説明

経管栄養剤の注入装置

【課題】操作が極めて簡便な経管栄養剤の注入装置を提供する。
【解決手段】経管栄養剤の注入装置10は、経管栄養剤Fを収容する無色透明なガラス製の栄養剤収納容器11と、栄養剤収納容器11の開口部11bへ螺合される蓋部12と、蓋部12に対して着脱可能に挿着されるポンプディスペンサ部13とを備える。栄養剤収納容器11の底部11aの内径φ1に対する栄養剤収納容器11の開口部11bの内径φ2は70%以上である。ポンプディスペンサ部13は、蓋部12から外方へ突出して栄養剤収納容器11の軸L方向に往復動する受圧操作部13aと、受圧操作部13aの往復動に連動して栄養剤収納容器11内の経管栄養剤Fを栄養剤収納容器11外へ吐出するポンプ部13bとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は経管栄養剤の注入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
嚥下障害のある高齢者や、疾患または手術により口腔から食物を摂食できない患者には、患者に造設した胃瘻の瘻孔に胃瘻チューブを挿入し、その胃瘻チューブを介してゲル化した流動物である経管栄養剤を胃内に直接注入するPEG(Percutaneous Endoscopic Gastrostomy:経皮内視鏡的胃瘻造設術)栄養療法が用いられる。
胃瘻チューブに経管栄養剤を注入するには、注射器を用いる方法や、専用の注入装置(特許文献1〜3参照)を用いる方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−106359号公報
【特許文献2】特開2009−226209号公報
【特許文献3】特開2010−99406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
PEG栄養療法において、一回に注入する経管栄養剤は500cc以上である。そのため、容量が50cc程度の注射器を用いる方法では、胃瘻チューブへ注射器を抜き差しする操作と注射器の吸上・注入操作とをそれぞれ10回以上も繰り返さなければならず、操作に力と手間がかかることに加え、胃瘻チューブへ注射器を抜き差しする際に経管栄養剤がこぼれ易いという問題がある。
また、特許文献1〜3に開示されるような従来の注入装置は、構造が複雑であるため、高価であることに加え、取り扱いが難しいという問題がある。
特に、近年増加している老老介護の現場において、経済的に恵まれず体力・知力が衰えた老人の介護者にとっては、注射器や従来の注入装置を購入して使用することが困難であり、PEG栄養療法の普及を妨げる要因となっている。
【0005】
これらの問題を解決するために、各家庭等の介護現場においては、代替的にシャンプーボトルやドレッシングボトル等が経管栄養剤の注入用容器として利用されている。
しかしながら、ドレッシングボトルにおいては、容器側面を押圧することによって内容物を吐出させるため、握力の衰えた高齢者には操作が困難であった。また、シャンプーボトルにおいては、細いポンプディスペンサのネック部分をシャンプーボトルに螺合しなければならず、手先が不自由で握力の衰えた高齢者には煩雑であった。
【0006】
そして、シャンプーボトルやドレッシングボトルでは、口径が小さいため、洗浄に時間がかかり、専用のブラシなどが必要であるが、専用のブラシを用いても、ボトルの底隅部分や肩部分を洗浄することは難しい。
さらに、経管栄養剤はカロリーを増大させるために相当量の脂肪分を含むが、シャンプーボトルやドレッシングボトルはプラスチック製であるため、経管栄養剤が付着しやすく洗浄が難しい。
医療を必要とする高齢者や患者へ経管栄養剤を注入することを考慮すると、洗浄を確実にして衛生的にすることが重要であるが、シャンプーボトルやドレッシングボトルを確実に洗浄しようとすれば、洗浄液に浸漬して超音波洗浄機等を用いるか、或いは、強力な洗浄力を有する薬剤を用いての洗浄が必要となる。
本発明は、前記問題を解決し、操作が極めて簡便な経管栄養剤の注入装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
