説明

経皮的薬物投与位置決め装置

【課題】経皮的薬物投与システムの、皮膚上の希望する箇所に、的確に配置する薬物投与位置決め装置を提供する。
【解決手段】シート状で概ね2層から成る位置決め装置400を使用する。ここで、皮膚に貼付される第1層は、パッチ300が皮膚に接する部分に穴があいており、その穴の周囲に、パッチ300の薬物部分の中心を示すマーク(例:十字)がついている。また、その上の第2層は、全体に透明なシートであって、穴を覆う部分も透明なので皮膚を見ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は経皮的薬物投与システムに用いる薬物投与位置決め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、薬物の投与には経口投与や注射による投与がよく用いられている。経口投与の場合、服用の簡便さ、安全性に優れているものの、水溶性薬物や高分子薬物が十分に吸収されないという欠点がある。また注射の場合も、速効性という利点はあるが、患者に苦痛を与えてしまうという欠点がある。
現在では従来から用いられているこれらの方法以外に皮膚を通しての薬物投与システム(以下、経皮的薬物投与システム)の開発が進められている。経皮的薬物投与システムには、電気エネルギを使用する方法、超音波を使用する方法等、エネルギーを用いて表皮のバリアを通過させ薬物を皮膚内部へ送達するいくつかの方法がある。電気エネルギを使用する方法の内、古くから研究され、一部実用化されている方法としてイオントフォレシスがある。
【0003】
イオントフォレシスは、皮膚の離れた2点に正負の電極を装着し、皮膚の角質層を横切り、皮膚内部を流れて両極をつなぐ電気の流れを形成することにより、角質層部分において、荷電した薬物を電気泳動の原理で移動させて吸収させる方法である。原理的には荷電薬物が吸収促進の対象となるが、電気が流れることによって水の流れも生じるため、電荷を持たない薬物や分子量の大きな薬物でも皮膚透過性が上昇すると報告されている。
一般的なイオントフォレシスの経皮的薬物投与システムは、薬物を含んだパッチ(薬物内蔵ユニット)と、このパッチに電流を与えるコントローラから成る。従来、コントローラは壁電源から電力を供給する方式が一般的だったが、近年、投与中も患者の行動を制限しないように、コイン電池(例:直径20mm、厚さ3.2mm)によって動作する携帯型のコントローラも商品化されている。
【0004】
また、コントローラが小型化することに加えて、使用時にはパッチのみを交換する再使用可能な小型コントローラも検討されており、パッチとほぼ同じ大きさのコントローラをパッチとともに皮膚に貼付するものが提案されている。(特許文献1、2) 図1は、特許文献2に記載されているイオントフォレシス装置(エレクトロトランスポート装置)であり、薬品内蔵ユニット70(パッチ)に結合及び結合解除できるように構成されたコントローラ52であり、複数の薬品ユニット70は、内蔵された薬品が搬送完了されるか又は空になったときに廃棄される。コントローラ52は、印刷回路(PC)ボード58と、ボタン型電池からなるバッテリ電源60などを含み、薬品ユニット70は、コントローラ52に取り外し可能に結合されるように構成され、ヒドロゲル等からなり治療用薬物(例えば、薬品)を含む貯蔵部76及びカウンタ電極組立体である貯蔵部78を有するものである。
【0005】
一方では、イオントフォレシスも含め、経皮薬物投与システムにおいては、i)患者の行動を制限しないように電池駆動で小型化をはかる、ii)薬物ができるだけ少ない量で、所定の効果を得る、ために、投与部位に対するパッチ(薬物内蔵ユニット)の正確な位置決めが必要である。
これは、イオントフォレシスの場合で説明すると、
A:パッチによって投与効果が与えられる部位の面積
I:コントローラから供給される電流
Δt:投与時間
としたとき、電流密度Dは、
D=I/A
となり、電池が消費する電気量(電荷)Qは、
Q=I・Δt
となるため、電池駆動できる小型のコントローラを設計しようとしたとき、少なくすることが必要になる電気量(電荷)Qは、
