説明

組電池装置

【課題】単電池セル間の伝熱を抑制しつつ、各単電池セルを効率良く且つ均一に冷却できる組電池装置を提供する。
【解決手段】本発明の組電池装置1は、互いに電気的に接続された複数の単電池セル11と、単電池セル11と接して且つ交互に列設され、且つ、隣接する単電池セル11の周端部の少なくとも一部において当該周端部よりも外側に延出するように設けられた、シート状の熱伝導部材13と、を備える。熱伝導部材13は、面方向の熱伝導率が厚さ方向の熱伝導率よりも高い熱伝導樹脂フィルムを含む。熱伝導樹脂フィルムは、樹脂と鱗片形状を有する窒化ホウ素粒子とを含んでおり、前記窒化ホウ素粒子は、その鱗片平面がフィルム面に沿うように配向した状態で、前記樹脂中に分散している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単電池セルが複数個組み合わされることによって形成された組電池装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化対策、省エネルギー及び環境汚染等への関心が高まり、化石燃料を消費し二酸化炭素を排出する従来の自動車から、ガソリンエンジンと電気モータとを併用するハイブリッド車や、電気モータのみで走行する電気自動車への関心が高まっている。このようなハイブリッド車及び電気自動車を効率良く走行させるためには、高電圧、高エネルギー容量及び高エネルギー密度の電池の開発が望まれている。
【0003】
これら電気自動車等の駆動電源として使用されるリチウムイオン電池及びニッケル・水素二次電池等には、高いエネルギー密度が必要とされ、且つ搭載スペースは極力小さくすることが求められる。そのため、複数個の単電池セルを互いに接続して、これを1つのパッケージとする組電池装置が、一般的に用いられる。
【0004】
複数個の単電池セルを集合させた組電池装置は、過充電・過放電によって、電池内部温度が過度に上昇する場合がある。組電池装置の効率や寿命は温度環境に大きく依存し、高温になると効率や寿命が低下する。例えばリチウムイオン電池の場合、電池内部温度が50℃を超えると、効率や寿命の低下が生じる。そこで、組電池装置を冷却するための様々な技術が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0005】
しかし、特許文献1〜3で提案されている冷却技術に対しては、構造が複雑であるため組電池装置が大型化して、スペースやコストの面で不具合が生じる、あるいは、構造上の特徴により、組電池装置を構成する各単電池セルの均一な冷却が困難になったり、漏電の可能性が生じたりする、等の問題が指摘されている。
【0006】
そこで、上記の問題を解決できる冷却技術として、特許文献4に、単電池セルと、熱伝導性と電気絶縁性とを有する軟質材から板状に形成された熱伝導部材とを、互いに密着させて交互に複数個列接する組電池装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−045310号公報
【特許文献2】特開2007−012486号公報
【特許文献3】特開2006−048996号公報
【特許文献4】特開2009−054403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献4の組電池装置においては、熱伝導部材の材料について格別に規定されておらず、シリコーンゴムや、例えばダイヤモンド粉のような高熱伝導材を混合したゴムや熱可塑性エラストマーを使用できることが記載されている程度である。各単電池セルの熱を熱伝導部材によって放熱空間へ放熱し、間接的に単電池セルを冷却することは有効な方法である。しかし、このような材料からなる熱伝導部材の場合、単電池セルの熱が放熱空間へ効率的に放熱されずに、熱伝導部材を介して隣接する単電池セルへ伝熱してしまうという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、単電池セルが複数個組み合わされることによって形成される組電池装置について、単電池セル間の伝熱を抑制しつつ、各単電池セルを効率良く冷却できる装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の組電池装置は、
互いに電気的に接続された複数の単電池セルと、
