説明

組織部位における減圧を管理するためのシステムおよび方法

【課題】組組織処置の分野に関し、織部位における減圧を管理するための装置および方法を提供する。
【解決手段】装置は、減圧を生じさせる減圧源110を含む。減圧は、送達チューブ135を介して組織部位に送達される。装置は、単一の圧力センサ155を含む。この単一の圧力センサ155は、組織部位における実際の減圧を検出する。装置は、制御装置170も含む。この制御装置170は、減圧源110によって生成される減圧の増加に対する、単一の圧力センサ155によって測定された実際の減圧の反応性を計測する。装置は表示器180を含む。単一の圧力センサ155によって測定された実際の減圧が、減圧源110によって生成される減圧の増加に反応しないときに、表示器180は信号を発する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、組織処置の分野に関するもので、より詳細には、組織部位における減圧を管理するためのシステムおよび方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
臨床研究および実践は、組織部位の近傍に減圧を付与することが組織部位における新たな組織の成長を拡大および促進することを示している。この現象の応用は多数あるが、減圧の適用は、創傷の治療において特に成果を上げている。医学界では、減圧を利用した創傷の処置を、“負圧組織処置”、“減圧療法”あるいは“吸引治療”と呼ぶときもある。この種の処置は、より速い治癒および肉芽組織形成の増加を含む、多くの恩恵を与える。
【0003】
減圧処置システムによってもたらされた組織部位における減圧は、減圧処置の効率を維持または増加するために適切に管理しなければならない場合がある。また、減圧処置システムの構成要素の漏れおよび閉塞は、効果的な処置を維持するために、検出して、直さなければならない場合がある。例えば、吸引ポンプのような減圧源を組織部位に結合するチューブの漏れまたは閉塞は、組織部位に施される減圧処置を台無しにする可能性がある。減圧処置システムの管理または制御は、一般に、“ポンプ圧制御”、“差圧制御”と呼ばれることもある。
【0004】
現在使用されているポンプ圧制御システムの1つにおいては、圧力がポンプ出口で測定されて、その圧力が、ポンプ出口で目標圧力を達成するためにポンプを駆動する制御システムに入力される。しかしながら、このシステムは、組織部位またはその近傍で圧力を測定することができないため、組織部位近傍の圧力と、ポンプ出口で測定した圧力とのどんな差異も無視している。このため、現在使用されているこのポンプ圧制御システムは、組織部位とポンプとの間に生じる漏れや閉塞に関する情報を与えることができない。
【0005】
現在使用されている差圧制御システムは、ポンプ出口と組織部位の両地点で圧力を測定するために2基のセンサを用いている。それら2基のセンサによって測定された圧力は、比較され、これにより、減圧処置システムにおける漏れや閉塞の発生を識別することができる。しかしながら、現在の差圧制御システムで使用されている2基のセンサは、システムのサイズ、重量、費用および複雑さを増大させる。例えば、2基のセンサを使用することにより、減圧処置システムで使用される電子回路および電力量が増加する。また、2基の異なるセンサからの測定値を比較するために、減圧処置システムは、比較を行うための回路およびソフトウェアを備える必要がある。現在の差圧制御システムに必要な追加的構成要素は、低重度の創傷や歩行可能な患者の創傷の治療に使用される当該システムの能力を低下させる。また、追加的構成要素は、減圧処置システムを目立たせるとともにその重量を増加させ、その結果、不快感を増加させ、患者の動きやすさを制限する。
【発明の概要】
【0006】
減圧処置システムに関する既存の問題点を軽減するために、本明細書に記載の例示的な実施形態は、組織部位における減圧を管理するための装置および方法を対象とする。上記装置は、減圧を生じさせる減圧源を含む。減圧は、送達チューブを介して組織部位に送達される。上記装置は、単一の圧力センサを含む。この単一の圧力センサは、組織部位における実際の減圧を検出する。上記装置は、制御装置も含む。この制御装置は、減圧源によって生成される減圧の増加に対する、単一の圧力センサによって測定された実際の減圧の反応性を計測する。上記装置は表示器を含む。単一の圧力センサによって測定された実際の減圧が、減圧源によって生成される減圧の増加に反応していないと制御装置が判定したときに、表示器は信号を発する。
【0007】
例示的な実施形態は、組織部位における減圧を管理するための方法も提供する。その方法においては、目標減圧を決定する。上記方法においては、単一の圧力センサを使用して組織部位における実際の減圧を検出する。上記方法においては、実際の減圧を目標減圧と比べて、比較を形成する。上記方法においては、上記比較に基づいて減圧管理機能を果たす。
【0008】
別の実施形態において、上記方法においては、減圧源を使用して、生成される減圧を増加させる。上記方法においては、単一の圧力センサを使用して、組織部位における実際の減圧を測定する。上記方法においては、組織部位における実際の減圧が、生成される減圧の増加に反応しないのに応答して、表示器を用いて信号を発する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の例示的な実施形態に係る、組織部位において減圧を管理するための装置のブロック図である。
【図2】図2は、本発明の例示的な実施形態に係るマルチルーメンチューブ(multi-lumen tube)の斜視図である。
【図3】図3は、本発明の例示的な実施形態に係るマルチルーメンチューブの斜視図である。
【図4】図4は、本発明の例示的な実施形態に係る、組織部位において減圧を管理するための方法を示すフローチャートである。
【図5】図5は、本発明の例示的な実施形態に係る、組織部位において減圧を管理するための方法を示すフローチャートである。
【図6】図6は、本発明の例示的な実施形態に係る、組織部位において減圧を管理するための方法を示すフローチャートである。
【図7】図7は、本発明の例示的な実施形態に係る、組織部位において減圧を管理するための方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の発明を実施するための形態においては、その一部を構成する添付図面に対して参照がなされるとともに、発明を実施できる特定の好ましい実施形態を説明することによって示される。それらの実施形態は、当業者が本発明を実施できる程度に十分詳細に記載されており、その他の実施形態が利用可能で、本発明の精神または範囲を逸脱することなく、論理構造的、機械的、電気的および化学的な変更が可能であることを理解されたい。当業者により本発明を実施可能とするのに必要のない細部説明を避けるために、当業者に既知の一部の情報を説明から省略する可能性がある。したがって、以下の詳細な説明は、限定の意味で捉えるべきではなく、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ定義される。
【0011】
