説明

組立装置

【課題】順次投入される複数種類の部品を組み立てて組立品を次々と生産する組立装置において、不良部品として排出された部品を補うためのバッファを設けることなく、組立効率の低下防止と生産性の維持を実現する。
【解決手段】複数種類の部品が投入される投入部2と、搬送装置3と、部品を処理し互いに組み付ける処理をする複数の作業ステーション4と、組立品を取り出すための取出部5と、投入された部品または互いに組み付けられた部品の良否を判定する判定部41と、不良と判定された部品を排出する排出部6と、投入部2に投入された部品の投入数と排出部6から排出された部品の排出数とを種類毎に求める部品カウンタ7と、投入数と排出数とに基づいて、組立品を構成する部品が不足しないように投入すべき部品の組み合わせパターンを求めて表示する表示装置8とを備え、作業者9に対し部品数のアンバランスの解消を指示して生産性の維持が図られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投入される複数種類の部品を組み立てて組立品として出力する組立装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生産設備の一つに、作業工程毎に作業ステーションを配置して組立装置とし、この装置に順次投入した複数種類の部品をそれぞれ搬送手段によって搬送しつつ、途中の各作業ステーションで組み付け、加工、検査などを行って組立品として順次出力する形態のものがある。こうした組立装置において、途中の作業ステーションの工程で不良となった部品や仕掛品は、搬送手段によって不良排出部へと排出される。この場合、装置の生産効率(組立効率)を維持するには、部品待ち時間を発生させないように、組立装置内に存在する部品数が1つの組立品を構成する部品数の倍数となるようにする必要がある。そこで、部品の投入が自動で行われる場合には、不良排出部へと排出された部品を補うために、各種類の部品を収納するバッファを設けてバッファから適宜補給することが行われる。また、生産設備の他の一つに、セル生産の概念に基づくものがあり、人が作業する人セルに、ロボットが作業する機械セルを結合して複合セルによるフレキシブル生産システムとするものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−142949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したような形態の従来の組立装置を機械セルとして、これに特許文献1に示されるようなフレキシブル生産システムを適用する場合に、不良部品として排出された部品を補うバッファを設けると生産のフレキシブル性が損なわれ、排出された部品を補わなければ機械セルの生産効率を維持できないという問題がある。また、こうした形態の従来の組立装置にバッファを設けることなく、これをセル生産に適用して、複数種類の部品の投入と組立品の取り出しとを、いずれも同じ人が行う場合は、1つの組立品を組み立てるために必要な部品を一連の作業の中でほぼ同時に投入するので、不良部品が排出された結果、部品の数量が揃っていない状態が発生すると、その部品不足の状態がいつまでも解消されず、不足部品の投入待ちが発生し、生産設備の稼動効率が低下するという問題がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解消するものであって、簡単な構成により、不良部品として排出された部品を補うためのバッファを設けることなく、組立効率の低下を防止して生産性を維持できる組立装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するために、請求項1の発明は、複数種類の部品が投入される投入部と、前記投入された部品を搬送する搬送手段と、前記搬送手段によって工程順に搬送される部品を処理しまたは部品どうしを互いに組み付ける処理をする複数の作業ステーションと、前記作業ステーションによる処理を施された部品を組立品として取り出す取出部と、を備えた組立装置において、前記作業ステーションに設けられ、投入された部品または互いに組み付けられた部品の良否を判定する判定手段と、前記判定手段によって不良と判定された部品を部品の順路から排出する排出部と、前記投入部に投入された部品の種類毎の投入数と前記排出部から排出された部品の種類毎の排出数とを求めるカウント手段と、前記カウント手段が求めた前記投入数と排出数とに基づいて、組立品を構成する部品が不足しないように投入すべき部品の組み合わせパターンを求め、そのパターンを表示する表示装置と、を備えたものである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の組立装置において、前記表示装置は、前記排出部によって部品が排出された結果、組立装置内に存在する部品数に組立品を構成する部品としての不足が無くなった場合に、前記パターンの表示を取り消すものである。