前記単電池セルと接して且つ交互に列設され、且つ、隣接する単電池セルの周端部の少なくとも一部において当該周端部よりも外側に延出するように設けられた、シート状の熱伝導部材と、
を備え、
前記熱伝導部材は、面方向の熱伝導率が厚さ方向の熱伝導率よりも高い熱伝導樹脂フィルムを含んでおり、
前記熱伝導樹脂フィルムは、樹脂と鱗片形状を有する窒化ホウ素粒子とを含んでおり、
前記窒化ホウ素粒子は、その鱗片平面がフィルム面に沿うように配向した状態で、前記樹脂中に分散している。
【発明の効果】
【0011】
本発明の組電池装置において、単電池セル間に設けられているシート状の熱伝導部材は、面方向の熱伝導率が厚さ方向の熱伝導率よりも高い、熱伝導性について面方向に異方性を有する熱伝導樹脂フィルムを含んでいる。したがって、この熱伝導部材は、厚さ方向への熱の伝導を抑えつつ、面方向には効果的に熱を伝導することができる。さらに、本発明では、熱伝導部材が、隣接する単電池セルの周端部の少なくとも一部において当該周端部よりも外側に延出するように設けられているので、単電池セルから受け取った熱を、延出している部分から放熱空間へと効率的に放熱できる。
【0012】
以上のとおりであるため、本発明の組電池装置は、単電池セル間の伝熱を抑制しつつ、各単電池セルを効率良く冷却できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態における組電池装置の斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態における組電池装置に用いられる熱伝導部材の一例を示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態における組電池装置に用いられる熱伝導部材の他の例を示す断面図である。
【図4】本発明の実施の形態における組電池装置に用いられる熱伝導部材のさらに他の例を示す断面図である。
【図5】本発明の組電池装置について、単電池セル温度と熱伝導部材の延出量との関係のシミュレーション計算の条件を示す模式図である。
【図6】本発明の組電池装置について、単電池セル温度と熱伝導部材の延出量との関係のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図7】実施例2における評価装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態を、図面を参照しながら以下に説明する。なお、以下の記載は本発明を限定するものではない。
【0015】
図1は、本実施の形態の組電池装置の概略構成を示す斜視図である。図1に示すように、本実施の形態の組電池装置1は、複数の単電池セル11と、単電池セル11と接して且つ交互に列設された熱伝導部材13とを備えている。熱伝導部材13は、隣接する単電池セル11の周端部の少なくとも一部において当該周端部よりも外側に延出するように設けられた、シート状の部材である。なお、本実施の形態では、熱伝導部材13において、単電池セル11の周端部から延出している部分を「延出部」という。
【0016】
本実施の形態では、単電池セル11が、角形扁平形状を有するリチウムイオン電池のセルである場合を例に挙げて説明する。単電池セル11を構成する6つの面のうち、1つの面(図中では上面)から一対の電極12(正極及び負極)が突出して設けられている。複数の単電池セル11を列設する場合、図1に示すように、電極12を有する面が同じ側となるように配置することが一般的である。
【0017】
単電池セル11は、極板、セパレータ及び電解液等の電池要素が筐体内に収容されることによって形成されている。各電池要素は、一般的なリチウムイオン電池で用いられるものと同様である。筐体には、樹脂製のもの、あるいは表面に絶縁被膜がコーティングされたもの、金属製のもの等の様々な材質のものが使用できるが、熱伝導性が高い鉄やアルミニウム等の金属が表出する筐体が好適に用いられる。
【0018】
単電池セル11は、単電池セル11の最も広い面がシート状の熱伝導部材13の表面に対向し、且つ接するように、熱伝導部材13と交互に列設されている。熱伝導部材13は、後述のとおり、面方向の熱伝導率が厚さ方向の熱伝導率よりも高い熱伝導樹脂フィルムを含んでいる。したがって、単電池セル11の内部反応で発生した熱は、単電池セル11の筐体から熱伝導部材13へ、さらに熱伝導部材13の面方向へと伝導し、熱伝導部材13の延出部13aから放熱空間へと放熱される。熱伝導部材13の厚さ方向の熱伝導率は面方向よりも低いため、熱伝導部材13において熱は面方向に伝導し、厚さ方向にはほとんど伝導しない。そのため、単電池セル11間での伝熱はほとんど生じず、単電池セル11を効率良く冷却できる。
