説明

結晶セルロース複合化物

【課題】乳飲料用の安定剤として高い機能を有すること、味に影響せず、食感を損なわないこと、長期間保存した場合に、オイルオフ、オイルリング等の発生を抑制すること、及び低添加量で効果があることを満たすセルロース系安定剤と、それを含む飲料を提供すること。
【解決手段】結晶セルロースを50〜95質量%、アルギン酸プロピレングリコールエステル及びカルボキシメチルセルロース・ナトリウムを合計5〜50質量%を含む結晶セルロース複合化物であって、該結晶セルロース複合化物を固形分1質量%の水分散液としたときの貯蔵弾性率が0.1Pa以上であることを特徴とする結晶セルロース複合化物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶セルロース、アルギン酸プロピレングリコールエステル及びカルボキシメチルセルロース・ナトリウムを含む結晶セルロース複合化物に関するものである。この結晶セルロース複合化物は、従来にない、低添加量で乳飲料のオイルオフ、オイルリング、沈殿、凝集等を抑制できるものである。
【背景技術】
【0002】
乳成分を含有した飲料としては、ミルクコーヒー、ミルク紅茶などが知られている。しかし、その飲料を長期間保存したり、加熱したりすると、乳成分中の脂肪同士が合一し、乳化状態が破壊されて乳蛋白が凝集し、容器底部に沈殿する。また、乳化状態が破壊されると脂肪が油滴となって飲料表面に浮上するオイルオフと呼ばれる現象が起こる。さらに、浮上した脂肪が容器内壁にリング状に固着したオイルリングと呼ばれる現象も起こる。これらの現象により、外観の悪化、味質の低下を招くことが問題であった。特に近年は、ピークカット自動販売機の普及が増え、缶容器に付着するオイルオフ、オイルリング等の問題が急増している。このような問題点を解消するべく、従来からセルロース系素材や乳化剤を使用した乳飲料の開発がされてきた。
【0003】
特許文献1には乳製品を加えたコーヒー抽出液に乳化剤と微結晶セルロースを添加したコーヒー飲料の製造方法が開示されている。
特許文献2には、乳化剤とセルロース複合化物を含有した乳成分入りコーヒー飲料が開示されている。
特許文献1、2では、充分な効果を得るために、多量の微結晶セルロース複合化物と乳化剤を飲料に添加する必要があった。それによって、コストが過大となったり、飲料の粘度が増加して舌触りに影響を与えるという問題がある。
特許文献3には、微細な繊維状セルロースを配合した乳飲料が開示されている。しかし、飲料に微細な繊維状セルロースを添加する際に、予め機械的せん断力を与えて繊維状セルロースを分散させなければならない問題がある。
【0004】
特許文献4には、乳飲料に発酵セルロース複合化物を少量配合することで、オイルオフや、沈殿の防止に効果があることが記載されている。しかしながら、発酵セルロースを得る製造プロセス自体が複雑であり、且つ困難であるので、実用的でない。
特許文献5には、微結晶セルロース及びヒドロコロイドからなる組成物であって、約10ミクロンより小さい平均粒子径をもつ組成物が開示されている。ヒドロコロイドの一例として、ポリプロピレングリコールアルギネートが開示されている。また、微結晶セルロースとヒドロコロイドを磨砕する際に、抗スリップ剤を共存させることにより、平均粒子径が小さい組成物を製造する方法が記載されている。しかし、特許文献5に記載の組成物は、平均粒子径が小さく、ココア等の懸濁性、ヨーグルト等の安定性は優れているが、乳飲料のオイルオフ、オイルリングを抑制し、乳脂肪を安定化するには不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−245703号公報
【特許文献2】特開平6−335348号公報
【特許文献3】特開2004−305005号公報
【特許文献4】特開2007−330256号公報
【特許文献5】特表2006−508195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、従来の技術では、オイルオフやオイルリングを解消するには多量のセルロース系安定剤を添加する必要があり、飲料が増粘し、食感に悪影響を及ぼすという問題があった。加えて、多量の添加が必要なので、コストがかかっていた。
本発明の課題は、乳飲料用の安定剤として高い機能を有する結晶セルロース複合化物を提供することである。具体的には、低添加量で、乳飲料のオイルオフやオイルリング等の発生を抑制でき、しかも味に影響せず、食感を損なわないセルロース複合化物と、それを含む飲料を提供することが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題に対して鋭意検討を重ねた結果、本発明の結晶セルロース複合化物を見出し、それを乳飲料に含有させることで、オイルオフ、オイルリング等の発生を顕著に抑制できることを見出して本発明をなすに至った。
すなわち、本発明は、以下のものである。
(1)結晶セルロースを50〜95質量%、アルギン酸プロピレングリコールエステル及びカルボキシメチルセルロース・ナトリウムを合計5〜50質量%を含む結晶セルロース複合化物であって、該結晶セルロース複合化物を固形分1質量%の水分散液としたときの貯蔵弾性率が0.1Pa以上であることを特徴とする結晶セルロース複合化物。