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載の組立装置において、前記表示装置は、各種類毎の投入すべき部品数の間に予め定めた数以上の差がある場合に、異常が発生した旨を表示するものである。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の組立装置において、前記投入部は、前記投入すべき部品の組み合わせパターンで指示される投入すべき部品以外の部品を投入できないようにする投入阻止手段を備えるものである。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の組立装置において、前記投入部は部品を仮置きするためのストッカを備えたものである。
【0011】
請求項6の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の組立装置において、前記各作業ステーションおよび前記搬送手段は、これらに滞在していることが予定されている位置に存在する部品について種類別に部品の有無を検知する部品検知手段を備え、組立装置に異常が発生して停止した後の稼動再開の際に、前記カウント手段は、前記部品検知手段による検知結果から部品の種類毎の部品数を集計し、前記表示装置は、前記カウント手段により集計された部品数に基づいて前記部品の組み合わせパターンを求めて表示するものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、組立装置と共に組立作業を行う作業者は表示装置に表示されたパターンに従って部品投入を行うことにより、組立品(組立装置が出力する1個の完成品もしくは仕掛品)を構成するための部品数についてのアンバランスな状態を解消し、組立装置を効率よく稼動させることができる。また、作業者に替わって、ロボットが部品投入を行う場合においても、表示されたパターンに従ってロボットが部品投入を行うことにより、同様の効果を奏することができる。すなわち、組立装置は、不良部品として排出された部品を補うためのバッファを設けることなく、投入数と排出数とを取得して部品の組み合わせパターンを表示するという簡単な構成により、組立効率の低下を防止して生産性を維持できる。また、構成が簡単であるので、組立装置による機械セルに、人セルまたはロボットが作業する人セルと同等のロボットセルなどを結合して、フレキシブル生産システムを実現することができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、組立装置と部品投入を行う作業者のいずれの動作にも存在する時間的な遅れに基づくハンチング現象による効率低下を抑制することができる。つまり、組立品を組み立てるために必要な部品数のアンバランスな状態が解消されたにもかかわらず、過去に不足とされた部品を投入して結果的にアンバランスな状態を発生させてしまうというような事態を防止することができる。言い換えると、複数種類の不良部品が時間経過の後に排出された結果、組立品を構成するための一揃いの部品が排出される事態が発生すると、この場合は不足した部品を補うという概念はなくなるので、不足部品投入のためのパターンの表示を取り消すことにより、通常の部品投入を促して組立装置の正常な動作を維持することができる。
【0014】
請求項3の発明によれば、組立品を組み立てるために必要な部品数のアンバランスの度合いが拡大することを防止でき、さらに、投入する部品や組立装置に発生している異常を検出する機会を設けて点検することができ、結果的に、組立効率の低下を防止して生産性を維持することができる。
【0015】
請求項4の発明によれば、部品を投入する作業者が表示装置の表示を見落としても、複数種類の部品の内、不足している部品のみを投入でき、不足のない部品の投入が阻止されるので、部品数がアンバランスな状態を遅滞なく解消することができる。
【0016】
請求項5の発明によれば、部品を投入する作業者が、再び部品を持ち帰って元に戻す手間を省くことができる。また、ストッカへの部品の仮置き状況によっては、1個の組立品を組み立てるために必要な部品が揃った時点で、投入する部品を用意することなくストッカの部品によって投入作業を行うことができる。
【0017】
請求項6の発明によれば、組立装置に異常が発生し、復旧のために装置内の部品もしくは仕掛品の一部を点検作業者が取出して組立装置内の部品数が変動したとしても、その情報を作業者が組立装置に入力する必要がなく、効率的に再稼動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る組立装置の模式的構成図。
【図2】同装置と共に作業を行う作業者の動作を示すフローチャート。
【図3】同装置の動作を示すフローチャート。
