説明

結像システム

【課題】 本発明の結像システムは、直線軌跡走査を採用し、直線フィルタリング逆投影アルゴリズムを使用して断層又は立体画像を復元し、立体画像を真正に実現する。本結像システムは、検査速度が早い、回転の必要がなく、円軌道錐束CTにおける大錐角についての問題がないという利点がある。
【解決手段】 少なくとも一つの放射線源を含み、放射線を発生するための放射線発生装置と、前記放射線源に対向して設置された検知器アレーを含み、被検査物体を透過した放射線を受け取ることで投影データを獲得するためのデータ採集装置と、検査過程において放射線源と検知器アレーとの間にある被検査物体と、放射線源及び検知器アレーとを相対的に直線移動させるための移送装置と、前記放射線発生装置と前記データ採集装置と移送装置とを制御し、前記投影データから被検査物体の画像を復元するための制御・画像処理装置とを備える結像システムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輻射結像の技術に関し、特に結像安全検査過程の速度を向上するための直線軌跡走査を採用した結像システムに関する。
【背景技術】
【0002】
安全検査は、テロ防止と麻薬取引や密輸の打撃などの領域に対して重要な意味を持つ。米国は911事件後、航空と鉄道などの公共場所に対する安全検査を重要視するようになった。また、麻薬取引や密輸への打撃の進展に伴い、税関のコンテナと荷物物品に対する検査の要求も高くなっている。
【0003】
従来の安全検査システムは、輻射結像システムを主流とするが、輻射結像領域では透視結像が主なものとされ、立体結像システムはあまり見かけない。これは、実用安全検査システムにおいては一般的にオンラインリアルタイム検査が必要とされるためである。したがって、検査システムの走査結像の速度は、非常に速いことが必要とされ、例えば、民間航空の物品検査では、通関率0.5m/sが要求される。しかしながら、現在、大ピッチの螺旋CT(Computed Laminography:コンピュータ断層結像)でも、この要求を満足することが困難である。なお、多くの大型物品、例えば通関コンテナに対しては、コンテナの回転、放射線源及び検知器の回転のいずれも困難である。さらに、CTシステムデバイスのコストが高いので、いろいろな原因で立体結像可能なCTシステムの安全検査領域での広範囲応用が限定されている。しかし、CTシステムと比べて、透視結像システムの最大の不十分な点としては、物体への放射方向におけるオーバーラップ効果を回避できないことであり、これによって、検査能力が制約され、立体検査と位置決めが確実に実行できていない。
【0004】
CT技術の進展に伴って、有限角度とデータカットの場合にも、ある程度の品質の断層画像を復元することが可能であり、これは不完全走査復元画像の実際の応用を可能にする。理論的には、走査経路が直線である結像システムに対して、直線の長さが無限大であると、断層画像を精細に復元できることが分かっている。走査経路の長さが有限であれば、有限角度(Limited-Angle)のCT走査モードと等価である。そこで、不完全復元アルゴリズムを応用して、直線走査の結像システムで採集したデータを復元することで、断層画像を獲得し、立体結像を実現できる。
【0005】