(2)アルギン酸プロピレングリコールエステルとカルボキシメチルセルロース・ナトリウムの質量比が1/9から9/1であることを特徴とする上記(1)記載の結晶セルロース複合化物。
(3)結晶セルロース複合化物が、さらに乳化剤を含むことを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の結晶セルロース複合化物。
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の結晶セルロース複合化物を含むことを特徴とする乳飲料。
(5)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の結晶セルロース複合化物と、さらに乳化剤及び/またはカゼイン・ナトリウムを含むことを特徴とする乳飲料。
【発明の効果】
【0008】
本発明の結晶セルロース複合化物は、従来に比べ、オイルオフ、オイルリング等の抑制効果が高いため、極少量の添加量で効果を得ることができる。従って、本発明の結晶セルロース複合化物を少量、乳飲料に添加することにより、長期間保存した場合においてもオイルオフ等の発生を抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本発明の結晶セルロース複合化物とは、少なくとも結晶セルロースと、アルギン酸プロピレングリコールエステルと、カルボキシメチルセルロース・ナトリウムが、一定の割合で化学結合をして複合化しているものである。
本発明において、「結晶セルロース」とは、木材パルプ、精製リンター、再生セルロース、穀物又は果実由来の食物繊維、バクテリアセルロース等のセルロース系素材を、酸加水分解、アルカリ酸化分解、酵素分解、スチームエクスプロージョン分解、亜臨界水又は超臨界水による加水分解等により、或いはそれらの組み合わせにより、解重合処理して平均重合度30〜375としたものを洗浄、濾過して得られたセルロースのことである。
【0010】
本発明において、「アルギン酸プロピレングリコールエステル」とは、アルギン酸中のカルボキシル基に、プロピレンオキシドがエステル化されたものである。そのエステル化度は特に制限はないが、50%以上が好ましい。より好ましくは、70%以上、さらに好ましくは、75%以上である。粘度も特に制限はないが、固形分1%の水溶液で、300mPa・s以下が好ましい。より好ましくは、100mPa・s以下であり、さらに好ましくは、70mPa・s以下である。
本発明において、「カルボキシメチルセルロース・ナトリウム」とは、セルロースの水酸基がモノクロロ酢酸で、一部置換されたものである。カルボキシメチル基の置換度(エーテル化度)に関しては、乳飲料におけるオイルリング等の抑制効果の点から、0.50〜1.50であることが好ましい。より好ましくは0.50〜1.00であり、さらに好ましくは、0.70〜0.90である。粘度(固形分2%の水溶液として)に関しては、良好な喉越しの点から、300mPa・s以下が好ましい。より好ましくは100mPa・s以下であり、さらに好ましくは50mPa・s以下であり、特に好ましくは10mPa・s以下である。
【0011】
上述の粘度は以下の方法で測定できる。
アルギン酸プロピレングリコールエステル又はカルボキシメチルセルロース・ナトリウムを、純水に溶解する(例えば、粉末の場合は、水分散液の全量を300mLにし、ホモジナイザー(NIHON SEIKI KAISYA製 エクセルオートホモジナイザーED−7型)を用いて、15000rpmで、溶解するまで分散させる。)。その後、1時間、25℃で恒温した後、B型粘時計(TOKI SANGYO製 VISCOMETER TV−10型)を用いて計測する。ロータータイプは粘度に応じて選択し、水溶液にセットする。セット後30秒間静置した後、60rpmで、30秒間ローターを回転させた際に、粘度が測定される。
【0012】
本発明の結晶セルロース複合化物は、結晶セルロースを50〜95質量%含み、アルギン酸プロピレングリコールエステル及びカルボキシメチルセルロース・ナトリウムを合計5〜50質量%含む。結晶セルロースが50質量%以上であれば、乳飲料中の結晶セルロースの量が十分であり、オイルオフ等が抑制される。また、結晶セルロースが95質量%以下であれば、結晶セルロースに対してアルギン酸プロピレングリコールエステル及びカルボキシメチルセルロース・ナトリウムの量が十分であり、結晶セルロース複合化物を乾燥及び粉体化しても、結晶セルロース同士の角質化を防止できる。角質化した結晶セルロースは、それを水中で分散させたとしても分散しにくく、微細な結晶セルロース粒子数が不十分となる。その場合、分散液において結晶セルロースの網目構造が形成され難く、オイルオフ等を防止できない。結晶セルロースの含有量は、より好ましくは55〜90質量%であり、さらに好ましくは、60〜90質量%である。
【0013】
本発明において、結晶セルロース自体は親油性がないが、アルギン酸プロピレングリコールエステルと複合化することで、結晶セルロース表面に親油性が付与される。親油性が付与されることにより、脂肪が合一することを抑制でき、分散状態を保つことができる。
また、結晶セルロースがカルボキシメチルセルロース・ナトリウムと複合化することによって、結晶セルロース表面の電位が強化されて、結晶セルロース複合化物間の静電反発力が生じ、結晶セルロース複合化物を分散させた場合に、安定な懸濁状態となる。