【図4】(a)(b)は同装置の動作を部品の投入数と排出数の変遷によって説明する図。
【図5】同装置の実施例を示す平面図。
【図6】第2の実施形態に係る組立装置の動作を示すフローチャート。
【図7】第3の実施形態に係る組立装置の実施例を示す部分平面図。
【図8】同装置の動作を示すフローチャート。
【図9】第4の実施形態に係る組立装置の動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1の実施形態)
以下、本発明の実施形態に係る組立装置について、図面を参照して説明する。図1乃至図5は第1の実施形態を示す。組立装置1は、図1に示すように、作業者9と共同して稼動する設備であって、複数種類の部品が投入される投入部2と、投入された部品を搬送する搬送装置3と、搬送装置3によって工程順に搬送される部品を処理しまたは部品どうしを互いに組み付ける処理をする複数の作業ステーション4と、作業ステーション4による処理を施された部品を作業者9が組立品として取り出すための取出部5と、作業ステーション4に設けられ、投入された部品または互いに組み付けられた部品の良否を判定する判定部41と、判定部41によって不良と判定された部品を部品の順路から排出する排出部6と、投入部2に投入された部品の種類毎の投入数と排出部6から排出された部品の種類毎の排出数とを求める部品カウンタ7と、部品カウンタ7が求めた投入数と排出数とに基づいて、組立品を構成する部品が不足しないように投入すべき部品の組み合わせパターンを求め、そのパターンを表示する表示装置8と、組立装置1の各部を制御する制御装置10と、を備えている。
【0020】
投入部2は、組立品を構成する複数種類の部品をそれぞれ部品の種類を区別して投入できるように個別の投入口(不図示)を有している。搬送装置3は、部品の種類毎に部品の受け取り場所と受け渡し場所とを識別してまたは固定して搬送する。作業ステーション4は、搬送装置3から特定種類の部品または複数の部品を受け取り、加工、検査、組み付けなどの個別の処理を分担して行い、処理済の部品または部品どうしを互いに組み付ける処理を行った部品を搬送装置3に渡して、部品の順路に再投入する。各作業ステーション4は、単一処理または一連の処理の工程を行うものであるが、工程当たりの台数は、処理工程に要する時間に応じて定められる。すなわち、時間のかかる工程には、並列処理を行うように複数の互いに同等の作業ステーション4が割り当てられ、適切なサイクルタイムが実現される。判定部41は、例えば、ネジ止め加工において所定時間内にネジ止めできなかった場合や、検査工程において不合格となった場合などに、その部品または部品の組み合わせについて不良であるとの判定を行う。このような不良部品は、その旨を搬送装置3に通知され、搬送装置3によって排出部6へと排出される。各作業ステーション4における処理工程を通過して、最終的に組立品とされた部品は、搬送装置3によって取出部5に到達し、作業者9によって回収されて組立装置1から出て行く。なお、排出部6は、各作業ステーション4毎に設ける必要はなく、複数の作業ステーション4毎に設けるか、または、排出部6を設けない作業ステーション4とすることもできる。従って、判定部41も同様である。
【0021】
部品カウンタ7は、投入部2に投入される部品の投入数を部品の種類毎にカウントするためのセンサ7aを有する投入部品カウンタ71と、排出部6に排出される排出数を部品の種類毎にカウントするためのセンサ7bを有する排出部品カウンタ72と、取出部5から取り出される組立品の数をカウントする組立品カウンタ73と、を備えている。表示装置8は、部品カウンタ7が求めた各部品の種類ごとの投入数と排出数とに基づいて、組立品を構成する部品が不足しないように投入すべき部品の組み合わせパターンを求める表示制御部80と、そのパターンを具体的に表示する表示部81と、を備えている。表示部81として、部品の種類毎に設けた複数のLED(発光ダイオード)による発光や点滅による表示や、液晶表示板などの平面表示装置や、回転灯などを用いる光による表示や、その他に、音声報知などによる表示を用いることができる。表示装置8は、排出部6によって部品が排出された結果、組立装置1内に存在する部品数に組立品を構成する部品としての不足がなくなった場合に、パターンの表示を取り消す。また、表示装置8は、各種類毎の投入すべき部品数の間に予め定めた数、例えば2とか3以上の差がある場合に、異常が発生した旨を表示する。例えば、表示部81が部品の種類毎にLEDを設けて表示する装置の場合に全てのLEDを一斉に点滅させたり、警告音を発生させたり、専用の表示部を設けて表示したりすればよい。前記異常発生を判断するための予め定めた数は、各部品の過去の信頼性の実績に基づいて、各部品の種類毎に適宜設定すればよい。なお、組立品カウンタ73は、必ずしも備える必要はない。
【0022】