【0019】
次に、熱伝導部材13について説明する。
【0020】
本実施の形態の熱伝導部材13は、面方向の熱伝導率が厚さ方向の熱伝導率よりも高い、熱伝導性について面方向に異方性を有する熱伝導樹脂フィルムを含んでいる。本実施の形態の熱伝導部材13は、図2に示すように、この熱伝導樹脂フィルムのみから形成されている。
【0021】
熱伝導部材13は、隣接する単電池セル11の周端部の少なくとも一部において当該周端部よりも外側に延出するように設けられている。ここでいう周端部とは、単電池セル11において熱伝導部材13と対向している面を正面とした場合の側面によって決定される端部のことである。本実施の形態では、熱伝導部材13は、単電池セル11の周端部のうち、下端(電極12が突出している側面に対して反対側の側面によって決定される端部)から外側に延出している。延出部13aの面積及び単電池セル11の周端部からの延出長さは、単電池セル11のサイズや、組電池装置1を収容する筐体のサイズ等によって適宜選択できる。一例として、周端部からの延出長さを単電池セル11の縦の長さに対して10%以上にするのが、高い冷却効果が得られるため、好ましい。
【0022】
熱伝導樹脂フィルムは、面方向の熱伝導率が厚さ方向の熱伝導率よりも高い。このような熱伝導樹脂フィルムは、鱗片形状を有する窒化ホウ素粒子を、窒化ホウ素粒子の鱗片平面がフィルム面に沿うように配向させた状態で、樹脂フィルム中に分散させることによって実現できる。なお、窒化ホウ素粒子の鱗片平面とは、鱗片形状の平面を指している。鱗片形状を有する窒化ホウ素粒子は、面方向は原子が強い共有結合で繋がっているため熱を伝えやすいが、厚さ方向は原子が分子間力で結合しているため熱を伝えにくい。そのため、窒化ホウ素粒子の鱗片平面が沿っているフィルム面方向は高い熱伝導率を示し、窒化ホウ素粒子の厚さ方向とほぼ一致するフィルムの厚さ方向の熱伝導率は低くなる。
【0023】
熱伝導樹脂フィルムは、面方向の熱伝導率が6W/m・K以上が好ましく、9W/m・K以上がより好ましい。熱伝導樹脂フィルムの熱伝導率は、含まれる窒化ホウ素粒子の含有量を変化させることによって調整できる。例えば、(窒化ホウ素粒子の体積)/(樹脂の体積)の比を大きくすることによって、熱伝導率を高めることができる。熱伝導樹脂フィルムの厚さ方向についての熱伝導率は、面方向の熱伝導率よりも低ければよいため、特には限定されないが、例えば2W/m・K以下が好ましい。熱伝導樹脂フィルムにおいて、厚さ方向の熱伝導率に対する面方向の熱伝導率の比(面方向の熱伝導率/厚さ方向の熱伝導率)は、9以上であることが好ましい。熱伝導率の比を9以上とすることにより、延出部13aへの熱伝導が優勢となり、冷却効果が向上する。
【0024】
熱伝導樹脂フィルムの絶縁破壊電圧は、特には限定されない。しかし、組電池装置の用途によっては、高い絶縁破壊電圧が要求される場合がある。組電池装置が、例えば単電池セル11の上端部側に延出する熱伝導部材の延出部を有する場合(図7に示すような構成を有する場合)、熱伝導樹脂フィルムは、厚さ100μmにおいて7kV以上、好ましくは10kV以上の絶縁破壊電圧を有することが望まれる。これは、熱伝導部材13が電極12に接触しても、安全を確保できるからである。熱伝導樹脂フィルムの絶縁破壊電圧は、例えば樹脂の種類、フィルムの厚さ及び窒化ホウ素粒子の形状(粒径等)によって調整でき、さらに、熱伝導樹脂フィルム作製時に触媒を添加すること等によっても調整できる。
【0025】
熱伝導樹脂フィルムは、窒化ホウ素粒子を20〜50体積%の範囲、及び、樹脂を50〜80体積%の範囲で含むことが好ましい。窒化ホウ素粒子及び樹脂をこのような範囲内で含むことにより、熱伝導率とフィルム強度との良好なバランスが得られる。
【0026】
熱伝導樹脂フィルムの厚さは、熱伝導部材13の構成及び単電池セル11間のギャップによって、適宜決定することができる。一般的に、組電池装置1に含まれる単電池セル11間のギャップは、0.1mm〜10mm程度である。したがって、熱伝導樹脂フィルムの厚さは、例えば0.01mm〜0.20mmの範囲であってもよく、0.02mm〜0.15mmの範囲であってもよい。
