説明

経口抗がん製剤

本発明は、N−(3−メチルイソチアゾール−5−イル)−2−[1−(3−メチルイソキサゾール−5−イルメチル)−1H−インドール−3−イル]−2−オキソアセトアミドまたは明細書中に記載されたアナログの有効量、d-アルファ−トコフェリルポリエチレングリコール1000コハク酸エステル(「TPGS」)、および2−(2−エトキシエトキシ)エタノール(「トランスクトール」)を含む経口製剤に関する。また、患者への本製剤の経口投与による、がんを治療する方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願のクロスリファレンス
本出願は、2008年7月11日に出願された米国特許出願第12/171515号に基づく優先権を主張するものである。前記先願の内容は、その全体の内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
がんは、先進国において死亡原因となっている。診断および治療計画が日々進歩しているにもかかわらず、ほとんどの現行の治療方法は望ましくない副作用があり、限られた有効性しかない。腫瘍の構造および腫瘍の転移が関与するメカニズムが多様であることから、がんの治療は、複雑である。これらの多くは未だよく分かっていない。化学療法は、主に白血病などのがんにおいて第1選択であり、不応性固形癌などのがんにおいて第2選択である。
【0003】
現在の抗がん剤のほとんどは、非経口注入で患者に投与する必要がある低分子の化学物質である。非経口投与による臨床での合併症がこれまでに報告されており、特別の注意および入院費用が重要な要素となる。抗がん剤の発見における最近の試みは、活性抗がん剤を含む経口組成物の探索を中心としている。最近、米国特許第6,903,104号明細書には、N−(3−メチルイソチアゾール−5−イル)−2−[1−(3−メチルイソキサゾール−5−イルメチル)−1H−インドール−3−イル]−2−オキソアセトアミドおよびそのアナログが、抗がん剤候補として見出されたことが開示されており、その全体の内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【0004】
概要
本発明は、一部では、N−(3−メチルイソチアゾール−5−イル)−2−[1−(3−メチルイソキサゾール−5−イルメチル)−1H−インドール−3−イル]−2−オキソアセトアミドを含む経口製剤が、予想外に、経口によるバイオアベイラビリティを高めるという発見に基づくものである。
【0005】
一実施態様において、本発明は、d-アルファ−トコフェリルポリエチレングリコール1000コハク酸エステル(「TPGS」)、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール(「トランスクトール」)、および式Iの化合物の有効量を含む抗がん製剤を特徴とする。
【0006】
【化1】

【0007】
式中、Rは、それぞれ1〜6の独立したR基が置換していてもよい、イソキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル、1,3−ベンゾチアゾリル、キノリル、イソキノリル、チオナフテニル、またはベンゾフラニルであり;Rは、それぞれ1〜4の独立したR基が置換していてもよい、H、C1〜C10アルキル、またはアリールであり;Rは、それぞれ1〜4の独立したR基が置換していてもよい、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C4〜C10シクロアルケニル、イソキサゾリル、フラニル、チオフェニル、チアゾリル、イミダゾリル、ピリジル、またはヘテロシクリルであり;Rは、それぞれ独立して、H、NO、ハロゲン原子、CN、R、OR、CO、SR、NR、C(O)R、C(O)NR、OC(O)R、S(O)、S(O)NR、NRC(O)NR、NRC(O)R、NR(COOR)、NRS(O)NR、NRS(O)、またはS(O)ORであり;nは0、1、2、3、または4であり;Rは、それぞれ独立して、H、1〜4の独立したR基が置換していてもよいC1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、1〜4の独立したR基が置換していてもよいアリール、1〜4の独立したR基が置換していてもよいヘテロアリール、1〜4の独立したR基が置換していてもよいヘテロシクリル、ハロゲン原子、ハロアルキル、SR、OR、NR、COOR、NO、CN、C(O)R、C(O)NR、OC(O)R、S