説明

経皮アクセス機器を備える神経系装置

治療薬を被験者の中枢神経系に送達する装置について記載する。本装置は、少なくとも1つの頭蓋内カテーテルと、経皮アクセス機器(50、140、150、160)とを備える。この経皮アクセス機器は、少なくとも1つの体外表面(22、68)と、少なくとも1つの皮下表面とを有する本体(10、52、152)を備え、本体(10、52)は、移植された頭蓋内カテーテルに連結するための少なくとも1つのポート(12、116)を画定する。ポート(12、116)は、この機器の体外表面(22、68)からアクセス可能であるが、ポートの内腔と体外表面(22、68)との間にゴム製の栓のような封止体(14、112、142、146)が設けられる。この経皮アクセス機器は、3つ以上のポート(12、116)および/またはフランジ(26、54)を有することができる。この経皮アクセス機器(50、140、150、160)を移植する方法についても記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は経皮インプラントに関し、特に、移植された頭蓋内カテーテルとともに使用するのに適切な経皮アクセス機器を備える神経系装置に関する。
【背景技術】
【0002】
経皮機器は、皮膚を横切って体の内部と外部との間を連結する機器である。このような機器には、歯科インプラント、外部補聴器付属品、義肢付属品、および半永久的カテーテルが含まれる。幾つかの経皮機器は骨の中へ固定され、幾つかのものは軟組織の中に固定される。すべての経皮機器は皮膚から突き出て、通常では皮膚が感染に対して設ける障壁を破壊する。経皮機器は、造袋(marsupialisation)(その場合に上皮が下方に成長して機器の周囲に袋を形成し、それによって機器に拒絶反応を示す)を含めて、幾つかの理由により機能しなくなる。さらに深刻であるが、経皮機器は感染に関する潜在部位である。したがって、皮膚と機器との間の接合部は感染を防止できることが必要不可欠である。
【0003】
体内の特定の部位に対する治療薬の送達は、幾つかの問題を提起しうる。例えば、患者は、治療薬が送達されるべき部位にアクセスするために、反復手術を受けることが必要になりうる。脳のような体のある一定の領域では、カテーテルを移植することが可能であり、特定部位に対する永久的なアクセスを許容する。しかし、現時点では、このようなカテーテルは皮膚から突き出ることはなく、患者は、カテーテルの端部を露出して治療を施すために、依然として手術を必要とする。治療薬の反復送達を可能にするために、移植されたカテーテルに連結可能である経皮ポートを設けることが特に望ましい。上述のように、このようなカテーテルは脳内に配置されうる。神経系に対する治療薬の送達は、かなりの難問を呈示する。ほとんどの場合に、血流を経由する送達は、幾つかの治療薬が血液脳関門を越えることが不可能であることにより極めて限定される。別法による手法は、血流を迂回し、カテーテルシステムを経由して薬剤を直接神経系に導入することである。このようなカテーテル法は微妙な手技であり、一定期間にわたる治療薬の断続的な送達を必要とする治療計画のためにはいずれも、治療活動が行われない間、カテーテルを定位置に残しておくことが望ましい。患者が手術を受けなくても済むように、永久的または半永久的カテーテルに対する反復アクセスを可能にする経皮ポート(port)を設けることはかなり有利である。このようなポートが設けられると、カテーテルの中へ、よって中枢神経系(CNS)の中への細菌の侵入を防止することが決定的に重要であろう。ポート経由およびポートと体との間の接合部経由の感染を防止することは、患者の安全にとって必要不可欠である。
【0004】
経皮機器が先行技術に説明されているが、説明された機器は一般に、CNSではなく、患者の血流に対するアクセス用である。患者の血流に対するアクセス用のこのような機器の実施例が説明されている(例えば、特許文献1、特許文献2、および特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0249361号明細書
【特許文献2】米国特許第6607504号明細書
【特許文献3】米国特許第5098397号明細書
【特許文献4】国際公開第2003/077785号パンフレット
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、治療薬を中枢神経系に送達する装置が提供され、本装置は、少なくとも1つの頭蓋内カテーテルと経皮アクセス機器とを備え、この経皮アクセス機器は、少なくとも1つの体外表面と、少なくとも1つの皮下表面とを有する本体を備え、この本体は、移植された頭蓋内カテーテルに連結するための少なくとも1つのポートを画定し、このポートは、機器の体外表面からアクセス可能であるが、ポートの内腔と体外表面との間に封止体が設けられる。
【0007】
したがって本発明は、第1の態様において、少なくとも1つの移植された頭蓋内カテーテルに連結可能な経皮アクセス機器を提供する。経皮アクセス機器のポートはカテーテルに直接連結されてもよいし、または間接的に、例えば、管を経由して連結されてもよい。ポートは本体の体外側、すなわち、移植時に患者の皮膚の外側にある本体側からアクセス可能であり、かつ皮下側、すなわち、移植時に内部に位置決めされる本体側まで延び、それによって経皮アクセス、すなわち、患者の体の内側に対するアクセスを実現する。本明細書では、皮下のという用語は、使用に際して皮膚の上部表面の下に位置決めされる経皮アクセス機器の任意の部分を指すために使用される。この用語は、厳密に皮下の、すなわち、すべての皮膚の下にある部分ばかりでなく、皮膚の真皮および皮下組織の中に見いだされる部分、すなわち、経皮部分も意味するために使用される。ポートは任意の形状でよく、例えば、それは任意の断面を有してよく、かつ実質的に直線的であってもよいし、または1つもしくは複数の湾曲部を含んでもよい。ポートの形状は、経皮アクセス機器の企図された用途もしくは位置決めによって、または経皮アクセス機器が備えるポートの数によって決められうる。
【0008】
