説明

組織の外表面を介して標的組織を処置するための密封小線源療法装置および方法

標的組織の外表面領域を介して標的組織を処置するための、密封小線源療法装置を提供する。本装置は、近位部分、遠位部分、およびそれらを介して伸びる少なくとも1つの管腔を有する挿入部材を含む。液体保持部材が挿入部材の遠位部分に嵌合され、この液体保持部材は、処置される組織の所定の外表面領域に一致するよう成形された第一の表面と、挿入部材中の少なくとも1つの管腔と流体連絡された、内部に形成された腔とを有する。処置される組織の外表面領域に第一の表面を固定するために、複数の固定部材を第一の表面の末端周辺に分配することができる。


【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
本発明は概して、増殖性の組織障害を処置するのに用いられる装置および方法に関し、より具体的には、組織表面へ放射線を適用することによって体内のそのような障害を処置するための装置および方法に関する。
【0002】
悪性腫瘍は、可能な限り多くの腫瘍を除去するための、腫瘍の外科的切除によって処置されることが多い。しかしながら、浸潤を外科的に処置するのが困難または不可能な場合があるので、腫瘍周囲の正常組織への腫瘍細胞の浸潤は、外科的切除の治療的価値を制限する場合がある。切除後に残存する腫瘍縁を標的とすることによって外科的切除を補うために、放射線療法を使用することができるが、その目的は、そのサイズを小さくすることまたはそれを安定化させることである。外部ビーム放射線照射(external-beam radiation)、定位的放射線手術、および永続的もしくは一時的な間質(interstitial)密封小線源療法を含む、いくつかの方法の一つによって、または方法の組み合わせによって、放射線療法を投与することができる。本明細書で用いられる用語「密封小線源療法」とは、腫瘍もしくはその他の増殖性の組織疾患部位で、またはその近傍で体内に挿入された、空間的に限られた放射線源によって送達される放射線療法を指す。密封小線源療法は、放射線源が近接することにより、標的組織領域へより局所的用量を送達する利点を提供する。
【0003】
例えば、放射線源を処置対象の組織に直接移植することによって、密封小線源療法が実行される。密封小線源療法は、以下のような場合に最も適している:1)原発腫瘍部位の元の境界から2cmまたは3cm以内に悪性腫瘍再生が局所的に起こる場合;2)放射線療法が、悪性腫瘍の成長を制御するための実証済みの処置である場合;および3)悪性腫瘍に関して放射線量反応相関があるが、従来の外部ビーム放射線療法を用いて安全に与えることができる線量が、正常組織の許容度によって制限される場合。密封小線源療法において、放射線量は放射線療法の供給源の至近距離で最も高く、これにより、周囲の正常組織を温存する(spare)一方で、高い腫瘍線量が提供される。
【0004】
密封小線源療法装置の一例は、「Radioactive Seed Patch for Prophylactic Therapy」と題されるNardiの米国特許第5,030,195号に開示されている。Nardiにより、外科的に切り出された腫瘍周囲の組織を放射性放出で処置して、切り出された腫瘍周囲の組織内に存在する可能性のある任意の癌細胞を殺すための、方法および装置が記載されている。Nardiにより、放射性放出を実行するために、ヨウ素-125シードを編み込んだプラスチック・メッシュから作製される、エネルギーの低い非吸収性の放射性シード・パッチが提供される。パッチは、手術の際、腫瘍切除の後に配置され、そこに無期限に残される。
【0005】
Nardiにより記載されている装置はいくつかの利点を提供するが、パッチは永久に移植された放射性シードを用いた用途に限定され、ある適用においては他の放射線源よりも効果が低い可能性がある。さらに、Nardiは、感受性組織に完全な強さで照射してしまうことを回避するように、または体に漏れる放射線量を低下させるように、放射線用量を調整する方法を開示していない。
【0006】
したがって、固体および/または液体放射線源から人体中の標的組織まで放射線を効果的に送達するために用いられ得る装置が未だ必要とされている。
【発明の開示】
【0007】
発明の概要
本発明は概して、外科的摘出部位を囲む標的組織を処置するための密封小線源療法装置を提供する。1つの態様において、本装置は、近位部分、遠位部分、およびそれらを介して伸びる少なくとも1つの管腔を有する挿入部材を含む。液体保持部材が挿入部材の遠位部分に嵌合され、この液体保持部材は、処置される組織の所定の外表面領域に一致するよう成形された第一の表面と、挿入部材中の少なくとも1つの管腔と流体連絡された、内部に形成された少なくとも1つの腔とを有する。処置される組織の外表面領域に第一の表面を固定するために、複数の固定部材を第一の表面の末端周辺に分配することができる。
