説明

組織操作のための方法

本発明は、軟骨置換のための、軟骨形成細胞の肥大の予防における、副甲状腺ホルモン関連タンパク質(PTHrP)の使用に関連する。軟骨形成細胞から三次元軟骨作成物を操作するための方法であって、肥大を調節するために軟骨形成細胞または未成熟作成物をPTHrPで処理する工程を含む方法が提供される。また、本発明の方法によって産生される三次元軟骨、並びに軟骨形成細胞およびPTHrPの徐放が可能な生物活性足場を含む操作された軟骨作成物が提供される。加えて、本発明は、骨関節炎の治療方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織操作の分野のものである。特に、本発明は、軟骨組織操作および修復に使用するための方法に関する。本発明の方法は、関節軟骨の損傷もしくは変性を生じさせる傷害または疾患の治療に適用してもよい。
【背景技術】
【0002】
正常な関節機能のためには、関節軟骨表面が無傷であることが必須である(1)。II型コラーゲンおよびその細胞外基質のプロテオグリカン成分の分解を介したこの組織の喪失は、骨関節炎(OA)において十分に記述された特色である(1〜4)。成人において、むしばまれた関節軟骨の自己修復能力は、ほとんどまたは全くないが、おそらくは、それが無血管であるためである(5、6)。OAにおける軟骨喪失を防止するためのプロテイナーゼ阻害剤の使用への集中的研究にもかかわらず(7)、有効な薬学的療法は出現していない(8、9)。近年、関節軟骨病変の修復のために、同種の方法が開発された(5、10)。これらには、骨軟骨移植(11)、微小破壊(6)および細胞を送達するために足場マトリックスの補助を伴う、または伴わない(14)自己軟骨細胞移植(ACI)(12、13)を含む。これらの技術の全ての特徴は、これらの使用が巣状病変の修復に限定されるということ、およびOA患者は、大部分が治療から除外されることである。OA軟骨病変は、一般に大きく、および限局しておらず(15)、このため軟骨細胞または幹細胞が細胞外基質と同化するのに十分なほど長期間保持させるのに適した環境を提供しない。したがって、OA軟骨病変の修復の成功は、関節内の固定のために十分な細胞外基質を有する三次元軟骨移植片を産生することができるときに、達成される可能性があるだけである。
【0003】
軟骨組織操作は、三次元移植片の産生のための有望な方法を提供する(16、17)。有効な操作プロトコルが、既に開発されており、通常幼若動物由来の軟骨細胞を生体分解性足場上に播種してバイオリアクター内で培養する(18、19)。成体ヒト軟骨細胞を使用した三次元軟骨の産生は、はるかに挑戦的であり、より高齢のOA患者の場合は、自己ドナー組織の不足のため、おそらく臨床状況では実行不可能である。これにより、多数のグループが自己軟骨細胞の産生のための間充織幹細胞の使用を探索することとなった(20)。これらは、自己複製能力をもつ多分化能(mulitpotent)細胞である(21、22)。多くの研究では、小さな微量のペレットとして培養された接着骨髄間質細胞(BMSC)を利用し、軟骨形成を駆動させるためにTGF-βで刺激した(23、24)。これらの研究から、これらの条件下では、BMSCが軟骨細胞になり、II型コラーゲンおよびプロテオグリカン(protoeglycan)の両者を合成するという優れた組織学的証拠がある。しかし、微量ペレットは、実験モデルとして使用するためにデザインされており、これらが産生する細胞外基質の量は、移植のための実用的値のものにはあまりに少ない(25)。さらにまた、TGF-βで刺激されたBMSCは、硝子軟骨には通常存在しない肥大の初期のマーカーであるX型コラーゲンを発現するという明らかな証拠がある(26)。最後に、OA患者に由来するBMSC(OA BMSC)が軟骨細胞になって硝子軟骨を産生する能力を有するかどうかは、いまだ公知ではない。大部分の研究では、動物または正常ヒトドナー由来のBMSCを利用してきた(22〜24、27)。しかし、1つの研究では(28)、ペレットとして培養されたOA BMSCを調査し、これらが減少された軟骨形成能を有すると結論付けた。
【0004】
長骨、肋骨および脊柱の縦方向増殖は、軟骨細胞増殖、マトリックス産生、並びに胎児および若年成長板における一連の分化イベントによって調節される(総説については、(45)を参照されたい)。骨端の静止帯における緩徐な増殖性軟骨細胞は、これらの細胞周期を促進し、増殖帯では円柱状配列に整列する。これらの軟骨細胞は、それらの体積を増加させて、プレ肥大帯において副甲状腺ホルモン(PTH)/PTH関連タンパク質(PTHrP)受容体(PTHR-1)、続いてインディアンヘッジホッグ(Ihh)を発現し始める(46〜48)。肥大性軟骨細胞へのさらなる分化により、細胞容積は、7〜10倍に増大し、細胞は、高レベルのX型コラーゲン(ColX)およびアルカリホスファターゼ、続いてオステオポンチン、オステオカルシンおよびCbfalなどの骨に典型的なタンパク質を発現し始める(49)。肥大性軟骨細胞は、微絨毛を発達させて、基質小胞を分断し、これが軟骨石灰化のための核形成中心として役立つ(50)。最後に、軟骨細胞は、軟骨再吸収および骨の置換の間にアポトーシスになって(51)軟骨吸収細胞によって再吸収されるか、または軟骨の骨梁の石灰化された軟骨コアにおいてしばらくの間生存する(52)。
【0005】
成長板における軟骨細胞の増殖および分化を制御する主要なホルモン系は、BMP、bFGF、並びにPTHrPおよびその受容体PTHR-1である。入手できる証拠は、PTHrPが軟骨細胞増殖を支援し、これらの肥大性軟骨細胞:PTHR-1-/-への分化を抑制すること(53、56)、並びにPTHR-1-/-マウスが成長板軟骨細胞の減少した増殖および未成熟肥大による軟骨形成異常表現型を示すこと(55){Kronenberg、1998 #88}を示唆している。対照的に、PTHrPを過剰発現するマウスでは(46,56)、およびPTHR-1が構成的に活性化された患者では(57)、軟骨細胞肥大およびその後の軟骨内骨化が遅延され、再び成長異常を生じる。齧歯類およびニワトリの初期胚性骨端では、PTHrPが主に軟骨膜および骨膜に発現される(48)。PTHrPの合成は、BMP-2、-4、-6および-7によって阻害され(58)、Ihhによって刺激される(48)。しかし、軟骨細胞増殖の調節のメカニズムは、完全に理解されておらず、調節系内でのPTHrPの正確な役割は、解明されていない。