以上に示されたように、経皮アクセス機器は2つ以上のポートを含みうる。特に、それは2つ以上のポートを含みうる。これは、1つの経皮アクセス機器を使用して幾つかの内部移植された頭蓋内カテーテルに治療薬を送るために使用することができるという重要な利点を提供する。また異なるポートを経由して2つ以上の薬剤を同時にまたは順次に患者に投与することもできる。これらのポートは同じ形状または異なる形状でありうる。ポートは機器の本体から延びて、移植された機器に連結するための管を形成する。別法として、ポートは管に連結されてもよいし、または移植された頭蓋内カテーテルに直接連結されてもよい。
【0009】
本発明の神経系装置は、経皮ポートと移植された頭蓋内カテーテルとの間を流体連結し、かつ様々な利点を有する。特に、本発明の装置は、異なるカテーテルを介してCNSへの薬剤の注入を制御する。例えば、薬物を脳脊髄液の中へまたは隣接する組織の中へ漏出させることなく、各カテーテルごとに標的組織に薬物を充填できるようにするために、大抵の場合、異なるカテーテルを介する薬物投与は、異なる注入率でかつ異なる継続時間であることが必要になろう。カテーテル先端が内部へ移植される組織のタイプに応じて異なる注入圧を使用し、それによってカテーテル/脳境界面に沿って組織空洞の形成および注入薬剤の逆流が生じないことを保証することも必要になりうる。異なる薬剤が脳の異なる部分において異なる濃度で治療効果をもたらす可能性もあり、必然的に個々のカテーテルを介した異なる濃度での治療の提供が必要となる可能性もある。したがって本発明の装置は、病状経過の進み方に合わせて調整されうる個々のカテーテルを介する反復送達を可能にする。例えば、腫瘍が、限られた数のカテーテルの周囲で再発すれば、毒性効果を有しうる治療薬に脳の他の部分を曝すことなく、脳の患部に局所送達することが必要になる。
【0010】
経皮アクセス機器の本体は任意の形状でよい。それは、例えば、形状が管状または円筒形でありうる。別法として、経皮アクセス機器は形状が卵形または楕円形であってもよい。追加的に、それには1つまたは複数のフランジが設けられてもよい。1つまたは複数のフランジが設けられる場合、フランジは、機器の移植時にフランジが皮膚に実質的に平行であるように本体に対して配置されうる。1つまたは複数のフランジは任意の形状でよく、例えば、それらは環状でありうる。フランジは、機器の造袋を防止する助けとなるように本体上に位置決めされうる。その場合に、フランジは、使用に際して内部に位置決めされる本体の端部周りに設けられることが好ましい。1つまたは複数のフランジは、移植時に患者の真皮の下にまたはそれに隣接して位置するように機器の本体上に位置決めされることが推奨される。
【0011】
有利なことに、本機器は湾曲フランジを備える。例えば、フランジは、機器本体の中心領域に装着されて、それが外向きに延びるにつれて下向きに(すなわち、皮膚表面から離れて)湾曲しうる。好都合なことに、フランジは、経皮アクセス機器が移植されるときに、皮膚の表面に対して実質的に平行である周辺縁部領域を有する。このような周辺縁部領域は、被験者の皮下組織上に着座することが可能であり、それによって経皮アクセス機器を機械的に安定化させる。推奨される実施形態では、経皮アクセス機器が被験者の胸部領域内に移植されうる。好都合なことに、本機器は、鎖骨下に、例えば、鎖骨に近接して移植されうる。このような領域では、皮下組織(よって経皮アクセス機器)の動きが、下部に位置する骨および筋肉組織により低減されうる。以下でより詳細に説明されるように、流体が、経皮アクセス機器の1つまたは複数のポートから、1本または複数本の移植された管を経由して、関連する頭蓋内カテーテルまで経路指定されうる。多ポートが設けられる場合、流体は1本の多内腔管を経由して多カテーテルまで経路指定されうる。有利なことに、フランジは、このような管が通過できる細隙または穴のような開口を備える。これは、フランジがこのような管の上に静止する必要がなく、かつ機器の皮下組織上における着座性が向上するので、機械的な安定化をさらに増進する。
【0012】
機器本体および少なくとも1つのフランジは一体に形成されてもよいし、または別体で形成されて、次いで一体に装着されてもよい。本体およびフランジは、同じかまたは異なる材料から作製可能である。本体および/またはフランジは、例えば、セラミック(例えば、ジルコニア、ガラスなど)、重合体(例えば、ポリカーボネートまたはPEEKなどのような熱可塑性物質)、金属(例えば、チタン)、または他の任意適切な材料から作製可能である。
【0013】
経皮アクセス機器(任意のフランジを含む)の少なくとも一部は、細胞内殖を促進する表面を有しうる。例えば、この表面は多孔質でありうる。これは、多孔質チタンのような多孔質材料から経皮アクセス機器の少なくとも一部を作製することによって、またはヒドロキシアパタイトもしくはナノ線維基質のような、多孔質材料で経皮アクセス機器の少なくとも一部を被覆することによって実現可能である。本体の経皮表面の少なくとも一部は多孔質であることが好ましい。これは、皮膚が機器の表面と緊密な接合部を形成するのを促進することによって、バクテリアまたは他の細菌の侵入を低減する助けとなる。
【0014】
本体にフランジが設けられる場合、フランジ表面の少なくとも一部は、特に、ダクロン、ポリプロピレン、プロリン、およびPTFEのようなポリエステルから、またはチタンのような金属から作製されたガーゼもしくはメッシュのような、線維形成を促進する材料で被覆および/または作製されることが好ましい。好都合なことに、フランジは有孔材料から形成される。線維形成によって機器が定位置に保持されるので、線維形成を促進するフランジ用材料を使用すると、経皮アクセス機器が、定位置に縫合されることなく挿入されることを許容しうる。フランジにさらなる被覆を施して細胞付着を促進することができる。フランジは柔軟な材料から作製可能であり、したがってそれは皮膚と一緒に動きうる。好都合なことに、フランジは、皮膚機器間境界面が機器に隣接して固定化されることを保証するために剛性である。
【0015】
以上に示されたように、1つまたは複数のポートは本体の体外側からアクセス可能であるが、これらのポートには細菌の侵入を防止または低減するために封止体が設けられる。任意適切な封止体が使用可能である。1つの実施形態では、封止体が、例えば、ゴムまたはシリコーンから作製された栓の形態にある。有利なことに、封止体は抗菌(例えば、抗バクテリア)材料を含み、例えば、ゴムまたはシリコーン製の栓は銀含浸されうる。本体の体外表面は、この封止体を貫通または経由して、1つまたは複数のポートにアクセス可能であるように配置される。例えば、体外表面には1つまたは複数の開口が設けられてもよいし、または着脱可能であってもよい。使用に際して、治療薬が、例えば、針を開口および栓に通過させて薬剤をポートの中へ注入することによって、ポートに導入されうる。封止体は、経皮アクセス機器の体外側から(例えば、適切な滅菌条件下で)交換可能であってよい。