本明細書に記載の例示的な実施形態は、組織部位における減圧を管理するための装置および方法を提供する。減圧は、概して、処置を受ける組織部位の周囲圧力未満の圧力のことをいう。多くの場合、この減圧は、患者がいる位置の大気圧未満となるであろう。“真空”および“負圧”といった用語が組織に加えられる圧力を説明するのに使用されるかもしれないが、組織部位に加えられる実際の圧力は、通常は完全真空にかかる圧力よりも遙かに低くてもよい。この用語と一致して、減圧または真空圧の増加は、絶対圧の相対的な低下のことをいい、一方、減圧または真空圧の減少は、絶対圧の相対的な増加のことをいう。
【0012】
上記装置は、減圧を生成する減圧源を含む。減圧源は、減圧を生成することができる任意の装置である。減圧は、送達チューブを介して組織部位に送達される。上記装置は、単一の圧力センサを含む。圧力センサは、圧力を測定または検出することができる任意の装置である。この単一の圧力センサは、組織部位における実際の減圧を検出する。一実施形態において、単一の圧力センサは、上記装置に含まれる唯一の圧力センサである。
【0013】
上記装置は、制御装置も含む。制御装置は、単一の圧力センサからのデータのようなデータを処理することができる任意の装置である。制御装置は、当該装置の1または複数の構成要素の操作を制御するものであってもよい。制御装置は、減圧源によって生成される減圧の増加に対する、単一の圧力センサによって測定された実際の減圧の反応性を判定する。
【0014】
一実施形態において、減圧源は、単一の圧力センサによって検出された組織部位における実際の減圧が目標減圧を超えるときに、減圧の生成を減少させる。別の実施形態において、目標減圧が、単一の圧力センサによって検出された組織部位における実際の減圧を超えるときに、減圧源は、減圧の生成を増加させる。
【0015】
また、上記装置は、送達チューブに結合された安全弁を含むようにしてもよい。安全弁は、減圧を減少させることができる任意のバルブである。この実施形態において、安全弁は、単一の圧力センサによって検出された組織部位における実際の減圧が、目標減圧を予め定められた閾値以上超えるときに、組織部位における実際の減圧を低下させるために開放するようにしてもよい。
【0016】
本明細書に記載されているように、用語“coupled(結合される)”は、別のオブジェクトを介して結合することを含む。例えば、安全弁とリリーフチューブの双方が第3のオブジェクトに結合されている場合、安全弁はリリーフチューブに結合されている、としてもよい。用語“coupled”は、2つのオブジェクトが何らかの方法で互いに接触するような“directly coupled(直接的に結合される)”も含む。用語“coupled”は、2またはそれ以上の構成要素がその各々により互いに繋がっている場合において、それら構成要素が同じ材料の断片から形成されることも包含する。
【0017】
上記装置は、表示器を含む。表示器は、信号を発することができる任意の装置である。例えば、表示器は、上記装置のユーザに信号を発するようにしてもよい。単一の圧力センサによって測定された実際の減圧が、減圧源によって生成される減圧の増加に反応していないと制御装置が判定したときに、表示器は、信号を発する。用語“nonresponsive(反応しない)”は、単一の圧力センサによって測定されるように、減圧源によって生成される減圧の増加が実際の減圧に与える影響が欠如していることをいう。単一圧力センサによって測定される実際の減圧の反応性に関する追加的な詳細説明は、下記の例示的な実施形態において述べる。
【0018】
例示的な実施形態は、組織部位において減圧を管理するための方法も提供する。この方法においては、この目標減圧を決定する。目標減圧は、制御装置のような装置またはユーザによって設定される任意の減圧とすることができる。上記方法においては、単一の圧力センサを使用して組織部位における実際の減圧を検出する。上記方法においては、実際の減圧を目標減圧と比べて、比較を形成する。上記方法においては、上記比較に基づいて減圧管理機能を果たす。減圧管理機能は、装置の構成要素の一部またはすべての任意の操作、機能または活動である。例えば、減圧管理機能は、装置の1または複数の構成要素によって実行されるようにしてもよい。また、減圧管理機能は、ユーザによって実行されるものであってもよい。
【0019】
一実施形態において、比較に基づいて減圧管理機能を果たすことには、実際の減圧が目標減圧を超えたことに応答して、減圧源により生成される生成減圧を減少させることが含まれる。別の実施形態において、上記方法では、実際の減圧が目標減圧を予め定められた閾値以上超えたことに応答して、組織部位における実際の減圧を減少させる安全弁を開放する。別の実施形態において、上記方法では、実際の減圧が目標減圧を予め定められた閾値以上超えたことに応答して、減圧源を止めることにより、生成された減圧を除去する。
【0020】
別の実施形態において、比較に基づいて減圧管理機能を果たすことには、目標減圧が実際の減圧を超えたことに応答して、減圧源により生成される生成減圧を増加させることが含まれる。この実施形態において、上記方法では、組織部位における実際の減圧が、生成減圧の増加に反応しないことに応答して、表示器を用いて信号を発するようにしてもよい。
【0021】
一実施例においては、生成される減圧の増加に応答して、予め定められた時間内に組織部位における実際の減圧が増加しないときは、組織部位における実際の減圧が、生成される減圧の増加に反応していない。別の実施例において、生成される減圧の増加に応答して、予め定められた時間内に組織部位における実際の減圧が目標減圧に達しないときは、組織部位における実際の減圧が、生成される減圧の増加に反応していない。特定の非限定の実施例において、上記予め定められた時間を、4秒乃至6秒の範囲とすることができる。
【0022】
ここで図1を参照すると、組織部位において減圧を管理するための装置のブロック図が、本発明の例示的な実施形態に従って記載されている。具体的には、図1は、組織部位105に対する減圧を管理するための減圧処置システム100を示している。
【0023】
減圧処置システム100は、組織部位105に減圧処置を適用するために用いることができる。組織部位105は、任意の人、動物またはその他生命体の生体組織とすることができ、それには、骨組織、脂肪組織、筋肉組織、皮膚組織、血管組織、結合組織、軟骨、腱、靱帯または任意のその他組織が含まれるようにしてもよい。組織部位105は、創傷、病変組織または欠損組織を含むようにしてもよく、さらに、創傷、病変または欠損の無い健康な組織を含むものであってもよい。組織部位105への減圧の適用は、追加的な組織成長を促進すると同時に、組織部位105からの滲出液およびその他液体の排出を促すために用いることができる。組織部位105が創傷部位である場合には、肉芽組織の成長および滲出液と細菌の除去が、創傷の治癒を促す。健康組織を含む非創傷組織または非欠損組織への減圧の適用は、採取されて別の組織部位に移植されることとなる組織の成長を促すために使用することができる。
【0024】
組織部位105に加えられる減圧は減圧源110によって生成される。減圧源110は、手動で、あるいは機械的または電気的に操作される任意の種類のポンプであってもよい。減圧源110の非限定の実施例は、蓄積されたエネルギーによって駆動されて、減圧を発生させることができる装置を含む。蓄積されたエネルギー、減圧源の実施例には、ピエゾ電気エネルギー、バネエネルギー、太陽エネルギー、運動エネルギー、コンデンサに蓄えられたエネルギー、燃焼、並びに、スターリング(Sterling)または類似のサイクルによって開発されたエネルギーによって、駆動されるポンプが含まれるが、それらに限定されるものではない。減圧源110のその他の実施例には、手動で作動する装置、例えば、ベローズポンプ、蠕動ポンプ、隔膜ポンプ、回転翼ポンプ、線形ピストンポンプ、空気圧ポンプ、油圧ポンプ、ハンドポンプ、フットポンプ、手動で作動する噴霧ボトルとともに使用されるような手動ポンプなどが含まれる。減圧源110において使用または包含される、さらにその他の装置および方法には、注射器、送りネジ、歯止め装置、ぜんまい仕掛けの装置、振り子駆動装置、手動発電機、浸透処理、加熱処理、凝縮によって減圧が生成される処理が含まれる。