【0027】
窒化ホウ素粒子は、平均粒子径が5μm以上であることが好ましい。このような平均粒子径を有する窒化ホウ素粒子を利用することにより、面方向の熱伝導率が6W/m・K以上である熱伝導樹脂フィルムを得やすくなる。熱伝導樹脂フィルムの面方向の熱伝導率をより高めるために、より大きな平均粒子径を有する窒化ホウ素粒子を用いることが好ましい。なお、ここでいう窒化ホウ素粒子の平均粒子径とは、レーザ回折・散乱法(マイクロトラック法)によって測定された粒度分布から求められる算術平均径のことである。以下、窒化ホウ素粒子の平均粒子径というときは、同様の方法で求められる値のことを指す。
【0028】
熱伝導樹脂フィルムに用いられる樹脂には、溶媒蒸発法によってフィルム化できる樹脂が好適に用いられる。そのような樹脂を用いる場合、樹脂原料と溶媒と鱗片形状を有する窒化ホウ素粒子とを含む溶液を、例えばベースフィルム上に塗布する等して膜状に成形し、その後、加熱等により溶媒を除去し、さらに樹脂原料を反応させることによって、鱗片形状を有する窒化ホウ素粒子が分散した樹脂フィルムを作製できる。このような方法で樹脂フィルムを作製する場合、溶媒が蒸発していく段階で、窒化ホウ素粒子は、その鱗片平面がフィルム面に対して平行な状態になるように配向する。したがって、鱗片平面がフィルム面に沿うように配向した状態で窒化ホウ素粒子が樹脂中に分散している状態を、容易に実現することが可能となる。さらに、その中でも、耐屈曲性及び柔軟性を有するとの理由から、例えば、ポリイミド、ポリアリレート、エポキシ及びポリアミドイミド等が好適に用いられる。すなわち、本実施の形態の熱伝導樹脂フィルムは、窒化ホウ素粒子がポリイミド中に分散しているポリイミド系フィルムであってもよいし、窒化ホウ素粒子がポリアリレート中に分散しているポリアリレート系フィルムであってもよいし、窒化ホウ素粒子がエポキシ中に分散しているエポキシ系フィルムであってもよいし、窒化ホウ素粒子がポリアミドイミド中に分散しているポリアミドイミド系フィルムであってもよい。以下、熱伝導樹脂フィルムにポリイミドを用いる場合(熱伝導ポリイミドフィルムとする場合)を例に挙げて、製造方法を説明する。
【0029】
まず、イミド化触媒及び窒化ホウ素粒子が添加されたポリアミック酸溶液を、ベースフィルム又はガラス板上に所定の厚さに塗布する。次いで、ポリアミック酸溶液の塗膜を、加熱又は溶媒抽出等により固化又は硬化させ、さらに高温で加熱してイミド化することによって、熱伝導ポリイミドフィルムが得られる。
【0030】
ポリアミック酸溶液は、公知のものを使用することができ、酸二無水物とジアミンとを溶媒中で重合反応させることによって得られる溶液が使用できる。好適な酸二無水物の例として、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、及び、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。ジアミンの例として、4,4’−ジアミノフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジクロロベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、1,5−ジアミノナフタレン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,3’−ジメチル4,4’−ビフェニルジアミン、ベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、及び、4,4’−ジアミノジフェニルプロパ等が挙げられる。これらの酸二無水物とジアミンとを重合反応させる際の溶媒は、適宜選択すればよいが、溶解性等の点から極性溶媒が好ましく用いられる。極性溶媒として、具体的には、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルメトキシアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルトリアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ピリジン、ジメチルスルホキシド、テトラメチレンスルホン、及び、ジメチルテトラメチレンスルホン等が考えられる。これらは単独で用いることもできるし、複数を併せて用いることもできる。さらに、これらの有機極性溶媒に、クレゾール、フェノール、キシレノール等のフェノール類、ベンゾニトリル、ジオキサン、ブチロラクトン、キシレン、シクロヘキサン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等を、単独で又は複数併せて混合することもできる。
