説明

経皮吸収型貼付剤

【課題】薬物の効果の速効性に優れるとともに、薬物の効果の持続性にも優れた経皮吸収型貼付剤を提供すること。
【解決手段】経皮吸収型貼付剤1aは、支持基材10aと、支持基材10a上に形成され、薬物を含有する第1の薬物含有部11aおよび第2の薬物含有部12aとを有している。第1の薬物含有部11aは、第2の薬物含有部12aよりも皮膚に対して薬物を放出する速度が速い。第2の薬物含有部12aは、第1の薬物含有部11aを囲むように設置されている。第1の薬物含有部11aには、皮膚への薬物の吸収を促進する経皮吸収促進剤が含まれている。第1の薬物含有部11aと第2の薬物含有部12aとの間には、薬物の移行を阻止する阻止手段としての間隙13aが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経皮吸収型貼付剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、ニコチンやフェンタニール等の薬物を皮膚から徐々に吸収させて、ニコチン依存や患部の炎症を改善する経皮吸収型貼付剤が知られている。
【0003】
このような経皮吸収型貼付剤としては、例えば、常温で粘着性を示す高分子物質層を担持体上に設け、該高分子物質層にニコチンを含有させたテープ製剤が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の経皮吸収型貼付剤では、薬物を徐放することは可能であるが、初期の経皮吸収性(薬物の放出性)が低いために速効性が無いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61−251619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、薬物の効果の速効性に優れるとともに、薬物の効果の持続性にも優れた経皮吸収型貼付剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記(1)〜(9)の本発明により達成される。
(1) 薬物を含有する第1の薬物含有部と第2の薬物含有部とを有し、
前記第1の薬物含有部は、前記第2の薬物含有部よりも皮膚に対して前記薬物を放出する速度が速いことを特徴とする経皮吸収型貼付剤。
【0008】
(2) 前記第1の薬物含有部には、皮膚への薬物の吸収を促進する経皮吸収促進剤が含まれている上記(1)に記載の経皮吸収型貼付剤。
【0009】
(3) 前記第1の薬物含有部と前記第2の薬物含有部との間には、前記薬物の移行を阻止する阻止手段が設けられている上記(1)または(2)に記載の経皮吸収型貼付剤。
【0010】
(4) 前記阻止手段として、間隙が設けられている上記(3)に記載の経皮吸収型貼付剤。
【0011】
(5) 前記阻止手段として、薬物移行阻止層が設けられている上記(3)に記載の経皮吸収型貼付剤。
【0012】
(6) 前記薬物は、ニコチンである上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の経皮吸収型貼付剤。
【0013】
(7) 前記第1の薬物含有部の皮膚貼付面の面積は、前記第2の薬物含有部の皮膚貼付面の面積よりも小さい上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の経皮吸収型貼付剤。
【0014】
(8) 前記第2の薬物含有部は、前記第1の薬物含有部を囲むように設けられている上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の経皮吸収型貼付剤。
【0015】
(9) 前記第1の薬物含有部は、該第1の薬物含有部の皮膚貼付面の面積よりも皮膚貼付面の面積が大きい前記第2の薬物含有部上に積層されている上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の経皮吸収型貼付剤。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、薬物の効果の速効性に優れるとともに、薬物の効果の持続性に優れた経皮吸収型貼付剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の経皮吸収型貼付剤の第1実施形態を示す平面図(a)および断面図(b)である。
