説明

組立式ケースのコーナー部構造

【課題】 この発明は、組立式ケースのコーナー部構造の改良に関する。
【解決手段】ケース本体のコーナー部で、隣接する一対の周壁部の上縁部にそれぞれ形成された切欠部と、隣接する一対の周壁部に外嵌する嵌合溝を有するソケット部と、該ソケット部の両側の開口部にそれぞれ基端が固定されて前記切欠部に掛止められる一対の掛止突出片とを有するコーナー部材と、前記周壁部の上縁部に沿って外嵌される外嵌溝を有し、前記切欠部に嵌合された掛止突出片の上面部および側面部を覆い、ソケット部の開口部の端面と接するフレーム部材とからなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、組立式ケースのコーナー部構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の通い箱等として用いられる組立式ケースは、プラスチック製の段ボール状のシート(プラスチックダンボール)にてC式形態の箱部分を組立て、その後箱部分の上縁部にチャンネル状のフレーム部材を嵌合し、またコーナー部分では、それぞれのフレーム部材の端部側にコーナー部材を外嵌しており、前記シートとフレーム部材とコーナー部材の3つを超音波やリベット・カシメピン(樹脂・金属)などによつてカシメることによりケースを完成している。
上記構成では、プラスチックダンボールで組み立てられたケースの上縁部に、フレーム部材とコーナー部材を順々に被せてからカシメているために、シート・フレーム部材・コーナー部材ごとに段差が生じるという欠点があった。
また、フレーム部材とコーナー部材とはそれぞれがフリーであるため、そのままの状態においてケースの寸法精度を出すのが難しいという問題点もあった。
【特許文献1】実開平3−78726号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明は上記実情に鑑みてなされたもので、その主たる課題は、
ケースの間口寸法精度を出やすくした組立式ケースのコーナー部構造を提供することにある。
この発明の別の課題は、ケースの強度を保ちながら加工作業性の向上が図れる組立式ケースのコーナー部構造を提供することにある。
この発明の更に別の課題は、コーナー部材とフレーム部材同士の段差をなくした組立式ケースのコーナー部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、請求項1の発明では、
プラスチックダンボールとプラスチック製のコーナー部材およびフレーム部材を用いてなる組立式ケースのコーナー部構造において、
上面が開口し底壁部と周壁部とで囲んで組み立てられたケース本体のコーナー部で、隣接する一対の周壁部の上縁部にそれぞれ形成された切欠部と、
ケース本体のコーナー部で隣接する一対の周壁部に外嵌する嵌合溝を有するソケット部と、該ソケット部の両側の開口部にそれぞれ基端が固定されて前記切欠部に嵌合し掛止められる一対の掛止突出片とを有するコーナー部材と、
前記周壁部の上縁部に沿って外嵌される外嵌溝を有し、前記切欠部に嵌合された掛止突出片の上面部および側面部を覆い、ソケット部の開口部の端面と接するフレーム部材とからなり、
少なくともフレーム部材が掛止突出片を外嵌した位置で固定手段により両者一体に固定されてなることを特徴とする。
また、請求項2の発明では、
前記ケース本体のコーナー部で隣接する一対の周壁部の一方または双方が複数のシート片からなっており、
切欠部が、複数のシート片の中の少なくとも1つのシ−ト片に形成されていることを特徴とする。
更に、請求項3の発明では、
前記固定手段が超音波溶着からなっており、掛止突出片の−方または双方の側面部に凹凸部または相互に離間した複数の突部が形成されてなることを特徴とする。
また、請求項4の発明では、
前記ソケット部の縦断面がフレーム部材の端部の縦断面とほぼ同一に形成されており、切欠部に嵌合された掛止突出片にフレーム部材の端部側を外嵌した際に、フレーム部の上面および両側面が、ソケット部の上面および両側面と同一面となるように形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
この発明は上記のように、フレーム部材とコーナー部材による段差が解消されることにより、同一寸法のケースにおいて有効内寸を大きくすることができる。
また、上面開口を塞ぐ蓋や、パットの取付け時に隙間が生じることがなく、またケースの積み重ね時にも隙間なく重ねることができる。
