組織スライドからの核酸定量
【課題】
本発明は老化サンプル、ホルマリン固定サンプル、パラフィン包埋サンプル、異数性細胞を含むサンプル、及び断片化核酸を含む細胞等の問題のあるサンプルに由来する核酸の定量方法を提供する。
【解決手段】
方法としては、有機抽出に依存せずに保存臨床サンプルから非変性条件下で核酸を効率的に可溶化する方法、異数性に関係なく細胞数を正規化する方法、核酸の断片化状態を検出する方法、及び分解核酸サンプルの標準曲線を提供する方法が挙げられる。
本発明は老化サンプル、ホルマリン固定サンプル、パラフィン包埋サンプル、異数性細胞を含むサンプル、及び断片化核酸を含む細胞等の問題のあるサンプルに由来する核酸の定量方法を提供する。
【解決手段】
方法としては、有機抽出に依存せずに保存臨床サンプルから非変性条件下で核酸を効率的に可溶化する方法、異数性に関係なく細胞数を正規化する方法、核酸の断片化状態を検出する方法、及び分解核酸サンプルの標準曲線を提供する方法が挙げられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願とのクロスリファレンス)
本願は先願米国仮出願第60/838,578号、発明の名称「組織スライドからの核酸定量(Nucleic Acid Quantitation from Tissue Slides」、発明者Gary McMasterら、出願日2006年8月17日の優先権と特典を主張する。先願の開示内容全体を参考資料として本明細書に組込む。
【0002】
(発明の技術分野)
本発明は細胞及び組織からの核酸抽出及び定量の分野に関する。疎水性溶媒を使用せずに包埋臨床サンプルから核酸を抽出する。リボソームDNA参照及び/又は分解in vitro RNAを使用して標準曲線を正規化し、細胞当たりの核酸コピー数を設定する。
【背景技術】
【0003】
ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織は臨床結果が十分に記録された生検検体の膨大な供給源となるので回顧調査の最適資源となる(Lewis,F.ら,2001;Yangら,2006)。ヒト検体の入手と使用は癌研究と薬剤発見基盤の必須部分であり、研究者らが薬剤ターゲットを同定し、リード化合物を開発し、薬剤代謝を解明するのに役立つ。ヒト検体を使用する研究は薬剤応答及び毒性と、短期及び長期臨床結果を予測するのに役立つ。新技術とヒトゲノムのマッピングから得られる情報に伴い、学術界と営利及び非営利目的の産業界の研究者が抗癌薬発見を促進させるために良好な品質のヒト検体を入手する必要はますます増大している。これらの研究を促進するためには、正常及び悪性組織、血液、他の体液、並びにこれらから抽出可能な蛋白質、DNA及びRNA等の多数の異なる形のヒト検体が必要である。
【0004】
米国で実施される全外科処置は病理診断用組織サンプルを取得する必要があるため、ヒト検体の一次供給源は病院の手術室と病理研究室である。現在米国では160,000,000を越える病理検体(その大半はロウブロックに固定されている)が保存されている(Eiseman and Haga,1999)。
【0005】
組織ブロックは固定し、パラフィン包埋した後、ミクロトームで切断し、切片を顕微鏡スライドに固定するのが通例である。パラフィン包埋組織切片は核酸分析前に水溶液を浸透できるように脱ロウする必要があった。
【0006】
例えば、無菌レザーブレードを使用してFFPE切片をスライドからこそげ落とし、処理のためにマイクロ遠心管に移している。従来のパラフィン除去方法はキシレンと高グレードアルコールを使用する有機抽出を伴う。この方法は時間がかかり、煩瑣であり、キシレンは有害ガスを発生する猛毒性薬品であるため、特殊な取り扱いを要する。スカルペルを使用して同一組織ブロックからFFPE検体切片(60〜100ミクロン/25〜250mm2)10枚をガラススライドから遠心管にこそげ落とした後、疎水性溶媒(例えばキシレン含有EZDeWax(登録商標)(BioGenex,San Ramon,CA,USA))1mlを加える;図1参照。ボルテックス混合と室温で5分間インキュベーション後に組織サンプルを16,000×gで2分間マイクロ遠心管で遠心し、上清を捨てる。70%エタノール1mlをサンプルに加え、サンプルをボルテックス混合し、16,000×gで2分間マイクロ遠心管で遠心してもよい。次に、サンプルロウをキシレン相に繰返し抽出し、残渣を70%エタノールで2〜5回洗浄した後、次の組織ホモジネート調製又は全RNA単離段階に進む(Yangら,2006)。
【0007】
相抽出脱ロウプロトコールは時間と労力がかかる。反復操作、吸引及び管移動の結果、核酸回収が非定量的になる可能性がある。反復ボルテックスと苛酷な溶媒暴露によりサンプルが分解する可能性がある。
【0008】
保存臨床検体に由来する核酸の定量には別の問題もある。例えば、サンプル採取、ホルマリン固定及び組織処理によりRNA品質が低下する可能性がある。その結果、例えば、FFPE組織ブロック中のRNAを測定する能力が低下する可能性がある。包埋臨床サンプルから最終的に抽出された核酸は高度に分解及び断片化していることが多い。これらの抽出液を標準分析法により評価すると、定性及び定量アッセイ誤差を生じることが多い。その上、不完全な抽出によりmRNAコピー数測定等の計算に誤差を生じる可能性がある。FFPE組織ブロックに由来するRNAの測定に伴う問題としてはRNAフラグメントの断片化、架橋の及びホルマリン固定法による塩基修飾が挙げられる。ホルマリン固定組織中のRNA分子長を減らす2つのプロセスは分解と断片化(加水分解)である。RNA分解は組織を固定剤と接触させてサンプル採取操作に付す前に酵素分解により生じる可能性がある。RNA分子の断片化はホルマリン固定剤に起因し得るので、使用するホルマリン条件に応じて実質的に変化する(Lehmann U,Kreipe H: Real−time PCR analysis of DNA and RNA extracted from formalin−fixed and paraffin−embedded biopsies,Methods 2001,25:409−418)。断片化の厳密な原因は不明であるため、この問題の解決方法も不明であった。
【0009】
現在の最新RNA測定技術は定量的PCR(QPCR)である。しかし、凍結組織とFFPE組織でRNA定量を比較した数件の最近の報告によると、ホルマリン固定後のQPCRによる検出にはRNA転写産物の3〜5%しか利用できないことが実証されている(Bibikova M,Talantov D,Chudin E,Yeakley JM,Chen J,Doucet D,Wickham E,Atkins D,Barker D,Chee M,Wang Y,Fan JB:Quantitative gene expression profiling in formalin−fixed,paraffin−embedded tissue using universal bead arrays,Am J Pathol 2004,165:1799−1807)。この問題は逆転写段階がオリゴ−dT又はランダムプライミングのどちらを使用するかに関係ない。この問題は、逆転写及び/又はQPCRがRNA中のホルマリンによるモノメチロール化により著しく悪化するためであると説明することができる。この問題を解決するために、該当遺伝子の発現が内部ハウスキーピング遺伝子に正規化されている。しかし、アデニンはホルマリン固定により変性し易いため、A/Uリッチ配列はG/Cリッチ配列よりも正確に測定されないので、この方法は不十分である(Masuda N,Ohnishi T,Kawamono S,Monden M,Okubo K: Analysis of chemical modification of RNA from formalin−fixed samples and optimization of molecular biology applications for such samples,Nucleic Acids Res 1999,27:4436−4443)。従って、ホルマリン固定組織中のmRNAの測定効率及び再現性には遺伝子特異的な差異が生じる。ホルマリンによるその変性に加え、固定及び/又はその後の単離工程中の高度断片化により特殊なプライマーデザインが必要になる。従って、ホルマリン固定組織でのPCRによるRNA測定には大きな限界がある。RNA定量の確度を改善するためには、ホルマリンによる変性に反応しにくい代替方法が必要である(Bustin SA:Quantification of mRNA using real−time reverse transcription PCR (RT−PCR):trends and problems,J Mol Endocrinol 2002,29:23−39;Bustin SA,Nolan T:Pitfalls of quantitative real−time reverse−transcription polymerase chain reaction,J Biomol Tech 2004,15:155−160 Gunther EC,Stone DJ,Gerwien RW,Bento P,Heyes MP:Prediction of clinical drug efficacy by classification of drug−induced genomic expression profiles in vitro,Proc Natl Acad Sci U S A 2003,100:9608−9613)。
【0010】
定量的PCRは一般に75〜85bpアンプリコンサイズに限定されており、複数のプールされた遺伝子特異的プライマーが必要であるため、FFPE RNAの定量ではその性能は不良であった(Cronin M,Pho M,Dutta D,Stephans JC,Shak S,Kiefer MC,Esteban JM,Baker JB: Measurement of gene expression in archival paraffin−embedded tissues:development and performance of 92−gene reverse transcriptase−polymerase chain reaction assay,Am J Pathol 2004,164:35−42)。QPCRはbDNAアッセイよりも著しく高いRNA純度を必要とするため、bDNA法と比較して分析前にサンプルを処理するために多くの段階が必要である。脱ロウ後に、RNAをプロテイナーゼKで消化し、単離し、1〜2回DNAase Iで処理してDNA汚染を除去する必要がある。QPCRによるRNA定量に伴う第2の問題は該当mRNA配列をcDNAに変換するために逆転写段階が必要な点である。この酵素反応はホルマリンによる塩基修飾、二次mRNA構造及びRNA調製における不純物により妨げられる。逆転写を阻害する因子はFFPE組織ブロックにより異なる。PCR増幅段階に高温加熱段階を加えると、RNA塩基修飾を多少抑制できるが、多くのサンプルではこれらの修飾は不可逆的である。サンプルが古くなるほど損傷することが多く、平均QPCRシグナルの低下が>90%となるため、入力RNAを増やし、Ct値を35〜40まで上げる必要がある(Masuda N,Ohnishi T,Kawamono S,Monden M,Okubo K:Analysis of chemical modification of RNA from formalin−fixed samples and optimization of molecular biology application for such samples,Nucleic Acids Res 1999,27:4436−4443)。これらの全問題により、QPCRはFFPEサンプルに由来するRNAの定量方法として満足な方法ではなかった。
【非特許文献1】Lehmann U,Kreipe H: Real−time PCR analysis of DNA and RNA extracted from formalin−fixed and paraffin−embedded biopsies,Methods 2001,25:409−418
【非特許文献2】Bibikova M,Talantov D,Chudin E,Yeakley JM,Chen J,Doucet D,Wickham E,Atkins D,Barker D,Chee M,Wang Y,Fan JB:Quantitative gene expression profiling in formalin−fixed,paraffin−embedded tissue using universal bead arrays,Am J Pathol 2004,165:1799−1807
【非特許文献3】Masuda N,Ohnishi T,Kawamono S,Monden M,Okubo K: Analysis of chemical modification of RNA from formalin−fixed samples and optimization of molecular biology applications for such samples,Nucleic Acids Res 1999,27:4436−4443
【非特許文献4】Bustin SA:Quantification of mRNA using real−time reverse transcription PCR (RT−PCR):trends and problems,J Mol Endocrinol 2002,29:23−39
【非特許文献5】Bustin SA,Nolan T:Pitfalls of quantitative real−time reverse−transcription polymerase chain reaction,J Biomol Tech 2004,15:155−160
【非特許文献6】Gunther EC,Stone DJ,Gerwien RW,Bento P,Heyes MP:Prediction of clinical drug efficacy by classification of drug−induced genomic expression profiles in vitro,Proc Natl Acad Sci U S A 2003,100:9608−9613
【非特許文献7】Cronin M,Pho M,Dutta D,Stephans JC,Shak S,Kiefer MC,Esteban JM,Baker JB: Measurement of gene expression in archival paraffin−embedded tissues:development and performance of 92−gene reverse transcriptase−polymerase chain reaction assay,Am J Pathol 2004,164:35−42
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記に鑑み、包埋臨床組織サンプルから核酸を回収するためのより迅速で簡単な方法が必要である。有害な溶媒を使用せずにホルマリン固定パラフィン包埋サンプルから核酸を取得する方法を提供することが望ましい。より定量的で損傷の少ない核酸抽出法により、核酸分析の確度を増すことが望ましい。ターゲット分解を考慮するように分析物を調整する方法により効果が得られる。本発明は上記特徴及び以下の記載から自明となる他の特徴を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の方法は物理的に処理しにくいか又は分解している核酸サンプルの分析に伴う問題に対処するのに有用である。本方法は組織病理評価のために予め処理されたサンプルから良好な代表的試験材料を得るのに役立つ。本方法はより代表的な標準材料を提供することによりサンプル分析の確度と感度を増すことができる。ターゲット断片化に対する感度を増すように構成した本発明のオフセットbDNAアッセイによると、核酸が分解している場合にその状態を測定することができる。本方法は未知数の正常及び/又は異常細胞に由来する試験材料のmRNAコピー数の推定値を改善することができる。これらの技術は例えば正常及び/又は異数性細胞、ホルマリン固定細胞、パラフィン包埋細胞、老化臨床サンプル等に由来する試験材料の核酸分析を最適化するように併用することができる。
【0013】
本発明の方法は核酸測定の感度と確度を増加するために本発明の技術の併用実施を含む。例えば、(例えば、試験サンプルrDNA値をrDNA対細胞数の標準関数と比較することにより)試験サンプル中の細胞数を測定し、RNAアッセイの標準関数(例えば、分解in vitro RNA標準アッセイ入力に対するアッセイ出力−例えばオフセットbDNAアッセイにより測定したサンプル又は標準の分解)を作成し、RNAアッセイ標準関数を使用して試験サンプル中の試験mRNAの量を測定し、細胞数と試験mRNAの測定値に基づいて試験細胞中のmRNAコピー数を決定することにより、mRNAコピー数を正確に推定することができる。この方法は各種細胞及び組織型(例えばヒト、植物、又は動物に由来する例えば腫瘍細胞、細胞株、顕微鏡スライドからの細胞、1年を上回る臨床サンプル、新鮮な組織、新たに固定した細胞、新たに固定したパラフィン包埋細胞、ホルマリンで固定した細胞、パラフィン包埋細胞、正常及び/又は異数性細胞等)でmRNAコピー数を有効に測定することができる。
【0014】
本発明の方法の1態様では、疎水性媒体のマトリックスに包埋したホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)臨床サンプル等のサンプルから核酸を放出させるための迅速で簡単で定量的で確実な方法が提供される。一般的な側面では、疎水性成分と会合した細胞から核酸を採取する方法は、サンプルを懸濁する段階と、サンプルをインキュベートする段階と、サンプル及び疎水性成分から核酸を分離する段階を含むことができる。融点が40℃を上回る疎水性成分と会合した細胞又は組織サンプルを水溶液に懸濁することができる。細胞の2本鎖DNAに対して実質的に非変性条件下で40℃を上回る温度で懸濁液をインキュベートし、疎水性成分を溶解させ、核酸を細胞から水溶液中に放出させる。最後に、インキュベーション後に疎水性成分から水溶液を物理的に分離し、細胞から放出された核酸を採取することができる。
【0015】
この核酸放出又は可溶化方法は多くの細胞及び/又は組織サンプルで良好に機能することができる。例えば、本方法はDNA、分解核酸、RNA等の分析で有用な水性試験材料を調製するために使用することができる。本方法はホルマリン固定パラフィン包埋組織又は細胞等のロウを含有する臨床サンプルの核酸分析用試験サンプルを提供するために特に有用である。
【0016】
細胞又は組織の水溶液懸濁は適当な方法により実施することができる。例えば、顕微鏡スライド上の組織サンプルをエッペンドルフチューブ内にこそげ落とし、ボルテックスする。厚いサンプルや頑固なサンプルは例えば粉砕、細断、加圧、ダウンス型ホモジナイザーによる処理、微粉砕等により小粒子に分解することができる。水溶液は細胞及び組織を破砕し易くし、核酸の可溶化を助長し、及び/又は所期分析のために溶液を条件付けするための成分を含有することができる。例えば、水溶液(溶質を含有する水)はPEG、SDS、SSCバッファー、NaHPO4、EDTA、変性サケ精子DNA、2価カチオン、ホルムアミド、SSPEバッファー、ブロッキングプローブ、キャプチャーエキステンダー、ラベルエキステンダー、プレ増幅剤、ラベルプローブ、増幅用プローブ、増幅用マルチマー、プロテアーゼ、リパーゼ、界面活性剤、又はヌクレアーゼインヒビター、及び/又は同等成分を含有することができる。好ましい態様では、水溶液は場合により10μl/ml、50μl/ml、100μl/ml、150μl/ml、250μl/ml、500μl/ml、1mg/ml以上のプロテアーゼ(例えばプロテイナーゼK)を含有する。
【0017】
本方法のインキュベーションは所期分析に適した量及び濃度の所望核酸をサンプルから放出させるのに適した時間と温度で実施する。本発明の関連方法を使用すると、有意義な結果が得られるように分析を標準化及び正規化することができるので、多くの場合にはサンプルから全核酸を完全に放出させる必要がない。典型的な態様では、インキュベーションは約35℃〜約90℃、約45℃〜約95℃、約52℃〜約90℃、約60℃〜80℃未満、又は約65℃の温度で実施される。インキュベーション温度は主要サンプル疎水性成分の融点よりも少なくとも2〜3度高く、且つ懸濁液の条件下でサンプルDNAのTmよりも低いことが好ましい。インキュベーションは特に高温又はデリケートもしくは繊細なサンプルでは迅速にすることができる。インキュベーション時間は>20分間、又は約30分間〜約3日間以上、約1時間〜1日間、約3時間〜約18時間、又は12時間とすることができる。好ましい態様では、インキュベーションは午後に開始し、一晩続け、午前に分析することができる。本発明の方法は処理変数を補正できるため、多数のサンプル処理段階で多少の精度低下を許容できる。
【0018】
多くの態様では、水溶液及びインキュベーション条件は核酸変性条件(例えば、サンプルDNAの大部分を2本鎖形態から1本鎖形態に溶解させる条件)を含まない。変性条件としては当分野で周知の通り、溶液温度増加、高pH、及び高イオン強度が挙げられる。
【0019】
疎水性成分を水溶液又は懸濁液から分離するには、例えば単純な機械的(例えば単なる物理的)手段により実施することができる。化学的抽出(例えば有機相抽出)を使用してパラフィンをFFPEサンプルから分離するのが常法であったが、本発明者らは水溶液中の核酸回収が少なくとも同等でありながら、労力と危険を減らして試験サンプルを調製する疎水性成分の物理的分離(例えば、有機溶媒を使用しない機械的操作)を見いだした。疎水性成分は本発明の水溶液及びインキュベーション条件に暴露すると、(例えば疎水性相互作用により)自然分離する傾向がある。一般に、疎水性成分は水溶液と同一密度ではないので、例えば懸濁液の上又は下に疎水性層を形成することができる。これは遠心により加速又は低下させることができる。このような層は(例えば疎水性層を頂部から物理的にデカントするか、水層又は疎水性層を他方から吸引するか、層を相互にピペットで分離するか、固体又は半固体として水層から物理的に除去できるように疎水性成分を融点よりも低い温度で固化させることにより)各種物理的手段により水層から分離することができる。好ましい態様では、サンプルから疎水性成分バルクを分離するのに、インキュベーション段階前及び/又はインキュベーション段階後に有機抽出段階を使用しない。
【0020】
本方法により細胞又は組織から放出された核酸は任意数の核酸分析法の入力用として優れた試験サンプル材料となり得る。多くの場合には、水溶液中に放出された核酸は当分野で公知の各種アッセイにより検出するために固体支持体上に捕獲することができる。可溶化方法は一般に本明細書に記載する相補的方法と併用し、正確な定量を行うために有用であり得る。本方法で可溶化した核酸を更に精製するために、細胞溶解液成分による破砕に感受性のアッセイでは、当分野で公知の通り、分離した溶液をフェール抽出し、エタノール沈殿させることができる。好ましい態様では、有機抽出及び/又は変性段階を使用せずに(物理的疎水性成分分離により)分離した溶液を例えばbDNAアッセイにより分析する。放出された核酸溶液(一般に溶解液)は例えばbDNA分析、ノーザンブロット分析、サザンブロット分析、ポリメラーゼ連鎖反応、核酸シーケンシング、アガロースゲル電気泳動、ディファレンシャルディスプレイ法等の各種アッセイに良好なアッセイ入力材料を提供することができる。
【0021】
本発明の別の側面では、細胞又は組織のゲノム中で殆ど欠失又は複製されない反復DNAの量に基づいて溶解液中の相当試験細胞数を推定することができる。試験細胞数の測定方法は例えば、既知数の参照細胞から参照核酸サンプルを取得する段階と、参照サンプル中のリボソームDNAの量を定量する段階と、参照リボソームDNA量に対する参照細胞数の標準関数(例えば回帰分析により得られる標準曲線又は標準式)を提供する段階と、試験細胞から試験核酸サンプルを取得する段階と、試験サンプル中のリボソームDNAの量を定量する段階と、標準関数と試験リボソームDNA量に基づいて試験細胞数を測定する段階を含むことができる。
【0022】
本発明の方法により細胞数を測定するための試験細胞及び標準細胞は1種以上の任意型とすることができる。数測定を必要とする参照細胞又は試験細胞は例えば腫瘍細胞、細胞株からの細胞、顕微鏡スライドからの細胞、FFPE細胞、正常細胞、ポリプロイド細胞等とすることができる。所定態様では、試験細胞は肺腫瘍細胞又は結腸腫瘍細胞であった。他の態様では、参照核酸サンプルを提供する試験細胞は実質的に正常な核型をもつ。
【0023】
試験細胞数測定方法で正規化に好ましい反復DNAはリボソームDNAである。これらのDNAは高度に反復しており、転位、欠失又は挿入を生じにくい位置で複数の染色体に配置されている。従って、高度異数性細胞株でも一貫して正常数であることが判明した。より好ましい態様では、リボソームDNAは18S rDNA、5.8S rDNA及び/又は28S rDNAである。
【0024】
反復DNAは標準関数の決定のために例えば適切な任意技術(例えばbDNA分析、サザンブロット分析、ポリメラーゼ連鎖反応、アガロースゲル電気泳動等)により(例えば希釈系列で)定量することができる。結果を使用して試験サンプル結果と比較し、試験サンプル中の相当細胞数を決定する。例えば、試験細胞数の測定は試験細胞サンプルのリボソームDNA量を標準関数に入力することにより実施することができ、例えば細胞対rDNA比を含む式、分析ソフトウェアを搭載したコンピューター、又は標準曲線上の標準値との比較に試験リボソームDNA量を入力することができる。測定試験細胞数を使用し、他の分析の結果を細胞数に正規化することができ、例えばmRNAアッセイ結果を細胞当たりのコピーに正規化することができる。
【0025】
試験サンプル中の細胞数が分かっている場合には、既知細胞数と反復DNAに基づいて決定した標準関数を使用して可溶化効率を測定することもできる。例えば、可溶化溶解液中の既知試験細胞数を標準曲線から計算した試験細胞溶解液中の相当試験細胞数と比較することにより試験核酸抽出効率を測定することができる。
【0026】
本発明の別の側面では、分解in vitro転写(IVT)RNA標準曲線を使用して分解したRNAをより正確に定量することができる。例えば、試験サンプル中の細胞数を測定し、分解in vitro RNA標準アッセイ入力に対するRNAアッセイ出力の標準関数を作成し、標準関数を使用してRNAアッセイにより試験サンプル中の試験RNAの量を測定し、細胞数と試験RNAの測定量に基づいて細胞中のRNAのコピー数を決定することにより、mRNAコピー数を測定することができる。好ましい態様では、オフセットbDNAアッセイ(以下に記載)の結果に従って適当な分解IVT RNA標準を選択するか又は標準曲線の傾きを補正することができる。
【0027】
本発明の別の側面では、キャプチャーエキステンダーとラベルエキステンダーがターゲット核酸で相互にオフセットしているアッセイによりbDNAターゲット核酸の断片化レベルを測定することができる。例えば、(全長であるか又はある程度まで断片化しているかが分かっていないターゲット配列をもつ)ターゲット核酸の断片化は、1個以上のオフセットキャプチャーエキステンダープローブC3配列が各々核酸の配列に相補的であり、1個以上のオフセットラベルエキステンダーL1配列が全C3相補配列から5’又は3’側に少なくとも1ヌクレオチド塩基の間隔をあけて配置された位置の核酸の配列に相補的であるオフセットbDNAアッセイで核酸のサンプルを分析することにより検出することができる。このようなbDNAアッセイ構成では、核酸がC3及びL1相補配列間で断片化していない場合よりも核酸がC3及びL1相補配列間で断片化している場合のほうが発生可能なシグナルは弱くなる。例えば、核酸の有意部分が断片化形態である場合には発生可能なシグナルは弱くなる。
【0028】
多くの場合には、オフセットアッセイはキャプチャーエキステンダーとラベルエキステンダーを散在させた標準bDNAアッセイを使用してサンプルで適当なコントロールアッセイを実施することにより確度と信頼性を増すことができる。例えば、2個以上のコントロールキャプチャーエキステンダープローブC3配列が核酸の異なる位置の配列と相補的であり、1個以上のコントロールラベルエキステンダーL1配列が核酸配列の異なる位置の配列と相補的であり、コントロールL1配列の1個以上がコントロールC3配列の2個以上に相補的な位置間の位置の核酸と相補的である第2のbDNAアッセイで核酸のサンプルを分析することができる。オフセットアッセイ結果に対するコントロールアッセイ結果の比は核酸が断片化していない場合よりも核酸が断片化している場合のほうが大きくなる。
【0029】
オフセットアッセイはラベルエキステンダーがターゲット核酸のキャプチャーエキステンダーからオフセットされている度合が大きいほど感度を高くすることができる。好ましい態様では、オフセットC3配列に相補的な核酸配列は核酸ヌクレオチドの75%以上の間隔をあけてオフセットL1配列に相補的な核酸配列から分離されている(即ち、全長ターゲット核酸に対して最近接LE及びCE部位間の間隔はターゲット核酸長の少なくとも75%となる)。CE/LEスペーシングを言い換えると、オフセットラベルエキステンダーL1配列は全C3相補配列から5’及び/又は3’側に少なくとも25ヌクレオチド塩基の間隔をあけて配置された核酸の配列に相補的であることが好ましい。好ましい態様では、2個のC3相補配列間にL1相補配列は存在しない。
【0030】
オフセットbDNAアッセイ法の別の側面では、例えば、アッセイバックグラウンドシグナルを低減するために、LE及びCE相補配列間のスペースでターゲットの配列に相補的な配列をもつブロッキングプローブがハイブリダイゼーション中に加えられる。
【0031】
オフセットbDNAアッセイの出力とコントロールに対する比はサンプルの状態を特徴付けることができる。例えば、オフセットアッセイシグナル、又はコントロールに対する比をターゲット核酸配列の平均長と相関させることができる。こうして得られた断片化レベルは例えばアッセイ標準を選択するため又は分解IVT RNA標準に対するRNA定量用標準関数を選択するために使用することができる。
定義
【0032】
本欄及び以下に特に定義しない限り、本明細書で使用する全科学技術用語は本発明が属する分野の当業者に通常理解されている通りの意味をもつ。
【0033】
本発明を詳細に記載する前に、本発明は特定方法又は分析法に限定されず、当然のことながら種々のものに適用できると理解すべきである。同様に、本明細書で使用する用語は特定態様のみの記載を目的とし、限定的でないことも理解すべきである。本明細書と特許請求の範囲で使用する単数形はそうでないことが内容から明白である場合を除き、複数形も含む。従って、例えば「成分」と言う場合には2個以上の成分の組合せを含むことができ、「核酸」と言う場合には核酸混合物を含むことができ、他の用語についても同様である。
【0034】