【図2】本発明の経皮吸収型貼付剤の第2実施形態を示す平面図(a)および断面図(b)である。
【図3】本発明の経皮吸収型貼付剤の第3実施形態を示す平面図(a)および断面図(b)である。
【図4】本発明の経皮吸収型貼付剤の第4実施形態の実施形態を示す平面図(a)および断面図(b)である。
【図5】本発明の経皮吸収型貼付剤の第5実施形態の実施形態を示す平面図(a)および断面図(b)である。
【図6】第1の薬物含有部および第2の薬物含有部の単位面積あたりの薬物透過流束(Flux)と時間との関係を示すグラフである。
【図7】実施例および比較例の経皮吸収型貼付剤の単位面積あたりの薬物透過流束(Flux)と時間との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
<第1実施形態>
まず、本発明の経皮吸収型貼付剤の第1実施形態について説明する。
【0019】
図1は、本発明の経皮吸収型貼付剤の第1実施形態を示す平面図(a)および断面図(b)である。
【0020】
図1に示すように、経皮吸収型貼付剤1aは、支持基材10aと、第1の薬物含有部11aと、第2の薬物含有部12aとを有している。
【0021】
支持基材10aは、図1に示すように、平面視の形状が略円形状のシート状の部材で、後述する第1の薬物含有部11a、第2の薬物含有部12aを支持する機能を有する。かかる支持基材10aは、可撓性(柔軟性)を有し、貼付時における曲面追従性をもち、加工時における裁断または打ち抜き等に適したものが好ましい。
【0022】
このような支持基材10aとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、ポリアリレート、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、シリコーン、ポリスルホン、ナイロン、ポリ乳酸、レーヨン、アクリル等の樹脂からなるプラスチックフィルム、織物、編物および不織布を用いることが可能である。さらに、プラスチックフィルムと、プラスチックフィルム、織物、編物、不織布または紙等との2層以上のラミネートシートを用いることが可能である。
【0023】
支持基材10aの平均厚さは、2〜4000μmであるのが好ましく、10〜300μmであるのがより好ましい。
【0024】
第1の薬物含有部11aおよび第2の薬物含有部12aは、上記支持基材10aの一方の面側に設けられており、薬物を含有する層である。
【0025】
また、第1の薬物含有部11aおよび第2の薬物含有部12aは、皮膚に対する粘着性を有する。
【0026】
これら第1の薬物含有部11aおよび第2の薬物含有部12aは、皮膚に対して薬物を放出し、皮膚から薬物を吸収させる機能を備えている。
【0027】
ところで、従来の経皮吸収型貼付剤では、薬物を徐放することは可能であるが、初期の経皮吸収性(薬物の放出性)が低いために速効性が無いという問題があった。
【0028】
そこで、本発明者らは、上記問題に鑑み、鋭意検討した結果、第1の薬物含有部と第2の薬物含有部とを設け、第1の薬物含有部が、第2の薬物含有部よりも皮膚に対する薬物の放出する速度が速い構成とすることにより、薬物の効果の速効性と持続性とを両立できることを見出した。すなわち、本発明によれば、貼付初期において、第1の薬物含有部から薬物を速放させることにより、薬物の効果の速効性を発揮させることができ、さらに、第2の薬物含有部から薬物を徐放させることにより、薬物の効果の持続性を発揮させることができる。
【0029】
以下、各層毎に詳細に説明する。
第1の薬物含有部11aは、平面視の形状が略円形状であり、支持基材10aの略中央に配されている。
【0030】
また、第1の薬物含有部11aは、薬物を含有しており、後述する第2の薬物含有部12aよりも皮膚に対する薬物の放出速度が速い。これにより、薬物の効果の速効性を発揮させることができる。
【0031】
また、第1の薬物含有部11aは、粘着剤を含んでおり、皮膚に対して粘着性を有している。
【0032】