【0031】
酸二無水物とジアミンとを有機極性溶媒中で反応させることにより、ポリアミック酸溶液が得られる。その際のモノマー濃度(溶媒中における、酸二無水物とジアミンの合計の濃度)は、種々の条件に応じて設定されるが、5〜30重量%が好ましい。また、反応温度は、80℃以下に設定することが好ましく、より好ましくは5〜50℃である。反応時間は、0.5〜10時間が好ましい。
【0032】
添加するイミド化触媒は、特に限定されず、例えば2−メチルイミダゾール、1,2,4,5−テトラメチルイミダゾール、4−ヒドロキシピリジン等を、0.1〜0.2mol%程度加えるとよい。
【0033】
ポリアミック酸溶液の粘度は、好ましくは1〜1000Pa・s(10〜10000ポアズ)程度であり、より好ましくは5〜500Pa・s(50〜5000ポアズ)程度である(温度23℃、B型粘度計による測定)。粘度が1Pa・s未満であると、いわゆるタレや塗膜のハジキが生じやすくなり、塗膜の厚さを均一にすることが困難になるため、好ましくない。一方、粘度が1000Pa・sを超えると、流動しにくいため、塗布によってポリアミック酸溶液の膜を形成することが困難になる。
【0034】
上記のような方法で作製される熱伝導ポリイミドフィルムは、面方向についての高い熱伝導性を実現でき、さらに良好な絶縁破壊特性も得られる。
【0035】
なお、本実施の形態では、熱伝導部材13が熱伝導樹脂フィルムからなる構成について説明したが、熱伝導部材13は熱伝導樹脂フィルムを含んでいればよいため、この構成に限定されない。例えば、図3に示すように、熱伝導樹脂フィルム14の両面に粘着層15をさらに配置して、熱伝導部材13としてもよい。このような構成によれば、熱伝導部材13と単電池セル11とをより密着させることができるので、単電池セル11から熱伝導部材13への熱の伝導が効率良く行われることになる。なお、この場合に用いられる粘着層15は、耐熱性に優れるシリコーン系粘着剤によって形成されることが好ましい。また、粘着層15は熱伝導樹脂フィルム14の少なくとも何れか一方の面に配置されていればよいため、熱伝導樹脂フィルム14の片面のみに粘着層15を設ける構成であってもよい。また、熱伝導部材13の別の例として、図4に示すように、2つの熱伝導樹脂フィルム16の間に断熱層17を配置する構成も適用できる。このような構成によれば、熱伝導部材13の厚さ方向における熱の伝導をさらに抑制できるので、単電池セル11間の伝熱をさらに抑制して、各単電池セル11を効率良く冷却できる。また、断熱層17は、組電池装置の設計の際、厚み調節層としても利用できる。なお、組電池装置にさらなる小型化や単電池セルの高密度化が要求される場合は、単電池セル間のギャップもより狭くなる傾向にある。そのような理由から、断熱層等の別の層を設けずに、熱伝導樹脂フィルムのみで熱伝導部材13を形成することが、より好ましい。
【0036】
本実施の形態では、熱伝導部材が単電池セルの下端からのみ延出しているが、これに限定されない。熱伝導部材13は、単電池セル11の周端部全体から外側に延出していてもよいし、周端部のうち下端以外の他の端部から外側に延出していてもよい。
【0037】
本実施の形態では、単電池セルとして、角形扁平のリチウムイオン電池のセルを用いたが、これに限定されない。本発明の構成は、他の形状を有する他の電池にも適用可能である。
【実施例】
【0038】
次に、本発明の組電池装置について、実施例を用いて具体的に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例によって何ら限定されるものではない。
【0039】
(実施例1)
本発明の組電池装置について、単電池セル温度と熱伝導部材の延出量との関係のシミュレーションを行った。有限体積法をベースとしたCFD(Computational Fluid Dynamics)ソフトウェア「ANSYS Fluent」を利用して、シミュレーション(熱計算)を実施した。
【0040】