<第1の局面>
第1の局面の経管栄養剤の注入装置は、
5〜10cmの直径を有する開口部を上面に備えた、容積が500ml以上のガラス製の栄養剤収納容器と、
前記開口部に着脱可能に係止され、かつ貫通口を備えた、5〜10cmの外周直径を有する蓋部と、
前記貫通口に着脱可能に係止され、前記栄養剤収納容器内の内容物を外部に吐出可能に構成されるポンプディスペンサ部と、を備える。
【0008】
第1の局面によれば、蓋部とポンプディスペンサ部とを栄養剤収納容器から取り外すことによって、該栄養剤収納容器の開口部から経管栄養剤を容易に注入することができる。次いで、蓋部を栄養剤収納容器に係止させ、さらにポンプディスペンサ部を蓋部に係止させることによって、極めて容易に経管栄養剤を収納した注入装置を用意することができる。
【0009】
そして、蓋部とポンプディスペンサ部とを別々の構成としたことにより、蓋部は、手で容易に把持することができる大きさに形成されている。従って、栄養剤収納容器とポンプディスペンサ部の細いネック部を螺合などによって固定する必要がない、また、ポンプディスペンサ部は、単に蓋部に係止されていればよい。このため、手先が不自由であったり、或いは握力の衰えた高齢者であっても、極めて容易に設置することができる。
介護者は、ポンプディスペンサ部の押圧などの簡単な操作により、ポンプディスペンサ部から栄養剤収納容器内の経管栄養剤を吐出させ、経管栄養剤を患者に注入することができる。
【0010】
即ち、栄養剤収納容器は、500ml以上の容量を有しているために、患者に対する一回の経管栄養剤注入量を全て収納することができ、何回も容器に経管栄養剤を注入する操作を繰り返す必要がない。尚、容器容量は、一回に必要な経管栄養剤の注入量に応じて、適宜設定することができる。
経管栄養剤を注入した後には、栄養剤収納容器、蓋部、及びポンプディスペンサ部を分解することによって、洗浄することができる。これらの分解も単に係止された蓋部及びポンプディスペンサ部を取り外すのみの極めて簡易な作業である。また、栄養剤収納容器と蓋部とを分離した構成としたことによって、それらの隙間に蓄積しやすい経管栄養剤の洗浄性も向上する。さらには、栄養剤収納容器の開口部を5〜10cmと広い直径に設計したことにより、経管栄養剤の付着した内部の洗浄が容易となっている。従って、衛生面において優れているとともに、複数回利用することができ、経済的、環境上にも好適である。
【0011】
栄養剤収納容器は開口部が5〜10cmのガラス製(広口ガラス瓶)であるため、家庭用のコップ洗浄用スポンジと食器用洗剤を用いるだけで確実な洗浄を簡便に行うことができる。
また、栄養剤収納容器はガラス製であるため、高圧滅菌も可能であり、牛乳瓶やビール瓶のようにリターナブル化も可能でり、滅菌的に経管栄養剤を収納して密閉した栄養剤収納容器を販売し、使用後に回収することも可能である。
また、経管栄養剤は脂肪分を多く含むが、栄養剤収納容器は無機材料であるガラス製のため、経管栄養剤により容器が侵されることがなく、容器内に付着した経管栄養剤を洗浄除去することが容易である。
そして、栄養剤収納容器はガラス製であるため、経管栄養剤を栄養剤収納容器ごと電子レンジを使用して加熱可能であり、経管栄養剤を栄養剤収納容器ごと冷蔵庫に保存可能である。
【0012】
経管栄養剤の一回の注入が完了するまでの間に、経管栄養剤の注入装置を患者から取り外したり、経管栄養剤を栄養剤収納容器に注ぎ足したりする必要がなく、注入操作中に経管栄養剤がこぼれるおそれが無い。
また、経管栄養剤の注入装置全体の構造が単純で部品点数が少なく特殊な部品を使用しないため、安価に提供できる。
従って、近年増加している老老介護の現場において、経済的に恵まれず体力・知力が衰えた老人の介護者にとっても、経管栄養剤の注入装置を購入して使用することが容易であり、PEG栄養療法の普及促進に貢献できる。
【0013】
栄養剤収納容器の開口部と蓋部とは、係止可能に構成されていることができる。栄養剤収納容器と蓋部を係止させることにより、操作時の安定性を向上させることができる。尚、係止としては、蓋部と開口部との螺合や、蓋部若しくは開口部のいずれか一方に設けられた突起、爪などにより他方に係止されるものであってもよい。或いは、開口部内に蓋部を嵌合させるものであってもよく、容易に作業可能なもので十分である。蓋部は、直径が5〜10cmの手で把持しやすい形状であるため、係止作業は容易である。