Q=I・Δt
=D・A・Δt
となるが、ここで、電流密度Dは生体からの制約(Dが小さいと薬物が十分に吸収されず、大き過ぎると皮膚に傷害を与えてしまうので、適切な値を選ぶ必要がある)があり大きくはできず、投与時間Δtも治療上の制約(おおよそ15分以下)で決まってしまうため、電気量(電荷)Qを少なくするには、面積Aを小さくすることが主になるからである。すなわち、面積Aを小さくするには、前提として、投与部位に対するパッチの正確な位置決めが必要になる。
【0006】
イオントフォレシス以外の他の方式の場合にも、エネルギ密度(単位面積あたりのエネルギ)は生体からの制約で決まり、投与時間も治療上の制約で決まってしまうため、省電力のコントローラを設計しようとすると、
総エネルギ=エネルギ密度 × 面積 × 投与時間
を少なくする必要が生じることから、面積を小さくすることが必要になり、結果として、投与部位に対するパッチの正確な位置決めが必要になる。
【0007】
コントローラとパッチが分離しており、電力を供給するコードで接続されているようなイオントフォレシスでは、パッチに十字のマークをつけることで、使用者に位置決めをさせているものが商品化されている。また、エネルギ供給のないテープタイプの薬物投与装置においては、皮膚に直接マークを付する補助キットなども提案されている(特許文献3参照)。しかしながら、上記の通り、エネルギを用いて速やかに薬物を投与し、さらに小型化するために、パッチの上にコントローラを配置して一体化し携帯性を高めたシステムでは、この方法は使えないという問題があった。
【0008】
これはパッチの上にコントローラを配置する方式では、その使用にあたって、
1)はじめにパッチをコントローラに接続する
2)次にコントローラと一体になったパッチを目的とする投与部位に貼付する
という手順をとるためである。すなわち、この方式・手順では、パッチ上のマークはコントローラによって見えなくなり、コントローラにマークをつけても、投与部位に対してマークが離れてしまうため、正確な位置決めができなくなる。
特許文献1のFIG3や特許文献2の図1、図3には、ふたつの薬品ユニットがそれぞれ皮膚との間の通電を得るための電極末端となっており、薬物投与はふたつの薬品ユニットのうちのどちらか一つから行われることとなるので、薬液が投与される部位が皮膚に配置される装置全体の中心から外れた位置となり、正確な位置決めを困難にしている。
【特許文献1】米国特許第5320597号公報
【特許文献2】特表平10−512474号公報
【特許文献3】特開平11−158059号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明では、上記問題点を解決したコントローラと薬液を含有したパッチが一体となったイオントフォレシス装置に好適に使用できる投与部位の位置決め装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記問題点を解決するために、本発明は、概略、シート状で概ね2層から成る位置決め装置を使用する。ここで、皮膚に貼付される第1層は、パッチが皮膚に接する部分に穴があいており、その穴の周囲に、パッチの薬物部分の中心を示すマーク(例:十字)がついている。また、その上の第2層は、全体に透明なシートであって、穴を覆う部分も透明なので皮膚を見ることができる。ただし、穴を覆う部分にはパッチの薬物部分の中心を示すマーク(例:十字)がついている。すなわち、透明なシートにマークがついている。さらに、コントローラにもパッチと接続された状態で、薬物の中心位置を示すマークが、側面と上面についているものが好ましい。
薬物の中心位置とは、パッチの薬物投与部分の幾何学的な中心位置を必ずしも意味するものではなく、パッチがコントローラに接続された状態で皮膚に配置され、使用された場合に、前記薬物投与部分からの薬物放出が最も良く行われる位置である。通常は薬物投与部分の幾何学的な中心位置である。
本発明は、以下の(1)から(6)の構成により達成することができる。
【0011】