本明細書に記載する方法及び材料の多数の類似、改変又は等価方法及び材料を使用し、過度の実験を要することなしに本明細書に基づいて本発明を実施できるが、本明細書には多数の好ましい材料と方法を記載する。本発明の記載及び特許請求の範囲において、以下の用語は以下の定義に従って使用する。
【0035】
本明細書で使用する「約」なる用語は所与量の値が記載値の±10%、又は場合により記載値の±5%、又は所定態様では記載値の±1%の範囲内であることを意味する。
【0036】
「ポリヌクレオチド」なる用語(及び「核酸」なる同義語)はヌクレオチド鎖に対応させることができるモノマー単位の任意物理的連鎖を意味し、例えばヌクレオチドポリマー(例えば典型的DNA又はRNAポリマー)、ペプチド核酸(PNA)、修飾オリゴヌクレオチド(例えば生物RNA又はDNAには一般的でないヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド、例えば2’−O−メチル化オリゴヌクレオチド)等が挙げられる。ポリヌクレオチドのヌクレオチドはデオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド又はヌクレオチド類似体のポリマーとすることができ、天然でも非天然でもよく、置換されていなくても、修飾されていなくても、置換されていても、修飾されていてもよい。ヌクレオチドはホスホジエステル結合、又はホスホロチオエート結合、メチルホスホネート結合、ボラノホスフェート結合等により結合することができる。ポリヌクレオチドは更にラベル、クエンチャー、ブロッキング基等の非ヌクレオチドエレメントを含むことができる。ポリヌクレオチドは例えば1本鎖でも2本鎖でもよい。
【0037】
「ポリヌクレオチド配列」又は「ヌクレオチド配列」とは状況に応じてヌクレオチドポリマー(オリゴヌクレオチド、DNA、RNA、核酸等)又はヌクレオチドポリマーを表す文字列である。任意特定ポリヌクレオチド配列から所与核酸又は相補的ポリヌクレオチド配列(例えば相補的核酸)を決定することができる。
【0038】
2個のポリヌクレオチドは例えば該当アッセイ条件下で会合して安定な2本鎖を形成するときに「ハイブリダイズ」する。核酸は水素結合、溶媒排除、塩基スタッキング等の種々の十分に特性決定された物理化学的力によりハイブリダイズする。核酸ハイブリダイゼーションの詳しい手引きはTijssen(1993)Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology−Hybridization with Nucleic Acid Probes part I chapter 2,“Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid probe assays,”(Elsevier,New York)に記載されている。
【0039】
「相補的」なる用語は例えば該当アッセイ条件下でその「相補体」と安定な2本鎖を形成するポリヌクレオチドを意味する。一般に、相互に相補的な2個のポリヌクレオチド配列はミスマッチ(ミスマッチ塩基対)が塩基の約20%未満、塩基の約10%未満、好ましくは塩基の約5%未満、1カ所であり、より好ましくはミスマッチがない。
【0040】
「キャプチャーエキステンダー」ないし「CE」とは該当核酸及びキャプチャープローブとハイブリダイズすることが可能なポリヌクレオチドである(又はこのようなヌクレオチドを含む)。キャプチャーエキステンダーは一般にキャプチャープローブに相補的な第1のポリヌクレオチド配列C−1と、該当核酸のポリヌクレオチド(ターゲット)配列に相補的な第2のポリヌクレオチド配列C−3をもつ。配列C−1及びC−3は一般に相互に非相補的である。キャプチャーエキステンダーは1本鎖であることが好ましい。
【0041】
「キャプチャープローブ」ないし「CP」とは少なくとも1個のキャプチャーエキステンダーとハイブリダイズすることが可能であり、固体支持体、空間的に指定可能な固体支持体、スライド、粒子、マイクロスフェア、ビーズ等と(例えば共有又は非共有的、直接又はリンカー(例えばストレプトアビジン等)を介して)緊密に結合されるポリヌクレオチドである。キャプチャープローブは一般に少なくとも1個のキャプチャーエキステンダーのポリヌクレオチド配列C−1に相補的な少なくとも1個のポリヌクレオチド配列C−2を含む。キャプチャープローブは1本鎖であることが好ましい。
【0042】
「ラベルエキステンダー」ないし「LE」とは該当核酸及びラベルプローブシステムとハイブリダイズすることが可能なポリヌクレオチドである。ラベルエキステンダーは一般に該当核酸のポリヌクレオチド配列に相補的な第1のポリヌクレオチド配列L−1と、ラベルプローブシステムのポリヌクレオチド配列に相補的な第2のポリヌクレオチド配列L−2をもつ(例えば、L−2は増幅用マルチマー、プレ増幅剤、ラベルプローブ等のポリヌクレオチド配列に相補的であり得る)。ラベルエキステンダーは1本鎖であることが好ましい。
【0043】
「ラベル」は(例えば、検出可能なシグナルを提供することにより)分子の検出を助長する部分である。本発明で一般的なラベルとしては蛍光、発光、光散乱、及び/又は比色ラベルが挙げられる。適切なラベルとしては酵素及び蛍光部分に加え、放射性核種、基質、補因子、阻害剤、化学発光部分、磁性部分等が挙げられる。このようなラベルの使用を教示している特許としては米国特許第3,817,837号;3,850,752号;3,939,350号;3,996,345号;4,277,437号;4,275,149号;及び4,366,241号が挙げられる。多数のラベルが市販されており、本発明で使用することができる。
【0044】
「ラベルプローブ」ないし「LP」とは検出可能なシグナルを直接又は間接的に提供するラベルを含む(か又は、場合によりこのようなラベルと結合するように構成された)1本鎖ポリヌクレオチドである。ラベルプローブは一般に増幅用マルチマーの反復ポリヌクレオチド配列M−2に相補的なポリヌクレオチド配列を含むが、bDNAアッセイで増幅用マルチマーを使用しない場合には、ラベルプローブは例えばラベルエキステンダーと直接ハイブリダイズすることができる。
【0045】
「ラベルプローブシステム」は1個以上のラベルを含む1個以上のポリヌクレオチドと、各々ラベルエキステンダーとハイブリダイズすることが可能な1個以上のポリヌクレオチド配列M−1を含む。ラベルは直接又は間接的にシグナルを提供する。ポリヌクレオチド配列M−1は一般にラベルエキステンダーの配列L−2に相補的である。1個以上のポリヌクレオチド配列M−1は場合により同一配列又は異なる配列である。ラベルプローブシステムは複数のラベルプローブ(例えば複数の同一ラベルプローブ)と増幅用マルチマーを含むことができ、場合により更にプレ増幅剤等を含むか、又は場合により例えばラベルプローブのみを含む。
【0046】
本明細書で使用する「水溶液」とは該当核酸を溶液に保持するのに適した水溶液(1種以上の溶質を含有する水)を意味する。例えば、水溶液は核酸を溶液に溶解及び保持するのに適したpHとイオン強度をもつことができる。本発明の水溶液は場合により細胞及び組織から核酸を放出するのに有用な成分(例えば、pH緩衝剤、塩類、界面活性剤及び/又はプロテアーゼ)を含有することができる。水溶液は場合により核酸アッセイ又はハイブリダイゼーションの成分として有用な成分(例えば、ホルムアミド、塩化ナトリウム−クエン酸ナトリウム(SSC)バッファー、核酸プローブ等)を含有する。
【0047】
細胞又は組織サンプルと会合した「疎水性成分」とは実質的に非水溶性(例えば純水溶解度1%未満)の化合物である。サンプルと会合した典型的な疎水性成分は脂質、脂肪、油類、炭化水素、ロウ、疎水性膜成分等である。本発明の所定態様では、疎水性成分はパラフィン、例えば臨床サンプル包埋用ロウである。
【0048】
本明細書で使用する「物理的に分離する」とは疎水性成分層を物理的手段により水溶液層から分離することを意味する。サンプルの水性懸濁液からの疎水性成分の有機抽出は例えばFFPEサンプルからの疎水性成分の化学的分離とみなし、有機抽出相が残りの水相から除去される時点でも物理的分離とはみなさない。物理的分離は一般に例えば捕捉、圧出、吸込み、吸引、注出、吐出、濾過、吸着、吸収、吸出、及び/又は同等手段により(固体、半固体又は液体状態の)疎水性成分を水溶液から除去するための機械的方法である。分離は疎水性成分を水溶液から除去すること又は水溶液を疎水性成分から除去することを含むことができる。
【0049】
本明細書で使用する「標準関数」とは例えば既知アッセイ入力と得られる出力等の2個のアッセイパラメーター間の関係を表す関数又は関数の表現法である。出力は未加工データ出力又は出力から誘導される値(例えば分析物の分子数又は濃度)とすることができる。標準関数とその表現法(例えば標準曲線)は当分野で周知である。標準関数は代数関数(例えば直線式)の形態でもよいし、X−Y図表上の(例えば回帰分析により得られる)標準曲線の形態で提供することもできる。標準関数は比、定数、又は(例えばコンピューターソフトウェア形態の)アルゴリズムとして表すこともできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
本発明は細胞及び組織から核酸を採取及び定量する方法に関する。例えばホルマリン固定とパラフィン包埋により予め処理した細胞を非変性条件下で高温の均質化用水溶液に懸濁し、パラフィン材料から分離した溶解液中に細胞から核酸を放出させる。リボソームDNA参照に基づく正規化により、元の細胞数と核酸抽出効率を正確に測定することができる。適当に分解したin vitro転写(IVT)RNA標準材料で正規化した分析を使用して細胞当たりのmRNAコピー数をより正確に測定することができる。例えば、以下に記載するように、キャプチャー部位とラベル部位をRNAターゲットに沿って分散させたコントロールアッセイからのbDNAシグナルを、ターゲットRNAの他端のラベル部位から分離したターゲットRNAの一端にキャプチャー部位を配置する試験アッセイのシグナルと比較することにより、サンプルRNA分解を推定することができる。
【0051】
包埋臨床サンプルにおける従来技術の核酸測定方法はサンプルから核酸を可溶化する前に有機化学抽出(脱ロウ)を繰返すことが必要であった。本発明はこのような抽出段階を全く不要にする。例えば、ブロックからの60〜100ミクロン(25〜250mm2)プール組織切片又は未切断組織10mg当たりプロテイナーゼK(0.3mg/ml)補充Homogenizing Solution(Panomics Fremont CA)300μLを加えることにより、パラフィンブロック中のこそげ落とした組織切片又は塊を直接可溶化し、65℃で一晩消化させればよい。その後、65℃で一晩プロテイナーゼK消化中にパラフィンが組織ホモジネートから分離し、多量の場合には、水性ホモジネートの上に明白な層を形成する。液体パラフィンをピペッターで物理的に除去するか、又は遠心中に室温で固化させて穴を開け、可溶化材料(溶解液)を例えば吸引により疎水性成分の下から除去すればよい。水性溶解液を新しいマイクロ遠心管に移し、すぐに使用するか又は後期使用に備えて−80℃で保存する。本発明はホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)サンプルからのRNA又はDNAの定量の確度を有意に改善し、定量を簡単にする。
【0052】
FFPEサンプルの細胞等の細胞による示差的遺伝子発現試験における主要な問題は遺伝子不均一性を如何に正規化するかという点である。遺伝子転写産物数(mRNAコピー)は一般に細胞当たりのコピー数として表される。残念ながら、細胞カウントは多くのFFPE組織又は細胞スライドには実際的ではない。多くの場合、コピー数計算はサンプルから回収された全DNA又は全RNAに基づいて正規化されている。しかし、全細胞DNA及びRNA含量は例えば腫瘍異数性と共に増減し得る(Jacques B de Kok,Rian W Roelofs,Belinda A Giesendorf,Jeroen L Pennings,Erwin T Waas,Ton Feuth,Dorine W Swinkles and Paul N Span,Laboratory Investigation(2005)85,154−159)。従って、FFPEサンプル中の相当細胞数を正確に定量する方法は不明であった。本発明者らは腫瘍異数性に左右されないことが確認された1又は複数の遺伝子に基づいて正規化する方法が有望であることを見いだした。検出感度を増すためにゲノム内の複数コピーとして遺伝子を表すことが好ましい。更に、任意1個の染色体上の遺伝子の一部の増減が総細胞数測定にあまり影響を与えないように、遺伝子は安定しており、複数の染色体に分布していることが好ましい。
【0053】
ヒトゲノムの約30%は反復配列から構成され(Britten,R.J.& Kohne,D.E.(1968)Science 161,529−540)、その半数以上がゲノム当たり105回以上反復している。これらの反復配列には長いタンデムアレー状のものと、構造遺伝子を含む低頻度配列間に散在しているものがある。多数のヒト散在性反復DNA配列ファミリーが同定されている。最大のファミリーは各々約300ヌクレオチド長の関連配列3×105コピーから構成され、殆どのメンバーは制限エンドヌクレアーゼAluIにより開裂可能な部位をもつ(Rubin,C.M.,Houck,C.M.,Deininger,P.L.,Friedmann,T.& Schmid,C.W.1980 Nature 284,372−374)。他の短い低頻度散在性反復配列(SINES)もDeiningerら(Deininger,P.L.,Jolly,D.J.,Rubin,C.M.,Friedmann,T.& Schmid,C.W.(1981)J.Mol.Biol.151,17−33)及びMiesfeldら(Miesfeld,R.,Krystal,M.& Arnheim,N.(1981)Nucleic Acids Res.9,5931−5947)により報告されている。Adamsら(Adams,J.W.,Kaufmann,R.E.,Kretschmer,P.J.,Harrison,M.& Nienhuis,A.W.(1980)Nucleic Acids Res.8,6113−6127)はゲノム当たり4×103回程度の頻度の平均6,400ヌクレオチド長の長い散在性反復DNA配列(LINES)ファミリーを報告している。これらの反復DNA配列は多数の生物のゲノムで組換え率を変化又は増加させることが知られており(Jelinek and Schmid 1982;Hardman 1986;Vogt 1990)、従って、散在性反復DNAはゲノム中に分散した反復単位から構成される。このような反復単位間の誤対合は欠失や重複の多くの原因となることが示されている(Smita M.Purandare,and Pragna I.Patel,1997 7:773−786 Genome Res.)ため、FFPE組織サンプル中の細胞数を測定するために使用するのは実際的でないことが多い。
【0054】
5.8S、18S及び28SリボソームRNA(rRNA)遺伝子(rDNA)はヒト二倍体ゲノム当たり〜800コピー存在しており、5本の末端動原体型染色体13、14、15、21、22のP12ショートアームにクラスター形成しており、46染色体の二倍体ゲノム当たり10クラスターとなり、合計6.4×109bpであるが、これらの遺伝子を使用するほうが実際的である(Worton,R.G.,Sutherland,J.,Sylvester,J.E.,Willard,F.H.,Bodrug,S.,Dube,I.,Duff,C.,Kean,V.,Ray,N.P.and Schmickel,R.D.(1988),Science,239,64−68)。各リボソーム遺伝子は、リボソームの18S、5.8S及び28S rDNAサブユニットに高度に保存された遺伝子を含む13.3kb転写領域と、30kb非転写スペーサー(NTS)の2つの領域に分けることができる43kb反復単位の一部である(Gonzelez,L.I.,Wu,S.,Li,W.,Kuo,A.B.and Svlvester,E.J.(1992)Nucleic Acids Res.,20,5846−5847)。反復単位クラスターは〜80個の反復単位の頭−尾アレーから構成される(Sakai,K.,Ohta,T.,Minoshima,S.,Kudoh,J.,Wang,Y.,De Jong,J.P.and Shimizu,N.(1995))。
【0055】
NCBIは調査者らがその分子細胞遺伝学的データを共有及び比較できるような公共プラットフォームを提供するためにSKY/M−FISH及びCGHデータベースを開設した。SKY/比較ゲノムハイブリダイゼーションデータベースウェブサイトでは数百種の腫瘍の核型を確認することができる。このデータベースはNational Cancer InstituteによるCancer Chromosome Aberration Projectの一環である(Kirsch,I.R.,Green,E.D.,Yonescu,R.,Strausberg,R.,Carter,N.,Bentley,D.,Leversha,M.A.,Dunham,I.,Braden,V.V.,Hilgenfeld,E.,Schuler,G.,Lash,A.E.,Shen,G.L.,Martelli,M.,Kuehl,W.M.,Klausner,R.D.,and Ried,T.Nat.Genet.,24:339−340,2000)。更に、細胞株核型の代表的な画像を含む59種の細胞株の全核型をインターネットで確認することができる(Anna V.Roschke,Giovanni Tonon,Kristen S.Gehlhaus,Nicolas McTyre,Kimberly J.Bussey,Samir Lababidi,Dominic A.Scudiero,John N.Weinstein,2 and Ilan R.Kirsh CANCER RESEARCH 63,8634−8647,2003)。
【0056】
個々の腫瘍核型(肺癌、結腸癌、乳癌等)と59種の細胞株核型をそのリボソームDNA含量について検討した後、本発明者らはリボソームDNA遺伝子含量が一次腫瘍ではほんの僅かしか変動しないが、その一因はリボソーム遺伝子が5本の末端動原体型染色体のP12ショートアームでクラスター形成しており、従って、1本のショートアームの増減は正常組織リボソーム遺伝子含量と10%しか相違しないためであると判断した。各細胞株及び腫瘍の倍数性及び全DNAは変動するが、リボソームDNA数は変動が少ないので、リボソームDNAによる正規化を使用すると、より正確な細胞数予想値が得られることに気付いた。
【0057】
本発明の別の側面では、同様に分解したRNA標準に従う正規化により、例えば予め顕微鏡スライドに包埋した細胞のmRNAコピー数を高確度で測定することができる。包埋細胞に由来する核酸の均質化後に分離した溶液中の相当細胞数は反復DNA(例えばリボソームDNA)の量に対する細胞数の標準関数(例えば標準曲線)に基づいて決定することができる。mRNAの量は例えばRNAアッセイ(例えばbDNA)出力に対する分解IVT RNAの標準曲線に基づいて核酸溶液で測定することができる。このようなコピー数測定の確度は、本明細書に記載するように、反復DNAデータからの抽出効率と分解RNA曲線によるmRNA正規化を考慮することにより改善することができる。
【0058】
本発明の多くの方法では、bDNA法が好ましい核酸定量法である。bDNA法はRNAの定量におけるQPCRの問題の多くを回避するという利点がある。実際に、bDNAアッセイのハイブリダイゼーション段階はRNAのホルマリン修飾により助長することができる。更に、このアッセイは酵素活性を必要とせず、ハイブリダイゼーションに依存するので、QPCRで逆転写酵素とDNAポリメラーゼの活性を低下させる不純物がこの分岐連鎖アッセイでは問題とならない。RNA分解及び断片化の問題を解決するために、ユニークなプローブデザインアプローチがbDNAアッセイ用に開発されている(Wen Yang,Botoul Maqsodi,Yunqing Ma,Son Bui,Kimberly L.Crawford,Gary K.McMaster,Frank Witney,and Yuling Luo,Direct quantification of gene expression in homogenates of formalin−fixed,paraffin−embedded tissues Biotechniques,Vol.40,No.4(2006),pp481−486;Warrior U,Fan Y,David CA,Wilkins JA,McKeegan EM,Kofron JL,Burns DJ:Application of QuantiGene nucleic acid quantification technology for high throughput screening,J Biomol Screen 2000,5:343−352;Bushnell S,Budde J,Catino T,Cole J,Derti A,Kelso R,Collins ML,Molino G,Sheridan P,Monahan J,Urdea M:ProbeDesigner:for the design of probesets for branched DNA(bDNA)signal amplification assays,Bioinformatics 1999,15:348−355)。本発明の多くの方法は問題のあるサンプルに関するbDNA分析、及び他の定量的核酸アッセイを改善する手段を提供する。
FFPE組織サンプルからの核酸採取
【0059】
細胞及び組織に由来する核酸について高感度の定量的で確実なアッセイ結果を得るためには、物理化学的干渉物質を実質的に含まない有用な量の核酸を回収することが重要である。この問題は疎水性防腐剤やロウ状支持マトリックスと会合したパラフィン包埋臨床サンプル等のサンプルで特に難題となり得る。本発明では、例えばサンプルを小寸法の粒子に分解し、プロテアーゼを含有する適当な溶解用溶液に粒子を懸濁し、疎水性成分の融点よりも高い温度で懸濁液をインキュベートして核酸を水相中に放出させると共に別個の疎水性成分相を生成し、水相を疎水性相から分離することにより、疎水性サンプル成分から細胞及び組織内容物を確実に定量的に分離できることが判明した。
細胞又は組織サンプルの小粒子の獲得
【0060】
細胞又は組織サンプルが小粒子又は表面積対体積比の大きいシート状でない場合には、核酸を比較的定量的で適時に水溶液中に抽出できるようにサンプルを小片に分解することが一般に有益である。サンプルからの核酸回収量を増加するために当分野で公知の適当な任意方法を使用して、乾燥細胞バルク、包埋組織、ホルマリン固定パラフィン包埋細胞又は組織、顕微鏡スライドに保存された臨床サンプル等のサンプルを微粉末又はペーストに分解することができる。
【0061】
例えば、本発明の方法により細胞及び組織から核酸を放出するのに十分に適した粒度までサンプルを細断、粉砕、微粉砕、スクラッピング、ダウンス型ホモジナイザーによる処理、均質化、剪断、及び/又は同等方法で処理することができる。例えば、平均粒径1mm未満、0.1mm未満、10μm未満、1μm未満、又はそれ以下の粒子にサンプルを分解することができる。好ましい態様では、細胞の体積の約100倍、細胞の体積の10倍、又はほぼ細胞の寸法の粒子までサンプルを分解する。
【0062】
サンプルは液体マトリックスの存在下又は不在下で適当な寸法まで物理的及び/又は化学的に分解することができる。液体マトリックスは後期操作及び/又は分析段階に導入するのに適した成分を含有する水溶液とすることができる。例えば、液体マトリックスは酵素反応又はストリンジェント核酸ハイブリダイゼーションに適した環境を提供することができる。
粒子の水溶液懸濁
【0063】
溶解液を形成する溶液にサンプル細胞から核酸を放出する処理のためにサンプル粒子を水溶液に加える。水溶液は核酸を溶解するための水程度の単純なものとすることができる。一般に、水溶液は核酸の溶解度を増し、核酸の放出を妨げる細胞/組織構造を崩壊させ、及び/又は核酸の分析に適した環境を提供する成分を含有する。
【0064】
水溶液は後期分析操作及び/又は保存条件に有用な成分を含有することができる。例えば、水溶液は核酸ハイブリダイゼーションバッファーの成分(例えばPEG、SDS、SSCバッファー、NaHPO4、EDTA、変性サケ精子DNA、ホルムアミド、及びSSPE等)を含有することができる。水溶液は例えばブロッキングプローブ、キャプチャーエキステンダー、ラベルエキステンダー、プレ増幅剤、ラベルプローブ、増幅用プローブ、増幅用マルチマー等のbDNA成分を含有することができる。多数のホルマリン処理又はパラフィン包埋サンプルから核酸を放出するための好ましい態様では、水溶液はプロテアーゼ、リパーゼ、界面活性剤、又はヌクレアーゼインヒビターの1種以上を含有することができる。
【0065】
サンプルを小粒子に分解しながらサンプル粒子を均質化用水溶液に懸濁することができる。例えば、サンプルを所望水溶液の存在下で粉砕、微粉砕又はダウンス型ホモジナイザーで処理することができる。あるいは、サンプルを例えば乾燥粉砕し、粒子サイジング後に水溶液に移してもよい。あるいは、粒子を例えば遠心するか又は粒子サイジングに使用した液体マトリックスから濾過し、(例えば遠心又は濾過後に透析、透析濾過、再懸濁等により)核酸を懸濁及び放出するための所望水溶液に交換してもよい。
【0066】
サンプル粒子を水溶液に懸濁し、核酸を放出する条件に粒子を暴露することができる。懸濁は例えば撹拌、ダウンス型ホモジナイザーによる処理、ボルテックス、転倒、混合、振盪、又は単に粒子を溶液に導入することにより実施することができる。混合物は粒子懸濁液として出発することが多いが、サンプル材料の大半又は全部が一般に懸濁及びインキュベーション処理の終了までに溶液又は疎水性相となる。
【0067】
好ましい態様では、水溶液は核酸の溶媒であり、所期核酸アッセイに適したアッセイ溶液である。例えば、水溶液は核酸と固体支持体(例えばブロッティング膜)の結合又は核酸と1個以上の核酸ターゲットもしくはプローブのストリンジェントハイブリダイゼーションに適したpH、イオン強度、粘度、界面活性剤、ブロッキング剤等の条件を提供することができる。
【0068】
多くの場合には、1種以上のプロテアーゼを均質化用水溶液に加えることが望ましい。多くの場合に有意量の所望核酸が細胞及び組織の蛋白質及び蛋白質マトリックスに取り込まれる。プロテアーゼはこれらの蛋白質を破砕するのに役立ち、核酸を放出するのに役立つ。好ましい態様では、プロテアーゼは例えば>50μg/ml、100μg/ml、150μg/ml、200μg/ml、300μg/ml、500μg/ml、又はそれ以上の濃度のプロテイナーゼKである。
懸濁液のインキュベーション
【0069】
サンプルの水溶液懸濁液は1種以上のサンプル疎水性成分の融点以上でインキュベートすることができる。インキュベーションにより疎水性成分が溶解してサンプル材料から放出され、細胞及び/又は組織構造を崩壊し、該当核酸を含有する水性溶解液を形成することができる。
【0070】
サンプルの疎水性成分としては細胞又は組織サンプルに天然に存在するか又は存在しない脂質、脂肪及び/又は油類が上げられる。臨床サンプルに由来する核酸の分析で一般に最大の問題となる疎水性成分はサンプルの防腐、操作、及び/又は保存を助長するためにサンプルに添加された防腐剤と包埋用組成物である。本発明の方法で使用されるサンプルに関して一般に問題となる疎水性成分はパラフィン包埋用ロウ等の細胞及び組織包埋用媒体である。
【0071】
懸濁液のインキュベーションはサンプルのゲノムDNAに対して非変性条件下で実施することが好ましい。温度、イオン強度、pH、2価カチオン濃度、ホルムアミド濃度等の当分野で周知の条件はサンプル中の主要DNAを変性(溶解)させる条件よりも有意に低い条件とすることができる(Rapley,R.and Walker,J.M.編,Molecular Biomethods Handbook(Humana Press,Inc.1998)参照)。例えば、DNA−DNA2本鎖のTmは下式:
Tm(℃)=81.5℃+16.6(log10M)+0.41(%G+C)−0.72(%f)−500/n
[式中、Mは1価カチオン(通常はNa+)のモル濃度であり、(%G+C)はグアノシン(G)及びシトシン(C)ヌクレオチドの百分率であり、(%f)はホルムアミドの百分率であり、nはハイブリッドのヌクレオチド塩基数(即ち長さ)である]を使用して推定することができる。TmはカチオンがDNA2本鎖形成に及ぼす安定化作用により溶媒のイオン濃度が増加すると共に上昇する。成分1本鎖よりも2本鎖DNAに多くのカチオンが結合する。カチオンによりTmに種々の作用がある。最も一般的な1価カチオンはNa+であるが、Tmの観点から、ナトリウムとカリウムは機能的に等価である。2価カチオン(例えばMg++)もDNAハイブリッドを安定化する(Tmを上昇させる)が、その作用は1価カチオンと定量的に著しく相違する。pHが上昇すると、DNA鎖間の電荷反発力も増すので、Tmは低下する。好ましい態様では、可溶化中のインキュベーション温度は懸濁液中のサンプルのDNAのTmよりも少なくとも2℃、5℃、又は10℃低い。
【0072】
懸濁液はサンプル中に存在する1種以上の疎水性成分の融点よりも高い温度でインキュベートすることができる。例えば、懸濁液は約40℃〜約100℃、約41℃〜約95℃、約45℃〜約90℃、約50℃〜約80℃、約60℃〜約70℃、又は約65℃の温度でインキュベートすることができる。好ましいインキュベーション温度はサンプル中の最高融点の疎水性成分又は最も多量に存在する疎水性成分の融点よりも少なくとも高い。好ましいインキュベーション温度は更に溶液中のプロテアーゼ等の酵素の所望活性を補助する温度である。パラフィン包埋臨床サンプルでは、融点は鎖長と精製度に応じて例えば約43℃〜71℃、より一般には52℃〜64℃とすることができる。大半の包埋臨床サンプルは温度65℃の水溶液から容易に溶解分離するパラフィンを含むことが判明した。
【0073】
サンプル懸濁液は所望分析を実施するために十分な量の核酸を放出するのに十分な時間インキュベートすることができる。時間は例えば組織中の結合繊維の量、インキュベーション温度、プロテアーゼの活性、パラフィン存在量、界面活性剤の存在量と種類、物理的因子(例えば撹拌)の存在、所望核酸の感受性(及び分解性ヌクレアーゼ酵素及び/又はその阻害剤の有無)、pH、イオン強度等により変えることができる。懸濁液インキュベーション時間は例えば約30分未満〜5日間、3時間〜3日間、約6時間〜約2日間、約9時間〜約1日間、又は約12時間(例えば一晩)とすることができる。本発明の方法によると、一晩インキュベーションで約90%の高収率の核酸放出を達成できることが判明した。
疎水性成分から水溶液の物理的分離
【0074】
本発明の方法では、疎水性成分は水溶液によりはねかえされるので、本発明の溶液及びインキュベーション条件の作用下で自己分離する傾向がある。更に、疎水性成分は一般に水溶液と異なる(例えば低い)密度をもつので、例えば本発明の方法によりサンプルから放出されると、水溶液上に浮上する傾向がある。疎水性成分は残りの懸濁液から分離されると、水溶液中に残存するサンプル成分から物理的に分離することができる。
【0075】
