg/mlのBSAを用いて、タンパク質の濃度を決定した。
【0090】
[Con1 E2RBD-his cDNAおよびJFH1 E2RBD-myc cDNAの構築とコードタンパク質の哺乳動物細胞における分泌発現]
(Con1 E2RBD-hisをコードするcDNA発現プラスミドおよびJFH1 E2RBD-mycをコードするcDNA発現プラスミドの作製)
エキスパンドHifiポリメラーゼ(Roche)と表17に示すプライマーとを用いたPCRによって、Con1 E2(HCV Con1ポリプロテイン残基384〜661;Genbankアクセッション番号AJ238799)をコードするcDNAおよびJFH1 E2(HCV JFH1ポリプロテイン残基384〜665;Genbankアクセッション番号AB047369)をコードするcDNAを調製した。フォワードプライマーは、cDNAの5’端にインフレームで組み込むためのNheI制限部位をコードしていた。リバースプライマーは、Con1 cDNAの3’端とJFH1 cDNAの3’端にそれぞれインフレームで付加するための(His)6エピトープタグとc-mycエピトープタグをコードしており、その両方のケースについて、その後にTAG翻訳終結コドンおよびXbaI制限部位が続いていた。具体的なPCRパラメータは次の通りであった:95℃で5分間の変性、続いて92℃で1分間、55℃で1分間および72℃で2分間を30サイクル、72℃で10分間の最後のインキュベーション。発現したタンパク質の分泌を容易にするため、ベクターpcDNA3の組織プラスミノーゲンアクチベータシグナルペプチドの下流に該cDNAをクローニングした。Big Dye Terminator v3.1 Cycle SequencingおよびApplied Biosystems Automated Sequencerを用いてクローニングしたcDNAのヌクレオチド配列を検証した。
(Con1 E2RBD-hisおよびJFH1 E2RBD-mycの一時的発現)
Fugene 6(Roche)を用いてCon1 E2RBD-his発現ベクターおよびJFH1 E2RBD-myc発現ベクターでHEK 293T細胞(6ウェル培養プレート1ウェルあたり350,000細胞)をトランスフェクションした。トランスフェクション8時間後、トランスフェクション培地をOptimen(Inbitrogen)で置換し、5%CO2を含む加湿環境で細胞を3日間37℃にてインキュベートした。1500 rpmで10分間の遠心分離、続いて0.45 μm孔径シリンジフィルターを通す濾過によって、組織培養液を清澄化した。
【0091】
[野生型E2-hisタンパク質および変種E2-hisタンパク質の生化学的および機能的分析]
(ブルーネイティブPAGE)
ブルーネイティブポリアクリルアミドゲル電気泳動(BN-PAGE)を用いて、精製したE2-hisタンパク質のオリゴマー化状態を分析した。10 μgの各タンパク質を10 μlの可溶化緩衝液および1.5 μlのサンプル緩衝液に添加し、4%スタッキングゲルを含む5-15%グラジエント分離ゲル上にロードした。そのゲルをダイの前線がスタッキングゲルに進入するまで4℃、100ボルトで電気泳動した。次に、ダイの前線がゲルの下端に移動するまで、電圧を200ボルトまで増加させた。上部貯水槽において、0.01%Serva Gを含む1×陰極緩衝液で1.5時間電気泳動を行った後、Serva Gを含まない1x陰極緩衝液中で1〜1.5時間電気泳動した。下部貯水槽には1x陽極緩衝液が入っていた。電気泳動の後、ゲルを一晩脱染して、Odysseyスキャナーで680 nmにてスキャンした。
BN-PAGEに用いた溶液類は次の通りである。
ポリアクリルアミドゲル:

