説明

経皮投与されるアリスキレン

所望の治療作用を達成するための、任意で医薬的に許容される担体と一緒に、ヒトまたは動物にアリスキレンおよび(それらの塩、プロドラッグおよび代謝産物を含む)アリスキレンを経皮投与するためのデバイスを含むアリスキレンの剤形。所望の治療作用を達成するために経皮投与される組成物を製造するための、アリスキレン(その塩、プロドラッグおよび代謝産物を包含する)を任意で医薬的に許容される担体と一緒に含む化合物の使用。所望の治療作用を達成するための方法であって、アリスキレン(その塩、プロドラッグおよび代謝産物を包含する)を任意で医薬的に許容される担体と一緒に含む化合物の経皮投与による方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
腎臓から放出されるレニンは、アンジオテンシノゲンからアンジオテンシンI(Ang I)に分解し、これはその後さらに肺、腎臓およびその他の器官内でアンジオテンシン変換酵素(ACE)によってアンジオテンシンII(Ang II)へ処理される。Ang IIは血圧を上昇させる;このためレニン阻害剤は、Ang IおよびIIの産生の減少に起因する降圧作用を有する。アリスキレン、(2S,4S,5S,7S)−5−アミノ−N−(2−カルバモイル−2,2−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−7−{[4−メトキシ−3−(3−メトキシプロポキシ)フェニル]メチル}−8−メチル−2−(プロパン−2−イル)ノナンアミドは、高血圧を治療するためのレニン阻害化合物である。アリスキレンの合成および高血圧を治療するためのその有用性は米国特許第5,559,111号明細書(Ciba−Geigy Corporation社)に開示されているが、この特許はアリスキレンの経皮投与を開示していない。国際公開第2008023016号は、アリスキレンの経粘膜投与のための剤形について開示している。1994年の報告では、リスザル(squirrel monkeys)におけるレニン阻害剤であるシプロキレンの経皮投与について開示されている(Fischli,et al.,HYPERTENSION,24(2):163−169(1994))。ペプチドミメティックの性質によって与えられる低バイオアベイラビリティのために、アリスキレンの経口投与レジメンは、有害な作用、例えば消化管(GI)障害を生じさせる高用量を必要とする。このためアリスキレンは、経皮投与のため、例えばパッチ製剤における候補薬である。
【図面の簡単な説明】
【0002】
【図1】雌性二重トランスジェニックラットにおける平均動脈圧に経口対経皮送達が及ぼす作用の比較を示す図である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、高血圧を治療するためのアリスキレン(その塩、プロドラッグおよび代謝産物を含み得る)の経皮投与に関する。そこで、本発明は、アリスキレンの経皮剤形に関し、さらに、任意のタイプの高血圧、ならびにうっ血性心不全、狭心症、心筋梗塞、アテローム硬化症、糖尿病性ネフロパシー、糖尿病性心筋症、腎不全、末梢性血管疾患、左心室肥大、認知機能障害および慢性心疾患を治療するための方法であって、治療有効量の経皮投与のための剤形を投与する工程を含む方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明による高血圧の治療は、アリスキレンの全身作用を通して達成される。アリスキレンは、任意の立体異性体形、またはそれらの混合物で投与することができる。有効成分としてアリスキレンを含む経皮製剤は、経口経路のための既存製剤の代替剤を提供するので、このため初回通過代謝または例えば消化管pHもしくは胃内容排出などの可変要因に起因する経口形における不良なバイオアベイラビリティの結果として生じる困難の一部を克服する。皮膚経路は、さらにまた消化管膜への曝露、およびアリスキレンによって誘発されると考えられている局所的消化管刺激もまた減少させる。投与間隔中のより安定した血漿/血清濃度に起因して、血液中薬物濃度におけるピークおよびトラフは最小限に抑えられ、それによって錠剤/カプセル剤と比較して有害な副作用を減少させる。従って、臨床有効性は制御または改善され、それによって患者のコンプライアンスを増強することができる。