【0014】
<第2の局面>
第2の局面の経管栄養剤の注入装置は、第1の局面において、前記栄養剤収納容器は無色透明なガラス製である。
そのため、栄養剤収納容器内に収容された経管栄養剤の色・性状・量を栄養剤収納容器外から容易に視認可能であり、経管栄養剤の注入が正常に行われていることや、注入が完了したことを介護者が確実に判断できる。
【0015】
<第3の局面>
第3の局面の経管栄養剤の注入装置は、第1の局面または第2の局面において、前記栄養剤収納容器が有底円筒形である。
そのため、栄養剤収納容器内の隅々まで洗浄が容易であり衛生的である。
【0016】
<第4の局面>
第4の局面の経管栄養剤の注入装置は、第1〜第3の局面において、前記栄養剤収納容器内に収容されたチューブを備え、前記チューブの基端部は前記ポンプディスペンサ部に対して着脱可能に挿着され、前記チューブの先端部は前記栄養剤収納容器内の底部に位置する。
【0017】
チューブはポンプディスペンサ部に対して着脱可能に挿着されるため、チューブとポンプディスペンサ部とをそれぞれ別個に洗浄可能であり衛生的である。
また、チューブの先端部は栄養剤収納容器内の底部に位置するため、栄養剤収納容器内の底部に経管栄養剤を残留させること無く、栄養剤収納容器内の経管栄養剤を全て吐出させることができる。
そして、注入する経管栄養剤の量に合わせて、容量の異なる栄養剤収納容器を使用する場合には、栄養剤収納容器の深さに合わせた長さのチューブに交換することにより、同一の蓋部およびポンプディスペンサ部を様々な容量の栄養剤収納容器に対応させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明を具体化した一実施形態の経管栄養剤の注入装置10の概略構成を示す外観図であり、図1(A)は経管栄養剤の注入装置10の一部上面図、図1(B)は経管栄養剤の注入装置10の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[経管栄養剤の注入装置10の構成]
図1に示すように、本実施形態の経管栄養剤の注入装置10は、栄養剤収納容器11(底部11a、開口部11b)、蓋部12(貫通口12a、雌ねじ12b)、ポンプディスペンサ部13(受圧操作部13a、ポンプ部13b、吐出口部13c)、内装チューブ14、外装チューブ15、継ぎ手16などから構成されており、胃瘻チューブ(胃瘻カテーテル)17に取り付けられる。
【0020】
栄養剤収納容器11は無色透明なガラス製で有底円筒形であって、栄養剤収納容器11の底部11aの内径φ1に対する栄養剤収納容器11の開口部11bの内径(直径)φ2が70%以上の広口瓶であり、開口部11bの内径φ2は5〜10cmであり、栄養剤収納容器11の容量は500cc以上である。
栄養剤収納容器11内には、ゲル化した流動物である経管栄養剤Fが収容される。
蓋部12は金属製であり、蓋部12の中央部には貫通口12aが貫通形成され、蓋部12の外周直径は栄養剤収納容器11の開口部11bの直径に合わせては5〜10cmであり、蓋部12の周壁内面には雌ねじ12bが形成されている。そして、栄養剤収納容器11の開口部11bには雄ねじ(図示略)が形成されており、その雄ねじに対して蓋部12の雌ねじ12bをねじ込むことにより、蓋部12は栄養剤収納容器11の開口部11bへ螺合される。
【0021】
ポンプディスペンサ部13は、受圧操作部13a、ポンプ部13b、吐出口部13cなどから構成されており、蓋部12に対して着脱可能に挿着される。
受圧操作部13aは、合成樹脂製で上面が略平坦な円盤形であり、蓋部12から外方へ突出し、蓋部12が栄養剤収納容器11に取付固定された状態にて、栄養剤収納容器11の中心軸Lの方向(矢印X−X’方向)に往復動する。
ポンプ部13bは、蓋部12の貫通口12aに挿通され、受圧操作部13aの往復動に連動して栄養剤収納容器11内の経管栄養剤Fを栄養剤収納容器11外へ吐出する。