直線軌跡の結像システムとしては、コンピュータラミノグラフィー(Computer Laminography)システムが提案されているが、その放射線の開き角が小さく、復元アルゴリズムとしてクロマト方式を採用したものであるので、三次元結像と断層結像に悪影響を与える。そこで、三次元画像及び/又は断層画像を高速に獲得できる結像システムが必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、直線軌跡走査を採用した結像システムを提供することを目的の一つとする。このシステムは、透視画像に加えて、断層画像も獲得することができ、透視結像での物体オーバーラップの問題を解決し、安全検査システムに要求されている高速の立体結像及び/又は断層結像を実現することが出来る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの形態は、少なくとも一つの放射線源を含み、放射線を発生するための放射線発生装置と、前記放射線源に対向して設置された検知器アレーを含み、被検査物体を透過した放射線を受け取ることで投影データを獲得するためのデータ採集装置と、検査過程において放射線源と検知器アレーとの間にある被検査物体と、放射線源及び検知器アレーとを相対的に直線移動させるための移送装置と、前記放射線発生装置と前記データ採集装置と移送装置とを制御し、前記投影データから被検査物体の画像を復元するための制御・画像処理装置とを備える結像システムを提供する。
【0008】
本発明の一実施例によると、前記放射線発生装置で発生した放射線の検知器アレーに対する水平放射角は、90度より大きい。
【0009】
本発明の一実施例によると、前記検知器アレーは、検知器ユニットを複数含むエリアアレー検知器を備える。
【0010】
本発明の一実施例によると、前記検知器アレーは、検知器ユニットを複数含む垂直に設置されたラインアレー検知器を備える。
【0011】
本発明の一実施例によると、前記検知器アレーは、検知器ユニットを複数含む水平に設置されたラインアレー検知器を更に備える。
【0012】
本発明の一実施例によると、前記水平に設置されたラインアレー検知器は、垂直方向での位置が可変である。
【0013】
本発明の一実施例によると、前記制御・画像処理装置は、前記投影データを擬平行束走査での投影データに転換するための投影データ転換部と、予め定めた重畳積分関数核と擬平行束走査での投影データとを使用して重畳積分することで、フィルタリングされた投影データを獲得するためのフィルタ部と、フィルタリングされた投影データに対して重み付け逆投影を実行して画像を復元する逆投影部とを備える。
【0014】
本発明の一実施例によると、前記複数の検知器ユニットは、等距離に配列される。
【0015】
本発明の一実施例によると、前記投影データ転換部が、投影データp(l,t,z)を反転・シフトして擬平行束走査での投影データq(l,t,z)を獲得する。ここで、投影データp(l,t,z)は、被検査物体が相対的に直線での座標lである位置に移動したときに検知器アレーのz層目の座標位置がtである投影値を示す。前記フィルタ部は、予め定めた重畳積分関数核でl方向に沿って、擬平行束走査での投影データであるq(l,t,z)に対して一次元重畳積分を実行して、フィルタリングされた投影データであるQ(l’,t,z)を獲得し、前記逆投影部は、放射線方向に沿ってフィルタリングされた投影データであるQ(l’,t,z)に対して重み付け逆投影操作を実行することで、復元画像を獲得する。
【0016】
本発明の一実施例によると、前記複数の検知器ユニットは、放射線源に対して等角度で配列される。
【0017】
本発明の一実施例によると、前記投影データ転換部が、投影データp(l,γ,z)を逆転・シフトして擬平行束走査での投影データq(l,γ,z)を獲得する。ここで、投影データp(l,γ,z)は、被検査物体が相対的に直線での座標lである位置に移動したときに、検知器アレーのz層目の角度位置がγである投影値を示す。前記フィルタ部は、予め定めた重畳積分関数核でl方向に沿って、擬平行束走査での投影データであるq(l,γ,z)に対して一次元重畳積分を実行して、フィルタリングされた投影データであるQ(l’,γ,z)を獲得し、前記逆投影部は、放射線方向に沿ってフィルタリングされた投影データであるQ(l’,γ,z)に対して重み付け逆投影操作を実行することで、復元画像を獲得する。