【0008】
使用において、密封小線源療法装置は、処置される組織へ放射線を送達するため、液体保持部材中の腔内へ少なくとも1つの管腔を介して放射線源を受容するように適合される。好ましくは、液体保持部材は、放射性液体で充填された場合に第一の表面の全体にわたって均一な放射線用量を提供するように成形される。液体保持部材は、第一の表面に対向する第二の表面と、第一の表面と第二の表面の間に腔を規定するように伸びる周壁もまた含み得る。周壁は好ましくは実質的に均一な深さを有する。例示的な態様において、液体保持部材は、実質的にディスク形状または長円形状であり得る。
【0009】
他の態様において、液体保持部材は、液体保持部材が挿入部材に隣接して配置された閉位置と、液体保持部材が挿入部材から外へ伸びる開位置との間で、移動可能であり得る。好ましくは、液体保持部材は、開位置において膨張し、閉位置において縮小する、拡張可能なバルーン部材である。拡張可能なバルーン部材は、膨張させた場合に、拡張可能なバルーン部材が組織の所定の領域を被覆するのに効果的であるように、開位置において所定形状を有することできる。所定形状は変化し得るが、例示的な態様において、拡張可能なバルーン部材の所定形状は実質的にディスク形状であるかまたは長円形状である。さらに他の態様において、液体保持部材は、形状記憶物質で形成され得、開位置においては三次元形状を、閉位置においては実質的に折りたたまれた形状を有することができる。また、液体保持部材は好ましくは、開位置において実質的にディスク形状または長円形状である。
【0010】
本発明の他の局面において、密封小線源療法装置は、近位部分、遠位部分、およびそれらを介して伸びる少なくとも1つの管腔を有する細長いカテーテル部材を有するよう提供される。バルーン部材は細長いカテーテル部材の遠位部分周辺に配置され、また、細長いカテーテル中の少なくとも1つの管腔と流体連絡された内部に形成された腔を有する。バルーン部材は、処置される組織の所定の外表面領域に一致するよう成形された第一の組織接触表面を含む。装置は、バルーンの腔中に配置される液体の形状の放射線源をさらに含む。
【0011】
カテーテル部材は、バルーンの任意の位置でバルーン部材と嵌合され得る。カテーテル部材およびバルーン部材を接続するための例示的な部位には、バルーン処理表面、処理表面の反対側の表面、およびバルーン部材の周囲が含まれる。
【0012】
本発明のさらに他の態様において、外科的摘出部位を囲む組織を処置するための方法が提供される。本方法は、放射性放出を送達する少なくとも1つの密封小線源療法装置を提供する段階を含む。本装置は、好ましくは、近位端、遠位端、およびそれらを介して伸びる少なくとも1つの管腔を有するカテーテル部材と、カテーテル部材の遠位端に近接して配置される少なくとも1つの液体保持部材とを含む。液体保持部材は、カテーテル部材中の少なくとも1つの管腔と連絡された内部に形成された腔と、処置される組織の所定の外表面領域と一致するよう成形された第一の表面とを含む。本方法は、処置される組織の外側の組織表面上に少なくとも1つの密封小線源療法装置を手術中に配置する段階と、組織を処置するためにカテーテル中の少なくとも1つの管腔を介して液体保持部材へ放射線源の制御用量を導入する段階とをさらに含む。好ましくは、放射線源は、組織表面上への装置の配置の後に密封小線源療法装置内に配置され、装置の除去の前に装置から除去される。本方法は、処置される組織の所定の外表面領域へ液体保持部材を取り付ける段階もまた含み得る。
【0013】
特に添付の図面と合わせて考慮すれば、本発明の前述の特徴、目的、および利点は以下の好ましい態様の詳細な説明から当業者に明らかとなるであろう。
【0014】
発明の詳細な説明
本発明は概して、組織および/または骨へ放射線を送達するための照射療法装置、好ましくは密封小線源療法装置を提供する。本システムは様々な目的のために用いることができるが、本システムは好ましくは、切除された腫瘍部位の近傍の組織を処置するため、より具体的には、例えば、患者の肺における閉腫瘍切除部位を囲む組織の外表面を処置するために用いられる。図1および2は、近位部分12a、遠位部分12b、およびそれらを介して伸びる少なくとも1つの管腔12cを有する、挿入部材(例えばカテーテル部材12)を概して含む、密封小線源療法装置10の1つの態様を図示する。液体保持部材20として図示された拡張可能な表面要素は、カテーテル部材12の遠位部分12bに嵌合することができ、カテーテル部材12中の少なくとも1つの管腔12cと流体連絡された内部に形成された腔21含む。使用において、液体保持部材20は処置される組織の外表面領域に配置され、腔21は、処置される組織へ放射線を送達するために、典型的には液体または固体形状のいずれかの放射線源を受容するのに有効である。