(1)皮膚を通して薬物を投与する経皮的薬物投与システムの薬物投与位置決め装置であって、皮膚に粘着する第1粘着層を有する第1面と、その反対面の第2面と、前記経皮的薬物投与システムの薬物が放出される投薬部を含む皮膚当接部が通過可能な空間を有する第1層と、前記第1層の前記空間を覆い、かつ前記第1層と重なり合うことが可能な大きさと、前記第1層の第2面に剥離可能に粘着する第3面と、その反対面の第4面とを有する第2層とからなり、前記第1層は、前記経皮的薬物投与システムとの相対的位置を定める手段を有し、前記第2層は、実質的に透明で、皮膚上において前記相対的位置を定める手段により定められた位置に前記経皮的薬物投与手段が配置されたときに、前記投薬部が前記皮膚上の最も好ましい位置に配置されるように、前記薬物を投与すべき皮膚上の最適部位の位置を示す最適位置表示マークを有することを特徴とする薬物投与位置決め装置。
【0012】
(2)前記相対的位置を定める手段が、前記皮膚当接部の輪郭形状と近似した形状を有する前記空間の形状である前記(1)に記載の薬物投与位置決め装置。
【0013】
(3)前記経皮的薬物投与システムが皮膚上へ配置された状態において前記経皮的薬物投与システムの目視可能な部位に位置マークを有するものであり、前記相対位置を定める手段が、前記位置マークと同時に目視可能でかつ前記位置マークに対応して前記第2面に表示された位置合わせマークである前記(1)または(2)に記載の薬物投与位置決め装置。
【0014】
(4)前記位置マークは、前記経皮的薬物投与システムが皮膚上へ配置された状態で前記経皮的薬物投与システムの目視可能な表面に放射状に配置された複数のマークであり、複数の前記位置マークに対応した複数の前記位置合わせマークを有する前記(3)に記載の薬物投与位置決め装置。
【0015】
(5)前記位置マークが前記最適位置表示マークと平面視で同様の形状部分を有する前記(3)または(4)に記載の薬物投与位置決め装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、概略、シート状で概ね2層から成る位置決め装置であって、皮膚に貼付される第1層は、パッチが皮膚に接する部分に穴があいており、その穴の周囲に、パッチの薬物部分の中心を示すマーク(例:十字)がついている。また、その上の第2層は、全体に透明なシートであって、穴を覆う部分も透明なので皮膚を見ることができる。ただし、穴を覆う部分にはパッチの薬物部分の中心を示すマーク(例:十字)がついている。すなわち、透明なシートにマークがついている。このような構成を有するので、皮膚上の希望する箇所に、効率よく薬物を投与することができる。そのため、コントローラを小型化しパッチと一体化することが容易となる。
さらに、コントローラにもパッチと接続された状態で、薬物の中心位置を示すマークが、側面と上面についているので、容易にパッチとコントローラの相対的位置を容易に定めることができる。
【0017】
また、本発明は、皮膚を通して薬物を投与する経皮的薬物投与システムの薬物投与位置決め装置であって、皮膚に粘着する第1粘着層を有する第1面と、その反対面の第2面と、前記経皮的薬物投与システムの薬物が放出される投薬部を含む皮膚当接部が通過可能な空間を有する第1層と、前記第1層の前記空間を覆い、かつ前記第1層と重なり合うことが可能な大きさと、前記第1層の第2面に剥離可能に粘着する第2粘着層を有する第3面と、その反対面の第4面とを有する第2層とからなり、前記第1層は、前記経皮的薬物投与システムとの相対的位置を定める手段を有し、前記第2層は、実質的に透明で、皮膚上において前記相対的位置を定める手段により定められた位置に前記経皮的薬物投与手段が配置されたときに、前記投薬部が前記皮膚上の最も好ましい位置に配置されるように前記第2粘着層が前記第2面に貼付されてなり、前記薬物を投与すべき皮膚上の最適部位の位置を示す最適位置表示マークを有するので、皮膚上の希望する箇所に、効率よく薬物を投与することができる。そのため、コントローラを小型化しパッチと一体化することが容易となる。
【0018】