【0018】
本発明の一実施例によると、前記複数の検知器ユニットは、固体検知器ユニット、気体検知器ユニット又は半導体検知器ユニットである。
【0019】
本発明の一実施例によると、前記放射線源は、X線加速器、X線機器又は放射性同位体である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の結像システムは、直線軌跡走査を採用し、直線フィルタリング逆投影アルゴリズムを使用して断層又は立体画像を復元し、立体画像を真正に実現する。本結像システムは、検査速度が早く、回転の必要がなく、円軌道錐束CT(cone-beam CT)における大錐角(large cone-angle)についての問題がないという利点がある。したがって、本発明の結像システムは、高速安全検査領域と大型物体検査領域に適用することが好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳しく説明する。
【0022】
(実施例1)
図1は本発明による結像システムにおいて直線軌跡走査を実行する平面を示した模式図である。図2は本発明の実施例1による結像システムの構成を示す模式図である。
【0023】
図1に示すように、被検査物体は、直線に沿って放射線源Aと検知器との間を移動し、当該移動過程において、放射線源Aは制御システムの命令に従って放射線を放射し、被検査物体を透過する。検知器は透過信号を受け取り、制御システムの制御によって投影データを採集し、投影データをメモリに格納する。
【0024】
図2に示した結像システムは、放射線発生部110と、移送部130と、データ採集部140と、制御・データ信号バス150と、制御・画像処理部160と、ディスプレー170とを含む。
【0025】
図2に示すように、放射線発生部110は、例えばX線加速器、X線機器又は放射性同位体などのような放射線源、及び相応する補助ディバイスを含む。放射線束の水平放射角(projection angle)を90度より大きくする、例えば90〜180度の範囲に置くためには、2つ又は2つ以上の放射線源を使用することが可能であり、被検査物体120のサイズと応用領域に応じて選択する。
【0026】
移送部130は、例えばコンベヤーベルトであり、被検査物体120を搭載し安定して移送することが可能であり、検査過程において、搭載された被検査物体120を直線に沿って移動させるために用いられる。また、移送部130は、検査過程において、放射線源と検知器とを直線に沿って移動させてもよく、更に又は、被検査物体を放射線源と検知器に対して対向して移動させてもよい。即ち、被検査物体の移動、及び放射線源と検知器の移動は、相対移動に属し、等価なものである。以下では、被検査物体が移動し、放射線源と検知器が静止状態に保たれた方式を例として述べるが、これは放射線源と検知器が移動し被検査物体が静止状態に保たれた方式と同一な意味を持っていること明確に理解されるべきである。
【0027】
データ採集部140は、主として検知器アレーを含み、被検査物体を透過した放射線を受け取ることで錐状束放射線の透過投影データを獲得するために用いられる。データ採集部140は、検知器アレーでの投影データを読み出すための読出回路と論理制御ユニットなど(図示せず)を更に含む。検知器アレーは、複数の固体検知器ユニット、複数の気体検知器ユニット又は複数の半導体検知器ユニットから構成されてもよい。各検知器ユニットは、緊密に配列する必要はないが、これらはX軸方向(即ち、被検査物体の移動方向)上に直線状に配列されるべきである。
【0028】
通常は、検知器アレーの総長さ(K)、即ち図1に示す線分BCは、検知器アレーの中心から放射線源までの距離(T)と関連し、放射線放射角(θ)が一定である場合には、距離Tが大きいほど、検知器アレーの総長さが大となり、それらの間の基本関係は、
【数1】