(O)、S(O)OR、S(O)NR、NRC(O)NR、NRC(O)R、NR(COOR)、NRS(O)NR、またはNRS(O)であり;Rは、それぞれ独立して、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、ハロゲン原子、ハロアルキル、CN、NO、OR、またはSOであり;Rは、それぞれ独立して、それぞれ1〜4の独立したR基が置換していてもよい、H、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、またはヘテロシクリルであり;Rは、それぞれ独立して、H、OH,OR、C1〜C10アルキル、ハロゲン原子、アリール、NO、またはCNであり;およびRは、それぞれ独立して、それぞれ1〜4の独立したOH、ハロゲン原子、CN、NO、またはCOH基が置換していてもよい、H、C1〜C10アルキルまたはアリールである。前記製剤は、経口投与される。
【0008】
用語「ハロゲン原子」は、任意のフッ素、塩素、臭素、またはヨウ素の基を意味する。用語「アルキル」、「アルケニル」、および「アルキニル」は、指定の数の炭素原子を含む、直鎖または分岐鎖の炭化水素鎖を意味する。例えば、C1〜C10は、1〜10(両端を含む)の炭素原子を含みうる基を示す。用語「環」および「環系」は指定の数の原子を含む環を意味し、前記原子は、炭素原子、または窒素原子、酸素原子もしくは硫黄原子などのヘテロ原子(別途記載がある場合)である。環自体も任意の置換基と同様に、安定な化合物を形成するために、任意の原子に結合しうる。
【0009】
用語「アリール」は、6炭素の単環または10炭素の二環芳香族環系を意味し、この際それぞれの環の0、1、2、または3つの原子は、置換基で置換されうる。アリール基の例として、フェニル、ナフチルなどが挙げられる。
【0010】
用語「ヘテロアリール」は、5〜8員環の単環系、8〜12員環の二環系、または11〜14員間の三環系を意味し、単環系であれば1〜3のヘテロ原子を、二環系であれば1〜6のヘテロ原子を、三環系であれば1〜9のヘテロ原子を含む。前記へテロ原子は、O、N、またはSから選択され、それぞれの環の0、1、2、または3つの原子は、置換基で置換されうる。ヘテロアリール基の例として、ピリジル、フリル、もしくはフラニル、イミダゾリル、ベンズイミダゾリル、ピリミジニル、チオフェニル、もしくはチエニル、キノリル、インドリル、チアゾリルなどが挙げられる。
【0011】
用語「ヘテロシクリル」は、非芳香族性の5〜8員環の単環、5〜8員環の単環系、8〜12員環の二環系、または11〜14員間の三環系を意味し、単環系であれば1〜3のヘテロ原子を、二環系であれば1〜6のヘテロ原子を、三環系であれば1〜9のヘテロ原子を含む。前記へテロ原子は、O、N、またはSから選択され、それぞれの環の0、1、2、または3つの原子は、置換基で置換されうる。ヘテロシクリル基の例として、ピペラジニル、ピロリジニル、ジオキサニル、モルホリニル、テトラヒドロフラニルなどが挙げられる。
【0012】
本明細書中に記載される化合物は、化合物自体だけでなく、適用可能であればその塩、その溶媒和物、およびそのプロドラッグを含む。塩は、その例として、その化合物においてアニオンと、正電荷を帯びた官能基(例えば、アミノ)とで形成されるものでありうる。好適なアニオンとしては、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硫酸、重硫酸、スルファミン酸、硝酸、リン酸、クエン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、グルタミン酸、グルクロン酸、グルタル酸、リンゴ酸、マレイン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、トシル酸、サリチル酸、乳酸、ナフタレンスルホン酸、および酢酸のアニオンを含む。同様にして、塩は、その化合物においてカチオンと、負電荷を帯びた官能基(例えば、カルボン酸イオン)とで形成されるものでありうる。好適なカチオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、およびテトラメチルアンモニウムなどのアンモニウムイオンを含む。前記化合物はまた、第4級窒素原子を含有する塩を含む。プロドラッグの例としては、エステル、および他の薬学的に許容される誘導体を含み、これは患者に投与する上で、本明細書中に記載の活性化合物を提供できるものである(Goodman and Gilman’s, The Pharmacological basis of Therapeutics, 8thed., McGraw-Hill, Int. Ed. 1992, “Biotransformation of Drugs”を参照)。また、不斉中心を有する化合物は、ラセミ体、ラセミ体混合物、単一エナンチオマー、または個々のジアステレオマー、およびジアステレオマー混合物として生成しうる。