他の溶液類:
3xゲル緩衝液;150 mM ビストリス-HCl、.5 M 6-アミノカプロン酸、pH 7.0
10x陰極緩衝液;0.5 M トリシン、150 mM ビストリス
5x陽極緩衝液;0.25 M ビストリス-HCl、pH 7.0
2xビストリスACA;200 mM ビストリス-HCl、1 M 6-アミノカプロン酸、pH 7.0
サンプル緩衝液;50 mg ServaG、500 μl 2xビストリスACA、400 μl 75%スクロース、100 μl 水
可溶化緩衝液;0.5 M 6-アミノカプロン酸、20 mM ビストリス、2 mM EDTA、pH 7.0、1%トライトンX-100、10%グリセロール
脱染;10%酢酸、10%メタノール、80%水
【0092】
(E2-hisタンパク質の免疫検出)
精製したE2-hisタンパク質のサンプルに還元SDS-PAGE、続いてニトロセルロースメンブレンへの電気泳動転写を行った。コンホメーション非依存性E2特異的モノクローナル抗体、次にAlexa fluor 680nm連結ヤギ坑マウス免疫グロブリン(Invitrogen)を用いて、E2-hisタンパク質を検出した。Odyssey検出システムでイムノブロットをスキャンした。
[CD81結合特性]
固相エンザイムイムノアッセイを用いて、E2-hisタンパク質がHCV細胞受容体CD81と相互作用する能力を調べた。CD81の組換え大型細胞外ループ(残基113-201)融合マルトース結合タンパク質を5 μg/mlで含むPBSを用いて、エンザイムイムノアッセイプレート(Nunc Maxisorb(登録商標))を4℃にて一晩コーティングした。コーティング溶液を除去し、未占有部位をウシ血清アルブミン(10 mg/ml)を含むPBS(BSA10PBS)で1時間室温にてブロッキングした。0.05%ツイーン20を含むPBS(PBST)でプレートを4回洗滌した。50 ngのE2-hisタンパク質を、5 mg/mlのウシ血清アルブミンを含むPBS(BSA5PBST)50 μlで段階的に希釈して、2時間インキュベートした。結合したE2-hisタンパク質をE2特異的モノクローナル抗体、次にホースラディッシュペルオキシダーゼ連結ウサギ坑マウス免疫グロブリン(Dako)を用いて検出した。テトラメチルベンジジン塩酸塩基質を用いてプレートを顕色させ、1 M HClの添加によって停止させた。Fluostarプレートリーダー(BMG technologies)で450 nmの吸光度値を測定し、620 nmのバックグラウンドを差し引いた。
【0093】
[野生型E2-hisタンパク質および変種E2-hisタンパク質のマウスでの免疫原性]
(免疫プロトコール)
ISCOMATRIX(登録商標)アジュバント(Pearse and Drane, 2005)と共に調剤した精製E2-his野生型タンパク質および変種タンパク質で7〜8週齢のメスBalb/cマウス10匹のグループを免疫した(表18)。各マウスの投与量は0.1 mlの容量に10 μgの特定のタンパク質および5 μgのISCOMATRIX(登録商標)アジュバントを含んでいた。マウスは3週間隔で3回皮下的に投薬され、第1回目の投薬の1日前ならびに第2回目の投薬および第3回目の投薬の1週間後に採血した。
[酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)]
免疫マウス血清を坑E2抗体の存在についてELISAで調べた。スノードロップ(Galanthis nivalis)(GNA)レクチンを用いて、E2-hisタンパク質、Con1 E2RBD-mycタンパク質またはJFH1 E2RBD-mycタンパク質を96ウェルMaxisorbミクロタイタープレート(Nunc)上に捕獲した。GNAレクチンを5 μg/mlで含むPBSで、プレートを一晩4℃にてコーティングした。未占有部位を100 μlのBSA10PBSで1時間室温にてブロッキングした。プレートを4回PBSTで洗滌した後、E2タンパク質を50 μlのBSA5PBSTで加え、1時間室温にてインキュベートした。プレートを4回PBSTで洗滌した後、マウス血清の段階希釈物を50 μl容量のBSA5PBSTで加え、1時間室温にてインキュベートした。結合した免疫グロブリンをホースラディッシュペルオキシダーゼ連結ウサギ坑マウス免疫グロブリンで検出し、テトラメチルベンジジン塩酸塩基質を用いて顕色させ、1 M HClの添加によって停止させた。Fluostarプレートリーダー(BMG technologies)を用いて450 nmの吸光度と620 nmのバックグラウンドを測定した。バックグラウンドを吸光度から差し引いて結合曲線を作成した。
[中和アッセイ]
免疫マウス血清および対照マウス血清がHCV糖タンパク質偽型HIV-1ルシフェラーゼレポーターウイルスによる感染の1サイクルを中和する能力を次のように決定した。pE1E2プラスミドおよびpNL4.3LUCR-E-プラスミド(Drummer et al., 2003)でHEK-293T単層(6ウェル培養皿の1ウェルあたり350,000細胞)をコトランスフェクションすることによって、HCV糖タンパク質偽型HIV-1ルシフェラーゼレポーターウイルスを調製した。5%CO2を含む加湿環境で37℃にて3日間インキュベーションした後、培養上清を0.45 μm無菌シリンジフィルター(Sartorius)を通して濾過した。熱不活化した免疫マウス血清および対照マウス血清の5倍段階希釈物をHCV糖タンパク質偽型HIV-1ルシフェラーゼレポーターウイルスと共にプレインキュベートし(1h)、次に、48ウェル組織培養プレート中のHuh7細胞の単層に四つ組で添加した。4時間のインキュベーション(37℃、5%CO2)の後、細胞をPBSで洗滌し、培地を置換した。さらに3日間のインキュベーション(37℃、5%CO2中)の後、細胞を溶解して、溶解物を遠心分離により清澄化し、次いでルミネッセンス光学部品を取り付けたFluostar(BMG)でルシフェラーゼ活性(Promega)についてアッセイした。個々の血清の中和価は、培地単独と共にプレインキュベートしたHCV糖タンパク質偽型HIV-1ルシフェラーゼレポーターウイルスと比較して80%中和を与える血清希釈度として決定した。
【0094】
表7. 二回目のワクチン接種後に得られた固相E2-his抗原反応性の抗体価のペアワイズ統計比較。スチューデントt検定を用いてp値を算出した。