場合により、疎水性成分は単にインキュベーション容器の頂部から吸引することにより、インキュベーション後に放出された核酸を含有する溶解液水溶液から分離することができる。あるいは、インキュベートした懸濁液を疎水性成分の融点よりも低い温度まで冷却し、固体として機械的に除去するか、又は溶解液を効率的にデカントもしくはその下部から吸引することができる。
【0076】
インキュベートした懸濁液を密度の異なる別々の層に遠心分離すると有用なことが多い。例えば、インキュベートした懸濁液を1000×g〜約20,000×gで1分間〜約1時間遠心し、懸濁液を例えば下部細胞/組織破片層と、中間溶解液層と、上部疎水性成分層に分離することができる。このような遠心は微小脂質球のコロイド又は懸濁液の形態であり得る疎水性成分をより離散的でより定量的に分離するという利点がある。遠心によると、例えば化学抽出法に頼らずに日常的な液体操作法により容易に除去可能な清澄化溶解液層等の不連続層が得られる。
【0077】
核酸を含む可溶化細胞/組織成分を含有する水溶液の溶解液は当分野で公知の他の方法により疎水性成分及び細胞破片から分離することもできる。例えば、インキュベートした懸濁液を適当な材料と細孔寸法の膜で濾過することができる。破片及び/又は固化した疎水性成分をフィルター膜に保持することができ、清澄化溶解液は膜を通過する。湿潤疎水性膜は疎水性反発力により疎水性成分を保持しながら、溶解液を通過させることができる。疎水性膜は疎水性成分を吸着保持しながら、溶解液を通過させることができる。
【0078】
所定態様では、懸濁液のインキュベーション中にサンプルから分離された疎水性成分をキシレン又はフェノール抽出等の有機抽出(化学的分離)で除去することができる。好ましい態様では、疎水性成分の分離に有機抽出段階は不要である。例えば溶解液をbDNAアッセイで使用する場合にはこのケースが多い。
【0079】
本発明の方法によりサンプルから得られた溶解液は任意数の核酸アッセイ法による分析に適合可能な試験材料となる。多くの場合には、水溶液成分と分離法の賢明な選択の結果として、bDNA分析、ノーザンブロット分析、サザンブロット分析、ポリメラーゼ連鎖反応、分光分析法、蛍光分析法、核酸シーケンシング、アガロースゲル電気泳動等のアッセイに直接入力可能なサンプルが得られる。他の場合には、例えばバッファー交換法又はバッファー、基質等の添加により溶解液を必要に応じて特定アッセイに対応するように調整することができる。FFPE溶解液の場合には、例えば本発明の下記方法を使用してサンプル抽出効率及び/又は分析物分解の正規化によりアッセイ結果の確度を増すことができる。
マルチコピーDNA標準に基づく核酸定量
【0080】
臨床サンプル、特に組織サンプル又は包埋サンプルから細胞溶解液を調製する場合には、その内容物を溶解液中に放出した細胞数がはっきりしない場合がある。全DNA存在量に従って溶解液回収量を正規化することは知られているが、この測定は例えば各種細胞間のDNA含量の不一致により誤差を生じる可能性がある。本発明者らは、各種染色体間に分散し、好ましくは末端動原体型染色体のショートアームに位置する所定の反復遺伝子を使用すると、細胞株や腫瘍細胞等の所定の異数性細胞でも一貫した正確な細胞数推定値が得られることを見いだした。
【0081】
溶解液中の相当細胞数はセントロメアの近傍の部位の2個以上の異なる染色体(例えば末端動原体型染色体のショートアーム)に存在する反復遺伝子(好ましくはリボソーム遺伝子)に対して正規化することにより、一般により良好に推定することができる。例えばその検出感度を増すために、反復遺伝子が多数コピー存在するならば有益であると思われる。本発明では、例えば一般的な異数性細胞の溶解液中の相当細胞数を正規化するための優れた参照遺伝子としてリボソーム遺伝子、特に18S、28S及び5.8SリボソームRNAをコードする遺伝子を同定した。
【0082】
細胞数をカウントするためにrDNAを使用する方法は任意細胞成分に関する任意数の定量アッセイと併用することができる。例えば、アッセイした分析物量とrDNA分析により誘導された細胞数に基づいて任意分析物(例えば核酸、蛋白質、又は小分子)の分子コピー数を計算することができる。
rDNAに対する細胞数の標準関数の提供
【0083】
溶解液中の相当試験細胞数を決定するためには、例えば細胞数に対するリボソームDNA(rDNA)の標準関数を誘導し、rDNA存在量に基づいて未知溶解液中の相当細胞数を補間するためのデータを取得すればよい。標準関数は例えばアッセイ入力とアッセイ出力等のある量と別の量の関係、又は細胞の溶解液中の細胞数とRNA量の一定比例関係を表す式とすることができる。典型的な標準関数としては例えば、チャート上に関連値のX−Y座標をプロットする標準曲線、標準アッセイ結果の回帰分析により設定された式、又は関連パラメーター間の一定比もしくは割合があげられる。標準関数の表現法は当分野で公知の通り、紙チャート上の「ベストフィット」線;細胞数とそのrDNAの比例を表す比又は線傾き;回帰分析法により決定された式;適当なプログラムを使用してコンピューターにより得られた結果等とすることができる。
【0084】
例えば、試験溶解液中の相当細胞数は既知数の細胞に由来する参照溶解液を取得し;参照溶解液中のリボソームRNAをコードする遺伝子の量を定量し;サンプル中のrDNA量に対する細胞数の比を決定し;試験細胞の溶解液中のrDNA量を定量し;比に基づいて試験溶解液中の相当試験細胞数を計算することにより決定することができる。
【0085】
参照サンプル中の細胞数は例えば当分野で公知の方法を使用してカウントすることにより測定することができる。例えば、懸濁増殖させた参照細胞を血球計算盤、コールターカウンター、セルソーター、赤血球沈層容積による推定等でカウントすることができる。参照組織中の細胞は顕微鏡によりカウントするか、組織容積から推定するか、又は機械的、化学的及び/又は酵素法による放出後に懸濁細胞をカウントすることができる。参照細胞は正常細胞、一次培養細胞、細胞株、組織から放出された細胞、生物体液に由来する細胞、及び/又は同等細胞とすることができる。参照細胞は試験細胞と同一型でも異なる型でもよい。細胞は均質に同一でもよいし、異なる細胞型の混合物でもよい。
【0086】
標準曲線により計数される試験細胞は任意該当型とすることができる。試験細胞は参照細胞と同一型であるか、又は少なくとも参照細胞と同一動物種に由来することができる。好ましい態様では、試験細胞が参照細胞と同一細胞型でなくてもよいという特定利点が得られる。例えば、所定態様では、参照細胞は正常細胞又は各種細胞の混合物とすることができ、試験細胞は異数性細胞、「不死化」細胞株に由来する細胞、癌細胞、腫瘍細胞等である。
核酸及び試験細胞数の定量
【0087】
細胞数を測定するためのrDNA定量は有用な出力を提供するために十分な感度と確度の任意方法により実施することができる。しかし、参照rDNAと試験rDNAの両者の測定誤差は最終細胞数結果の誤差につながるので、核酸定量法は高精度で高確度であることが好ましい。一般に、試験サンプルと参照サンプルの両者のrDNA測定はアッセイ間変動を避けるために同一方法を使用すべきであるが、方法は同一でなくてもよい。
【0088】
本発明の方法におけるrDNA定量は例えばQPCR、bDNA分析、ノーザンブロット分析、in situハイブリダイゼーション等により実施することができる。ホルマリン固定パラフィン包埋サンプルに由来する溶解液の測定では、サンプル分解と不純物に反応しにくいbDNA法を使用することが好ましい。
抽出効率計算
【0089】
(試験溶解液rDNAを標準関数による細胞数対rDNAに対比することにより)上記未知試験細胞数を測定することに加え、同一標準曲線により試験細胞の溶解について抽出効率を測定することができる。
【0090】
(例えば上記カウント方法により)試験細胞数が不明の場合には、これらの細胞の溶解について抽出効率を測定すればよい。例えば、試験溶解液のrDNA量を測定し、上記のように作成した標準曲線から相当細胞数を読取ることができる。試験溶解液中の相当細胞数を溶解液の調製に使用した既知細胞数で割り、100を掛けた値として抽出効率百分率を計算することができる。このような情報は例えば溶解法の最適化又は分析結果を正規化するために有用であると思われる。
【0091】
細胞溶解液を分析物の有無についてアッセイし、細胞当たりの分析物存在量が重要であるとするならば、分析物量を実際の細胞数に正規化することにより計算の確度を改善するために抽出効率を使用することができる。例えば、多くの場合には、細胞中の所定遺伝子の発現レベルを知ることが有用である。既知数の細胞を溶解させ、遺伝子から転写したmRNAを例えばRT−PCR又はbDNA法により定量することができる。溶解液のrDNA値を細胞数対rDNAの標準曲線に対比すると、溶解液中の相当細胞数を見いだすことができる。抽出効率は既知細胞数に対する相当細胞の比として表すことができる。細胞当たりのmRNA量は溶解液中の全mRNAを既知細胞数で割り、抽出効率を掛けた値として計算することができる。
mRNAコピー数を測定するための分解IVT RNA曲線の使用
【0092】
分解サンプルの核酸アッセイは誤った結果を生じることが多い。特に、老化サンプル又は苛酷な処理に暴露したサンプルに由来する核酸の分析の結果として、シグナルが低下し、誤って低い出力値や偽陰性アッセイ出力を生じることが多い。この問題を解決するために、本発明者らは分解in vitro転写(IVT)RNAを使用して作成した標準曲線がこのような分解サンプルで実施されるRNAアッセイの確度を改善できると判断した。
分解RNAの標準関数
【0093】
既知量の分解IVT RNAの入力と定量的RNAアッセイの出力の関係を表すために標準関数を設定することができる。次に、一般に分解形であることが分かっているか又は予想される未知RNAをRNAアッセイにより分析し、出力値を得ることができる。この未知RNAのアッセイ出力を標準関数に入力すると、例えば、全長未分解IVT RNA標準を使用して作成した標準曲線の回帰分析により得られる標準関数よりも正確なRNA量値が得られる。未知RNAサンプルが既知数の細胞に由来する場合には、RNA量を細胞数で割ると、細胞当たりのRNAコピー数をより正確に測定することができる。
【0094】
標準関数は分解RNA量とRNAアッセイの出力の関係を表すことができる。RNAアッセイは例えばbDNA分析、ノーザンブロット分析、RT−ポリメラーゼ連鎖反応、アガロースゲル電気泳動等の当分野で公知の任意のものとすることができる。標準関数の確度は当分野で公知の通り、例えば標準濃度数を増して標準データを取得する、反復数を増して各標準を試験する、確度を増して標準量を測定する、ベストフィット回帰分析を使用する等の方法により増すことができる。
標準及び試験サンプル
【0095】
in vitro転写RNAは大量の高純度材料が得られるので多くのRNA分析に好ましい標準である。分解IVT RNAは適当な処理により全長未分解IVT RNAから得ることができる。好ましい態様では、IVT RNAは被分析RNAと同一方法で(例えば老化、光、薬品、酵素、熱、及び/又は同等手段により)分解される。多くの場合には、RNAの断片化がアッセイに最大の効果をもつ分解型である。これは試験RNAとのハイブリダイゼーション反応に基づく多くのRNA分析に特に該当する。本発明の好ましい態様では、IVT RNA標準材料を高pH暴露により分解し、試験RNAサンプルの既知又は予想断片化と同等の断片化を生じる。
【0096】
各種既知分解度をもつRNAのアッセイ出力とサンプル入力の関係を表す定量的RNAアッセイについて標準関数を設定することができると考えられる。試験サンプル中のRNA量が分かっている場合には、標準関数に対する試験サンプルのアッセイにより、試験RNAサンプルの分解度を示す結果が得られる。
【0097】
分解RNA等のRNAの量は定量的アッセイと分解RNA標準を使用して設定した標準関数に基づいて測定することができる。試験サンプルRNAは任意型とすることができ、例えば、mRNA、rRNA、tRNA、IVT RNA、ホルマリン(ホルムアルデヒド、メタノール、水)処理したRNA、脱水組織に由来するRNA、老化RNA(例えば、1年を上回る細胞又は組織サンプルに由来するRNA)、ヒト臨床サンプル、FFPE細胞及び組織サンプル、顕微鏡スライドからのRNAサンプル、RNase酵素暴露により分解したRNAサンプルに由来するRNA等が挙げられる。
アッセイ結果
【0098】
試験RNAについて測定した量は例えば相対的又は絶対的に表すことができる。アッセイの初期出力値は一般に所定の大きさの単位であり、例えば、吸光度単位、蛍光単位、相対発光量(RLU)、電圧、光強度、放射性粒子数等が挙げられる。アッセイ値を標準関数に入力し、関連RNAの量等のより明白な値(例えば質量、重量、濃度、モル数、ヌクレオチド塩基数、分子数等)を出力することができる。
【0099】
分解IVT RNA標準(又は予め設定された標準関数)の選択は試験サンプルRNA中の既知又は予想分解度に基づいて行うことができる。例えば、時間を変えて保存したFFPEサンプルでの実験(例えば、図18アガロースゲル参照)に基づき、標準曲線を作成するために同等分解度の標準を選択することができる。あるいは、例えば、サイズ排除クロマトグラフィー、質量分析、ゲル電気泳動、オフセットbDNA分析(下記に記載)等のサイジング法により実際の試験サンプルについてサンプルRNAの分解度を評価することもできる。多くの場合には、手持ちの情報に基づいて標準関数を選択することにより、分解RNA分析の定量結果を改善することができる。
【0100】
分解IVT RNA標準曲線を使用して測定した定量的mRNA結果を更に計算式に入力することができる。例えば、mRNA源である細胞数が分かっている場合には、細胞当たりのmRNAの量又は分子数を計算することができる。例えば、上記のように細胞をカウントすることによりmRNAサンプルの相当細胞数を知ることができ、あるいは、細胞対rDNAの適当な標準曲線を参照してrDNAアッセイに基づいて測定することができる。
散在性プローブシステムとオフセットプローブシステムの比較による核酸分解の測定
【0101】
核酸に分散した複数のキャプチャーエキステンダー(CE)相補ターゲット配列と、核酸に散在した複数のラベルエキステンダー(LE)相補ターゲット配列を使用する核酸のコントロールbDNAアッセイは、核酸が高度に断片化していても強いシグナルを発生することができる。他方、核酸配列の一端に配置されたCEターゲット配列の全部又は殆どと、核酸配列の他端に間隔をあけて配置されたLEターゲット配列の全部又は殆どを使用する試験bDNAアッセイは、例えば試験核酸がCEターゲットとLEターゲットの間のスペースの1点で断片化している場合にはシグナルを発生することができない。LEターゲット配列位置とCEターゲット配列位置に依存するこのシグナル差をアッセイで利用し、核酸の断片化度を推定することができる。
bDNAアッセイ
【0102】
bDNAアッセイは一般に例えば固体支持体と結合したキャプチャーエキステンダーによるターゲット核酸の捕獲であると言うことができ、ターゲットは強いシグナルを発生するために多数のラベルプローブと結合することが可能な分岐DNA分子と一般に結合したラベルエキステンダーで1点以上を修飾されている。
【0103】
例えば、bDNA分析の1側面では、ターゲット核酸を捕獲し、標識分岐鎖DNA(bDNA−増幅用マルチマー)を使用して固体支持体上のその存在を検出する。固体支持体上のターゲット核酸の存在を検出するには、1個以上のラベルエキステンダー(一般に2個以上のラベルエキステンダー)の第1のセットとラベルを含むラベルプローブシステムを第1のターゲット核酸にハイブリダイズさせ、固体支持体上のラベルの存在を検出することができる。ラベルプローブシステムは一般に増幅用マルチマーと複数のラベルプローブを含む。増幅用マルチマーはラベルエキステンダーと複数のラベルプローブに同時にハイブリダイズすることが可能である。ラベルプローブはラベルを含むことができるか、又はラベルと結合するように構成することができる。適切なラベルとしては限定されないが、酵素又は蛍光ラベルが挙げられる。酵素(例えば、アルカリホスファターゼ)をラベルとして使用する場合には、当分野で周知の通り、化学発光法、比色法等によりその活性を検出することができる。蛍光ラベルを使用する場合には、固体支持体上のラベルの存在を検出するには一般にラベルから蛍光シグナルを検出する。
【0104】
bDNAアッセイを使用して単一ターゲット核酸を捕獲及び検出する代表的な態様を図17に模式的に示す。細胞又は組織サンプルを溶解させ、ターゲット核酸114を含む溶解液を調製する。合成オリゴヌクレオチドキャプチャーエキステンダーセット111を介して固体支持体101(例えば、マイクロタイタープレートのウェル)上のキャプチャープローブ104によりターゲット核酸114(例えば、発現を検出しようとするmRNA)を捕獲する。各キャプチャーエキステンダーはターゲット核酸とハイブリダイズすることができる第1のポリヌクレオチド配列C−3(152)と、キャプチャープローブの配列C−2(150)を介してキャプチャープローブとハイブリダイズすることができる第2のポリヌクレオチド配列C−1(151)をもつ。一般に、2個以上のキャプチャーエキステンダーを使用するが、場合により、1個のCEを使用してターゲットを捕獲することもできる。ラベルエキステンダーセット121の各ラベルエキステンダーはターゲット核酸に相補的な配列L−1(154)を介してターゲット核酸上の別の配列とハイブリダイズし、配列L−2(155)を介して増幅用マルチマー(141)上の配列M−1(157)とハイブリダイズする。bDNAアッセイでは非特異的ターゲットプローブ結合を減らすために、キャプチャーエキステンダー又はラベルエキステンダーと結合しないターゲット核酸の配列とハイブリダイズするブロッキングプローブ(124)を使用することが多い。従って、所与ターゲット核酸のプローブセットはキャプチャーエキステンダーと、ラベルエキステンダーと、場合によりターゲット核酸のブロッキングプローブ124から構成される。キャプチャーエキステンダー、ラベルエキステンダー、及び場合によりブロッキングプローブはターゲット核酸のオーバーラップしない配列に相補的であり、必ずしもそうでなくてもよいが、一般に隣接している。この例では、単一ブロッキングプローブを使用しているが、一般に、最適化bDNAアッセイでは別個のブロッキングプローブのアレーを使用する。
【0105】
シグナル増幅はラベルエキステンダーをターゲット核酸と結合することから開始することができる。次に増幅用マルチマーをラベルエキステンダーとハイブリダイズさせる。増幅用マルチマーはラベルプローブ142に相補的な配列M−2(158)の多重コピーをもつ(なお、増幅用マルチマーは必ずしもそうでなくてもよいが、一般には分岐鎖核酸であり、例えば増幅用マルチマーは分岐、フォーク形、もしくは櫛形核酸又は線状核酸とすることができる)。ラベル143(例えばアルカリホスファターゼ)を各ラベルプローブに共有結合させる。(あるいは、ラベルを例えばラベルプローブと非共有的に結合してもよい。)最終段階で、例えば、化学発光基質(例えばジオキセタン)のアルカリホスファターゼ分解により、標識複合体を検出する。発光はマイクロタイタープレートリーダーで相対発光量(RLU)として報告される。蛍光発光量はサンプル中に元々存在するターゲット核酸レベルに比例する(標準関数で表すことができる関係)。
【0106】
上記例では、増幅用マルチマーとラベルプローブはラベルプローブシステム140を構成する。別の例では、ラベルプローブシステムは例えばUSPN5,635,352及びUSPN5,681,697に記載されているような単一ターゲットmRNAからのシグナルを更に増幅するプレ増幅剤も含む。更に別の例では、ラベルエキステンダーはラベルプローブと直接ハイブリダイズし、増幅用マルチマー又はプレ増幅剤を使用しないので、単一ターゲットmRNA分子からのシグナルはこのmRNAとハイブリダイズする個々のラベルエキステンダーの数だけ増幅される。
【0107】
基本的なbDNAアッセイは詳細に記載されており、例えば細胞株におけるmRNA転写産物を検出及び定量し、ウイルス負荷を測定するために使用されている。bDNAアッセイは核酸分子を生理的レベルで直接定量することができる。この技術は他のDNA/RNA増幅技術にまさるいくつかの利点があり、直線的増幅、良好な感度とダイナミックレンジ、優れた精度と確度、単純なサンプル調製手順、及びサンプル間変動の低下が挙げられる。bDNAアッセイの更に詳細については、例えば、USPN4,868,105,発明者Urdeaら,発明の名称「溶液相核酸サンドイッチアッセイ(Solution phase nucleic acid sandwich assay)」;USPN5,635,352,発明者Urdeaら,発明の名称「バックグラウンドノイズを低下した溶液相核酸サンドイッチアッセイ(Solution phase nucleic acid sandwich assays having reduced background noise)」;USPN5,681,697,発明者Urdeaら,発明の名称「バックグラウンドノイズを低下した溶液相核酸サンドイッチアッセイとそのキット(Solution phase nucleic acid sandwich assays having reduced background noise and kits therefore)」;USPN5,124,246,発明者Urdeaら,発明の名称「核酸マルチマー及び前記マルチマーを使用する増幅核酸ハイブリダイゼーションアッセイ(Nucleic acid multimers and amplified nucleic acid hybridization assays using the same)」;USPN5,624,802,発明者Urdeaら,発明の名称「核酸マルチマー及び前記マルチマーを使用する増幅核酸ハイブリダイゼーションアッセイ(Nucleic acid multimers and amplified nucleic acid hybridization assays using the same)」;USPN5,849,481,発明者Urdeaら,発明の名称「大型櫛形分岐ポリヌクレオチドを使用する核酸ハイブリダイゼーションアッセイ(Nucleic acid hybridization assays employing large comb−type branched polynucleotides)」;USPN5,710,264,発明者Urdeaら,発明の名称「大型櫛形分岐ポリヌクレオチド(Large comb−type branched polynucleotides)」;USPN5,594,118,発明者Urdea and Horn,発明の名称「増幅核酸ハイブリダイゼーションアッセイ用修飾N−4ヌクレオチド(Modified N−4 nucleotides for use in amplified nucleic acid hybridization assays)」;USPN5,093,232,発明者Urdea and Horn,発明の名称「核酸プローブ(Nucleic acid probes)」;USPN4,910,300,発明者Urdea and Horn,発明の名称「核酸プローブの作製方法(Method for making nucleic acid probes)」;USPN5,359,100;USPN5,571,670;USPN5,614,362;USPN6,235,465;USPN5,712,383;USPN5,747,244;USPN6,232,462;USPN5,681,702;USPN5,780,610;USPN5,780,225,発明者Sheridanら,発明の名称「精製親水性アルカリホスファターゼと結合したオリゴヌクレオチドプローブ及びその使用(Oligonucleotide probe conjugated to a purified hydrophilic alkaline phosphatase and uses thereof);米国特許出願公開第US2002172950号,発明者Kennyら,発明の名称「in situ分岐DNAハイブリダイゼーションを使用する高感度遺伝子検出及び位置決定(Highly sensitive gene detection and localization using in situ branched−DNA hybridization);Wangら(1997)“Regulation of insulin preRNA splicing by glucose”Proc Nat Acad Sci USA 94:4360−4365;Collinsら(1998)“Branched DNA(bDNA) technology for direct quantification of nucleic acids:Design and performance” in Gene Quantification,F Ferre編;及びWilber and Urdea(1998)“Quantification of HCV RNA in clinical specimens by branched DNA (bDNA) technology” Methods in Molecular Medicine: Hepatitis C 19:71−78参照。更に、基本的bDNAアッセイを実施するための試薬(例えば、QuantiGene(登録商標)キット、増幅用マルチマー、アルカリホスファターゼ標識ラベルプローブ、化学発光基質、固体支持体に固相化したキャプチャープローブ等)は例えばPanomics,Ind.(ワールドワイドウェブwww.panomics.com)から市販されており、本発明の実施に応用することができる。所与mRNAターゲットのプローブセットを設計するため(即ち、キャプチャーエキステンダー、ラベルエキステンダー、及び場合によりターゲットに相補的なブロッキングプローブの領域を設計するため)のソフトウェアも市販されている(例えばPanomics,Inc.製品ProbeDesigner(登録商標));Bushnellら(1999)“ProbeDesigner: for the design of probe sets for branched DNA (bDNA) signal amplification assays Bioinformatics 15:348−55も参照。
オフセットプローブアッセイ
【0108】
bDNAアッセイの変動を使用してターゲット核酸配列中の断片化を検出することができる。ラベルエキステンダーと(キャプチャープローブを介して固体支持体に結合した)キャプチャーエキステンダーの分離したターゲット相補配列部位間の核酸配列に切れ目が存在する場合には、シグナルの消失又は低下としてターゲット核酸の断片化を検出することができる。CEとLEの間のこのような切れ目はラベルと固体支持体の間の結合を切断し、ラベルシグナルを固体支持体の処理で消失させる可能性がある。アッセイの感度及び/又は有効検出範囲はCEとLEの両者がターゲット核酸切れ目の両側に存在するコントロールアッセイとオフセットアッセイからのシグナルを比較することにより改善することができる。得られたオフセットシグナルとコントロールシグナルの比は、特にターゲット核酸量が不明の場合に絶対値よりも明確な断片化の指標となり得る。
【0109】
図18A及び18Bに示すような代表的アッセイでは、コントロールプローブセットはターゲット核酸が断片化しているか否かのシグナルを提供することができ、オフセットプローブシステムを使用する同一断片化ターゲットのアッセイはシグナルを発生することができない。図18Aに示すように、散在性LE121及びCE111プローブのコントロールプローブシステムは分散性ラベルエキステンダー121で修飾された全長ターゲット核酸114を有効に捕獲することができるので、強いコントロールシグナルを発生することができる。キャプチャーエキステンダーとキャプチャープローブ104を介してオフセットラベルエキステンダーを固体支持体に結合することにより、オフセットプローブシステムでも全長ターゲットに強いシグナルを発生させることができる。図18Bに示すように、試験サンプルのターゲット核酸配列177が断片化されている場合でも、コントロールプローブセットではシグナルが発生され続ける。コントロールプローブセットは切れ目の両側でターゲット配列を(ラベルエキステンダーと共に)捕獲するので、例えば固体支持体のプロセス洗浄中にシグナル発生能は失われない。他方、ターゲット核酸はオフセットシステムLEターゲット配列部位とCEターゲット配列部位の間のスペースで切断されているので、図18Bのオフセットプローブセットを使用してシグナルを発生することはできない。LEプローブを結合していないフラグメントは捕獲されるが、LEプローブを結合したフラグメントは捕獲されない。ハイブリダイゼーション溶液が固体支持体から洗い流されると、結合したオフセットLEプローブに関連する全シグナルは失われる。ターゲット核酸配列の特定領域又は点の切れ目(又はその不在)を検出できるようにオフセットLE及びCEの位置を設定できると考えられる。
【0110】
1態様では、ターゲット核酸の一端又はその近傍に1個のCEターゲット配列部位を配置し、ターゲット核酸の他端に1個以上のLEターゲット配列部位が配置するようにオフセットプローブを設計する。好ましい態様では、LE及びCE部位は直接隣接せず、LE又はCEプローブに非相補的な核酸セクションにより分離される。CE相補ターゲット部位とLEターゲット部位の間の任意位置に切れ目があると、この断片化ターゲットに相当するシグナルはオフセットシステムにより発生されない。このような切れ目をもつサンプルではターゲット核酸の割合が高いほど、発生可能なシグナルは弱くなるので、このようなシステムを使用して定量的標準曲線を作成することができる。好ましい態様では、LE部位はターゲット核酸の両端の近傍のみに存在し、1個以上のCE部位は両端間のみ、例えばシステムのLE又はCEに非相補的な配列により分離された例えばターゲット核酸の中心の近傍に存在する。このような場合には、CE部位と一端の間に切れ目があると、シグナル発生能は例えば2分の1に減り、CE部位と各末端の間に切れ目があると、システムはシグナルを全く発生できなくなる。
【0111】
オフセットプローブシステムの好ましい態様では、LEターゲット配列部位はこの部位とターゲット核酸上の最近接3’及び/又は5’CEターゲット配列部位の間の切断に反応するように設計される。例えば、この技術の多くの場合では、LE部位と他端側の1個以上のCE部位の間に切れ目がある場合にLEがそのシグナルポテンシャルと共に失われる(固体支持体と結合しない)ように、LE部位とターゲット核酸の一端の間にCE部位が存在しないことが好ましい。LEターゲット配列とCEターゲット配列の間にターゲット核酸の実質的部分が存在することが好ましい。例えば、好ましい態様では、試験核酸の核酸配列の10%以上が核酸の2個の最近接LE及びCE部位間に存在する。断片化を試験する核酸の>25%、>50%、>75%、>90%、又はそれ以上が最近接CE/LE部位対のメンバー間に存在することがより好ましい。オフセットプローブシステムの1個以上のオフセットラベルエキステンダーL1配列は全C3相補配列から5’又は3’側に少なくとも1ヌクレオチド塩基の間隔をあけて配置された核酸の配列と相補的であることが好ましく、試験核酸のL1及びC3相補配列間は5塩基以上、10塩基以上、25塩基以上、50塩基以上、100塩基以上、500塩基以上であることがより好ましい。