【0013】
本発明に係る製剤において、TPGSは10〜80重量%(例えば、70〜80重量%)であり、トランスクトールは20〜60重量%(例えば、20〜30重量%)でありうる。前記製剤は、さらに300〜6000(例えば、400〜1000)の範囲の分子量を有するポリエチレングリコール(「PEG」)をさらに含みうる。本発明に係る実施に用いられるPEGの一例は、PEG400でありうる。前述の製剤において、前記PEGは10〜80重量%(例えば、30〜70重量%または40〜65重量%)であり、前記TPGSが10〜80重量%(例えば、10〜50重量%または15〜40重量%)であり、および前記トランスクトールが10〜60重量%(例えば、10〜30重量%または15〜40重量%)でありうる。本発明に係る製剤は、カプセル(例えば、軟カプセルまたは硬カプセル)に封入されうる。前記カプセルは、1または2以上のコラーゲン、ゼラチン、アラビアゴム、およびポリエチレンなどのポリマーから形成されうる。本発明に係る製剤は、グリセリド(例えば、トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド)、脂肪酸、および脂肪酸エステル(例えば、ヒドロキシアルカンまたはジヒドロキシアルカンの脂肪酸エステル)、ならびにこれらの誘導体を含まないものでありうる。前記製剤において、式Iの化合物は、N−(3−メチルイソチアゾール−5−イル)−2−[1−(3−メチルイソキサゾール−5−イルメチル)−1H−インドール−3−イル]−2−オキソアセトアミドでありうる。
【0014】
本発明に係る製剤において、式Iの化合物は活性成分である。上述の薬学的に許容されるキャリアとしてのTPGS、トランスクトール、またはPEGは、本発明に係る製剤において非活性成分である。前記製剤は、室温で液状でありうる。前記製剤はまた、室温で半固形状、例えば、ペーストまたは湿潤固体でありうる。例えば、上述の液剤は、カプセルからの液剤の漏出の可能性を減らすために、吸収剤として使用されるポリビニルピロリドンのパウダー(好ましくは、約2500〜約50000の分子量を有する)などの固形の賦形剤またはキャリアとさらに混合されうる。本明細書中に記載されるポリマーの分子量は数平均分子量または重量平均分子量のいずれかであり、当該技術分野に周知の測定方法に応じて異なる。例えば、市販のPEG400は、重量平均分子量で400である。
【0015】
本発明に係る製剤において、他の従来の成分、例えば、d−アルファ−トコフェロール、パルミチン酸アスコルビル、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)などの抗酸化剤、およびプロピレングリコールなどの可塑剤が含まれうる。
【0016】
他の態様において、本発明は、上述の製剤の有効量を被験者に経口投与することによって、がんを治療する方法を特徴とする。がんの例としては、限定されないが、ヒト白血病、肉腫、骨肉腫、リンパ腫、黒色腫、卵巣、皮膚、精巣、胃、膵臓、腎臓、乳房、前立腺、直腸、頭頸部、脳、食道、膀胱、副腎皮質、肺、気管支、子宮内膜、子宮頸部、もしくは肝臓の癌、または原発部位の知られていない癌が挙げられる。前記がんは、P−糖タンパク質(MDR)、多剤耐性関連タンパク質(MRP)、肺癌耐性関連タンパク質(LRP)、乳癌耐性タンパク質(BCRP)、または他の抗がん剤耐性関連タンパク質を発現する薬剤耐性表現型のがんでありうる。
【0017】
がんを治療するために経口投与する上述の製剤の使用、およびがんを治療する薬剤の製造のための上述の製剤の使用もまた、本発明の技術的範囲内である。
【0018】
1または2以上の本発明に係る実施形態の詳細は、以下の明細書に記載されている。本発明に係るその他の特徴、目的、および利点は、明細書および特許請求の範囲から明らかである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施に用いられる式Iの化合物は、公知の方法により合成されうる。一般的に、式の化合物は、本明細書のスキームおよび実施例(例えば、実施例1)に例示された方法を含む、標準的な化学合成法により簡便に得られる。