【0016】
本装置は、ポートが使用されていないときに、細菌の侵入に対するさらなる防御を実現するために、経皮アクセス機器に装着するためのキャップを追加的に備えうる。このキャップは、本体に着脱可能に装着されうる。それは、本体上にスナップ嵌めするだけでもよいし、または本体とキャップとに、キャップを本体に装着するためのねじ山が設けられてもよい。ねじ山は、本体およびキャップの縁部周りにあってもよいし、または本体とキャップとに、ねじ部およびねじ受け部が設けられてもよい。キャップは、プラスチックのような任意適切な材料から作製可能である。それは、抗菌性、特に抗バクテリア性の被覆を有してもよいし、またはそれには抗菌性、特に抗バクテリア性の裏当てが設けられてもよい。キャップには、このキャップと本体との間に実質的に気密の封止体を形成するために、封止部材が設けられうる。例えば、キャップは、本体と接触する側にシリコーン膜を有しうる。このような封止部材は、抗菌、特に抗バクテリア剤を含有しうるか、またはそれで被覆されうる。術後キャップはまた、移植後の治癒過程中に経皮アクセス機器を安定化させるために設けられうる。上述のキャップは、無断取り外し(例えば、患者による)を防止するために経皮アクセス機器に施錠可能でもよい。
【0017】
本発明の装置には、頭蓋内移植用の1つまたは複数のカテーテルが設けられる。したがって頭蓋内カテーテルは、流体が頭蓋内部の部位に送達されることを可能にする。各頭蓋内カテーテルは、クモ膜下カテーテル、脳室内カテーテル、実質内カテーテル、または硬膜外カテーテルでありうる。好ましくは、例えば、1つまたは複数の頭蓋カテーテルは、例えば、特許文献4に記載されているタイプの1つまたは複数の実質内カテーテルを含む。このカテーテルは経皮アクセス機器のポートに直接連結されてもよいし、または1本の管を経由して間接的に連結されてもよい。多ポートおよび多カテーテルが設けられる場合には、多内腔管を使用して流体を経皮アクセス機器から運ぶことが可能であり、したがって別々の内腔が、各カテーテルに経路を設けるために枝分かれする。本装置は、患者に移植されるべき1つまたは複数の他の機器をさらに備えうる。
【0018】
本装置は、経皮アクセス機器および外部(移植不可の)送達ユニットを備えることができる。経皮アクセス機器が2つ以上のポートを備えるとき、薬剤を一度に2つ以上のポートに送達可能であることが有利である。適正な薬剤が各ポートに送達されることは当然のことながら重要である。したがって本発明の経皮アクセス機器に使用する送達ユニットが設けられ、この送達ユニットおよび経皮アクセス機器は、薬剤が適正に送達されることを保証する助けとなるように配置される。
【0019】
本発明によれば、流体薬剤を送達するための少なくとも1本の導管を備える、本明細書に説明される経皮アクセス機器に使用する送達ユニットが提供されており、この導管には、導管およびポートが流体連通するように、経皮アクセス機器のポートの中へ挿入するための雄型連結部分が設けられる。特に、送達ユニットは2本以上の導管を備える。雄型連結部分は、ポートにアクセスできる任意適切な連結部分でありうる。例えば、雄型連結部分は針でありうる。このような針は任意適切な形状でよく、例えば、それは傾斜した端部または丸い端部でありうる。
【0020】
したがって物質を経皮送達する装置が、本発明にしたがう経皮アクセス機器と、本発明にしたがう送達ユニットとを備えることができる。経皮アクセス機器および送達ユニットは、経皮アクセス機器が2つ以上のポートを備えるとき、送達ユニットの雄型連結部分が常に同じポートと連結するような様態で嵌り合うように形作られることが好ましい。換言すれば、経皮アクセス機器および送達ユニットは、1つの様態のみで嵌め合わされうる。これは、送達ユニット中の各導管が、常に経皮アクセス機器中の同じポートに流体を送達することを保証する。例えば、経皮アクセス機器および送達ユニットは、これらが嵌り合うためには対合しなければならない形状表面を有しうる。別法として、一方には他方の開口の中に嵌る突起が設けられて、これらの連結を制御することができる。また経皮アクセス機器および送達ユニットには、流体が送達ユニットから経皮アクセス機器に送達される間に、これらが一体に固定されることを可能にするために固定部材が設けられうる。送達ユニットには、流体を経皮アクセス機器の中へ注入するために1つまたは複数のポンプが設けられうる。送達ユニットの全部または一部は再使用可能である。好都合なことに、ポンプと経皮アクセス機器への連結部との間の送達ユニットの部品は、感染の危険性を低減するために使い捨て(すなわち、1回使用)である。
【0021】
1つまたは複数のポートを有し、これらに通して流体が経路指定されうる経皮アクセス機器を設けることに加えて、1つまたは複数のさらなるコネクタ機能が設けられうる。例えば、経皮アクセス機器は1つまたは複数の電気的接続部を設けることができる。有利なことに、本機器の1つまたは複数のポートは、それ自体が流体媒質を経由して電気または超音波エネルギーを伝達するために使用可能である。
【0022】
本発明の第2の態様によれば、3つ以上の頭蓋内カテーテルとともに使用する経皮アクセス機器が提供され、本経皮アクセス機器は、少なくとも1つの体外表面と、少なくとも1つの皮下表面とを有する本体を備え、この本体は、3つ以上の頭蓋内カテーテルに連結するための3つ以上のポートを画定し、これらの3つ以上のポートは、機器の体外表面からアクセス可能であるが、各ポートの内腔と体外表面との間に封止体が設けられる。このような経皮アクセス機器のさらなる推奨される特徴が以上に説明されている。
【0023】
本発明の第3の態様によれば、移植されたカテーテルとともに使用する経皮アクセス機器が提供され、本経皮アクセス機器は、少なくとも1つの体外表面と、少なくとも1つの皮下表面とを有する本体を備え、この本体は、移植された機器に連結するための少なくとも1つのポートを画定し、このポートは、機器の体外表面からアクセス可能であるが、ポートの内腔と体外表面との間に封止体が設けられ、フランジが経皮アクセス機器の本体から外向きに延び、このフランジは湾曲しているが、経皮アクセス機器が移植されるときに皮膚の表面に対して実質的に平行に位置する周辺縁部領域を有する。有利なことに、フランジの周辺縁部領域は、移植時に皮下組織の上に着座する。フランジのさらなる推奨される特徴が以上に説明されている。