【0015】
カテーテル部材12は様々な立体配置を有し得るが、好ましくは、近位部分12a、遠位部分12b、ならびにそれらの中に形成された、近位部分12aおよび遠位部分12bを介して延びる少なくとも1つの管腔12cを有する半可撓性のまたは可撓性の細長い部材である。管腔12cは、カテーテル12の遠位部分12b中に形成される遠位ポート14で、またはその近くで終結し得る。図1に示すように、カテーテル12の近位端12aは、装置10が患者に移植された際に液体保持部材20へのアクセスを提供する経皮ポート23を含むことが好ましい。図2には1つの内部管腔12cだけが図示されているが、当業者は、カテーテル部材12が1つまたは複数の内部管腔を有し得ること、あるいは液体保持部材20へ液体および/または気体を送達するために公知技術のその他の手段が用いられ得ることを容易に認識するであろう。
【0016】
液体保持部材20は、様々な立体配置、形状、およびサイズを有し得る。しかしながら、液体保持部材は、好ましくは、カテーテル部材12中に形成された少なくとも1つの管腔12cと流体連絡された、内部に形成された腔21を含む。1つの態様において、液体保持部材20は、液体放射線源を受容するように構成され、適合される。さらに、液体保持部材20の少なくとも1つの外側表面は、好ましくは、処置される組織の所定の外表面領域に位置付けられた、さらに任意でこの領域に一致するように適合されていてもよい、組織接触表面である。さらに、当業者は、液体保持部材は内部に形成された任意の数の腔を含み得、処置される外側の組織表面に1つまたは複数の表面が位置付けられるように適合され得ることを認識するであろう。
【0017】
図2に示すように、液体保持部材20は、第一の組織接触表面24、第二の対向面22、およびそれらの間に伸びる周囲側壁26を含む。第一および第二の表面24、22はそれぞれ実質的にあらゆるサイズを有することができるが、好ましくは、第一の表面24は処置される組織の所定の外表面領域をカバーするのに十分なサイズを有する。第一および第二の表面24、22の形状もまた変化し得るが、第一の表面24は外側組織表面に位置付けられるように適合されるべきである。例示的態様において、第一の表面24は、実質的に平面であるが、好ましくは表面24を組織表面に一致させることができるように可撓性または半可撓性である。第二の表面22も形状およびサイズにおいて変化し得るが、好ましくは、均一な放射線用量を提供するように(液体保持部材20中の液体放射性同位体がこの放射線量を提供する)、第一の表面22と実質的に同じ形状およびサイズを有する。1つの態様において、均一な放射線用量は、第一の表面24と第二の表面22の間に伸びる実質的に一定の幅wを有する周囲側壁26を提供することによって達成され得る。液体保持部材が放射性の液体で充填されると、側壁26の均一幅wが液体保持部材20内の放射性の液体の均一な分配を促進し、それによって第一の表面24の全体にわたって均一な放射線用量(エッジ効果を除く)を提供する。
【0018】
図1および2の態様は、実質的に均一な放射線用量を提供することができることから有利な、実質的にディスク形状の液体保持部材20を図示しているが、当業者は液体保持部材20が様々な立体配置を有し得ることを認識するであろう。非限定的な例として、液体保持部材の第一の表面および第二の対向面は、正方形、長円形、矩形等であり得る。1つの好ましい態様において、第一の表面は長円形の形状である。本発明者らは、長円形状は、特に肺腫瘍の処置のための手術の際に、他の形状より操作が容易であると同時に、標的組織領域の完全な被覆を提供し得ることを発見した。さらに、液体保持部材20のサイズは前もって決定できるが、このサイズは液体保持部材を所望のレベルに膨張させることによって処置時に選択することが可能である。本発明の特定の態様において、第一の表面の表面積は約4cm2から100cm2の間であり得る。
【0019】
液体保持部材20はまた好ましくは、液体保持部材20を組織表面に取り付けるために該部材上に形成されるかまたは該部材に嵌合される、少なくとも1つの固定部材28a-dを含む。固定部材28a-dは、液体保持部材20の任意の部分上に形成されるか、またはそこへ嵌合され得、様々な立体配置を有し得る。好ましくは、各固定部材28a-dは第一の表面22の末端周辺に配置される。図示した態様において、そのような立体配置は、固定部材28a-dを第一の表面24の周壁26周辺に、または第一の表面24に隣接して配置する結果となる。例えばアイレット、フック、接着剤、およびそれらの組み合わせを含む、様々な固定部材28a-dが用いられ得る。図2はアイレット形状の固定部材28a-dを図示する。使用において、患者内に液体保持部材20をしっかりと埋め込むために、各固定部材28a-dは組織表面に縫合されるか、またはそうでなければ取り付けられ得る。