【0095】
表8. 二回目のワクチン接種後に得られた固相E2 Δ123-hisタンパク質抗原反応性の抗体価のペアワイズ統計比較。スチューデントt検定を用いてp値を算出した。

【0096】
表9. 三回目のワクチン接種後に得られた固相E2-hisタンパク質抗原反応性の抗体価のペアワイズ統計比較。不等分散を仮定しスチューデントt検定を用いてp値を算出した。


【0097】
表10. 三回目のワクチン接種後に得られた固相E2 Δ123-hisタンパク質抗原反応性の抗体価のペアワイズ統計比較。不等分散を仮定しスチューデントt検定を用いてp値を算出した。


【0098】
表11. 三回目のワクチン接種後に得られたE2-his抗原およびE2 Δ123-his抗原に反応性の抗体価の統計比較。不等分散を仮定しスチューデントt検定を用いてp値を算出した。

【0099】
表12. 三回目のワクチン接種後に得られた固相Con1 E2RBD-hisタンパク質抗原反応性の抗体価のペアワイズ統計比較。不等分散を仮定しスチューデントt検定を用いてp値を算出した。

【0100】
表13. 三回目のワクチン接種後に得られた固相JFH1 E2RBD-mycタンパク質抗原反応性の抗体価のペアワイズ統計比較。不等分散を仮定しスチューデントt検定を用いてp値を算出した。