【0006】
幹細胞は、胚発生を通じて、並びに成人のいくつかの器官に存在する(59)。これらは、自己複製を介して永続する注目すべき能力をもつが、一方で種々の成熟細胞型に末端分化する可能性も保持する未分化細胞のプールを構成する(60)。骨髄間質細胞(BMSC)は、成体骨髄から容易に単離することができ、軟骨細胞、骨芽細胞、線維芽細胞および脂肪細胞を含む間充織系統を生じることができる多能性前駆体の集団を含む。しかし、真の間充織幹細胞は、BMSCにおいてまれな亜集団であろう(61〜63)。これらの細胞は、何度も分化することができるものの、一方では、より発育能力が制限されて、これらが種々の系統に分化する能力も保持する(64)。
【0007】
再生医療における成長領域は、軟骨組織操作および再建外科における幹細胞の適用である。これには、幹細胞の軟骨形成系統への分化を指揮するための明確に定義され、かつ効率的なプロトコルが必要である。外来性サイトカインおよび成長因子の使用により、幹細胞の軟骨形成の分化を指揮するための定義された培養環境の開発が前進する。軟骨形成の過程は、骨形成と非常に密接に絡み合っているので、軟骨形成の分化を促進するサイトカインおよび成長因子の多くは、骨形成分化にも関係する(65、66)。それ故、軟骨形成系統の方に特異的分化を偏らせるであろうこれらの種々のサイトカインおよび成長因子の最適化された微妙な組み合わせを見いだすことは、難題である。
【0008】
現在の軟骨修復技法の1つの主要な問題は、三次元カプセル化された間充織前駆体細胞が、往々にしてX型コラーゲンおよび骨原性マーカー遺伝子を発現する肥大性細胞へ分化することである(67、68)。従って、本発明の目的は、軟骨形成の三次元培養における幹細胞の肥大を阻害するための方法を提供することである。
【0009】
本発明は、PTHrPがBMSCの軟骨形成の3D培養において、肥大のマーカーであるX型コラーゲンを阻害することができるという発明者らの観察から生じる。
【0010】
従って、第1の側面において、本発明は、軟骨置換のための、軟骨形成細胞における肥大の予防におけるPTHrPの使用を提供する。
【0011】
本明細書に使用される「PTHrP」は、PTHrP、並びに天然もしくは合成の、その供与源にかかわらず、PTHrPが軟骨形成細胞における肥大(hypertropyhy)を阻害する能力を保持するその任意の相同体、類似体、誘導体または断片を意味する。好ましくは、PTHrP相同体、類似体、誘導体または断片は、PTHrP受容体PTHR-1と相互作用する能力を保持する。
【0012】
本明細書に使用される「軟骨形成細胞」は:幹細胞(たとえば、骨髄間質細胞、臍帯血幹細胞、胚性幹細胞)および軟骨細胞を含むが、限定されない軟骨を生じさせるか、または形成することができる任意の細胞を意味する。
【0013】
好ましい態様において、軟骨形成細胞は、骨髄間質細胞(BMSC)である。軟骨形成細胞は、自己由来(すなわち、患者から得られる)または非自己由来(すなわち、患者でないドナーから得られる;同種間ともいわれる)であってもよい。本発明の第1の適用では、自己BMSCを使用することが予測される。自己細胞の使用は、いくつかの利点を有する。これにより、免疫拒絶反応のリスクまたはドナー細胞のために必要とされるであろう免疫抑制のための必要が回避される。また、これにより、ドナーから患者への疾患伝染のリスクが回避される。この点で、本明細書に記述された骨関節炎患者の骨髄に由来する幹細胞を使用する比較的成熟した軟骨移植片の産生により、自己幹細胞を利用する骨関節炎のための軟骨療法を開発する可能性が開ける。以前に、OA BMSCは、正常BMSCと比較して増殖能力が乏しく、軟骨細胞形成することが報告された。本発明は、OA由来細胞の減少した潜在能力を克服することに成功する(本発明の適用は、OA由来細胞に限定されないが)。
【0014】
さらなる側面において、本発明は、軟骨形成細胞をPTHrPと共にインキュベートすることを含む、操作された軟骨組織における軟骨形成細胞の肥大を防止するための方法を提供する。好ましい態様において、軟骨形成細胞は、軟骨形成BMSCである。
【0015】
あるいは、本発明の本側面は、軟骨形成細胞由来の三次元硝子軟骨を操作するための方法であって、軟骨形成細胞または未成熟作成物をPTHrPで処置して肥大を調節する工程を含む方法として特徴づけることができる。また、本発明は、前記方法によって産生される三次元軟骨を提供する。
【0016】
通常、軟骨形成細胞は、当技術分野において公知の足場または膜支持体上に播種される。当該技術分野において公知の任意の支持体、たとえば国際公開第2006/032915号に記述された「細胞包帯」を使用してもよい。
【0017】
本方法は、移植前の組織操作された作成物のインビトロでの成熟の間に、軟骨形成BMSCと共にPTHrPをインキュベーションすることを含んでいてもよい。
【0018】
あるいは、本方法は、治療手術後の患者に対するPTHrPの投与を含んでいてもよい。好ましい態様において、本方法は、BMSCと共に播種された未成熟作成物を使用するときに、関節へのPTHrPの注射を含む。しかし、場合によっては、PTHrPの全身注射(iv/im)も好ましいであろう。加えて、適切な合成バリアントを使用するPTHrPの経口投与も可能であろう。
【0019】
さらなる可能性は、移植後にインサイチューでPTHrPをゆっくりと放出することができる生物活性足場を播種することである。加えて、足場または膜には、骨髄細胞からの軟骨細胞の産生を誘導することが公知であるTGF-βなどの放出のためのその他の因子を含んでいてもよい。従って、本発明は、また、軟骨形成細胞およびPTHrPの徐放が可能な生物活性足場を含む操作された軟骨作成物を提供する。