また、フレーム部材とコーナー部材の取付け方法を変更したことにより、ケースの間口寸法精度が出しやすく、外観上も凹凸が無いことから、作業者の手指や着衣、その他の物が引っかかる虞れがなく安全であり、見た目もスッキリとした美観を呈することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下に、この発明の組立式ケースのコーナー部構造の好適な実施の形態について図面を参照しながら以下に説明する。
【実施例1】
【0007】
[組み立て式ケース]
組み立て式ケースは、図2に示すように、ケース本体1を形成するプラスチックダンボールからなるブランク8と、プラスチック製のコーナー部材10およびフレーム部材20との基本構成からなっている。
この発明でプラスチックダンボールとは、紙段ボールとほぼ同様に一対の平坦なプラスチックシート間をプラスチックの中芯でつないだ中空構造をしたものであって、例えば、波形をしたプラスチックの中芯の両側に2枚のプラスチックシートを貼り合わせたものや、2枚またはそれ以上のプラスチックシートを多数の平行なリブで接続したもの、多数の連続する凹凸形状(ハット形状)を有するプラスチックの中芯の両側に2枚のプラスチックシートを貼り合わせたものなどをいう。
【0008】
[ケース本体]
ケース本体1は、本実施例の場合、底壁部2と、該底壁部2の縁部に沿って立ち上がる4つの周壁部3とで囲んで組み立てられて上面が開口しており、4つのコーナー部6を有する公知の形状からなっている。
そしてケース本体1の各コーナー部6で、隣接する一対の周壁部3、3の上縁部には、それぞれ切欠部4、4が形成されている(図1、図2参照)。
図示例で、上記切欠部4は矩形状に形成されている。
【0009】
図4には、ブランク8の一例を示す。
このブランクは、図4(a)に示す第1ブランク8aと、図4(b)に示す第2ブランク8bとからなっている。
第1ブランク8aは、中央に底壁部形成片2’が設けられ、その左右に左右の周壁部形成片3a’が折曲線L1に沿って折り曲げ可能に熱溶着されている。
第2ブランク8bは、ケース本体の前後となる周壁部形成片3b’からなっており、組立に際しては同一形状のものが2つ用いられる。
【0010】
そして、前記左右の周壁部形成片3aの外側縁部の端部近傍と前後の周壁部形成片3b’の上方の縁部の端部近傍にそれぞれ切欠部4が穿設されている。
なお、周壁部形成片3b’の下方の縁部の端部に形成された切欠9は組立時に干渉しないためのものである。
なお、図中丸で囲んだ部分は、プラスチックダンボールの中芯の方向を示す。
【0011】
上記形状のブランク8a、8bを用いて上面が開口し、底壁部2と、該底壁部2の縁部に沿って立ち上がる4つの周壁部3とを有するケース本体1が組み立てられる。
この発明で使用するブランクは上記実施例に限らず、底壁部形成片や周壁部形成片が全て分離しているもの、あるいは図6に示すように補強片を有するものなど、公知のブランクを用いることができる。
【0012】
[コーナー部材]
コーナー部材10は、本実施例では、図5(a)(b)に示すように平面視略L字状からなっている。
このコーナー部材10は、ケース本体1のコーナー部6で隣接する一対の周壁部3、3に外嵌するチャンネル状(図5(d)参照)であって横断面略L字状に延びる嵌合溝12を有するソケット部11を有している。
ここで、コーナー部材10の嵌合溝12の幅は、嵌合する周壁部3の厚みに対応して定められる。
【0013】
前記ソケット部11は、その直交する横方向の両側で嵌合溝12の開口部にそれぞれ基端が固定された一対の掛止突出片13とを有している。
そして、該一対の掛止突出片13は、前記一対の切欠部4にそれぞれ嵌合し、掛止められてコーナー部材10の位置決めを行うことができ、後述のフレーム部材20の寸法精度を高めることでケースの間口寸法の精度を高めることができる。
【0014】
なお、図示例では、前記コーナー部材10は、前記ソケット部11の外周縁に沿って立ち上がる支承壁部17を−体に形成しており、ケースのスタッキングに際して位置決め用のガイドとなっている。
【0015】
[固定手段]
ケース本体1のコーナー部6にコーナー部材10を嵌着し、掛止突出片13を覆いソケット部11の端部と接するようにケース本体1の周縁部3の上縁にフレーム部材20を嵌着する。
そして、本実施例では固定手段の一例として超音波溶着を用い、フレーム部材20と掛止突出片13の重なつた外側および内側部分(図4のブランク8を用いた場合など)、または、外側がフレーム部材20と掛止突出片13の重なった部分で内側がフレーム部材20と周縁部3との重なった部分(図6のブランク8を用いた場合など)において一体的に溶着して、ケースの組立が完了する。
上記実施例では固定手段として超音波溶着を例示したが、その他の公知のプラスチック溶着を用いることができる。
【0016】
[突部]
ここで掛止突出片13の一方または双方の側面部に凹凸部または相互に離間した複数の突部16が形成することが好ましい。