【0112】
オフセットプローブスキームの他の態様では、ターゲット核酸上のLEターゲット間に所定のCEターゲットが散在していてもよいし、及び/又はCEターゲット間に所定のLEターゲットが散在していてもよい。例えば、ターゲット核酸が両端の近傍で捕獲され、LEターゲット配列部位が例えばターゲット核酸の中心の近傍でCE部位から間隔をあけて配置されているオフセットプローブシステムを設計することができる。このような場合には、シグナル発生能は核酸の切れ目が1個では失われないが、LEターゲット部位の各側に切れ目があると失われる。CE/LEスペーシング及び分散の付加変形構成の結果、CE及びLE部位間に十分な切れ目があると、シグナル発生能は漸次又は最終的に失われると考えられる。他方、他の好ましい態様では、2個以上のCEターゲット部位間にLEターゲット部位の25%以下が存在するか、又は2個以上のLE部位間にCE部位の25%以下が存在する。より好ましい態様では、2個以上のCEターゲット部位間にLEターゲット部位の10%以下が存在するか、又は2個以上のLE部位間にCE部位の10%以下が存在する。より好ましい態様では、2個以上のCEターゲット部位間にLEターゲット部位の5%以下が存在するか、又は2個以上のLE部位間にCE部位の5%以下が存在する。最も好ましい態様では、CE及びLEターゲット配列部位はターゲット核酸配列に散在せず、即ち2個のCEターゲット部位間にLEターゲット部位は存在せず、及び/又は2個のLE部位間にCE部位は存在しない。
【0113】
オフセットプローブアッセイ結果を正規化し、アッセイ間比較を助長するためには、コントロールアッセイ結果に対する試験アッセイ結果の比として断片化アッセイ結果を提供することが有用であり得る。別の核酸、試験核酸全長、及び/又は分析する同一サンプルからの試験核酸で例えば複数の散在LE/CEプローブターゲット部位を使用するコントロールアッセイを実施することができる。好ましい態様では、コントロールアッセイとオフセットアッセイの両者により同一試験サンプルを分析し、比を提供する。特定比を所定断片化度と相関させることができる。例えば、特定サンプルの比をこのサンプルの断片化レベルと相関できるように、断片化度に対する比の標準曲線を提供することができる。このような情報は例えば、サンプル中のmRNAの定量で使用するための分解IVT RNA標準の選択で有用であり得る。
【0114】
以下、実施例により本発明を例証するが、これらの実施例により本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0115】
FFPE組織スライド疎水性成分の均質化後分離と均質化前抽出の比較
均質化後分離が均質化前有機抽出と同等以上であることを実証するために、可溶化前に脱ロウを実施した場合と実施しない場合とで分岐DNA法を使用してFFPEサンプルmRNAを比較した。>10年マッチヒト肺正常及び腫瘍FFPEサンプルに由来するサンプルを10ミクロン切片3枚としてプールした。1対のサンプル(「0」)では、可溶化後にロウを分離することによりホモジネートを調製した。第2対のサンプル(「1」)では、可溶化前に脱ロウ有機抽出段階を1回実施することによりホモジネートを調製した。第3対のサンプル(「2」)では、脱ロウ有機抽出サイクルを2回実施することによりホモジネートを調製した。Yangら,2006に記載されているようにリボソーム蛋白質S3(RPS3,NM_001005ハウスキーパー又は参照コントロールRNA)と乳酸デヒドロゲナーゼA(LDHA,NM_005566;腫瘍サンプルでの誘導倍率2〜3倍)を使用して抽出液を試験した。分岐DNAアッセイでターゲット遺伝子のオリゴヌクレオチドプローブセットをデザインするように改変プローブデザインソフトウェアが開発されている(Bushnellら,1999)。ターゲット遺伝子のプローブセットはターゲットの隣接領域をカバーする3種のオリゴヌクレオチドプローブ(CE−キャプチャーエキステンダー、LE−ラベルエキステンダー、及びBL−ブロッキングプローブ)から構成され、プレートウェルの表面へのターゲットRNAの捕獲と、分岐DNAシグナル増幅分子とのハイブリダイゼーションを可能にする。ターゲット配列毎に、ソフトウェアアルゴリズムは残りのスペースを実質的に充填するようにCE(遺伝子当たり5〜10)、LE(遺伝子当たり10〜20)、又はBLのアニーリング鋳型として機能できる領域を識別した。分岐DNAアッセイは既に詳細に記載されているQuantiGene(登録商標)Reagent System(Panomics)の手順に従って実施した(Wangら,1997,Kernら,1996)。要約すると、組織ホモジネート10μLをLysis Mixture(Panomics)40μL、Capture Buffer(Panomics)40μL、及びターゲット遺伝子特異的プローブセット(CE,1.65fmol/μL;LE,6.6fmol/μL;BL,3.3fmol/μL)10μLと混合した。各サンプル混合物をその後、Capture Plate(Panomics)の各ウェルに分配する。
【0116】
図3のグラフから明らかなように、可溶化後分離で測定したmRNA発現レベルは相抽出段階を1回又は2回実施した場合に比較して改善されていないとしても同等である。
【実施例2】
【0117】
FFPEサンプルからの等価スパイク回収率
FFPE切片からのRNA回収が可溶化後分離と可溶化前抽出で等価であることを実証する付加実験を実施した。方法は、細菌遺伝子ジヒドロジピコリン酸レダクターゼに由来する既知量のin vitro転写(IVT)RNA(ヒト肺組織で発現されないdapB,L38424)を可溶化FFPEサンプルに加えた以外は、乳酸デヒドロゲナーゼA(LDHA,NM_005566)とリボソーム蛋白質S3(RPS3,NM_001005)について上述したように実施した。データによると、収率は脱ロウ抽出段階2回と物理的ロウ分離法で同等であった。どちらの方法を使用した場合も、スパイクインdapB IVT RNAのキャプチャー効率(スパイク回収率)は90〜110%であった。
【実施例3】
【0118】
FFPE組織可溶化効率とFFPEサンプル中の細胞数を測定するための反復リボソームDNAの使用
反復DNAに基づいて細胞数を正確に予想できるか否かを調べた。特に、リボソームDNA遺伝子の定量に基づく標準曲線を使用して腫瘍及び他の異数性細胞の細胞数を測定した。
【0119】
二倍体ゲノム当たりリボソーム遺伝子クラスター平均約10個となるように10種の細胞株を選択した。各細胞株の細胞4000個をQuantiGene Lysis Buffer(Panomics)で溶解させ、10個の細胞株溶解液をプールした(即ち、合計細胞株10種ないし細胞40,000個で総容量110μl)。
【0120】
各々30μlを別々のマイクロ遠心管に移し、一方はリボソームDNA(18S及び28S rDNA)を測定するためにDNAを変性させ、他方はアッセイのバックグラウンドを測定するために非変性コントロールとした。次に、TEバッファー270μlを加えることにより各管を合計300μlまで希釈した。変性及びコントロールサンプル各180μlを反応管に移した。変性用DNAを入れた管には2.5N NaOH 18μlを加え、コントロールアリコートにはTE 18μlを加えた後、管を53℃に15分間加熱した(図6参照)。加熱段階後、2M HEPES 90μlをコントロール(非変性)及び変性サンプルの両者に加えた。コントロールサンプル中のDNAは2本鎖のままであったが、変性DNAサンプルは実質的に1本鎖状態であった。変性サンプル(30μl、15μl、7.5μl、3.8μl、1.9μl、0.95μl又は夫々683、341、171、85、43、21細胞等量)をQuantiGeneアッセイに加えることにより細胞数標準曲線を作成した(図7参照)。mRNAを測定するための典型的アンチセンスプローブセットを使用する代わりに、センスプローブセットを使用してサンプル中の18S及び28SリボソームDNA量を定量する。
【0121】
18S及び28Sリボソームプローブは細胞株プールにほぼ同一結果を与えたので、18Sリボソームプローブセットのみを使用してFFPE腫瘍サンプル及びFFPE細胞株コントロール中のリボソームDNA量を測定した。FFPE腫瘍及び細胞株コントロール切片を上記のように可溶化及び試験した。要約すると、切片をQuantiGene Homogenization Buffer 300μlで可溶化し、2μlを103倍に希釈した。103倍に希釈したサンプル60μlをマイクロ遠心管に移し、2.5N NaOH 6μlを加えた後に53℃まで15分間加熱することにより変性させた。変性後に、2M HEPES 30μlをボルテックス混合下に加えることにより溶液を中和させた。変性溶液30μlをQuantiGeneアッセイに加え、上記のような18S rDNA細胞数標準曲線(プールした10種の細胞株)を使用して18SリボソームDNAを定量した。
【0122】
4種の細胞株に由来する既知数の細胞をホルマリンで固定し、パラフィン包埋した。各細胞株切片20枚(6μm×20mm2=〜100,000細胞/切片=合計〜2×106細胞)をQuantiGene Homogenization Buffer 600μlで可溶化し、DNA変性させ、上記のような18S rDNAプローブセットを使用して定量した。18S rDNA細胞数標準曲線を使用し、細胞株FFPEサンプル切片各20枚で2〜2.5×106の細胞数が測定された。図8参照。
【実施例4】
【0123】
FFPE腫瘍組織切片からの細胞数定量
49個の腫瘍(肺24個、結腸25個)に由来する切片各10枚(6μm×24mm2;全切片>85%腫瘍)をQuantiGene Homogenization Buffer 300μlで可溶化し、DNA変性させ、上記のような18S rDNAプローブセットを使用して定量した。18S rDNA細胞数標準曲線を使用し、合計切片10枚で1.2〜1.7×106細胞/FFPE腫瘍サンプルが定量された。図9参照。
【実施例5】
【0124】
無傷及び分解IVT RNA標準曲線を使用するRNA分子の定量
RNA分子数を計算するためには、クローン遺伝子を使用するin vitro転写RNA(IVT)を標準曲線として使用することができる。FFPE mRNAは一般に例えば断片化プロセスにより多少分解される。本発明者らは分解サンプルの分析アッセイ効率を測定するためには分解IVT標準分析曲線を未分解全長RNAの曲線と比較すればよいことを見いだした。例えば、QuantiGeneアッセイを使用して臨床サンプルに由来する分解mRNAを正確に定量することができる。
【0125】
Ambionの指示に従ってIVTを合成した。FFPE RNAのサイズと同等にするために無傷RNAの一部を100〜300bpまで分解した。所望サイズの分解RNAを得るためには、未分解全長IVT RNAを0.1N NaOHで9分間分解する。等容量の0.1N NaOHを使用して反応を中和し、分解プロセスを停止した。図10に示すゲルは7個の未分解全長in vitro転写RNA(レーン2にプール)と、ゲル電気泳動用にプールした同数の7個の分解IVT RNAを示す。
【0126】
次に、IVT濃度を測定し、溶液を40、10、2.5、0.625、0.156、及び0.039アトモル(−18mol)まで系列希釈した。図11に示すように、例えば、β−Actin特異的プローブセット(Panomics)を使用してβ−Actin(ACTB)IVT未分解全長RNA(1739bp)と対応するIVT分解RNA(図10ゲル参照)を定量し、標準曲線を作成した。標準曲線を相互に比較すると、1のR2値が決定される(R2は分散比を表す)。結果から明らかなように、分解ACTB IVT(100〜300bp)を使用するACTB特異的プローブセットの感度は全濃度で未分解ACTB IVT(1739bp)の〜40%(傾き38.6%)である。未分解全長(985bp〜4407bp)及び分解IVTの両者を使用する他の6個の遺伝子でも同様の結果が認められた(図12参照)。
【0127】
(実施例3の末尾に記載した)4種の細胞株の既知数の細胞をホルマリンで固定し、パラフィン包埋し(切片20枚、6μm×20mm2=〜100,000細胞/切片=合計〜2×106細胞)、QuantiGene Homogenization Buffer 600μlで可溶化し、全4種の細胞株で全6個のmRNAに等容量の入力サンプルを使用して定量した。まず、bDNAアッセイを使用して6個のmRNAの各々について各細胞株における相対発現量を測定した(図13参照)。次に、未加工データから、両者のIVT標準曲線(未分解と分解、上記参照)を使用して6個のmRNAの各々のアトモルを計算した。最後に、18S rDNA/細胞数標準曲線を使用してアトモルを各細胞株の細胞数で割り、各mRNA及び細胞株の細胞当たりコピー数を決定した(図14参照)。分解IVT標準曲線から計算したコピー数は未分解IVT標準曲線を使用して新鮮な全長IVT RNAサンプルについて計算したコピー数と密接に相関した。従って、分解IVTは均質化FFPEサンプルに由来するmRNAを良好に表し、このようなmRNAの定量のために良好な標準材料となる。
【0128】
mRNA定量とコピー数測定の付加例では、18S及び28S rDNAについて上述したように、49個の腫瘍(肺25個、結腸24個)に由来する切片各10枚(6μm×24mm2;全切片>85%腫瘍)をQuantiGene Homogenization Buffer 300μlで可溶化した。得られたホモジネートを使用し、QuantiGene特異的プローブセット(上記参照)を使用して6個のmRNAの量を定量した。4種の細胞株でmRNAを測定するために使用したものと同一のIVT標準曲線を使用した。図15は全49個の腫瘍におけるmRNAの各々の未加工相対定量データを示す。
【0129】
分解IVT標準曲線から全腫瘍における各mRNAのアトモルを計算し、細胞当たりのmRNAコピーの計算に使用する腫瘍サンプル(合計切片10枚)の各々の細胞数で割った。このデータを図16に示す。遺伝子の一部で発現レベル(mRNA)の細胞当たりコピー数は肺腫瘍(1〜25)では高いが、結腸腫瘍(26〜49)ではそうではないという明白な傾向が存在することが認められた。
【実施例6】
【0130】
サンプルDNA分解の測定
組織ブロックについてRNAのフラグメント長を評価した。この評価は例えば十分なRNA完全性をもつFFPEブロックの選択や、サンプルで使用するためのIVT RNAアッセイ標準の選択に役立つ。FFPE可溶化後、該当mRNA(遺伝子)に2個のプローブセットを使用してサンプルを試験した。標準分散コントロールプローブセット(図18A及び18B参照)又はオフセットCE及びLE部位をもつ試験プローブセットを組織均質化バッファーに加え、一晩ハイブリダイゼーションした。翌日、標準bDNAアッセイ手順に従ってコントロール及び試験サンプルを処理した。
【0131】
図9から明らかなように、RNA品質の異なるFFPEサンプルを試験した。まず、ゲル電気泳動により精製RNAの品質を評価する。3年サンプル(腫瘍及び正常RNA)中のRNAは10年サンプルのRNAよりも断片化が少なかった。次に、無傷コントロールRNAと3年及び10年FFPEサンプルに由来するRNAを分散コントロールプローブ又はオフセット断片化試験プローブでbDNA分析した。オフセットアッセイ結果に対するコントロールのアッセイシグナルの比を測定することによりRNAの品質を評価した。比はRNA分解の増加と共に増加することが判明した(コントロール比〜1;3年=3〜4;10年=7〜24)。オフセットbDNAプローブスキームは任意サンプルに由来するRNAの品質を評価するための簡単なアプローチを提供する。
【0132】
当然のことながら、本明細書に記載する実施例及び態様は例証の目的に過ぎず、これらの記載に鑑みて種々の変形又は変更が当業者に示唆され、このような変形又は変更も本願の精神及び範囲と特許請求の範囲に含むものとする。
【0133】
以上、明確に理解できるように本発明を多少詳細に記載したが、本発明の真の範囲を逸脱することなく形態や細部に種々の変更が可能であることは以上の開示から当業者に自明である。例えば、上記技術及び装置の多くは種々に組合せて使用することができる。
【0134】
本明細書に引用した全刊行物、特許、特許出願、及び/又は他の文献はその開示内容全体を全目的で参考資料として組込み、各刊行物、特許、特許出願、及び/又は他の文献を全目的で参考資料として組込むと個々に記載しているものとして扱う。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】核酸可溶化「均質化」プロトコールの開始前にホルマリン固定パラフィン包埋臨床サンプルからパラフィンを除去するための有機溶媒(例えばDewax)と相抽出技術を使用する従来技術の脱ロウプロトコールのブロックフローチャートである。
【図2】サンプルを予め脱ロウする必要がない1段階の非抽出非変性物理的分離段階により水性核酸ホモジネート(溶解液)からパラフィンを最終的に分離する本発明の代表的な可溶化(「均質化」)プロトコールを示す。
【図3】mRNA発現誘導のグラフを示す。正常細胞に対する腫瘍細胞中のLDHA mRNAレベルの誘導倍率測定値は可溶化後に溶解液から疎水性成分を分離した場合と、均質化(溶解液調製)前に有機相抽出を行う旧来の技術とで実質的に同一であることが明らかである。
【図4A】各種正常細胞、異数性細胞、及び腫瘍細胞で実質的に一貫した発現を維持するリボソームDNA(rDNA)の例を示す。
【図4B】各種正常細胞、異数性細胞、及び腫瘍細胞で実質的に一貫した発現を維持するリボソームDNA(rDNA)の例を示す。
【図4C】各種正常細胞、異数性細胞、及び腫瘍細胞で実質的に一貫した発現を維持するリボソームDNA(rDNA)の例を示す。
【図4D】各種正常細胞、異数性細胞、及び腫瘍細胞で実質的に一貫した発現を維持するリボソームDNA(rDNA)の例を示す。
【図4E】各種正常細胞、異数性細胞、及び腫瘍細胞で実質的に一貫した発現を維持するリボソームDNA(rDNA)の例を示す。
【図5】rDNAの細胞株細胞数とアッセイシグナル出力の間の直線応答を実証するbDNAアッセイ標準曲線を示す。
【図6】rDNAに基づいて細胞数標準曲線を作成するためのプロトコールの概略フローチャートを示す。
【図7】18S及び28SリボソームDNAの細胞数対bDNAアッセイ出力の標準曲線を示す。
【図8】細胞数対18S DNAの標準曲線を示す。ヒストグラムから明らかなように、18S DNA標準曲線により異数性細胞株でも実質的に正確に細胞数を測定できる。
【図9】FFPEスライドからの49個の腫瘍組織スクレーピングの18S DNAのbDNAアッセイにより得られた細胞数の定量を示す。
【図10】無傷全長in vitro転写(IVT)RNAと水酸化物で分解したIVT RNAのゲル電気泳動を示す。
【図11】全長又は分解IVT転写RNA標準のbDNAアッセイ入力RNAアトモル対アッセイシグナル出力の標準曲線を示す。無傷対分解RNAのアッセイ出力間の関係の標準式を示す。
【図12】6個のmRNAの無傷及び分解IVT RNA標準曲線を示す。
【図13】4種のホルマリン固定パラフィン包埋細胞株における6個のmRNAの発現を示す未加工アッセイ出力データを示す。
【図14】無傷又は分解IVT RNA標準曲線に基づいて計算した6個のmRNAの細胞当たりコピー数を示す。
【図15】49個のヒト腫瘍で測定した6個のmRNAの未加工bDNAアッセイ出力データを示す。
【図16】49個の腫瘍細胞サンプルで6個のmRNAについて分解IVT RNA標準に基づいて測定した細胞当たりmRNAコピー数を示すチャートを示す。
【図17】代表的bDNAアッセイシステムの模式図を示す。
【図18A】ターゲット核酸断片化を検出するためのオフセットプローブ及びコントロールスキームの模式図を示す。図18AのターゲットRNAは断片化していないので、コントロールプローブシステム又はオフセットプローブシステムを使用して固体支持体に保持したラベルエキステンダーからシグナルを発生することができる。他方、コントロールシステムの同一断片化ターゲットRNA配列では切れ目の両側にCE結合点とLE相補部位が存在するので、コントロールプローブシステムを使用してbDNAアッセイのシグナルを発生することができる。
【図18B】ターゲット核酸断片化を検出するためのオフセットプローブ及びコントロールスキームの模式図を示す。図18BのターゲットRNAはオフセットプローブシステムのCE結合点とLE相補部位の間で断片化しているので、bDNAアッセイによりシグナルは発生されない。他方、コントロールシステムの同一断片化ターゲットRNA配列では切れ目の両側にCE結合点とLE相補部位が存在するので、コントロールプローブシステムを使用してbDNAアッセイのシグナルを発生することができる。
【図19】コントロール対オフセットプローブシグナルの比をアガロースゲル上に可視化されるようなRNA分解と相関させる方法を示す。
【技術分野】
【0001】
(関連出願とのクロスリファレンス)
本願は先願米国仮出願第60/838,578号、発明の名称「組織スライドからの核酸定量(Nucleic Acid Quantitation from Tissue Slides」、発明者Gary McMasterら、出願日2006年8月17日の優先権と特典を主張する。先願の開示内容全体を参考資料として本明細書に組込む。
【0002】
(発明の技術分野)
本発明は細胞及び組織からの核酸抽出及び定量の分野に関する。疎水性溶媒を使用せずに包埋臨床サンプルから核酸を抽出する。リボソームDNA参照及び/又は分解in vitro RNAを使用して標準曲線を正規化し、細胞当たりの核酸コピー数を設定する。
【背景技術】
【0003】
ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織は臨床結果が十分に記録された生検検体の膨大な供給源となるので回顧調査の最適資源となる(Lewis,F.ら,2001;Yangら,2006)。ヒト検体の入手と使用は癌研究と薬剤発見基盤の必須部分であり、研究者らが薬剤ターゲットを同定し、リード化合物を開発し、薬剤代謝を解明するのに役立つ。ヒト検体を使用する研究は薬剤応答及び毒性と、短期及び長期臨床結果を予測するのに役立つ。新技術とヒトゲノムのマッピングから得られる情報に伴い、学術界と営利及び非営利目的の産業界の研究者が抗癌薬発見を促進させるために良好な品質のヒト検体を入手する必要はますます増大している。これらの研究を促進するためには、正常及び悪性組織、血液、他の体液、並びにこれらから抽出可能な蛋白質、DNA及びRNA等の多数の異なる形のヒト検体が必要である。
【0004】
米国で実施される全外科処置は病理診断用組織サンプルを取得する必要があるため、ヒト検体の一次供給源は病院の手術室と病理研究室である。現在米国では160,000,000を越える病理検体(その大半はロウブロックに固定されている)が保存されている(Eiseman and Haga,1999)。
【0005】
組織ブロックは固定し、パラフィン包埋した後、ミクロトームで切断し、切片を顕微鏡スライドに固定するのが通例である。パラフィン包埋組織切片は核酸分析前に水溶液を浸透できるように脱ロウする必要があった。
【0006】
例えば、無菌レザーブレードを使用してFFPE切片をスライドからこそげ落とし、処理のためにマイクロ遠心管に移している。従来のパラフィン除去方法はキシレンと高グレードアルコールを使用する有機抽出を伴う。この方法は時間がかかり、煩瑣であり、キシレンは有害ガスを発生する猛毒性薬品であるため、特殊な取り扱いを要する。スカルペルを使用して同一組織ブロックからFFPE検体切片(60〜100ミクロン/25〜250mm2)10枚をガラススライドから遠心管にこそげ落とした後、疎水性溶媒(例えばキシレン含有EZDeWax(登録商標)(BioGenex,San Ramon,CA,USA))1mlを加える;図1参照。ボルテックス混合と室温で5分間インキュベーション後に組織サンプルを16,000×gで2分間マイクロ遠心管で遠心し、上清を捨てる。70%エタノール1mlをサンプルに加え、サンプルをボルテックス混合し、16,000×gで2分間マイクロ遠心管で遠心してもよい。次に、サンプルロウをキシレン相に繰返し抽出し、残渣を70%エタノールで2〜5回洗浄した後、次の組織ホモジネート調製又は全RNA単離段階に進む(Yangら,2006)。
【0007】
相抽出脱ロウプロトコールは時間と労力がかかる。反復操作、吸引及び管移動の結果、核酸回収が非定量的になる可能性がある。反復ボルテックスと苛酷な溶媒暴露によりサンプルが分解する可能性がある。
【0008】
保存臨床検体に由来する核酸の定量には別の問題もある。例えば、サンプル採取、ホルマリン固定及び組織処理によりRNA品質が低下する可能性がある。その結果、例えば、FFPE組織ブロック中のRNAを測定する能力が低下する可能性がある。包埋臨床サンプルから最終的に抽出された核酸は高度に分解及び断片化していることが多い。これらの抽出液を標準分析法により評価すると、定性及び定量アッセイ誤差を生じることが多い。その上、不完全な抽出によりmRNAコピー数測定等の計算に誤差を生じる可能性がある。FFPE組織ブロックに由来するRNAの測定に伴う問題としてはRNAフラグメントの断片化、架橋の及びホルマリン固定法による塩基修飾が挙げられる。ホルマリン固定組織中のRNA分子長を減らす2つのプロセスは分解と断片化(加水分解)である。RNA分解は組織を固定剤と接触させてサンプル採取操作に付す前に酵素分解により生じる可能性がある。RNA分子の断片化はホルマリン固定剤に起因し得るので、使用するホルマリン条件に応じて実質的に変化する(Lehmann U,Kreipe H: Real−time PCR analysis of DNA and RNA extracted from formalin−fixed and paraffin−embedded biopsies,Methods 2001,25:409−418)。断片化の厳密な原因は不明であるため、この問題の解決方法も不明であった。
【0009】
現在の最新RNA測定技術は定量的PCR(QPCR)である。しかし、凍結組織とFFPE組織でRNA定量を比較した数件の最近の報告によると、ホルマリン固定後のQPCRによる検出にはRNA転写産物の3〜5%しか利用できないことが実証されている(Bibikova M,Talantov D,Chudin E,Yeakley JM,Chen J,Doucet D,Wickham E,Atkins D,Barker D,Chee M,Wang Y,Fan JB:Quantitative gene expression profiling in formalin−fixed,paraffin−embedded tissue using universal bead arrays,Am J Pathol 2004,165:1799−1807)。この問題は逆転写段階がオリゴ−dT又はランダムプライミングのどちらを使用するかに関係ない。この問題は、逆転写及び/又はQPCRがRNA中のホルマリンによるモノメチロール化により著しく悪化するためであると説明することができる。この問題を解決するために、該当遺伝子の発現が内部ハウスキーピング遺伝子に正規化されている。しかし、アデニンはホルマリン固定により変性し易いため、A/Uリッチ配列はG/Cリッチ配列よりも正確に測定されないので、この方法は不十分である(Masuda N,Ohnishi T,Kawamono S,Monden M,Okubo K: Analysis of chemical modification of RNA from formalin−fixed samples and optimization of molecular biology applications for such samples,Nucleic Acids Res 1999,27:4436−4443)。従って、ホルマリン固定組織中のmRNAの測定効率及び再現性には遺伝子特異的な差異が生じる。ホルマリンによるその変性に加え、固定及び/又はその後の単離工程中の高度断片化により特殊なプライマーデザインが必要になる。従って、ホルマリン固定組織でのPCRによるRNA測定には大きな限界がある。RNA定量の確度を改善するためには、ホルマリンによる変性に反応しにくい代替方法が必要である(Bustin SA:Quantification of mRNA using real−time reverse transcription PCR (RT−PCR):trends and problems,J Mol Endocrinol 2002,29:23−39;Bustin SA,Nolan T:Pitfalls of quantitative real−time reverse−transcription polymerase chain reaction,J Biomol Tech 2004,15:155−160 Gunther EC,Stone DJ,Gerwien RW,Bento P,Heyes MP:Prediction of clinical drug efficacy by classification of drug−induced genomic expression profiles in vitro,Proc Natl Acad Sci U S A 2003,100:9608−9613)。
【0010】
定量的PCRは一般に75〜85bpアンプリコンサイズに限定されており、複数のプールされた遺伝子特異的プライマーが必要であるため、FFPE RNAの定量ではその性能は不良であった(Cronin M,Pho M,Dutta D,Stephans JC,Shak S,Kiefer MC,Esteban JM,Baker JB: Measurement of gene expression in archival paraffin−embedded tissues:development and performance of 92−gene reverse transcriptase−polymerase chain reaction assay,Am J Pathol 2004,164:35−42)。QPCRはbDNAアッセイよりも著しく高いRNA純度を必要とするため、bDNA法と比較して分析前にサンプルを処理するために多くの段階が必要である。脱ロウ後に、RNAをプロテイナーゼKで消化し、単離し、1〜2回DNAase Iで処理してDNA汚染を除去する必要がある。QPCRによるRNA定量に伴う第2の問題は該当mRNA配列をcDNAに変換するために逆転写段階が必要な点である。この酵素反応はホルマリンによる塩基修飾、二次mRNA構造及びRNA調製における不純物により妨げられる。逆転写を阻害する因子はFFPE組織ブロックにより異なる。PCR増幅段階に高温加熱段階を加えると、RNA塩基修飾を多少抑制できるが、多くのサンプルではこれらの修飾は不可逆的である。サンプルが古くなるほど損傷することが多く、平均QPCRシグナルの低下が>90%となるため、入力RNAを増やし、Ct値を35〜40まで上げる必要がある(Masuda N,Ohnishi T,Kawamono S,Monden M,Okubo K:Analysis of chemical modification of RNA from formalin−fixed samples and optimization of molecular biology application for such samples,Nucleic Acids Res 1999,27:4436−4443)。これらの全問題により、QPCRはFFPEサンプルに由来するRNAの定量方法として満足な方法ではなかった。