【0020】
当業者に認識されるように、本明細書の合成スキームは、本願に記載され特許請求される化合物が合成されるすべての方法の包括的なリストを構成することを目的とするものではない。追加の方法は、当業者にとって明らかなものである。また、上述の様々な合成工程は、所望の化合物が得られるように異なる順序または手順で行われうる。本明細書に記載の化合物の合成に有用な合成化学的変換および保護基を用いた方法(保護および脱保護)は当業者に公知であり、例えば、R. Larock, Comprehensive Organic Transformations, VCH Publishers (1989); T.W. Greene and P.G.M. Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 2nd. Ed., John Wiley and Sons (1991); L. Fieser and M. Fieser, Fieser and Fieser's Reagents for Organic Synthesis, John Wiley and Sons (1994); およびL. Paquette, ed., Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis, John Wiley and Sons (1995);並びにこれらの続きの版に記載されている。
【0021】
実施例のように、本発明の実施に用いられる化合物は、下記に示されるスキームに従い調製される。下記方法における化学構造式の変更および官能基は、式Iを含む、任意の式に対する本明細書の記載の通りに定義される。
【0022】
【化2】

【0023】
出発原料であるインドリル化合物を溶媒(例えば、テトラヒドロフラン、イソプロパノール、ジクロロメタン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、またはトルエン)に溶解した溶液を、塩基(例えば、水素化ナトリウム、水素化カリウム、またはカリウムtert−ブトキシド)および式XCHの化合物(Xは脱離基である)と反応させる。得られた中間体をオキサリル誘導体および式MNRのアミン(MはHまたは金属カチオン、例えば、K、Li、Naである)と反応させ、本明細書に記載される化合物を得る。望みの化合物または中間体は、標準的な合成技術を用いて単離および精製されうる、または単離もしくは精製をしないでさらに反応(すなわち、「ワンポット合成」)させうる。
【0024】
また、本発明の実施に用いられる化合物は、下記に示す合成スキームに従い調製される。
【0025】
【化3】

【0026】
出発原料であるインドリルを溶媒(例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、またはジクロロメタン)に溶解し、オキサリル誘導体(例えば、塩化オキサリル)および式MNRのアミン(MはHまたは金属カチオン、例えば、K、Li、Naである)と反応させる。中間化合物を、式XCHの化合物(Xは脱離基である)と反応させ、本明細書の式の化合物を得る。得られた望みの化合物または中間体は、単離(および任意に精製)されうる、または単離もしくは精製をしないでさらに反応(すなわち、「ワンポット合成」)させうる。
【0027】
このようにして合成された化合物は、フラッシュカラムクロマトグラフィ、高速液体クロマトグラフィ、結晶化、または他の好適な方法によりさらに精製されうる。
【0028】
任意の順序で、式Iの化合物、TPGS、トランスクトール、および任意のPEGを、所望の比率で単に混合することで、本発明に係る製剤が調製されうる。例えば、所定量の化合物をトランスクトールおよび任意にPEGと所定の濃度で混合し、次いでTPGSを添加する方法でありうる。混合は、振とう、撹拌、または旋回により行われ、非活性成分(例えば、TPGS、トランスクトール、およびPEG)中の活性成分(例えば、式Iの化合物)を再構成するために制御されうる。混合工程を促進するため、前記製剤は室温でまたは40〜80℃に加温して調製されうる。任意の工程において、前処理、滅菌、例えば、加圧滅菌が適用されうる。
【0029】
本発明に係る製剤は、1または2以上のカプセルからの液体混合物の漏出を最小にする固形の賦形剤をさらに含みうる。前記固形の賦形剤は、製剤の調製における任意の工程で添加されうる。当業者によって認められる、目的とする効果を付与するための製剤中の固形の賦形剤の好適な濃度は、従来の方法を用いてアッセイされうる。
