説明

結合材

【課題】溶融スラグを多量に含むコンクリートの強度を向上させる結合材を提供する。
【解決手段】水100重量部に対して、石灰酸8〜11重量部と、スルホン酸ナトリウム8〜11重量部と、可溶性デンプン11〜17重量部と、珪酸ソーダ28〜35重量部と、塩化カルシウム23〜30重量部とを含む結合材。第1の溶液と、第2の溶液と、第3の溶液と、第4の溶液と、第5の溶液とを混合して、結合材を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は結合材に関する。詳しくは、コンクリートやモルタルといったセメントを含む練物に混入されて骨材と骨材とを結合する結合材に係るものである。
【背景技術】
【0002】
下水汚泥や都市ゴミの処理をはじめ、建設廃材等の各種廃棄物の最終処分場の確保といった種々の問題があり、そのリサイクルを含めた再資源化に関する研究が行なわれている。
また、減容化のために、下水汚泥や都市ゴミを焼却した下水汚泥焼却灰や都市ゴミ焼却灰、更には下水汚泥や都市ゴミのいっそうの減容化のため、溶融処理したスラグ(溶融スラグ)等についても、各自治体や企業は、有効利用技術の開発を行なっている。この溶融スラグは、廃棄物の減容化及び無毒化として開発されたもので、土木資材、建築資材等として有効利用でき、また、廃棄物や焼却灰を1200℃以上の高温で加熱した後、冷却粉砕されて得られる硬いガラス状の物質であるため、ダイオキシンをはじめとする有機物系は熱分解され重金属は溶融スラグの強力なガラス質結晶構造中に封じ込まれて溶出しなくなる。
【0003】
このような溶融スラグの利用方法として、コンクリートの細骨材の一部として溶融スラグ粒を配合する様々な方法が提案されている。例えば特許文献1には、廃棄物及び廃棄物焼却後の灰を還元性雰囲気で溶融することにより廃棄物中の重金属を排ガス中に揮散させ、廃棄物中の不燃物を溶融したスラグ中に溶け込む重金属の含有量を低減した後、溶融状態のスラグ中に酸化性ガスを表面に吹き付けるか、または溶融スラグ内部に吹き込むことによって重金属を酸化することにより、スラグ中に溶け込んだ微量の重金属を難溶性の物質に変え、このような方法で製造されたスラグを、コンクリート二次製品の骨材や土木資材として利用する旨が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、細骨材として、都市ゴミ、都市ゴミ焼却灰、下水汚泥焼却灰の少なくとも1種の廃棄物を溶融して製造した溶融スラグと、微粉炭の燃焼によって発生するシンダーアッシュとを用い、溶融スラグとシンダーアッシュとの混合比が30:70〜70:30であるコンクリートが記載されている。
【0005】
更に、特許文献3には、都市ゴミ焼却灰、下水汚泥焼却灰の一種以上を原料としてなる焼成物であってカルシウムクロロアルミネート、カルシウムフルオロアルミネート、カルシウムアルミネートの一種以上を10〜40重量%及びカルシウムシリケートを含む焼成物と石膏を主成分とする水硬性組成物を用い、骨材の一部または全部に廃棄物起源材料を用いたコンクリート組成物が記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開平10−296206号公報
【特許文献2】特開平10−226556号公報
【特許文献3】特開平11−246256号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、溶融スラグを骨材として含むコンクリートは、砂や砂利等を含む通常のコンクリートに比べて強度が低下するという欠点があった。溶融スラグを使用したコンクリートは、溶融スラグの使用量増加により、強度の低下が生じる傾向が認められるため、溶融スラグの使用量を増加させることが困難であった。
【0008】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであり、コンクリートに混入される結合材を改良することにより完成するに至った。即ち、本発明は、溶融スラグを多量に含むコンクリートの強度を向上させる結合材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の結合材は、コンクリートに混入される結合材であって、石灰酸と、スルホン酸ナトリウムと、可溶性デンプンとを含み、残部が水であることを特徴とする。
【0010】
ここで、石灰酸を含むことによって、コンクリートのエフロレッセンスを抑制することができる。また、スルホン酸ナトリウムを含むことによって、セメントに対する分散作用を発揮して、セメントの流動性を改善させ、また、セメントの水和活性を高める。また、可溶性デンプンを含むことによって、材料の分離抵抗性を向上させることができる。
なお、「エフロレッセンス」とは、コンクリート中の可溶性物質やコンクリート周辺に存在する可溶性物質が、水分と共に貫通したひび割れを通ってコンクリート表面に移動し、水分の散逸や空気中の炭酸ガスとの反応によって析出したものをいう。
【0011】
また、本発明の結合材において、珪酸ソーダを含む場合、コンクリート、モルタル等のセメント中のカルシウム、マグネシウム、アルミニウム、バリウム等の多価金属イオンと反応して不溶性の珪酸塩金属水和物、金属水酸化物等を形成して、コンクリート、モルタル等の内部の空隙を充填させる。
【0012】
また、本発明の結合材において、塩化カルシウムを含む場合、コンクリートの硬化時間を早めることができる。
【0013】
また、本発明の結合材において、水100重量部に対して、石灰酸8〜11重量部と、スルホン酸ナトリウム8〜11重量部と、可溶性デンプン11〜17重量部とを含んでいてもよい。
【0014】
また、本発明の結合材において、水100重量部に対して、石灰酸8〜11重量部と、スルホン酸ナトリウム8〜11重量部と、可溶性デンプン11〜17重量部と、珪酸ソーダ28〜35重量部とを含んでいてもよい。
【0015】
また、本発明の結合材において、水100重量部に対して、石灰酸8〜11重量部と、スルホン酸ナトリウム8〜11重量部と、可溶性デンプン11〜17重量部と、塩化カルシウム23〜30重量部とを含んでいてもよい。
【0016】
また、本発明の結合材において、水100重量部に対して、石灰酸8〜11重量部と、スルホン酸ナトリウム8〜11重量部と、可溶性デンプン11〜17重量部と、珪酸ソーダ28〜35重量部と、塩化カルシウム23〜30重量部とを含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る結合材は、溶融スラグを多量に含むコンクリートの強度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。
図1は、本発明を適用した結合材を製造する工程の一例を説明する概略図である。先ず、第1の溶液と、第2の溶液と、第3の溶液と、第4の溶液と、第5の溶液とを混合して、本発明の結合材を製造する。
ここで、第1の溶液は、デンプン糖水溶液と、スルホン酸ナトリウムと、水とを、4:1:8の割合で混ぜ合わせて得られる溶液である。また、第2の溶液は、デンプン糖水溶液と、水とを、2:5の割合で混ぜ合わせて得られる溶液である。また、第3の溶液は、珪酸ソーダと、石灰酸と、水とを、4:1:5の割合で混ぜ合わせて得られる溶液である。また、第4の溶液は、珪酸ソーダと、スルホン酸ナトリウムと、石灰酸と、水とを、5:1:1:13の割合で混ぜ合わせて得られる溶液である。また、第5の溶液は、塩化カルシウムと、スルホン酸ナトリウムと、石灰酸と、水とを、11:2:1:6の割合で混ぜ合わせて得られる溶液である。
次に、このようにして得られた第1の溶液〜第5の溶液を混ぜ合わせて、水100重量部に対して、石灰酸が8〜11重量部と、スルホン酸ナトリウムが8〜11重量部と、可溶性デンプンが11〜17重量部と、珪酸ソーダが28〜35重量部と、塩化カルシウムが23〜30重量部となるように調整して、結合材を得る。
【0019】
ここで、各溶液中の成分比率や、結合材中の各成分の重量比率が記載されているが、得られる結合材が、石灰酸と、スルホン酸ナトリウムと、可溶性デンプンとを含み、残部が水であれば、どのような比率でもよい。
【0020】
本発明の結合材を用いて、基層部及び表層部からなる二層構造の透水性コンクリートを製造した。基層部及び表層部それぞれの配合材料を以下に示す。
【0021】
【表1】