【0024】
本発明の第4の態様によれば、体外部分および皮下部分を備える経皮アクセス機器を移植する方法が提供され、本方法は、任意適切な順序で、(a)経皮アクセス機器の全体が通過することを可能にするサイズの第1の切開部を被験者の皮膚の中に作成するステップと、(b)体外部分のみの通過を許容するサイズの第2の切開部を被験者の皮膚の中に作成するステップと、(c)第1の切開部を経由して、経皮アクセス機器を受け入れるのに十分なサイズである皮下ポケットを第2の切開部の下に形成するステップと、(d)経皮アクセス機器を第1の切開部に通過させてポケットの中へ入れ、かつ体外部分が第2の切開部を通過するように経皮アクセス機器をポケットの内部に配置するステップとを含む。有利なことに、経皮アクセス機器の皮下部分は、本体から延びるフランジを備える。本方法は、本明細書に説明されるような経皮アクセス機器を移植するために有利に使用される。
【0025】
本発明の第5の態様によれば、治療薬を神経系(例えば、CNS)に送達する方法が提供され、本方法は、任意適切な順序で、(i)被験者の神経系に流体を送達するための1つまたは複数のカテーテルを移植するステップと、(ii)経皮アクセス機器を被験者に移植するステップであって、この経皮アクセス機器は、1つまたは複数のカテーテルと流体連通するポートを備え、このポートはまた、経皮アクセス機器の体外表面からアクセス可能である、移植するステップと、(iii)経皮アクセス機器を経由して治療薬を1つまたは複数のカテーテルに送達するために少なくとも1つの外部ポンプを使用するステップとを含む。
【0026】
有利なことに、ステップ(iii)は定期的に実施され、外部ポンプは、治療薬の送達が必要とされないときに経皮アクセス機器から切り離される。好都合なことに、ステップ(i)は複数のカテーテルを移植するステップを含み、ステップ(iii)は治療薬を各カテーテルに送達するステップを含んで、各カテーテルに対する送達は、異なる注入率および異なる注入継続時間の少なくとも一方を使用して実施される。本方法は、本明細書に説明されるような経皮アクセス機器に有利に使用される。
【0027】
本発明のさらなる態様によれば、少なくとも1つの体外表面と少なくとも1つの皮下表面とを有する本体を備える、少なくとも1つの頭蓋内カテーテルに使用する経皮アクセス機器が提供され、この本体は移植された機器に連結するための少なくとも1つのポートを画定し、このポートは本機器の体外表面からアクセス可能であるが、ポートの内腔への入口と体外表面との間に封止体が設けられる。このような経皮アクセス機器のさらなる推奨される特徴が以上に説明されている。
【0028】
ここで、本発明は添付の図面を参照して例示としてのみ説明される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の経皮アクセス機器の可能な構成を示す図であり、(a)は相互から分離された機器部品を示し、(b)は皮膚の中にあるときの機器を側面から示し、かつ(c)は機器を上方から示す。
【図2】経皮アクセス機器およびキャップの別の実施形態を示す斜視図である。
【図3】送達ユニットの1つの実施形態を経皮アクセス機器の1つの実施形態に装着するのを示す図である。
【図4】本発明の経皮アクセス機器の他の可能な構成を示す図である。
【図5】移植時の図4の経皮アクセス機器を例示する図である。
【図6】図4の機器の移植に必要とされる切開部を示す図である。
【図7】移植時における図4の機器の外部図である。
【図8】図4に示した経皮アクセス機器に装着された治癒用キャップを示す図である。
【図9】図4の経皮アクセス機器に装着されたキャップを示す図である。
【図10】図4の機器が、関連する送達ユニットに連結されているときに、どのように定位置に保持されうるかを例示する図である。
【図11】本発明の他の経皮アクセス機器の上部要素を示す斜視図である。
【図12】図11の機器を示す側面図である。
【図13】図11の機器および関連する送達ユニットを通って示す断面図である。
【図14】本発明の他の経皮アクセス機器の上部要素を示す図である。
【図15】本発明のさらに他の経皮アクセス機器の上部要素を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
最初に図1を参照すると、経皮アクセス機器が本体を備える。この本体は一体部品から作製されてもよいし、または2つの部品、すなわち、嵌り合う上部分10Aおよび下部分10Bを有してもよい。図示された実施形態では、本体の下部分10Bは幾つかのポート12を画定する。本体は、任意の数のポート、例えば、1つのポート、2つのポート、3つのポート、または4つ以上のポートを画定してもよい。図示された実施形態では、6つのポートが存在する。これらのポートは、本体10の側から延びて、この本体から離れる管13の中へ延びる。このような管が、移植された機器(図示せず)に連結されうる。
【0031】
細菌の侵入を防止するようにポート12を実質的に封止するために、栓14が設けられる。この栓は、ポートへの入口を覆って本体の下部分10Bの上部に位置決めされる。栓を定位置に保持するために、本体の上部分10Aが、その栓の上方に位置決めされて、例えば、ねじ取付け具16によって本体の下部分に取り付けられる。本体の上部分および下部分ならびに栓は、それらが嵌り合うことを可能にするように適切に形作られる。有利なことに、本体の上部分および下部分には、それらが正確に嵌め合わされることを保証するために、突出部18および対応する凹部20のような、案内構成要素が設けられうる。
【0032】
本体の上部分の体外表面22には、開口24が設けられる。この開口は、例えば、栓に挿通することによってポートにアクセスできるために存在する。
【0033】
経皮アクセス機器が定位置に縫合される必要性を低減するために、それには、線維形成を促進する材料から作製されたフランジ26が設けられうる。このフランジは本体と一体であってよいし、または別個に作製されて使用時に本体に装着されてもまたはその上に配置されてもよい。図1に示された実施形態では、本体部分10Aおよび10Bには肩部27が設けられ、2つの部品が嵌め合わされるときに本体の周囲に溝を形成する。フランジは、この溝の中で保持される。