【0005】
本発明は、高血圧の治療におけるアリスキレン(その塩、プロドラッグおよび代謝産物を含み得る)の経皮投与のための剤形を提供する。経皮投与のためのこの剤形は、高血圧を治療するための、(2S,4S,5S,7S)−5−アミノ−N−(2−カルバモイル−2,2−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−7−{[4−メトキシ−3−(3−メトキシプロポキシ)フェニル]メチル}−8−メチル−2−(プロパン−2−イル)ノナンアミドおよびその立体異性体、またはそれらの混合物、それらの塩、それらのプロドラッグ、およびそれらの代謝産物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物、ならびにリザーバー(reservoir)、マトリックス、薬物含有粘着剤、マルチラミネート、ホイル(foil)を含まないポリマー系、イオン導入(iontophoretic)デバイス、およびそれらの組み合わせ、エレクトロポレーション、ソノポレーション(sonophoration)、電気浸透、エレクトロインコーポーレーション、マイクロニードル、およびジェットインジェクションデバイスからなる群から選択される経皮投与デバイスを含む。本発明は、アリスキレンを経皮投与する工程によって高血圧を治療する方法をさらに提供する。本発明は、所望の治療作用のための化合物の使用であって、高血圧を治療するために経皮投与される組成物を製造するためのアリスキレンを含む使用をさらに提供する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明は、高血圧を治療するためのレニン阻害剤の経皮送達に関する。ペプチドミメティックであるレニン阻害剤の経口投与は、不良なバイオアベイラビリティを生じさせ、これは高用量の使用および直接的な消化管曝露の増大を必要とする。したがって、典型的に使用される用量では、下痢などの消化管中での薬物蓄積の有害作用を生じさせる。
【0007】
例えばアリスキレンなどのペプチド模倣薬の経皮送達によって、バイオアベイラビリティの改良、消化管有害作用の減少、薬効の改善、持続的および制御された送達、ならびに患者コンプライアンスの増加をもたらすことができる。そのような送達は、局所製剤(例えば軟膏もしくはクリーム剤)、または、経皮デバイス(例えばリザーバー、薬物含有粘着剤マトリックス、イオン導入、超音波、またはマイクロニードルデバイス)によって達成できる。
【0008】
本発明は、最も具体的には、経皮装置、例えば経皮パッチによる投与に関する。経皮パッチとして使用可能な装置は、多数の様々な方法に分類することができ、例えば、Wick S.Developing A Drug−In−Adhesive Design For Transdermal Drug Delivery.ADHESIVE AGE 1995;38:18−24を参照されたい。この参考文献は、経皮装置を4つの主要群:薬物が液体もしくはゲル内に配置され、速度調節膜を越えて皮膚に送達されるリザーバータイプ;薬物が非接着性ポリマー材料、典型的にはヒドロゲルもしくは軟質ポリマー内に配置されるマトリックスタイプ;薬物が接着性ポリマー内に配置される薬物含有粘着剤タイプ;および薬物含有粘着剤の様式と類似するが、装置全体を被覆してそれを皮膚に付着させるための感圧性粘着剤の追加の層を組み込んでいるマルチラミネートタイプに分類している。
【0009】
Wickによって言及されなかったまた別のタイプの装置は、電気的経皮送達のための主要なメカニズムであるイオン導入タイプである。イオン導入タイプを用いた場合は、電位勾配を使用して薬物が皮膚を通して移動させられる(例えば、Singh P et al.,Iontophoresis in Drug Delivery:Basic Principles and Applications.CRIT REV THER DRUG CARRIER SYST 1994;11:161−213を参照されたい)。さらに、エレクトロポレーション、電気浸透、エレクトロインコーポーレーションおよびジェットインジェクションを用いることができる。エレクトロポレーションは、短い電気パルスの適用による脂質二分子膜内の一過性含水孔隙の形成である;これにより皮膚透過性が変化し、薬物輸送への抵抗性が減少する。
