説明

組織標本作製補助ブロックを作製するための包埋皿

【課題】組織標本を作製する際に、標本の観察面を確実に包埋皿の底面に固定し、組織標本の配置を保つことが可能な補助ブロックを作製する包埋皿を提供する。
【解決手段】標本の観察面を確実に包埋皿の底面に固定するためには、溝付き補助ブロックを作製し、前記溝の中に組織標本を陥入した後、公知の包埋皿に、組織標本を陥入された補助ブロックを入れ、包埋材を注入し、組織標本ブロックを作製する。組織標本の配置を保つためには、底面に組織標本を入れる陥凹部を有した組織包埋皿を作製する。組織標本は底面の陥凹部に配置されるため、包埋皿に包埋材を注入する作業により配置が乱れることはない。陥凹部を有した組織包埋皿により作製された組織標本を包埋する補助ブロックを、既知の包埋皿に入れ、包埋材を注入し、組織標本ブロックを作製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織標本包埋ブロックを作製する際に、標本の観察面のみを確実に包埋皿の底面に固定し、組織標本の配置を保つことが可能な補助ブロックを作製する包埋皿に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、一般に使用されている組織標本包埋ブロックを作製するための包埋皿は、底面が平坦となっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、底面が平坦な包埋皿では、観察面(底面)の面積が非観察面(側面)の面積に比して著しく小さい組織標本の観察面を、包埋皿の底面に確実に固定して、組織標本包埋ブロックを作製するのは技術を必要とする作業となる。
【0004】
観察面のみでなく、非観察面を含めて組織標本が包埋皿の底面に固定されて組織標本の作製がなされると、観察面は相対的に小さくなり、充分な組織観察が行えない。
【0005】
特に、病気の診断を行う病理組織標本において前記の状態に陥ると、適切な診断を行うことができなくなる。
【0006】
また、一つの組織標本包埋ブロックの中に、複数の組織標本を包埋する場合、底面が平坦な包埋皿では、包埋材を注入する作業で組織の配置が乱れてしまう。
【0007】
複数の部位から採取された標本を観察する場合、包埋材を注入する作業で組織標本の配置が乱れ、その配置が再構成できないと、観察する標本の採取部位を同定することが不可能となる。
【0008】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、標本の観察面のみを確実に包埋皿の底面に固定し、組織標本の配置を保つことが可能な補助ブロックを作製する包埋皿を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するために次のような手段を講じた。
【0010】
標本の観察面のみを確実に包埋皿の底面に固定するためには、溝付き補助ブロックを作製し、前記溝の中に組織標本を陥入した後、公知の包埋皿に、組織標本を陥入された補助ブロックを入れ、包埋材を注入し、組織標本ブロックを作製する。
【0011】
組織標本の配置を保つためには、底面に組織標本を入れる陥凹部を有した組織包埋皿を作製する。組織標本は底面の陥凹部に配置されるため、包埋皿に包埋材を注入する作業により配置が乱れることはない。陥凹部を有した組織包埋皿により作製された、組織標本を包埋する補助ブロックを、既知の包埋皿に入れ、包埋材を注入し、組織標本ブロックを作製する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、標本の観察面のみを確実に包埋皿の底面に固定し、組織標本の配置を保つことが可能であり、組織標本を用いた研究および診断の質を向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0014】
補助ブロック作製包埋皿(1)は、底面に凸部(1A)を有している。補助ブロック作製包埋皿(1)に包埋材を注入して補助ブロック(図2)を作製する。2Aは上面から、2Bは底面から見た補助ブロックの透斜視図である。
【0015】
図3の如く補助ブロック(図2)の凹部(2C)に、組織標本(3)を陥入する。組織標本(3)を陥入した補助ブロック(I)を、組織標本が陥入された側を底面として公知の包埋皿(13)に入れる(図4)。図4の如く組織標本が陥入された補助ブロック(I)を入れた公知の包埋皿(13)に、包埋材を注入し、組織標本ブロックを作製する。
【0016】
補助ブロック作製包埋皿(4)は、底面に複数の凸部(4A)を有している。補助ブロック作製包埋皿(4)に包埋材を注入して補助ブロック(図6)を作製する。5Aは上面から、5Bは底面から見た補助ブロックの透斜視図である。
【0017】
6Aは粘膜切除標本で、6Bは6Aを細切して短冊状とした組織標本である。図7の如く補助ブロック(図6)の複数の凹部(5C)に、短冊状の組織標本(6B)を1本ずつ陥入する。組織標本(6B)を陥入された補助ブロック(II)を、組織標本が陥入された側を底面として公知の包埋皿(13)に入れる(図8)。図8の如く組織標本が陥入された補助ブロック(II)を入れた公知の包埋皿(13)に、包埋材を注入し、組織標本ブロックを作製する。
【0018】
上記の補助ブロック作製包埋皿の底面にある凸部(1A、4A)の長さ、径および数は、図と同じである必要はない。また、図では凸部(1A、4A)の形状を角張った形状で示したが、曲面状としてもよい。
【0019】