【0025】
別の実施形態において、減圧源110は、化学反応によって駆動されるポンプを含むようにしてもよい。タブレット、溶液、スプレイまたはその他の送達メカニズムがポンプに送達されて、化学反応を開始させるために使用される。化学反応で生じた熱は、ポンプを駆動して減圧を生成するために使用するようにしてもよい。別の実施形態においては、ポンプを駆動して減圧を生成するために、COシリンダのような加圧ガスシリンダが使用される。さらに別の実施形態において、減圧源110は、バッテリ駆動ポンプであってもよい。ポンプは、少量の電力を使用するものであって、一回のバッテリ充電で長期間操作できることが望ましい。
【0026】
減圧源110は、被覆材115を介して組織部位105に減圧を提供する。被覆材115は、マニホールド120を含む。マニホールド120は、組織部位105に隣接して、あるいは組織部位105と接触して配置するようにしてもよい。マニホールド120は、組織部位105と隣接して配置することができ、減圧を組織部位105に分配することができる生体適合性の多孔質材料とするようにしてもよい。マニホールド120は、フォーム(発泡体)、ガーゼ、フェルト状マット、特定の生物学的応用に適したその他任意の材料であってもよい。マニホールド120は、減圧または流体の組織部位105への分配、並びに、組織部位105からの流体の分配を容易にするために複数の流路または通路を含むようにしてもよい。
【0027】
一実施形態において、マニホールド120は多孔質フォームであり、流路として機能する相互に連結された複数のセルまたは気孔を有する。多孔質フォームは、テキサス州サンアントニオのKinetic Concepts社によって製造されたGranuFoamのような、ポリウレタンオープンセル網状フォームであってもよい。オープンセル(連続気泡)フォームを使用する場合、気孔率は変化するようにしてもよいが、約400ミクロン乃至600ミクロンであることが望ましい。流路によって、オープンセルを有するマニホールド120部分の全体に亘って流体の流通が可能となっている。セルおよび流路は形状およびサイズが均一であるものであっても、あるいは形状およびサイズのパターン化された変化またはランダムな変化を含むものであってもよい。マニホールドのセルの形状およびサイズの変化は流路に変化をもたらし、かような特性は、マニホールド120を経由する流体の流動特性を変えるのに使用することができる。
【0028】
一実施形態において、マニホールド120は、“クローズドセル(独立気泡)”を含む部分をさらに有するものであってもよい。このマニホールド120のクローズドセル部分は複数のセルを含み、それらの大部分が隣接セルと流体流通可能には接続されていない。クローズドセル部分を、マニホールド120に選択的に配置して、マニホールド120の外周面を介した流体の伝播を防止するようにしてもよい。
【0029】
また、マニホールド120は、減圧処置システム100の使用後に患者の体から取り除く必要がない生体吸収性材料から構成するようにしてもよい。適当な生体吸収性材料には、ポリ乳酸(PLA)とポリグリコール酸(PGA)のポリマーブレンドが含まれるようにしてもよいが、これに限定されるものではない。ポリマーブレンドには、ポリカーボネート、ポリフマレートおよびカプララクトン(capralactones)が含まれるが、これらに限定されるものではない。マニホールド120は、新たな細胞成長のための足場(scaffold)としてさらに機能するようにしてもよく、あるいは足場材料をマニホールド120とともに使用して細胞成長を促すようにしてもよい。足場は、細胞成長のための鋳型(template)を与える3次元多孔質構造のような、細胞の成長または組織の形成を増進または促進するのに使用される物質または構造である。足場材料の例示的な実施例には、リン酸カルシウム、コラーゲン、PLA/PGA、サンゴのヒドロキシアパタイト、炭酸塩、処理された同種移植片材料(processed allograft materials)が含まれる。一実施形態において、足場材料は、高いボイド率を有する(すなわち、空気の含有量が高い)。
【0030】
他の実施形態において、マニホールド120は、多孔質ヒドロゲルまたはヒドロゲル生成材料、布のような織物、セラミックス、薄版、生物製剤、バイオポリマー、コルクおよび止血被覆材から形成するようにしてもよい。代替的には、ビーズを組織部位105と接触するように配置して、減圧の分配に使用するようにしてもよい。
【0031】
被覆材115は、密封部材125も含む。マニホールド120は、密封部材125を使用して組織部位105に固定するようにしてもよい。密封部材125は、組織部位105においてマニホールド120を固定するために使用されるカバーであってもよい。密封部材125は、不透過性または半透過性とするようにしてもよいが、一実施例において、密封部材125は、マニホールド120の上方に密封部材125を取り付けた後に組織部位105において減圧を維持することができる。密封部材125は、シリコーンベースの化合物、アクリル、ヒドロゲルまたはヒドロゲル形成材料、または組織部位105に望ましい非透過性または透過性を有するその他任意の生体適合性材料からなるフレキシブルなドレープまたはフィルムとすることができる。密封部材125を疎水性材料により形成して、密封部材125による吸湿を防止するようにしてもよい。
【0032】
ドレープのように“シート”形態で提供する代わりに、密封部材125は、組織部位105と接触するようにマニホールド120を配置した後にマニホールド120の上方に加えられる、流込み可能または噴霧可能な形態で提供するようにしてもよい。同様に、密封部材125は、マニホールド120および組織部位105の上方に配置されて密封機能性を与える装置を含むようにしてもよく、それには、吸着カップ、成型キャスト(molded cast)およびベルジャー(bell jar)が含まれるが、それらに限定されるものではない。
【0033】
一実施形態において、密封部材125は、マニホールド120周囲の組織および組織部位105との密封結合(sealed connection)を提供するように構成されている。密封結合は、密封部材125の周縁に沿って配置された接着剤または密封部材125の任意の部分に配置された接着剤により提供して、密封部材125をマニホールド120または組織部位105周囲の組織に固定するようにしてもよい。接着剤は、密封部材125上に予め配置するようにしても、あるいは、密封部材125の取付直前に密封部材125に噴霧あるいは別の方法で塗布されるようにしてもよい。
【0034】