【0034】
図2を参照すると、本体には、細菌の侵入防止を補助するために、本体に装着用のキャップ28が設けられうる。このキャップは、抗菌(例えば、抗バクテリア)裏当て30を有しうる。このキャップは、本体中のねじ山付き凹部33に嵌り込むねじ32によって本体に装着されうる。
【0035】
図3では、送達ユニット34を見ることができる。それは幾本かの導管36を備え、それぞれが針のような雄型連結部材38を有する。送達ユニットが経皮アクセス機器に適正に装着されるのを保証するために、このユニットには開口40が設けられる。この開口は、経皮アクセス機器上で案内部材42にぴったりと嵌る。案内部材42は本体と一体であってよいし、またはそれとは別体であってもよく、送達ユニットが使用されるべきときに簡単に装着可能であればよい。案内部材はねじ山を備えてもよく、キャップを装着するために使用される同じねじ山付き凹部によって本体に装着可能であってもよい。案内部材および本体は、案内部材を適正に位置決めするために、突起44および凹部46を有しうる。案内部材は、例えば、ヒンジによって案内部材に装着された固定部分48を備えうる。使用に際して、この固定部材は、送達ユニットを定位置に固定するために固定位置へ移動可能である。
【0036】
使用に際して、経皮アクセス機器が導入される患者の皮膚の中に穴を切開するために、カッターが使用される。ポートは、カテーテルのような移植された機器に装着可能である。フランジは、皮膚の真皮の下に位置決めされる。経皮アクセス機器は、フランジが経皮アクセス機器を定位置に保持するように線維形成を促進するので、定位置に縫合される必要がない。本体の下部分および上部分は、別個に挿入されて挿入後に接合されうる。術後に、傷口が治癒する間、術後キャップが被せられうる。術後キャップは、本体よりも直径が広いことが好ましい。一旦、傷口が治癒したら、術後キャップは取り外しが可能であり、標準的なキャップが被せられてもよい。
【0037】
治療薬が投与されるべきときに、キャップは取り外される。案内部材は定位置に螺入される。送達ユニットは、その開口が案内部材の上に位置決めされて経皮アクセス機器上に配置される。固定部材は、送達ユニットを定位置に固定するために回転される。
【0038】
送達ユニットを定位置に配置する際に、雄型連結部材は栓の中へ挿入されている。雄型連結部材は、ポートへの雌型入口と組み合う。その結果として、導管およびポートは流体連通している。治療薬は、導管からポートを介して、移植された機器の中へ注入されうる。
【0039】
図4および5を参照すると、本発明にしたがう他の経皮アクセス機器50が例示されている。図4に示されているように、機器50は、楕円形の輪郭形状を有する本体52と、周囲有孔フランジ54とを備える。フランジ54は、それが本体に装着される箇所から下向きに湾曲するが、機器が被験者に移植されるときに、皮膚の表面に対して実質的に平行であるように配置される周辺縁部を有する。多内腔を備える管56が、フランジ54の中に形成された細穴58を通って機器50から出る。
【0040】
図5に、被験者に移植されたときの経皮アクセス機器50が示されている。被験者の皮膚は外側表皮層60を備え、その下に真皮層62および皮下組織層64が位置する。筋肉および/または骨のような固いもしくは堅固な組織66が、皮下組織層64の下に横たわる。フランジの周辺縁部65は、皮下組織層64に接触しかつその上に静止するように設計され、他方で本体52の上部分は、開口70を備える体外表面68を設けるために表皮層および真皮層から突き出る。フランジは湾曲して本体52から離れるが、その周辺では皮膚の表面に対して実質的に平行であり、したがってこれはフランジの最外または周辺縁部が、皮下組織の下部軟組織に対して「食い込む」ことがないことを保証することに留意されるべきである。フランジ54の水準を超える機器の本体52の高さ(図5の距離「x」として標示されている)が、患者の皮膚(表皮および真皮)の厚さよりも僅かに大きい。これは、移植後に皮膚がアクセス機器の上部を覆って治癒する可能性を低減する。
【0041】
フランジ54は、経皮アクセス機器50をその周辺で安定化させる。特に、フランジ54の最外縁部が機器本体52の下側とほぼ面一であり、それによって下部軟組織上(例えば、皮下組織64上)における広い設置面積にわたって機器50を安定化させる。機器50が、以下でさらに詳細に説明するように胸郭の上方に移植される場合に、それは皮下組織下方の骨および筋肉組織66によってさらに安定化される。このような様態で、アクセス機器は、患者の日常活動中に、特に、適切な送達ユニット(例えば、投与コネクタの形態にある)が薬剤の送達のために装着されるとき転倒または傾斜しにくい。
【0042】
さらには、上述のように、管56は、フランジの外縁部の下を通過する必要もなく、フランジ中の細穴を通って経皮アクセス機器から出る。これは、管56が真皮の下方に留まり、下部組織上におけるアクセス機器の着座性を向上させることを保証する。したがって細穴58を設けると、アクセス機器の転倒防止の助けにもなり、かつ患者の快適さを高める。したがって、経皮アクセス機器50は、下部軟組織の深さがほとんどない部位における移植に特に適切である。これは、管が機器本体の下側から出て、それによって機器が転倒しやすくなり、かつ/または機器皮膚間境界面に張力の印加を引き起こす先行技術の機器とは対照的であろう。細穴付きフランジが図示されているが、同じ利点は、フランジ中の穴によって、または管がフランジ周囲の外側でポート本体から出るのを可能にすることによって実現可能である。フランジを管の経路の上方に形成することも可能である。
【0043】
フランジ54は、バイオインテグレーション(bio-integration)を促進するために穿孔される。本実施例では、このようなバイオインテグレーションが、フランジ表面に対する細胞付着によって、また外科的な移植後の治癒期間中にフランジの穿孔を介する線維形成による内殖によっても実現される。したがってフランジのバイオインテグレーションは、移植された箇所に機器を固定するのを助け、かつ機器皮膚間境界面の周りにおける感染の恐れも低減する。
【0044】