【0101】
表14. 平均80%中和抗体価および統計比較。不等分散を仮定しスチューデントt検定を用いてp値を算出した。

【0102】
表15. E2-hisタンパク質変種DNA配列の調製のために用いたプライマー

【0103】
表16. E2-hisタンパク質変種DNA配列の調製のために用いたプライマーの組合せ

【0104】
【表7】

【0105】
表18. ISCOMATRIX(R)アジュバント抗原と共に調剤したE2-his野生型タンパク質およびE2-his変種タンパク質でのマウスの免疫

【0106】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
HVR1可変領域、HVR2可変領域およびigVR可変領域を包含するHCV-E2受容体結合ドメインを含む改変C型肝炎ウイルス(HCV)E2糖タンパク質であって、前記可変領域の少なくとも1つにおいて該可変領域の少なくとも一部が可動性リンカー配列で置き換えられている前記改変HCV E2糖タンパク質。
【請求項2】
2つの可変領域において該可変領域の少なくとも一部が可動性リンカー配列で置き換えられている、請求項1記載の改変HCV E2糖タンパク質。
【請求項3】
2つの可変領域がHVR1可変領域とHVR2可変領域である、請求項2記載の改変HCV E2糖タンパク質。
【請求項4】
2つの可変領域がHVR1可変領域とigVR可変領域である、請求項2記載の改変HCV E2糖タンパク質。
【請求項5】
2つの可変領域がHVR2可変領域とigVR可変領域である、請求項2記載の改変HCV E2糖タンパク質。
【請求項6】
3つの可変領域全てにおいて該可変領域の少なくとも一部が可動性リンカー配列で置き換えられている、請求項1記載の改変HCV E2糖タンパク質。
【請求項7】
HVR2可変領域とigVR可変領域の少なくとも1つにおいて該可変領域の少なくとも一部が可動性リンカー配列で置き換えられている、請求項1記載の改変HCV E2糖タンパク質。
【請求項8】
HVR2可変領域とigVR可変領域の両方において該可変領域の少なくとも一部が可動性リンカー配列で置き換えられている、請求項7記載の改変HCV E2糖タンパク質。
【請求項9】
HVR2可変領域において該可変領域の少なくとも一部が可動性リンカー配列で置き換えられている、請求項7記載の改変HCV E2糖タンパク質。
【請求項10】
igVR可変領域において該可変領域の少なくとも一部が可動性リンカー配列で置き換えられている、請求項7記載の改変HCV E2糖タンパク質。
【請求項11】
HVR1可変領域の少なくとも一部が可動性リンカー配列で置き換えられている、請求項7〜10のいずれか1項記載の改変HCV E2糖タンパク質。
【請求項12】
HVR1可変領域、HVR2可変領域およびigVR可変領域を包含するHCV-E2受容体結合ドメインを含む改変C型肝炎(HCV)E2糖タンパク質であって、前記HVR2可変領域の少なくとも一部が可動性リンカー配列で置き換えられている前記改変HCV E2糖タンパク質。
【請求項13】
HVR1可変領域とigVR可変領域の少なくとも1つにおいて該可変領域の少なくとも一部が可動性リンカー配列で置き換えられている、請求項12記載の改変HCV E2糖タンパク質。
【請求項14】
HVR1可変領域、HVR2可変領域およびigVR可変領域を包含するHCV-E2受容体結合ドメインを含む改変C型肝炎(HCV)E2糖タンパク質であって、前記igVR可変領域の少なくとも一部が可動性リンカー配列で置き換えられている前記改変HCV E2糖タンパク質。
【請求項15】
HVR1可変領域とHVR2可変領域の少なくとも1つにおいて該可変領域の少なくとも一部が可動性リンカー配列で置き換えられている、請求項14記載の改変HCV E2糖タンパク質。
【請求項16】
可動性リンカー配列または各々の可動性リンカー配列は、改変HCV E2糖タンパク質がHCV受容体CD81と結合するのを可能にする、請求項1〜15のいずれか1項記載の改変HCV E2糖タンパク質。
【請求項17】
可動性リンカー配列のまたは各々の可動性リンカー配列が、20以下のアミノ酸残基のペプチド配列を含み、且つGly、Ser、Ala、ThrおよびArgからなる群より選択される残基を含む、請求項16記載の改変HCV E2糖タンパク質。