第1の薬物含有部11aが含有する薬物としては、経皮吸収性を有する薬物であれば特に制限なく、治療目的に応じて使用することができる。例えば、ニコチン等の禁煙補助薬、インドメタシン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、ジクロフェナク、ロキソプロフェン、ケトロラク、フェルビナク(4−ビフェニル酢酸)等の非ステロイド系鎮痛消炎薬、リドカイン、プリロカイン等の局所麻酔剤などが挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。上述した中でも、ニコチンを皮膚に供給する経皮吸収型貼付剤は、禁煙補助に用いられる製剤であり、特に速効性と持続性が求められる製剤であることから、本発明の経皮吸収型貼付剤を好適に適用することができる。
【0033】
第1の薬物含有部11aにおける薬物の含有量は、0.1〜50質量%であるのが好ましく、1〜30質量%であるのがより好ましい。これにより、皮膚に対する良好な粘着性を維持させると共に、薬効を発現させるのに十分な量の薬物を放出させることができる。
【0034】
粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤(アクリル酸エステル単量体を主成分として含むモノマー組成物を重合したアクリル酸エステル(共)重合体を主成分とするもの)、ゴム系粘着剤(ゴム成分および粘着付与樹脂を主成分とするもの)、シリコーン系粘着剤(オルガノポリシロキサン樹脂を主成分とするもの)などが挙げられる。
【0035】
第1の薬物含有部11aにおける粘着剤の含有量は、30〜99.9質量%であるのが好ましく、40〜99質量%であるのがより好ましい。
【0036】
第1の薬物含有部11aは、上述したように第2の薬物含有部12aよりも皮膚に対する薬物の放出速度が速い構成となっている。このように放出速度を向上させる方法としては、例えば、第1の薬物含有部11a中の薬物の含有量を第2の薬物含有部12aよりも極端に多くする方法や、第1の薬物含有部11a中に、皮膚への薬物の吸収を促進させる経皮吸収促進剤を配合する方法等が挙げられる。中でも、放出速度の調整が容易なことから、経皮吸収促進剤を配合するのが好ましい。
【0037】
経皮吸収促進剤としては、従来皮膚での吸収促進作用が認められている化合物のいずれでも良く、例えば、炭素鎖数6〜20の脂肪酸、脂肪族系アルコール、脂肪酸アミド、脂肪酸エーテル、芳香族系有機酸、芳香族系アルコール、芳香族系有機酸エステル又はエーテル、乳酸エステル類、酢酸エステル類、モノテルペン系化合物、セスキテルペン系化合物、グリセリン脂肪酸エステル類、プロピレングリコール脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリソルベート系、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油系、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ショ糖脂肪酸エステル類、植物油等が挙げられる。
【0038】
第1の薬物含有部11a中における経皮吸収促進剤の含有量は、0.1〜60質量%であるのが好ましく、10〜55質量%であるのがより好ましい。これにより、薬物の効果の速効性をより効果的に発揮させることができる。
【0039】
第1の薬物含有部11aの平均厚さは、10〜500μmであるのが好ましく、20〜300μmであるのがより好ましい。
【0040】
第2の薬物含有部12aは、図1に示すように、第1の薬物含有部11aを囲むよう設けられており、平面視の形状が円環状をなす薄層状のものである。
【0041】
また、第2の薬物含有部12aは、上述した第1の薬物含有部11aと同様に薬物を含有しており、上述した第1の薬物含有部11aよりも皮膚に対する薬物の放出速度が遅い。これにより、薬物の効果を持続的に発揮させることができる。
【0042】
また、第2の薬物含有部12aは、粘着剤を含んでおり、皮膚に対して粘着性を有している。
【0043】
第2の薬物含有部12a中に含まれる薬物としては、上記第1の薬物含有部11aで説明したものと同様のものを挙げることができる。第2の薬物含有部12aに含まれる薬物は、上記第1の薬物含有部11aに含まれる薬物と同じものであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、第1の薬物含有部11aに速効性が要求される薬物を含有させ、第2の薬物含有部12aに、第1の薬物含有部11aに含まれる薬物とは異なる、徐放性が要求される薬物を含有させることにより、患者に対して異なる薬効を複合的に作用させることができる。