前記の親油性と、懸濁安定性を共に兼ね備えた結晶セルロース複合化物は、オイルオフ、オイルリング等の抑制効果が高い。親油性と懸濁安定性をバランス良く得るには、アルギン酸プロピレングリコールエステルとカルボキシメチルセルロース・ナトリウムの質量比を、1/9〜9/1とすることが好ましい。より好ましくは、2/8〜8/2、さらに好ましくは、4/6〜6/4である。
【0014】
結晶セルロース複合化物は、乳化剤を含むことが好ましい。本発明において、「乳化剤」とは、親水基と疎水基を併せ持つ両親媒性化合物のことである。その化学構造は特に制限されるものではないが、例えば以下の化合物が挙げられる。
ショ糖脂肪酸エステル、ショ糖イソ酪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等の糖脂肪酸エステル類、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、グリセリン酢酸エステル等のグリセリン脂肪酸エステル類、ステアロイル乳酸カルシウム、オキシエチレン高級脂肪族アルコール、オレイン酸ナトリウム、モルホリン脂肪酸塩、ポリオキシエチレン高級脂肪族アルコール等の特殊用途用界面活性剤類を用いることができる。これらは、二種以上を併用することも可能である。
特に、上述の乳化剤のなかでも、ショ糖脂肪酸エステルを用いることが好ましい。本発明において、「ショ糖脂肪酸エステル」は、ショ糖の水酸基と脂肪酸が脱水縮合しエステル化した化合物のことである。このショ糖脂肪酸エステルは、親水性と疎水性のバランスを示すHLB(Hydrophile−Lipophile Balance)が10以下のものを用いると、結晶セルロースと乳化剤が複合化しやすく、オイルオフ、オイルリング抑制の効果が高くなるため好ましい。より好ましくは、HLBは5以下であり、さらに好ましくは4以下である。
【0015】
結晶セルロース複合化物には、上述の乳化剤を0.1質量%以上配合することが好ましい。より好ましくは、1質量%以上であり、さらに好ましくは2質量%以上であり、特に好ましくは、3質量%以上である。乳化剤の添加量が多すぎると、結晶セルロース複合化物を乳飲料に用いた場合に、乳成分との凝集が生じるため、上限は、10質量%以下が好ましい。より好ましくは、5質量%以下である。
また、結晶セルロース複合化物は、発明の効果を失わない程度に親水性物質を加えてよい。親水性物質とは、冷水への溶解性が高く、粘性を殆どもたらさず、常温で固体の物質である。具体的には、デキストリン類、水溶性糖類(ブドウ糖、果糖、蔗糖、乳糖、異性化糖、キシロース、トレハロース、カップリングシュガー、パラチノース、ソルボース、還元澱粉糖化飴、マルトース、ラクツロース、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖等)、糖アルコール類(キシリトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール等)等が挙げられる。親水性物質としては、これらより選ばれる1種又は2種以上の物質を用いてもよい。最も好ましい親水性物質はデキストリンである。
さらに、結晶セルロース複合化物は、本発明の目的を損なわない範囲で、各種目的に応じて任意の添加剤を含むことができる。添加剤の具体例としては、甘味剤、乳化剤、単糖類、多糖類、オリゴ糖類、糖アルコール類、デンプン類、可溶性デンプン、デンプン加水分解物、油脂類、蛋白質類、食塩、各種リン酸塩類等の塩類、増粘剤、安定剤、ゲル化剤、酸味料、保存料、殺菌料、参加防止剤、防かび剤、日持ち向上剤、香料、色素等を挙げることができる。
【0016】
本発明の結晶セルロース複合化物は、固形分1質量%の水分散液における貯蔵弾性率が0.1Pa以上である。この貯蔵弾性率が高い程、結晶セルロースとアルギン酸プロピレングリコールエステル及びカルボキシメチルセルロース・ナトリウムの複合化が進み、本発明の効果が大きくなるため好ましい。好ましくは、0.3Pa以上であり、より好ましくは0.7Pa以上であり、さらに好ましくは1.0Pa以上である。貯蔵弾性率の上限は、特に設定されるものではないが、現実的な範囲としては5.0Pa以下である。
上述の貯蔵弾性率は、以下の方法で測定されるものである。
【0017】
<貯蔵弾性率>
(1)固形分1質量%の水分散液となるように結晶セルロース複合化物と純水を量り取り、エースホモジナイザー((株)日本精機製作所、ED−7型)にて、15000rpmで5分間分散する。
(2)25℃の雰囲気中に3日間静置する。
(3)動的粘弾性測定装置に、サンプル液を入れてから5分間静置後、下記の条件で測定し、貯蔵弾性率(G’)を求める。
装置:ARES(100FRTN1型)
(Rheometric Scientific,Inc.製)
ジオメトリー:Double Wall Couette
温度:25℃
歪み:5%(固定)周波数:0.1→100rad/s
貯蔵弾性率は、上記の方法において、周波数0.1→100rad/sで掃引された周波数−貯蔵弾性率の曲線において、周波数20rad/sにおいて示される値のことである。
【0018】