フランジは、フランジの表面全体にわたって細胞付着および増殖を刺激するために1つまたは複数の被覆を担持することができる。適切な被覆には、限定されるものではないが、リン酸カルシウムをベースにした被覆(例えば、ヒドロキシアパタイトまたはフッ素リン灰石)またはシロキサンが含まれる。細胞付着を助けるために、フランジの表面が粗面化されてもよい。表面の粗面化は、例えば、フランジを生体適合性の金属粉末(最も好ましくはチタン)で被覆するか、フランジを金属粉末直接レーザ焼結法(これはフランジの厚さ全体を貫通する穿孔を創出するためにも使用されうる)によって作製するか、表面模様を創出するためにフランジの表面を化学エッチングするか、かつ/またはフランジ表面を形成する材料を機械研磨もしくはブラスト(蒸気またはビード)することによって実現可能である。フランジの表面化学特性も、細胞付着を促進する表面(例えば、それは適宜により親水性またはより疎水性である)を創出するために変更されうる。首尾良くバイオインテグレーションするための要である細胞(例えば、線維芽細胞)を引き付ける化学的官能基が同じくまたは別法として、フランジの表面に追加されうる。これを実現するために、改変された官能基を有するシロキサンが使用可能である。
【0045】
図6から8を参照すると、上述の経皮アクセス機器50を移植するための手技が説明される。
【0046】
図6に示されているように、本移植方法は最初に、鎖骨73下方の患者胸部上の皮膚に2つの細隙70および72を切り通して、2つの切開部の間に皮下「ポケット」74を形成することを伴う。第1の切開部70は、アクセス機器50が皮膚の下に挿入されてポケットの中へ入ることを可能にするのに十分な大きさである。第2の切開部72は第1のものよりも短いが、それにアクセス機器の突出面(すなわち、体外表面)のみが押し通されることを可能にするのに十分な大きさである。次いで皮下経路に、患者の頭部上から、首部75に沿ってポケット74までトンネルが通される。アクセス機器50に連結されるべき多内腔管76は、トンネルを通す器具の「繰り紐」に装着されて患者の皮膚の下で引き寄せられる。次いでアクセス機器50は、皮膚の下で引き寄せられて最終的に図7に示されているように患者の胸部中の短い切開部72を貫いて着座する。次いで、長い切開部70は、閉じた状態に縫合することができる。
【0047】
図8に例示されているように、患者が適切に縫合されかつ清浄されたとき、機器が逆戻りして経皮ポケットに滑り込まないことを保証するために、術後(治癒用)キャップ80が機器の上に配置されうる。術後キャップ80を定位置に保持するための装着機器82も設けられる。術後キャップは、皮膚がフランジ54を覆って適正に位置し、かつ迅速なバイオインテグレーションも促進することを保証する。術後キャップ80は、壊死を引き起こしうる過剰圧縮を回避しながら、皮膚をフランジに対接して保持する。術後キャップ80はまた、隔壁の外表面を封止し、よってさらなる抗菌(例えば、抗バクテリア)保護を実現する圧縮性の抗バクテリア要素を備えることができる。
【0048】
図9は、傷口が治癒した後にアクセス機器50の外部面に嵌められうる通常(治癒後)または安全キャップ90を例示する。安全キャップ90は、図8に示された治癒用キャップ80よりも小さく、したがって患者の日常活動中に患者の邪魔になる程度が低い。このようなより小さいキャップは、清浄を可能にするために皮膚機器間境界面に対するアクセスも実現する。安全キャップ90はまた、隔壁の外部表面を封止し、よってさらなる抗菌(例えば、抗バクテリア)保護を実現する圧縮性の抗バクテリア要素92を備えうる。装着機器94がキャップを定位置に固定する。必ずしも必須ではないけれども、不適切な取り外し(例えば、患者による)を防止するために、安全キャップの取り外しには、鍵または特殊化された解除部材が必要であってもよい。
【0049】
図10を参照すると、移植された経皮アクセス機器50の上面図が例示されている。実線が皮膚の表面から突き出る機器の体外表面68を示し、他方で破線がアクセス機器の経皮移植部分(例えば、フランジ54)を例示する。上述のように、フランジ54は、その最内面における管上方の高所から下って、その最外(周辺)面における本体基部の水準まで高さが変化する。このフランジ高さの変化は、ほぼ指1本の幅にわたり、フランジの輪郭形状は、患者に対する美的影響と皮膚に対する張力とを最小限にするために可能な限り緩やかであるように設計される。したがって、フランジの全幅は、送達ユニットに連結中に、臨床医が、突出するポート本体の各側で指100を皮膚表面上に置いて軽く圧力を掛けることによって、アクセス機器を安定化させることを可能にする。
【0050】
図11から13を参照すると、本発明の他の経皮アクセス機器150の様々な図が示されている。
【0051】
図11は、経皮アクセス機器150の本体152の斜視図を示す。明解にするために、フランジとこのフランジ下方の他の機器要素とが、図から割愛されている。機器150は、隔壁112が位置する中心凹部を備える上部平坦(体外)表面110を有する。本体152の縁部に形成された凹部114は、以下でさらに詳細に説明されるように送達ユニットまたはキャップと組み合うために設けられる。
【0052】
図12は、図11に例示された機器150の側面図を示す。図12から、隔壁封止体112が、どれほど上部表面110と実質的に面一であるかを見て取ることができる。これは、隔壁封止体112が清浄のために容易にアクセスされることを可能にする。
【0053】
アクセス機器の隔壁112は、治療送達システムの内腔に沿って感染が生じるのを防止するために設けられる。したがって隔壁用途の材料は、抗菌(例えば、抗バクテリア)剤特性を有することが可能であり、例えば、隔壁は銀との化合物でありうる。このような封止体を設けると、脳は弱力化した免疫系を有し、したがって生じる感染はいずれも患者の健康に対して深刻な危険性を呈示するので、以上に説明されたように、機器の流体通路が神経系用途では重要である無バクテリア状態に留まることを保証する助けとなる。送達システムの内部内腔に沿って生じる感染の可能性をさらに低減するために、フィルタ(例えば、抗菌フィルタ)も隔壁の下に含まれうる。
【0054】
図13を参照すると、経皮アクセス機器150および関連する送達のコネクタ120を通る断面図が示されている。
【0055】