【0020】
もう一つの側面において、本発明は、プレ肥大性軟骨細胞を作製するための方法であって、PTHrPと共にBMSCをインキュベートすることを含む方法を提供する。
【0021】
さらなる側面において、本発明は、操作された軟骨における肥大の制御のための医薬の製造におけるPTHrPの使用を提供する。
【0022】
また、ダメージを受けた軟骨、特に骨関節炎により生じる軟骨損傷の修復のための操作された軟骨の製造におけるPTHrPの使用が提供される。
【0023】
なおさらなる側面において、本発明は、骨関節炎の治療のための方法であって、その必要のある患者に対してPTHrPの有効量を投与することを含み、骨関節炎軟骨細胞の肥大が逆戻りするか、または遅延される方法を提供する。
【0024】
本方法は:
・骨関節炎関節へのPTHrPの注射;
・組織操作された移植片に使用前の、増殖の間の骨関節炎軟骨細胞の事前処理;
・PTHrP遺伝子での骨関節炎軟骨細胞の遺伝子療法;
・PTHrPまたはその受容体の発現を直接アップレギュレートすることができる薬理学的化合物を使用すること、
を含む。
【0025】
さらにもう一つの側面において、本発明は、化合物をPTHrP様活性、すなわち軟骨形成細胞の肥大(hypertropyhy)を阻害する能力についてスクリーニングする方法であって、試験化合物を軟骨形成細胞または軟骨形成前駆細胞と共にインキュベートすることと、細胞によるX型コラーゲンの産生を対照細胞と比較して決定すること方法を提供する。
【0026】
簡単なスクリーンにおいて、軟骨形成細胞または軟骨形成前駆細胞は、プラスチック上で培養した骨髄細胞であってもよい。
【0027】
X型コラーゲンの産生は、mRNAの直接測定によって、またはプロモーター-リポータ構築物を使用することを介して決定してもよい。
【0028】
二次スクリーンでは、軟骨形成細胞には、たとえば骨髄細胞由来の軟骨操作系を含むことができる。
【0029】
そのようなスクリーンにおける適切なポジティブ対照は、PTHrP自体であるだろう。
【0030】
本発明の異なる側面の好ましい態様は、互いに必要な変更を加えたものと同様である。
【実施例】
【0031】
材料および方法
患者
骨髄プラグは、Southmead、Bristol病院にて臀部関節形成術を受けた23人のOA患者の大腿骨頭部から収集し、その52%が男性であり、48%が女性であった。彼らの平均年齢は、65.8年(42〜90歳の範囲)であった。研究は、完全に地域の倫理指針に従って行い、全ての患者には、彼らのインフォームドコンセントを得た。
【0032】
BMSCの単離および特性付け
細胞は、10% 胎児ウシ血清(FBS)、1%(v/v)Glutamax(1x;Invitrogen)および1%(v/v)ペニシリン(100U/ml)/ストレプトマイシン(100μg/ml)(Invitrogen)を補った低グルコースダルベッコ修正イーグル培地(DMEM;Sigma)からなる増殖培地中で洗浄することによって、骨髄プラグから単離した。間充織幹細胞の増殖および分化を促進するために血清バッチを選択した(29)。細胞懸濁液は、19ゲージ針を使用して、試料の任意の骨から分離した。細胞を1500rpmにて5分間遠心分離して、上清/脂肪を除去した。生じる細胞ペレットを培地に再懸濁し、次いでcm2あたり1.5〜2.0×105個の間の有核細胞の播種密度にてプレートにまいた。また、BMSC増殖および分化を増強するために培地を1ng/ml FGF-2(Peprotech UK)で補った(30、31)。これらのフラスコを5% CO2および95%空気の加湿された雰囲気中で37℃にてインキュベートした。最初の培地交換は、4日後であり、次いで培地は、接着細胞が90%コンフルエンスに到達して継代の準備ができるまで、一日おきに交換した。以前に記述したように(29)、幹細胞表面マーカーおよび多重系列潜在性について細胞を特徴づけた。
【0033】
OA BMSCを使用する微量ペレット培養。
【0034】
培養したBMSCをトリプシン処理して、以前に記述したものを(23)若干修飾して、微量ペレットとして培養した。簡潔には、500,000個の細胞を15mlの円錐ポリプロピレンチューブに置いて、10ng/ml トランスフォーミング成長因子-3(TGF-_3;R&D Systems)、1mM ピルビン酸ナトリウム(Sigma)、50μg/ml アスコルビン酸-2-リン酸(Sigma)、1×10-7M デキサメサゾン(Sigma)、1% ITS(Invitrogen)および1%(v/v)ペニシリン(100U/ml)/ストレプトマイシン(100μg/ml)(Invitrogen)を補った4.5g/lグルコースを含むDMEMからなる0.5mlの軟骨形成分化培地に再懸濁した。細胞を20℃にて1500rpmで5分間遠心分離した。ペレットは、1ペレット/チューブおよび0.5ml軟骨形成培地/チューブで、培養液中で維持した。培地は、2〜3日毎に交換した。第1週後、培地には、培養の最後まで、50μg/mlインスリン(Sigma)をさらに補った。mRNA、基質タンパク質および組織学的解析のために、軟骨形成ペレットを21日に収集した。
【0035】
OA BMSCを使用する組織操作
PGA足場(James Huckle博士およびAndrew Jackson博士、Smith & Nephew、York、UKから親切に寄贈)を、確立された方法(32)に従って直径5mm×厚さ2mmの円盤として作製した。足場を100μg/mlヒトフィブロネクチン(Sigma)のPBS溶液中に予浸して、PGA線維に対するBMSC接着を補助した。継代2または3由来のBMSCをトリプシン処理して、30μlの増殖培地に懸濁した。懸濁液を、プラスチックに対する細胞粘着を防止するために1%(w/v)アガロース(Sigma)でプレコートした組織培養ウェルの足場上へ滴状に添加した。4時間のインキュベーション後、足場を返して、さらに4時間インキュベートしてさらに足場全体に細胞を分布させた。作成物は、微量ペレット培養について上記した通りに、軟骨形成分化培地中で維持した。適切な場合、ヒト組換えPTHrP(Peprotech)を1または10μMで分化培地に含めた。培地は、週3回交換した。作成物は、37℃、5% CO2にて、50rpmの回転プラットフォームで35日間インキュベートした。収集した試料をコラゲナーゼで消化して細胞をを放出させ、これをその後のRNA抽出またはアルカリホスファターゼ活性アッセイ法のために-70℃にて貯蔵した。その他の試料は、定量的生化学的解析(下記を参照されたい)の前に-20℃に貯蔵した。いくつかの実験では、以前に記述したように(33)、単離されたウシ鼻軟骨細胞を使用して軟骨を操作した。