【非特許文献1】Lehmann U,Kreipe H: Real−time PCR analysis of DNA and RNA extracted from formalin−fixed and paraffin−embedded biopsies,Methods 2001,25:409−418
【非特許文献2】Bibikova M,Talantov D,Chudin E,Yeakley JM,Chen J,Doucet D,Wickham E,Atkins D,Barker D,Chee M,Wang Y,Fan JB:Quantitative gene expression profiling in formalin−fixed,paraffin−embedded tissue using universal bead arrays,Am J Pathol 2004,165:1799−1807
【非特許文献3】Masuda N,Ohnishi T,Kawamono S,Monden M,Okubo K: Analysis of chemical modification of RNA from formalin−fixed samples and optimization of molecular biology applications for such samples,Nucleic Acids Res 1999,27:4436−4443
【非特許文献4】Bustin SA:Quantification of mRNA using real−time reverse transcription PCR (RT−PCR):trends and problems,J Mol Endocrinol 2002,29:23−39
【非特許文献5】Bustin SA,Nolan T:Pitfalls of quantitative real−time reverse−transcription polymerase chain reaction,J Biomol Tech 2004,15:155−160
【非特許文献6】Gunther EC,Stone DJ,Gerwien RW,Bento P,Heyes MP:Prediction of clinical drug efficacy by classification of drug−induced genomic expression profiles in vitro,Proc Natl Acad Sci U S A 2003,100:9608−9613
【非特許文献7】Cronin M,Pho M,Dutta D,Stephans JC,Shak S,Kiefer MC,Esteban JM,Baker JB: Measurement of gene expression in archival paraffin−embedded tissues:development and performance of 92−gene reverse transcriptase−polymerase chain reaction assay,Am J Pathol 2004,164:35−42
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記に鑑み、包埋臨床組織サンプルから核酸を回収するためのより迅速で簡単な方法が必要である。有害な溶媒を使用せずにホルマリン固定パラフィン包埋サンプルから核酸を取得する方法を提供することが望ましい。より定量的で損傷の少ない核酸抽出法により、核酸分析の確度を増すことが望ましい。ターゲット分解を考慮するように分析物を調整する方法により効果が得られる。本発明は上記特徴及び以下の記載から自明となる他の特徴を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の方法は物理的に処理しにくいか又は分解している核酸サンプルの分析に伴う問題に対処するのに有用である。本方法は組織病理評価のために予め処理されたサンプルから良好な代表的試験材料を得るのに役立つ。本方法はより代表的な標準材料を提供することによりサンプル分析の確度と感度を増すことができる。ターゲット断片化に対する感度を増すように構成した本発明のオフセットbDNAアッセイによると、核酸が分解している場合にその状態を測定することができる。本方法は未知数の正常及び/又は異常細胞に由来する試験材料のmRNAコピー数の推定値を改善することができる。これらの技術は例えば正常及び/又は異数性細胞、ホルマリン固定細胞、パラフィン包埋細胞、老化臨床サンプル等に由来する試験材料の核酸分析を最適化するように併用することができる。
【0013】
本発明の方法は核酸測定の感度と確度を増加するために本発明の技術の併用実施を含む。例えば、(例えば、試験サンプルrDNA値をrDNA対細胞数の標準関数と比較することにより)試験サンプル中の細胞数を測定し、RNAアッセイの標準関数(例えば、分解in vitro RNA標準アッセイ入力に対するアッセイ出力−例えばオフセットbDNAアッセイにより測定したサンプル又は標準の分解)を作成し、RNAアッセイ標準関数を使用して試験サンプル中の試験mRNAの量を測定し、細胞数と試験mRNAの測定値に基づいて試験細胞中のmRNAコピー数を決定することにより、mRNAコピー数を正確に推定することができる。この方法は各種細胞及び組織型(例えばヒト、植物、又は動物に由来する例えば腫瘍細胞、細胞株、顕微鏡スライドからの細胞、1年を上回る臨床サンプル、新鮮な組織、新たに固定した細胞、新たに固定したパラフィン包埋細胞、ホルマリンで固定した細胞、パラフィン包埋細胞、正常及び/又は異数性細胞等)でmRNAコピー数を有効に測定することができる。
【0014】
本発明の方法の1態様では、疎水性媒体のマトリックスに包埋したホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)臨床サンプル等のサンプルから核酸を放出させるための迅速で簡単で定量的で確実な方法が提供される。一般的な側面では、疎水性成分と会合した細胞から核酸を採取する方法は、サンプルを懸濁する段階と、サンプルをインキュベートする段階と、サンプル及び疎水性成分から核酸を分離する段階を含むことができる。融点が40℃を上回る疎水性成分と会合した細胞又は組織サンプルを水溶液に懸濁することができる。細胞の2本鎖DNAに対して実質的に非変性条件下で40℃を上回る温度で懸濁液をインキュベートし、疎水性成分を溶解させ、核酸を細胞から水溶液中に放出させる。最後に、インキュベーション後に疎水性成分から水溶液を物理的に分離し、細胞から放出された核酸を採取することができる。
【0015】
この核酸放出又は可溶化方法は多くの細胞及び/又は組織サンプルで良好に機能することができる。例えば、本方法はDNA、分解核酸、RNA等の分析で有用な水性試験材料を調製するために使用することができる。本方法はホルマリン固定パラフィン包埋組織又は細胞等のロウを含有する臨床サンプルの核酸分析用試験サンプルを提供するために特に有用である。
【0016】
細胞又は組織の水溶液懸濁は適当な方法により実施することができる。例えば、顕微鏡スライド上の組織サンプルをエッペンドルフチューブ内にこそげ落とし、ボルテックスする。厚いサンプルや頑固なサンプルは例えば粉砕、細断、加圧、ダウンス型ホモジナイザーによる処理、微粉砕等により小粒子に分解することができる。水溶液は細胞及び組織を破砕し易くし、核酸の可溶化を助長し、及び/又は所期分析のために溶液を条件付けするための成分を含有することができる。例えば、水溶液(溶質を含有する水)はPEG、SDS、SSCバッファー、NaHPO4、EDTA、変性サケ精子DNA、2価カチオン、ホルムアミド、SSPEバッファー、ブロッキングプローブ、キャプチャーエキステンダー、ラベルエキステンダー、プレ増幅剤、ラベルプローブ、増幅用プローブ、増幅用マルチマー、プロテアーゼ、リパーゼ、界面活性剤、又はヌクレアーゼインヒビター、及び/又は同等成分を含有することができる。好ましい態様では、水溶液は場合により10μl/ml、50μl/ml、100μl/ml、150μl/ml、250μl/ml、500μl/ml、1mg/ml以上のプロテアーゼ(例えばプロテイナーゼK)を含有する。
【0017】
本方法のインキュベーションは所期分析に適した量及び濃度の所望核酸をサンプルから放出させるのに適した時間と温度で実施する。本発明の関連方法を使用すると、有意義な結果が得られるように分析を標準化及び正規化することができるので、多くの場合にはサンプルから全核酸を完全に放出させる必要がない。典型的な態様では、インキュベーションは約35℃〜約90℃、約45℃〜約95℃、約52℃〜約90℃、約60℃〜80℃未満、又は約65℃の温度で実施される。インキュベーション温度は主要サンプル疎水性成分の融点よりも少なくとも2〜3度高く、且つ懸濁液の条件下でサンプルDNAのTmよりも低いことが好ましい。インキュベーションは特に高温又はデリケートもしくは繊細なサンプルでは迅速にすることができる。インキュベーション時間は>20分間、又は約30分間〜約3日間以上、約1時間〜1日間、約3時間〜約18時間、又は12時間とすることができる。好ましい態様では、インキュベーションは午後に開始し、一晩続け、午前に分析することができる。本発明の方法は処理変数を補正できるため、多数のサンプル処理段階で多少の精度低下を許容できる。
【0018】
多くの態様では、水溶液及びインキュベーション条件は核酸変性条件(例えば、サンプルDNAの大部分を2本鎖形態から1本鎖形態に溶解させる条件)を含まない。変性条件としては当分野で周知の通り、溶液温度増加、高pH、及び高イオン強度が挙げられる。
【0019】
疎水性成分を水溶液又は懸濁液から分離するには、例えば単純な機械的(例えば単なる物理的)手段により実施することができる。化学的抽出(例えば有機相抽出)を使用してパラフィンをFFPEサンプルから分離するのが常法であったが、本発明者らは水溶液中の核酸回収が少なくとも同等でありながら、労力と危険を減らして試験サンプルを調製する疎水性成分の物理的分離(例えば、有機溶媒を使用しない機械的操作)を見いだした。疎水性成分は本発明の水溶液及びインキュベーション条件に暴露すると、(例えば疎水性相互作用により)自然分離する傾向がある。一般に、疎水性成分は水溶液と同一密度ではないので、例えば懸濁液の上又は下に疎水性層を形成することができる。これは遠心により加速又は低下させることができる。このような層は(例えば疎水性層を頂部から物理的にデカントするか、水層又は疎水性層を他方から吸引するか、層を相互にピペットで分離するか、固体又は半固体として水層から物理的に除去できるように疎水性成分を融点よりも低い温度で固化させることにより)各種物理的手段により水層から分離することができる。好ましい態様では、サンプルから疎水性成分バルクを分離するのに、インキュベーション段階前及び/又はインキュベーション段階後に有機抽出段階を使用しない。
【0020】
本方法により細胞又は組織から放出された核酸は任意数の核酸分析法の入力用として優れた試験サンプル材料となり得る。多くの場合には、水溶液中に放出された核酸は当分野で公知の各種アッセイにより検出するために固体支持体上に捕獲することができる。可溶化方法は一般に本明細書に記載する相補的方法と併用し、正確な定量を行うために有用であり得る。本方法で可溶化した核酸を更に精製するために、細胞溶解液成分による破砕に感受性のアッセイでは、当分野で公知の通り、分離した溶液をフェール抽出し、エタノール沈殿させることができる。好ましい態様では、有機抽出及び/又は変性段階を使用せずに(物理的疎水性成分分離により)分離した溶液を例えばbDNAアッセイにより分析する。放出された核酸溶液(一般に溶解液)は例えばbDNA分析、ノーザンブロット分析、サザンブロット分析、ポリメラーゼ連鎖反応、核酸シーケンシング、アガロースゲル電気泳動、ディファレンシャルディスプレイ法等の各種アッセイに良好なアッセイ入力材料を提供することができる。
【0021】
本発明の別の側面では、細胞又は組織のゲノム中で殆ど欠失又は複製されない反復DNAの量に基づいて溶解液中の相当試験細胞数を推定することができる。試験細胞数の測定方法は例えば、既知数の参照細胞から参照核酸サンプルを取得する段階と、参照サンプル中のリボソームDNAの量を定量する段階と、参照リボソームDNA量に対する参照細胞数の標準関数(例えば回帰分析により得られる標準曲線又は標準式)を提供する段階と、試験細胞から試験核酸サンプルを取得する段階と、試験サンプル中のリボソームDNAの量を定量する段階と、標準関数と試験リボソームDNA量に基づいて試験細胞数を測定する段階を含むことができる。
【0022】
本発明の方法により細胞数を測定するための試験細胞及び標準細胞は1種以上の任意型とすることができる。数測定を必要とする参照細胞又は試験細胞は例えば腫瘍細胞、細胞株からの細胞、顕微鏡スライドからの細胞、FFPE細胞、正常細胞、ポリプロイド細胞等とすることができる。所定態様では、試験細胞は肺腫瘍細胞又は結腸腫瘍細胞であった。他の態様では、参照核酸サンプルを提供する試験細胞は実質的に正常な核型をもつ。
【0023】
試験細胞数測定方法で正規化に好ましい反復DNAはリボソームDNAである。これらのDNAは高度に反復しており、転位、欠失又は挿入を生じにくい位置で複数の染色体に配置されている。従って、高度異数性細胞株でも一貫して正常数であることが判明した。より好ましい態様では、リボソームDNAは18S rDNA、5.8S rDNA及び/又は28S rDNAである。
【0024】
反復DNAは標準関数の決定のために例えば適切な任意技術(例えばbDNA分析、サザンブロット分析、ポリメラーゼ連鎖反応、アガロースゲル電気泳動等)により(例えば希釈系列で)定量することができる。結果を使用して試験サンプル結果と比較し、試験サンプル中の相当細胞数を決定する。例えば、試験細胞数の測定は試験細胞サンプルのリボソームDNA量を標準関数に入力することにより実施することができ、例えば細胞対rDNA比を含む式、分析ソフトウェアを搭載したコンピューター、又は標準曲線上の標準値との比較に試験リボソームDNA量を入力することができる。測定試験細胞数を使用し、他の分析の結果を細胞数に正規化することができ、例えばmRNAアッセイ結果を細胞当たりのコピーに正規化することができる。
【0025】
試験サンプル中の細胞数が分かっている場合には、既知細胞数と反復DNAに基づいて決定した標準関数を使用して可溶化効率を測定することもできる。例えば、可溶化溶解液中の既知試験細胞数を標準曲線から計算した試験細胞溶解液中の相当試験細胞数と比較することにより試験核酸抽出効率を測定することができる。
【0026】
本発明の別の側面では、分解in vitro転写(IVT)RNA標準曲線を使用して分解したRNAをより正確に定量することができる。例えば、試験サンプル中の細胞数を測定し、分解in vitro RNA標準アッセイ入力に対するRNAアッセイ出力の標準関数を作成し、標準関数を使用してRNAアッセイにより試験サンプル中の試験RNAの量を測定し、細胞数と試験RNAの測定量に基づいて細胞中のRNAのコピー数を決定することにより、mRNAコピー数を測定することができる。好ましい態様では、オフセットbDNAアッセイ(以下に記載)の結果に従って適当な分解IVT RNA標準を選択するか又は標準曲線の傾きを補正することができる。
【0027】
本発明の別の側面では、キャプチャーエキステンダーとラベルエキステンダーがターゲット核酸で相互にオフセットしているアッセイによりbDNAターゲット核酸の断片化レベルを測定することができる。例えば、(全長であるか又はある程度まで断片化しているかが分かっていないターゲット配列をもつ)ターゲット核酸の断片化は、1個以上のオフセットキャプチャーエキステンダープローブC3配列が各々核酸の配列に相補的であり、1個以上のオフセットラベルエキステンダーL1配列が全C3相補配列から5’又は3’側に少なくとも1ヌクレオチド塩基の間隔をあけて配置された位置の核酸の配列に相補的であるオフセットbDNAアッセイで核酸のサンプルを分析することにより検出することができる。このようなbDNAアッセイ構成では、核酸がC3及びL1相補配列間で断片化していない場合よりも核酸がC3及びL1相補配列間で断片化している場合のほうが発生可能なシグナルは弱くなる。例えば、核酸の有意部分が断片化形態である場合には発生可能なシグナルは弱くなる。
【0028】
多くの場合には、オフセットアッセイはキャプチャーエキステンダーとラベルエキステンダーを散在させた標準bDNAアッセイを使用してサンプルで適当なコントロールアッセイを実施することにより確度と信頼性を増すことができる。例えば、2個以上のコントロールキャプチャーエキステンダープローブC3配列が核酸の異なる位置の配列と相補的であり、1個以上のコントロールラベルエキステンダーL1配列が核酸配列の異なる位置の配列と相補的であり、コントロールL1配列の1個以上がコントロールC3配列の2個以上に相補的な位置間の位置の核酸と相補的である第2のbDNAアッセイで核酸のサンプルを分析することができる。オフセットアッセイ結果に対するコントロールアッセイ結果の比は核酸が断片化していない場合よりも核酸が断片化している場合のほうが大きくなる。
【0029】
オフセットアッセイはラベルエキステンダーがターゲット核酸のキャプチャーエキステンダーからオフセットされている度合が大きいほど感度を高くすることができる。好ましい態様では、オフセットC3配列に相補的な核酸配列は核酸ヌクレオチドの75%以上の間隔をあけてオフセットL1配列に相補的な核酸配列から分離されている(即ち、全長ターゲット核酸に対して最近接LE及びCE部位間の間隔はターゲット核酸長の少なくとも75%となる)。CE/LEスペーシングを言い換えると、オフセットラベルエキステンダーL1配列は全C3相補配列から5’及び/又は3’側に少なくとも25ヌクレオチド塩基の間隔をあけて配置された核酸の配列に相補的であることが好ましい。好ましい態様では、2個のC3相補配列間にL1相補配列は存在しない。
【0030】
オフセットbDNAアッセイ法の別の側面では、例えば、アッセイバックグラウンドシグナルを低減するために、LE及びCE相補配列間のスペースでターゲットの配列に相補的な配列をもつブロッキングプローブがハイブリダイゼーション中に加えられる。
【0031】
オフセットbDNAアッセイの出力とコントロールに対する比はサンプルの状態を特徴付けることができる。例えば、オフセットアッセイシグナル、又はコントロールに対する比をターゲット核酸配列の平均長と相関させることができる。こうして得られた断片化レベルは例えばアッセイ標準を選択するため又は分解IVT RNA標準に対するRNA定量用標準関数を選択するために使用することができる。
定義
【0032】
本欄及び以下に特に定義しない限り、本明細書で使用する全科学技術用語は本発明が属する分野の当業者に通常理解されている通りの意味をもつ。
【0033】
本発明を詳細に記載する前に、本発明は特定方法又は分析法に限定されず、当然のことながら種々のものに適用できると理解すべきである。同様に、本明細書で使用する用語は特定態様のみの記載を目的とし、限定的でないことも理解すべきである。本明細書と特許請求の範囲で使用する単数形はそうでないことが内容から明白である場合を除き、複数形も含む。従って、例えば「成分」と言う場合には2個以上の成分の組合せを含むことができ、「核酸」と言う場合には核酸混合物を含むことができ、他の用語についても同様である。
【0034】
本明細書に記載する方法及び材料の多数の類似、改変又は等価方法及び材料を使用し、過度の実験を要することなしに本明細書に基づいて本発明を実施できるが、本明細書には多数の好ましい材料と方法を記載する。本発明の記載及び特許請求の範囲において、以下の用語は以下の定義に従って使用する。
【0035】
本明細書で使用する「約」なる用語は所与量の値が記載値の±10%、又は場合により記載値の±5%、又は所定態様では記載値の±1%の範囲内であることを意味する。
【0036】
「ポリヌクレオチド」なる用語(及び「核酸」なる同義語)はヌクレオチド鎖に対応させることができるモノマー単位の任意物理的連鎖を意味し、例えばヌクレオチドポリマー(例えば典型的DNA又はRNAポリマー)、ペプチド核酸(PNA)、修飾オリゴヌクレオチド(例えば生物RNA又はDNAには一般的でないヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド、例えば2’−O−メチル化オリゴヌクレオチド)等が挙げられる。ポリヌクレオチドのヌクレオチドはデオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド又はヌクレオチド類似体のポリマーとすることができ、天然でも非天然でもよく、置換されていなくても、修飾されていなくても、置換されていても、修飾されていてもよい。ヌクレオチドはホスホジエステル結合、又はホスホロチオエート結合、メチルホスホネート結合、ボラノホスフェート結合等により結合することができる。ポリヌクレオチドは更にラベル、クエンチャー、ブロッキング基等の非ヌクレオチドエレメントを含むことができる。ポリヌクレオチドは例えば1本鎖でも2本鎖でもよい。
【0037】
「ポリヌクレオチド配列」又は「ヌクレオチド配列」とは状況に応じてヌクレオチドポリマー(オリゴヌクレオチド、DNA、RNA、核酸等)又はヌクレオチドポリマーを表す文字列である。任意特定ポリヌクレオチド配列から所与核酸又は相補的ポリヌクレオチド配列(例えば相補的核酸)を決定することができる。
【0038】
2個のポリヌクレオチドは例えば該当アッセイ条件下で会合して安定な2本鎖を形成するときに「ハイブリダイズ」する。核酸は水素結合、溶媒排除、塩基スタッキング等の種々の十分に特性決定された物理化学的力によりハイブリダイズする。核酸ハイブリダイゼーションの詳しい手引きはTijssen(1993)Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology−Hybridization with Nucleic Acid Probes part I chapter 2,“Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid probe assays,”(Elsevier,New York)に記載されている。
【0039】
「相補的」なる用語は例えば該当アッセイ条件下でその「相補体」と安定な2本鎖を形成するポリヌクレオチドを意味する。一般に、相互に相補的な2個のポリヌクレオチド配列はミスマッチ(ミスマッチ塩基対)が塩基の約20%未満、塩基の約10%未満、好ましくは塩基の約5%未満、1カ所であり、より好ましくはミスマッチがない。
【0040】
「キャプチャーエキステンダー」ないし「CE」とは該当核酸及びキャプチャープローブとハイブリダイズすることが可能なポリヌクレオチドである(又はこのようなヌクレオチドを含む)。キャプチャーエキステンダーは一般にキャプチャープローブに相補的な第1のポリヌクレオチド配列C−1と、該当核酸のポリヌクレオチド(ターゲット)配列に相補的な第2のポリヌクレオチド配列C−3をもつ。配列C−1及びC−3は一般に相互に非相補的である。キャプチャーエキステンダーは1本鎖であることが好ましい。
【0041】
「キャプチャープローブ」ないし「CP」とは少なくとも1個のキャプチャーエキステンダーとハイブリダイズすることが可能であり、固体支持体、空間的に指定可能な固体支持体、スライド、粒子、マイクロスフェア、ビーズ等と(例えば共有又は非共有的、直接又はリンカー(例えばストレプトアビジン等)を介して)緊密に結合されるポリヌクレオチドである。キャプチャープローブは一般に少なくとも1個のキャプチャーエキステンダーのポリヌクレオチド配列C−1に相補的な少なくとも1個のポリヌクレオチド配列C−2を含む。キャプチャープローブは1本鎖であることが好ましい。
【0042】
「ラベルエキステンダー」ないし「LE」とは該当核酸及びラベルプローブシステムとハイブリダイズすることが可能なポリヌクレオチドである。ラベルエキステンダーは一般に該当核酸のポリヌクレオチド配列に相補的な第1のポリヌクレオチド配列L−1と、ラベルプローブシステムのポリヌクレオチド配列に相補的な第2のポリヌクレオチド配列L−2をもつ(例えば、L−2は増幅用マルチマー、プレ増幅剤、ラベルプローブ等のポリヌクレオチド配列に相補的であり得る)。ラベルエキステンダーは1本鎖であることが好ましい。
【0043】
「ラベル」は(例えば、検出可能なシグナルを提供することにより)分子の検出を助長する部分である。本発明で一般的なラベルとしては蛍光、発光、光散乱、及び/又は比色ラベルが挙げられる。適切なラベルとしては酵素及び蛍光部分に加え、放射性核種、基質、補因子、阻害剤、化学発光部分、磁性部分等が挙げられる。このようなラベルの使用を教示している特許としては米国特許第3,817,837号;3,850,752号;3,939,350号;3,996,345号;4,277,437号;4,275,149号;及び4,366,241号が挙げられる。多数のラベルが市販されており、本発明で使用することができる。
【0044】
「ラベルプローブ」ないし「LP」とは検出可能なシグナルを直接又は間接的に提供するラベルを含む(か又は、場合によりこのようなラベルと結合するように構成された)1本鎖ポリヌクレオチドである。ラベルプローブは一般に増幅用マルチマーの反復ポリヌクレオチド配列M−2に相補的なポリヌクレオチド配列を含むが、bDNAアッセイで増幅用マルチマーを使用しない場合には、ラベルプローブは例えばラベルエキステンダーと直接ハイブリダイズすることができる。
【0045】
「ラベルプローブシステム」は1個以上のラベルを含む1個以上のポリヌクレオチドと、各々ラベルエキステンダーとハイブリダイズすることが可能な1個以上のポリヌクレオチド配列M−1を含む。ラベルは直接又は間接的にシグナルを提供する。ポリヌクレオチド配列M−1は一般にラベルエキステンダーの配列L−2に相補的である。1個以上のポリヌクレオチド配列M−1は場合により同一配列又は異なる配列である。ラベルプローブシステムは複数のラベルプローブ(例えば複数の同一ラベルプローブ)と増幅用マルチマーを含むことができ、場合により更にプレ増幅剤等を含むか、又は場合により例えばラベルプローブのみを含む。
【0046】
本明細書で使用する「水溶液」とは該当核酸を溶液に保持するのに適した水溶液(1種以上の溶質を含有する水)を意味する。例えば、水溶液は核酸を溶液に溶解及び保持するのに適したpHとイオン強度をもつことができる。本発明の水溶液は場合により細胞及び組織から核酸を放出するのに有用な成分(例えば、pH緩衝剤、塩類、界面活性剤及び/又はプロテアーゼ)を含有することができる。水溶液は場合により核酸アッセイ又はハイブリダイゼーションの成分として有用な成分(例えば、ホルムアミド、塩化ナトリウム−クエン酸ナトリウム(SSC)バッファー、核酸プローブ等)を含有する。
【0047】
細胞又は組織サンプルと会合した「疎水性成分」とは実質的に非水溶性(例えば純水溶解度1%未満)の化合物である。サンプルと会合した典型的な疎水性成分は脂質、脂肪、油類、炭化水素、ロウ、疎水性膜成分等である。本発明の所定態様では、疎水性成分はパラフィン、例えば臨床サンプル包埋用ロウである。
【0048】
本明細書で使用する「物理的に分離する」とは疎水性成分層を物理的手段により水溶液層から分離することを意味する。サンプルの水性懸濁液からの疎水性成分の有機抽出は例えばFFPEサンプルからの疎水性成分の化学的分離とみなし、有機抽出相が残りの水相から除去される時点でも物理的分離とはみなさない。物理的分離は一般に例えば捕捉、圧出、吸込み、吸引、注出、吐出、濾過、吸着、吸収、吸出、及び/又は同等手段により(固体、半固体又は液体状態の)疎水性成分を水溶液から除去するための機械的方法である。分離は疎水性成分を水溶液から除去すること又は水溶液を疎水性成分から除去することを含むことができる。
【0049】
本明細書で使用する「標準関数」とは例えば既知アッセイ入力と得られる出力等の2個のアッセイパラメーター間の関係を表す関数又は関数の表現法である。出力は未加工データ出力又は出力から誘導される値(例えば分析物の分子数又は濃度)とすることができる。標準関数とその表現法(例えば標準曲線)は当分野で周知である。標準関数は代数関数(例えば直線式)の形態でもよいし、X−Y図表上の(例えば回帰分析により得られる)標準曲線の形態で提供することもできる。標準関数は比、定数、又は(例えばコンピューターソフトウェア形態の)アルゴリズムとして表すこともできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
本発明は細胞及び組織から核酸を採取及び定量する方法に関する。例えばホルマリン固定とパラフィン包埋により予め処理した細胞を非変性条件下で高温の均質化用水溶液に懸濁し、パラフィン材料から分離した溶解液中に細胞から核酸を放出させる。リボソームDNA参照に基づく正規化により、元の細胞数と核酸抽出効率を正確に測定することができる。適当に分解したin vitro転写(IVT)RNA標準材料で正規化した分析を使用して細胞当たりのmRNAコピー数をより正確に測定することができる。例えば、以下に記載するように、キャプチャー部位とラベル部位をRNAターゲットに沿って分散させたコントロールアッセイからのbDNAシグナルを、ターゲットRNAの他端のラベル部位から分離したターゲットRNAの一端にキャプチャー部位を配置する試験アッセイのシグナルと比較することにより、サンプルRNA分解を推定することができる。
【0051】
包埋臨床サンプルにおける従来技術の核酸測定方法はサンプルから核酸を可溶化する前に有機化学抽出(脱ロウ)を繰返すことが必要であった。本発明はこのような抽出段階を全く不要にする。例えば、ブロックからの60〜100ミクロン(25〜250mm2)プール組織切片又は未切断組織10mg当たりプロテイナーゼK(0.3mg/ml)補充Homogenizing Solution(Panomics Fremont CA)300μLを加えることにより、パラフィンブロック中のこそげ落とした組織切片又は塊を直接可溶化し、65℃で一晩消化させればよい。その後、65℃で一晩プロテイナーゼK消化中にパラフィンが組織ホモジネートから分離し、多量の場合には、水性ホモジネートの上に明白な層を形成する。液体パラフィンをピペッターで物理的に除去するか、又は遠心中に室温で固化させて穴を開け、可溶化材料(溶解液)を例えば吸引により疎水性成分の下から除去すればよい。水性溶解液を新しいマイクロ遠心管に移し、すぐに使用するか又は後期使用に備えて−80℃で保存する。本発明はホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)サンプルからのRNA又はDNAの定量の確度を有意に改善し、定量を簡単にする。
【0052】