【0030】
必要に応じて患者に経口投与する場合、本発明に係る製剤は、好ましくはカプセル(例えば、軟カプセルまたは硬カプセル)に封入されうる。前記カプセルは、当業者に周知の原料、例えば、ブタコラーゲン、ウシコラーゲン物質、ゼラチン(例えば、ブタゼラチン)、アラビアゴム、ペクチン、ポリ(エチレン−co−無水マレイン酸)、ポリ(ビニルメチルエーテル−co−無水マレイン酸)、カラギナン、および寒天から形成されうる。
【0031】
本発明に係る製剤は、治療の必要に応じて患者に製剤の有効量を経口投与することにより、がんを治療するために用いられうる。
【0032】
本明細書中で用いられる用語「治療する(treating)」または「治療(treatment)」は、がん、がんの症状、がんの二次的疾患もしくは疾病、またはがんの素因を有する被験者に、当該がん、がんの症状、がんの二次的疾患もしくは疾病、またはがんの素因の治療、緩和、軽減、是正、または改善の目的で製剤の有効量を投与することである。
【0033】
用語「有効量」は、製剤中の式Iの化合物の量、または治療される患者の治療効果をもたらす前記化合物の量を意味する。前記治療効果は、客観的(すなわち、いくつかの試験またはマーカーで測定可能)、または主観的(すなわち、被験者が伝える兆候または感覚、および効果)でありうる。上述の化合物の有効量は、約0.1〜約500mg/kg体重/日、または約1〜約50mg/kg/体重/日でありうる。
【0034】
本発明に係る製剤は、1〜6回/日(例えば、0.1〜100mg/dose)投与されうる。1つの剤形を作るためにキャリア物質と混合されうる活性成分の量は、治療される宿主によって変化しうる。本発明に係る典型的な製剤は、活性化合物を0.5〜20%(w/w)を含みうる。
【0035】
さらなる説明を行うことなく、上述の詳細な説明により、本発明を適切に実施することができるものと考えられる。したがって、下記の実施例は、単に例示のものであって、開示された以外のものをいかようにも限定するものではないと解されるべきである。
【実施例】
【0036】
実施例1:N−(3−メチルイソチアゾール−5−イル)−2−[1−(3−メチルイソキサゾール−5−イルメチル)−1H−インドール−3−イル]−2−オキソアセトアミド(「BPR0C261」)の合成
インドール(1.17 g, 10 mmol)の10mLテトラヒドロフラン溶液に、カリウムtert−ブトキシド(1.34 g, 12 mmol)の10mLテトラヒドロフラン懸濁液を滴下した。反応混合物を室温で2時間撹拌し、次いで5−(クロロメチル)−3−メチルイソキサゾール(1.32 g, 10mmol)の5mLテトラヒドロフラン溶液を滴下した。前記溶液を4時間放置し、次いで、10mL飽和塩化アンモニウムを撹拌しながら添加した。前記混合物を合計60mLのエーテルで3回抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、ろ過した。得られたろ液を真空下で濃縮し、シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィで精製した。用いた展開溶媒はn−ヘキサンおよび酢酸エチル8:1(w/w)の混合液であった。収率:1.61g、76%。
【0037】
5−(1H−1−インドリルメチル)−3−メチルイソキサゾール(212 mg, 1.0 mmol)のジエチルエーテル溶液に、塩化オキサリル(254 mg, 2.0 mmol)を0℃で添加した。反応混合物を0℃で3時間撹拌し、次いで反応溶媒を留去した。残渣を5mLテトラヒドロフランに溶解し、次いで3−メチル−5−イソチアゾールアミン(114 mg, 1.0 mmol)およびトリエチルアミン(1 mL)の10mLテトラヒドロフラン溶液を滴下した。前記混合物を10時間撹拌した後、1NのNaOH(4 mL)を反応フラスコに滴下した。混合物を合計60mLのテトラヒドロフランで3回抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、ろ過し、得られたろ液を真空下で濃縮した。残渣をメタノールから結晶化した。収率:0.27g、71%
NMR:10.33 (s, 1H), 9.15 (s, 1H), 8.44 (d, J = 6.3 Hz, 1H), 7.45-7.38 (m, 3H), 6.82 (s, 1H), 5.96 (s, 1H), 5.48 (s, 2H), 2.49 (s, 3H), 2.52 (s, 3H).
MS (M+1): 381.1.