【0036】
微量ペレットおよび操作された軟骨の組織学的および免疫組織化学的解析
微量ペレットおよび幹細胞から操作した成熟軟骨は、O.C.T.包埋マトリックス(BDH)中で凍結させた。全奥行きの切片(厚み、7μm)をクリオスタットで切断して、4%(w/v)のパラホルムアルデヒド(Sigma)のPBS、pH 7.6溶液中で固定した。いくつかの切片をヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)または0.1%(w/v)サフラニンO(両方ともSigmaから)で染色して、それぞれマトリックスおよびプロテオグリカン分布を評価した。その他の切片は、前述したように、(33)、I型コラーゲンおよびII型(Southern Biotechnology)に対するモノクローナル抗体で免疫染色した。ビオチン化された二次抗体を、ペルオキシダーゼ標識ビオチン-ストレプトアビジン複合体で、ジアミノベンジジン基質(Vector Laboratories)により検出した(Vectastain Elite kit;Vector Laboratories, Peterborough, UK)。天然の軟骨および腱は、それぞれII型コラーゲンおよびI型コラーゲンのためのポジティブ対照として使用した。正常ヤギ血清をネガティブ対照として使用し、全ての切片をヘマトキシリン(Vector Laboratories)で対比染色した。
【0037】
組織操作した軟骨の定量的生化学的解析
作成物の乾燥重量を凍結乾燥した後に決定した。次いで、試料をトリプシンで可溶化して、最近記述されたように(34)、完全な生化学的解析のために処理した。簡潔には、試料を、1mMヨードアセトアミド、1mM EDTAおよび10μg/mlペプスタチンA(全てSigmaから)を含む2mg/ml TPCK処理したウシ膵臓トリプシンで消化した。250μlのトリプシンとの37℃での15時間の最初のインキュベーションに続いて、新たに調製したさらに250μlのプロテイナーゼの添加後に65℃にてさらに2時間インキュベーションを行った。全ての試料をインキュベーション終了後に15分間煮沸し、あらゆる残りの酵素活性を破壊した。抽出物は、以前に記述したとおり(2)、変性したII型コラーゲンに対するマウスIgGモノクローナル抗体、COL2-3/4mを使用する阻害ELISAによってアッセイした。ペプチドCB11B(CGKVGPSGAP-[OH]GEDGRP[OH]GPP[OH]GPQY)は、A. Moir博士(クレブス研究所、シェフィールド大学、UK)により、9-フルオレニルメトキシカルボニル化学を使用して合成され、全ての免疫アッセイ法において標準として使用した。また、抽出物は、以前に記述したとおり(34)、I型コラーゲンに対するウサギ抗ペプチド抗体を使用する阻害ELISAによってアッセイした。ペプチド(SFLPQPPQ)は、A. Moir博士(クレブス研究所、シェフィールド大学、UK)により、9-フルオレニルメトキシカルボニル化学を使用して合成され、全ての免疫アッセイ法において標準として使用した。消化の際のプロテオグリカンは、以前に記述したとおり(35)、ジメチルメチレンブルーを使用する(Aldrich、Gillingham、UK)比色アッセイ法によって硫酸グリコサミノグリカンとして測定した。
【0038】
アルカリホスファターゼ活性
操作された軟骨作成物の細胞は、以前に記述したように(36)、細胞外基質のコラゲナーゼ-消化後にアルカリホスファターゼ活性についてアッセイした。簡潔には、細胞を0.1ml 25mM炭酸ナトリウム(pH 10.3)、0.1%(v/v)Triton X-100で溶解した。2分後、それぞれの試料を0.2ml 15mMパラニトロフェニルリン酸(ジ-トリ塩、Sigma)の250mM 炭酸ナトリウム(pH 10.3)溶液、1.5mM MgCl2で処理した。次いで、可溶化液を37℃にて2時間インキュベートした。インキュベーション期間の後、0.1mlの一定分量を96ウェルマイクロタイタープレートへ移して、吸光度を405nmにて読んだ。一連の勾配のインキュベーション緩衝液中に調製したパラニトロフェノール(25〜500μM)により、生成物形成を定量化させた。
【0039】
RNA単離および逆転写
RNAは、SigmaのGenElute(商標)Mammalian Total RNAキットを使用して、製造業者の説明書に従って細胞培養から抽出した。逆転写(RT)は、Superscript II系(Invitrogen)使用することによって行った。総RNA(2μg)を、Superscript II(200U)、ランダムプライマー(25μM)、dNTP(それぞれ0.5mM)を含む20μlに反応体積で、42℃にて50分間逆転写した。
【0040】
プライマー設計