粘着性の封止材の代替として、組織部位105に隣接する領域の周囲を密封部材125で包むことによって密封結合を提供するようにしてもよい。例えば、組織部位105が患者の四肢上に位置する場合には、細長いドレープまたは“ドレープテープ”をマニホールド120および組織部位105の周囲の領域に何度も巻いて、密封結合を提供することができる。代替的には、密封部材125と組織部位105周囲の組織との間の密封結合は、減圧処置システム100によって加えられた減圧により提供するようにしてもよい。この実施形態において、密封部材125の周囲は患者の皮膚に“真空”シールされる。さらに別の実施形態においては、密封部材125は、組織部位105周囲の組織に縫合して、密封結合を提供するようにしてもよい。
【0035】
ある場合には、密封部材125は、組織部位105を密封するために必要とされない場合もある。例えば、組織部位105は、減圧を維持するために“セルフシール”できるものであってもよい。皮下の深い組織創傷、空洞および瘻孔の場合には、密封部材125を使用しなくても、組織部位105における減圧の維持が可能である。多くの場合、そのような種類の組織部位を組織が包み込むか、あるいは囲い込むため、組織部位の組織が密封部材として有効に機能する。
【0036】
減圧源110によって生成された減圧は、ソースチューブ(source tube)130および送達チューブ135を使って組織部位105に加えられるようにしてもよい。ソースチューブ130および送達チューブ135は、気体、液体、ゲルまたはその他流体が流れることができる任意のチューブとすることができる。例えば、組織部位105からの滲出液が送達チューブ135を通って流れるようにしてもよい。図1において、ソースライン130は減圧源110をキャニスタ140と連結し、送達チューブ135は、キャニスタ140を被覆材115に連結する。しかしながら、別の実施形態において、送達チューブ135を使用して、減圧源135を被覆材115に直接連結するようにしてもよい。
【0037】
ソースチューブ130および送達チューブ135は、任意の材料から作ることができる。ソースチューブ130および送達チューブ135は、柔軟性の有るものであっても、無いものであってもよい。また、ソースチューブ130および送達チューブ135は、流体が流れる1または複数の経路またはルーメンを含むものであってもよい。例えば、送達チューブ135は、2つのルーメンを含むものであってもよい。この実施例において、一方のルーメンは組織部位105からキャニスタ140への滲出液の流路として使用するようにしてもよい。他方のルーメンは、空気、抗菌剤、抗ウイルス剤、細胞成長促進剤、洗浄流体、またはその他化学活性薬剤のような流体を組織部位105に送達するために使用するようにしてもよい。それら流体をもたらす流体源は、図1には示されていない。減圧処置システム100のマルチルーメンチューブの内包物に関する追加的な詳細説明については、後述する。
【0038】
一実施形態において、送達チューブ135は、連結部材145を介してマニホールド120に結合されている。連結部材145は、マニホールド120から送達チューブ135、またはその反対の流体の流れを許容する。例えば、マニホールド120を使用して組織部位105から集められた滲出液は、連結部材145を経由して送達チューブ135に流入する。別の実施形態において、減圧処置システム100は、連結部材145を含まない。この実施形態においては、送達チューブ135の一端がマニホールド120に隣接または接触するように、送達チューブ135を密封部材125またはマニホールド120の内部に直接的に挿入するようにしてもよい。
【0039】
減圧処置システム100は、キャニスタ140を含む。組織部位105からの滲出液等の液体が送達チューブ135を通ってキャニスタ140内に流れるようにしてもよい。キャニスタ115は、気体や液体のような流体と同様に、固体を含む流体を収容することができる任意の装置または空洞とすることができる。例えば、キャニスタ115は、組織部位105からの滲出液を収容するようにしてもよい。ソースチューブ130および送達チューブ135は、直接キャニスタ140に連結するようにしても、あるいはコネクタ150のようなコネクタを介してキャニスタ140に連結するようにしてもよい。
【0040】
キャニスタ140は、送達チューブ135によってマニホールド120に流体流通可能に連結された、柔軟性のあるまたは柔軟性の無いキャニスタ、バッグまたはポーチとすることができる。キャニスタ140は、独立した容器であっても、滲出液および流体を収集するために減圧源110と操作可能に組み合わされるものであってもよい。減圧源110としてベローズポンプのような手動ポンプが使用される、ある例示的な実施形態において、減圧を生成する容量可変チャンバがキャニスタ140としても機能し、その拡大時に流体を収集するものであってもよい。キャニスタ140は、流体を収集する単一のチャンバを含むものであっても、あるいは複数のチャンバを含むものであってもよい。乾燥剤または吸収性材料をキャニスタ140内に配置して、流体を収集したときに流体を捕捉または制御するようにしてもよい。キャニスタ140を設けることなく、流体、特に水溶性の流体をマニホールド120から蒸発させるような、滲出液およびその他流体を制御する方法を用いるようにしてもよい。
【0041】
減圧処置システム100は圧力センサ155を含む。圧力センサ155は、組織部位105における実際の減圧を検出する。非限定の一実施例において、圧力センサ155は、シリコーン・ピエゾ抵抗ゲージ圧力センサである。一実施形態において、圧力センサ155は、減圧処置システム100内に含まれる唯一の圧力センサである。この実施形態において、減圧処置システム100は、圧力センサ155以外のその他の圧力センサを有していない。
【0042】
圧力センサ155は、制御チューブ160を介して組織部位105における減圧を検出する。制御チューブ160は、気体を流すことができる任意のチューブである。制御チューブ160は任意の材料から形成することができる。制御チューブ160は、柔軟性を有するものでも、有しないものであってよい。また、制御チューブ160は、流体を流すことができる1または複数の経路またはルーメンを含むものであってもよい。
【0043】
図1において、制御チューブ160は、コネクタ150を貫通するものとして示されている。しかしながら、制御チューブ160の配置は、特定の要求や利用に適合させるために変えるようにしてもよい。例えば、制御チューブ160はキャニスタ140を通るものであっても、キャニスタ140の外周に沿うものであっても、あるいはキャニスタ140を迂回するものであってもよい。圧力センサ155と反対側に位置する、制御チューブ160の端部を、コネクタ145を介してマニホールド120に結合させるようにしてもよい。別の実施例においては、制御チューブ160の一端がマニホールド120に隣接または接触するように、制御チューブ160を直接的に密封部材125またはマニホールド120の内部に挿入するようにしてもよい。
【0044】
別の実施形態において、送達チューブ135および制御チューブ160は、単一のマルチルーメンチューブにおける各ルーメンである。ソースチューブ130および制御チューブ160も、単一のマルチルーメンチューブにおける各ルーメンとしてもよい。送達チューブ135のみを用いて減圧源110をマニホールド120に結合させる実施例においては、減圧源110と圧力センサ155の双方をマニホールド120に連結するために、単一のマルチルーメンチューブを使用するようにしてもよい。マルチルーメン実施形態に関する追加的な詳細説明は、図2および図3において後述する。
【0045】