また、本発明は、前記相対的位置を定める手段が、前記皮膚当接部の輪郭形状と近似した形状を有する前記空間の形状であるので、視覚に依存することなく的確に位置決めすることができる。
【0019】
また、本発明は、前記経皮的薬物投与システムが皮膚上へ配置された状態において前記経皮的薬物投与システムの目視可能な部位に位置マークを有するものであり、前記相対位置を定める手段が、前記位置マークと同時に目視可能でかつ前記位置マークに対応して前記第2面に表示された位置合わせマークであるので、容易に位置決めすることができる。
【0020】
また、本発明は、前記位置マークは、前記経皮的薬物投与システムが皮膚上へ配置された状態で前記経皮的薬物投与システムの目視可能な表面に放射状に配置された複数のマークであり、複数の前記位置マークに対応した複数の前記位置合わせマークを有するので、どの方向からでも的確な位置を確認することができる。
【0021】
また、本発明は、前記位置マークが前記最適位置表示マークと平面視で同様の形状であるので、本薬物投与位置決め装置の貼付時と経皮的薬物投与システムの配置時のイメージが重なり、位置決めが容易となる。ここで平面視とは、経皮的薬物投与システムあるいは薬液投与位置決め装置が皮膚に載置されたときの皮膚上方からの見え方を意味し、表面的に見える部分だけでなく、透視された場合の見え方を含む。以下同様である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の薬液投与位置決め装置について、ここでは、経皮的薬物投与システムとしてイオントフォレシスシステムに用いる場合を例にして説明する。
本発明の薬液投与位置決め装置の説明に先立ち、まず、本発明に用いるイオントフォレシスシステムを説明する。図2は、パッチ300を結合したコントローラ200からなるイオントフォレシスシステム100の斜視図であり、基本的な構成は図1のエレクトロトランスポート装置に類似している。コントローラ200は、図1のコントローラ52と類似した構造を有するが、平面視で略長方形の輪郭を有し、パッチ300への通電を開始するためのスイッチ201とLED202を有する。ここでLED202は、たとえば、正常な通電中は、緑色で点滅、異常が起きた場合は赤色で点滅、等の表示を行う。図3は、コントローラのみを表したものであり、図3(a)は斜視図であり、図3(b)は下面図である。コントローラ200は、パッチ300との接続のための接続凹部203、204を有する。接続凹部203、204は、パッチ300との間の機械的な接続を得るためだけでなく、コントローラ200の電気回路とパッチ300との電気的な接続端子を兼ねている。
【0023】
パッチ300は、図1の薬物内臓ユニット70に類似した構造を有し、コントローラ200と着脱自在な構造を有している。図4は、パッチ300のみを表したものであり、図4(a)は斜視図であり、図4(b)は下面図である。パッチ300は、平面視で略長方形の薄板状の形状を有するパッチ本体301、パッチ本体の一面側に突出した二つの接続端子304、305、および接続端子304、305の突出した面と反対の面からパッチ本体を切り欠いた窪みに設けられた略長方形の開放面を有する薬液用リザーバ303、リターン用リザーバ302を有する。接続端子304、305と接続凹部203、204の構造として、金属製のボタンホック型の接続構造するとパッチ300の着脱が容易で、電気的接続も得られ、容易に製造することができる。しかしながら、機械的な接続と電気的な接続をそれぞれ別な機構により確立しても本発明に何ら影響を与えるものではない。
【0024】