となる。
【0029】
なお、検知器アレーを放射線源の対向辺に置かれる必要があり、それが水平方向に放射源の放射角が90度より大きくなる、例えば90〜180度の範囲の角度であり、垂直方向に物体を覆う。これによって、有限角度でのCT復元を良好に実現できる(復元画像の品質がよい)。当該検知器アレーは、エリアアレー検知器でもよいし、単行検知器でもよい。
【0030】
データ採集過程では、サンプル間隔(Δt)が時間軸上において均一なものであることを要求し、被検査物体が均一な速度で移動することが要求される。仮に速度をvとすると、本実施例の結像システムの空間等価サンプル間隔は、
【数2】

となる。
【0031】
そして、全ての検知器ユニットが同期して採集することが要求され、一回で採集されたアレーデータが投影データの一層を構成し、複数回(一般的には数百回から略千回まで)採集された後、投影体データを構成する。制御・画像処理部において復元された立体画像はこの投影体データに基づくものであり、透過画像の表示もこれらの投影体データを基づくものである。
【0032】
透過画像を獲得するには、検知器アレーの中心列で採集された投影データだけを出力してもよい、その結像原理は従来の透視結像と同じものである。
【0033】
制御・データ信号バス150は、制御・データ信号を伝送するために用いられる。
【0034】
制御・画像処理部160は、放射線発生部110と移送部130とデータ採集部140とに制御・データ信号バス150を介して接続され、結像システムの各部に対して制御する。
【0035】
走査過程には、制御・画像処理部160が移送部130を制御して、被検査物体120を直線に沿って移動させ、放射線発生部110が放射線を発生するように命令し、データ採集部140を制御して透過信号の受信を開始し、投影データを作成し、作成した投影データに対して後続処理を行う。
【0036】
このように、被検査物体120は、図1に示す直線軌跡に従って均一な速度で移動して、データ採集部140が等時間間隔で同期してサンプリングを実行し、投影データを獲得する。
【0037】
図3は図2に示す結像システムにおける制御・画像処理部160の機能ブロック図である。図3に示すように、制御・画像処理部160は、データを格納するための、例えばハードディスクなどのような記憶媒体からなるメモリ161と、キーボードなどのようなユーザがパラメータや命令などを入力するための入力装置である入力ユニット162と、ユーザが入力ユニット162によって命令してから、移送部130に指示して被検査物体120を直線に沿って移動させることを開始し、放射線発生部110とデータ採集部140の動作を開始して、投影データを獲得するためのコントローラ163と、各部を接続し制御信号とデータを伝送する内部バス164と、データ採集部140で獲得した投影データを復元するための画像復元ユニット165とを含む。
【0038】
次に、画像復元ユニット165において画像復元を行う過程を図4を用いて詳しく述べる。図4は等価検知器とZ方向における復元物体点との間の幾何学関係を示す模式図である。
【0039】
被検査物体f(r,φ,z)のある近似推定を
【数3】

とすると、近似推定は下記の式
【数4】

となる。但し、
【数5】

【数6】

【数7】

【数8】

ここで、検知器アレーにおける検知器ユニットは等ピッチで配列されたものであり、データp(l,t,z)は、被検査物体120が直線上の座標lである位置に移動したときに、検知器アレーのz層目に座標位置がtである箇所の投影値を示す。注意すべきことは、t,zの何れも検知器アレーの各検知器ユニットを物体直線移動の中心線上に置換した数値である、ということである。
【0040】
なお、式(1)〜(4)において、Dは放射線発生部110の放射線源から直線移動中心線までの距離を示し、±tは検知器アレーのX軸方向での最小と最大位置を示し、hは重畳積分関数核(convolution function kernel)を示し、その理論値が
【数9】

であり、一般的にはS−Lフィルタ関数を採用し、当該関数の離散形式は、
【数10】

となる。
【0041】
そこで、画像復元ユニット165において、投影データ転換部1651が投影データp(l,t,z)を逆転・シフトしてq(l,t,z)を獲得する。ここでのq(l,t,z)は擬平行束走査での投影データを示す。ここでの「擬平行束走査」とは、各角度での検知器ユニットが等価でサンプル間隔が異なり、走査角度サンプルも不均一であることが可能であることを指す。
【0042】
そして、フィルタ部1652は、重畳積分関数核hでl方向に沿って、擬平行束走査での投影データであるq(l,t,z)に対して一次元重畳積分を実行して、フィルタリングされた投影データであるQ(l’,t,z)を獲得する。
【0043】
続いて、逆投影部1653は、放射線方向に沿ってフィルタリングされた投影データであるQ(l’,t,z)に対して重み付け逆投影操作を実行することで、復元画像を獲得する。
【0044】
ここで、説明しておくべきことは、逆転・シフトを実行する目的が、直線走査の投影データを、擬平行束走査での投影データに転換することにあり、ここでの擬平行束走査が標準のCT復元中の平行束ではない。これは、各々の走査角度での検知器ユニットなどによる等価サンプル間隔が異なり、角度サンプルが不均一であることも可能であるからである。
【0045】
なお、重畳積分関数核hでフィルタリングする目的としては、標準FBP復元アルゴリズム中のフィルタリングと同様であり、フィルタリングされた投影データQ(l’,t,z)を重み付け逆投影することで復元画像を獲得できる。
【0046】
したがって、本発明には、データ採集方向lに沿ってフィルタリングし、放射線方向に沿って逆投影して、平行束に再配列するアルゴリズムと比べて、本発明は有効データ毎を充分利用し、画像の解像度を向上し、且つデータカットに対する感度が再配列アルゴリズムより低くなることが出来る。
【0047】
以下において、図1,図4及び図5を参照して、前記の式(1)を導出する。導出する前に、まず、直線走査データを円軌道平行束走査に再配列する過程を述べる。
【0048】
図1に示す走査方式のように、各検知器が一つの角度走査の角度に対応し、物体f(x,y)の移動過程中では、当該角度での平行束走査に相当する。図5の投影模式図を参照する。等間隔に配列された検知器アレーに対して、直線走査データを円軌道平行束走査に再配列する再配列公式は、
【数11】