圧力センサ155は、減圧処置システム100上の何れの部位に設置するようにしてもよい。図1において、圧力センサ155は、組織部位105から離れた位置に示されている。この実施例において、組織部位105における減圧は、気体を流すことができる制御チューブ160を介して、離れた位置に配置された圧力センサ155から検出するようにしてもよい。また、この実施例においては、圧力センサを、減圧源110、キャニスタ140または減圧処置システム100のその他任意の例示の構成要素のような、その他の離れた位置に配置された減圧処置システム100の構成要素に直接的または間接的に連結するようにしてもよい。別の実施例において、圧力センサ155を、組織部位155に隣接して配置するようにしてもよい。この実施例において、圧力センサ155は、組織部位105における圧力を検出するために、制御チューブ160の使用を必要としない場合がある。非限定の一実施例において、圧力センサ155は、マニホールド120に直接的に結合されるか、あるいは密封部材125とマニホールド120との間に配置される。
【0046】
減圧処置システム100は、制御チューブバルブ165を含む。制御チューブバルブ165は、制御チューブ160に結合するようにしてもよい。制御チューブバルブ165は、制御チューブ160内の減圧を解放することができる任意のバルブとすることができる。制御チューブバルブ165の非限定の実施例には、空気電磁弁、比例弁または機械弁が含まれる。
【0047】
一実施形態において、制御チューブバルブ165は、人により手動で制御されるものであってもよい。別の実施形態においては、制御チューブバルブ165を、制御装置170により制御するようにしてもよい。一実施形態においては、制御チューブ160内の閉塞が検出されたときに、制御チューブバルブ165を開放して、制御チューブ160内の減圧を解放するようにしてもよい。このような閉塞は、例えば、組織部位105からの滲出液またはその他流体が制御チューブ160に詰まったときに発生する可能性がある。制御チューブバルブ165を介して制御チューブ160における減圧を解放することにより、制御チューブ160から閉塞を取り除くことができる。
【0048】
減圧処置システム100は、安全弁175も含む。安全弁175は、ソースチューブ130、キャニスタ140、コネクタ150、送達チューブ135、コネクタ145、減圧源110または被覆材115の何れか1つまたは任意の組合せに連結されたバルブとすることができる。安全弁175は、組織部位105における減圧を解放することができる任意の種類のバルブとすることができる。安全弁175の非限定の実施例には、空気電磁弁、比例弁または機械弁が含まれる。一実施例においては、組織部位105における減圧を解放するために、安全弁175を開放するようにしてもよい。また、組織部位105における減圧を管理するために、安全弁175を使用するようにしてもよい。組織部位105における減圧を管理するための、減圧処置システム100の安全弁175およびその他構成要素の使用に関する追加的な詳細説明は、後述する。
【0049】
減圧処置システムは制御装置170を含む。制御装置170は、圧力センサ155からのデータ等のデータを処理することができる任意の装置である。また、制御装置170は、減圧源110、安全弁175、制御チューブバルブ165、圧力センサ155または表示器180のような、減圧処置システム100の1または複数の構成要素の操作を制御するようにしてもよい。一実施形態において、制御装置170は、圧力センサ155からのデータ等のデータを受信・処理するとともに、減圧処置システム100の1または複数の構成要素の操作を制御して、組織部位105における減圧を管理する。
【0050】
一実施形態において、制御装置170は、組織部位105の目標減圧を決定する。目標減圧は、組織部位105におけるユーザが任意に定義可能な減圧であってもよい。また、目標減圧は、制御装置170によって決定されるものであってもよい。一実施例において、目標減圧は、組織部位105の効率的な処置を提供するとともに、組織部位105に減圧を加えることに付随する安全性の問題を考慮した減圧となっている。
【0051】
一実施例において、圧力センサ155は、組織部位105における減圧を検出する。減圧測定は、制御装置170により圧力センサ155から受信するようにしてもよい。制御装置170は、圧力センサ155から受信した減圧を目標減圧と比べて比較を形成するようにしてもよい。その後、制御装置170は、減圧処置システム100の構成要素を作動または管理して、上記比較に基づき、減圧管理機能を果たすようにしてもよい。
【0052】
一実施形態において、制御装置170は、上記比較に基づいて減圧管理機能を果たす際に、実際の減圧が目標減圧を超えるのに応答して、減圧源110により生成される減圧を減少させる。例えば、減圧源110がモータ付きあるいは電気的に操作される減圧源である場合には、減圧源110が減圧の生成を減量するように、モータまたは電気的プロセスを減速するようにしてもよい。非限定の別の実施例において、減圧源110が、化学的に駆動される減圧源である場合には、減圧源110を駆動する化学プロセスを減速または変更して、減圧源110により生成される減圧量を減少させるようにしてもよい。
【0053】
別の実施例において、制御装置170は、圧力センサ155によって測定されるように、実際の減圧が目標減圧を予め定められた閾値以上超えるのに応答して、組織部位105における実際の減圧を減少させるために安全弁175を開放するようにしてもよい。上記予め定められた閾値は、ユーザによって決定するようにしても、あるいは制御装置170のような、減圧処置システム100の構成要素によって決定するようにしてもよい。一実施例において、上記予め定められた閾値は、組織部位105における組織の安全性を確保するのに役立つ閾値である。例えば、目標減圧を予め定められた閾値以上超える、組織部位105における実際の減圧が、組織部位105における組織の安全性に影響を与えることとなるように、上記予め定められた閾値を決定することができる。このため、この実施形態は、単一の圧力センサ155を使用した安全機構として、実施することができる。
【0054】
別の実施形態において、制御装置170は、圧力センサ155によって測定されるように、実際の減圧が目標減圧を予め定められた閾値以上超えるのに応答して、減圧源110を締めるまたは停止させるようにしてもよい。減圧源110を締めるまたは停止させることにより、組織部位105における減圧が減少する。一実施例において、それを超えたとき減圧源110が止められることとなる所定の閾値は、上記実施形態で述べたように、それを超えたとき安全弁175が開放されることとなる所定の閾値よりも大きいか、あるいはそれより小さい。このため、この実施例においては、組織部位105における組織の安全性を確保するために、二重の安全機構が採用されている。別の実施例においては、それを超えたときに減圧源110が止められることとなる所定の閾値が、それを超えたときに安全弁175が開放されることとなる所定の閾値と同じとなっている。
【0055】
別の実施例において、制御装置170は、上記比較に基づいて減圧管理機能を果たす際に、減圧源110により生成される減圧を増加させる。例えば、減圧源110がモータ付きあるいは電気的に操作される減圧源である場合には、減圧源110が減圧の生成を増量するように、モータまたは電気的プロセスの速度を増加させるようにしてもよい。非限定の別の実施例において、減圧源110が、化学的に駆動される減圧源である場合には、減圧源110を駆動する化学プロセスを加速または変更して、減圧源110により生成される減圧量を増加させるようにしてもよい。