吐出口部13cは、合成樹脂製で略円筒形であり、受圧操作部13aに一体形成されて受圧操作部13aの側面から突設されており、ポンプ部13bにより栄養剤収納容器11内から吸い上げられた経管栄養剤Fは吐出口部13cから吐出される。
【0022】
内装チューブ14はシリコン樹脂製で栄養剤収納容器11内に収容され、内装チューブ14の基端部はポンプ部13bに対して着脱可能に挿着され、内装チューブ14の先端部は栄養剤収納容器11内の底部11aに位置するよう当該チューブ長が設定されており、栄養剤収納容器11内の経管栄養剤Fは内装チューブ14を通ってポンプ部13bに吸い上げられる。
外装チューブ15はシリコン樹脂製であり、外装チューブ15の一端部は吐出口部13cに対して着脱可能に挿着され、外装チューブ15の他端部には継ぎ手16を介して胃瘻チューブ17の先端部が挿着される。
胃瘻チューブ17の基端部(図示略)は、患者に造設した胃瘻の瘻孔に挿入されて胃内に留置されている。
【0023】
[経管栄養剤の注入装置10の使用方法]
経管栄養剤Fを作製して栄養剤収納容器11内に注ぎ込んだ後に、蓋部12を栄養剤収納容器11の開口部11bに螺合させる。
そして、蓋部12にポンプディスペンサ部13を装着し、ポンプディスペンサ部13に蓋部12および各チューブ14,15を挿着することにより、経管栄養剤の注入装置10を組み立てる。
【0024】
そして、蓋部12を介護者が手で押さえて経管栄養剤の注入装置10を安定に固定した状態で、ポンプディスペンサ部13の受圧操作部13aを介護者が手の平で押圧操作して何回か往復動させ、栄養剤収納容器11内の空気を排出させる。
次に、外装チューブ15を継ぎ手16を介して胃瘻チューブ17の先端部に挿着し、蓋部12を介護者が手で押さえて経管栄養剤の注入装置10を安定に固定した状態で、ポンプディスペンサ部13の受圧操作部13aを介護者が手の平で押圧操作して往復動させる。
すると、前記のように、ポンプディスペンサ部13のポンプ部13bにより栄養剤収納容器11内の経管栄養剤Fが吸い上げられ、内装チューブ14→ポンプ部13b→吐出口部13c→外装チューブ15→継ぎ手16→胃瘻チューブ17の経路で経管栄養剤Fが患者の胃内に直接注入される。
【0025】
[実施形態の作用・効果]
経管栄養剤の注入装置10によれば、以下の作用・効果を得ることができる。
【0026】
[1]蓋部12とポンプディスペンサ部13とを栄養剤収納容器11から取り外すことによって、栄養剤収納容器11の開口部11bから経管栄養剤Fを容易に注入することができる。次いで、蓋部12を栄養剤収納容器11に螺合させ、さらにポンプディスペンサ部13を蓋部12に係止させることによって、極めて容易に経管栄養剤Fを収納した注入装置10を用意することができる。
あるいは、ポンプディスペンサ部13に蓋部12および各チューブ14,15を挿着しておき、経管栄養剤Fを作製して栄養剤収納容器11内に注ぎ込んだ後に、ポンプディスペンサ部13が装着された蓋部12を栄養剤収納容器11の開口部11bに螺合させることにより、経管栄養剤の注入装置10を組み立てる。
【0027】
そして、蓋部12とポンプディスペンサ部13とを別々の構成としたことにより、蓋部12は、手で容易に把持することができる大きさに形成されている。従って、栄養剤収納容器11とポンプディスペンサ部13の細いネック部を螺合などによって固定する必要がない、また、ポンプディスペンサ部13は、単に蓋部12に係止されていればよい。このため、手先が不自由であったり、或いは握力の衰えた高齢者であっても、極めて容易に設置することができる。
【0028】
介護者は、ポンプディスペンサ部13の押圧などの簡単な操作により、ポンプディスペンサ部13から栄養剤収納容器11内の経管栄養剤Fを吐出させ、経管栄養剤Fを患者に注入することができる。
栄養剤収納容器11は、500ml以上の容量を有しているために、患者に対する一回の栄養剤注入量を全て収納することができ、何回も容器に経管栄養剤Fを注入する操作を繰り返す必要がない。尚、栄養剤収納容器11の容量は、一回に必要な経管栄養剤Fの注入量に応じて、適宜設定することができる。
【0029】