【0022】
【表2】

【0023】
表1及び表2に示した結合材は、本発明を適用した結合材であり、水100重量部に対して、石灰酸10重量部と、スルホン酸ナトリウム10重量部と、可溶性デンプン15重量部と、珪酸ソーダ30重量部と、塩化カルシウム25重量部とを含むものである。
また、表1に示した配合材料を0スランプで混練りしたものを縦30cm×横30cm×厚さ5.5cmに均等に敷き均して基層部と成し、基層部の上に、表2に示した配合材料を0スランプで混練りしたものを縦30cm×横30cm×厚さ4.5cmに均等に敷き均して表層部と成し、これらを振動プレートで均一に転圧して基層部と表層部の合計厚さ7cmの二層構造からなる透水性コンクリートブロックを5個製造した(実施例)。
【0024】
一方、結合材として、エポキシ樹脂とアクリル樹脂のみからなるものを使用した以外は、表1及び表2に示された配合材料と同じ材料及び同じ配合率で、本発明を適用した結合材を含む透水性コンクリートブロックと同じサイズの二層構造の透水性コンクリートブロックを5個製造した(比較例)。
【0025】
<曲げ強度試験>
このようにして製造された透水性コンクリートブロックそれぞれについて、曲げ強度試験を実施した。図2は、曲げ強度試験の状況の一例を説明する概略図である。即ち、図2に示すように、曲げ強度試験において、透水性コンクリートブロック1の一端を上部クランプ2と下部クランプ3とで挟み、透水性コンクリートブロック1の他端に、加圧方向4から力を加えて、透水性コンクリートブロック1が破壊される力を測定した。結果を表3に示す。
【0026】
<衝撃試験>
また、このようにして製造された透水性コンクリートブロックそれぞれについて、衝撃試験を実施した。即ち、衝撃試験機に配置された透水性コンクリートブロックの、互いに垂直に交差するA面(30×30cm)とB面(30×7cm)に向けて、これら各面から約1m上方へ離れた位置から、重さ約2kgの分銅を落下させ、各面に破壊が生じたときの強度を測定した。結果を表3に示す。なお、表中、衝撃強度の単位は「kg/cm」である。
【0027】
【表3】