【0044】
第2の薬物含有部12aにおける薬物の含有量は、0.1〜50質量%であるのが好ましく、1〜30質量%であるのがより好ましい。これにより、皮膚に対する良好な粘着性を維持させると共に、薬効を発現させるのに十分な量の薬物を放出させることができる。
【0045】
第2の薬物含有部12aに含まれる粘着剤としては、上記第1の薬物含有部11aで説明したものと同様のものを挙げることができる。
【0046】
第2の薬物含有部12aにおける粘着剤の含有量は、50〜99.9質量%であるのが好ましく、70〜99質量%であるのがより好ましい。
【0047】
第2の薬物含有部12aの平均厚さは、10〜500μmであるのが好ましく、20〜300μmであるのがより好ましい。
【0048】
本実施形態において、上述したように、第2の薬物含有部12aは、第1の薬物含有部11aを囲むよう設けられている。
【0049】
また、本実施形態のように、第2の薬物含有部12aの内側に、第1の薬物含有部11aを設けることにより、第1の薬物含有部11aが、第2の薬物含有部12aよりも粘着力が小さい場合でも、第2の薬物含有部12aの粘着力によって、第1の薬物含有部11aが皮膚から不本意に剥離するのを効果的に防止することができ、薬物の効果の速効性および持続性をより優れたものとすることができる。
【0050】
また、本実施形態において、第1の薬物含有部11aの皮膚貼付面の面積(第1の薬物含有部11aを平面視した面積)は、第2の薬物含有部12aの皮膚貼付面の面積(第2の薬物含有部12aを平面視した面積)よりも小さい構成となっている。このような構成とすることにより、薬物の効果の速効性と持続性とのバランスを良好なものとすることができる。
【0051】
また、第1の薬物含有部11aと第2の薬物含有部12aとの間には、薬物移行阻止手段として、間隙13aが設けられている。このような間隙13aを設けることにより、経皮吸収型貼付剤の保管時(未使用時)において、第1の薬物含有部11aと第2の薬物含有部12aとの間で、薬物や経皮吸収促進剤等が移行・拡散して、薬物の放出速度の差が小さくなるのを効果的に防止することができる。その結果、長期にわたって保管した場合であっても、経皮吸収型貼付剤1aの薬物の効果の優れた速効性および持続性を効果的に維持することができる。
【0052】
間隙13aの幅は、特に限定されないが、0.1〜10mmであるのが好ましく、1〜5mmであるのがより好ましい。これにより、第1の薬物含有部11aと第2の薬物含有部12aとの間での、薬物や経皮吸収促進剤等の移行・拡散をより効果的に防止することができる。
【0053】
また、経皮吸収型貼付剤1aは、第1の薬物含有部11aおよび第2の薬物含有部12aが設けられている面に剥離シートを設けることが好ましい。剥離シートは、経皮吸収型貼付剤1aの保管時(未使用時)において、第1の薬物含有部11aおよび第2の薬物含有部12aの貼着面を保護する機能を有している。
【0054】
このような剥離シートとしては、例えば、ポリエチレンラミネート紙、ポリプロピレンラミネート紙等のラミネート紙類;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系フィルム、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系フィルム等の合成樹脂フィルム等が使用できる。また、剥離シートは、必要に応じてこれらの材料の片面または両面にシリコーン樹脂等により剥離処理が施されたものを使用してもよい。
【0055】
また、剥離シートの平均厚さは、10〜200μmであることが好ましく、15〜100μmであることがより好ましい。
【0056】
なお、上述したような第1の薬物含有部11aおよび第2の薬物含有部12aは、粘着剤や薬物等を含む材料を混合した溶液を塗布等の手段によって支持基材10a上に設けてもよいし、支持基材10a上に薬物を含有しない粘着剤層を予め形成しておいたものに、薬物を含む液を粘着剤層上に塗布、含浸させて形成してもよい。
【0057】