【0020】
図1および2に図示される態様において、カテーテル12は第二の表面22で、そしておそらく第一の表面24でも、液体保持部材20へ取り付けられる。図3に図示されるさらなる態様において、カテーテル12は側壁26の1つの部分で、好ましくは対向する2つの部分で、液体保持部材20へ取り付けられる。側壁26に沿ってカテーテル12を取り付けることによって、特定の処置手順における所望の処置領域への装置の挿入に好ましい装置10幾何学配置が得られる。例えば、図3に図示される態様の幾何学配置は、装置10が患者の肋骨の下を側方に移動されなければならない肺腫瘍の処置における使用に関して好ましいと考えられる。図3に図示される態様において、カテーテル12は液体保持部材20の中心に接続されるが、当業者は他の立体配置も可能であることを認識するであろう。
【0021】
液体保持部材20は、本明細書に示されていないか、または記述されていない様々な他の特徴もまた含み得る。別の態様において、液体保持部材20は、放射線感受性組織を遮蔽するよう適合され得る。非制限的例として、第二の表面22および/もしくは周壁26の全てまたは一部は、処置部位を取りまく組織を遮蔽するのに効果的な放射線不透過性物質から形成されるか、またはそれによりコーティングされ得る。例示的な態様において、組織接触表面24を除いて、液体保持部材20全体が放射線不透過性である。コーティング(図示せず)は、参照により本明細書に組み入れられる2002年11月19日発行の米国特許第6,482,142号「Asymmetric Radiation Dosing Apparatus and Method」に記載されるように、放射線感受性組織を遮蔽するため、および/または非対称等線量カーブを提供するために、戦略的に位置付けられる。
【0022】
コーティングに適した放射線不透過性物質は例えば、バリウム、タングステン、ビスマス、タンタル、およびスズを含む。液体保持部材20のコーティング部分の代替として、放射線遮断または吸収シールド(図示せず)が、所望の等線量カーブを生成するために、液体保持部材20の特定領域の間、その内部、またはその周辺に位置付けられ得る。当業者は、所望の等線量カーブおよび/または放射線感受性組織の遮蔽を達成するために、他の立体配置が用いられ得ることを理解するであろう。
【0023】
さらに別の態様において、液体保持部材は、放射線源と組織の間に間隔を提供するよう適合され得る。非制限的例として、図4Aおよび4Bに示すように、液体保持部材20'は、内腔を第一の腔21a'および第二の腔21b'に分離するように内部に配置される仕切りを含み得る。各腔21a'、21b'は好ましくは、放射線源が第一の腔21a'へ送達され、液体または気体が第二の腔21b'へ送達されるように、ポート14a'、14b'と連絡する。使用において、第二の腔21b'は放射線源を組織表面から距離を隔てて配置するのに効果的である。全体が参照により本明細書に組み入れられるWinkler et alの米国特許第6,413,204号に記載のように、放射線源(図示した態様においては、Proxima Therapeutics, Inc.、Alpharetta、Georgiaより入手可能なIotrexのような液体放射線源が好ましいであろう)との間に均一な間隔を提供することにより、液体保持部材20'と接触しているかまたは近接している健常組織の壊死の可能性を最小限に抑えつつ、均一で規定の放射線用量が標的組織に浸透し得る。当業者は、放射線源と組織の間に間隔を提供するために様々な技術が用いられ得ることを理解するであろう。非制限的例として、液体保持部材20'は、米国特許第6,413,204号に記載のように、間隔を提供するために液体保持部材の周辺に配置される第二のバルーン部材を含み得る。
【0024】
間隔を提供することに加え、第二の内腔は治療用薬剤を標的組織に送達するために用いられ得る。例えば、液体保持部材20の少なくとも一部は多孔質物質によって規定され得、治療用薬剤を腔21b'から隣接組織へ送達するために用いられ得る。1つの態様において、組織接触表面24は、それを通じて治療用薬剤が送達され得る多孔性膜により規定される。Williamsの米国特許第6,083,148号は、例示的な密封小線源療法および多孔性バルーン壁を用いた装置を開示しており、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。治療用薬剤は好ましくは、医学的に有用な薬剤、例えば化学療法薬剤、抗新生物薬剤、抗血管新生薬剤、免疫調節剤、ホルモン性薬剤(アゴニストおよびアンタゴニストを含む)、免疫療法薬剤、抗生物質、またはそれらの組み合わせである。他の治療用薬剤および有用な多孔性物質は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Winklerの米国特許第6,200,257号に開示されている。