オンラインソフトのPrimer3(Whitehead Biomedical Research(MIT)Institute)を使用してプライマーをデザインするために、ヒトX型、II型およびI型コラーゲンのためのコード配列(それぞれ、アクセッション番号NM_000493、NM_001844およびNM_000088)を使用した。プライマーは、ゲノム配列の増幅を回避するために、イントロンの境界をまたがる。これらは、偽遺伝子増幅の可能性についても点検した。全ての公知の配列に対するBLAST検索により、特異性を確認した。ハウスキーピング遺伝子β-アクチンのための公開されたプライマー(37)を、全てのRT-PCR反応の規準化のための参照として使用した。これらのプライマーは、ゲノムDNAの混入の際のプロセスされた偽遺伝子を同時増幅しないように特異的にデザインした。全てのプライマーは、非特異的産物を伴わずに正確なサイズのPCR断片を産生し、リアルタイムRT-PCRの特異性が確認された(データ示さず)。研究に使用したプライマーの詳細は、以下の通りである:
コラーゲンX(F)GACACAGTTCTTCATTCCCTACAC、
コラーゲンX(R)GCAACCCTGGCTCTCCTT、
コラーゲンII 1(A+B方式)(F)CAACACTGCCAACGTCCAGAT、
コラーゲンII 1(A+B方式)(R)CTGCTTCGTCCAGATAGGCAAT、
コラーゲンI 1(F)AGGGCCAAGACGAAGACATC、
コラーゲンI 1(R)CAACACTGCCAACGTCCAGAT、
β-アクチン(F)GACAGGATGCAGAAGGAGATTACT、
β-アクチン(R)TGATCCACATCTGCTGGAAGGT。
【0041】
定量的リアルタイム逆転写酵素-ポリメラーゼ連鎖反応法
定量的リアルタイムPCR法(PCR)は、12.5μlのSYBR Green PCRマスター混合物(Sigma)、5μlのRT反応混合物および300nMプライマーを含む25μlの反応体積でSmart Cycler IIシステム(Cepheid)を使用して行った。β-アクチン遺伝子については、RT反応混合物を100倍希釈した。増幅プログラムは、95℃(2分)の初期変性、続く95℃(15s)、58℃(30s)でのアニーリングおよび72℃(15s)での伸長の40サイクルによってからなった。増幅後、反応混合物を60〜95℃まで0.2℃/sの割合にて加熱することにより、融解解析を行った。関心対象のそれぞれの遺伝子(X)のためのサイクル閾値(Ct)をそれぞれのRT試料について測定した。β-アクチンのCt値については、規準化のための内部参照として使用した。所与の処理時点(T)での、初期処理時(0)のその値を上回る所与の遺伝子(X)の相対的転写物レベルは、2-ΔΔCtとして算出され、ΔCt = CtT−Ct0;CtT = CtT,X−CtTおよびCt0 = Ct0,X−Ct0である。リアルタイムRT-PCRアッセイ法は、2回または3回行い、2〜4回繰り返した。
【0042】
統計分析
個々の群間の相違の比較は、両側マン-ホウィットニーU検定により、p<0.05を有意なものとした。多重比較を行った場合、群を母数によらないクラスカルワリス検定を使用する分散分析によって比較し、p<0.05を有意なものとして採用した。有意な分散が証明された場合、次いで個々の群間の相違をDunnの事後補正した両側マン-ホウィットニーU検定を使用して決定した。p<0.05を有意なものとして採用した。
【0043】
結果
単離されたOA BMSCの表現型
軟骨組織を三次元操作するために、十分に特徴づけられた幹細胞の集団を使用した。本発明者らは、この集団がCD105、CD49a、CD117、BMPR-1A、STRO-1およびVCAM-1Aについて陽性であり、かつCD34について陰性であると以前に記述した(29)。また、本発明者らは、該集団が脂肪生成系統、軟骨形成系統および骨原性系統に分化したので、これがむらなく、多分化能であることを示した(29)。本研究において、患者試料(n=23)の中で、男性と女性との間で、または年齢(図示せず)で、分化の範囲における有意差がなく、幹細胞について予想されるとおり、使用したBMSC集団がむらなく多分化能であったことを再び示している。
【0044】
OA BMSCからの軟骨細胞形成
本発明者らの初期の実験では、本発明者らは、OA BMSCをTGF-β(_3)と共に高密度ペレットで培養した。これらの条件下では、ペレットが軟骨様の小結節になり、これが裸眼で見えた(図1A)。組織学的レベルでは、これらの小結節が多数の細胞、並びに細胞外基質を含み、むらなくプロテオグリカンを染色したが、これは、主に細胞周囲の位置にあった(図1B)。同様に、ペレット全体にわたってコラーゲンIIおよびIが染色され、これは、細胞周辺で最も強かった(図1C)。
【0045】
OA BMSCを使用する軟骨組織操作
本発明者らは、材料および方法に記載したように、首尾よく、慎重に順序通りのシグナルの順序を使用して、三次元軟骨を操作することができた。最初に、OA BMSCを10%のFCSおよび1ng/mlのFGF-2中で増殖させた。第2に、増殖した細胞を、フィブロネクチンでプレコートしたPGA足場上に播種した。第3に、これらを穏やかに回動するプラットフォームにおいて1週間、分化培地中で10ng/mlのTGF-β3と共に培養した。第4に、これらを回転プラットフォームにおいてさらに4週間、分化培地中で50μg/mlインスリン並びに10ng/mlのTGF-β3と共に培養した。これらの慎重に定義された条件下で、本発明者らは、巨視的レベルで硝子軟骨に似た、白く、光沢のある組織を産生することができた(図2A)。組織学的解析において、これらの軟骨作成物は、適度にII型コラーゲンについては、および弱くタイプIコラーゲン(図2C)については、丸い細胞およびプロテオグリカンが広範囲に染色される細胞外基質を含むことが見いだされた(図2B)。免疫染色のためのネガティブおよびポジティブ対照を図2Dに示してある。
【0046】
操作された軟骨の生化学的解析