FFPEサンプルの細胞等の細胞による示差的遺伝子発現試験における主要な問題は遺伝子不均一性を如何に正規化するかという点である。遺伝子転写産物数(mRNAコピー)は一般に細胞当たりのコピー数として表される。残念ながら、細胞カウントは多くのFFPE組織又は細胞スライドには実際的ではない。多くの場合、コピー数計算はサンプルから回収された全DNA又は全RNAに基づいて正規化されている。しかし、全細胞DNA及びRNA含量は例えば腫瘍異数性と共に増減し得る(Jacques B de Kok,Rian W Roelofs,Belinda A Giesendorf,Jeroen L Pennings,Erwin T Waas,Ton Feuth,Dorine W Swinkles and Paul N Span,Laboratory Investigation(2005)85,154−159)。従って、FFPEサンプル中の相当細胞数を正確に定量する方法は不明であった。本発明者らは腫瘍異数性に左右されないことが確認された1又は複数の遺伝子に基づいて正規化する方法が有望であることを見いだした。検出感度を増すためにゲノム内の複数コピーとして遺伝子を表すことが好ましい。更に、任意1個の染色体上の遺伝子の一部の増減が総細胞数測定にあまり影響を与えないように、遺伝子は安定しており、複数の染色体に分布していることが好ましい。
【0053】
ヒトゲノムの約30%は反復配列から構成され(Britten,R.J.& Kohne,D.E.(1968)Science 161,529−540)、その半数以上がゲノム当たり105回以上反復している。これらの反復配列には長いタンデムアレー状のものと、構造遺伝子を含む低頻度配列間に散在しているものがある。多数のヒト散在性反復DNA配列ファミリーが同定されている。最大のファミリーは各々約300ヌクレオチド長の関連配列3×105コピーから構成され、殆どのメンバーは制限エンドヌクレアーゼAluIにより開裂可能な部位をもつ(Rubin,C.M.,Houck,C.M.,Deininger,P.L.,Friedmann,T.& Schmid,C.W.1980 Nature 284,372−374)。他の短い低頻度散在性反復配列(SINES)もDeiningerら(Deininger,P.L.,Jolly,D.J.,Rubin,C.M.,Friedmann,T.& Schmid,C.W.(1981)J.Mol.Biol.151,17−33)及びMiesfeldら(Miesfeld,R.,Krystal,M.& Arnheim,N.(1981)Nucleic Acids Res.9,5931−5947)により報告されている。Adamsら(Adams,J.W.,Kaufmann,R.E.,Kretschmer,P.J.,Harrison,M.& Nienhuis,A.W.(1980)Nucleic Acids Res.8,6113−6127)はゲノム当たり4×103回程度の頻度の平均6,400ヌクレオチド長の長い散在性反復DNA配列(LINES)ファミリーを報告している。これらの反復DNA配列は多数の生物のゲノムで組換え率を変化又は増加させることが知られており(Jelinek and Schmid 1982;Hardman 1986;Vogt 1990)、従って、散在性反復DNAはゲノム中に分散した反復単位から構成される。このような反復単位間の誤対合は欠失や重複の多くの原因となることが示されている(Smita M.Purandare,and Pragna I.Patel,1997 7:773−786 Genome Res.)ため、FFPE組織サンプル中の細胞数を測定するために使用するのは実際的でないことが多い。
【0054】
5.8S、18S及び28SリボソームRNA(rRNA)遺伝子(rDNA)はヒト二倍体ゲノム当たり〜800コピー存在しており、5本の末端動原体型染色体13、14、15、21、22のP12ショートアームにクラスター形成しており、46染色体の二倍体ゲノム当たり10クラスターとなり、合計6.4×109bpであるが、これらの遺伝子を使用するほうが実際的である(Worton,R.G.,Sutherland,J.,Sylvester,J.E.,Willard,F.H.,Bodrug,S.,Dube,I.,Duff,C.,Kean,V.,Ray,N.P.and Schmickel,R.D.(1988),Science,239,64−68)。各リボソーム遺伝子は、リボソームの18S、5.8S及び28S rDNAサブユニットに高度に保存された遺伝子を含む13.3kb転写領域と、30kb非転写スペーサー(NTS)の2つの領域に分けることができる43kb反復単位の一部である(Gonzelez,L.I.,Wu,S.,Li,W.,Kuo,A.B.and Svlvester,E.J.(1992)Nucleic Acids Res.,20,5846−5847)。反復単位クラスターは〜80個の反復単位の頭−尾アレーから構成される(Sakai,K.,Ohta,T.,Minoshima,S.,Kudoh,J.,Wang,Y.,De Jong,J.P.and Shimizu,N.(1995))。
【0055】
NCBIは調査者らがその分子細胞遺伝学的データを共有及び比較できるような公共プラットフォームを提供するためにSKY/M−FISH及びCGHデータベースを開設した。SKY/比較ゲノムハイブリダイゼーションデータベースウェブサイトでは数百種の腫瘍の核型を確認することができる。このデータベースはNational Cancer InstituteによるCancer Chromosome Aberration Projectの一環である(Kirsch,I.R.,Green,E.D.,Yonescu,R.,Strausberg,R.,Carter,N.,Bentley,D.,Leversha,M.A.,Dunham,I.,Braden,V.V.,Hilgenfeld,E.,Schuler,G.,Lash,A.E.,Shen,G.L.,Martelli,M.,Kuehl,W.M.,Klausner,R.D.,and Ried,T.Nat.Genet.,24:339−340,2000)。更に、細胞株核型の代表的な画像を含む59種の細胞株の全核型をインターネットで確認することができる(Anna V.Roschke,Giovanni Tonon,Kristen S.Gehlhaus,Nicolas McTyre,Kimberly J.Bussey,Samir Lababidi,Dominic A.Scudiero,John N.Weinstein,2 and Ilan R.Kirsh CANCER RESEARCH 63,8634−8647,2003)。
【0056】
個々の腫瘍核型(肺癌、結腸癌、乳癌等)と59種の細胞株核型をそのリボソームDNA含量について検討した後、本発明者らはリボソームDNA遺伝子含量が一次腫瘍ではほんの僅かしか変動しないが、その一因はリボソーム遺伝子が5本の末端動原体型染色体のP12ショートアームでクラスター形成しており、従って、1本のショートアームの増減は正常組織リボソーム遺伝子含量と10%しか相違しないためであると判断した。各細胞株及び腫瘍の倍数性及び全DNAは変動するが、リボソームDNA数は変動が少ないので、リボソームDNAによる正規化を使用すると、より正確な細胞数予想値が得られることに気付いた。
【0057】
本発明の別の側面では、同様に分解したRNA標準に従う正規化により、例えば予め顕微鏡スライドに包埋した細胞のmRNAコピー数を高確度で測定することができる。包埋細胞に由来する核酸の均質化後に分離した溶液中の相当細胞数は反復DNA(例えばリボソームDNA)の量に対する細胞数の標準関数(例えば標準曲線)に基づいて決定することができる。mRNAの量は例えばRNAアッセイ(例えばbDNA)出力に対する分解IVT RNAの標準曲線に基づいて核酸溶液で測定することができる。このようなコピー数測定の確度は、本明細書に記載するように、反復DNAデータからの抽出効率と分解RNA曲線によるmRNA正規化を考慮することにより改善することができる。
【0058】
本発明の多くの方法では、bDNA法が好ましい核酸定量法である。bDNA法はRNAの定量におけるQPCRの問題の多くを回避するという利点がある。実際に、bDNAアッセイのハイブリダイゼーション段階はRNAのホルマリン修飾により助長することができる。更に、このアッセイは酵素活性を必要とせず、ハイブリダイゼーションに依存するので、QPCRで逆転写酵素とDNAポリメラーゼの活性を低下させる不純物がこの分岐連鎖アッセイでは問題とならない。RNA分解及び断片化の問題を解決するために、ユニークなプローブデザインアプローチがbDNAアッセイ用に開発されている(Wen Yang,Botoul Maqsodi,Yunqing Ma,Son Bui,Kimberly L.Crawford,Gary K.McMaster,Frank Witney,and Yuling Luo,Direct quantification of gene expression in homogenates of formalin−fixed,paraffin−embedded tissues Biotechniques,Vol.40,No.4(2006),pp481−486;Warrior U,Fan Y,David CA,Wilkins JA,McKeegan EM,Kofron JL,Burns DJ:Application of QuantiGene nucleic acid quantification technology for high throughput screening,J Biomol Screen 2000,5:343−352;Bushnell S,Budde J,Catino T,Cole J,Derti A,Kelso R,Collins ML,Molino G,Sheridan P,Monahan J,Urdea M:ProbeDesigner:for the design of probesets for branched DNA(bDNA)signal amplification assays,Bioinformatics 1999,15:348−355)。本発明の多くの方法は問題のあるサンプルに関するbDNA分析、及び他の定量的核酸アッセイを改善する手段を提供する。
FFPE組織サンプルからの核酸採取
【0059】
細胞及び組織に由来する核酸について高感度の定量的で確実なアッセイ結果を得るためには、物理化学的干渉物質を実質的に含まない有用な量の核酸を回収することが重要である。この問題は疎水性防腐剤やロウ状支持マトリックスと会合したパラフィン包埋臨床サンプル等のサンプルで特に難題となり得る。本発明では、例えばサンプルを小寸法の粒子に分解し、プロテアーゼを含有する適当な溶解用溶液に粒子を懸濁し、疎水性成分の融点よりも高い温度で懸濁液をインキュベートして核酸を水相中に放出させると共に別個の疎水性成分相を生成し、水相を疎水性相から分離することにより、疎水性サンプル成分から細胞及び組織内容物を確実に定量的に分離できることが判明した。
細胞又は組織サンプルの小粒子の獲得
【0060】
細胞又は組織サンプルが小粒子又は表面積対体積比の大きいシート状でない場合には、核酸を比較的定量的で適時に水溶液中に抽出できるようにサンプルを小片に分解することが一般に有益である。サンプルからの核酸回収量を増加するために当分野で公知の適当な任意方法を使用して、乾燥細胞バルク、包埋組織、ホルマリン固定パラフィン包埋細胞又は組織、顕微鏡スライドに保存された臨床サンプル等のサンプルを微粉末又はペーストに分解することができる。
【0061】
例えば、本発明の方法により細胞及び組織から核酸を放出するのに十分に適した粒度までサンプルを細断、粉砕、微粉砕、スクラッピング、ダウンス型ホモジナイザーによる処理、均質化、剪断、及び/又は同等方法で処理することができる。例えば、平均粒径1mm未満、0.1mm未満、10μm未満、1μm未満、又はそれ以下の粒子にサンプルを分解することができる。好ましい態様では、細胞の体積の約100倍、細胞の体積の10倍、又はほぼ細胞の寸法の粒子までサンプルを分解する。
【0062】
サンプルは液体マトリックスの存在下又は不在下で適当な寸法まで物理的及び/又は化学的に分解することができる。液体マトリックスは後期操作及び/又は分析段階に導入するのに適した成分を含有する水溶液とすることができる。例えば、液体マトリックスは酵素反応又はストリンジェント核酸ハイブリダイゼーションに適した環境を提供することができる。
粒子の水溶液懸濁
【0063】
溶解液を形成する溶液にサンプル細胞から核酸を放出する処理のためにサンプル粒子を水溶液に加える。水溶液は核酸を溶解するための水程度の単純なものとすることができる。一般に、水溶液は核酸の溶解度を増し、核酸の放出を妨げる細胞/組織構造を崩壊させ、及び/又は核酸の分析に適した環境を提供する成分を含有する。
【0064】
水溶液は後期分析操作及び/又は保存条件に有用な成分を含有することができる。例えば、水溶液は核酸ハイブリダイゼーションバッファーの成分(例えばPEG、SDS、SSCバッファー、NaHPO4、EDTA、変性サケ精子DNA、ホルムアミド、及びSSPE等)を含有することができる。水溶液は例えばブロッキングプローブ、キャプチャーエキステンダー、ラベルエキステンダー、プレ増幅剤、ラベルプローブ、増幅用プローブ、増幅用マルチマー等のbDNA成分を含有することができる。多数のホルマリン処理又はパラフィン包埋サンプルから核酸を放出するための好ましい態様では、水溶液はプロテアーゼ、リパーゼ、界面活性剤、又はヌクレアーゼインヒビターの1種以上を含有することができる。
【0065】
サンプルを小粒子に分解しながらサンプル粒子を均質化用水溶液に懸濁することができる。例えば、サンプルを所望水溶液の存在下で粉砕、微粉砕又はダウンス型ホモジナイザーで処理することができる。あるいは、サンプルを例えば乾燥粉砕し、粒子サイジング後に水溶液に移してもよい。あるいは、粒子を例えば遠心するか又は粒子サイジングに使用した液体マトリックスから濾過し、(例えば遠心又は濾過後に透析、透析濾過、再懸濁等により)核酸を懸濁及び放出するための所望水溶液に交換してもよい。
【0066】
サンプル粒子を水溶液に懸濁し、核酸を放出する条件に粒子を暴露することができる。懸濁は例えば撹拌、ダウンス型ホモジナイザーによる処理、ボルテックス、転倒、混合、振盪、又は単に粒子を溶液に導入することにより実施することができる。混合物は粒子懸濁液として出発することが多いが、サンプル材料の大半又は全部が一般に懸濁及びインキュベーション処理の終了までに溶液又は疎水性相となる。
【0067】
好ましい態様では、水溶液は核酸の溶媒であり、所期核酸アッセイに適したアッセイ溶液である。例えば、水溶液は核酸と固体支持体(例えばブロッティング膜)の結合又は核酸と1個以上の核酸ターゲットもしくはプローブのストリンジェントハイブリダイゼーションに適したpH、イオン強度、粘度、界面活性剤、ブロッキング剤等の条件を提供することができる。
【0068】
多くの場合には、1種以上のプロテアーゼを均質化用水溶液に加えることが望ましい。多くの場合に有意量の所望核酸が細胞及び組織の蛋白質及び蛋白質マトリックスに取り込まれる。プロテアーゼはこれらの蛋白質を破砕するのに役立ち、核酸を放出するのに役立つ。好ましい態様では、プロテアーゼは例えば>50μg/ml、100μg/ml、150μg/ml、200μg/ml、300μg/ml、500μg/ml、又はそれ以上の濃度のプロテイナーゼKである。
懸濁液のインキュベーション
【0069】
サンプルの水溶液懸濁液は1種以上のサンプル疎水性成分の融点以上でインキュベートすることができる。インキュベーションにより疎水性成分が溶解してサンプル材料から放出され、細胞及び/又は組織構造を崩壊し、該当核酸を含有する水性溶解液を形成することができる。
【0070】
サンプルの疎水性成分としては細胞又は組織サンプルに天然に存在するか又は存在しない脂質、脂肪及び/又は油類が上げられる。臨床サンプルに由来する核酸の分析で一般に最大の問題となる疎水性成分はサンプルの防腐、操作、及び/又は保存を助長するためにサンプルに添加された防腐剤と包埋用組成物である。本発明の方法で使用されるサンプルに関して一般に問題となる疎水性成分はパラフィン包埋用ロウ等の細胞及び組織包埋用媒体である。
【0071】
懸濁液のインキュベーションはサンプルのゲノムDNAに対して非変性条件下で実施することが好ましい。温度、イオン強度、pH、2価カチオン濃度、ホルムアミド濃度等の当分野で周知の条件はサンプル中の主要DNAを変性(溶解)させる条件よりも有意に低い条件とすることができる(Rapley,R.and Walker,J.M.編,Molecular Biomethods Handbook(Humana Press,Inc.1998)参照)。例えば、DNA−DNA2本鎖のTmは下式:
Tm(℃)=81.5℃+16.6(log10M)+0.41(%G+C)−0.72(%f)−500/n
[式中、Mは1価カチオン(通常はNa+)のモル濃度であり、(%G+C)はグアノシン(G)及びシトシン(C)ヌクレオチドの百分率であり、(%f)はホルムアミドの百分率であり、nはハイブリッドのヌクレオチド塩基数(即ち長さ)である]を使用して推定することができる。TmはカチオンがDNA2本鎖形成に及ぼす安定化作用により溶媒のイオン濃度が増加すると共に上昇する。成分1本鎖よりも2本鎖DNAに多くのカチオンが結合する。カチオンによりTmに種々の作用がある。最も一般的な1価カチオンはNa+であるが、Tmの観点から、ナトリウムとカリウムは機能的に等価である。2価カチオン(例えばMg++)もDNAハイブリッドを安定化する(Tmを上昇させる)が、その作用は1価カチオンと定量的に著しく相違する。pHが上昇すると、DNA鎖間の電荷反発力も増すので、Tmは低下する。好ましい態様では、可溶化中のインキュベーション温度は懸濁液中のサンプルのDNAのTmよりも少なくとも2℃、5℃、又は10℃低い。
【0072】
懸濁液はサンプル中に存在する1種以上の疎水性成分の融点よりも高い温度でインキュベートすることができる。例えば、懸濁液は約40℃〜約100℃、約41℃〜約95℃、約45℃〜約90℃、約50℃〜約80℃、約60℃〜約70℃、又は約65℃の温度でインキュベートすることができる。好ましいインキュベーション温度はサンプル中の最高融点の疎水性成分又は最も多量に存在する疎水性成分の融点よりも少なくとも高い。好ましいインキュベーション温度は更に溶液中のプロテアーゼ等の酵素の所望活性を補助する温度である。パラフィン包埋臨床サンプルでは、融点は鎖長と精製度に応じて例えば約43℃〜71℃、より一般には52℃〜64℃とすることができる。大半の包埋臨床サンプルは温度65℃の水溶液から容易に溶解分離するパラフィンを含むことが判明した。
【0073】
サンプル懸濁液は所望分析を実施するために十分な量の核酸を放出するのに十分な時間インキュベートすることができる。時間は例えば組織中の結合繊維の量、インキュベーション温度、プロテアーゼの活性、パラフィン存在量、界面活性剤の存在量と種類、物理的因子(例えば撹拌)の存在、所望核酸の感受性(及び分解性ヌクレアーゼ酵素及び/又はその阻害剤の有無)、pH、イオン強度等により変えることができる。懸濁液インキュベーション時間は例えば約30分未満〜5日間、3時間〜3日間、約6時間〜約2日間、約9時間〜約1日間、又は約12時間(例えば一晩)とすることができる。本発明の方法によると、一晩インキュベーションで約90%の高収率の核酸放出を達成できることが判明した。
疎水性成分から水溶液の物理的分離
【0074】
本発明の方法では、疎水性成分は水溶液によりはねかえされるので、本発明の溶液及びインキュベーション条件の作用下で自己分離する傾向がある。更に、疎水性成分は一般に水溶液と異なる(例えば低い)密度をもつので、例えば本発明の方法によりサンプルから放出されると、水溶液上に浮上する傾向がある。疎水性成分は残りの懸濁液から分離されると、水溶液中に残存するサンプル成分から物理的に分離することができる。
【0075】
場合により、疎水性成分は単にインキュベーション容器の頂部から吸引することにより、インキュベーション後に放出された核酸を含有する溶解液水溶液から分離することができる。あるいは、インキュベートした懸濁液を疎水性成分の融点よりも低い温度まで冷却し、固体として機械的に除去するか、又は溶解液を効率的にデカントもしくはその下部から吸引することができる。
【0076】
インキュベートした懸濁液を密度の異なる別々の層に遠心分離すると有用なことが多い。例えば、インキュベートした懸濁液を1000×g〜約20,000×gで1分間〜約1時間遠心し、懸濁液を例えば下部細胞/組織破片層と、中間溶解液層と、上部疎水性成分層に分離することができる。このような遠心は微小脂質球のコロイド又は懸濁液の形態であり得る疎水性成分をより離散的でより定量的に分離するという利点がある。遠心によると、例えば化学抽出法に頼らずに日常的な液体操作法により容易に除去可能な清澄化溶解液層等の不連続層が得られる。
【0077】
核酸を含む可溶化細胞/組織成分を含有する水溶液の溶解液は当分野で公知の他の方法により疎水性成分及び細胞破片から分離することもできる。例えば、インキュベートした懸濁液を適当な材料と細孔寸法の膜で濾過することができる。破片及び/又は固化した疎水性成分をフィルター膜に保持することができ、清澄化溶解液は膜を通過する。湿潤疎水性膜は疎水性反発力により疎水性成分を保持しながら、溶解液を通過させることができる。疎水性膜は疎水性成分を吸着保持しながら、溶解液を通過させることができる。
【0078】
所定態様では、懸濁液のインキュベーション中にサンプルから分離された疎水性成分をキシレン又はフェノール抽出等の有機抽出(化学的分離)で除去することができる。好ましい態様では、疎水性成分の分離に有機抽出段階は不要である。例えば溶解液をbDNAアッセイで使用する場合にはこのケースが多い。
【0079】
本発明の方法によりサンプルから得られた溶解液は任意数の核酸アッセイ法による分析に適合可能な試験材料となる。多くの場合には、水溶液成分と分離法の賢明な選択の結果として、bDNA分析、ノーザンブロット分析、サザンブロット分析、ポリメラーゼ連鎖反応、分光分析法、蛍光分析法、核酸シーケンシング、アガロースゲル電気泳動等のアッセイに直接入力可能なサンプルが得られる。他の場合には、例えばバッファー交換法又はバッファー、基質等の添加により溶解液を必要に応じて特定アッセイに対応するように調整することができる。FFPE溶解液の場合には、例えば本発明の下記方法を使用してサンプル抽出効率及び/又は分析物分解の正規化によりアッセイ結果の確度を増すことができる。
マルチコピーDNA標準に基づく核酸定量
【0080】
臨床サンプル、特に組織サンプル又は包埋サンプルから細胞溶解液を調製する場合には、その内容物を溶解液中に放出した細胞数がはっきりしない場合がある。全DNA存在量に従って溶解液回収量を正規化することは知られているが、この測定は例えば各種細胞間のDNA含量の不一致により誤差を生じる可能性がある。本発明者らは、各種染色体間に分散し、好ましくは末端動原体型染色体のショートアームに位置する所定の反復遺伝子を使用すると、細胞株や腫瘍細胞等の所定の異数性細胞でも一貫した正確な細胞数推定値が得られることを見いだした。
【0081】
溶解液中の相当細胞数はセントロメアの近傍の部位の2個以上の異なる染色体(例えば末端動原体型染色体のショートアーム)に存在する反復遺伝子(好ましくはリボソーム遺伝子)に対して正規化することにより、一般により良好に推定することができる。例えばその検出感度を増すために、反復遺伝子が多数コピー存在するならば有益であると思われる。本発明では、例えば一般的な異数性細胞の溶解液中の相当細胞数を正規化するための優れた参照遺伝子としてリボソーム遺伝子、特に18S、28S及び5.8SリボソームRNAをコードする遺伝子を同定した。
【0082】
細胞数をカウントするためにrDNAを使用する方法は任意細胞成分に関する任意数の定量アッセイと併用することができる。例えば、アッセイした分析物量とrDNA分析により誘導された細胞数に基づいて任意分析物(例えば核酸、蛋白質、又は小分子)の分子コピー数を計算することができる。
rDNAに対する細胞数の標準関数の提供
【0083】
溶解液中の相当試験細胞数を決定するためには、例えば細胞数に対するリボソームDNA(rDNA)の標準関数を誘導し、rDNA存在量に基づいて未知溶解液中の相当細胞数を補間するためのデータを取得すればよい。標準関数は例えばアッセイ入力とアッセイ出力等のある量と別の量の関係、又は細胞の溶解液中の細胞数とRNA量の一定比例関係を表す式とすることができる。典型的な標準関数としては例えば、チャート上に関連値のX−Y座標をプロットする標準曲線、標準アッセイ結果の回帰分析により設定された式、又は関連パラメーター間の一定比もしくは割合があげられる。標準関数の表現法は当分野で公知の通り、紙チャート上の「ベストフィット」線;細胞数とそのrDNAの比例を表す比又は線傾き;回帰分析法により決定された式;適当なプログラムを使用してコンピューターにより得られた結果等とすることができる。
【0084】
例えば、試験溶解液中の相当細胞数は既知数の細胞に由来する参照溶解液を取得し;参照溶解液中のリボソームRNAをコードする遺伝子の量を定量し;サンプル中のrDNA量に対する細胞数の比を決定し;試験細胞の溶解液中のrDNA量を定量し;比に基づいて試験溶解液中の相当試験細胞数を計算することにより決定することができる。
【0085】
参照サンプル中の細胞数は例えば当分野で公知の方法を使用してカウントすることにより測定することができる。例えば、懸濁増殖させた参照細胞を血球計算盤、コールターカウンター、セルソーター、赤血球沈層容積による推定等でカウントすることができる。参照組織中の細胞は顕微鏡によりカウントするか、組織容積から推定するか、又は機械的、化学的及び/又は酵素法による放出後に懸濁細胞をカウントすることができる。参照細胞は正常細胞、一次培養細胞、細胞株、組織から放出された細胞、生物体液に由来する細胞、及び/又は同等細胞とすることができる。参照細胞は試験細胞と同一型でも異なる型でもよい。細胞は均質に同一でもよいし、異なる細胞型の混合物でもよい。
【0086】
標準曲線により計数される試験細胞は任意該当型とすることができる。試験細胞は参照細胞と同一型であるか、又は少なくとも参照細胞と同一動物種に由来することができる。好ましい態様では、試験細胞が参照細胞と同一細胞型でなくてもよいという特定利点が得られる。例えば、所定態様では、参照細胞は正常細胞又は各種細胞の混合物とすることができ、試験細胞は異数性細胞、「不死化」細胞株に由来する細胞、癌細胞、腫瘍細胞等である。
核酸及び試験細胞数の定量
【0087】
細胞数を測定するためのrDNA定量は有用な出力を提供するために十分な感度と確度の任意方法により実施することができる。しかし、参照rDNAと試験rDNAの両者の測定誤差は最終細胞数結果の誤差につながるので、核酸定量法は高精度で高確度であることが好ましい。一般に、試験サンプルと参照サンプルの両者のrDNA測定はアッセイ間変動を避けるために同一方法を使用すべきであるが、方法は同一でなくてもよい。
【0088】
本発明の方法におけるrDNA定量は例えばQPCR、bDNA分析、ノーザンブロット分析、in situハイブリダイゼーション等により実施することができる。ホルマリン固定パラフィン包埋サンプルに由来する溶解液の測定では、サンプル分解と不純物に反応しにくいbDNA法を使用することが好ましい。
抽出効率計算
【0089】
(試験溶解液rDNAを標準関数による細胞数対rDNAに対比することにより)上記未知試験細胞数を測定することに加え、同一標準曲線により試験細胞の溶解について抽出効率を測定することができる。
【0090】
(例えば上記カウント方法により)試験細胞数が不明の場合には、これらの細胞の溶解について抽出効率を測定すればよい。例えば、試験溶解液のrDNA量を測定し、上記のように作成した標準曲線から相当細胞数を読取ることができる。試験溶解液中の相当細胞数を溶解液の調製に使用した既知細胞数で割り、100を掛けた値として抽出効率百分率を計算することができる。このような情報は例えば溶解法の最適化又は分析結果を正規化するために有用であると思われる。
【0091】
細胞溶解液を分析物の有無についてアッセイし、細胞当たりの分析物存在量が重要であるとするならば、分析物量を実際の細胞数に正規化することにより計算の確度を改善するために抽出効率を使用することができる。例えば、多くの場合には、細胞中の所定遺伝子の発現レベルを知ることが有用である。既知数の細胞を溶解させ、遺伝子から転写したmRNAを例えばRT−PCR又はbDNA法により定量することができる。溶解液のrDNA値を細胞数対rDNAの標準曲線に対比すると、溶解液中の相当細胞数を見いだすことができる。抽出効率は既知細胞数に対する相当細胞の比として表すことができる。細胞当たりのmRNA量は溶解液中の全mRNAを既知細胞数で割り、抽出効率を掛けた値として計算することができる。
mRNAコピー数を測定するための分解IVT RNA曲線の使用
【0092】
分解サンプルの核酸アッセイは誤った結果を生じることが多い。特に、老化サンプル又は苛酷な処理に暴露したサンプルに由来する核酸の分析の結果として、シグナルが低下し、誤って低い出力値や偽陰性アッセイ出力を生じることが多い。この問題を解決するために、本発明者らは分解in vitro転写(IVT)RNAを使用して作成した標準曲線がこのような分解サンプルで実施されるRNAアッセイの確度を改善できると判断した。
分解RNAの標準関数
【0093】
既知量の分解IVT RNAの入力と定量的RNAアッセイの出力の関係を表すために標準関数を設定することができる。次に、一般に分解形であることが分かっているか又は予想される未知RNAをRNAアッセイにより分析し、出力値を得ることができる。この未知RNAのアッセイ出力を標準関数に入力すると、例えば、全長未分解IVT RNA標準を使用して作成した標準曲線の回帰分析により得られる標準関数よりも正確なRNA量値が得られる。未知RNAサンプルが既知数の細胞に由来する場合には、RNA量を細胞数で割ると、細胞当たりのRNAコピー数をより正確に測定することができる。
【0094】
標準関数は分解RNA量とRNAアッセイの出力の関係を表すことができる。RNAアッセイは例えばbDNA分析、ノーザンブロット分析、RT−ポリメラーゼ連鎖反応、アガロースゲル電気泳動等の当分野で公知の任意のものとすることができる。標準関数の確度は当分野で公知の通り、例えば標準濃度数を増して標準データを取得する、反復数を増して各標準を試験する、確度を増して標準量を測定する、ベストフィット回帰分析を使用する等の方法により増すことができる。
標準及び試験サンプル
【0095】
in vitro転写RNAは大量の高純度材料が得られるので多くのRNA分析に好ましい標準である。分解IVT RNAは適当な処理により全長未分解IVT RNAから得ることができる。好ましい態様では、IVT RNAは被分析RNAと同一方法で(例えば老化、光、薬品、酵素、熱、及び/又は同等手段により)分解される。多くの場合には、RNAの断片化がアッセイに最大の効果をもつ分解型である。これは試験RNAとのハイブリダイゼーション反応に基づく多くのRNA分析に特に該当する。本発明の好ましい態様では、IVT RNA標準材料を高pH暴露により分解し、試験RNAサンプルの既知又は予想断片化と同等の断片化を生じる。