【0025】
使用において、液体保持部材20は好ましくは、図1、2、および3に示すように、液体保持部材20が所定の形態を有する開いて膨張している形状と、閉じて膨張していない形状との間で移動可能である。膨張している形状で位置付けられる場合、所定の形態は好ましくは、放射線が投与される標的組織の外表面領域を被覆するように適合される。開位置と閉位置の間の液体保持部材20の移動は、様々な技術によって達成され得る。液体保持部材20は好ましくは、液体、気体、または放射線源を用いて膨張されるが、移動は、液体保持部材を開位置または閉位置の一つに移動するのに効果的な、ワイヤー、プーリー集合体、レバー、または類似の装置などの作動部材(図示せず)を用いて、任意で達成され得る。当業者は、患者内で液体保持部材20を摘出部位に隣接して位置付けるために、また、開位置と閉位置の間で液体保持部材20を移動するために、様々な異なる作動部材が用いられ得ることを容易に理解するであろう。
【0026】
例示的な態様において、液体保持部材20は膨張した位置で所定の形態を有する膨張可能バルーン部材である。「バルーン」という用語が、弾性の物質で構成されることができるがその必要はない膨張性の装置を含むことが意図されることが、理解されよう。代替的態様において、液体保持部材20は、形状記憶物質で形成され得、ここで液体保持部材20は、開位置においては三次元形状を、閉位置においては実質的に折りたたまれた形状を有する。
【0027】
制限は意図されないが、液体保持部材20は、生体適合性で放射線抵抗性の重合体を含み得る重合体フィルム壁で形成され得る。適した重合体は例えば、サイラスティックゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、およびPVCを含む。なおさらに、液体保持部材20は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,413,204号に記載の、バルーンおよび/または膨張可能表面要素に従って形成され得る。
【0028】
本発明はまた、標的組織の外表面領域を介して標的組織を処置するための方法を提供する。図5A〜5Cは、密封小線源療法装置を肺の外表面に適用することによって、切除された肺腫瘍を処置するために密封小線源療法装置を用いる方法の1つの態様を図示する。図5Aにおいて、癌性組織は肺から切除され、切除された腔または「くさび」50を作成する。くさび切除の後、縫合線52を図示した図5Bに示されるように、腔50は、縫合されるかまたはステープルで閉じられる。本発明による密封小線源療法装置は次いで手術中に患者体内に配置され得、液体保持部材20は縫合された切除部位52に近接した肺の外表面(所定の外表面領域)をおおって位置付けられ得る。液体保持部材20が閉じた立体配置で導入される場合、液体保持部材20は膨張させることができ、またはそうでなければ開位置へ移動させることができ、このとき、好ましくは1つまたは複数の固定部材28a-dを用いて組織へ取り付ける。膨張は、気体もしくは他の液体(例えば、生理食塩水、もしくは血管造影法に用いられる造影剤のような放射線吸収液体)によって達成され得、あるいは、液体保持部材を組織に固定する前に、放射性液体を液体保持部材へプレロードし得る。しかしながら、好ましくは、放射性液体は、液体保持部材20が組織表面に固定された後に導入される。放射性源は、放射線療法の指定用量が送達されるまで液体保持部材20内に滞留し、あるいは放射性源は、指定の投与量が達成されるまで、毎日もしくは他の計画された基準の指定の時間、挿入され得る。次いで放射性源を回収し、カテーテル12を除去する。
【0029】