経皮アクセス機器150は、本体を別々に貫通する導路または導管116を備え、それぞれが移植可能な多内腔管の内腔に連結されるポートを設ける。本実施例では、アクセス機器150を貫通する5本の導路116が、頭蓋内カテーテルまたは同様物のような、移植された機器に連結可能な5つのポートを設ける。これらのポートの流体導路116は相互から隔離される。各導路116の上部は、機器本体152の体外表面からアクセス可能である隔壁112で終端する。
【0056】
コネクタ120を備える外部送達ユニットは、流体送達が必要とされるときに経皮アクセス機器150に装着可能である。コネクタ120は、経皮アクセス機器150と組み合うように形作られる。それは、連結間違いの恐れを最小限にするために、経皮アクセス機器上で唯一の向きで嵌るように形作られることが好ましい。またコネクタは、アクセス機器150と組み合わされるときに隔壁封止体112を通過する複数の針122を備えて、各針122とアクセス機器のそれぞれの導路116との間に流体連通が確立されることを可能にする。各針122は管124の内腔に連結可能であり、次にこの管は外部の薬剤送達ポンプに連結されうる。このような様態で、別個の流体連結が、ポンプからアクセス機器150を介して頭蓋内カテーテルまで実現される。
【0057】
上述の外部コネクタ120は隔壁を貫く複数の針を備えるが、「針なし」コネクタが、別法として隔壁封止体と組み合わせて使用されてもよいことに留意されるべきである。例えば、隔壁の中に予め形成された細隙と組み合うように配置された平頭針または突起を含むコネクタが設けられうる。組み合うと隔壁中の細隙を開かせ、それによって実際には針が隔壁に通されることはないけれども、流体が隔壁に通されることを可能にする。使用されうる様々な隔壁ベースの流体コネクタシステムを当業者なら知っていよう。
【0058】
図14および15を参照すると、上述の経皮アクセス機器の変型が例示されている。
【0059】
図14は、隔壁142を有する経皮アクセス機器140を例示する。隔壁142は、機器140の本体中に形成された浅い凹部の内部に位置する。機器本体の周辺回りに、または機器本体の周辺回りの1つまたは複数の特定箇所の中で延びる溝144は、関連するコネクタまたはキャップが機器140とスナップ嵌めで係合されることを可能にする。
【0060】
図15は、外部からアクセス可能な空洞の内部に位置する隔壁162を有する他の経皮アクセス機器160を例示する。本実施例では、溝164が、関連するコネクタまたはキャップと解放自在に係合することを可能にするために、空洞の内壁上に形成される。
【0061】
機器の突出面または体外表面は、皮膚の除去を必要とすることなく、機器の周囲を巧妙に細隙封鎖できるように、上に図4から15を参照して説明された楕円または「カヌー形状」であることが好ましい。しかし、アクセス機器は任意の形状が可能であり、例えば、それは、以上に図1から3を参照して説明された円形でありうる。実現されうる数多くの設計上の変型も当業者なら知っていよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの頭蓋内カテーテルと経皮アクセス機器とを備える、治療薬を中枢神経系に送達する装置において、前記経皮アクセス機器は、少なくとも1つの体外表面と、少なくとも1つの皮下表面とを有する本体を備え、前記本体は、移植された頭蓋内カテーテルに連結するための少なくとも1つのポートを画定し、前記ポートは、前記機器の前記体外表面からアクセス可能であるが、前記ポートの前記内腔と前記体外表面との間に封止体が設けられることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記経皮アクセス機器は3つ以上のポートを備えることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記経皮アクセス機器は前記本体から延びるフランジを備えることを特徴とする前記請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項4】
前記フランジは湾曲しているが、前記経皮アクセス機器が移植されるとき、皮膚の表面に対して実質的に平行である周辺縁部領域を有することを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記フランジは管が通過できる開口を備えることを特徴とする請求項3から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記フランジは有孔材料を含むことを特徴とする請求項3から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記経皮アクセス機器の一部が組織内殖を促進する材料から作製され、かつ/または前記材料で被覆されることを特徴とする前記請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
前記経皮アクセス機器の前記封止体は栓の形態にあることを特徴とする前記請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
前記経皮アクセス機器の前記封止体は抗バクテリアまたは抗菌材料を含むことを特徴とする前記請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項10】
前記経皮アクセス機器の前記体外表面は、前記ポートに対するアクセスを可能にするための開口を備えることを特徴とする前記請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項11】
前記経皮アクセス機器の前記体外表面に装着可能な少なくとも1つのキャップを備えることを特徴とする前記請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項12】