経管栄養剤Fを注入した後には、栄養剤収納容器11、蓋部12、及びポンプディスペンサ部13を分解することによって、洗浄することができる。これらの分解も単に螺合された蓋部1とポンプディスペンサ部13とを取り外すのみの極めて簡易な作業である。また、栄養剤収納容器11と蓋部12とを分離した構成としたことによって、それらの隙間に蓄積しやすい経管栄養剤Fの洗浄性も向上する。さらには、栄養剤収納容器11の開口部11bを5〜10cmと広い直径に設計したことにより、経管栄養剤Fの付着した内部の洗浄が容易となっている。従って、衛生面において優れているとともに、複数回利用することができ、経済的、環境上にも好適である。
【0030】
栄養剤収納容器11は開口部11bが5〜10cmのガラス製であるため、家庭用のコップ洗浄用スポンジと食器用洗剤を用いるだけで確実な洗浄を簡便に行うことができる。
また、栄養剤収納容器11はガラス製であるため、高圧滅菌も可能であり、牛乳瓶やビール瓶のようにリターナブル化も可能でり、滅菌的に経管栄養剤Fを収納して密閉した栄養剤収納容器11を販売し、使用後に回収することも可能である。
また、経管栄養剤Fは脂肪分を多く含むが、栄養剤収納容器11は無機材料であるガラス製のため、経管栄養剤Fにより容器が侵されることがなく、容器内に付着した経管栄養剤Fを洗浄除去することが容易である。
そして、栄養剤収納容器11はガラス製であるため、経管栄養剤Fを栄養剤収納容器11ごと電子レンジを使用して加熱可能であり、経管栄養剤Fを栄養剤収納容器11ごと冷蔵庫に保存可能である。
【0031】
経管栄養剤Fの一回の注入が完了するまでの間に、経管栄養剤Fの注入装置を患者から取り外したり、経管栄養剤Fを栄養剤収納容器11に注ぎ足したりする必要がなく、注入操作中に経管栄養剤Fがこぼれるおそれが無い。
また、経管栄養剤Fの注入装置全体の構造が単純で部品点数が少なく特殊な部品を使用しないため、安価に提供できる。
従って、近年増加している老老介護の現場において、経済的に恵まれず体力・知力が衰えた老人の介護者にとっても、経管栄養剤Fの注入装置を購入して使用することが容易であり、PEG栄養療法の普及促進に貢献できる。
【0032】
[2]蓋部12は栄養剤収納容器11に螺合されるため、蓋部12を栄養剤収納容器11に取付固定する操作が簡便で取り扱いが容易であることに加え、蓋部12と栄養剤収納容器11との取付強度が高く、ポンプディスペンサ部13の操作時に十分な安定性を確保できる。
特に、知力が衰えた老人の介護者でも、栄養剤収納容器11に蓋部12を間違えることなく確実に取付固定することができる。
【0033】
ところで、栄養剤収納容器11の開口部11bと蓋部12とは、螺合に限らず、係止可能に構成すればよく、栄養剤収納容器11と蓋部12を係止させることにより、操作時の安定性を向上させることができる。尚、係止としては、蓋部12若しくは開口部11bのいずれか一方に設けられた突起、爪などにより他方に係止されるものであってもよい。或いは、開口部11b内に蓋部12を嵌合させるものであってもよく、容易に作業可能なもので十分である。蓋部12は、直径が5〜10cmの手で把持しやすい形状であるため、係止作業は容易である。
【0034】
[3]栄養剤収納容器11は無色透明であるため、栄養剤収納容器11内に収容された経管栄養剤Fの色・性状・量を栄養剤収納容器11外から容易に視認可能であり、経管栄養剤Fの注入が正常に行われていることや、注入が完了したことを介護者が確実に判断できる。
加えて、栄養剤収納容器11は有底円筒形であり、底部11aの内径φ1に対する開口部11bの内径φ2が70%以上の広口瓶であるため、栄養剤収納容器11内の隅々まで洗浄が容易である。
【0035】
[4]ポンプディスペンサ部13の受圧操作部13aは栄養剤収納容器11の中心軸Lの方向(矢印X−X’方向)に往復動するため、受圧操作部13aの押圧操作が簡便で取り扱いが容易である。
特に、体力が衰えた非力な老人の介護者でも、受圧操作部13aに自身の体重を掛けることにより、受圧操作部13aを容易に押圧操作することができる。
【0036】