ここで、図2を参照し、作業者9による作業に注目して組立装置1の動作を説明する。作業者9が作業を行う領域には、投入すべき部品を部品の種類毎に準備して配置した部品置場11、作業者9が作業を行う作業台12、取出部5から取り出した組立品を置く組立品置き場13などが設けられている。このような作業環境のもとで、作業者9は、表示部81に表示されたパターンの表示を確認し(#1)、全種類の部品を投入するパターンでなければ(#2でNo)、投入する部品のみを部品置場11から取得し(#3)、全種類の部品を投入するパターンであれば(#2でYes)、全種類の部品を部品置場11から取得する(#4)。作業者9は、取得した部品を一括して持って移動して各部品をそれぞれ投入部2に、一連の作業としてほぼ同時に投入する(#5)。部品投入を済ませた作業者9は、取出部5に移動して組立品を回収し(#6)、組立品の目視チェックや包装、箱詰めなどの後処理を行い(#8)、組立作業が終了であれば(#8でYes)、作業を終了し、終了でなければ(#8でNo)、上述のステップ(#1)からの作業を繰り返す。作業者9は、上述の作業以外に、自動化に不向きの作業を手作業によって行う前処理や、複数の組立装置1を受け持って処理する巡回処理などを行うこともある。これらの作業は、組立装置1側を機械セルとし、作業者9の作業領域を人セルとした複合セル生産システムにおける作業である。
【0023】
次に、図3を参照して、組立装置1の動作を説明する。ここで、各部品の種類毎に設定された実質投入数という変数Nを導入する。実質投入数Nは、各部品の種類毎の正味の投入数であり、投入部2から投入された部品数(投入数)の部品の種類毎の積算値をxとし、排出部6から排出された部品数(排出数)の部品の種類毎の積算値をyとすると、N=x−yである。実質投入数Nは、組立装置1から出力され組立品カウンタ73によってカウントされる組立品の数となるべき数である。組立装置1の稼動が開始されると、部品カウンタ7は、部品が投入されていれば(S1でYes)、部品の種類毎に投入された部品について実質投入数Nを1だけ加算し(S2)、部品が排出されていれば(S3でYes)、排出された部品の種類毎に実質投入数Nから1だけ減算する(S4)。部品の投入がなければ加算は行われず(S1でNo)、部品の排出がなければ減算は行われない(S3でNo)。次のステップ(S5)では、表示装置8が各部品の種類間で実質投入数Nの比較を行い、実質投入数Nに差があれば(S5でYes)、実質投入数Nの少ない部品のみを投入するようにパターン表示を行い(S6)、実質投入数Nに差がなければ(S5でNo)、全種類の部品を投入するようにパターン表示を行う(S7)。その後、稼動終了であれば稼動停止し(S8でYes)、終了でなければ(S8でNo)、上述のステップ(S1)からの処理が所定の制御周期で繰り返される。
【0024】
次に、図4(a)(b)を参照して、部品の投入と排出の変遷を説明する。ここでは、簡単のために、投入部品の種類がα,β,γの3種類であるとする。組立品は、この3種類の部品の集合体である。図4(a)に示すように、時刻t1,t2,t3,t4にそれぞれ、3種類の部品が揃って投入されているが、時刻t2に投入した部品αが不良として排出され、時刻t4に投入した部品β,γが不良として排出されている。不良部品の排出は、処理の進行に伴って発生するので、時刻t2に投入された部品αが排出されたことが判明するのは、例えば、時刻t4以降であり、部品αのみを投入すべきとするパターン表示がなされた結果、表示に基づいて時刻t5において部品αのみが投入されている。時刻t4に投入した部品β,γの排出に対応する補給の投入は、同様の時間遅れによって、時刻t7に行われている。この時刻t7に投入された部品βがさらに不良として排出された結果、時刻t10において、部品βのみの投入が行われている。なお、図中において、一点鎖線で区切られた部品の組ごとに、組立品が形成されることになる。
【0025】
図4(b)は、上記の状況を数値的に示すものである。図中に、各部品の種類毎に、実質投入数N、投入数の積算値x、排出数の積算値yの変遷が示されている。ある時刻において、部品α,β,γに対するそれぞれの実質投入数Nが同じならば、組立装置1内に存在する部品の種類間の部品数にアンバランスがないことになる。なお、部品カウンタ7は、投入部2に投入された部品の種類毎の「投入数」と排出部6から排出された部品の種類毎の「排出数」とを求めるものであるが、その「投入数」は、図3に示した例では、「排出数」を逐次考慮して換算した実質投入数N(正味の投入数)そのものであり、この場合の「排出数」は、1または0である。また、図4(b)に示した例では、「投入数」は積算値xであり、「排出数」は積算値yであり、これらを用いて実質投入数Nが、N=x−yによって求められている。表示装置8の表示制御部80は、部品種類間で実質投入数Nの大小を比較して、組立品を構成する部品が不足しないように投入すべき部品の組み合わせパターンを求める。
【0026】