放射性源を用いた放射線療法の適用はまた、上記で参照により本明細書に組み入れられている2002年7月2日発行の米国特許第6,413,204号「Interstitial Brachytherapy Apparatus and Method for Treatment of Proliferative Tissue Diseases」において提供される多くの記載および実施例に従って実施され得る。放射線処置は密封小線源療法装置の除去で終了してもよく、または密封小線源療法は外部から供給された放射線のさらなる用量により補ってもよい。非制限的例として、放射性物質は放射性核種の任意の溶液(例えばI-125もしくはI-131の溶液)から構成される液体であり得るか、または放射性液体は、Au-198、Y-90等の固体放射性核種の小粒子を含む、適した液体のスラリーを用いて生成され得る。さらに、放射性核種をゲル中に包含させることもできる。本発明において有用な1つの放射性物質は、Proxima Therapeutics, Inc.、Alpharetta、Georgiaから入手可能な、3-(125I)ヨード-4-ヒドロキシベンゼンスルホン酸ナトリウム(125I-HBS)を含む無菌単回使用用非発熱性溶液である、Iotrex(商標)である。
【0030】
さらに、本発明の密封小線源療法装置および方法に用いられる放射線源は、固体またはX線エミッターのような他の非液体放射線源であり得る。また、非制限的例として、本発明と共に用いられる固体放射線源は3M Company、St. Paul、Minnesotaより入手可能なタイプの放射性マイクロスフェアを含み得る。この放射線源は、製造時にカテーテルへプレロードされるか、または装置が移植された後に装置へロードされるかのいずれでもあり得る。固体の放射線放出物質を、例えばアフターローダー(afterloader)を用いて、ワイヤ上のカテーテル12を介して挿入することができる(図示せず)。このような固体の放射性コア構造は、液体に限定されている場合よりも広い範囲の放射性核種を可能にするという点で、利点を提供する。本発明の送達装置と共に使用可能なそのような放射性核種は、現在、密封小線源療法放射線源として一般に入手可能である。この態様において、空気、水、または造影物質のような放射線吸収物質によって占められ得る液体保持部材と放射線源との間の空間容量を規定しつつ、固体球状放射線源を液体保持部材20によって包囲する。
【0031】
さらなる態様において、放射線源は、単一固体スフェアを含む代わりに、実質的に等しい強度で全ての方向に、またはより特には組織接触表面24を介して標的組織に向けて放射するように液体保持部材20内に戦略的に配置される複数の放射線放出粒子44を含み得る。この複数の放射線放出粒子は、カテーテル本体部12を経由する複数のワイヤの遠位端に載せることができ、カテーテル本体部の壁を貫通して形成された複数のポートから出すことができる。この配置は、結果として生じる所望のプロファイルを生成するための個々の放射線源の正確な位置決めを可能にする。
【0032】
上記の内容は単なる本発明の原則の例示説明であること、ならびに、本発明の範囲および意図から逸脱することなく、当業者によってさまざまな改変が行われ得ることを、当業者は認識するであろう。本明細書に引用される全ての参考文献は、その全体が参照により明確に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に記載の密封小線源療法装置の1つの態様の斜視図による説明を示す。
【図2】図1に示される装置の遠位部分の側面図による説明を示す。
【図3】斜視図に示される本発明の密封小線源療法装置の他の態様の説明を示す。
【図4】複数の腔を含む、密封小線源療法装置の他の態様の説明を示す。
【図5】図5Aは、外科的に切除された病変を有する患者の肺の説明を示す。図5Bは、縫合により閉じた切除された病変を有する図5A中に示される肺の説明を示す。図5Cは、本発明に記載の密封小線源療法装置が取り付けられた図5B中に示される肺の説明を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む、標的組織の外表面領域を介して標的組織を処置するための密封小線源療法装置:
近位部分、遠位部分、およびそれらを介して伸びる少なくとも1つの管腔を有する挿入部材;ならびに
挿入部材の遠位部分に嵌合される液体保持部材であって、処置される組織の所定の外表面領域に一致するよう成形された第一の表面と、挿入部材中の少なくとも1つの管腔と流体連絡された内部に形成された腔とを有する液体保持部材;
ここで、密封小線源療法装置は、処置される組織へ放射線を送達するため、液体保持部材中の腔内へ少なくとも1つの管腔を介して放射線源を受容するように適合される。
【請求項2】
液体保持部材が、処置される組織の外表面領域へ第一の表面を固定するために第一の表面の末端周辺に分配される複数の固定部材を含む、請求項1記載の装置。
【請求項3】
複数の固定部材が、アイレット、フック、接着剤、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項2記載の装置。
【請求項4】
液体保持部材が、放射性液体で充填された場合に第一の表面の全体にわたって均一な放射線用量を提供するように成形される、請求項1記載の装置。