となる。ここで、
【数12】

となり、円軌道平行束走査において、走査角度がθで、回転中心からの距離がsである投影データを示す。P(l,t)とは、被検査物体が直線での座標lという位置に移動したときに、検知器アレー中の座標位置がtとなる投影値を示す。
【0049】
公式(6)を利用して、直線軌跡走査投影データを円軌道平行束走査での投影データに再配列することを実現できる。しかし、実際のシステムでは、直線の長さが無限大ではあり得ないので、再配列されたデータは、円軌道での180度の平行束走査データであることが不可能である、つまり、ここではCT復元に対してはデータは不完全なものである。
【0050】
直線走査では、lとtのサンプリングは均一なものでもよいが、円軌道平行束走査での角度θと検知器位置sに対するサンプリングの何れも不均一なものである。そこで、再配列には、角度方向と検知器方向に補間を行うことが必要であり、復元画像の解像度の低下につながる。
【0051】
次に、本発明による直線走査データを直接フィルタリング逆投影して画像を復元する過程を詳しく説明する。
【0052】
円軌道平行束走査でのフィルタリング逆投影復元公式は、
【数13】

となる。無限長の直線軌跡、等間隔検知器に対して、公式(7)を利用し、パラメータ(l,t)で(θ,s)を置換して、
【数14】

となる。ここで、
【数15】

となる。証明は以下の通り。
【数16】

但し、
【数17】

となる。
【0053】
直線軌跡走査には、p(l,t)で
【数18】

を置換する。同時に、図5の幾何学構造に基づいて、
【数19】

となる。ここで、
【数20】

であり、これは点(r,φ)及び第t検知器ユニットを経過した投影データが直線走査での空間サンプル位置にあることを示している。
【0054】
(10)を(9)に代入して、
【数21】

を利用し、
【数22】

を代入して、直ちに復元公式(8)を得る。
【0055】
公式(8)に対しては、
【数23】

を公式(8)に代入すれば、
【数24】

となる。ここで、
【数25】

である。
【0056】
実際には、直線軌跡が[−L,L]であり、検知器の総長さが[−t,t]であれば、公式(8)に従って復元する画像は精確なf(x,y)ではなく、ある程度近似したものである。これと共に、三次元の場合を考えると、被検査物体f(x,y,z)のある程度近似したものである近似推定が式(1)に示すものに表れる。
【0057】
検知器ユニットが等間隔で配列された場合での、直線軌跡走査のフィルタリング逆投影復元公式(1)及び本発明による画像復元方法の詳細な実行過程を前記のように導出する。実際には、検知器アレーにおける検知器ユニット同士は、放射線源110に関して等角度の方式に従って配列されることも可能である。検知器ユニットが等角度で配列されれば、前記の導出過程と類似して、そのフィルタリング逆投影復元公式は、
【数26】