本実施形態によれば、組立装置1と共に組立作業を行う作業者9は表示装置8によって表示されたパターンに従って部品投入を行うことにより、組立品(組立装置1が出力する1個の完成品もしくは仕掛品)を構成するための部品数についてのアンバランスな状態を解消し、組立装置1を効率よく稼動させることができる。また、作業者9に替わって、ロボットが部品投入を行う構成とすることができ、この場合においても、ロボットが表示されたパターンに従って、または、そのパターンに同等の信号に従って、部品投入を行うことにより、同様の効果を奏することができる。すなわち、組立装置1は、不良部品として排出された部品を補うためのバッファを設けることなく、投入数と排出数とを取得して部品の組み合わせパターンを表示するという簡単な構成により、組立効率の低下を防止して生産性を維持できる。また、構成が簡単であるので、組立装置1による機械セルに、人セルまたはロボットが作業する人セルと同等のロボットセルなどを結合して、フレキシブル生産システムを実現することができる。
【0027】
また、投入数と排出数の時間変動に応じて遅滞なく現状を反映してパターンの表示を取り消したり更新したりすることにより、組立装置1と部品投入を行う作業者9のいずれの動作にも存在する時間的な遅れに基づくハンチング現象による効率低下を抑制することができる。つまり、組立品を組み立てるために必要な部品数のアンバランスな状態が、たまたま他の部品の排出によって解消されたにもかかわらず、過去に不足とされた部品を投入して結果的にアンバランスな状態を発生させてしまうというような事態を防止することができる。言い換えると、複数種類の不良部品が時間経過の後に排出された結果、組立品を構成するための一揃いの部品が排出される事態が発生するが、この場合は不足した部品を補うという概念はなくなり、不足部品投入のためのパターンの表示を取り消すことにより、通常の部品投入を促して、組立装置1の正常な動作を維持することができる。
【0028】
また、各種類毎の投入すべき部品数の間に予め定めた数以上の差がある場合に、異常が発生した旨を表示することにより、組立品を組み立てるために必要な部品数のアンバランスの度合いが拡大することを防止でき、さらに、投入する部品や組立装置に発生している異常を検出する機会を設けて点検することができ、結果的に、組立効率の低下を防止して生産性を維持することができる。
【0029】
(第1の実施形態の実施例)
図5によって第1の実施形態の実施例を説明する。図中矢印y方向とx方向とを、それぞれ作業者9から見て前後方向、左右方向とする。組立装置1は、電子機器組立用の設備である。組立装置1に投入される部品は、電気回路用の基板11aと成型品11bの2種類の部品であり、組立品13aは成型品11bに基板11aを組み付けたものである。作業ステーション4は、基板11aの電気的な調整工程(A)(B)(C)、成型品11bの検査工程(D)、基板11aと成型品11bとの組み付け工程(E)、電子機器としての検査工程(F)、成型品11b表面に捺印する捺印工程(G)の5工程を行う(以下、それぞれ作業ステーションA〜Gという)。作業ステーションA,B,Cは互いに同等の装置であり、これらは並列処理を行う。各作業ステーションA〜Gはそれぞれ部品または互いに組み付けらた複数部品を載置して授受するための載置台4aを1つづつ備えており、載置台4aは搬送装置3に向けて配置されている。また、各作業ステーションA〜Gは部品の不良を判定する判定部41を備えている。作業ステーションC,D,E,Fは不良部品を排出するための排出部6を備え、各排出部6は部品を受け取るための載置台6aを1つづつ備え、載置台6aは搬送装置3に向けて配置されている。
【0030】
搬送装置3の手前側には、投入部2と、取出部5とが近接して配置され、作業者9が投入と取り出しを移動時間の無駄なく行えるようになっている。ここに、組立装置1を機械セルと称し、この搬送装置3の手前の領域を作業者9の作業領域すなわち人セルと称し、機械セルと人セルとを合わせて生産セルと称することができる。組立装置1の生産効率は、生産セルの生産効率と連動するものとなる。
【0031】
搬送装置3は、直線駆動型の駆動部31〜35から成る5系統の搬送系を備えている。駆動部31は作業ステーションA等に面して前後方向に、駆動部32は奥方の作業ステーションEに面して左右方向に、駆動部33は2つの作業ステーションF,Gに面して前後方向に配置されている。駆動部34は駆動部31の手前右方に並べて短く前後方向に形成され、駆動部35は作業ステーションDに面して前後方向に駆動部31と平行かつ左側に奥方の駆動部32に向けて配置されている。駆動部31,33は、部品を把持または吸着して前後移動される移載用のハンド部31a,31bおよびハンド部33a,33bをそれぞれ備え、駆動部32は部品を載置して移動される載置台32a,32bを備え、駆動部34,35はそれぞれ載置台34a,35aを備えている。駆動部33の手前には、組立品を載置する載置台5aが設けられている。