本発明者らは、一連の十分に確証され、かつ特異的なアッセイ法(34)を使用して、操作された軟骨の広範な定量分析を行った。比較のために、微小ペレット培養も解析した。本発明者らのアッセイ法の感受性の高い性質にもかかわらず(34)、本発明者らは、微量ペレットあたり最低500,000個の細胞を使用し、定量分析のための十分な細胞外基質を作成するために培養終了後に3つのこのようなペレットを組み合わせなければならなかった。組織操作のためには、本発明者らは、足場あたりわずか300,000個の細胞を使用して、一度に1つの試料を解析することができた。培養は、解析前に35日間までTGF-β3中で維持した。しかし、ペレットの場合、21日を越えるとマトリックスのいくらかが喪失する証拠があり(図示せず)、このため、この最適な時点で培養を中止した。ペレットおよび操作した組織の乾燥重量を凍結乾燥後に算出した。操作した組織の場合、残りの全てのPGA足場の重量を細胞外基質の酵素消化後に決定して、これを総乾燥重量から減算した。これに基づいて、本発明者らは、操作した組織の細胞外基質がペレット培養の少なくとも5倍であったこと、およびこの相違が有意であったことを決定した(表1)。さらに、操作された軟骨は、微量ペレット培養よりも有意に多くのプロテオグリカンおよびII型コラーゲンを含んだ。また、わずかに高いI型コラーゲン含量であったが、これでもまだ操作された軟骨におけるII型コラーゲン含量の10%未満であった。
【0047】
本発明者らは、最高の軟骨組織操作を、ウシ鼻軟骨細胞(BNC)を使用して達成することができることを以前に見いだした(33)。従って、本発明者らは、OA BMSCから、およびBNCから操作した軟骨の結果を比較した。2つの細胞型の間には、II型コラーゲン、I型コラーゲンまたはプロテオグリカンの含量の有意差はなく(図3)、OA BMSCに由来する軟骨細胞がBNC程度に有効なことを示している。
【0048】
表1。軟骨細胞外基質の生化学的解析
【表1】

【0049】
1生化学的アッセイ法を使用する正確な定量化のために必要とされる細胞の最小数
2ペプチドエピトープの選択的抽出後の特異的免疫アッセイ
3グルコサミノグリカン(glucosaminoclycans)のジメチルメチレンブルー比色アッセイ
4マン-ホイットニーU検定:***p<0.0001 v.ペレット培養。
【0050】
PTHrPによる肥大の阻害
予備実験において、本発明者らは、微量ペレットにおいてTGF-β3と共に培養したOA BMSCがX型コラーゲンの発現増加を有したことを観察し、これらの細胞が硝子軟骨よりもむしろ肥大性軟骨を産生する可能性が高かったことを示している。従って、本発明者らは、成長板におけるプレ肥大性軟骨細胞の成熟を防止することが示されているPTHrPを使用して、この肥大を阻害する可能性を調査した。TGF-β3を伴わずに単層で培養されたBMSCは、ごくわずかなX型コラーゲンしか発現しなかったが、同じ細胞をTGF-β3駆動系において軟骨を操作するために使用したときに、その発現が有意にアップレギュレートされた(図4A)。PTHrPは、有意に、かつ用量依存的様式で、X型コラーゲンmRNAのこのアップレギュレーションを抑制した(図4A)。同様に、PTHrPは、10μMにて有意に本発明者らの操作された軟骨における細胞のアルカリホスファターゼ含量を減少させた(図4B)。
【0051】
PTHrPは、肥大の初期のマーカーを抑制することができることが証明されたので、本発明者らは、PTHrP培養において操作された軟骨の品質の減少がないことを証明することが重要であると考えた。軟骨特異的II型コラーゲンについては、mRNAまたはタンパク質に対して効果を有さなかった。(図5A)。硝子軟骨には通常存在しないI型コラーゲンは、mRNAおよびタンパク質レベルの両方において、これらの軟骨作成物においてすでに低レベルであったものからさらに減少された(図5B)。これは、I型コラーゲンに対するコラーゲンIIの比で4倍有意な改善を生じ(図5C)、プロテオグリカン含量に対する効果はなかった(図5D)。
【0052】
考察
本発明者らは、OA BMSCからの組織操作硝子軟骨の実現可能性を初めて証明した。生化学的には、軟骨品質は、入手できる最高の細胞供与源、すなわちウシ鼻軟骨細胞を使用して達成されるもの(33)と同等であった。さらに、本発明者らは、BMSCが肥大する傾向を、PTHrPを使用してダウンレギュレートすることができることを示した。これらの知見は、OA患者のために、三次元軟骨移植片を酸性するために彼ら自身の骨髄細胞を使用して軟骨を修復する方法を開発することが可能であることを示唆する。
【0053】
本研究では、ブリストルの大きな整形外科紹介センターにて関節形成術を受けている臀部OA患者に由来する幹細胞を利用した。したがって、この患者群は、軟骨移植からの利益を受けるかもしれない患者の典型となる可能性が高い。本発明者らは、彼らが微量ペレット培養において任意の細胞外基質を産生する能力が乏しいにもかかわらず、これらの細胞を、一連の特異的分子シグナルを適切な順序で適用して用いることにより、軟骨を産生するように方向付けることができることを証明した。最初に、接着性間葉系細胞を、これらの細胞数が合理的期間以内に増殖することができるように、増殖をさせなければならない。Murphyら(28)は、10%血清中で培養されたOA BMSCの増殖速度が、対照細胞のものと比較して減少されたことを見いだした。本研究において、本発明者らは、血清に加えて、1ng/mlのFGF-2を使用した。この成長因子は、正常BMSCの増殖を増強することが以前に示された(30、31)。より最近では、本発明者らは、OA BMSC増殖がFGF-2によって増強されること、および該メカニズムが幹細胞核小体のタンパク質であるヌクレオシテミン(nucleostemin)に依存的であることを見いだした(29)。これは、Murphyらによって同定された増殖能力の減少が、この成長因子を使用することによって克服することができることを示唆する。本発明者らが使用した第2の分子シグナルは、OA BMSCの接着を増強するためにPG足場に被覆したフィブロネクチンであった。フィブロネクチンは、正常間葉細胞の接着を促進することが以前に示されており(38)、本発明者らの手でも、OA患者に由来するものについて、同じことが真実であった。第3の分子シグナルは、TGF-β3であった。TGFスーパーファミリーの成長因子が、正常なヒトまたは動物BMSCの微量ペレット培養において軟骨形成を促進することの広範な証拠があり(22〜24、27)、本発明者らは、今回、これがOA BMSC由来の軟骨形成を生じさせるのに有効なことを示した。