【請求項5】
少なくとも1つの管腔を介して受容する放射線源が固体放射線源である、請求項1記載の装置。
【請求項6】
少なくとも1つの管腔を介して受容する放射線源が気体の形状である、請求項1記載の装置。
【請求項7】
液体の形状である放射線源をさらに含み、液体保持部材が放射線源を除去可能に受容するのに効果的である、請求項4記載の装置。
【請求項8】
第1の表面が実質的に平面である、請求項1記載の装置。
【請求項9】
液体保持部材が、第一の表面に対向する第二の表面と、第一の表面と第二の表面の間に腔を規定するように伸びる周壁とを含む、請求項1記載の装置。
【請求項10】
周壁が実質的に均一な深さを有する、請求項9記載の装置。
【請求項11】
液体保持部材が実質的にディスク形状である、請求項9記載の装置。
【請求項12】
第二の表面および周壁の少なくとも1つの少なくとも一部が、非標的組織を放射線から保護するために放射線不透過性である、請求項9記載の装置。
【請求項13】
液体保持部材が挿入部材に隣接して配置される閉位置と、液体保持部材が挿入部材から外へ伸びる開位置との間で、液体保持部材が移動可能である、請求項1記載の装置。
【請求項14】
液体保持部材が、開位置において膨張し、閉位置において縮小する、拡張可能なバルーン部材である、請求項13記載の装置。
【請求項15】
膨張させた場合に組織の所定の領域を被覆するのに効果的であるように、拡張可能なバルーン部材が開位置において所定の形状を有する、請求項14記載の装置。
【請求項16】
拡張可能なバルーン部材の所定の形状が実質的にディスク形状である、請求項15記載の装置。
【請求項17】
液体保持部材が、形状記憶物質で形成され、開位置においては三次元形状を、閉位置においては実質的に折りたたまれた形状を有する、請求項13記載の装置。
【請求項18】
液体保持部材が開位置において実質的にディスク形状である、請求項17記載の装置。
【請求項19】
挿入部材が可撓性のカテーテルである、請求項1記載の装置。
【請求項20】
処置される組織が肺である、請求項1記載の装置。
【請求項21】
以下を含む、密封小線源療法装置:
近位部分、遠位部分、およびそれらを介して伸びる少なくとも1つの管腔を有する細長いカテーテル部材;
細長いカテーテル部材の遠位部分周辺に配置されたバルーン部材であって、細長いカテーテル中の少なくとも1つの管腔と流体連絡された内部に形成された腔を有し、処置される組織の所定の外表面領域に一致するよう成形された第一の組織接触表面を有するバルーン部材;ならびに、
バルーンの腔中に配置される液体の形状の放射線源。
【請求項22】
バルーン部材が、処置される組織の外表面領域へ第一の表面を固定するために第一の表面の末端周辺に分配される複数の固定部材を含む、請求項21記載の装置。
【請求項23】
複数の固定部材が、アイレット、フック、接着剤、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項22記載の装置。
【請求項24】
バルーン部材が、第一の表面の全体にわたって均一な放射線用量を提供するよう成形される、請求項21記載の装置。
【請求項25】
第一の表面が実質的に平面である、請求項21記載の装置。
【請求項26】
バルーン部材が、第一の表面に対向する第二の表面と、第一の表面と第二の表面の間に腔を規定するように伸びる周壁とを含む、請求項21記載の装置。
【請求項27】
周壁が実質的に均一な深さを有する、請求項26記載の装置。
【請求項28】
バルーン部材が実質的にディスク形状である、請求項26記載の装置。
【請求項29】
第二の表面および周壁の少なくとも1つの少なくとも一部が、非標的組織を放射線から保護するために放射線不透過性である、請求項26記載の装置。
【請求項30】
液体保持部材が挿入部材に隣接して配置される収縮閉位置と、液体保持部材が挿入部材から外へ伸びる膨張開位置との間で、バルーン部材が移動可能である、請求項21記載の装置。
【請求項31】
膨張させた場合に組織の所定の領域を被覆するのに効果的であるように、拡張可能なバルーン部材が開位置において所定の形状を有する、請求項30記載の装置。
【請求項32】
拡張可能なバルーン部材の所定の形状が実質的にディスク形状である、請求項31記載の装置。
【請求項33】
挿入部材が可撓性のカテーテルである、請求項21記載の装置。
【請求項34】
以下を含む、標的組織の外表面領域を介して標的組織を処置するための密封小線源療法装置:
近位部分、遠位部分、およびそれらを介して伸びる少なくとも1つの管腔を有する挿入部材;ならびに