条件設定を図5に示す。図示のとおり、アルミニウム板22(縦150mm×横150mm×厚さ4mm、熱伝導率138W/m・K)とその外側に配置したヒーター23(縦150mm×横150mm×厚さ15mm、熱伝導率138W/m・K)とを一組として単電池セルを模擬し、2つの単電池セルの間に試料となる熱伝導部材21を挟み、ヒーター23の外側に断熱材24(縦150mm×横150mm×厚さ15mm、熱伝導率0.07W/m・K)を配置して供試体を組み上げ、ヒーター23に各10W(合計20W)の出力をさせて、当該出力と、供試体からの放熱が平衡状態となった時点でのアルミニウム板22の体積平均温度を算出した。なお、シミュレーションは、図6のグラフに示す5種類の試料(縦225mm×横150mmのシート状の熱伝導部材21)について、アルミニウム板22の間に完全に試料を挟み込み、延出部21a(縦75mm×横150mm)をアルミニウム板22の下端からはみ出させて、延出部21aに相当する部分を供試体の下方に形成させた状態で実施した。外気温を25℃とし、気流有りの場合を想定して熱伝達率を10W/(m2・K)とした。
【0041】
シミュレーションの結果は、図6に示すとおりである。本発明の熱伝導部材を熱伝導樹脂フィルムのみから構成する場合、熱伝導樹脂フィルムの面方向の熱伝導率が5W/m・Kの場合でも、延出量2cm以下でセル温度を低下させることができるという結果が得られた。また、面方向の熱伝導率を20W/m・Kとすると、延出量2cm以下でセル温度を50℃以下まで下げることができるという結果となった。これらのシミュレーションの結果から、本発明で特定される熱伝導部材が単電池セル間に組み込まれた組電池装置は、単電池セルを十分に冷却できることが確認された。
【0042】
(実施例2)
実施例2では、図7に示す評価装置を作製して、熱伝導部材が熱伝導樹脂フィルムのみからなる構成についての放熱評価を行った。実施例2で用いた評価装置は、熱伝導樹脂フィルム31(縦130mm×横100mm×厚さ0.15mm)を、アルミニウム板32(縦100mm×横100mm×厚さ15mm)で挟持し、さらにアルミニウム板32の外側にヒーター33を設置して、それを断熱材34を介してアクリル板35で固定した。熱伝導樹脂フィルム31は、アルミニウム板32の下端及び上端からそれぞれ外側に延出する延出部31a,31bを有していた。延出部31a,31bのアルミニウム板32の端部からの長さは、共に15mmであった。
【0043】
本実施例で用いた熱伝導樹脂フィルム31には、窒化ホウ素粒子として、電気化学工業株式会社製の「デンカボロンナイトライド(グレード:GP)」を用いた。窒化ホウ素粒子の含有量が45体積%となるように、ポリアミック酸溶液(ピロメリット酸二無水物とp−フェニレンジアミンとからなるN−メチル−2−ピロリドン溶液)に混合し、ガラス基板上に厚さ0.6mmとなるように塗布した後、120℃で30分乾燥させた。次に、120℃から320℃に4℃/分で昇温し、320℃で12分間維持した。これにより、熱伝導樹脂フィルム31を得た。
【0044】
得られた熱伝導樹脂フィルムの熱伝導率を、レーザフラッシュ法を利用して測定した。用いた装置は、キセノンフラッシュアナライザー「ナノフラッシュ」(ブルカー・エイエックス社製)であった。熱伝導率は、以下の式より求めた。本実施例の熱伝導樹脂フィルムの面方向の熱伝導率は13W/m・K、厚さ方向の熱伝導率は0.6W/m・Kであった。
熱伝導率[W/m・K]=熱拡散率[mm2/s]×比熱[J/gK]×密度[g/cm3
【0045】
このような評価装置を用い、ヒーター33の出力を6W(30V、0.2A)として、アルミニウム板32の温度を熱電対によって測定した。その結果を表1に示す。なお、温度測定は、ヒーター33で加熱を開始してから240分後に行った。また、これらの測定は、全て25℃の室温で行われた。
【0046】
熱伝導樹脂フィルム31を抜き取って、アルミニウム板32間を空間のままの状態とした評価装置(表1中、「Blank」と記載されているもの)、熱伝導樹脂フィルム31の代わりに、窒化ホウ素粒子が含まれていないポリイミドフィルム(東レ・デュポン株式会社製、「カプトン(登録商標)」)を配置した評価装置もそれぞれ作製し、同様の評価実験を行った。それらの結果も、表1に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