【0032】
載置台34aは、駆動部34の手前位置a1と奥側位置a2との間をシャトル移動して基板11aを搬送する。載置台35aは、駆動部35の手前位置c1と奥側位置c3との間を、途中位置c2を経由するシャトル移動をして成型品11bを搬送する。投入部2は駆動部34および駆動部35の各手前側に位置する載置台34a,35aにより構成され、取出部5は駆動部33の手前側にある載置台5aにより構成される。各カウンタ71,72,73用のセンサ7a,7b,7cが、それぞれ投入部2、排出部6、取出部5に対して設けられている。表示装置8の表示部81は、各部品置場11に近接して配置されており、作業者9は、表示部81の表示によって部品を取るべきか否かを判断する。図の例では、作業者9は、基板11aと、成型品11bの2種類の部品の両方を投入のために取得して手に持っている。表示装置8は部品カウンタ7に電気的に接続されている。制御装置10は、所定の機能を実現するソフトウエアを搭載した電子計算機により構成することができる。また、制御装置10は、部品カウンタ7や表示装置8における計算処理機能などの機能を分担するようにしてもよい。
【0033】
上記のように構成された組立装置1の動作を次に説明する。作業者9が基板11aを駆動部34の手前位置a1にある載置台34aに載せると、載置台34aが奥側位置a2に移動される。基板11aは、駆動部31のハンド部31aによって作業ステーションA,B,Cのいずれか受け入れ可能な、例えば作業ステーションAの載置台4aに搬送載置され、作業ステーションAがこれを引き取って調整処理を行った後、載置台4aに戻される(曲線矢印参照)。すると、駆動部31の奥側のハンド部31bが、載置台4aに載置されている基板11aを、駆動部32の右側位置b1における右側の載置台32aに載せる。その後、駆動部32は載置台32aを中央寄りの位置b2に移動させる。
【0034】
作業者9が成型品11bを駆動部35の手前位置c1における載置台35aに載せると、載置台35aが途中位置c2に移動され、成型品11bは、作業ステーションDによって引き取られて成型品の検査工程を経て、再度載置台35aに戻される。載置台35aは、成型品11bを乗せた状態で奥側位置c3に移動される。すると、不図示の移載ハンドが、位置c3における載置台35aから成型品11bを位置b2の載置台32aにおける基板11a上に移載する。その後、載置台32aは、駆動部32によって位置b3に移動され、基板11aと成型品11bとの組は、別の不図示の移載ハンドによって位置b3の載置台32aから作業ステーションEの載置台4aに移載され、作業ステーションEでネジ止めなどの組付処理が行われる。載置台32aは、空になると位置b3から位置b1に戻され、位置b3には、左側の載置台32bが移動してきて待機する。作業ステーションEは、組付処理された電気回路基板11aと成型品11bからなる組付済み部品を移載ハンドを用いて、位置b3における左側の載置台32bに載置し、載置台32bは駆動部32によって左側位置b4に移動される。
【0035】
左側位置b4における組付済み部品は、駆動部33の奥側ハンド部33aによって作業ステーションFの載置台4aに搬送載置され、作業ステーションFがこれを引き取って検査処理を行った後、載置台4aに戻される。次に、駆動部33の手前側ハンド部33bが、載置台4aに載置されている検査後の組付済み部品を、作業ステーションGの載置台4aに搬送載置する。作業ステーションGは、組付済み部品の成型品表面に検査日付等を捺印し、捺印後の組付済み部品を組立品13a(不図示)として、手前位置d1における取り出し用の載置台5aに載置する。作業者9は、載置台5aに載置された組立品13aを取り出し、これを包装して付属品と共に箱に梱包する後処理を行う。作業者9は、組立装置1の稼動開始時から、組立品の取り出しを行うことなく、部品(基板11aと成型品11b)の投入を4回行った後は、部品の投入を行った足で組立品の取り出し、後処理、部品の投入の一連の作業を繰り返す。
【0036】
上述のような作業者9の繰り返し作業の中で、不良部品が排出され、部品カウンタ7によって、組立装置1内に存在する基板11aの個数と、成型品11bの個数との間の差が検出されると、表示装置8が、少ない方の部品を投入するように表示部81の表示によって作業者9に指示を与える。途中の工程で部品が不良として排出されるケースは3通りである。まず、1つ目は、基板11aが、電気調整工程で調整が不可能であったために不良として排出される場合、2つ目は、成型品11bが、検査工程で寸法不良であったために不良として排出される場合、3つ目は、基板11aと成型品11bとの組み付け工程で組み付けが不良であったために、基板11aと成型品11bの両方が不良として排出される場合である。表示装置8による不足部品投入のための表示がなされると、作業者9は、不足する部品のみを、指示に従って投入し、部品数のアンバランスが解消され、組立装置1を効率よく稼動させることができる。