【0056】
別の実施形態において、制御装置170は、圧力センサ155によって測定されるように、減圧源110からの生成減圧の増加に対する、組織部位105における実際の減圧の反応性を測定する。一実施例においては、制御装置170が、減圧源によって生成される減圧が増加または減少したときに検出するようにしてもよい。例えば、制御装置170は、減圧源110のモータ速度、化学反応速度または圧縮速度が増加または減少したときに検出することができるものであってもよい。このような増加または減少を判定するために制御装置170によって検出される可能性があるその他のパラメータには、ポンプの負荷を示すこととなるモータの電流引き込みが含まれる。必要な減圧を組織部位105に送達するためにモータに与える必要がある電力レベルまたはパルス幅変調も、検出されるようにしてもよい。制御装置170は、圧力センサ155によって測定された実際の減圧と目標減圧との比較に基づいて、減圧源によって生成される減圧が増加または減少することを推定できるものであってもよい。
【0057】
一実施形態において、制御装置170は、圧力センサ155によって測定されるように、組織部位105における実際の減圧が、生成される減圧の増加に無反応であることに応答して、表示器180に信号を出力させる。一実施形態において、表示器180は、発光ダイオード、すなわちLEDである。この実施形態において、表示器180は、組織部位105における実際の減圧が、生成される減圧の増加に無反応であることに応答して、発光する。
【0058】
別の実施形態において、表示器180はスピーカ等の音発生装置である。この実施形態において、表示器180は、組織部位105における実際の減圧が、生成される減圧の増加に無反応であることに応答して、音を発する。
【0059】
別に実施形態において、組織部位105における実際の減圧が、生成減圧の増加に応答して所定時間以内に増加しないときには、組織部位105における実際の減圧が、生成減圧の増加に反応していないことになる。このような無反応は、送達チューブ135またはソースチューブ130のような、減圧処置システム100の構成要素の1または複数が閉塞または漏れを生じていることを示している可能性がある。例えば、組織部位105からの滲出液のような液体は、送達チューブ135またはソースチューブ130を詰まらせる可能性がある。別の実施例においては、送達チューブ135またはソースチューブ130に沿うある部位に破裂が生じている可能性がある。
【0060】
上記所定時間は、任意の時間とすることができ、減圧処置システム100のユーザによって設定されるものであっても、制御装置170のような、減圧処置システム100の一構成要素によって設定されるものであってもよい。一実施例において、上記所定時間は、1秒乃至10秒の範囲、または4秒乃至6秒の範囲である。特定の非限定の一実施例において、上記所定時間は5秒である。
【0061】
別の実施形態においては、生成される減圧の増加に応答して、予め定められた時間内に組織部位105における実際の減圧が目標減圧に達しないときは、組織部位105における実際の減圧が、生成される減圧の増加に反応していない。前述した実施形態と同様、このような無反応は、送達チューブ135またはソースチューブ130のような、減圧処置システム100の1または複数の構成要素が閉塞または漏れを生じていることを示している可能性がある。
【0062】
本発明の別の実施形態において、減圧源110が真空ポンプおよびモータである場合には、ポンプまたはモータ速度を測定するために、真空ポンプまたはモータにセンサを結合するようにしてもよい。このセンサによって得られた測定結果は、ポンプによって送達された圧力を推定するために使用することができ、これにより、漏れまたは閉塞が存在するか否かを判定してその何れであるかを区別するための機構を提供することができる。例えば、漏れの検出は、モータとポンプの何れか一方または両方の速度を監視することによって、実行することができる。減圧処置が施されている間に漏れが生じた場合には、より多くの減圧をポンプが生成していることを示して、モータ速度とポンプ速度の一方または両方が増加する可能性が高い。閉塞が生じた場合には、モータとポンプの一方または両方の速度が低下する可能性が高い。ポンプまたはモータ速度センサからの出力は、漏れまたは閉塞状態の間に表示器180を使用して信号を発するために、制御装置170により使用されるようにしてもよい。
【0063】
特定の例示的な一実施例において、減圧源110は、変速装置を有するモータを含む。この実施例において、センサがモータの速度を検出するようにしてもよい。モータの速度が閾値より変化したときに、表示器180が信号を発するようにしてもよい。閾値は任意の値とすることができ、減圧処置システム100のユーザによって設定されるものであっても、制御装置170のような、減圧処置システム100の一構成要素によって設定されるものであってもよい。閾値は、有限量、パーセント、またはそれらの任意の組合せを単位として表現することができる。
【0064】
ここで図2を参照すると、マルチルーメンチューブの斜視図が、本発明の例示的な一実施形態に従って記載されている。具体的には、図2は、図1の減圧処置システム100等の減圧処置システムにおいて実装されるようなマルチルーメンチューブ200を示している。
【0065】
マルチルーメンチューブ200は、2つのルーメンを含む。具体的には、マルチルーメンチューブ200はルーメン235,260を含む。マルチルーメンチューブ200は2つのルーメン235,260を含むが、3,4または10など、任意の数のルーメンを備えるものであってもよい。
【0066】
一実施形態において、ルーメン235,260の一方、例えばルーメン235は、図1の送達チューブ135またはソースチューブ130のような、送達チューブまたはソースチューブである。別の実施形態において、ルーメン235,260の一方、例えばルーメン260は、図1の制御チューブ160のような制御チューブである。送達チューブ、ソースチューブおよび制御チューブの組合せをルーメンとして単一のマルチルーメンチューブ内に組み込むことによって、減圧処置システムに含まれる個別チューブの数量を減少させることができる。チューブの数を減らすことによって、ユーザが使用するための減圧処置システムを簡素化するとともに、減圧処置システムを運ぶ負荷を軽減する。
【0067】
ここで図3を参照すると、マルチルーメンチューブの斜視図が、本発明の例示的な一実施形態に従って記載されている。具体的には、図3は、図1の減圧処置システム100等の減圧処置システムにおいて実装されるようなマルチルーメンチューブ300を示している。マルチルーメンチューブ300は、図2のマルチルーメンチューブ200の非限定の一実施例であってもよい。
【0068】
マルチルーメンチューブ300は、9つのルーメンを含む。具体的には、マルチルーメンチューブ300は、ルーメン335と周辺のルーメン360を含む。マルチルーメンチューブ300は、ルーメン335を取り囲むものとして周辺のルーメン360を示しているが、マルチルーメンチューブ300内のルーメンは、互いに関連した任意の空間構成を有するものであってもよい。
【0069】