挿入部材の遠位部分に嵌合されるバルーン部材であって、処置される組織の所定の外表面領域に一致するよう成形された第一の表面と、挿入部材中の少なくとも1つの管腔とそれぞれ流体連絡された内部に形成された第一および第二の腔とを有するバルーン部材;
ここで、密封小線源療法装置は、処置される組織へ放射線を送達するため、液体保持部材中の第一および第二の腔の少なくとも1つの中へ管腔を介して放射線源を受容するように適合される。
【請求項35】
第一の腔が、第二の腔と処置される組織との間に位置付けられる、請求項34記載の装置。
【請求項36】
第一の腔が、第二の腔内に位置付けられる放射線源を組織表面から距離を隔てて配置するのに効果的である、請求項35記載の装置。
【請求項37】
第一の腔が、治療用薬剤を受容し、処置される組織へ治療用薬剤を送達するために適合される、請求項35記載の装置。
【請求項38】
第一の表面が、治療用薬剤を送達するために多孔性物質で形成される、請求項37記載の装置。
【請求項39】
治療用薬剤が、化学療法薬剤、抗新生物薬剤、抗血管新生薬剤、免疫調節剤、ホルモン性薬剤、免疫療法薬剤、抗生物質、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項37記載の装置。
【請求項40】
以下の段階を含む、標的組織の外表面領域を介して標的組織を処置するための方法:
放射性放出を送達するための、以下のものを有する少なくとも1つの密封小線源療法装置を提供する段階;
近位端、遠位端、およびそれらを介して伸びる少なくとも1つの管腔を有するカテーテル部材;
カテーテル部材の遠位端に近接して配置される少なくとも1つの液体保持部材であって、カテーテル部材中の少なくとも1つの管腔と連絡された内部に形成された腔と、処置される組織の所定の外表面領域に一致するよう成形された第一の表面とを含む液体保持部材;
処置される組織の外側の組織表面上に少なくとも1つの密封小線源療法装置を手術中に配置する段階;
組織を処置するために液体保持部材へカテーテル中の少なくとも1つの管腔を介して放射線源の制御用量を導入する段階。
【請求項41】
組織表面上への装置の配置の後、放射線源が密封小線源療法装置内に配置される、請求項40記載の方法。
【請求項42】
装置から放射線源を除去する段階と、装置を除去する段階とをさらに含む、請求項40記載の方法。
【請求項43】
処置される組織の所定の外表面領域へ液体保持部材を取り付ける段階をさらに含む、請求項40記載の方法。
【請求項44】
液体保持部材が、ステープル、縫合糸、クリップ、ピン、釘、ねじ、棘(barb)、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される締結装置を使用して、処置される組織の所定の外表面領域へ取り付けられる、請求項43記載の方法。
【請求項45】
液体保持部材が放射線源を除去可能に受容するのに効果的であり、かつ放射線源が液体の形状である、請求項40記載の方法。
【請求項46】
液体保持部材がカテーテル部材に隣接して配置される閉位置と、液体保持部材がカテーテル部材から外へ伸びる開位置との間で、液体保持部材が移動可能である、請求項40記載の方法。
【請求項47】
液体保持部材が、開位置において膨張し、閉位置において縮小する、拡張可能なバルーン部材である、請求項46記載の方法。
【請求項48】
膨張させた場合に、処置される組織の所定の外表面を被覆するのに効果的であるように、拡張可能なバルーン部材が開位置において所定の形状を有する、請求項47記載の方法。
【請求項49】
バルーン部材の所定の形状が実質的にディスク形状である、請求項48記載の方法。
【請求項50】
液体保持部材が、形状記憶物質で形成され、開位置においては三次元形状を、閉位置においては実質的に折りたたまれた形状を有する、請求項40記載の方法。
【請求項51】
液体保持部材が開位置において実質的にディスク形状である、請求項50記載の方法。
【請求項52】
液体保持部材が、液体放射線源の所定の量を受容するように適合されたサイズを有する、請求項40記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【公表番号】特表2007−510513(P2007−510513A)
【公表日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−539712(P2006−539712)
【出願日】平成16年11月5日(2004.11.5)
【国際出願番号】PCT/US2004/037205
【国際公開番号】WO2005/046795
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(506002993)サイティック コーポレーション (12)
【Fターム(参考)】