結晶セルロース複合化物の水分散時における平均粒径の範囲は1〜20μmが好ましい。粒径が前述の範囲ならば、結晶セルロース複合化物が添加された乳飲料を飲む際に、口腔内でざらつきを感じにくく、食感が優れるため好ましい。より好ましくは3〜10μmである。さらに好ましくは3〜8.5μmである。特に好ましくは3〜8.0μmである。
【0019】
ここでいう結晶セルロース複合化物の平均粒径とは、以下の方法で測定した粒径のことである。
結晶セルロース複合化物を1質量%で純水に希釈し、全量300mLの水分散液をつくる。それを、ホモジナイザー(NIHON SEIKI KAISYA製 エクセルオートホモジナイザーED−7型)に導入し、15000rpmで、5分間分散する。これを、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所製 LA−910型)に導入し、超音波で1分間処理し、相対屈折率1.20で得られる積算体積50%の平均粒径として測定されるものである。
また、結晶セルロース複合化物の水分散時における微粒子成分量としては、20%以上が好ましい。微粒子成分とは、1μm以下の粒子のことであり、微粒子成分が前記の範囲を満たすことで、本発明の結晶セルロース複合化物を含む乳飲料を保存する際に、沈殿が発生しにくいため好ましい。より好ましくは30質量%以上である。さらに好ましくは35質量%以上である。特に好ましくは、40質量%以上である。上限は、99質量%である。
【0020】
ここでいう微粒子成分量は、以下の方法で測定できる。
本発明の結晶セルロース複合化物を、1質量%として純水で希釈し水分散体を全量300mLにし、ホモジナイザー(NIHON SEIKI KAISYA製 エクセルオートホモジナイザーED−7型)に導入し、15000rpmで、5分間分散した水分散液を作る。これを、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所製 LA−910型)に導入し、超音波で1分間処理し、相対屈折率1.04で得られる1μm以下の成分含量として測定されるものである。
【0021】
次に、結晶セルロース複合化物の製造方法を説明する。
結晶セルロース複合化物の製造方法としては、例えば結晶セルロースとアルギン酸プロピレングリコールエステルとカルボキシメチルセルロース・ナトリウムを含む混合物を混練機等を用いて混練する方法等が挙げられる。この際に、必要に応じて、乳化剤、親水性物質、添加剤を添加しておくことも可能である。また、親水性物質と添加剤の添加に関しては、混練前に予め親水性物質と添加剤を混ぜ合わせてから添加してもよいし、添加剤を添加して混練後、親水性物質をさらに加えて混ぜ合わせてもよい。
混練機は、ニーダー、エクストルーダー、プラネタリーミキサー、ライカイ機等を用いることができ、連続式でもバッチ式でもよく、二種以上を組み合わせてもよい。混練時の温度は成り行きでもよいが、混練の際の摩擦等により発熱する場合には、除熱しながら混練してもよい。
【0022】
混練工程において加水するタイミングとしては、混練工程の前に必要量を加水してもよいし、混練工程の途中で加水してもよいし、両方実施しても良い。ただし、混練物の粘性が高い半固形状態で混練することが好ましく、混練時の固形分は10質量%以上とすることが好ましい。この範囲で混練を制御することで、混練物がシャバシャバな状態にならず、下記に述べる混練エネルギーが混練物に伝わりやすくなり、複合化が促進されるため好ましい。混練時の固形分は、より好ましくは20質量%以上であり、さらに好ましくは30質量%以上であり、特に好ましくは40質量%以上である。上限は特に限定されないが、混練物が水分量の少ないパサパサな状態にならず、充分な混練効果と均一な混練状態が得られることを考慮して、現実的範囲は90質量%以下が好ましい。より好ましくは60質量%以下であり、さらに好ましくは55質量%以下である。
【0023】
ここで、上記した混練エネルギーについて説明する。混練エネルギーとは混練物の単位質量当たりの電力量(Wh/kg)で定義するものである。混練エネルギーは、50Wh/kg以上とすることが好ましい。より好ましくは80Wh/kg以上であり、さらに好ましくは100Wh/kg以上である。混練エネルギーが50Wh/kg以上であれば、混練物に与える磨砕性が高く、結晶セルロースとアルギン酸プロピレングリコールエステル及びカルボキシメチルセルロース・ナトリウムの複合化が進み、オイルオフ、オイルリング等の抑制効果が発揮されるため好ましい。
複合化の程度は、結晶セルロースとその他の成分の水素結合の割合と考えられる。複合化が進むと、水素結合の割合が高くなり本発明の効果が向上する。また、上記したが、複合化が進むことで、結晶セルロース複合化物の貯蔵弾性率(G’)が高くなる。混練エネルギーが高い程、磨砕性が高まると考えられるが、混練エネルギーをあまり高くすると工業的に過大な設備になるのでコストの点から好ましくない。この観点から、混練エネルギーの上限は1000Wh/kgである。
【0024】
結晶セルロース複合化物を得るにあたって、前述の混練工程より得られた混練物を乾燥する場合は、棚段式乾燥、噴霧乾燥、ベルト乾燥、流動床乾燥、凍結乾燥、マイクロウェーブ乾燥等の公知の乾燥方法を用いることができる。混練物を乾燥工程に供する場合には、混練物に水を添加せず、混練工程の固形分濃度を維持して、乾燥工程に供することが好ましい。乾燥後の結晶セルロース複合化物の含水率は1〜20質量%が好ましい。