パッチ300は、正負の電極を有し、二つの電極の一方は薬液用リザーバ303となり、所定の薬物を含むゲルからなり、他方の電極はリターン用リザーバ302となり、生理食塩水を含むゲルからなる。薬液用リザーバ303と接続端子305、およびリターン用リザーバ302と接続端子304とは、それぞれ電気的に接続されている。接続端子304、305は、電気的な接続端子も兼ねており、コントローラ200の接続凹部203、204にそれぞれ接続されたときに、コントローラ200の電気回路とリザーバ303,304とが電気的に接続される。薬液用リザーバ303とリターン用リザーバ302のゲルは、図4において下面側に開放しており、パッチ300の下面側が皮膚に貼付され、コントローラ200から電力供給されることにより、皮膚および皮膚内の組織を含む電気回路が形成され、薬液用リザーバに含まれている薬物が皮膚内へ送達される。薬液用リザーバ303、リターン用リザーバ302は、ハイドロゲルなどのゲルに限らず、液体を保持することができるスポンジ、多孔質膜などの多孔体などでもよい。
【0025】
また、パッチ300は、図示していないが、薬液用リザーバ303、リターン用リザーバ302が開放されている下面側を気体や液体の通過を制限するフィルム等で、通常は使用直前まで封止されている。
【0026】
本発明のイオントフォレシスシステム100は、平面視においてパッチ300の輪郭形状とほぼ同形状の輪郭形状を有するコントローラ200からなっており、接続するための配線などがなく非常に小型化されたシステムとすることができ、取り扱いが簡便で、患者の行動の制限などを極力少なくすることができる。しかしながら、薬物が投与される部分は薬液用リザーバが接触する部分の皮膚だけであるのに、上記の通り、薬液用リザーバとリターン用リザーバの二つのリザーバが皮膚と接触する必要があるので、薬物が投与される部分よりも大きな面積で皮膚と接触しなければならない。従って、皮膚上の薬物を投与すべき箇所(例えば注射予定部位、血管穿刺部位など)が制限される場合など、位置決めに注意が必要となる。
【0027】
コントローラ200の上面には、薬液用リザーバ303が皮膚と接触する部分と平面視で対応する部分の輪郭510が表示されている。また、コントローラ200の上面において、平面視で長方形である薬液用リザーバ303の回転対称中心にあたる部分530を通る二つの直線が位置マーク501、502として表示されている。さらに、コントローラ200の側面には、位置マーク501、502の延長上を皮膚に対して垂直に降ろした、位置マーク503、504が表示されている。図3(a)において、隠れた側面においても、位置マーク501、502の延長上を皮膚に対して垂直に降ろした位置マークが表示されている。
【0028】
次に、前記イオントフォレシスシステムを的確に皮膚上へ配置するための本発明の薬物投与位置決め装置について説明する。
図5は前記イオントフォレシスシステム100に適した薬物投与位置決め装置300の斜視図である。図6は、図5(c)のd−d' の断面図である。薬物投与位置決め装置300は、皮膚に粘着する第1粘着層427を有する第1面421と、その反対面の第2面422とを有する基材428、および前記薬液用リザーバ303(薬物が放出される投薬部)を含むパッチ300の皮膚当接部301が通過可能な空間450を有する第1層420と、第1層420の空間450を覆い、かつ第1層420と重なり合うことが可能な大きさと、第1層420の第2面422に剥離可能に粘着する第3面411と、その反対面の第4面412とを有する第2層とからなる。また、本発明における粘着剤は、アクリル系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤と合成ゴム系粘着剤との組成物、粘着付与剤と可塑剤とを含む組成物を挙げることができるが、これに限られるものではない。
【0029】
第1層420は、イオントフォレシスシステム100との相対的位置を定める手段として、パッチ300の皮膚当接部301の輪郭形状にほぼ一致し、かつ若干大きめの形状の空間(穴、切り欠き部)450、および前記位置マーク501,502,503,504等に一致する位置合あわせマーク423、424、425、426とを有する。位置合わせマーク423、424、425、426は、近似した形状を有する前記空間の形状であることを特徴とするを有し、コントローラ200に設けられた位置マーク同時に目視可能に設けられている。第1層420の基材428の材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等が例示できるが、これに限られない。