また、第1の薬物含有部11aおよび第2の薬物含有部12aを、図1のように海島状に設ける方法は、特に限定されず、例えば特開2007−254515号公報に記載の方法が使用できる。
【0058】
<第2実施形態>
次に、本発明の経皮吸収型貼付剤の第2実施形態について説明する。以下、第2実施形態の経皮吸収型貼付剤について、前記第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0059】
図2は、本発明の経皮吸収型貼付剤の第2実施形態を示す平面図(a)および断面図(b)である。
【0060】
図2に示すように、経皮吸収型貼付剤1bは、支持基材10bと、第1の薬物含有部11bと、第2の薬物含有部12bと、間隙13bとを有している。
【0061】
支持基材10bは、図2に示すように、平面視の形状が略四角形をなすシート状の部材である。
【0062】
支持基材10bの構成材料は、前述した第1実施形態の支持基材10aの構成材料と同様であるため、その説明を省略する。
【0063】
また、第1の薬物含有部11b、第2の薬物含有部12bの構成材料および機能は、前述した第1実施形態の第1の薬物含有部11a、第2の薬物含有部12aの構成材料および機能と同様であるため、その説明を省略する。
【0064】
また、間隙13bの機能は、前述した第1実施形態の間隙13aの機能と同様であるため、その説明を省略する。
【0065】
図2に示すように、第1の薬物含有部11bおよび第2の薬物含有部12bは、平面視の形状が略四角形をなしており、支持基材10bの一方の面側に設けられている。
【0066】
第1の薬物含有部11bと第2の薬物含有部12bとは、図2に示すように、間隙13bを介して並設されている。また、第2の薬物含有部12bは、第1の薬物含有部11aを挟むように設置されている。
【0067】
このような構成とすることにより、薬物の効果の速効性、持続性に優れた経皮吸収型貼付剤1bをより容易に形成することができる。また、第2の薬物含有部12bを、第1の薬物含有部11aを挟むように設置しているので、第1の薬物含有部11aが、第2の薬物含有部12aよりも粘着力が小さい場合でも、第2の薬物含有部12aの粘着力によって、第1の薬物含有部11aの不本意な剥がれを効果的に防止することができる。
【0068】
なお、第1の薬物含有部11bおよび第2の薬物含有部12bを、図2のようにストライプ状に設ける方法は、特に限定されず、例えば特開2007−254515号公報に記載の方法が使用できる。
【0069】
<第3実施形態>
次に、本発明の経皮吸収型貼付剤の第3実施形態について説明する。以下、第3実施形態の経皮吸収型貼付剤について、前記第1、2実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0070】
図3は、本発明の経皮吸収型貼付剤の第3実施形態を示す平面図(a)および断面図(b)である。
【0071】
図3に示すように、経皮吸収型貼付剤1cは、支持基材10cと、第1の薬物含有部11cと、第2の薬物含有部12cとを有している。
【0072】
支持基材10cは、図3に示すように、平面視の形状が略円形状のシート状の部材である。
【0073】
支持基材10cの構成材料は、前述した第1実施形態の支持基材10aの構成材料と同様であるため、その説明を省略する。
【0074】
また、第1の薬物含有部11c、第2の薬物含有部12cの構成材料および機能は、前述した第1実施形態の第1の薬物含有部11a、第2の薬物含有部12aの構成材料および機能と同様であるため、その説明を省略する。
【0075】
本実施形態において、経皮吸収型貼付剤1cは、平面視の形状が略円形状の第1の薬物含有部11cが、平面視の形状が略円形状の第2の薬物含有部12c上の略中央に積層された構成となっている。また、第2の薬物含有部12cの主面の面積は、第1の薬物含有部11cの主面の面積よりも大きい構成となっている。
【0076】
また、第1の薬物含有部11cと第2の薬物含有部12cとの間には、薬物移行阻止手段として、薬物移行阻止層14cが設けられている。
【0077】