となる。但し、
【数27】

【数28】

【数29】

となる。ここで、検知器ユニットが等角度で配列されたものであり、データp(l,γ,z)は、被検査物体が直線上の座標lという位置に移動したときに、検知器アレーのz層目の角度位置がγとなる投影値を示す。注意すべきことは、γ,zの何れも、検知器アレーを物体直線移動の中心線に転換した数値である、ということである。±γは、検知器アレーのX軸方向での最小と最大の角度を示す。
【0058】
したがって、等角度で配列された検知器ユニットの場合には、直線フィルタリング逆投影の復元過程が前記と同一である。但し、逆転・シフト操作は公式(14)に従って行われ、重畳積分の意味は等距離の場合と同じである。
【0059】
言い換えれば、投影データ転換部1651において、投影データp(l,γ,z)を逆転・シフトすることで擬平行束走査での投影データq(l,γ,z)を獲得する。但し、投影データp(l,γ,z)は、被検査物体が相対的に直線での座標lである位置に移動したときに、検知器アレーのz層目の角度位置がγである投影値を表す。
【0060】
フィルタ部1652において、予め定めた重畳積分関数核hでl方向に沿って、擬平行束走査での投影データであるq(l,γ,z)に対して一次元重畳積分を実行して、フィルタリングされた投影データであるQ(l’,γ,z)を獲得する。
【0061】
逆投影部1653において、放射線方向に沿ってフィルタリングされた投影データであるQ(l’,γ,z)に対して重み付け逆投影操作を実行することで、復元画像を獲得する。
【0062】
精確な画像復元に達するために、放射線結像システムは以下のようなシステムパラメータを精確に計量/制定できる。当該システムパラメータは、放射線源から検知器アレーまでの距離Tと、放射線源から直線移動中心までの距離Dと、移送部の直線移動速度vと、検知器アレーのサンプル間隔Δtと、検知器の物理的サイズとを含む。但し、検知器の物理的サイズは、単一検知器ユニットの物理的サイズと検知器アレーの物理的サイズなどを含む。
【0063】
本発明の実施例1による結像システムの最大の特徴としては、円又は螺旋軌道走査ではなく、直線軌跡走査である、ということである。回転が必要でなく、安全検査において被検査物体が一般的に直線で移送されるという特徴を自然に利用するので、機械的に設計が非常に簡単である。
【0064】
なお、直線移動であるので、円又は螺旋走査での加速度についての問題が存在せず、検査通関率が向上する。従来の透視結像と比べて、本システムは、物体断層画像及び/又は立体画像を獲得し、透視画像において存在する物体の重畳問題を解決することができる。
【0065】
また、実施例1による結像システムは、CT断層結像システムと立体結像システムで取得された情報を獲得することができる。
【0066】
また、実施例1による結像システムは、円軌道錐束CTにおける大錐角についての問題(中心平面からの距離の大きいほど、データの損失が酷くなる)が存在しない。これは、直線走査において各々の層の検知器で獲得された投影データの損失状況がほぼ同じであるからである。
【0067】
図7は、本発明の実施例1の結像システムが放射線水平放射角の異なる場合に獲得された模擬画像(X−Y平面)の効果の比較を示している。ここで、(A)はモデルの原始画像を、(B)は放射線水平放射角が90度である場合の、本発明の実施例1の結像システムが模擬復元した画像を、(C)は放射線水平放射角が120度である場合の、本発明の実施例1の結像システムが模擬復元した画像を、(D)は放射線水平放射角が150度である場合の、本発明の実施例1による結像システムが模擬復元した画像を、それぞれ示している。これより、放射線水平放射角の増加に伴って、復元した画像の品質が向上することが分かる。
【0068】
図8は本発明の実施例1の結像システムが復元した断層画像と透視画像の効果の比較を示している。ここで、(A)はモデルのX−Z平面中心層での画像を、(B)は本発明の実施例1の結像システムが模擬復元したX−Z平面中心層の画像を、(C)はモデルのY−Z平面中心層での画像を、(D)は本発明の実施例1の結像システムが模擬復元したY−Z平面中心層の画像を、(E)は本発明の実施例1の結像システムが模擬取得した透視画像を、それぞれ示している。
【0069】
(実施例2)
図6は本発明の実施例2の結像システムの構成を示した模式図である。
【0070】