【0096】
各種既知分解度をもつRNAのアッセイ出力とサンプル入力の関係を表す定量的RNAアッセイについて標準関数を設定することができると考えられる。試験サンプル中のRNA量が分かっている場合には、標準関数に対する試験サンプルのアッセイにより、試験RNAサンプルの分解度を示す結果が得られる。
【0097】
分解RNA等のRNAの量は定量的アッセイと分解RNA標準を使用して設定した標準関数に基づいて測定することができる。試験サンプルRNAは任意型とすることができ、例えば、mRNA、rRNA、tRNA、IVT RNA、ホルマリン(ホルムアルデヒド、メタノール、水)処理したRNA、脱水組織に由来するRNA、老化RNA(例えば、1年を上回る細胞又は組織サンプルに由来するRNA)、ヒト臨床サンプル、FFPE細胞及び組織サンプル、顕微鏡スライドからのRNAサンプル、RNase酵素暴露により分解したRNAサンプルに由来するRNA等が挙げられる。
アッセイ結果
【0098】
試験RNAについて測定した量は例えば相対的又は絶対的に表すことができる。アッセイの初期出力値は一般に所定の大きさの単位であり、例えば、吸光度単位、蛍光単位、相対発光量(RLU)、電圧、光強度、放射性粒子数等が挙げられる。アッセイ値を標準関数に入力し、関連RNAの量等のより明白な値(例えば質量、重量、濃度、モル数、ヌクレオチド塩基数、分子数等)を出力することができる。
【0099】
分解IVT RNA標準(又は予め設定された標準関数)の選択は試験サンプルRNA中の既知又は予想分解度に基づいて行うことができる。例えば、時間を変えて保存したFFPEサンプルでの実験(例えば、図18アガロースゲル参照)に基づき、標準曲線を作成するために同等分解度の標準を選択することができる。あるいは、例えば、サイズ排除クロマトグラフィー、質量分析、ゲル電気泳動、オフセットbDNA分析(下記に記載)等のサイジング法により実際の試験サンプルについてサンプルRNAの分解度を評価することもできる。多くの場合には、手持ちの情報に基づいて標準関数を選択することにより、分解RNA分析の定量結果を改善することができる。
【0100】
分解IVT RNA標準曲線を使用して測定した定量的mRNA結果を更に計算式に入力することができる。例えば、mRNA源である細胞数が分かっている場合には、細胞当たりのmRNAの量又は分子数を計算することができる。例えば、上記のように細胞をカウントすることによりmRNAサンプルの相当細胞数を知ることができ、あるいは、細胞対rDNAの適当な標準曲線を参照してrDNAアッセイに基づいて測定することができる。
散在性プローブシステムとオフセットプローブシステムの比較による核酸分解の測定
【0101】
核酸に分散した複数のキャプチャーエキステンダー(CE)相補ターゲット配列と、核酸に散在した複数のラベルエキステンダー(LE)相補ターゲット配列を使用する核酸のコントロールbDNAアッセイは、核酸が高度に断片化していても強いシグナルを発生することができる。他方、核酸配列の一端に配置されたCEターゲット配列の全部又は殆どと、核酸配列の他端に間隔をあけて配置されたLEターゲット配列の全部又は殆どを使用する試験bDNAアッセイは、例えば試験核酸がCEターゲットとLEターゲットの間のスペースの1点で断片化している場合にはシグナルを発生することができない。LEターゲット配列位置とCEターゲット配列位置に依存するこのシグナル差をアッセイで利用し、核酸の断片化度を推定することができる。
bDNAアッセイ
【0102】
bDNAアッセイは一般に例えば固体支持体と結合したキャプチャーエキステンダーによるターゲット核酸の捕獲であると言うことができ、ターゲットは強いシグナルを発生するために多数のラベルプローブと結合することが可能な分岐DNA分子と一般に結合したラベルエキステンダーで1点以上を修飾されている。
【0103】
例えば、bDNA分析の1側面では、ターゲット核酸を捕獲し、標識分岐鎖DNA(bDNA−増幅用マルチマー)を使用して固体支持体上のその存在を検出する。固体支持体上のターゲット核酸の存在を検出するには、1個以上のラベルエキステンダー(一般に2個以上のラベルエキステンダー)の第1のセットとラベルを含むラベルプローブシステムを第1のターゲット核酸にハイブリダイズさせ、固体支持体上のラベルの存在を検出することができる。ラベルプローブシステムは一般に増幅用マルチマーと複数のラベルプローブを含む。増幅用マルチマーはラベルエキステンダーと複数のラベルプローブに同時にハイブリダイズすることが可能である。ラベルプローブはラベルを含むことができるか、又はラベルと結合するように構成することができる。適切なラベルとしては限定されないが、酵素又は蛍光ラベルが挙げられる。酵素(例えば、アルカリホスファターゼ)をラベルとして使用する場合には、当分野で周知の通り、化学発光法、比色法等によりその活性を検出することができる。蛍光ラベルを使用する場合には、固体支持体上のラベルの存在を検出するには一般にラベルから蛍光シグナルを検出する。
【0104】
bDNAアッセイを使用して単一ターゲット核酸を捕獲及び検出する代表的な態様を図17に模式的に示す。細胞又は組織サンプルを溶解させ、ターゲット核酸114を含む溶解液を調製する。合成オリゴヌクレオチドキャプチャーエキステンダーセット111を介して固体支持体101(例えば、マイクロタイタープレートのウェル)上のキャプチャープローブ104によりターゲット核酸114(例えば、発現を検出しようとするmRNA)を捕獲する。各キャプチャーエキステンダーはターゲット核酸とハイブリダイズすることができる第1のポリヌクレオチド配列C−3(152)と、キャプチャープローブの配列C−2(150)を介してキャプチャープローブとハイブリダイズすることができる第2のポリヌクレオチド配列C−1(151)をもつ。一般に、2個以上のキャプチャーエキステンダーを使用するが、場合により、1個のCEを使用してターゲットを捕獲することもできる。ラベルエキステンダーセット121の各ラベルエキステンダーはターゲット核酸に相補的な配列L−1(154)を介してターゲット核酸上の別の配列とハイブリダイズし、配列L−2(155)を介して増幅用マルチマー(141)上の配列M−1(157)とハイブリダイズする。bDNAアッセイでは非特異的ターゲットプローブ結合を減らすために、キャプチャーエキステンダー又はラベルエキステンダーと結合しないターゲット核酸の配列とハイブリダイズするブロッキングプローブ(124)を使用することが多い。従って、所与ターゲット核酸のプローブセットはキャプチャーエキステンダーと、ラベルエキステンダーと、場合によりターゲット核酸のブロッキングプローブ124から構成される。キャプチャーエキステンダー、ラベルエキステンダー、及び場合によりブロッキングプローブはターゲット核酸のオーバーラップしない配列に相補的であり、必ずしもそうでなくてもよいが、一般に隣接している。この例では、単一ブロッキングプローブを使用しているが、一般に、最適化bDNAアッセイでは別個のブロッキングプローブのアレーを使用する。
【0105】
シグナル増幅はラベルエキステンダーをターゲット核酸と結合することから開始することができる。次に増幅用マルチマーをラベルエキステンダーとハイブリダイズさせる。増幅用マルチマーはラベルプローブ142に相補的な配列M−2(158)の多重コピーをもつ(なお、増幅用マルチマーは必ずしもそうでなくてもよいが、一般には分岐鎖核酸であり、例えば増幅用マルチマーは分岐、フォーク形、もしくは櫛形核酸又は線状核酸とすることができる)。ラベル143(例えばアルカリホスファターゼ)を各ラベルプローブに共有結合させる。(あるいは、ラベルを例えばラベルプローブと非共有的に結合してもよい。)最終段階で、例えば、化学発光基質(例えばジオキセタン)のアルカリホスファターゼ分解により、標識複合体を検出する。発光はマイクロタイタープレートリーダーで相対発光量(RLU)として報告される。蛍光発光量はサンプル中に元々存在するターゲット核酸レベルに比例する(標準関数で表すことができる関係)。
【0106】
上記例では、増幅用マルチマーとラベルプローブはラベルプローブシステム140を構成する。別の例では、ラベルプローブシステムは例えばUSPN5,635,352及びUSPN5,681,697に記載されているような単一ターゲットmRNAからのシグナルを更に増幅するプレ増幅剤も含む。更に別の例では、ラベルエキステンダーはラベルプローブと直接ハイブリダイズし、増幅用マルチマー又はプレ増幅剤を使用しないので、単一ターゲットmRNA分子からのシグナルはこのmRNAとハイブリダイズする個々のラベルエキステンダーの数だけ増幅される。
【0107】
基本的なbDNAアッセイは詳細に記載されており、例えば細胞株におけるmRNA転写産物を検出及び定量し、ウイルス負荷を測定するために使用されている。bDNAアッセイは核酸分子を生理的レベルで直接定量することができる。この技術は他のDNA/RNA増幅技術にまさるいくつかの利点があり、直線的増幅、良好な感度とダイナミックレンジ、優れた精度と確度、単純なサンプル調製手順、及びサンプル間変動の低下が挙げられる。bDNAアッセイの更に詳細については、例えば、USPN4,868,105,発明者Urdeaら,発明の名称「溶液相核酸サンドイッチアッセイ(Solution phase nucleic acid sandwich assay)」;USPN5,635,352,発明者Urdeaら,発明の名称「バックグラウンドノイズを低下した溶液相核酸サンドイッチアッセイ(Solution phase nucleic acid sandwich assays having reduced background noise)」;USPN5,681,697,発明者Urdeaら,発明の名称「バックグラウンドノイズを低下した溶液相核酸サンドイッチアッセイとそのキット(Solution phase nucleic acid sandwich assays having reduced background noise and kits therefore)」;USPN5,124,246,発明者Urdeaら,発明の名称「核酸マルチマー及び前記マルチマーを使用する増幅核酸ハイブリダイゼーションアッセイ(Nucleic acid multimers and amplified nucleic acid hybridization assays using the same)」;USPN5,624,802,発明者Urdeaら,発明の名称「核酸マルチマー及び前記マルチマーを使用する増幅核酸ハイブリダイゼーションアッセイ(Nucleic acid multimers and amplified nucleic acid hybridization assays using the same)」;USPN5,849,481,発明者Urdeaら,発明の名称「大型櫛形分岐ポリヌクレオチドを使用する核酸ハイブリダイゼーションアッセイ(Nucleic acid hybridization assays employing large comb−type branched polynucleotides)」;USPN5,710,264,発明者Urdeaら,発明の名称「大型櫛形分岐ポリヌクレオチド(Large comb−type branched polynucleotides)」;USPN5,594,118,発明者Urdea and Horn,発明の名称「増幅核酸ハイブリダイゼーションアッセイ用修飾N−4ヌクレオチド(Modified N−4 nucleotides for use in amplified nucleic acid hybridization assays)」;USPN5,093,232,発明者Urdea and Horn,発明の名称「核酸プローブ(Nucleic acid probes)」;USPN4,910,300,発明者Urdea and Horn,発明の名称「核酸プローブの作製方法(Method for making nucleic acid probes)」;USPN5,359,100;USPN5,571,670;USPN5,614,362;USPN6,235,465;USPN5,712,383;USPN5,747,244;USPN6,232,462;USPN5,681,702;USPN5,780,610;USPN5,780,225,発明者Sheridanら,発明の名称「精製親水性アルカリホスファターゼと結合したオリゴヌクレオチドプローブ及びその使用(Oligonucleotide probe conjugated to a purified hydrophilic alkaline phosphatase and uses thereof);米国特許出願公開第US2002172950号,発明者Kennyら,発明の名称「in situ分岐DNAハイブリダイゼーションを使用する高感度遺伝子検出及び位置決定(Highly sensitive gene detection and localization using in situ branched−DNA hybridization);Wangら(1997)“Regulation of insulin preRNA splicing by glucose”Proc Nat Acad Sci USA 94:4360−4365;Collinsら(1998)“Branched DNA(bDNA) technology for direct quantification of nucleic acids:Design and performance” in Gene Quantification,F Ferre編;及びWilber and Urdea(1998)“Quantification of HCV RNA in clinical specimens by branched DNA (bDNA) technology” Methods in Molecular Medicine: Hepatitis C 19:71−78参照。更に、基本的bDNAアッセイを実施するための試薬(例えば、QuantiGene(登録商標)キット、増幅用マルチマー、アルカリホスファターゼ標識ラベルプローブ、化学発光基質、固体支持体に固相化したキャプチャープローブ等)は例えばPanomics,Ind.(ワールドワイドウェブwww.panomics.com)から市販されており、本発明の実施に応用することができる。所与mRNAターゲットのプローブセットを設計するため(即ち、キャプチャーエキステンダー、ラベルエキステンダー、及び場合によりターゲットに相補的なブロッキングプローブの領域を設計するため)のソフトウェアも市販されている(例えばPanomics,Inc.製品ProbeDesigner(登録商標));Bushnellら(1999)“ProbeDesigner: for the design of probe sets for branched DNA (bDNA) signal amplification assays Bioinformatics 15:348−55も参照。
オフセットプローブアッセイ
【0108】
bDNAアッセイの変動を使用してターゲット核酸配列中の断片化を検出することができる。ラベルエキステンダーと(キャプチャープローブを介して固体支持体に結合した)キャプチャーエキステンダーの分離したターゲット相補配列部位間の核酸配列に切れ目が存在する場合には、シグナルの消失又は低下としてターゲット核酸の断片化を検出することができる。CEとLEの間のこのような切れ目はラベルと固体支持体の間の結合を切断し、ラベルシグナルを固体支持体の処理で消失させる可能性がある。アッセイの感度及び/又は有効検出範囲はCEとLEの両者がターゲット核酸切れ目の両側に存在するコントロールアッセイとオフセットアッセイからのシグナルを比較することにより改善することができる。得られたオフセットシグナルとコントロールシグナルの比は、特にターゲット核酸量が不明の場合に絶対値よりも明確な断片化の指標となり得る。
【0109】
図18A及び18Bに示すような代表的アッセイでは、コントロールプローブセットはターゲット核酸が断片化しているか否かのシグナルを提供することができ、オフセットプローブシステムを使用する同一断片化ターゲットのアッセイはシグナルを発生することができない。図18Aに示すように、散在性LE121及びCE111プローブのコントロールプローブシステムは分散性ラベルエキステンダー121で修飾された全長ターゲット核酸114を有効に捕獲することができるので、強いコントロールシグナルを発生することができる。キャプチャーエキステンダーとキャプチャープローブ104を介してオフセットラベルエキステンダーを固体支持体に結合することにより、オフセットプローブシステムでも全長ターゲットに強いシグナルを発生させることができる。図18Bに示すように、試験サンプルのターゲット核酸配列177が断片化されている場合でも、コントロールプローブセットではシグナルが発生され続ける。コントロールプローブセットは切れ目の両側でターゲット配列を(ラベルエキステンダーと共に)捕獲するので、例えば固体支持体のプロセス洗浄中にシグナル発生能は失われない。他方、ターゲット核酸はオフセットシステムLEターゲット配列部位とCEターゲット配列部位の間のスペースで切断されているので、図18Bのオフセットプローブセットを使用してシグナルを発生することはできない。LEプローブを結合していないフラグメントは捕獲されるが、LEプローブを結合したフラグメントは捕獲されない。ハイブリダイゼーション溶液が固体支持体から洗い流されると、結合したオフセットLEプローブに関連する全シグナルは失われる。ターゲット核酸配列の特定領域又は点の切れ目(又はその不在)を検出できるようにオフセットLE及びCEの位置を設定できると考えられる。
【0110】
1態様では、ターゲット核酸の一端又はその近傍に1個のCEターゲット配列部位を配置し、ターゲット核酸の他端に1個以上のLEターゲット配列部位が配置するようにオフセットプローブを設計する。好ましい態様では、LE及びCE部位は直接隣接せず、LE又はCEプローブに非相補的な核酸セクションにより分離される。CE相補ターゲット部位とLEターゲット部位の間の任意位置に切れ目があると、この断片化ターゲットに相当するシグナルはオフセットシステムにより発生されない。このような切れ目をもつサンプルではターゲット核酸の割合が高いほど、発生可能なシグナルは弱くなるので、このようなシステムを使用して定量的標準曲線を作成することができる。好ましい態様では、LE部位はターゲット核酸の両端の近傍のみに存在し、1個以上のCE部位は両端間のみ、例えばシステムのLE又はCEに非相補的な配列により分離された例えばターゲット核酸の中心の近傍に存在する。このような場合には、CE部位と一端の間に切れ目があると、シグナル発生能は例えば2分の1に減り、CE部位と各末端の間に切れ目があると、システムはシグナルを全く発生できなくなる。
【0111】
オフセットプローブシステムの好ましい態様では、LEターゲット配列部位はこの部位とターゲット核酸上の最近接3’及び/又は5’CEターゲット配列部位の間の切断に反応するように設計される。例えば、この技術の多くの場合では、LE部位と他端側の1個以上のCE部位の間に切れ目がある場合にLEがそのシグナルポテンシャルと共に失われる(固体支持体と結合しない)ように、LE部位とターゲット核酸の一端の間にCE部位が存在しないことが好ましい。LEターゲット配列とCEターゲット配列の間にターゲット核酸の実質的部分が存在することが好ましい。例えば、好ましい態様では、試験核酸の核酸配列の10%以上が核酸の2個の最近接LE及びCE部位間に存在する。断片化を試験する核酸の>25%、>50%、>75%、>90%、又はそれ以上が最近接CE/LE部位対のメンバー間に存在することがより好ましい。オフセットプローブシステムの1個以上のオフセットラベルエキステンダーL1配列は全C3相補配列から5’又は3’側に少なくとも1ヌクレオチド塩基の間隔をあけて配置された核酸の配列と相補的であることが好ましく、試験核酸のL1及びC3相補配列間は5塩基以上、10塩基以上、25塩基以上、50塩基以上、100塩基以上、500塩基以上であることがより好ましい。
【0112】
オフセットプローブスキームの他の態様では、ターゲット核酸上のLEターゲット間に所定のCEターゲットが散在していてもよいし、及び/又はCEターゲット間に所定のLEターゲットが散在していてもよい。例えば、ターゲット核酸が両端の近傍で捕獲され、LEターゲット配列部位が例えばターゲット核酸の中心の近傍でCE部位から間隔をあけて配置されているオフセットプローブシステムを設計することができる。このような場合には、シグナル発生能は核酸の切れ目が1個では失われないが、LEターゲット部位の各側に切れ目があると失われる。CE/LEスペーシング及び分散の付加変形構成の結果、CE及びLE部位間に十分な切れ目があると、シグナル発生能は漸次又は最終的に失われると考えられる。他方、他の好ましい態様では、2個以上のCEターゲット部位間にLEターゲット部位の25%以下が存在するか、又は2個以上のLE部位間にCE部位の25%以下が存在する。より好ましい態様では、2個以上のCEターゲット部位間にLEターゲット部位の10%以下が存在するか、又は2個以上のLE部位間にCE部位の10%以下が存在する。より好ましい態様では、2個以上のCEターゲット部位間にLEターゲット部位の5%以下が存在するか、又は2個以上のLE部位間にCE部位の5%以下が存在する。最も好ましい態様では、CE及びLEターゲット配列部位はターゲット核酸配列に散在せず、即ち2個のCEターゲット部位間にLEターゲット部位は存在せず、及び/又は2個のLE部位間にCE部位は存在しない。
【0113】
オフセットプローブアッセイ結果を正規化し、アッセイ間比較を助長するためには、コントロールアッセイ結果に対する試験アッセイ結果の比として断片化アッセイ結果を提供することが有用であり得る。別の核酸、試験核酸全長、及び/又は分析する同一サンプルからの試験核酸で例えば複数の散在LE/CEプローブターゲット部位を使用するコントロールアッセイを実施することができる。好ましい態様では、コントロールアッセイとオフセットアッセイの両者により同一試験サンプルを分析し、比を提供する。特定比を所定断片化度と相関させることができる。例えば、特定サンプルの比をこのサンプルの断片化レベルと相関できるように、断片化度に対する比の標準曲線を提供することができる。このような情報は例えば、サンプル中のmRNAの定量で使用するための分解IVT RNA標準の選択で有用であり得る。
【0114】
以下、実施例により本発明を例証するが、これらの実施例により本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0115】
FFPE組織スライド疎水性成分の均質化後分離と均質化前抽出の比較
均質化後分離が均質化前有機抽出と同等以上であることを実証するために、可溶化前に脱ロウを実施した場合と実施しない場合とで分岐DNA法を使用してFFPEサンプルmRNAを比較した。>10年マッチヒト肺正常及び腫瘍FFPEサンプルに由来するサンプルを10ミクロン切片3枚としてプールした。1対のサンプル(「0」)では、可溶化後にロウを分離することによりホモジネートを調製した。第2対のサンプル(「1」)では、可溶化前に脱ロウ有機抽出段階を1回実施することによりホモジネートを調製した。第3対のサンプル(「2」)では、脱ロウ有機抽出サイクルを2回実施することによりホモジネートを調製した。Yangら,2006に記載されているようにリボソーム蛋白質S3(RPS3,NM_001005ハウスキーパー又は参照コントロールRNA)と乳酸デヒドロゲナーゼA(LDHA,NM_005566;腫瘍サンプルでの誘導倍率2〜3倍)を使用して抽出液を試験した。分岐DNAアッセイでターゲット遺伝子のオリゴヌクレオチドプローブセットをデザインするように改変プローブデザインソフトウェアが開発されている(Bushnellら,1999)。ターゲット遺伝子のプローブセットはターゲットの隣接領域をカバーする3種のオリゴヌクレオチドプローブ(CE−キャプチャーエキステンダー、LE−ラベルエキステンダー、及びBL−ブロッキングプローブ)から構成され、プレートウェルの表面へのターゲットRNAの捕獲と、分岐DNAシグナル増幅分子とのハイブリダイゼーションを可能にする。ターゲット配列毎に、ソフトウェアアルゴリズムは残りのスペースを実質的に充填するようにCE(遺伝子当たり5〜10)、LE(遺伝子当たり10〜20)、又はBLのアニーリング鋳型として機能できる領域を識別した。分岐DNAアッセイは既に詳細に記載されているQuantiGene(登録商標)Reagent System(Panomics)の手順に従って実施した(Wangら,1997,Kernら,1996)。要約すると、組織ホモジネート10μLをLysis Mixture(Panomics)40μL、Capture Buffer(Panomics)40μL、及びターゲット遺伝子特異的プローブセット(CE,1.65fmol/μL;LE,6.6fmol/μL;BL,3.3fmol/μL)10μLと混合した。各サンプル混合物をその後、Capture Plate(Panomics)の各ウェルに分配する。
【0116】
図3のグラフから明らかなように、可溶化後分離で測定したmRNA発現レベルは相抽出段階を1回又は2回実施した場合に比較して改善されていないとしても同等である。
【実施例2】
【0117】
FFPEサンプルからの等価スパイク回収率
FFPE切片からのRNA回収が可溶化後分離と可溶化前抽出で等価であることを実証する付加実験を実施した。方法は、細菌遺伝子ジヒドロジピコリン酸レダクターゼに由来する既知量のin vitro転写(IVT)RNA(ヒト肺組織で発現されないdapB,L38424)を可溶化FFPEサンプルに加えた以外は、乳酸デヒドロゲナーゼA(LDHA,NM_005566)とリボソーム蛋白質S3(RPS3,NM_001005)について上述したように実施した。データによると、収率は脱ロウ抽出段階2回と物理的ロウ分離法で同等であった。どちらの方法を使用した場合も、スパイクインdapB IVT RNAのキャプチャー効率(スパイク回収率)は90〜110%であった。
【実施例3】
【0118】
FFPE組織可溶化効率とFFPEサンプル中の細胞数を測定するための反復リボソームDNAの使用
反復DNAに基づいて細胞数を正確に予想できるか否かを調べた。特に、リボソームDNA遺伝子の定量に基づく標準曲線を使用して腫瘍及び他の異数性細胞の細胞数を測定した。
【0119】
二倍体ゲノム当たりリボソーム遺伝子クラスター平均約10個となるように10種の細胞株を選択した。各細胞株の細胞4000個をQuantiGene Lysis Buffer(Panomics)で溶解させ、10個の細胞株溶解液をプールした(即ち、合計細胞株10種ないし細胞40,000個で総容量110μl)。
【0120】
各々30μlを別々のマイクロ遠心管に移し、一方はリボソームDNA(18S及び28S rDNA)を測定するためにDNAを変性させ、他方はアッセイのバックグラウンドを測定するために非変性コントロールとした。次に、TEバッファー270μlを加えることにより各管を合計300μlまで希釈した。変性及びコントロールサンプル各180μlを反応管に移した。変性用DNAを入れた管には2.5N NaOH 18μlを加え、コントロールアリコートにはTE 18μlを加えた後、管を53℃に15分間加熱した(図6参照)。加熱段階後、2M HEPES 90μlをコントロール(非変性)及び変性サンプルの両者に加えた。コントロールサンプル中のDNAは2本鎖のままであったが、変性DNAサンプルは実質的に1本鎖状態であった。変性サンプル(30μl、15μl、7.5μl、3.8μl、1.9μl、0.95μl又は夫々683、341、171、85、43、21細胞等量)をQuantiGeneアッセイに加えることにより細胞数標準曲線を作成した(図7参照)。mRNAを測定するための典型的アンチセンスプローブセットを使用する代わりに、センスプローブセットを使用してサンプル中の18S及び28SリボソームDNA量を定量する。
【0121】
18S及び28Sリボソームプローブは細胞株プールにほぼ同一結果を与えたので、18Sリボソームプローブセットのみを使用してFFPE腫瘍サンプル及びFFPE細胞株コントロール中のリボソームDNA量を測定した。FFPE腫瘍及び細胞株コントロール切片を上記のように可溶化及び試験した。要約すると、切片をQuantiGene Homogenization Buffer 300μlで可溶化し、2μlを103倍に希釈した。103倍に希釈したサンプル60μlをマイクロ遠心管に移し、2.5N NaOH 6μlを加えた後に53℃まで15分間加熱することにより変性させた。変性後に、2M HEPES 30μlをボルテックス混合下に加えることにより溶液を中和させた。変性溶液30μlをQuantiGeneアッセイに加え、上記のような18S rDNA細胞数標準曲線(プールした10種の細胞株)を使用して18SリボソームDNAを定量した。
【0122】
4種の細胞株に由来する既知数の細胞をホルマリンで固定し、パラフィン包埋した。各細胞株切片20枚(6μm×20mm2=〜100,000細胞/切片=合計〜2×106細胞)をQuantiGene Homogenization Buffer 600μlで可溶化し、DNA変性させ、上記のような18S rDNAプローブセットを使用して定量した。18S rDNA細胞数標準曲線を使用し、細胞株FFPEサンプル切片各20枚で2〜2.5×106の細胞数が測定された。図8参照。
【実施例4】
【0123】
FFPE腫瘍組織切片からの細胞数定量
49個の腫瘍(肺24個、結腸25個)に由来する切片各10枚(6μm×24mm2;全切片>85%腫瘍)をQuantiGene Homogenization Buffer 300μlで可溶化し、DNA変性させ、上記のような18S rDNAプローブセットを使用して定量した。18S rDNA細胞数標準曲線を使用し、合計切片10枚で1.2〜1.7×106細胞/FFPE腫瘍サンプルが定量された。図9参照。
【実施例5】
【0124】
無傷及び分解IVT RNA標準曲線を使用するRNA分子の定量
RNA分子数を計算するためには、クローン遺伝子を使用するin vitro転写RNA(IVT)を標準曲線として使用することができる。FFPE mRNAは一般に例えば断片化プロセスにより多少分解される。本発明者らは分解サンプルの分析アッセイ効率を測定するためには分解IVT標準分析曲線を未分解全長RNAの曲線と比較すればよいことを見いだした。例えば、QuantiGeneアッセイを使用して臨床サンプルに由来する分解mRNAを正確に定量することができる。
【0125】
Ambionの指示に従ってIVTを合成した。FFPE RNAのサイズと同等にするために無傷RNAの一部を100〜300bpまで分解した。所望サイズの分解RNAを得るためには、未分解全長IVT RNAを0.1N NaOHで9分間分解する。等容量の0.1N NaOHを使用して反応を中和し、分解プロセスを停止した。図10に示すゲルは7個の未分解全長in vitro転写RNA(レーン2にプール)と、ゲル電気泳動用にプールした同数の7個の分解IVT RNAを示す。
【0126】