【0010】
エレクトロポレーションは、それをイオン導入法と組み合わせて経皮薬物送達において使用されてきた(Bommannan D et al.PHARM RES 1994;11:1809−1814,Prausnitz MR et al.PROC NATL ACAD SCI USA 1993;90:10504−10508、およびRiviere JE et al.J CONTROLLED RELEASE 1995;36:299−233)。これらの症例では、高電圧の短いパルスは、その後のイオン導入法が促進されるように皮膚透過性を変化させる。本発明において使用するために適合するイオン導入デバイスは、例えば、Parminder Singh et al,「Iontophoresis in Drug Delivery:Basic Principles and Applications」,CRITICAL REVIEWS IN THERAPEUTIC DRUG CARRIER SYSTEMS,1994;11(2&3):161−213に開示されたように製造できる。
【0011】
電気浸透法を用いる場合、電場によって、親水性化合物の輸送を可能にする水の対流が作り出される。エレクトロポレーションと密接に関連するのはエレクトロインコーポーレーションであるが、この場合には例えばマイクロスフェアもしくはリポソームなどのより大きな粒子が皮膚の表面に配置され、引き続いて高電圧電気パルスが使用される(Riviere JE and Heit MC.PHARM RES 1997;14:687−697)。ジェットインジェクションは、粉末および液体の両方に使用できる(Muddle AG et al.PROC LNT SYMP CONTROL.REL.BIOACT.MATER.1997;24:713−714、およびSeyam RM et al.,UROLOGY 1997,50:994−998)。ジェットインジェクション法を使用することによって、薬物は、無針無痛注射によって投与することができる。
【0012】
、例えば、米国特許第6,842,641号明細書によって教示されるような、薬物溶液の経皮および/または皮内送達のための皮膚領域のソノポレーションを教示する超音波送達は、同様に本発明によって企図された手段である。
【0013】
各タイプの装置の変形および組み合わせが本発明の範囲内に含まれることに留意することが重要である。例えば、マルチラミネートタイプの装置は、、例えば1層中に薬物、また別の層中に賦形剤、また別の層中に膜およびさらにまた別の層中に粘着剤などの構造である、サンドイッチ構造の多層を備えるデバイスを含むことができる。
【0014】
または、マルチラミネートデバイスは、幾つかの薬物含有粘着剤層または上記の層の組み合わせから構成されてよい。リザーバータイプのデバイスにおいて使用される任意の液体もしくはゲルは、親水性もしくは親油性、例えば水、アルコール、鉱油、シリコーン液、様々なコポリマー、例えばエチレンビニルアセテート、ビニルアセテートもしくはポリビニルアルコール/ポリビニルピロリドンであってよい。リザーバーは、染料、不活性充填剤、希釈剤、酸化防止剤、抗刺激剤、抗増感剤、透過促進剤、安定剤、可溶化剤およびその他の当分野において周知の薬理学的不活性な医薬品を含むことができる。
【0015】
使用される粘着剤は、一般にはゴム、例えばポリイソブチレン、アクリレートおよびシリコーンタイプである。これらの粘着剤は、化学修飾されてよく、広範囲の分子量を有していてよい。数種のタイプの賦形剤、例えば充填剤、安定剤、可塑剤、緩衝剤、透過促進剤、透過遅延剤、抗刺激剤、抗増感剤、可溶化剤およびその他の当分野において周知の薬学的成分を粘着剤に加えることができる。
【0016】