第4のシグナルは、分化細胞による細胞外基質の形成を促進するために、TGF-βによる分化の開始の1週後に組織操作培養に添加した50μg/mlインスリンであった(39)。最後に、本発明者らは、第5のシグナルとしてPTHrPの使用を調査した。以前の調査(22、26)では、TGF-βが、X型コラーゲンmRNAのアップレギュレーションによって示されるように、肥大性軟骨細胞の形成を促進することを示した。PTHrPは、成長板におけるプレ肥大性軟骨細胞の成熟をダウンレギュレートすることが公知であり(40)、したがって、本発明者らは、本発明者らの組織操作培養においてその効果を調査した。これは、初期肥大マーカーをダウンレギュレートしただけでなく、これは、I型コラーゲンがダウンレギュレーションすること、一方でII型コラーゲンおよびプロテオグリカンが維持されたことにより示されるとおり、本発明者らの細胞外マトリックスの生化学的品質を増強した。
【0054】
本発明者らは、本発明者らが軟骨操作のための優れた軟骨細胞であることを以前に示したBNCを使用して産生されたもの(33)と比較して、最高品質である軟骨を産生することができた。しかし、この操作された軟骨は、インビトロで操作された全ての軟骨にあてはまる特徴の、天然の組織よりも低いコラーゲン量を有する(18、19、33、39、41)。非常に未成熟な軟骨作成物さえ、関節内に一旦移植されたならば天然の硝子軟骨へと成熟することができるという証拠が増えつつあるのの(42、43)、それにもかかわらず移植前にインビトロで完全に成熟された組織を操作することが好ましいであろう。このような成熟をインビトロにおいて達成することができるかどうかは、現在不明である。
【0055】
本発明者らの知見は、正常BMSCを、軟骨細胞を産生するために使用することができることを示した他者の研究(20、22〜25、27)を支持し、および発展させる。Murphyら(28)は、OA BMSCが増殖して、微量ペレット培養において軟骨細胞を形成する能力が乏しいことを記述した。本発明者らは、PGA足場の使用と組み合わせて、上記の一連の分子シグナルを使用して、OAに由来する細胞のこの能力の減少を克服した。Liら(25)は、移植するのに十分な体積および質量で軟骨を産生するために、足場を使用することの重要性を記述した。しかし、これらの研究では、軟骨品質が微量ペレット培養を使用して達成されたものを超えないことが、組織学的データにより示唆された。本発明者らが、品質の増強された作成物をうまく産生した理由は、おそらく生体材料足場と共に特異的分子シグナルを使用したためである。
【0056】
OA BMSCを使用して相対的に成熟した軟骨移植片を産生することができるという本発明者らの結論により、自己幹細胞を利用する軟骨療法を開発する可能性が開ける。自己細胞の使用は、いくつかの利点を有する。これにより、免疫拒絶反応のリスクまたはドナー細胞のために必要とされるであろう免疫抑制のための必要が回避される。また、これにより、ドナーから患者への疾患伝染のリスクが回避される。現在、軟骨細胞(21、44)並びにその他の細胞を産生するための胚幹細胞の使用に集中的な研究がなされている。科学的な重要性の一方で、胚性株化細胞が臨床状況において使用されるかどうかは、現在不明である。倫理的懸念とは別に、一部の患者は、なんとかしなければならない奇形腫形成、並びに免疫拒絶反応の生れつきのリスクを有するであろう(21)。
【0057】
自己幹細胞は、患者および臨床家にとって魅力的な選択肢を提供する。しかし、自己療法は、高価で、特殊化された完全な無菌室において数週間にわたる細胞および組織の培養が必要となることも認識されなければならない。したがって、費用を減少させるために最短の可能な時間で行うことができるように、本発明者らの組織操作プロトコルを開発することが重要である。また、我々は、軟骨下骨層に対して軟骨移植片を付着させる方法および周囲組織との移植片の組込みを促進する方法を開発することも必要である。これらの難題にもかかわらず、本明細書において報告した本発明者らの知見は、自己軟骨補充療法の開発の前進を示す。
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【0058】
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本発明の態様は、上記の非限定の実施例に記述されており、下記の図に対して参照がなされる:
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】BMSCペレット培養における軟骨形成。継代2または3由来の増殖したOA BMSCは、材料および方法の下に記述したとおりに、三次元ペレットとして培養した。A、ペレットの巨視的外見(スケールバーは、3mmである)。B〜C、培養終了後のペレットの組織の外見(スケールバーは、100nmである)。切片は、ヘマトキシリンおよびエオシン(B、左パネル)、硫酸プロテオグリカンについてはサフラニンO(B、右パネル)で、並びに特異的抗体を使用してI型(C、右パネル)およびII型(C、左パネル)コラーゲンについて染色した。相応するポジティブおよびネガティブ対照を図2に示してある。
【図2】BMSC由来の軟骨組織操作。継代2または3由来の増殖したOA BMSCを使用して、材料および方法の下に記述したとおりに、PGA足場上で軟骨を操作した。操作された軟骨の巨視的外見(スケールバーは、3mmである)。B〜C、培養終了後の操作された軟骨の組織の外見(スケールバーは、100nmである)。切片は、ヘマトキシリンおよびエオシン(B、左パネル)、硫酸プロテオグリカンについてはサフラニンO(B、右パネル)で、並びに特異的抗体を使用してI型(C、右パネル)およびII型(C、左パネル)コラーゲンについて染色した。D、免疫染色のための対照。左パネルは、ネガティブ対照(正常ヤギ血清)であり、残りのPGA足場の染色を示すが、細胞外基質の染色は示さない。ポジティブ対照は、硝子軟骨(中央パネル)のII型コラーゲンおよび腱におけるI型コラーゲン(右パネル)について示してある。