次に、IVT濃度を測定し、溶液を40、10、2.5、0.625、0.156、及び0.039アトモル(−18mol)まで系列希釈した。図11に示すように、例えば、β−Actin特異的プローブセット(Panomics)を使用してβ−Actin(ACTB)IVT未分解全長RNA(1739bp)と対応するIVT分解RNA(図10ゲル参照)を定量し、標準曲線を作成した。標準曲線を相互に比較すると、1のR2値が決定される(R2は分散比を表す)。結果から明らかなように、分解ACTB IVT(100〜300bp)を使用するACTB特異的プローブセットの感度は全濃度で未分解ACTB IVT(1739bp)の〜40%(傾き38.6%)である。未分解全長(985bp〜4407bp)及び分解IVTの両者を使用する他の6個の遺伝子でも同様の結果が認められた(図12参照)。
【0127】
(実施例3の末尾に記載した)4種の細胞株の既知数の細胞をホルマリンで固定し、パラフィン包埋し(切片20枚、6μm×20mm2=〜100,000細胞/切片=合計〜2×106細胞)、QuantiGene Homogenization Buffer 600μlで可溶化し、全4種の細胞株で全6個のmRNAに等容量の入力サンプルを使用して定量した。まず、bDNAアッセイを使用して6個のmRNAの各々について各細胞株における相対発現量を測定した(図13参照)。次に、未加工データから、両者のIVT標準曲線(未分解と分解、上記参照)を使用して6個のmRNAの各々のアトモルを計算した。最後に、18S rDNA/細胞数標準曲線を使用してアトモルを各細胞株の細胞数で割り、各mRNA及び細胞株の細胞当たりコピー数を決定した(図14参照)。分解IVT標準曲線から計算したコピー数は未分解IVT標準曲線を使用して新鮮な全長IVT RNAサンプルについて計算したコピー数と密接に相関した。従って、分解IVTは均質化FFPEサンプルに由来するmRNAを良好に表し、このようなmRNAの定量のために良好な標準材料となる。
【0128】
mRNA定量とコピー数測定の付加例では、18S及び28S rDNAについて上述したように、49個の腫瘍(肺25個、結腸24個)に由来する切片各10枚(6μm×24mm2;全切片>85%腫瘍)をQuantiGene Homogenization Buffer 300μlで可溶化した。得られたホモジネートを使用し、QuantiGene特異的プローブセット(上記参照)を使用して6個のmRNAの量を定量した。4種の細胞株でmRNAを測定するために使用したものと同一のIVT標準曲線を使用した。図15は全49個の腫瘍におけるmRNAの各々の未加工相対定量データを示す。
【0129】
分解IVT標準曲線から全腫瘍における各mRNAのアトモルを計算し、細胞当たりのmRNAコピーの計算に使用する腫瘍サンプル(合計切片10枚)の各々の細胞数で割った。このデータを図16に示す。遺伝子の一部で発現レベル(mRNA)の細胞当たりコピー数は肺腫瘍(1〜25)では高いが、結腸腫瘍(26〜49)ではそうではないという明白な傾向が存在することが認められた。
【実施例6】
【0130】
サンプルDNA分解の測定
組織ブロックについてRNAのフラグメント長を評価した。この評価は例えば十分なRNA完全性をもつFFPEブロックの選択や、サンプルで使用するためのIVT RNAアッセイ標準の選択に役立つ。FFPE可溶化後、該当mRNA(遺伝子)に2個のプローブセットを使用してサンプルを試験した。標準分散コントロールプローブセット(図18A及び18B参照)又はオフセットCE及びLE部位をもつ試験プローブセットを組織均質化バッファーに加え、一晩ハイブリダイゼーションした。翌日、標準bDNAアッセイ手順に従ってコントロール及び試験サンプルを処理した。
【0131】
図9から明らかなように、RNA品質の異なるFFPEサンプルを試験した。まず、ゲル電気泳動により精製RNAの品質を評価する。3年サンプル(腫瘍及び正常RNA)中のRNAは10年サンプルのRNAよりも断片化が少なかった。次に、無傷コントロールRNAと3年及び10年FFPEサンプルに由来するRNAを分散コントロールプローブ又はオフセット断片化試験プローブでbDNA分析した。オフセットアッセイ結果に対するコントロールのアッセイシグナルの比を測定することによりRNAの品質を評価した。比はRNA分解の増加と共に増加することが判明した(コントロール比〜1;3年=3〜4;10年=7〜24)。オフセットbDNAプローブスキームは任意サンプルに由来するRNAの品質を評価するための簡単なアプローチを提供する。
【0132】
当然のことながら、本明細書に記載する実施例及び態様は例証の目的に過ぎず、これらの記載に鑑みて種々の変形又は変更が当業者に示唆され、このような変形又は変更も本願の精神及び範囲と特許請求の範囲に含むものとする。
【0133】
以上、明確に理解できるように本発明を多少詳細に記載したが、本発明の真の範囲を逸脱することなく形態や細部に種々の変更が可能であることは以上の開示から当業者に自明である。例えば、上記技術及び装置の多くは種々に組合せて使用することができる。
【0134】
本明細書に引用した全刊行物、特許、特許出願、及び/又は他の文献はその開示内容全体を全目的で参考資料として組込み、各刊行物、特許、特許出願、及び/又は他の文献を全目的で参考資料として組込むと個々に記載しているものとして扱う。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】核酸可溶化「均質化」プロトコールの開始前にホルマリン固定パラフィン包埋臨床サンプルからパラフィンを除去するための有機溶媒(例えばDewax)と相抽出技術を使用する従来技術の脱ロウプロトコールのブロックフローチャートである。
【図2】サンプルを予め脱ロウする必要がない1段階の非抽出非変性物理的分離段階により水性核酸ホモジネート(溶解液)からパラフィンを最終的に分離する本発明の代表的な可溶化(「均質化」)プロトコールを示す。
【図3】mRNA発現誘導のグラフを示す。正常細胞に対する腫瘍細胞中のLDHA mRNAレベルの誘導倍率測定値は可溶化後に溶解液から疎水性成分を分離した場合と、均質化(溶解液調製)前に有機相抽出を行う旧来の技術とで実質的に同一であることが明らかである。
【図4A】各種正常細胞、異数性細胞、及び腫瘍細胞で実質的に一貫した発現を維持するリボソームDNA(rDNA)の例を示す。
【図4B】各種正常細胞、異数性細胞、及び腫瘍細胞で実質的に一貫した発現を維持するリボソームDNA(rDNA)の例を示す。
【図4C】各種正常細胞、異数性細胞、及び腫瘍細胞で実質的に一貫した発現を維持するリボソームDNA(rDNA)の例を示す。
【図4D】各種正常細胞、異数性細胞、及び腫瘍細胞で実質的に一貫した発現を維持するリボソームDNA(rDNA)の例を示す。
【図4E】各種正常細胞、異数性細胞、及び腫瘍細胞で実質的に一貫した発現を維持するリボソームDNA(rDNA)の例を示す。
【図5】rDNAの細胞株細胞数とアッセイシグナル出力の間の直線応答を実証するbDNAアッセイ標準曲線を示す。
【図6】rDNAに基づいて細胞数標準曲線を作成するためのプロトコールの概略フローチャートを示す。
【図7】18S及び28SリボソームDNAの細胞数対bDNAアッセイ出力の標準曲線を示す。
【図8】細胞数対18S DNAの標準曲線を示す。ヒストグラムから明らかなように、18S DNA標準曲線により異数性細胞株でも実質的に正確に細胞数を測定できる。
【図9】FFPEスライドからの49個の腫瘍組織スクレーピングの18S DNAのbDNAアッセイにより得られた細胞数の定量を示す。
【図10】無傷全長in vitro転写(IVT)RNAと水酸化物で分解したIVT RNAのゲル電気泳動を示す。
【図11】全長又は分解IVT転写RNA標準のbDNAアッセイ入力RNAアトモル対アッセイシグナル出力の標準曲線を示す。無傷対分解RNAのアッセイ出力間の関係の標準式を示す。
【図12】6個のmRNAの無傷及び分解IVT RNA標準曲線を示す。
【図13】4種のホルマリン固定パラフィン包埋細胞株における6個のmRNAの発現を示す未加工アッセイ出力データを示す。
【図14】無傷又は分解IVT RNA標準曲線に基づいて計算した6個のmRNAの細胞当たりコピー数を示す。
【図15】49個のヒト腫瘍で測定した6個のmRNAの未加工bDNAアッセイ出力データを示す。
【図16】49個の腫瘍細胞サンプルで6個のmRNAについて分解IVT RNA標準に基づいて測定した細胞当たりmRNAコピー数を示すチャートを示す。
【図17】代表的bDNAアッセイシステムの模式図を示す。
【図18A】ターゲット核酸断片化を検出するためのオフセットプローブ及びコントロールスキームの模式図を示す。図18AのターゲットRNAは断片化していないので、コントロールプローブシステム又はオフセットプローブシステムを使用して固体支持体に保持したラベルエキステンダーからシグナルを発生することができる。他方、コントロールシステムの同一断片化ターゲットRNA配列では切れ目の両側にCE結合点とLE相補部位が存在するので、コントロールプローブシステムを使用してbDNAアッセイのシグナルを発生することができる。
【図18B】ターゲット核酸断片化を検出するためのオフセットプローブ及びコントロールスキームの模式図を示す。図18BのターゲットRNAはオフセットプローブシステムのCE結合点とLE相補部位の間で断片化しているので、bDNAアッセイによりシグナルは発生されない。他方、コントロールシステムの同一断片化ターゲットRNA配列では切れ目の両側にCE結合点とLE相補部位が存在するので、コントロールプローブシステムを使用してbDNAアッセイのシグナルを発生することができる。
【図19】コントロール対オフセットプローブシグナルの比をアガロースゲル上に可視化されるようなRNA分解と相関させる方法を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水性成分と会合した細胞から核酸を採取する方法であって、
細胞と40℃を上回る融点をもつ会合疎水性成分を水溶液に懸濁する段階と、
細胞の2本鎖DNAに対して実質的に非変性条件下で40℃を上回る温度で懸濁液をインキュベートすることにより、疎水性成分を溶解させ、核酸を細胞から水溶液中に放出させる段階と、
前記インキュベーション後に疎水性成分から水溶液を物理的に分離することにより、核酸を細胞から採取する段階を含む前記方法。
【請求項2】
核酸がDNA、分解核酸、及びRNAから構成される群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ホルマリン固定パラフィン包埋組織が細胞を含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
疎水性成分がパラフィンを含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記懸濁が細胞を顕微鏡スライドからのスクラッピング、ダウンス型ホモジナイザーによる処理、又はボルテックスを含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
水溶液がPEG、SDS、SSCバッファー、NaHPO4、EDTA、変性サケ精子DNA、ホルムアミド、及びSSPEバッファーから構成される群から選択される成分を含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
水溶液がブロッキングプローブ、キャプチャーエキステンダー、ラベルエキステンダー、プレ増幅剤、ラベルプローブ、増幅用プローブ、増幅用マルチマー、プロテアーゼ、リパーゼ、界面活性剤、又はヌクレアーゼインヒビターから構成される群から選択される成分を含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
水溶液が150μl/mlを上回るプロテイナーゼを含有する請求項1に記載の方法。
【請求項9】
プロテアーゼがプロテイナーゼKを含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
インキュベーション温度が約52℃〜80℃未満までの温度を含む請求項1に記載の方法。
【請求項11】
インキュベーション温度が約65℃の温度を含む請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記インキュベーション段階が懸濁液をインキュベーション温度に12時間以上維持することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記非変性条件がpH8.5を越えないpH条件又は70℃の温度を含む請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記分離段階が遠心、デカント、吸引、濾過、ピペッティング、及び疎水性成分を融点未満の温度で固化させる方法から構成される群から選択される技術を含む請求項1に記載の方法。
【請求項15】
核酸を固体支持体上に捕獲する段階を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項16】
核酸を定量する段階を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記定量段階がbDNA分析、ノーザンブロット分析、サザンブロット分析、ポリメラーゼ連鎖反応、核酸シーケンシング法、及びアガロースゲル電気泳動から構成される群から選択される技術を含む請求項16に記載の方法。
【請求項18】
分離した水溶液のフェノール抽出を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項19】
水溶液を有機溶媒で化学的に抽出しない請求項1に記載の方法。
【請求項20】
既知数の参照細胞から参照核酸サンプルを取得する段階と、
参照サンプル中のリボソームDNAの量を定量する段階と、
参照リボソームDNA量に対する参照細胞数の標準関数を提供する段階と、
試験細胞から試験核酸サンプルを取得する段階と、
試験サンプル中のリボソームDNAの量を定量する段階と、
標準関数と試験リボソームDNA量に基づいて試験細胞数を測定する段階を含む試験細胞数の測定方法。
【請求項21】
試験細胞が腫瘍細胞、細胞株、顕微鏡スライド上の細胞、FFPE細胞、及びポリプロイド細胞から構成される群から選択される請求項20に記載の方法。
【請求項22】
腫瘍細胞が肺腫瘍細胞又は結腸腫瘍細胞を含む請求項21に記載の方法。
【請求項23】
参照核酸サンプルを取得する段階が実質的に正常な核型をもつ細胞からの核酸抽出を含む請求項20に記載の方法。
【請求項24】
リボソームDNAが18S rDNA、5.8S rDNA及び28S rDNAから構成される群から選択される請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記定量段階がbDNA分析、サザンブロット分析、ポリメラーゼ連鎖反応、及びアガロースゲル電気泳動から構成される群から選択される技術を含む請求項20に記載の方法。
【請求項26】
細胞数を測定する段階が標準関数への試験リボソームDNA量の入力、細胞対rDNA比を含む式への試験リボソームDNA量の入力、及びコンピューターへの試験rDNA値の入力から構成される群から選択される方法を含む請求項20に記載の方法。
【請求項27】
測定した試験細胞数を使用して試験細胞分析結果を正規化する段階を更に含む請求項20に記載の方法。
【請求項28】
既知試験細胞数と測定した試験細胞数に基づいて試験核酸抽出効率を測定する段階を更に含む請求項20に記載の方法。
【請求項29】
試験サンプル中の細胞数を測定する段階と、
分解in vitro RNA標準アッセイ入力に対するRNAアッセイ出力の標準関数を提供する段階と、
標準関数を使用してRNAアッセイにより試験サンプル中の試験RNAの量を測定する段階と、
細胞数と試験RNAの測定量に基づいて細胞中のRNAのコピー数を決定する段階を含むRNAコピー数の測定方法。
【請求項30】
試験サンプルが腫瘍細胞、細胞株、顕微鏡スライドからの細胞、1年を上回る臨床サンプル、ホルマリンで固定した細胞、パラフィン包埋細胞、及び異数性細胞から構成される群から選択される請求項29に記載の方法。
【請求項31】
保存時間、高pH、低pH、剪断応力、ヌクレアーゼ、光、熱、及びホルムアルデヒドとの接触から構成される群から選択される分解手段によりRNA標準を分解する請求項29に記載の方法。
【請求項32】
定量分析がbDNA分析、ノーザンブロット分析、RT−ポリメラーゼ連鎖反応、分光分析法、蛍光分析法、及びアガロースゲル電気泳動から構成される群から選択される方法を含む請求項29に記載の方法。
【請求項33】
反復DNAの量に対する細胞数の標準関数を提供する段階と、
40℃以上のプロテアーゼ溶液中でインキュベーション後にパラフィンを細胞から分離する段階と、
標準関数とプロテアーゼ溶液中の反復DNAの量に基づいてプロテアーゼ溶液中の相当細胞数を測定する段階と、
分解IVT RNA標準アッセイ入力に対するRNAアッセイ出力の標準関数を提供する段階と、
分解IVT RNA標準関数に基づいてプロテアーゼ溶液中のRNA量を測定する段階と、
測定細胞数を測定RNA量で割ることにより細胞当たりのRNAコピー数を計算する段階を含むFFPEサンプル中の細胞のRNAコピー数の測定方法。
【請求項34】
反復DNAがリボソームDNAを含む請求項33に記載の方法。
【請求項35】
プロテアーゼがプロテイナーゼKであり、インキュベーション温度が約65℃である請求項33に記載の方法。
【請求項36】
RNAアッセイがbDNAアッセイ、RT−PCR、又はノーザンブロットを含む請求項33に記載の方法。
【請求項37】
オフセットbDNAアッセイの結果に従って分解IVT RNA標準を選択するか又は標準曲線の傾きを修正する段階を更に含む請求項33に記載の方法。
【請求項38】
1個以上のオフセットキャプチャーエキステンダープローブC3配列が各々核酸の配列に相補的であり、1個以上のオフセットラベルエキステンダーL1配列が全C3相補配列から5’又は3’側に少なくとも1ヌクレオチド塩基の間隔をあけて配置された核酸の配列と相補的であるオフセットbDNAアッセイで核酸のサンプルを分析する段階を含み、
核酸がC3及びL1相補配列間で断片化していない場合よりも核酸がC3及びL1相補配列間で断片化している場合のほうが弱いシグナルがbDNAアッセイで発生される核酸の断片化の検出方法。
【請求項39】
2個以上のコントロールキャプチャーエキステンダープローブC3配列が核酸の異なる位置の配列に相補的であり、1個以上のコントロールラベルエキステンダーL1配列が核酸配列の異なる位置の配列に相補的であり、コントロールL1配列の1個以上がコントロールC3配列の2個以上に相補的な位置間の位置の核酸に相補的である第2のbDNAアッセイで核酸のサンプルを分析する段階を更に含み、
核酸が断片化していない場合よりも核酸が断片化している場合のほうがオフセットアッセイ結果に対するコントロールアッセイ結果の比が大きい請求項38に記載の方法。
【請求項40】
核酸が断片化している請求項38に記載の方法。
【請求項41】
核酸がRNA、mRNA、cDNA、FFPEサンプルに由来する核酸、イントロン配列をもたない核酸、及び1年を上回る細胞又は組織サンプルに由来する核酸から構成される群から選択される請求項38に記載の方法。
【請求項42】
オフセットC3配列に相補的な核酸配列が核酸ヌクレオチドの75%以上の間隔をあけてオフセットL1配列に相補的な核酸配列から分離している請求項38に記載の方法。
【請求項43】
1個以上のオフセットラベルエキステンダーL1配列が全C3相補配列から5’又は3’側に少なくとも25ヌクレオチド塩基の間隔をあけて配置された配列と相補的である請求項38に記載の方法。
【請求項44】
1個以上のスペーシングヌクレオチドがブロッキングプローブに相補的な配列を含む請求項38に記載の方法。
【請求項45】
2個のC3相補配列間にL1相補配列が存在しない請求項38に記載の方法。
【請求項46】
比を核酸の平均フラグメント長と相関させる段階を更に含む請求項39に記載の方法。
【請求項47】
アッセイ標準を選択する段階又は比に基づく標準関数を選択する段階を更に含む請求項39に記載の方法。
【請求項1】
疎水性成分と会合した細胞から核酸を採取する方法であって、
細胞と40℃を上回る融点をもつ会合疎水性成分を水溶液に懸濁する段階と、
細胞の2本鎖DNAに対して実質的に非変性条件下で40℃を上回る温度で懸濁液をインキュベートすることにより、疎水性成分を溶解させ、核酸を細胞から水溶液中に放出させる段階と、
前記インキュベーション後に疎水性成分から水溶液を物理的に分離することにより、核酸を細胞から採取する段階を含む前記方法。
【請求項2】
核酸がDNA、分解核酸、及びRNAから構成される群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ホルマリン固定パラフィン包埋組織が細胞を含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
疎水性成分がパラフィンを含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記懸濁が細胞を顕微鏡スライドからのスクラッピング、ダウンス型ホモジナイザーによる処理、又はボルテックスを含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
水溶液がPEG、SDS、SSCバッファー、NaHPO4、EDTA、変性サケ精子DNA、ホルムアミド、及びSSPEバッファーから構成される群から選択される成分を含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
水溶液がブロッキングプローブ、キャプチャーエキステンダー、ラベルエキステンダー、プレ増幅剤、ラベルプローブ、増幅用プローブ、増幅用マルチマー、プロテアーゼ、リパーゼ、界面活性剤、又はヌクレアーゼインヒビターから構成される群から選択される成分を含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
水溶液が150μl/mlを上回るプロテイナーゼを含有する請求項1に記載の方法。
【請求項9】
プロテアーゼがプロテイナーゼKを含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
インキュベーション温度が約52℃〜80℃未満までの温度を含む請求項1に記載の方法。
【請求項11】
インキュベーション温度が約65℃の温度を含む請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記インキュベーション段階が懸濁液をインキュベーション温度に12時間以上維持することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記非変性条件がpH8.5を越えないpH条件又は70℃の温度を含む請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記分離段階が遠心、デカント、吸引、濾過、ピペッティング、及び疎水性成分を融点未満の温度で固化させる方法から構成される群から選択される技術を含む請求項1に記載の方法。
【請求項15】
核酸を固体支持体上に捕獲する段階を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項16】
核酸を定量する段階を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記定量段階がbDNA分析、ノーザンブロット分析、サザンブロット分析、ポリメラーゼ連鎖反応、核酸シーケンシング法、及びアガロースゲル電気泳動から構成される群から選択される技術を含む請求項16に記載の方法。
【請求項18】
分離した水溶液のフェノール抽出を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項19】
水溶液を有機溶媒で化学的に抽出しない請求項1に記載の方法。
【請求項20】
既知数の参照細胞から参照核酸サンプルを取得する段階と、
参照サンプル中のリボソームDNAの量を定量する段階と、
参照リボソームDNA量に対する参照細胞数の標準関数を提供する段階と、
試験細胞から試験核酸サンプルを取得する段階と、
試験サンプル中のリボソームDNAの量を定量する段階と、
標準関数と試験リボソームDNA量に基づいて試験細胞数を測定する段階を含む試験細胞数の測定方法。
【請求項21】
試験細胞が腫瘍細胞、細胞株、顕微鏡スライド上の細胞、FFPE細胞、及びポリプロイド細胞から構成される群から選択される請求項20に記載の方法。
【請求項22】
腫瘍細胞が肺腫瘍細胞又は結腸腫瘍細胞を含む請求項21に記載の方法。
【請求項23】
参照核酸サンプルを取得する段階が実質的に正常な核型をもつ細胞からの核酸抽出を含む請求項20に記載の方法。
【請求項24】
リボソームDNAが18S rDNA、5.8S rDNA及び28S rDNAから構成される群から選択される請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記定量段階がbDNA分析、サザンブロット分析、ポリメラーゼ連鎖反応、及びアガロースゲル電気泳動から構成される群から選択される技術を含む請求項20に記載の方法。
【請求項26】
細胞数を測定する段階が標準関数への試験リボソームDNA量の入力、細胞対rDNA比を含む式への試験リボソームDNA量の入力、及びコンピューターへの試験rDNA値の入力から構成される群から選択される方法を含む請求項20に記載の方法。
【請求項27】
測定した試験細胞数を使用して試験細胞分析結果を正規化する段階を更に含む請求項20に記載の方法。
【請求項28】
既知試験細胞数と測定した試験細胞数に基づいて試験核酸抽出効率を測定する段階を更に含む請求項20に記載の方法。
【請求項29】
試験サンプル中の細胞数を測定する段階と、
分解in vitro RNA標準アッセイ入力に対するRNAアッセイ出力の標準関数を提供する段階と、
標準関数を使用してRNAアッセイにより試験サンプル中の試験RNAの量を測定する段階と、
細胞数と試験RNAの測定量に基づいて細胞中のRNAのコピー数を決定する段階を含むRNAコピー数の測定方法。
【請求項30】
試験サンプルが腫瘍細胞、細胞株、顕微鏡スライドからの細胞、1年を上回る臨床サンプル、ホルマリンで固定した細胞、パラフィン包埋細胞、及び異数性細胞から構成される群から選択される請求項29に記載の方法。
【請求項31】
保存時間、高pH、低pH、剪断応力、ヌクレアーゼ、光、熱、及びホルムアルデヒドとの接触から構成される群から選択される分解手段によりRNA標準を分解する請求項29に記載の方法。
【請求項32】
定量分析がbDNA分析、ノーザンブロット分析、RT−ポリメラーゼ連鎖反応、分光分析法、蛍光分析法、及びアガロースゲル電気泳動から構成される群から選択される方法を含む請求項29に記載の方法。
【請求項33】
反復DNAの量に対する細胞数の標準関数を提供する段階と、
40℃以上のプロテアーゼ溶液中でインキュベーション後にパラフィンを細胞から分離する段階と、
標準関数とプロテアーゼ溶液中の反復DNAの量に基づいてプロテアーゼ溶液中の相当細胞数を測定する段階と、
分解IVT RNA標準アッセイ入力に対するRNAアッセイ出力の標準関数を提供する段階と、
分解IVT RNA標準関数に基づいてプロテアーゼ溶液中のRNA量を測定する段階と、
測定細胞数を測定RNA量で割ることにより細胞当たりのRNAコピー数を計算する段階を含むFFPEサンプル中の細胞のRNAコピー数の測定方法。
【請求項34】
反復DNAがリボソームDNAを含む請求項33に記載の方法。
【請求項35】
プロテアーゼがプロテイナーゼKであり、インキュベーション温度が約65℃である請求項33に記載の方法。
【請求項36】
RNAアッセイがbDNAアッセイ、RT−PCR、又はノーザンブロットを含む請求項33に記載の方法。
【請求項37】
オフセットbDNAアッセイの結果に従って分解IVT RNA標準を選択するか又は標準曲線の傾きを修正する段階を更に含む請求項33に記載の方法。
【請求項38】
1個以上のオフセットキャプチャーエキステンダープローブC3配列が各々核酸の配列に相補的であり、1個以上のオフセットラベルエキステンダーL1配列が全C3相補配列から5’又は3’側に少なくとも1ヌクレオチド塩基の間隔をあけて配置された核酸の配列と相補的であるオフセットbDNAアッセイで核酸のサンプルを分析する段階を含み、
核酸がC3及びL1相補配列間で断片化していない場合よりも核酸がC3及びL1相補配列間で断片化している場合のほうが弱いシグナルがbDNAアッセイで発生される核酸の断片化の検出方法。
【請求項39】
2個以上のコントロールキャプチャーエキステンダープローブC3配列が核酸の異なる位置の配列に相補的であり、1個以上のコントロールラベルエキステンダーL1配列が核酸配列の異なる位置の配列に相補的であり、コントロールL1配列の1個以上がコントロールC3配列の2個以上に相補的な位置間の位置の核酸に相補的である第2のbDNAアッセイで核酸のサンプルを分析する段階を更に含み、
核酸が断片化していない場合よりも核酸が断片化している場合のほうがオフセットアッセイ結果に対するコントロールアッセイ結果の比が大きい請求項38に記載の方法。
【請求項40】
核酸が断片化している請求項38に記載の方法。
【請求項41】
核酸がRNA、mRNA、cDNA、FFPEサンプルに由来する核酸、イントロン配列をもたない核酸、及び1年を上回る細胞又は組織サンプルに由来する核酸から構成される群から選択される請求項38に記載の方法。
【請求項42】
オフセットC3配列に相補的な核酸配列が核酸ヌクレオチドの75%以上の間隔をあけてオフセットL1配列に相補的な核酸配列から分離している請求項38に記載の方法。
【請求項43】
1個以上のオフセットラベルエキステンダーL1配列が全C3相補配列から5’又は3’側に少なくとも25ヌクレオチド塩基の間隔をあけて配置された配列と相補的である請求項38に記載の方法。
【請求項44】
1個以上のスペーシングヌクレオチドがブロッキングプローブに相補的な配列を含む請求項38に記載の方法。
【請求項45】
2個のC3相補配列間にL1相補配列が存在しない請求項38に記載の方法。
【請求項46】
比を核酸の平均フラグメント長と相関させる段階を更に含む請求項39に記載の方法。
【請求項47】
アッセイ標準を選択する段階又は比に基づく標準関数を選択する段階を更に含む請求項39に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図19】
【公開番号】特開2008−43332(P2008−43332A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−196365(P2007−196365)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【出願人】(507254805)パノミックス・インク. (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【出願人】(507254805)パノミックス・インク. (1)
【Fターム(参考)】
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