[5]内装チューブ14はポンプディスペンサ部13のポンプ部13bに対して着脱可能に挿着されるため、内装チューブ14とポンプディスペンサ部13とをそれぞれ別個に洗浄可能であり衛生的である。
また、内装チューブ14の先端部は栄養剤収納容器11内の底部11aに位置するよう当該チューブ長が設定されているため、栄養剤収納容器11内の底部11aに経管栄養剤Fを残留させること無く、栄養剤収納容器11内の経管栄養剤Fを全て吐出させることができる。
そして、注入する経管栄養剤Fの量に合わせて、容量の異なる栄養剤収納容器11を使用する場合には、栄養剤収納容器11の深さに合わせた長さの内装チューブ14に交換することにより、同一の蓋部12およびポンプディスペンサ部13を様々な容量の栄養剤収納容器11に対応させることができる。
【0037】
[6]経管栄養剤の注入装置10を組み立てて、外装チューブ15を胃瘻チューブ17に挿着したならば、経管栄養剤Fの一回の注入が完了するまでの間に、経管栄養剤の注入装置10を胃瘻チューブ17から取り外したり、経管栄養剤Fを栄養剤収納容器11に注ぎ足したりする必要がなく、注入操作中に経管栄養剤Fがこぼれるおそれが無い。
また、経管栄養剤の注入装置10全体の構造が単純で部品点数が少なく特殊な部品を使用しないため、安価に提供できる。
従って、近年増加している老老介護の現場において、経済的に恵まれず体力・知力が衰えた老人の介護者にとっても、経管栄養剤の注入装置10を購入して使用することが容易であり、PEG栄養療法の普及促進に貢献できる。
【0038】
尚、経管栄養剤の注入装置10は、PEG栄養療法に限らず、患者の鼻腔から胃に挿入したチューブを介して胃内に栄養剤の経管栄養剤を注入する経腸栄養法に用いてもよく、その場合でも前記作用・効果が得られる。
【0039】
本発明は、前記局面および前記実施形態の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様も本発明に含まれる。本明細書の中で明示した公開特許公報の全ての内容を援用によって引用することとする。
【符号の説明】
【0040】
10…経管栄養剤の注入装置
11…栄養剤収納容器
11a…栄養剤収納容器11の底部
11b…栄養剤収納容器11の開口部
12…蓋部
12a…蓋部12の貫通口
12b…蓋部12の雌ねじ
13…ポンプディスペンサ部
13a…受圧操作部
13b…ポンプ部
13c…吐出口部
14…内装チューブ
15…外装チューブ
16…継ぎ手
17…胃瘻チューブ
F…経管栄養剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
5〜10cmの直径を有する開口部を上面に備えた、容積が500ml以上のガラス製の栄養剤収納容器と、
前記開口部に着脱可能に係止され、かつ貫通口を備えた、5〜10cmの外周直径を有する蓋部と、
前記貫通口に着脱可能に係止され、前記栄養剤収納容器内の内容物を外部に吐出可能に構成されるポンプディスペンサ部と、
を備えた経管栄養剤の注入装置。
【請求項2】
前記栄養剤収納容器は無色透明なガラス製である、請求項1に記載の経管栄養剤の注入装置。
【請求項3】
前記栄養剤収納容器は有底円筒形である、請求項1または請求項2に記載の経管栄養剤の注入装置。
【請求項4】
前記栄養剤収納容器内に収容されたチューブを備え、
前記チューブの基端部は前記ポンプディスペンサ部に対して着脱可能に挿着され、前記チューブの先端部は前記栄養剤収納容器内の底部に位置する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の経管栄養剤の注入装置。

【図1】
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【公開番号】特開2013−22157(P2013−22157A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158230(P2011−158230)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(805000018)公益財団法人名古屋産業科学研究所 (55)
【Fターム(参考)】