【0037】
(第2の実施形態)
図6によって第2の実施形態を説明する。本実施形態の組立装置1は、上述の第1の実施形態の組立装置1において、投入部2は、投入すべき部品の組み合わせパターンで指示される投入すべき部品以外の部品を投入できないようにする投入阻止手段を備えるものである。投入阻止は、例えば、図5に示した組立装置1の場合に、制御装置10が表示装置8からの情報に基づいて駆動部34を制御して、載置台34aを正規の投入部位置である位置a1に移動させずに位置a2に留めることにより、同様に、駆動部35を制御して、載置台35aを位置c1に戻さないようにすることにより実現できる。すなわち、駆動部34,35を用て投入阻止手段を構成することができる。また、投入部2は、位置a1,c1における載置台34a,35aによって構成されるが、載置台34a,35aそのものに、投入阻止手段として開閉シャッタなどを備えて、部品の投入可能状態と投入不可状態の2状態を取り得るようにして投入阻止手段を構成してもよい。
【0038】
上述のような投入阻止手段を備える組立装置1は、図6のフローチャートに示すように動作する。このフローチャートは、図3に示したフローチャートにおいて、ステップ(S6)の後にステップ(S61)を追加し、ステップ(S7)の後にステップ(S71)を追加したものである。ステップ(S61)は、部品を投入することが不要のため、さらに言えば、部品投入を禁止するために、投入部を「投入不可」とするステップである。また、ステップ(S71)は、部品投入を可能とするために、投入部を「投入可」とするステップである。本実施形態によれば、部品を投入する作業者9が表示装置8の表示を見落としても、複数種類の部品の内、不足している部品のみを投入でき、不足のない部品の投入が強制的に阻止されるので、部品数がアンバランスな状態を遅滞なく解消することができる。
【0039】
(第3の実施形態)
図7、図8は第3の実施形態を示す。本実施形態の組立装置1は、上述の第1、第2の実施形態における組立装置1において、例えば、上述の図5に示した組立装置1の場合に、図7に示すように、投入部2に、部品を仮置きするためのストッカ34b,35bを備えたものである。この組立装置1に対して、作業者9は、基板11aと成型品11bを部品置場11から1個ずつ持って投入部2の前にくる。その際に、1個の組立品を組み立てるために必要な部品数がアンバランスになった状態が生じていれば、表示装置8が少ない側の部品のみを投入するように表示している。この表示(指示)がある場合、少ない側の部品(本図の例では、基板11a)のみを載置台34bに載置投入し、投入する必要のない側の部品(本図の例では、成型品11b)を、投入部2に用意された部品仮置き用のストッカ35bへ置いて、組立品13a(不図示)を取り出すために取出部5へ移動する。なお、図7における表示部81の位置が、図6における表示部81の位置と異なっているが、表示部81は、作業者9が見易い位置であればいずれにおいてもよく、また、複数位置に配置するようにしてもよい。
【0040】
上述の作業者9の動作を、多数種類の部品によって組立品を生産する場合に一般化して説明する。図8に示すように、作業者9は全種類の部品を部品置場から取得して投入部2へ移動し(#11)、表示部81によって表示された部品投入のパターンを確認し(#12)、全種類投入パターンでなければ(#13でNo)、指示された部品を投入し、他の部品はストッカに仮り置きし(#14)、全種類投入パターンであれば(#13でYes)、全部品を投入する(#15)。その後、作業者9は、取り出し部5へ移動して組立品を回収後、作業台12に移動し(#17)、組立品の後処理を行い(#18)、組立作業が終了であれば(#19でYes)、作業を終了し、終了でなければ(#19でNo)、上述のステップ(#11)からの作業を繰り返す。
【0041】
本実施形態の組立装置1によれば、部品を投入する作業者9が、再び部品を持ち帰って元に戻す必要がなくなる。また、ストッカへの部品の仮置き状況によっては、1個の組立品を組み立てるために必要な部品が揃った時点で、投入する部品を用意することなくストッカの部品を投入する投入作業を行うことができる。
【0042】
(第4の実施形態)
図9は第4の実施形態を示す。本実施形態の組立装置は、上述の第1乃至第3の実施形態における組立装置1において、各作業ステーション4および搬送装置3は、これらに滞在していることが予定されている位置に存在する部品について種類別に部品の有無を検知する部品検知手段として部品検知センサを備え、組立装置1に異常が発生して停止した後の稼動再開の際に、部品カウンタ7は、部品検知センサによる検知結果から部品の種類毎の部品数を集計し、表示装置8は、部品カウンタ7により集計された部品数に基づいて投入すべき部品の組み合わせパターンを求めて表示するものである。