【請求項18】
可動性リンカー配列または各々の可動性リンカー配列がGly-Ser-Ser-Gly(GSSG)配列を含む、請求項17記載の改変HCV E2糖タンパク質。
【請求項19】
HVR1可変領域の配列が、リンカー配列を含むように改変されている場合に、Glu-Thr-His-Gly-Ser-Ser-Gly(ETHGSSG)配列を含む、請求項17記載の改変HCV E2糖タンパク質。
【請求項20】
医薬として許容される担体または賦形剤と共に請求項1〜19のいずれか1項記載の改変HCV E2糖タンパク質を含む組成物。
【請求項21】
さらにアジュバントを含む、請求項20記載の組成物。
【請求項22】
有効量の請求項1〜19のいずれか1項記載の改変HCV E2糖タンパク質を患者に投与することを含む、患者に免疫応答を誘導する方法。
【請求項23】
有効量の請求項1〜19のいずれか1項記載の改変HCV E2糖タンパク質を患者に投与することを含む、患者のHCV感染の予防的処置または治療的処置の方法。
【請求項24】
患者がヒトである、請求項22または23記載の方法。
【請求項25】
患者に免疫応答を誘導することにおける、または患者に免疫応答を誘導するための医薬の製造における、請求項1〜19のいずれか1項記載の改変HCV E2糖タンパク質の使用。
【請求項26】
患者のHCV感染の予防的処置または治療的処置における、または患者のHCV感染の予防的処置または治療的処置のための医薬の製造における、請求項1〜19のいずれか1項記載の改変HCV E2糖タンパク質の使用。
【請求項27】
請求項1〜19のいずれか1項記載の改変HCV E2糖タンパク質を含む、患者に免疫応答を誘導するための薬剤。
【請求項28】
請求項1〜19のいずれか1項記載の改変HCV E2糖タンパク質を含む、患者のHCV感染の予防的処置または治療的処置のための薬剤。
【請求項29】
請求項1〜19のいずれか1項記載の改変HCV E2糖タンパク質に対する単離抗体。
【請求項30】
ポリクローナル抗体である、請求項29記載の単離抗体。
【請求項31】
モノクローナル抗体である、請求項29記載の単離抗体。
【請求項32】
有効量の請求項29〜31のいずれか1項記載の抗体を患者に投与することを含む、患者のHCV感染の予防的処置または治療的処置の方法。
【請求項33】
患者のHCV感染の予防的処置または治療的処置における、または患者のHCV感染の予防的処置または治療的処置のための医薬の製造における、請求項29〜31のいずれか1項記載の抗体の使用。
【請求項34】
請求項29〜31のいずれか1項記載の抗体を含む、患者のHCV感染の予防的処置または治療的処置のための薬剤。
【請求項35】
抗体-抗原複合体の形成を可能にする条件下で患者由来の生物学的サンプルを請求項29〜31のいずれか1項記載の抗体と接触させることと抗体-抗原複合体を検出することとを含み、前記抗体-抗原複合体の形成が前記生物学的サンプルにおけるHCVの存在を示す、患者のHCV感染を検出する方法。
【請求項36】
抗体が検出可能に標識されている、請求項35記載の方法。
【請求項37】
生物学的サンプルが患者由来の血液のような体液のサンプルである、請求項35記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【公表番号】特表2010−501594(P2010−501594A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−525853(P2009−525853)
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【国際出願番号】PCT/AU2007/001221
【国際公開番号】WO2008/022401
【国際公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(507062107)ザ・マクファーレーン・バーネット・インスティテュート・フォー・メディカル・リサーチ・アンド・パブリック・ヘルス・リミテッド (2)
【Fターム(参考)】