図1、図7の実施例の場合、掛止突出片13の内側の壁面にピッチの長い横断面が波形の凹凸面16aを形成し、外側の壁面にはピッチの短い横断面が波形の凹凸面16bを形成している。
【0017】
これにより、前記溶着時に溶融した樹脂が凹凸面の凹部内に逃げて外側にはみ出したり盛り上がることがなく、きれいに仕上げることができる。
外側のピッチを狭めたのは、溶着時の溶着点が凹凸でずれずに正確に行うためであり、内側のピッチを広めたのは、溶融した樹脂を収納しやすくするためである。
【0018】
上記実施例では掛止突出片13の横断面を波形とした場合を例示したが、縦断面が波形や凹凸断面からなる凹凸面であってもよい。
また、凹凸面に限らず、後述のように掛止突出片13の壁面に相互に離間した複数の突部16cを形成するものでもよい(図8参照)。
【0019】
次ぎに、本実施例では、前記ソケット部11の縦断面がフレーム部材20の端部の縦断面とほぼ同一に形成されている。
従つて、切欠部4に嵌合された掛止突出片13にフレーム部材20の端部側を外嵌した際に、フレーム部材20の上面20aおよび両側面20bが、ソケット部11の上面11aおよび両側面11bと同一面となるように形成されている。
これによりコーナー部材10とフレーム部材20とを固定しても、両者の上面および両側面は、同一面上に設定されるので、段部が形成されることがない。
【0020】
この発明では、上面および両側面の少なくともいずれか1面が同一面となるものでもよい。
例えば、フレーム部材20の内側となる側面20bを、ソケット部11の内側の側面11bと同一面となるように形成すれば、ケースの開口部に凹凸が生じないので最大にすることができる。
【0021】
また、フレーム部材20の上面20aを、ソケット部11の上面11aと同一面となるように形成すれば、上面20aと11aとが同一面となるのでスタッキングした際にぐらつく虞れがない。
また、フレーム部材20の外側となる側面20cを、ソケット部11の外側の側面11cと同一面となるように形成すれば、ケースの上部の外側面に凹凸が生じないので、効率的に横並びすることができる。
【実施例2】
【0022】
図6、図7には異なる実施例を示す。
図6に示すブランク8は、1枚のプラスチックダンボールのシートを折り曲げてケースを組み立てるものであり、中央に底壁部形成片2’が形成され、該底壁部形成片2’の図中左右の縁部に沿って左右の周壁部形成片3a’が折曲線L2を介して連接され、底壁部形成片2’の図中上下の縁部に沿って前後の周壁部形成片3b’が折曲線L3を介して連接される。
【0023】
また、前後の周壁部形成片3b’の図中左右方向には、折曲線L4を介して補強片3cが連設されており、ケース本体1の組立時に左右の周壁部形成片3a’の内側で重なるようになっている。
そして、前記左右の周壁部形成片3a’および前後の周壁部形成片3b’の外縁部の図中左右の端部近傍にそれぞれ切欠部4が穿設されている。
【0024】
これによりブランク8を用いて上面が開口し、底壁部2と、該底壁部2の縁部に沿って立ち上がる4つの周壁部3とを有するケース本体1が組み立てられ、コーナー部6の一方の周壁部は周壁部形成片3a’のシートと補強片3cのシートが二重に重なっている。
【0025】
コーナー部材10の嵌合溝12の幅は、前述のように嵌合する周壁部3の厚みに対応して定められる。
そこで、前記図6で示したブランク8を用いた場合に、コーナー部6で隣接する周壁部3の一方が周壁部形成片3a’と補強片3cとが重なって二重の厚みとなるので、図7に示すように、ソケット部11の一方の嵌合溝(説明の便宜上12’とする)の幅を他方の嵌合溝12の幅の2倍に設定している。
【0026】
この場合、切欠部4は周壁部形成片3a’のみに形成し、補強片3cには形成していないので、掛止突出片13は、嵌合溝12’の半分の厚みに設定しているが、補強片3cの対応位置にも周壁部形成片3a’の切欠部4と整合する切欠部を形成する場合には、掛止突出片13を2倍の厚みに設定することができる。
【0027】
上記実施例では、コーナーの一方の周壁部が他方より厚みが厚い場合を例示したが、両方とも厚みが厚い場合でもよい。
同様に掛止突出片の厚みは、周壁部に形成される嵌合溝の厚みに対応して設定することが好ましい。
その他の構成は前記実施例と同様であるので、同一構成には同一符号を付してその説明を省略する。
【実施例3】
【0028】
図8には突部の異なる実施例を示す。
掛止突出片13に形成される突部は、凹凸面に限らず相互に離間した複数の突部16cからなるものでもよい。
この突部16cは、縦向きに延びるものであっても、横向きに延びるものであってもよい。
【0029】
図8に示す掛止突出片13では、掛止突出片13の両面に横向きに延びる突部16cが形成されている。