表1に示すように、アルミニウム板32の間に熱伝導樹脂フィルムを配置することにより、何も配置しない場合や、窒化ホウ素粒子を含まないポリイミドフィルムを配置する場合よりも、アルミニウム板の温度を低下させることができ、さらに雰囲気温度も低くなった。この結果から、本発明の熱伝導樹脂フィルムを熱伝導部材として単電池セル間に配置することにより、単電池セルの熱を効果的に放熱できることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の組電池装置は、様々な用途に適用できるが、特に電気自動車の電源装置等に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0050】
1 組電池装置
11 単電池セル
12 電極
13 熱伝導部材
13a 延出部
14 熱伝導樹脂フィルム
15 粘着層
16 熱伝導樹脂フィルム
17 断熱層
21 熱伝導部材(試料)
22 アルミニウム板
23 ヒーター
24 断熱材
31 熱伝導樹脂フィルム
32 アルミニウム板
33 ヒーター
34 断熱材
35 アクリル板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに電気的に接続された複数の単電池セルと、
前記単電池セルと接して且つ交互に列設され、且つ、隣接する単電池セルの周端部の少なくとも一部において当該周端部よりも外側に延出するように設けられた、シート状の熱伝導部材と、
を備え、
前記熱伝導部材は、面方向の熱伝導率が厚さ方向の熱伝導率よりも高い熱伝導樹脂フィルムを含んでおり、
前記熱伝導樹脂フィルムは、樹脂と鱗片形状を有する窒化ホウ素粒子とを含んでおり、
前記窒化ホウ素粒子は、その鱗片平面がフィルム面に沿うように配向した状態で、前記樹脂中に分散している、
組電池装置。
【請求項2】
前記熱伝導部材が、前記熱伝導樹脂フィルムからなる、
請求項1に記載の組電池装置。
【請求項3】
前記熱伝導部材が、前記熱伝導樹脂フィルムの少なくとも何れか一方の面に配置された粘着層をさらに含む、請求項1に記載の組電池装置。
【請求項4】
前記熱伝導部材が、断熱層をさらに含み、
前記熱伝導部材は、前記断熱層の両面に前記熱伝導樹脂フィルムが配置されることによって形成されている、
請求項1に記載の組電池装置。
【請求項5】
前記窒化ホウ素粒子の平均粒子径は5μm以上である、
請求項1〜4の何れか1項に記載の組電池装置。
【請求項6】
前記熱伝導樹脂フィルムは、前記窒化ホウ素粒子がポリイミド中に分散しているポリイミド系フィルムである、
請求項1〜5の何れか1項に記載の組電池装置。
【請求項7】
前記熱伝導樹脂フィルムは、前記窒化ホウ素粒子がポリアリレート中に分散しているポリアリレート系フィルムである、
請求項1〜5の何れか1項に記載の組電池装置。
【請求項8】
前記熱伝導樹脂フィルムは、前記窒化ホウ素粒子がエポキシ中に分散しているエポキシ系フィルムである、
請求項1〜5の何れか1項に記載の組電池装置。
【請求項9】
前記熱伝導樹脂フィルムは、前記窒化ホウ素粒子がポリアミドイミド中に分散しているポリアミドイミド系フィルムである、
請求項1〜5の何れか1項に記載の組電池装置。
【請求項10】
前記熱伝導樹脂フィルムは、溶媒蒸発法によって作製されたフィルムである、
請求項1〜9の何れか1項に記載の組電池装置。
【請求項11】
前記熱伝導樹脂フィルムは、前記窒化ホウ素粒子を20〜50体積%の範囲、及び、前記樹脂を50〜80体積%の範囲で含む、
請求項1〜10の何れか1項に記載の組電池装置。
【請求項12】
前記熱伝導樹脂フィルムにおいて、面方向の熱伝導率が6W/m・K以上であり、厚さ方向の熱伝導率に対する面方向の熱伝導率の比(面方向の熱伝導率/厚さ方向の熱伝導率)が9以上である、
請求項1〜11の何れか1項に記載の組電池装置。
【請求項13】
前記単電池セルは、リチウムイオン電池のセルである、
請求項1〜12の何れか1項に記載の組電池装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−84347(P2012−84347A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228880(P2010−228880)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】