【0028】
表3から明らかなように、本発明を適用した結合材を含む透水性コンクリートブロックは、従来のエポキシ樹脂とアクリル樹脂のみからなる結合材を含む透水性コンクリートブロックに比べて、曲げ強度において21%も向上しており、また、衝撃強度において12%も向上しており、いずれにおいても高い値を示した。
【0029】
ここで、結合材として、水100重量部に対して、石灰酸10重量部と、スルホン酸ナトリウム10重量部と、可溶性デンプン15重量部と、珪酸ソーダ30重量部と、塩化カルシウム25重量部とを含むものを記載しているが、結合材が石灰酸と、スルホン酸ナトリウムと、可溶性デンプンとを含み、残部が水であれば、必ずしも珪酸ソーダと塩化カルシウムを含まなくてもよい。
【0030】
このように、本発明の結合材は、石灰酸と、スルホン酸ナトリウムと、可溶性デンプンとを含み、残部が水であるから、コンクリートのエフロレッセンスを抑制することができ、また、セメントに対する分散作用を発揮して、セメントの流動性を改善させ、セメントの水和活性を高めることができ、また、材料の分離抵抗性を向上させることができるため、約40%もの多量の溶融スラグを含むコンクリートの強度を向上させることができる。
また、本発明の結合材は、コンクリートの強度を低下させずにむしろ向上させて、多量の溶融スラグを利用できるので、循環型社会システムに最適なものである。
【0031】
また、本発明の結合材は、珪酸ソーダを含むので、コンクリート、モルタル等のセメント中のカルシウム、マグネシウム、アルミニウム、バリウム等の多価金属イオンと反応して不溶性の珪酸塩金属水和物、金属水酸化物等を形成して、コンクリート、モルタル等の内部の空隙を充填させ、よって約40%もの多量の溶融スラグを含むコンクリートの強度を向上させることができる。
【0032】
また、本発明の結合材は、塩化カルシウムを含むので、コンクリートの硬化時間を早めることができ、コンクリート製品の生産率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明を適用した結合材を製造する工程の一例を説明する概略図である。
【図2】曲げ強度試験の状況の一例を説明する概略図である。
【符号の説明】
【0034】
1 透水性コンクリートブロック
2 上部クランプ
3 下部クランプ
4 加圧方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントを含む練物に混入される結合材であって、
石灰酸と、
スルホン酸ナトリウムと、
可溶性デンプンとを含み、
残部が水である
ことを特徴とする結合材。
【請求項2】
珪酸ソーダを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の結合材。
【請求項3】
塩化カルシウムを含む
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の結合材。
【請求項4】
水100重量部に対して、石灰酸8〜11重量部と、スルホン酸ナトリウム8〜11重量部と、可溶性デンプン11〜17重量部とを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の結合材。
【請求項5】
水100重量部に対して、石灰酸8〜11重量部と、スルホン酸ナトリウム8〜11重量部と、可溶性デンプン11〜17重量部と、珪酸ソーダ28〜35重量部とを含む
ことを特徴とする請求項2に記載の結合材。
【請求項6】
水100重量部に対して、石灰酸8〜11重量部と、スルホン酸ナトリウム8〜11重量部と、可溶性デンプン11〜17重量部と、塩化カルシウム23〜30重量部とを含む
ことを特徴とする請求項3に記載の結合材。
【請求項7】
水100重量部に対して、石灰酸8〜11重量部と、スルホン酸ナトリウム8〜11重量部と、可溶性デンプン11〜17重量部と、珪酸ソーダ28〜35重量部と、塩化カルシウム23〜30重量部とを含む
ことを特徴とする請求項3に記載の結合材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−195578(P2008−195578A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−33876(P2007−33876)
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【特許番号】特許第4058488号(P4058488)
【特許公報発行日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(507379625)
【Fターム(参考)】