この場合もプラスチック溶着などの公知手段によりフレーム20と掛止突出片13とを溶着した際に溶融した樹脂を突部間に逃がすことができる。
また、超音波溶着を行う場合には、その条件を調整することでフレーム部材20の表面に溶着痕が残らないで固着することもできる。
この場合、上記突部16cを用いる場合は、突部16c部分を溶融してフレームや周壁部に融着しやすくなり、より有利になる。
その他の構成は前記実施例1に準じるので、その説明を省略する。
【0030】
この発明ではケース本体は前記各実施例に限定されず、一または複数のブラン
クを用いて一体に組み立てられるものであればよい。
また、ケース本体は直方体の場合を例示したが、立方体や横断面が多角形状の筒体、横断面が円形や楕円形の筒体など任意の箱形状の場合にも適用することができる。
その他、要するにこの発明の要旨を変更しない範囲で種々設計変更しうること勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施例1のコーナー部構造の取付状態を示す分解斜視図である。
【図2】組立式ケースの斜視図である。
【図3】(a)はコーナー部構造の斜視図、(b)はコーナー部材とフレーム部材の取付状態を示す要部の側面図である。
【図4】(a)はケース本体の第1ブランクを示す展開図、(b)はケース本体の第2ブランクを示す展開図である。
【図5】(a)はコーナー部材の平面図、(b)は同底面図、(c)は正面図、(d)は(a)のd−d断面図である。
【図6】実施例2のコーナー部構造のケース本体に用いるブランクの一例を示す展開図である。
【図7】実施例2のコーナー部の取付状態を示す図であって(a)は斜視図、(b)は同底面図である。
【図8】(a)は実施例3のコーナー部材を示す平面図、(b)は同平面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 ケース本体
2 底壁部
3 周壁部
4 切欠部
5 シート片
6 コーナー部
10 コーナー部材
11 ソケット部
12 嵌合溝
13 掛止突出片
14 上面部
15 側面部
16 突部
20 フレーム部材
21 外嵌溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース本体を形成するプラスチックダンボールと、プラスチック製のコーナー部材およびフレーム部材を用いてなる組立式ケースのコーナー部構造において、 上面が開口し底壁部と周壁部とで囲んで組み立てられたケース本体のコーナー部で、隣接する一対の周壁部の上縁部にそれぞれ形成された切欠部と、
ケース本体のコーナー部で隣接する一対の周壁部に外嵌する嵌合溝を有するソケット部と、該ソケット部の両側の開口部にそれぞれ基端が固定されて前記切欠部に嵌合し掛止められる一対の掛止突出片とを有するコーナー部材と、
前記周壁部の上縁部に沿って外嵌される外嵌溝を有し、前記切欠部に嵌合された掛止突出片の上面部および側面部を覆い、ソケット部の開口部の端面と接するフレーム部材とからなり、
少なくともフレーム部材が掛止突出片を外嵌した位置で固定手段により両者一体に固定されてなることを特徴とする組立式ケースのコーナー部構造。
【請求項2】
ケース本体のコーナー部で隣接する一対の周壁部の一方または双方が複数のシート片からなっており、
切欠部が、複数のシート片の中の少なくとも1つのシート片に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の組立式ケースのコーナー部構造。
【請求項3】
固定手段が超音波溶着からなっており、掛止突出片の一方または双方の側面部に凹凸部または相互に離間した複数の突部が形成されてなることを特徴とする請求項1に記載の組立式ケースのコーナー部構造。
【請求項4】
ソケット部の縦断面がフレーム部材の端部の縦断面とほぼ同一に形成されており、切欠部に嵌合された掛止突出片にフレーム部材の端部側を外嵌した際に、フレーム部の上面および両側面が、ソケット部の上面および両側面と同一面となるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の組立式ケースのコーナー部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−274747(P2009−274747A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−128952(P2008−128952)
【出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(000223193)東罐興業株式会社 (90)
【Fターム(参考)】