本発明の実施例2の結像システムと実施例1の結像システムとの区別は、検知器アレーが単列なもの(単層、つまりラインアレー)である場合には、Z方向に沿って昇降可能な他の単列検知器を更に設置して、断層画像を複数獲得できるので、少ない検知器ユニットで立体結像を実現できることにある。したがって、実施例1に比し、検知器アレーにおける検知器ユニットの数が大きく低減される。
【0071】
図6に示すように、実施例2のデータ採集部における検知器アレーは、垂直と水平の2セットの単層検知器アレー(その中に含まれる検知器ユニット同士は、一般的に等距離に配列されたものであるが、等角度で配列されたものでもよい)141と142を含み、錐状束放射線の透過投影データを取得するために用いられる。実施例1と同じように、当該データ採集部は、検知器から投影データを読み出す読出回路と論理制御ユニットとをさらに含む。
【0072】
また、本発明の実施例2による結像システムにおける制御・画像処理部160に含まれるコントローラ163は、前記実施例1に記載の機能を備えることに加えて、ユーザに入力された命令に従って水平単層検知器142のZ方向での昇降を制御することができる。
【0073】
これによって、実施例2の結像システムは、実施例1の結像システムの利点を持つことに加えて、検知器ユニットの数を低減し、結像システムの構成を簡単にし、結像システムのコストを低減することができる。
【0074】
図9は、本発明の実施例2の結像システムが放射線水平放射角の異なる場合に獲得された模擬画像(X−Y平面)の効果の比較を示している。ここで、(A)はモデルの原始画像を、(B)は放射線水平放射角が90度である場合の、本発明の実施例2による結像システムが模擬復元した画像を、(C)は放射線水平放射角が120度である場合の、本発明の実施例2による結像システムが模擬復元した画像を、(D)は放射線水平放射角が150度である場合の、本発明の実施例2による結像システムが模擬復元した画像を、それぞれ示している。これより、実施例2の結像システムが実施例1と同様な結像品質を獲得できることが分かる。
【0075】
図10は本発明の実施例2の結像システムが復元した断層画像(X−Y平面)と透視画像を示している。ここで、(A)はモデルのX−Z平面中心層での画像を、(B)は本発明の実施例2の結像システムが模擬取得した透視画像を、それぞれ示している。これより、実施例2による結像システムが実施例1と同様な結像品質を獲得できることが分かる。
【0076】
これまでに述べたものは、本発明における具体的な実施の形態に過ぎない。本発明の保護範囲はこれに限定されるものではなく、当業者が本発明に示唆された技術範囲内の容易に想到可能な変換や置換も、すべて本発明の保護範囲に含まれるべきである。したがって、本発明の保護範囲は、請求項の範囲における保護範囲に準拠とすべきである。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明による結像システムにおいて直線軌跡走査を実行する平面模式図である。
【図2】本発明の実施例1による結像システムの構成模式図である。
【図3】図2に示すような結像システムにおける制御・画像処理部の機能ブロック図である。
【図4】等価検知器がZ方向で復元物体点との間の幾何学関係の模式図である。
【図5】本発明の一実施例による直線フィルタリング逆投影過程の幾何学関係を解釈するための模式図である。
【図6】本発明の実施例2による結像システムの構成模式図である。
【図7】本発明の実施例1による結像システムが放射線水平放射角の異なる場合に獲得された模擬画像(X−Y平面)の効果の比較を示す図である。
【図8】本発明の実施例1による結像システムが復元した断層画像(X−Z平面、Y−Z平面)と透視画像の効果の比較を示す図である。
【図9】本発明の実施例2による結像システムが放射線水平放射角の異なる場合に獲得された模擬画像(X−Y平面)の効果の比較を示す図である。
【図10】本発明の実施例2による結像システムが復元した断層画像(X−Y平面)と透視画像を示す図である。
【符号の説明】
【0078】
A 放射線源
110 放射線発生部
120 被検査物体
130 移送部
140 データ採集部
141、142 単層検出器アレー
150 制御・データ信号バス
160 制御・画像処理部
161 メモリ
162 入力ユニット
163 コントローラ
164 内部バス
165 画像復元ユニット
1651 投影データ転換部
1652 フィルタ部
1653 逆投影部
170 ディスプレー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの放射線源を含み、放射線を発生するための放射線発生装置と、