一実施形態において、ルーメン335および360の1つ、例えばルーメン335は、図1の送達チューブ135またはソースチューブ130のような、送達チューブまたはソースチューブである。別の実施形態において、ルーメン335,360の1つ、例えば、ルーメン360の何れかまたはすべては、図1の制御チューブ160のような制御チューブである。図3におけるマルチルーメンチューブ300と同様に、送達チューブ、ソースチューブおよび制御チューブの任意の組合せをルーメンとしてマルチルーメンチューブ300内に組み込むことによって、減圧処置システムに含まれる個別チューブの数量を減少させることができ、これにより、マルチルーメンチューブが含まれるような減圧処置システムの有用性を増加させることができる。
【0070】
図4を参照すると、組織部位において減圧を管理するための方法を示すフローチャートが、本発明の例示的な実施形態に従って記載されている。図4に示す方法は、図1の減圧処置システム100の構成要素など、減圧処置システムの他の構成要素と協働して、図1の制御装置170のような制御装置が実施するものであってもよい。
【0071】
この方法においては、目標減圧を決定することによって開始する(ステップ405)。上記方法においては、単一の圧力センサを使用して組織部位における実際の減圧を検出する(ステップ410)。上記方法においては、実際の減圧を目標減圧と比べて比較結果を形成する(ステップ415)。上記方法においては、上記比較結果に基づいて減圧管理機能を実行する(ステップ420)。
【0072】
図5を参照すると、組織部位において減圧を管理するための方法を示すフローチャートが、本発明の例示的な実施形態に従って記載されている。図5に示す方法は、図1の減圧処置システム100の構成要素など、減圧処置システムの他の構成要素と協働して、図1の制御装置170のような制御装置が実施するものであってもよい。図5に示す方法は、例示的な実施形態と、図4のステップ415および420に関する追加的な詳細説明を与える。
【0073】
この方法においては、実際の減圧が目標減圧を超えるかどうかを判定することによって開始する(ステップ505)。実際の減圧が目標減圧を超えていないと判定した場合には、この方法は終了となる。ステップ505において、実際の減圧が目標減圧を超えていると判定した場合には、減圧源によって生成される減圧を減少させる(ステップ510)。
【0074】
上記方法においては、実際の減圧が目標減圧を、予め設定した閾値以上超えるかどうかを判定する(ステップ515)。実際の減圧が目標減圧を、予め設定した閾値以上は超えていないと判定した場合には、この方法は終了となる。ステップ515において、実際の減圧が目標減圧を、予め設定した閾値以上超えていると判定した場合には、安全弁を開放することによって減圧を減少させるかどうかを判定する(ステップ520)。安全弁を開放することによって減圧を減少させると判定した場合には、安全弁を開放して、組織部位における実際の減圧を減少させる(ステップ525)。
【0075】
ステップ520において、安全弁を開放することによっては減圧を減少させないと判定した場合には、減圧源を止めることによって減圧を減少させるかどうかを判定する(ステップ530)。減圧源を止めることによって減圧を減少させると判定した場合には、減圧源を止める(ステップ535)。その後、この方法は終了となる。ステップ530において、減圧源を止めることによっては減圧を減少させないと判定した場合には、この方法は終了となる。
【0076】
図6を参照すると、組織部位において減圧を管理するための方法を示すフローチャートが、本発明の例示的な実施形態に従って記載されている。図6に示す方法は、図1の減圧処置システム100の構成要素など、減圧処置システムの他の構成要素と協働して、図1の制御装置170のような制御装置が実施するものであってもよい。図5に示す方法は、例示的な実施形態と、図4のステップ415および420に関する追加的な詳細説明を与える。
【0077】
この方法においては、目標減圧が実際の減圧を超えるかどうかを判定することによって開始する(ステップ605)。目標減圧が実際の減圧を超えていないと判定した場合には、この方法は終了となる。ステップ605において、目標減圧が実際の減圧を超えていると判定した場合には、減圧源によって生成される減圧を増加させる(ステップ610)。
【0078】
上記方法においては、単一の圧力センサによって測定される実際の減圧が、生成減圧の増加に反応するかどうかを判定する(ステップ615)。単一の圧力センサによって測定される実際の減圧が、生成減圧の増加にすぐに反応すると判定した場合には、この方法は終了となる。ステップ615において、単一の圧力センサによって測定される実際の減圧が、生成減圧の増加に反応していないと判定した場合には、表示器を使用して信号を発する(ステップ620)。その後、この方法は終了となる。
【0079】
図7を参照すると、組織部位において減圧を管理するための方法を示すフローチャートが、本発明の例示的な実施形態に従って記載されている。図7に示す方法は、図1の減圧処置システム100の構成要素など、減圧処置システムの他の構成要素と協働して、図1の制御装置170のような制御装置が実施するものであってもよい。図7に示す方法は、例示的な実施形態と、図6のステップ615および620に関する追加的な詳細説明を与える。
【0080】
この方法においては、組織部位における実際の減圧が、予め定められた時間内に増加するかどうかを判定することによって開始する(ステップ705)。組織部位における実際の減圧が、予め定められた時間内に増加していないと判定した場合には、表示器を使用して信号を発する(ステップ710)。その後、この方法は終了となる。
【0081】
一方、ステップ705において、組織部位における実際の減圧が、予め定められた時間内に増加していると判定した場合には、組織部位における実際の減圧が、予め定められた時間内に目標減圧に達するかどうかを判定する(ステップ715)。組織部位における実際の減圧が、予め定められた時間内に目標減圧に達しないと判定した場合には、表示器を使用して信号を発する(ステップ710)。その後、この方法は終了となる。一方、ステップ715において、組織部位における実際の減圧が、予め定められた時間内に目標減圧に達すると判定した場合には、この方法は終了となる。
【0082】
示された異なる実施形態におけるフローチャートおよびブロック図は、アーキテクチャーを機能的に示すとともに、装置および方法の幾つかの可能性のある実施の操作を示している。幾つかの代替的な実施において、機能、またはブロックに記載されている機能は、図面に記載されている順序以外で生じるようにしてもよい。例えば、幾つかの場合、含まれる機能に応じて、連続して示される2ブロックをほぼ同時に実行してもよく、あるいは、それらブロックを反対の順序で実行できるときもある。
【0083】
例示的な実施形態は、現在使用されている減圧処置システムよりも少ない電力を消費する低コストで軽量なシステムとして構成することも可能である。システムが低重度の創傷や歩行可能な患者の創傷の治療に使用されるとき、サイズと重量の減少は、特に重要である。それらの創傷や患者は、患者への不快感や動作の妨げを最小とするために、目立たなくて軽量なシステムを必要としている。
【0084】
コスト、重量および電力消費を最小化する1つの方法は、圧力を測定するためにセンサを1基のみ使用することを通じてなされる。上述したように、従来のシステムは、一般に2基のセンサを使用しており、1基を組織部位における圧力測定に、もう1基を減圧源における圧力測定に使用している。しかしながら、減圧源における圧力を測定する圧力センサを除去することによって、必要な電子回路の量およびシステムによって消費される電力量を大幅に低減させることが可能となる。さらに、2基のセンサの示度を比較するために使用される回路およびソフトウェアを除去することができる。また、例示的な実施形態は、組織に対して予め設定された減圧を加えることを可能にするとともに、従来のシステムよりも少ない構成要素で、ある異常なシステム状態の検出および通知を提供する。