実施例2:TPGS、トランスクトール、およびPEGを含むBPR0C261製剤の調製
はじめに、BRCOC261(5 mg)をトランスクトール(99 mg)に溶解した。次いで、前記溶液にPEG400(300 mg)を添加した。TPGS(105 mg)を融解するまで60〜70℃で加熱した。融解したTPGSをトランスクトール/PEG溶液に撹拌しながら添加して均一の溶液とした。前記溶液を透明な溶液となるまでさらに40℃で撹拌した。
実施例3:異なるキャリアにおけるBPR0C261の溶解度
異なる薬剤キャリアまたは混合キャリアにおけるBRCOC261の溶解度を評価した。前記溶解度を、室温におけるキャリアまたは混合キャリア中に溶解する化合物の最大量と定義する。結果を下記表1に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
実施例4:BPRC0C261の経口バイオアベイラビリティ
BPR0C261の経口バイオアベイラビリティは、本明細書中に記載された様々な経口製剤におけるBPR0C261の経口投与(「po」)によって得られた薬物動態学的(「PK」)特性と、BPR0C261の静脈内投与(「IV」)によって得られたPKとを比較することによって評価した。
【0040】
BPR0C261の静注製剤(キャリア:5%DMSO、25%Cremophor EL、および70%水、v/v/v)を、3匹のグループのマウスそれぞれに対して2mg/kg体重の用量を尾静脈に急速静注法で静脈投与した。それぞれの動物から心穿刺で血液サンプル(0.15 mL)を異なる部位から採取し(投与前、投与後2分、5分、15分、30分、1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、および24時間)、氷中(0〜5℃)で保存した。
【0041】
BPR0C261の経口製剤(すなわち、前述したDMSO、Cremophor EL、および水を含む製剤、またはTPGS、トランスクトール、および任意のPEGを含む製剤)を、3匹のグループのマウスに対して様々な投与量を強制経口投与した。それぞれの動物から心穿刺で血液サンプル(0.15 mL)を異なる部位から採取し(投与前、投与後15分、30分、1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、および24時間)、氷中(0〜5℃)で保存した。
【0042】
血漿を血液サンプルから15000g、4℃で15分間遠心分離して分離した。分離した血漿はフリーザー(−20℃)で保存した。すべてのサンプルの血漿のBPR0C261の濃度をHPLC−タンデム質量分析で解析した。
【0043】
BPR0C261の血漿濃度データからIVまたはpoのPK特性、すなわち、血漿濃度−時間曲線を得た。曲線下面積(AUC)を計算した。経口バイオアベイラビリティ(F%)を、経口製剤の用量通常曲線下面積(「AUCpo/dosepo」)と静脈製剤の用量通常曲線下面(「AUCIV/doseIV」)との比較、すなわち、F%=[AUCpo/dosepo]/[AUCIV/doseIV]により決定した。
【0044】
5%DMSO、25%Cremophor EL、および70%水(v/v/v)を含む製剤のBPR0C261の経口バイオアベイラビリティは、マウスでは18%であった。
【0045】
予想外にも、TPGS、トランスクトール、および任意のPEGを含む製剤のBPR0C261の経口バイオアベイラビリティは、25〜80%であった。
【0046】
その他の実施形態
本発明の詳細な説明に開示されたすべての特徴は、いかなる組み合わせによっても結合されうる。同一、等価、または類似の目的で得られるその他の特徴は、本発明の詳細な説明に開示されたそれぞれの特徴と置換されうる。したがって、明示に他の記載がない限り、開示されるそれぞれの特徴は、等価または類似する特徴を包括する系列の例である。
【0047】
上述の発明の詳細な説明から、当業者であれば容易に本発明の本質的な特徴を理解することができ、その思想および技術的範囲から逸脱することなく、様々な使用および条件を適応して、本発明の様々な変更および修飾をすることができる。したがって、他の実施形態はまた、添付の特許請求の範囲の技術的範囲に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
d-アルファ−トコフェリルポリエチレングリコール1000コハク酸エステル(「TPGS」);
2−(2−エトキシエトキシ)エタノール(「トランスクトール」);および
式Iの化合物の有効量;
を含み、経口投与される、医薬製剤。
【化1】

式中、Rは、それぞれ1〜6の独立したR基が置換していてもよい、イソキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル、1,3−ベンゾチアゾリル、キノリル、イソキノリル、チオナフテニル、またはベンゾフラニルであり;
は、それぞれ1〜4の独立したR基が置換していてもよい、H、C1〜C10アルキル、またはアリールであり;
は、それぞれ1〜4の独立したR基が置換していてもよい、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C4〜C10シクロアルケニル、イソキサゾリル、フラニル、チオフェニル、チアゾリル、イミダゾリル、ピリジル、またはヘテロシクリルであり;
は、それぞれ独立して、H、NO、ハロゲン原子、CN、R、OR、CO、SR、NR、C(O)R、C(O)NR、OC(O)R、S(O)、S(O)NR、NRC(O)NR、NRC(O)R、NR(COOR)、NRS(O)NR、NRS(O)、またはS(O)ORであり;