結晶セルロース複合化物を市場に流通させる場合は、粉体の方が取り扱いやすいので、乾燥により得られた結晶セルロース複合化物を粉砕処理して粉体状にすることが好ましい。但し、上述の乾燥方法で噴霧乾燥を選択した場合は、粉砕の必要はない。乾燥した結晶セルロース複合化物を粉砕する場合、カッターミル、ハンマーミル、ピンミル、ジェットミル等の公知の方法を用いることができる。粉砕する程度は、粉砕処理したものが目開き1mmの篩いを全通する程度に粉砕する。より好ましくは、目開き425μmの篩いを全通し、かつ、平均粒度としては10〜250μmとなるように粉砕する。
【0025】
結晶セルロース複合化物は、種々の用途に応じて、粉末状(粉末同士を混合したもの)、液体状、固体状、ゲル状又はペースト状等、どのような形態でも使用することができる。
結晶セルロース複合化物の用途としては、飲料、食品用、工業用洗浄剤、工業用処理剤原料、家庭用(衣料、台所、住居、食器等)洗剤原料、香粧品原料、医薬品用、乳化(重合)用、農薬用、繊維加工用(精錬剤、染色助剤、柔軟剤、撥水剤)、防汚加工剤、コンクリート用混和剤、印刷インキ用、潤滑油用、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、分散剤、脱墨剤等を挙げることができる。
【0026】
本発明の結晶セルロース複合化物は、特に乳成分を含む飲料及び食品に好適である。
乳成分を含む飲料(乳飲料)の具体例としては、加工乳、発酵乳飲料、酸性乳飲料、ミルク入りコーヒー、ミルク入り茶類(紅茶、抹茶、緑茶、麦茶、ウーロン茶等)、ミルク入りココア、ミルク入りジュース類(果汁入り飲料、野菜汁入り飲料等)、栄養バランス飲料、流動食、豆乳等が挙げられる。
乳成分を含む食品の具体例としては、ヨーグルト、ソフトクリームミックス液、カレー、スープ類(ポタージュ、クラムチャウダー、カレー、ラーメン等)、クリームシチュー等も、たれ類(焼肉、しゃぶしゃぶ等)、ソース類(とんかつ、トマト、マヨネーズ、ケチャップ等)、ドレッシング類(ごまドレッシング、タルタルソース等)等が挙げられる。
ここで、乳成分としては、液状乳類(生乳、牛乳等)、粉乳類(全粉乳、脱脂粉乳等)、練乳類(無糖練乳、加糖練乳等)、クリーム類(クリーム、ホイップクリーム等)、発酵乳等が挙げられる。乳成分の配合量は、無脂乳固形分として0.1〜12%、乳脂肪分として0.01〜6%である。配合量は目的に応じて適宜選択される。
【0027】
本発明の結晶セルロース複合化物を乳飲料に使用する場合、乳飲料全体に対する配合量は、0.001〜3質量%が好ましい。より好ましくは0.02〜0.5質量%であり、最も好ましくは0.02〜0.1質量%である。配合量が0.001質量%以上であれば、オイルオフ防止等の効果が発揮される。また、配合量が3質量%以下であれば乳飲料の粘度が上がることはなく、乳飲料本来の食感が損なわれることもない。
また、本発明の結晶セルロース複合化物を乳飲料に配合する場合、さらに乳化剤及び/又はカゼイン・ナトリウムを併用することが好ましい。
カゼイン・ナトリウムは、リンタンパク質の一種で、牛乳に酸類を加え、沈殿させて得られるもののナトリウム塩である。カゼイン・ナトリウムを添加することで、オイルオフやオイルリング等の抑制効果が向上する。カゼインの種類は特に限定されないが、α−カゼイン、β−カゼイン、κ−カゼイン、γ−カゼインのいずれか又は二種以上の混合物を用いることができる。上記のうち、κ−カゼインが好ましい。また、カゼイン・ナトリウムの乳飲料への添加量は、1ppm以上が好ましく、3ppm以上がさらに好ましく、5ppm以上が特に好ましい。上限は30質量%です。
【0028】
本発明の結晶セルロース複合化物は、上記した乳飲料のなかでも、ミルクコーヒー、ミルクティー、ココア(以下、ミルクコーヒー等という)に最も好適である。ミルクコーヒー等は弱酸性飲料であり、賞味期限も長く、また高温販売(いわゆるホットベンダー販売)される機会が多いく、他の乳飲料に比べてより不安定化する傾向が強い。そのため、比較的低添加量であっても、オイルオフ等を効果的に抑制できる本願発明の結晶セルロース複合化物が好適に用いられる。
乳成分の中でも、ミルクコーヒー等に好適に使用される乳成分としては、生乳、生クリーム、バター、加糖煉乳、脱脂加糖煉乳、濃縮乳、脱脂濃縮乳、脱脂粉乳、全脂粉乳、チーズ、乳等を主原料とする食品等が挙げられる。
生乳、生クリーム、全脂粉乳、濃縮乳、加糖練乳等乳脂肪を含む製品は、より不安定になる傾向が強いので、本発明に好適である。
【0029】
次に、ミルクコーヒーについて、詳細に説明する。
ミルクコーヒーに使用されるコーヒー原液は、コーヒー生豆(なままめ、きまめ、生のコーヒー豆のこと)から熱水又は水で抽出されるものを使用することが好ましい。コーヒー生豆は、コーヒーノキ属の植物のうち、アラビカ種 (Coffea arabic)とロブスタ種 (カネフォーラ種、 C. canephora)等の産業的に栽培されているものを用いることができる。
ここで、コーヒー生豆とは、コーヒー豆の精製と呼ばれる加工作業を行われ、精製されたものである。生豆は、コーヒー独特の香味を生み出すために焙煎され、場合によっては複数の焙煎豆を混ぜてブレンドされる。その後、粉砕により細かい粉状にされてから、水や湯で抽出されて、飲用に供されるコーヒーが出来上がる。