【図3】軟骨細胞およびBMSC由来の操作された軟骨の定量的比較。軟骨は、継代2または3にてウシ鼻軟骨細胞から(縞のバー;n=18)または骨関節炎BMSCから(灰色のバー;n=19)操作し、次いで、材料および方法の下に記述したとおりにトリプシンで消化した。消化物を、特異的免疫アッセイ法を使用してコラーゲン型IおよびIIについてアッセイした。プロテオグリカンは、ジメチルメチレンブルー比色アッセイ法を使用して、硫酸グリコサミノグリカンとして測定した。それぞれのタンパク質の含量は、乾燥重量の%として表し、結果は、平均±SEMとして示してある。それぞれのタンパク質について、鼻軟骨細胞およびBMSCを、両側マン-ホイットニーU検定を使用して比較した。NS=有意差なし。
【図4】PTHrPによる肥大の阻害。継代2または3由来の増殖した骨関節炎BMSCは、材料および方法の下に記述したとおり、単層(点刻したバー)で培養するか、またはPTHrP(灰色のバー)の有無においてPGA足場上で軟骨を操作するために使用した。A、培養終了時の定量的リアルタイムPCRによる型XコラーゲンmRNAの分析。結果は、TGF-β対照(0 PTHrP)に対して規準化してあり、7人の患者についての平均±SEMとして示してある;**p<0.01, ***p<0.0001;Dunnの事後補正した両側マン-ホウィットニーU検定。B、アルカリスファターゼ含量は、材料および方法の下に記述したとおり、pニトロフェニルホスフェートとの反応によって決定した;酵素活性は、対照群(PTHrPなし)に対して規準化してある。結果は、6人の患者についての平均±SEMとして示してある。*p<0.05;2両側マン-ホウィットニーU検定。
【図5】操作された軟骨の細胞外基質に対するPTHrPの効果。継代2または3由来の増殖した骨関節炎BMSCは、材料および方法の下に記述したように、単層(点刻したバー)で培養するか、またはPTHrP(灰色のバー)の有無においてPGA足場上で軟骨を操作するために使用した。II型コラーゲン(A)およびI型(B)は、mRNAについては定量的リアルタイムPCRによって(左パネル;それぞれの場合にn=6)およびタンパク質についてはトリプシン消化の特異的免疫アッセイ法によって(右パネル;それぞれの場合にn=7)解析した。mRNAについての結果は、TGF-β対照(0 PTHrP)に対して規準化した。C、タンパク質として測定したコラーゲンII/コラーゲンIの比(それぞれの場合にn=7)。D、プロテオグリカンは、ジメチルメチレンブルー比色アッセイ法を使用して硫酸グリコサミノグリカンとして測定した(それぞれの場合にn=7)。全ての結果は、平均±SEMとして示してある。*p<0.05, **p<0.01、NS =有意差なし;Dunnの事後補正した両側マン-ホウィットニーU検定。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟骨形成細胞から三次元軟骨作成物を操作するための方法であって、前記方法は、前記軟骨形成細胞または未成熟作成物をPTHrPで処理して肥大を制御することを含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記軟骨作成物のインビトロでの成熟の間にPTHrPの存在下において軟骨形成細胞をインキュベートすることを含む方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、前記軟骨形成細胞は、操作された軟骨作成物の移植後にインサイチューでPTHrPの徐放が可能な生物活性足場上に播種される方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、前記作成物を患者に移植後に、関節への注射、全身注射または経口投与により、PTHrPを前記軟骨形成細胞または未成熟作成物に送達することを含む方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法であって、前記軟骨形成細胞は、骨髄間質細胞である方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法によって産生される三次元軟骨。
【請求項7】
軟骨形成細胞とPTHrPの徐放が可能な生物活性足場とを含む操作された軟骨作成物。
【請求項8】
操作された軟骨における肥大の制御のための医薬の製造におけるPTHrPの使用。
【請求項9】
ダメージを受けた軟骨の修復のための操作された軟骨の製造におけるPTHrPの使用。
【請求項10】
請求項9に記載の使用であって、前記軟骨損傷は、骨関節炎の結果である使用。
【請求項11】
骨関節炎の治療のための方法であって、その必要のある患者に対してPTHrPの有効量を投与する工程を含み、骨関節炎軟骨細胞の肥大が逆戻りするか、または遅延される方法。
【請求項12】
化合物を軟骨形成細胞における肥大を阻害する能力についてスクリーニングする方法であって、試験化合物を軟骨形成細胞または軟骨形成前駆細胞と共にインキュベートすることと、対照細胞と比較した前記細胞によるX型コラーゲンの産生を決定することとを含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−501008(P2009−501008A)
【公表日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−520000(P2008−520000)
【出願日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際出願番号】PCT/GB2006/002521
【国際公開番号】WO2007/003958
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(300002942)ザ ユニバーシティ オブ ブリストル (10)
【Fターム(参考)】