【0030】
第2層410は、実質的に透明で、皮膚上において前記相対的位置を定める手段により定められた位置に前記経皮的薬物投与手段が配置されたときに、前記投薬部が前記皮膚上の最も好ましい位置に配置されるように前記薬物を投与すべき皮膚上の最適部位の位置を示す最適位置表示マーク413,414が設けられている。最適位置表示マーク413、414は、コントローラ200に設けられた位置マーク501、502と同様の形状を有している。本実施例においては、薬物用リザーバが平面視で長方形をしており、その回転対称中心が、最適位置表示マーク413、414の交点として示され、前記最適部位と一致させるように設計されている。
最適位置表示マークは、最適位置を交点とする複数の放射状に配置されたマークが好適であるが、最適位置を示すことができればよく、単なる点としてもよいし、最適位置を中心とする複数の同心円としてもよい。第2層410の材料としては、皮膚に貼り付けたときに皮膚の目的とする部位が目視でき、実質的に透明なものであれば使用することができ、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等が例示できるが、これに限られない。
【0031】
第1層420と第2層410とは、第1層420の第2面422と第2層410の第3面411を剥離可能に重ね合わせられている。本実施例においては第2粘着層417が、空間450に当たらない第3面411に設けられており、第2粘着層417を介して第2面322に貼付されている。第2粘着層417は、第1層420側すなわち第2面322に設けられていてもよい。
【0032】
経皮的薬物投与システムの皮膚当接部の輪郭形状が、回転対称中心を有さない場合には、本発明の相対的位置を定める手段として、経皮的薬物投与システムの皮膚当接部の輪郭形状と近似した形状を有する空間を、本発明の薬物投与位置決め装置の第1層である皮膚貼付部材に設けることで、前記経皮的薬物投与システムを皮膚上へ配置しようとしたときに、自動的にかつ的確に、薬物投与リザーバを最も好ましい位置に配置できる。この場合に、前記皮膚当接部の全体の輪郭形状と近似した形状の空間を形成することが最も好ましいが、前記皮膚当接部が通過可能であれば、前記皮膚当接部の特徴的な形状部分のみの輪郭形状と近似した形状の空間を形成するように設計してもよい。
【0033】
また、本発明の相対的位置を定める手段として、経皮的薬物投与システムが皮膚上へ配置された状態において前記経皮的薬物投与システムの目視可能な部位に位置マークを有する場合に、前記経皮的薬物投与システムを貼り付ける際に、前記位置マークと同時に目視可能でかつ前記位置マークに対応して、第1層である皮膚貼付部材に位置合わせマークを設けることで、前記経皮的薬物投与システムを皮膚上へ配置しようとしたときに、的確に、薬物投与リザーバを最も好ましい位置に配置できる。さらに、前記位置マークを皮膚配置時の平面について回転対称軸を有さないように配置することにより、経皮的薬物投与システムの皮膚当接部の輪郭形状が、回転対称中心を有する場合であっても、前記経皮的薬物投与システムを皮膚上へ配置しようとしたときに、自動的にかつ的確に、薬物投与リザーバを最も好ましい位置に配置できる。
【0034】
次に本発明の使用方法の一例を説明する。
本発明の薬物投与位置決め装置は、図5(c)のように、皮膚貼付部材である第1層420とそれに剥離可能に貼付された実質的に透明なシート材である第2層410が、貼付された状態で準備されている。また、コントローラ200には、パッチ300を接続して使用する。使用方法は、以下の通りである。
1)皮膚上の薬効を効かせたい箇所に最適位置表示マークが重なるように、位置決め装置を皮膚上に貼付する。
2)最適位置表示マークがついている透明シート410(第2層)を剥がす。これで皮膚が露出する。
3)パッチ300を接続したコントローラ200を、その側面および上面の位置マークと、第1層の位置決めマークが合致するように、皮膚に接触させ、パッチ300を貼付する。