nは0、1、2、3、または4であり;
は、それぞれ独立して、H、1〜4の独立したR基が置換していてもよいC1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、1〜4の独立したR基が置換していてもよいアリール、1〜4の独立したR基が置換していてもよいヘテロアリール、1〜4の独立したR基が置換していてもよいヘテロシクリル、ハロゲン原子、ハロアルキル、SR、OR、NR、COOR、NO、CN、C(O)R、C(O)NR、OC(O)R、S(O)、S(O)OR、S(O)NR、NRC(O)NR、NRC(O)R、NR(COOR)、NRS(O)NR、またはNRS(O)であり;
は、それぞれ独立して、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、ハロゲン原子、ハロアルキル、CN、NO、OR、またはSOであり;
は、それぞれ独立して、それぞれ1〜4の独立したR基が置換していてもよい、H、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、またはヘテロシクリルであり;
は、それぞれ独立して、H、OH,OR、C1〜C10アルキル、ハロゲン原子、アリール、NO、またはCNであり;および
は、それぞれ独立して、それぞれ1〜4の独立したOH、ハロゲン原子、CN、NO、またはCOH基が置換していてもよい、H、C1〜C10アルキルまたはアリールである。
【請求項2】
前記TPGSが10〜80重量%であり、前記トランスクトールが20〜60重量%である、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
前記TPGSが70〜80重量%であり、前記トランスクトールが20〜30重量%である、請求項2に記載の製剤。
【請求項4】
300〜6000の範囲の分子量を有するポリエチレングリコール(「PEG」)をさらに含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項5】
前記PEGが、400〜1000の範囲の分子量を有する、請求項4に記載の製剤。
【請求項6】
前記PEGが10〜80重量%であり、前記TPGSが10〜80重量%であり、および前記トランスクトールが10〜60重量%である、請求項4に記載の製剤。
【請求項7】
前記PEGが30〜70重量%であり、前記TPGSが10〜50重量%であり、および前記トランスクトールが10〜30重量%である、請求項6に記載の製剤。
【請求項8】
前記PEGが40〜65重量%であり、前記TPGSが15〜40重量%であり、および前記トランスクトールが15〜25重量%である、請求項7に記載の製剤。
【請求項9】
カプセルに封入された、請求項1に記載の製剤。
【請求項10】
前記カプセルが、ブタコラーゲン物質、ウシコラーゲン物質、ゼラチン、アラビアゴム、ペクチン、ポリ(エチレン−co−無水マレイン酸)、ポリ(ビニルメチルエーテル−co−無水マレイン酸)、カラギナン、および寒天からなる群から選択される少なくとも1つのポリマーから形成される、請求項9に記載の製剤。
【請求項11】
前記製剤が、グリセリド、脂肪酸、および脂肪酸エステルを含まない、請求項1に記載の製剤。
【請求項12】
前記TPGSが10〜80重量%であり、前記トランスクトールが20〜60重量%である、請求項11に記載の製剤。
【請求項13】
300〜6000の範囲の分子量を有するポリエチレングリコール(「PEG」)をさらに含む、請求項11に記載の製剤。
【請求項14】
前記PEGが、400〜1000の範囲の分子量を有する、請求項13に記載の製剤。
【請求項15】
前記PEGが10〜80重量%であり、前記TPGSが10〜80重量%であり、および前記トランスクトールが10〜60重量%である、請求項14に記載の製剤。
【請求項16】
前記PEGが40〜65重量%であり、前記TPGSが15〜40重量%であり、および前記トランスクトールが15〜25重量%である、請求項15に記載の製剤。
【請求項17】
前記式Iの化合物が、N−(3−メチルイソチアゾール−5−イル)−2−[1−(3−メチルイソキサゾール−5−イルメチル)−1H−インドール−3−イル]−2−オキソアセトアミドである、請求項16に記載の製剤。
【請求項18】
前記式Iの化合物が、N−(3−メチルイソチアゾール−5−イル)−2−[1−(3−メチルイソキサゾール−5−イルメチル)−1H−インドール−3−イル]−2−オキソアセトアミドである、請求項11に記載の製剤。
【請求項19】
前記式Iの化合物が、N−(3−メチルイソチアゾール−5−イル)−2−[1−(3−メチルイソキサゾール−5−イルメチル)−1H−インドール−3−イル]−2−オキソアセトアミドである、請求項1に記載の製剤。
【請求項20】
請求項1に記載の製剤の有効量を、必要とする患者に経口投与することを含む、がんの治療方法。

【公表番号】特表2011−527704(P2011−527704A)
【公表日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517646(P2011−517646)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【国際出願番号】PCT/US2009/050210
【国際公開番号】WO2010/006234
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(509093370)ナショナル ヘルス リサーチ インスティテューツ (6)
【Fターム(参考)】