補助ブロック作製包埋皿(7)は、底面に複数の凹溝部(7A)を有している。8は針生検等により採取された細長い組織標本である。図9の如く組織標本(8)を補助ブロック作製包埋皿(7)の凹溝部(7A)に1本ずつ並べ、包埋材を注入して補助ブロック(図10)を作製する。9Aは上面から、9Bは底面から見た補助ブロックの透斜視図である。
【0020】
図11の如く組織標本(8)が包埋された側を底面として、補助ブロック(図10)を公知の包埋皿(13)に入れた後、包埋材を注入して組織標本ブロックを作製する。
【0021】
補助ブロック作製包埋皿(10)は、底面に複数の半球状凹部(10A)を有している。11は生検等により採取された小さな組織標本である。図12の如く組織標本(11)を補助ブロック作製包埋皿(10)の半球状凹部(10A)に1個ずつ並べ、包埋材を注入して補助ブロック(図13)を作製する。13Aは上面から、13Bは底面から見た補助ブロックの透斜視図である。
【0022】
図14の如く組織標本(11)が包埋された側を底面として、補助ブロック(図13)を公知の包埋皿(13)に入れた後、包埋材を注入して組織標本ブロックを作製する。
【0023】
上記の補助ブロック作製包埋皿底面の凹部(7A、10A)の長さ、径および数は、図と同じである必要はない。また、図では凹部(7A、10A)の形状を曲面状で示したが、角張った形状としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】底面に凸部を有する補助ブロック作製包埋皿の透斜視図である。
【図2】底面に凸部を有する補助ブロック作製包埋皿(1)によって作製される底面に凹部を有する補助ブロックの透斜視図である。
【図3】底面に凹部を有する補助ブロック(図2)の凹部に、組織標本(3)を陥入する方法を示した透斜視図である。
【図4】組織標本を陥入された補助ブロック(I)を、公知の包埋皿に入れた透斜視図である。
【図5】底面に複数の凸部を有する補助ブロック作製包埋皿の透斜視図である。
【図6】底面に複数の凸部を有する補助ブロック作製包埋皿(4)によって作製される底面に複数の凹部を有する補助ブロックの透斜視図である。
【図7】粘膜切除標本(6A)を切断して短冊状の組織標本(6B)とし、底面に複数の凹部を有する補助ブロック(図6)の凹部に、短冊状の組織標本を陥入する方法を示した斜視図である。
【図8】複数の短冊状となった粘膜組織標本を陥入された補助ブロック(II)を、公知の包埋皿に入れた透斜視図である。
【図9】底面に複数の凹溝部を有する補助ブロック作製包埋皿(7)の透斜視図で、細長い組織標本(8)を凹溝部に1本ずつ並べる方法を示した透斜視図である。
【図10】底面に複数の凹溝部を有する補助ブロック作製包埋皿(7)によって作製される、底面に複数の組織標本を包埋する凸柱部を有する補助ブロックの透斜視図である。
【図11】底面に複数の組織標本を包埋する凸柱部を有する補助ブロック(図10)を、公知の包埋皿に入れた透斜視図である。
【図12】底面に複数の半球状凹部を有する補助ブロック作製包埋皿(10)の透斜視図で、小さな組織標本(11)を凹溝部に1個ずつ並べる方法を示した透斜視図である。
【図13】底面に複数の半球状凹部を有する補助ブロック作製包埋皿(10)によって作製される、底面に複数の組織標本を包埋する半球状凸部を有する補助ブロックの透斜視図である。
【図14】底面に複数の組織標本を包埋する半球状凸部を有する補助ブロック(図13)を、公知の包埋皿に入れた透斜視図である。
【符号の説明】
【0025】
1…底面に凸部を有する補助ブロック作製包埋皿
1A…凸部
2A…底面に凹部を有する補助ブロックの上面透斜視図
2B…底面に凹部を有する補助ブロックの底面透斜視図
2C…凹部
3…組織標本
I…組織標本を陥入された補助ブロック
4…底面に複数の凸部を有する補助ブロック作製包埋皿
4A…複数の凸部
5A…底面に複数の凹部を有する補助ブロックの上面透斜視図
5B…底面に複数の凹部を有する補助ブロックの底面透斜視図
5C…複数の凹部
6A…粘膜切除標本
6B…細切されて短冊状となった粘膜切除標本
II…複数の短冊状となった粘膜組織標本を陥入された補助ブロック
7…底面に複数の凹溝部を有する補助ブロック作製包埋皿
7A…複数の凹溝部
8…細長い組織標本
9A…底面に複数の組織標本を包埋する凸柱部を有する補助ブロック上面透斜視図
9B…底面に複数の組織標本を包埋する凸柱部を有する補助ブロック底面透斜視図
9C…複数の凸柱部
10…底面に複数の半球状凹部を有する補助ブロック作製包埋皿
10A…複数の半球状凹部
11…小さな組織標本
12A…底面に複数の組織標本を包埋する半球状凸部を有する補助ブロック上面透斜視図
12B…底面に複数の組織標本を包埋する半球状凸部を有する補助ブロック底面透斜視図
12C…複数の半球状凸部
13…公知の包埋皿

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標本の観察面のみを確実に包埋皿の底面に固定するための溝付き補助ブロック作製用包埋皿。
【請求項2】
組織標本の配置を保つために底面に組織標本を入れる陥凹部を有した組織包埋皿。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−105839(P2006−105839A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−294419(P2004−294419)
【出願日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(302044720)
【Fターム(参考)】