【0030】
特に、熱水または冷水で抽出されたコーヒー濃度として、後述するBrixが1.0以上のものを使用することが好ましい。ここでいうコーヒー濃度とは、乳成分、他の添加剤、水等を加え、最終的に飲食する形態でのものであり、抽出後のコーヒー原液で測定される値から、配合組成で算出されるものである。コーヒー濃度が高いほど、コーヒーの風味は優れるが、オイルオフ、オイルリングが発生しやすくなるが、本発明の結晶セルロース複合化物は、コーヒーの風味を維持しつつ、オイルオフ、オイルリング等を抑制できる効果を発揮する。より好ましくは、Brixは1.5以上であり、さらに好ましくは2.0以上である。
上述のBrixとは、以下の方法で測定することができる。熱水または、冷水で、抽出されたコーヒー原液を、20℃に恒温し、糖度計(アタゴ製 ポケット糖度計PAL−1型)により、ショ糖換算の糖度として測定される。
【0031】
乳飲料に添加できるその他の成分としては、以下のものが挙げられる。
甘味料、香料、色素、酸味料、香辛料、乳化剤(グリセリン脂肪酸エステル・モノグリセリド、グリセリン脂肪酸エステル・有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン酸脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、リゾレシチン、ステアロイル乳酸カルシウム等である。脂肪酸エステルを構成する脂肪酸は炭素数6〜22の飽和又は不飽和の脂肪酸であり、例えばカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エルカ酸などである。有機酸モノグリセリドの有機酸は酢酸、乳酸、クエン酸、コハク酸、ジアセチル酒石酸などである。)、カゼイン・ナトリウム、増粘安定剤(κカラギーナン、ιカラギーナン、λカラギーナン、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム、ローカストビーンガム、グアーガム、タラガム、ペクチン等)、結晶セルロース、食物繊維(難消化性デキストリン、ポリデキストロース、酵素分解グアーガム、水溶性大豆多糖類等)、栄養強化剤(ビタミン、カルシウム等)、フレーバー素材(コーヒー粉末、ミルクフレーバー、ブランデー等)、食品素材(果肉、果汁、野菜、野菜汁、デンプン、穀類、豆類、ハチミツ、植物性油脂、動物性油脂等)、調味料(みそ、しょうゆ、塩、グルタミン酸ナトリウム等)等が挙げられる。
【0032】
乳飲料の製造方法としては、公知の方法を用いることができる。一例を挙げれば、コーヒーを抽出した液に乳やクリームなどの原料、温水を加えて攪拌・溶解(分散)し、これに本実施形態の結晶セルロース複合化物を加え、均質化後、容器に充填して製造される。殺菌は製品の原料、商品形態(缶、ビン、PETボトル、紙パック、カップ、等)、希望する保存条件(チルド、常温、加温、等)や賞味期限に応じて、HTST殺菌、ホットパック殺菌、レトルト殺菌などの方法を適宜選択して実施される。
乳飲料の包装形態としては、缶、瓶、ボトル缶、ペット容器、紙パック、プラスチック容器、チアパック等があげられ、密封された容器であれば容器形態には特に制限を受ける物ではない。最近の傾向として、缶、ペットボトル、ボトル缶等の容器形態が高温販売、いわゆるホットベンダー販売される機会が多く、また長期保管される機会も多いためより不安定になる傾向が高いため、缶、ペットボトル、ボトル缶の容器形態が好ましい。
以下、本発明について実施例等を用いてさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例等により何ら限定されるものではない。なお、本発明の実施例等で用いる測定評価手段などは以下の通りである。
【実施例】
【0033】
<ミルクコーヒーの外観の評価基準>
(オイルリング、オイルオフ、沈降、凝集の存在に関する評価)
3点 :全くなし
2点 :ごくわずかにあり
1点 :あり
0点 :著しく発生、とした。
ごくわずかにありという状態(2点)とは、手で軽く振ると容易に系が均一になる程度であり、2点以上が実用的に充分使用可能である。
【0034】
<ミルクコーヒーの粘度>
ミルクコーヒーを製造後5℃で一日保存し、B型粘時計(TOKI SANGYO製 VISCOMETER TV−10型)を用いて計測する。BLアダプターを選択し、水溶液にセットする。セット後30秒間静置した後、60rpmで、30秒間ローターを回転させた際に、粘度が測定される。
<ミルクコーヒーの食感>
試作されたミルクコーヒーは、以下の官能試験により評価された。
年齢24〜55歳の健常成人(男6名、女6名)が、ミルクコーヒーを飲み、以下の判定基準で評価した。実施例の判断基準は、結晶セルロース複合化物を添加せず、実施例、比較例と同様の操作で試作したミルクコーヒーに対するものである。
◎(優) :のど越しが軽くさっぱりとしている。
○(良) :のど越しがやや重く感じる。
×(不可):のど越しが重く糊状感がある。また、オイルリング等の影響によりざらつきがある。
以下の実施例及び比較例では、結晶セルロースをMCC、アルギン酸プロピレングリコールエステルをPGA、カルボキシメチルセルロース・ナトリウムをCMC、ショ糖脂肪酸エステルをSEと略して記載する。