【0043】
この組立装置1の動作を説明する。図9のフローチャートは、図3に示したフローチャートにおいて、ステップ(S1)の前にステップ(S21)を追加し、さらに、ステップ(S21)から分岐した処理としてステップ(S22)を追加したものである。ステップ(S21)は、組立装置1の稼動が異常停止後の稼動か否かを判断するステップであり、異常停止後の稼動再開でなければ(S21でNo)、その後は図3に示したフローチャートと同様の処理を行い、異常停止後の稼動再開であれば(S21でYes)、装置内に存在する部品を部品検知センサによって検知し、部品の種類毎に部品数を求める(S22)。この場合の種類毎の部品数は種類毎の実質投入数Nとなる。そこで、その後はステップ(S5)から、通常の処理である図3に示したフローチャートと同様の処理を行うことができる。本実施形態の組立装置1によれば、組立装置1に異常が発生し、復旧のために装置内の部品もしくは仕掛品の一部を点検作業者が取出して組立装置1内の部品数が変動したとしても、その情報を作業者が組立装置1に入力する必要がなく、効率的に再稼動させることができる。
【0044】
なお、本発明は、上記構成に限られることなく種々の変形が可能である。例えば、上述した各実施形態の構成を互いに組み合わせた構成とすることができる。
【符号の説明】
【0045】
1 組立装置
2 投入部
3 搬送装置(搬送手段)
4 作業ステーション
5 取出部
6 排出部
7 部品カウンタ(カウント手段)
8 表示装置
34b,35b ストッカ
41 判定部(判定手段)
N 部品の種類毎の実質投入数
x 部品の種類毎の投入数の積算値
y 部品の種類毎の排出数の積算値
α,β,γ 部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の部品が投入される投入部と、前記投入された部品を搬送する搬送手段と、前記搬送手段によって工程順に搬送される部品を処理しまたは部品どうしを互いに組み付ける処理をする複数の作業ステーションと、前記作業ステーションによる処理を施された部品を組立品として取り出す取出部と、を備えた組立装置において、
前記作業ステーションに設けられ、投入された部品または互いに組み付けられた部品の良否を判定する判定手段と、
前記判定手段によって不良と判定された部品を部品の順路から排出する排出部と、
前記投入部に投入された部品の種類毎の投入数と前記排出部から排出された部品の種類毎の排出数とを求めるカウント手段と、
前記カウント手段が求めた前記投入数と排出数とに基づいて、組立品を構成する部品が不足しないように投入すべき部品の組み合わせパターンを求め、そのパターンを表示する表示装置と、を備えたことを特徴とする組立装置。
【請求項2】
前記表示装置は、前記排出部によって部品が排出された結果、組立装置内に存在する部品数に組立品を構成する部品としての不足が無くなった場合に、前記パターンの表示を取り消すことを特徴とする請求項1に記載の組立装置。
【請求項3】
前記表示装置は、各種類毎の投入すべき部品数の間に予め定めた数以上の差がある場合に、異常が発生した旨を表示することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の組立装置。
【請求項4】
前記投入部は、前記投入すべき部品の組み合わせパターンで指示される投入すべき部品以外の部品を投入できないようにする投入阻止手段を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の組立装置。
【請求項5】
前記投入部は部品を仮置きするためのストッカを備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の組立装置。
【請求項6】
前記各作業ステーションおよび前記搬送手段は、これらに滞在していることが予定されている位置に存在する部品について種類別に部品の有無を検知する部品検知手段を備え、
組立装置に異常が発生して停止した後の稼動再開の際に、前記カウント手段は、前記部品検知手段による検知結果から部品の種類毎の部品数を集計し、前記表示装置は、前記カウント手段により集計された部品数に基づいて前記部品の組み合わせパターンを求めて表示することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の組立装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−110650(P2011−110650A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−269251(P2009−269251)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】