速度調節膜15を作成するために使用できるポリマーフィルムには、、低密度および高密度ポリエチレン、エチルビニルアセテートコポリマーおよびその他の適切なポリマーを含むポリマーフィルムが含まれるが、これらに限定されるものではない。バッキング層は、パッチの外面を通しての薬物および/または環境湿度の通過を防止する目的に役立ち、そして本システムのために必要とされる任意の支持体を提供するためにも役立つ。バッキング層は、密閉(occlusion)もまた提供することができるので、皮膚内への薬物の送達速度を上昇させる。バッキング層は、製剤中に存在するアリスキレンまたは不活性成分の通過対して不透過性であり、柔軟性または非柔軟性のいずれであってもよい。適切な材料には、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、一部のタイプのナイロン、ポリプロピレン、金属化ポリエステルフィルム、ポリビニリデンクロライドおよびアルミホイルが含まれるが、これらに限定されるものではない。任意の剥離ライナー(release liner)は、バッキング層と同一材料から製造することができる。マトリックスタイプおよびリザーバー経皮デバイスのために適合するヒドロゲルは、過剰な水中に配置されると膨潤する材料である。ヒドロゲルは水中には溶解せず、三次元網目構造を保持する。ヒドロゲルは、通常は、化学結合または他の凝集力(例えばイオン相互作用、水素結合もしくは疎水性相互作用など)のいずれかによって架橋結合している親水性ポリマー分子から製造される。例えば、Park K et al.BIODEGRADABLE HYDROGELS FOR DRUG DELIVERY.Technomic Publishing Co.,Inc.1993を参照されたい。ヒドロゲルの例は、ポリビニルピロリドンおよびセルロースヒドロゲル、例えばメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよび微結晶セルロース(コロイド状)であり、さらにまた含まれるのはグアールゴム、アラビアゴム、寒天、トラガント、カラギーナン、キサンタンゴム、アルギン、カルボマー、デキストランおよびキチンである。さらにまた皮膚に浸透して全身循環に到達できるアリスキレンの量を増加させるため、またはパッチのサイズを減少させるために少なくとも1つの経皮透過促進性物質を含むことが治療的に有用である。典型的な方法では、そのような促進物質は、これらに限定されないが、アルコール、例えば短鎖アルコール、例えばエタノールなど、長鎖脂肪アルコール、例えばラウリルアルコールなど、およびポリアルコール、例えばプロピレングリコール、グリセリンなど;アミド;アミノ酸;精油、脂肪酸および脂肪酸エステル;大環状化合物;リン脂質およびリン酸化合物、スルホキシド;ならびに脂肪酸エーテルを含むことができる。促進剤についての有用な概観については、例えば、Santus GC et al.Transdermal enhancer patent literature.J CONTROL RELEASE 1993;25:1−20、およびSmith EW et al.PERCUTANEOUS PENETRATION ENHANCERS.CRC Press Inc.1995を参照されたい。
【0017】
本発明は、レニンの阻害に応答した障害(特に、高血圧)の治療において経皮投与される化合物の使用に関する。本発明において経皮投与される化合物は、さらに、うっ血性心不全、心臓肥大、心臓線維症、梗塞後心筋症、糖尿病の結果として生じる合併症、例えば腎症、血管障害および神経障害、冠血管疾患、血管形成術後の再狭窄、眼圧亢進、緑内障、異常血管増殖、高アルドステロン症、不安神経症および認知障害の治療において使用できる。
【0018】
投与すべき用量は、好ましくは単回用量として、1人に1日当たりおよそ≦2mg〜およそ600mgである。通常は、小児は20歳成人用量の約半量を摂取する。各個人のために必要な用量は、例えば有効成分の血清/血漿濃度を測定する工程によって監視し、そして最適レベルに調整することができる。
【0019】
治療対象の集団におけるアリスキレンの薬物動態特性、臨床有効性プロファイル、含まれる(例えば小児患者の)年齢および体重範囲、および必要とされるパッチ製剤の特性に基づくと、パッチ面積は主として1〜10cmの範囲内、好ましくは約4cmであると予測される。さらに、アリスキレンが経皮デバイスで投与される場合は、本デバイスは好ましくは密閉性(occlusive)である。アリスキレンのための様々な担体およびビヒクルは、経皮投与において使用できる。1つのそのような担体は、シクロデキストリン、より具体的には、β−シクロデキストリンである。