このような薬物移行阻止層14cの構成材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、ポリアリレート、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、シリコーン、ポリスルホン、ナイロン、ポリ乳酸、レーヨン、アクリル等の樹脂からなるプラスチックフィルムが挙げられる。これらの中でも、ポリエステル樹脂からなるプラスチックフィルムが薬物移行阻止性に優れる点で好ましい。
【0078】
このような構成の経皮吸収型貼付剤1cは、支持基材10c上に第2の薬物含有部12cを形成した部材と、薬物移行阻止層14c上に第1の薬物含有部11cを形成した部材とを、適当なサイズに裁断して貼り合わせることにより得ることができ、生産性に特に優れている。
【0079】
<第4実施形態>
次に、本発明の経皮吸収型貼付剤の第4実施形態について説明する。以下、第4実施形態の経皮吸収型貼付剤について、前記第1〜3実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0080】
図4は、本発明の経皮吸収型貼付剤の第4実施形態を示す平面図(a)および断面図(b)である。
【0081】
図4に示すように、経皮吸収型貼付剤1dは、支持基材10dと、第1の薬物含有部11dと、第2の薬物含有部12dと、間隙13dとを有している。
【0082】
支持基材10dの構成材料は、前述した第1実施形態の支持基材10aの構成材料と同様であるため、その説明を省略する。
【0083】
また、第1の薬物含有部11d、第2の薬物含有部12dの構成材料および機能は、前述した第1実施形態の第1の薬物含有部11a、第2の薬物含有部12aの構成材料および機能と同様であるため、その説明を省略する。
【0084】
また、間隙13dの機能は、前述した第1実施形態の間隙13aの機能と同様であるため、その説明を省略する。
【0085】
本実施形態では、図4(b)に示すように、第1の薬物含有部11dの厚さが、第2の薬物含有部12dの厚さよりも大きい点に特徴を有している点以外は、前記第1実施形態と同様の構成となっている。このような特徴を有することにより、第1の薬物含有部11cを皮膚に確実に密着させることができ、経皮吸収型貼付剤1dの速効性をより優れたものとすることができる。
【0086】
<第5実施形態>
次に、本発明の経皮吸収型貼付剤の第5実施形態について説明する。以下、第5実施形態の経皮吸収型貼付剤について、前記第1〜4実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0087】
図5は、本発明の経皮吸収型貼付剤の第5実施形態を示す平面図(a)および断面図(b)である。
【0088】
図5に示すように、経皮吸収型貼付剤1eは、支持基材10eと、第1の薬物含有部11eと、第2の薬物含有部12eと、間隙13eとを有している。
【0089】
支持基材10eの構成材料は、前述した第1実施形態の支持基材10aの構成材料と同様であるため、その説明を省略する。
【0090】
また、第1の薬物含有部11e、第2の薬物含有部12eの構成材料および機能は、前述した第1実施形態の第1の薬物含有部11a、第2の薬物含有部12aの構成材料および機能と同様であるため、その説明を省略する。
【0091】
また、間隙13eの機能は、前述した第1実施形態の間隙13aの機能と同様であるため、その説明を省略する。
【0092】
本実施形態では、図5に示すように、第1の薬物含有部11eと、第2の薬物含有部12eとが、間隙13eを介して互いに隣り合うように複数並設されている構成となっている。このような構成とすることにより、経皮吸収型貼付剤1eを貼着した部位に対して、薬物を均一に供給することができ、薬物の効果の速効性、持続性をより優れたものとすることができる。
【0093】
以上、本発明の経皮吸収型貼付剤について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
例えば、本発明の経皮吸収型貼付剤は、図示の構成のものに限定されない。
【0094】
また、前述した実施形態では、経皮吸収型貼付剤が支持基材を有するものとして説明したが、支持基材はなくてもよい。
【0095】
また、前述した実施形態において、第1の薬物含有部と第2の薬物含有部との位置は、逆であってもよい。
【0096】