【0085】
例示的な実施形態は、減圧源における測定値を使用して組織部位圧力に近付ける必要性も取り除くことができる。さらに、例示的な実施形態のその他の特徴に付随しているとき、組織部位における圧力を直接測定することによって、減圧処置システムは、減圧源でなされた操作変更に応答する組織部位における圧力変化を観察することで、漏れおよび閉塞を検出することが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織部位における減圧を管理するための装置において、
減圧源であって、当該減圧源と組織部位との間に延びるように構成された送達ルーメンを介して減圧を与える減圧源と、
制御ルーメンを介して圧力を測定する単一のセンサとを備え、前記制御ルーメンが、前記組織部位と前記単一のセンサとの間に延び、且つ、前記組織部位からの滲出液を伝えるように機能するものではなく、
当該装置がさらに、
前記減圧源および前記単一のセンサに接続された制御装置を備え、
前記制御装置が、前記単一のセンサからの圧力を受け取り、その圧力と目標圧力との比較結果に基づいて圧力管理機能を果たすように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、
前記圧力管理機能には、前記単一のセンサにより測定された圧力が前記目標圧力を超えるときに前記減圧源からの減圧を減少させることが含まれることを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1に記載の装置において、
前記圧力管理機能には、前記単一のセンサにより測定された圧力が前記目標圧力を超えるときに安全弁を開放することが含まれることを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1に記載の装置において、
前記圧力管理機能には、前記単一のセンサにより測定された圧力が前記目標圧力を予め定められた閾値以上超えるときに前記減圧源を止めることが含まれることを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項1に記載の装置において、
前記圧力管理機能には、前記単一のセンサにより測定された圧力を前記目標圧力が超えるときに前記減圧源からの減圧を増加させることが含まれることを特徴とする装置。
【請求項6】
組織部位における減圧を管理するための装置において、
減圧源と、
マニホールドと、
前記減圧源と前記マニホールドとを連結する送達ルーメンと、
前記マニホールドに連結されて、前記マニホールドの近傍の圧力を測定する単一のセンサと、
前記減圧源および前記単一のセンサに接続された制御装置とを備え、
前記制御装置が、前記単一のセンサからの圧力を受け取り、その圧力と目標圧力との比較結果に基づいて圧力管理機能を果たすように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項6に記載の装置において、
前記圧力管理機能には、前記単一のセンサにより測定された圧力が前記目標圧力を超えるときに前記減圧源からの減圧を減少させることが含まれることを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項6に記載の装置において、
前記圧力管理機能には、前記単一のセンサにより測定された圧力が前記目標圧力を超えるときに安全弁を開放することが含まれることを特徴とする装置。
【請求項9】
請求項6に記載の装置において、
前記圧力管理機能には、前記単一のセンサにより測定された圧力が前記目標圧力を予め定められた閾値以上超えるときに前記減圧源を止めることが含まれることを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項6に記載の装置において、
前記圧力管理機能には、前記単一のセンサにより測定された圧力を前記目標圧力が超えるときに前記減圧源からの減圧を増加させることが含まれることを特徴とする装置。
【請求項11】
組織部位における減圧を管理するための装置において、
減圧源であって、当該減圧源と組織部位との間に延びるように構成された送達ルーメンを介して減圧を与える減圧源と、
制御ルーメンを介して圧力を測定する単一のセンサとを備え、前記制御ルーメンが、前記組織部位と前記単一のセンサとの間に延び、且つ、前記組織部位からの滲出液を伝えるように機能するものではなく、
当該装置がさらに、
表示器と、
前記減圧源および前記単一のセンサに接続された制御装置とを備え、
前記制御装置が、動作パラメータの変化を検出し、前記動作パラメータの変化に対する、前記単一のセンサによって測定される圧力の反応性を測定し、前記単一のセンサによって測定された圧力が前記動作パラメータの変化に反応していないときに、前記表示器に信号を出力させるべく指示するように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項11に記載の装置において、
前記動作パラメータが、前記減圧源に関連するモータの電流引き込みであることを特徴とする装置。
【請求項13】
請求項11に記載の装置において、
前記動作パラメータが、前記減圧源に関連するモータの速度であることを特徴とする装置。
【請求項14】
請求項11に記載の装置において、
前記動作パラメータが、前記減圧源に関連する化学反応速度であることを特徴とする装置。
【請求項15】
請求項11に記載の装置において、
前記動作パラメータが、前記減圧源に関連する圧縮速度であることを特徴とする装置。
【請求項16】
請求項11に記載の装置において、
予め定められた時間、圧力を測定することにより、前記反応性を判定することを特徴とする装置。
【請求項17】
請求項11に記載の装置において、
予め定められた時間内に前記単一のセンサにより測定される圧力が目標圧力に達するか否かを監視することにより、前記反応性を判定することを特徴とする装置。
【請求項18】
請求項11に記載の装置において、
前記単一のセンサにより測定される圧力が1秒乃至10秒の範囲内で変化するか否かを監視することにより、前記反応性を判定することを特徴とする装置。
【請求項19】
請求項11に記載の装置において、
前記単一のセンサにより測定される圧力が4秒乃至6秒の範囲内で変化するか否かを監視することにより、前記反応性を判定することを特徴とする装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−39411(P2013−39411A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−234432(P2012−234432)
【出願日】平成24年10月24日(2012.10.24)
【分割の表示】特願2009−549123(P2009−549123)の分割
【原出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(508268713)ケーシーアイ ライセンシング インコーポレイテッド (125)
【Fターム(参考)】