【0020】
以下の実施例は、本発明を例示するために提供さするものであり、それらと同一物に限定するものではない、。
【実施例1】
【0021】
Sprague−Dawley系ラットにおけるアリスキレンの経口投与および経皮投与後のアリスキレンのバイオアベイラビリティを比較した動物試験
雄性Sprague−Dawley系ラット(体重:300〜400g)はCharles River Canada Corporation社(188 Rue LaSalle,St−Constant,QC,J5A1Y2、カナダ国)から購入した。全動物は同一条件下で維持し、標準ラット用ペレット飼料および飲料水を自由に摂取できた。経口投与のために、アリスキレンは0.5%メトセル中に溶解させ、栄養チューブによって投与した。本化合物は、3mg/5mL/kgまたは25mg/5mL/kgの単回ボーラスで投与した。静脈内(IV)5投与のために、アリスキレンを60% PEG200中に溶解させ、0.5mg/1mL/kgでの単回ボーラスで投与した。経皮送達のため、アリスキレンは100% DMSO中に溶解させ、ラットの剃髪した皮膚上に塗布した(250μLの溶液の単回塗布)。ラットは、2.5%イソフルラン麻酔下で軽度に鎮静させ、ラットの背部を4cmの領域にわたって剃髪した。動物はそのケージに戻し、麻酔から回復させた。24時間後、ラットは2.5%イソフルラン麻酔下で軽度に鎮静させ、剃髪した領域はエタノールを3回通過させて消毒した。エタノールの蒸発後、250μLの量の100% DMSO単独、または100% DMSO溶液中に溶解させた化合物は、マイクロピペットを用いて剃髪領域の上方に塗布した。DMSO溶液の完全蒸発後(塗布後5分間以内)に、密閉性の透明な防水フィルム(OpSite社)を動物の背部の剃髪領域の上方へテープ貼付し、動物にジャケットを被せた。イソフルラン吸入を停止し、動物は個別にケージに収容した。ジャケットは、化合物溶液の塗布4時間後に取り除いた。
【0022】
血液サンプル(0.4mL)は化合物レベルを決定するために、100% DMSO溶液中に溶解させた化合物の経口栄養チューブ補給または皮膚上への塗布の1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、10時間および24時間後に尾静脈または頸静脈出血によって採血した。動物は、24時間後の時点に安楽死させた。100% DMSOの適用は極めて良好に許容され、皮膚または皮下病変は剖検時に観察されなかった。血漿は遠心分離によって分離し、分析待機中には−20℃で保存した。血漿サンプルは、質量分析法と結合した液体クロマトグラフィー(LC−MS/MS)を使用してアリスキレン濃度について分析した。結果は、1群当たり動物4匹において入手した数値の平均値として表示し、以下の表1に示した。アリスキレンの経皮送達は、経口送達と比較した場合に、そのバイオアベイラビリティ(F)を(使用した用量に依存して)4〜54倍へ増加させた。
【表1】

【0023】

表1:雄性Sprague−Dawley(SD)ラットにおける経口(PO)対経皮(TD)送達後のアリスキレンのバイオアベイラビリティの比較
【実施例2】
【0024】
代表的なパッチ製剤
経皮剤形は、以下の通りに調製できる。アリスキレンは、適切な溶媒に加え、溶解するまで混合した。この溶液に、コポリマー(例えば、アクリレート)を加え、これらの物質は一様なコーティング製剤が生じるまで混合した。次にコーティング製剤は、ライナー(例えば、シリコーン)上にコーティングした。ライナーはオーブン乾燥し、次にポリエチレンテレフタレートおよびエチレンビニルアセテートのラミネートフィルム上に積層させた(例えば、Scotchpak9732、3M社(ミネソタ州セントポール)などの製品)。
【0025】
または、第I相製剤は、許容できる皮膚ビヒクル、例えば透過促進剤、例えばオレイン酸などを含む、または含まないプロピレングリコール中の単純溶液であってよい。これらの製剤は、塗布器を用いて皮膚上に塗布し、密閉性パッチもしくは包帯で被覆することができる。そのような単純製剤は、臨床試験の概念実証(clinical proof of concept)の即時の理解を与えることができる。