【0035】
図7は、ヒトの腕Hの皮膚上に本発明の薬物投与位置決め装置を用いて、イオントフォレシスシステム100を配置した様子を示す。
【0036】
以上はイオントフォレシスの場合を例にした説明であるが、他の経皮的薬物投与の場合にも、同様の位置決め装置を適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は、公知技術のイオントフォレシス装置。
【図2】図2は、本発明の実施例に使用されるイオントフォレシスシステムの斜視図。
【図3】図3は、図2の実施例のコントローラの斜視図(図3(a))と下面図(図3(b))。
【図4】図4は、図2の実例のパッチの斜視図(図4(a))と下面図(図4(b))。
【図5】図5は、本発明の一実施例の薬物投与位置決め装置の斜視図。
【図6】図6は、図5(c)のd−d' の断面図模式図。
【図7】図7は、図5の一実施例の使用状態を表したイメージ図。
【符号の説明】
【0038】
100 経皮的薬物投与システム
200 コントローラ
201 スイッチ
202 LED
203、204 接続凹部
300 パッチ
301 パッチ本体
302 リターン用リザーバ
303 薬液用リザーバ
304、305 接続端子
400 薬物投与位置決め装置
410 第2層
411 第3面
412 第4面
413 414 最適位置マーク
416 第2層透明フィルム
417 粘着層
420 第1層
421 第1面
422 第2面
423、424、425、526 位置決めマーク
427 粘着層
428 基材
450 空間
501、502 位置マーク(上面、最適位置表示)
503,504 位置マーク(側面)
510 薬物用リザーバ位置表示マーク
530 交点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚を通して薬物を投与する経皮的薬物投与システムの薬物投与位置決め装置であって、
皮膚に粘着する第1粘着層を有する第1面と、その反対面の第2面と、前記経皮的薬物投与システムの薬物が放出される投薬部を含む皮膚当接部が通過可能な空間を有する第1層と、
前記第1層の前記空間を覆い、かつ前記第1層と重なり合うことが可能な大きさと、前記第1層の第2面に剥離可能に粘着する第3面と、その反対面の第4面とを有する第2層とからなり、
前記第1層は、前記経皮的薬物投与システムとの相対的位置を定める手段を有し、
前記第2層は、実質的に透明で、皮膚上において前記相対的位置を定める手段により定められた位置に前記経皮的薬物投与手段が配置されたときに、前記投薬部が前記皮膚上の最も好ましい位置に配置されるように、前記薬物を投与すべき皮膚上の最適部位の位置を示す最適位置表示マークを有することを特徴とする薬物投与位置決め装置。
【請求項2】
前記相対的位置を定める手段が、前記皮膚当接部の輪郭形状と近似した形状を有する前記空間の形状であることを特徴とする請求項1に記載の薬物投与位置決め装置。
【請求項3】
前記経皮的薬物投与システムが皮膚上へ配置された状態において前記経皮的薬物投与システムの目視可能な部位に位置マークを有するものであり、前記相対位置を定める手段が、前記位置マークと同時に目視可能でかつ前記位置マークに対応して前記第2面に表示された位置合わせマークであることを特徴とする請求項1または2に記載の薬物投与位置決め装置。
【請求項4】
前記位置マークは、前記経皮的薬物投与システムが皮膚上へ配置された状態で前記経皮的薬物投与システムの目視可能な表面に放射状に配置された複数のマークであり、複数の前記位置マークに対応した複数の前記位置合わせマークを有することを特徴とする請求項3に記載の薬物投与位置決め装置。
【請求項5】
前記位置マークが前記最適位置表示マークと平面視で同様の形状部分を有することを特徴とする請求項3または4に記載の薬物投与位置決め装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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