前記放射線源に対向して設置された検知器アレーを含み、被検査物体を透過した放射線を受け取ることで投影データを獲得するためのデータ採集装置と、
検査過程において放射線源と検知器アレーとの間にある被検査物体と、放射線源及び検知器アレーとを相対的に直線移動させるための移送装置と、
前記放射線発生装置と前記データ採集装置と移送装置とを制御し、前記投影データから被検査物体の画像を復元するための制御・画像処理装置とを備えることを特徴とする結像システム。
【請求項2】
前記放射線発生装置で発生した放射線の検知器アレーに対する水平放射角は、90度より大きいことを特徴とする請求項1に記載する結像システム。
【請求項3】
前記検知器アレーは、検知器ユニットを複数含むエリアアレー検知器を備えることを特徴とする請求項2に記載する結像システム。
【請求項4】
前記検知器アレーは、検知器ユニットを複数含む垂直に設置されたラインアレー検知器を備えることを特徴とする請求項2に記載する結像システム。
【請求項5】
前記検知器アレーは、検知器ユニットを複数含む水平に設置されたラインアレー検知器を更に備えることを特徴とする請求項4に記載する結像システム。
【請求項6】
前記水平に設置されたラインアレー検知器は、垂直方向での位置が可変であることを特徴とする請求項5に記載する結像システム。
【請求項7】
前記制御・画像処理装置は、
前記投影データを擬平行束走査での投影データに転換するための投影データ転換部と、
予め定めた重畳積分関数核と擬平行束走査での投影データとを使用して重畳積分することで、フィルタリングされた投影データを獲得するためのフィルタ部と、
フィルタリングされた投影データに対して重み付け逆投影を実行して画像を復元する逆投影部とを備えることを特徴とする請求項3〜6のいずれか一つに記載する結像システム。
【請求項8】
前記複数の検知器ユニットは、等距離に配列されたことを特徴とする請求項7に記載する結像システム。
【請求項9】
前記投影データ転換部が、投影データp(l,t,z)を逆転・シフトして擬平行束走査での投影データq(l,t,z)を獲得し、但し、投影データp(l,t,z)は、被検査物体が相対的に直線での座標lである位置に移動したときに検知器アレーのz層目の座標位置がtである投影値を示し、
前記フィルタ部は、予め定めた重畳積分関数核でl方向に沿って、擬平行束走査での投影データであるq(l,t,z)に対して一次元重畳積分を実行して、フィルタリングされた投影データであるQ(l’,t,z)を獲得し、
前記逆投影部は、放射線方向に沿ってフィルタリングされた投影データであるQ(l’,t,z)に対して重み付け逆投影操作を実行することで、復元画像を獲得することを特徴とする請求項8に記載する結像システム。
【請求項10】
前記複数の検知器ユニットは、放射線源に対して等角度で配列されることを特徴とする請求項7に記載する結像システム。
【請求項11】
前記投影データ転換部が、投影データp(l,γ,z)を逆転・シフトして擬平行束走査での投影データq(l,γ,z)を獲得し、但し、投影データp(l,γ,z)は、被検査物体が相対的に直線での座標lである位置に移動したときに、検知器アレーのz層目の角度位置がγである投影値を示し、
前記フィルタ部は、予め定めた重畳積分関数核でl方向に沿って、擬平行束走査での投影データであるq(l,γ,z)に対して一次元重畳積分を実行して、フィルタリングされた投影データであるQ(l’,γ,z)を獲得し、
前記逆投影部は、放射線方向に沿ってフィルタリングされた投影データであるQ(l’,γ,z)に対して重み付け逆投影操作を実行することで、復元画像を獲得することを特徴とする請求項10に記載する結像システム。
【請求項12】
前記複数の検知器ユニットは、固体検知器ユニット、気体検知器ユニット又は半導体検知器ユニットであることを特徴とする請求項3〜6のいずれか一つに記載する結像システム。
【請求項13】
前記放射線源は、X線加速器、X線機器又は放射性同位体であることを特徴とする請求項3〜6のいずれか一つに記載する結像システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−139764(P2007−139764A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−292859(P2006−292859)
【出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【出願人】(506162688)清華大學 (8)
【出願人】(506162677)清華同方威視技術股▲ふん▼有限公司 (4)
【Fターム(参考)】