また、前述した実施形態では、支持基材と、第1の薬物含有部および第2の薬物含有部とを有する構成について説明したが、支持基材と、第1の薬物含有部および第2の薬物含有部との間には、任意の機能を有する層が複数設けられていてもよい。
【実施例】
【0097】
次に、本発明の経皮吸収型貼付剤の具体的実施例について説明する。
(実施例)
1.第2の薬物含有部の作製
まず、アクリル酸2−エチルヘキシル:89.9999mol%と、N−ビニル−2−ピロリドン:10mol%と、ヘキサメチレングリコールジアクリレート:0.0001mol%とからなるモノマー組成物を共重合したアクリル系共重合体の酢酸エチル溶液(固形分:40質量%)を用意した。
【0098】
次に、剥離シートとしてのポリエチレンテレフタレート(PET)製リリースライナー(リンテック社製、商品名「SP−PET7511」)を用意し、その離型面に、上記アクリル系重合体の酢酸エチル溶液を乾燥後の平均厚さが50μmとなるように塗布後、加熱乾燥させ、得られた粘着剤層を5層積層して、平均厚さ:250μmの粘着剤層を形成した。
【0099】
次に、剥離シート上に形成された粘着剤層上に、中間基材としての平均厚さ:50μmのPETフィルム(東レ社製、商品名「ルミラー」)をラミネートした。
【0100】
次に、剥離シートを粘着剤層から剥離・除去し、露出した粘着剤層上にマイヤーバーコーターでニコチンを塗布、含浸させて薬物を含有する粘着剤層を形成し、その粘着剤層に再度剥離シートを貼り合わせた。次に、直径:37.2mmの円形状に打ち抜き加工し、さらに、その中央部を直径:25mmの円形状の領域を打ち抜き加工して、円環状の第2の薬物含有部を得た。なお、第2の薬物含有部中に含まれるニコチンの含有量は、6.82質量%であった。
【0101】
2.第1の薬物含有部の作製
まず、上記アクリル系共重合体の酢酸エチル溶液(固形分:40質量%)100質量部に、吸収促進剤としてミリスチン酸イソプロピル40質量部を添加し混合した溶液を用意した。
【0102】
次に、剥離シートとしてのポリエチレンテレフタレート(PET)製リリースライナー(リンテック社製、商品名「SP−PET7511」)を用意し、その離型面に、上記溶液を乾燥後の平均厚さが50μmとなるように塗布後、加熱乾燥させ、得られた粘着剤層を5層積層して、平均厚さ:250μmの粘着剤層を形成した。
【0103】
次に、剥離シート上に形成された粘着剤層上に、中間基材としての平均厚さ:50μmのPETフィルム(東レ社製、商品名「ルミラー」)をラミネートした。
【0104】
次に、剥離シートを粘着剤層から剥離・除去し、露出した粘着剤層にマイヤーバーコーターでニコチンを塗布、含浸させて薬物を含有する粘着剤層を形成し、その粘着剤層に再度剥離シートを貼り合わせた。
【0105】
次に、直径:22.5mmの円形状に打ち抜き加工して第1の薬物含有部を得た。なお、第1の薬物含有部中に含まれるニコチンの含有量は、6.82質量%であった。
【0106】
3.経皮吸収型貼付剤の作製
支持基材として、平均厚さ:50μmのPETフィルム(東レ社製、商品名「ルミラー」)の片面にアクリル系粘着剤層を有する粘着テープを用意し、直径:37.2mmの円形状に打ち抜き加工した。
【0107】
その後、上記粘着テープの粘着剤層上に、上記1で作製した円環状の第2の薬物含有部の中間基材側を貼付し、次に、第2の薬物含有部のリングの内側に位置する上記粘着テープの粘着剤層上に、上記2で作製した第1の薬物含有部の中間基材側を貼付して第1の薬物含有部および第2の薬物含有部を有する経皮吸収型貼付剤を作製した。(第1の薬物含有部の皮膚貼付面の面積:第2の薬物含有部の皮膚貼付面の面積=0.4:0.6)
【0108】
(比較例)
比較例用として、市販のニコチン含有経皮吸収製剤(商品名「ニコチネルTTS」、ノバルティスファーマ製)を用意した。
【0109】
<皮膚透過試験>
以下の試験条件および試験方法により、皮膚透過試験を行った。
【0110】
[試験条件]
試験用皮膚:ミニブタ摘出皮膚(Yucatan micropig、雌性)
透過装置:横型透過セル[内径:φ15mm(1.77cm)、外径:φ24mm(4.52cm))
サンプル面積:φ15mm(1.77cm
試験液:リン酸塩緩衝液pH7.4を18mL
試験液温:32℃
サンプリング:各測定点にて500μL採取し、新たに32℃に加温した試験液を補充する。
試験製剤:実施例の第1の薬物含有部および第2の薬物含有部、比較例用の上記ニコチン含有経皮吸収製剤