【実施例3】
【0026】
二重トランスジェニックラットを用いた動物試験
ヒトレニンおよびアンジオテンシンに対してトランスジェニックである雌性二重トランスジェニック(dtg)ラット(例えば、Bohlender et al.,J AM SOC NEPHROL 11:2056(2000)を参照されたい)を使用した。全動物を同一条件下で維持し、標準ラット用ペレット飼料および飲料水を自由に摂取できた。ラットは、生後3週間後に開始してエナラプリル(1mg/kg/日)を用いて処置し、2カ月間にわたって持続した。エナラプリル処置の中止からおよそ2週間後に、二重トランスジェニックラットは、160〜170mmHgの範囲内にある平均動脈圧を示して高血圧性であった。
【0027】
トランスミッターの移植 − ラットは、イソフルラン(吸入によって、2〜3%)を用いて麻酔をかけた。圧力トランスミッターは、上流を指向する腎動脈の下方の下行大動脈内に配置された感知カテーテルを用いて無菌条件下で腹腔内に移植した。トランスミッターは、腹部筋肉組織に縫合し、皮膚を閉鎖し、ラットはケージ内に個別に収容し、麻酔からの回復中およびその後の血圧データの収集を可能にするためにテレメトリーレシーバーパッド上に配置した。ラットは、テレメトリーデータの記録を持続するために個別にケージへ収容した。
【0028】
テレメトリーシステム − テレメトリー単位は、Data Sciences社(ミネソタ州セントポール)から入手した。移植したセンサーは、真空に相対する絶対動脈圧を測定した、高度に安全性の低コンダクタンスの歪みゲージ圧トランスデューサ−に結合した流体充填カテーテル(直径0.7mm、長さ8cm)、および高周波トランスミッターから構成した。カテーテルの先端には、血液還流を防止する粘性ゲルを充填し、抗血栓原性フィルムでコーティングした。インプラント(長さ=2.5cm、直径=1.2cm)の重量は9gであり、6カ月間の典型的電池寿命を有していた。レシーバープラットフォーム(Data Sciences社からのモデルRPC−1)は、無線信号を専用パーソナル・コンピュータに送信されるデジタル化入力へ接続した。動脈圧は、周囲圧力参照値(APR−1、Data Sciences社)からの入力を使用して較正した。収縮期、平均、および拡張期血圧は、水銀柱ミリメートル(mmHg)で表示した。
【0029】
薬物の投与 − 経口投与のために、アリスキレンは0.5%メトセル中に溶解させ、栄養チューブによって投与した。本化合物は、3mg/5mL/kgまたは30mg/5mL/kgの単回ボーラスで投与した。投与後、ラットをケージに戻した。血圧データは、経口投与7日後まで収集した。
【0030】
経皮送達のために、アリスキレンは、250μL溶液の単回投与において塗布すべき100% DMSO中に溶解させた。ラットは、2.5%イソフルラン麻酔下で軽度に鎮静させ、ラットの背部を4cmの領域にわたって剃髪した。動物はケージに戻し、麻酔から回復させた。24時間後、ラットは2.5%イソフルラン麻酔下で軽度に鎮静させ、剃髪した領域はエタノールを3回通過させて消毒した。
【0031】
エタノールの蒸発後、250μLの量の100% DMSO単独、または100% DMSO溶液中に溶解させた化合物は、マイクロピペットを用いて剃髪領域の上方に塗布した。DMSO溶液の完全蒸発後(塗布後5分間以内)に、密閉性の透明な防水フィルム(OpSite社)を動物の背部の剃髪領域の上方へテープ貼付し、動物にジャケットを被せた。イソフルラン吸入を停止し、動物は個別にケージに収容した。血圧データは、化合物/DMSO溶液の塗布の5日後まで収集した。
【0032】
薬物動態およびバイオマーカー − 血液サンプル(0.3mL)は、化合物濃度および血漿中レニン活性(PRA)を決定するために経皮送達の4時間および24時間後に尾出血または頸静脈によって採血した。
【0033】
血行動態の測定 − 経口送達のために、圧力トランスミッターを移植した二重トランスジェニックラットに、ビヒクル(5mL/kg)または試験物質(30mg/5mL/kg)を単回ボーラスによる経口栄養チューブ補給によって投与した(1群当たりn=6)。
【0034】