【0035】
[実施例1]
市販DPパルプを裁断後、2.5mol/L塩酸中で105℃、15分間加水分解した後、水洗・濾過を行い固形分が50質量%のウェットケーキ状の結晶セルロースを作製した。
プラネタリーミキサー((株)品川工業所製、5DM−03−R、撹拌羽根はフック型)にMCC、PGA((株)大阪アルギン、NLS−K)、CMC(第一工業製薬(株)、F−5A)を、MCC/PGA/CMCとの質量比が90/9/1となるように投入し、固形分35質量%となるように加水した。その後、126rpmで混練し結晶セルロース複合化物Aを得た。混練エネルギーは55Wh/kgであり、結晶セルロース複合化物AのG’は0.15Paであった。また、結晶セルロース複合化物Aの平均粒子径及び微粒子成分量は、8.5μm、31.5%であった。
【0036】
結晶セルロース複合化物Aを用いて次のようにしてミルクコーヒーを作った。
コーヒー生豆250gから温水で2000g抽出した液を用意した。このコーヒー原液のBrixは、6.0であり、最終的に得られるミルクコーヒーのBrixは1.5であった。このコーヒー原液25質量部、結晶セルロース複合化物Aを固形分で0.05質量部、牛乳(無脂乳固形分8.8%、乳脂肪3.8%)23質量部、砂糖6質量部、炭酸水素ナトリウム0.06質量部、ショ糖パルミチン酸エステル0.07質量部を混ぜ、温水を加えて、全体が100質量部とした。この液を80℃で10分間プロペラ攪拌し、ピストン型ホモジナイザー(一次圧:15MPa、2次圧:5MPa)で1回均質化処理を行い、200mL容のガラス製耐熱ビンに充填した。これを殺菌処理し(124℃、20min)、水道水で冷却して1ヶ月静置保存(60℃を2週間した後、2℃を2週間)し、外観の均一性(オイルリング、オイルオフ、沈降、凝集)を目視観察した。結果を表2に示す。
【0037】
[実施例2]
実施例1と同様の質量比でMCC、PGA、CMCを混練し、結晶セルロース複合化物Bを得た。混練エネルギーは100Wh/kgであり、結晶セルロース複合化物BのG’は0.30Paであった。また、結晶セルロース複合化物Bの平均粒子径及び微粒子成分量は、8.1μm、33.3%であった。
結晶セルロース複合化物Bを用いて実施例1と同様にミルクコーヒーを作製し、評価した。結果を表−2に示す。
【0038】
[実施例3]
MCC、PGA、CMCを、MCC/PGA/CMCの質量比が50/25/25となるように投入し、固形分43質量%となるように加水した。その後、126rpmで混練し結晶セルロース複合化物Cを得た。混練エネルギーは80Wh/kgであり、結晶セルロース複合化物CのG’は0.25Paであった。また、結晶セルロース複合化物Cの平均粒子径及び微粒子成分量は、8.4μm、32.3%であった。
結晶セルロース複合化物Cを用いて実施例1と同様にミルクコーヒーを作製し、評価した。結果を表2に示す。
【0039】
[実施例4]
実施例3と同様の質量比で、固形分43質量%となるように加水した。その後、126rpmで混練し、結晶セルロース複合化物Dを得た。混練エネルギーは250Wh/kgであり、結晶セルロース複合化物DのG’は0.75Paであった。また、結晶セルロース複合化物Dの平均粒子径及び微粒子成分量は、7.7μm、39.4%であった。
結晶セルロース複合化物Dを用いて実施例1と同様にミルクコーヒーを作製し、評価した。結果を表2に示す。
【0040】
[実施例5]
MCC、PGA、CMC及び乳化剤を、MCC/PGA/CMC/SEの質量比が84/8/8/4となるように投入し、固形分40質量%となるように加水した。その後、126rpmで混練し結晶セルロース複合化物Eを得た。混練エネルギーは200Wh/kgであり、結晶セルロース複合化物EのG’は0.70Paであった。また、結晶セルロース複合化物Eの平均粒子径及び微粒子成分量は、7.8μm、38.2%であった。
結晶セルロース複合化物Eを用いて実施例1と同様にミルクコーヒーを作製し、評価した。結果を表2に示す。
【0041】
[実施例6]
実施例5と同様の質量比で、固形分45質量%となるように加水した。その後、126rpmで混練し結晶セルロース複合化物Fを得た。混練エネルギーは280Wh/kgであり、結晶セルロース複合化物EのG’は1.40Paであった。結晶セルロース複合化物Fの平均粒子径及び微粒子成分量は、7.6μm、42.6%であった。
結晶セルロース複合化物Fを用いて実施例1と同様にミルクコーヒーを作製し、評価した。結果を表2に示す。
上記したいずれの実施例も、混練中の混練物は、50℃以下であった。
【0042】
[比較例1]
MCC、PGA、CMCを、MCC/PGA/CMCの質量比が80/10/10となるように投入し、固形分30質量%となるように加水した。その後、126rpmで混練し結晶セルロース複合化物Gを得た。混練エネルギーは10Wh/kgであり、結晶セルロース複合化物GのG’は0.02Paであった。また、結晶セルロース複合化物Gの平均粒子径及び微粒子成分量は、9.0μm、30.5%であった。
結晶セルロース複合化物Gを用いて実施例1と同様にミルクコーヒーを作製し、評価した。結果を表4に示す。
【0043】
[比較例2]