移植後の治癒過程中に前記経皮アクセス機器を安定化させるための術後キャップを備えることを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記経皮アクセス機器に固定されうるキャップを備えることを特徴とする請求項11から12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記少なくとも1つのキャップは抗菌性の裏当てを有することを特徴とする請求項11から13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記1つまたは複数の頭蓋内カテーテルは、1本の管を経由して前記経皮アクセス機器の前記1つまたは複数のポートに装着されることを特徴とする前記請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項16】
流体薬剤を送達するための少なくとも1本の導管を有する送達ユニットを備え、前記導管には、前記導管およびポートが流体連通するように、前記経皮アクセス機器の前記ポートの中へ挿入するための雄型連結部分が設けられることを特徴とする前記請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項17】
前記送達ユニットは3本以上の導管を備え、前記経皮アクセス機器は3つ以上のポートを備えることを特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記送達ユニットおよび経皮アクセス機器は、前記送達ユニットおよび経皮アクセス機器が唯一の様態で嵌り合うように配置され、それによって同じ導管が同じポートに連結されることを保証することを特徴とする請求項16または請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記経皮アクセス機器には案内部材が設けられ、前記送達ユニットには対応する穴が設けられることを特徴とする請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記送達ユニットを前記経皮アクセス機器に固定するための固定部材を備えることを特徴とする請求項16から19のいずれかに記載の装置。
【請求項21】
3つ以上の頭蓋内カテーテルとともに使用する経皮アクセス機器において、少なくとも1つの体外表面と、少なくとも1つの皮下表面とを有する本体を備え、前記本体は、前記3つ以上の頭蓋内カテーテルに連結するための3つ以上のポートを画定し、前記3つ以上のポートは、前記機器の前記体外表面からアクセス可能であるが、各ポートの内腔と前記体外表面との間に封止体が設けられることを特徴とする経皮アクセス機器。
【請求項22】
移植されたカテーテルとともに使用する経皮アクセス機器において、少なくとも1つの体外表面と、少なくとも1つの皮下表面とを有する本体を備え、前記本体は、移植された機器に連結するための少なくとも1つのポートを画定し、前記ポートは、前記機器の前記体外表面からアクセス可能であるが、前記ポートの内腔と前記体外表面との間に封止体が設けられ、フランジが前記経皮アクセス機器の前記本体から外向きに延びて、前記フランジは湾曲しているが、前記経皮アクセス機器が移植されるときに皮膚の表面に対して実質的に平行に位置する周辺縁部領域を有することを特徴とする経皮アクセス機器。
【請求項23】
移植時に、前記フランジの前記周辺縁部領域は皮下組織の上に着座することを特徴とする請求項22に記載の経皮アクセス機器。
【請求項24】
体外部分および皮下部分を備える経皮アクセス機器を移植する方法において、任意適切な順序で、
(a) 前記経皮アクセス機器の全体が通過することを可能にするサイズの第1の切開部を被験者の皮膚の中に作成するステップと、
(b) 前記体外部分のみの通過を許容するサイズの第2の切開部を前記被験者の皮膚の中に作成するステップと、
(c) 前記第1の切開部を経由して、前記経皮アクセス機器を受け入れるのに十分なサイズである皮下ポケットを前記第2の切開部の下に形成するステップと、
(d) 前記経皮アクセス機器を前記第1の切開部に通過させて前記ポケットの中へ入れ、かつ前記体外部分が前記第2の切開部を通過するように、前記経皮アクセス機器を前記ポケットの内部に配置するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項25】
前記経皮アクセス機器の前記皮下部分は本体から延びるフランジを備えることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
治療薬を中枢神経系に送達する方法において、任意適切な順序で、
(i) 被験者の神経系に流体を送達するための1つまたは複数のカテーテルを移植するステップと、
(ii) 経皮アクセス機器を前記被験者に移植するステップであって、前記経皮アクセス機器は、前記1つまたは複数のカテーテルと流体連通するポートを備え、前記ポートはまた、前記経皮アクセス機器の体外表面からアクセス可能である、移植するステップと、
(iii) 前記経皮アクセス機器を経由して治療薬を前記1つまたは複数のカテーテルに送達するために少なくとも1つの外部ポンプを使用するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項27】
ステップ(iii)は定期的に実施され、前記外部ポンプは、治療薬の前記送達が必要とされないときに前記経皮アクセス機器から切り離されることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
ステップ(i)は複数のカテーテルを移植するステップを含み、ステップ(iii)は治療薬を各カテーテルに送達するステップを含んで、各カテーテルに対する前記送達は、異なる注入率および異なる注入継続時間の少なくとも一方を使用して実施されることを特徴とする請求項26に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2010−510016(P2010−510016A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−537691(P2009−537691)
【出願日】平成19年11月21日(2007.11.21)
【国際出願番号】PCT/GB2007/004438
【国際公開番号】WO2008/062173
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(391002306)レニショウ パブリック リミテッド カンパニー (166)
【氏名又は名称原語表記】RENISHAW PUBLIC LIMITED COMPANY
【Fターム(参考)】