経皮送達のためには、圧力トランスミッターを移植した二重トランスジェニックラットに、ビヒクル(250μLの100% DMSO;n=4)または試験物質(250μLの100% DMSO中の10mg、すなわち36mg/kg;n=5)の単回塗布により投与した。
【0035】
平均動脈圧は、連続的にモニタリングした。試験物質の作用は、処置群対コントロール群における平均動脈圧(MAP)の最大減少として表示した。
【0036】
バイオアベイラビリティ − 表2は、経口および経皮送達を比較している、全身循環中の活性薬のバイオアベイラビリティ(曲線下面積、またはAUCとして推定した)を要約している。アリスキレンの経皮送達は、使用した用量でAUCを70倍増加させた。
【表2】

【0037】

表2:遠隔測定された(telemetrized)雌性dTGラットにおける経口または経皮送達後のアリスキレンについてのAUC
平均動脈圧 − アリスキレンが平均動脈圧(MAP)に及ぼす作用は、上述したように無拘束覚醒ラットにおいてテレメトリーシステムを用いて測定した。記録期間中、動物は環境ストレスを回避するために個別の部屋で保持した。典型的な結果は、図1に示した。最高MAP減少は経口および経皮送達間で匹敵していたが、経皮送達はより持続性(>3日間)のMAP減少を提供した(表3)。
【表3】

【0038】

表3:アリスキレンの経皮対経口送達の有効性に関する比較

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経皮投与のための剤形であって、(2S,4S,5S,7S)−5−アミノ−N−(2−カルバモイル−2,2−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−7−{[4−メトキシ−3−(3−メトキシプロポキシ)フェニル]メチル}−8−メチル−2−(プロパン−2−イル)ノナンアミドおよびその立体異性体、またはそれらの混合物、それらの塩、それらのプロドラッグ、およびそれらの代謝産物からなる群から選択される少なくとも1つの高血圧を治療するための化合物;ならびに、リザーバー、マトリックス、薬物含有粘着剤、マルチラミネート、ホイルを含まないポリマー系、イオン導入デバイス、およびそれらの組み合わせ、エレクトロポレーション、ソノポレーション、電気浸透、エレクトロインコーポーレーション、マイクロニードルおよびジェットインジェクションデバイスからなる群から選択される経皮投与デバイスを含む、前記剤形。
【請求項2】
高血圧を治療するための前記化合物が、シクロデキストリンとの複合体中に存在する、請求項1に記載の剤形。
【請求項3】
経皮透過を促進する物質をさらに含む、請求項1に記載の剤形。
【請求項4】
刺激反応を減少させる物質をさらに含む、請求項1に記載の剤形。
【請求項5】
前記デバイスが、密閉性である、請求項1に記載の剤形。
【請求項6】
高血圧を治療するための方法であって、請求項1に記載の剤形を用いて(R)−アリスキレンもしくはそのラセミ化合物、それらの塩、それらのプロドラッグ、およびそれらの代謝産物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物を経皮投与する工程を含む方法。
【請求項7】
少なくとも1つの医薬的に許容される担体をさらに含む、請求項1に記載の剤形。
【請求項8】
前記経皮投与デバイスが、薬物含有粘着剤デバイスおよびリザーバーデバイスの組み合わせである、請求項1に記載の剤形。
【請求項9】
少なくとも1つの医薬的に許容される担体をさらに含む、請求項6に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2012−509849(P2012−509849A)
【公表日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536716(P2011−536716)
【出願日】平成21年11月23日(2009.11.23)
【国際出願番号】PCT/CA2009/001694
【国際公開番号】WO2010/060199
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(511124965)メルク・カナダ・インコーポレイテツド (3)
【Fターム(参考)】