MCC、PGA、CMCを、MCC/PGA/CMCの質量比が45/28/27となるように投入し、固形分45質量%となるように加水した。その後、126rpmで混練し結晶セルロース複合化物Hを得た。混練エネルギーは120Wh/kgであり、結晶セルロース複合化物HのG’は0.22Paであった。また、結晶セルロース複合化物Hの平均粒子径及び微粒子成分量は、8.6μm、32.1%であった。
結晶セルロース複合化物Hを用いて実施例1と同様にミルクコーヒーを作製し、評価した。結果を表4に示す。
比較例2は、貯蔵弾性率は本願範囲に入るものの、結晶セルロースの含有量が低いため、ミルクコーヒー中での、セルロース複合化物の分散が悪く、だまになる傾向を示した。また、沈降が抑制できる傾向にあったが、コーヒーの粘度が高く、食感が悪かった。
【0044】
[比較例3]
MCC、PGA、CMCを、MCC/PGA/CMCの質量比が96/2/2となるように投入し、固形分45質量%となるように加水した。その後、126rpmで混練し結晶セルロース複合化物Iを得た。混練エネルギーは80Wh/kgであり、結晶セルロース複合化物IのG’は0.35Paであった。また、結晶セルロース複合化物Iの平均粒子径及び微粒子成分量は、8.8μm、31.7%であった。
結晶セルロース複合化物Iを用いて実施例1と同様にミルクコーヒーを作製し、評価した。結果を表4に示す。
【0045】
[比較例4]
MCC、PGA、CMC及び乳化剤を、MCC/PGA/CMC/SEの質量比が70/15/15/3となるように投入し、固形分45質量%となるように加水した。その後、126rpmで混練し結晶セルロース複合化物Jを得た。混練エネルギーは40Wh/kgであり、結晶セルロース複合化物JのG’は0.08Paであった。結晶セルロース複合化物Jの平均粒子径及び微粒子成分量は、8.7μm、32.0%であった。
結晶セルロース複合化物Jを用いて実施例1と同様にミルクコーヒーを作製し、評価した。結果を表4に示す。
【0046】
[比較例5]
MCC、PGAを、MCC/PGAの質量比が70/30となるように投入し、固形分48質量%となるように加水した。その後、ホバートミキサー中で数分間混合した。該混合物を、共混練二軸押し出し機(栗本鉄工所製 S2KRCニーダ)を通して、せん断した。混練エネルギーは80Wh/kgであった。この混練物を固形分が6質量%となるよう純水を加え(全量2500g)、数分間ミキサーで攪拌し、pHを8.0に調整し、得られたスラリーを17MPaでマントンゴーリンホモジナイザー(APV製 15MR−8TA型)を通し、噴霧乾燥(噴霧化ノズルφ0.25cm、缶体径0.9mのBowen型噴霧乾燥機、入口温度195℃/出口温度95℃)し、セルロース複合化物Kを得た。結晶セルロース複合化物KのG’は0.08Paであった。また、結晶セルロース複合化物Aの平均粒子径及び微粒子成分量は、7.9μm、30.5%であった。
結晶セルロース複合化物Kを用いて実施例1と同様にミルクコーヒーを作製し、評価した。結果を表4に示す。
カルボキシメチルセルロースを加えない比較例5は、貯蔵弾性率が、実施例に比較的近いもののミルクコーヒーとした際に、オイルオフ、オイルリングが発生し、凝集、沈降が発生した。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
【表3】

【0050】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、結晶セルロース、アルギン酸プロピレングリコールエステル及びカルボキシメチルセルロース・ナトリウムを含む結晶セルロース複合化物に関する発明であり、乳成分を含む飲料及び食品に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶セルロースを50〜95質量%、アルギン酸プロピレングリコールエステル及びカルボキシメチルセルロース・ナトリウムを合計5〜50質量%を含む結晶セルロース複合化物であって、該結晶セルロース複合化物を固形分1質量%の水分散液としたときの貯蔵弾性率が0.1Pa以上であることを特徴とする結晶セルロース複合化物。
【請求項2】
アルギン酸プロピレングリコールエステルとカルボキシメチルセルロース・ナトリウムの質量比が1/9から9/1であることを特徴とする請求項1記載の結晶セルロース複合化物。
【請求項3】
結晶セルロース複合化物が、さらに乳化剤を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の結晶セルロース複合化物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の結晶セルロース複合化物を含むことを特徴とする乳飲料。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の結晶セルロース複合化物と、さらに乳化剤及び/またはカゼイン・ナトリウムを含むことを特徴とする乳飲料。

【公開番号】特開2011−162700(P2011−162700A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−28537(P2010−28537)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】