【0111】
[試験方法]
脂肪組織を剥離した試験用皮膚を直径24mmの円形状に裁断し、角質層面に直径11mmに裁断した試験製剤を貼付し透過セルにセットした。32℃に保温した試験液でレセプター側を満たし試験を開始した。開始後1、2、3、4、8、12、16、20、24時間経過したレセプター側の試験液を採取した。また、採取した量と同量の新たな試験液を補充した。採取した試験液は、高速液体クロマトグラフィーを用いて透過ニコチン量を定量した。得られた定量値から、単位面積あたりの薬物透過流束Flux(μg/cm/h)を算出した。
【0112】
これらの結果を、表1に示した。また、第1の薬物含有部および第2の薬物含有部の単位面積あたりの薬物透過流束(Flux)と時間との関係を示すグラフを図6に、実施例および比較例の経皮吸収型貼付剤の単位面積あたりの薬物透過流束(Flux)と時間との関係を示すグラフを図7に示した。なお、図7における実施例のグラフは、第1の薬物含有部および第2の薬物含有部の薬物透過流束(Flux)に対して、実施例におけるそれぞれの占める面積比をそれぞれ乗じた後に合計して、実施例の単位面積あたりの薬物透過流束(Flux)を求めた計算値と時間との関係を示したものである。
【0113】
【表1】

【0114】
表1、図6および図7のグラフから明らかなように、実施例では、比較例に較べて貼付後初期のFluxが高く、かつ2時間後から長時間持続して徐放していることがわかる。これに対して、比較例では、初期のFluxが低く、安定したFluxが得られるのに4時間以上を必要した。このことから、本発明の経皮吸収型貼付剤は、薬物の速放性および徐放性に優れていることが認められる。
【0115】
また、上記実施例の第1の薬物含有部および第2の薬物含有部を備えた図2〜図5に示す経皮吸収貼付剤をそれぞれ作製し、上記と同様の皮膚透過試験を行った結果、実施例と同等またはそれ以上の結果が得られた。
【符号の説明】
【0116】
1a、1b、1c、1d、1e 経皮吸収型貼付剤
10a、10b、10c、10d、10e 支持基材
11a、11b、11c、11d、11e 第1の薬物含有部
12a、12b、12c、12d、12e 第2の薬物含有部
13a、13b、13d、13e 間隙
14c 薬物移行阻止層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物を含有する第1の薬物含有部と第2の薬物含有部とを有し、
前記第1の薬物含有部は、前記第2の薬物含有部よりも皮膚に対して前記薬物を放出する速度が速いことを特徴とする経皮吸収型貼付剤。
【請求項2】
前記第1の薬物含有部には、皮膚への薬物の吸収を促進する経皮吸収促進剤が含まれている請求項1に記載の経皮吸収型貼付剤。
【請求項3】
前記第1の薬物含有部と前記第2の薬物含有部との間には、前記薬物の移行を阻止する阻止手段が設けられている請求項1または2に記載の経皮吸収型貼付剤。
【請求項4】
前記阻止手段として、間隙が設けられている請求項3に記載の経皮吸収型貼付剤。
【請求項5】
前記阻止手段として、薬物移行阻止層が設けられている請求項3に記載の経皮吸収型貼付剤。
【請求項6】
前記薬物は、ニコチンである請求項1ないし5のいずれかに記載の経皮吸収型貼付剤。
【請求項7】
前記第1の薬物含有部の皮膚貼付面の面積は、前記第2の薬物含有部の皮膚貼付面の面積よりも小さい請求項1ないし6のいずれかに記載の経皮吸収型貼付剤。
【請求項8】
前記第2の薬物含有部は、前記第1の薬物含有部を囲むように設けられている請求項1ないし7のいずれかに記載の経皮吸収型貼付剤。
【請求項9】
前記第1の薬物含有部は、該第1の薬物含有部の皮膚貼付面の面積よりも皮膚貼付面の面積が大きい前記第2の薬物含有部上に積層されている請求項1ないし7のいずれかに記載の経皮吸収型貼付剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−222269(P2010−222269A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−69048(P2009−69048)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】