説明

結晶性ミノサイクリン塩基及びその製造方法

本発明は、結晶性のミノサイクリン塩基を提供する。具体的には、形態I、形態II、及び形態IIIと命名した三種の結晶多形形態のミノサイクリン塩基が提供される。これらはXRD及びIRデータによって特徴付けられる。また、新たな多形形態の製造方法も提供される。例えば、形態Iは、エーテル類から選択された有機溶媒中に非晶質のミノサイクリン塩を溶解させること、及び/又は懸濁させること、続いて、該混合物から結晶化させることによって製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その三種の新たな多形形態を含む結晶性ミノサイクリン塩基を提供し、また、純粋なミノサイクリン塩基を、結晶形態で得る方法も記載し、この場合、全ての不純物、特に、不純物4-エピミノサイクリンは、非常に低いレベルまで制御される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
ミノサイクリンは、広域スペクトルのテトラサイクリン系抗生物質のメンバーであり、こうした化合物群の他のメンバーより広いスペクトルを有する。
ミノサイクリンは、主に、一日一回100mgの用量で、ざ瘡及び酒さを治療する、療法に広く用いられている。
ミノサイクリンの製造は、US 3,148,212;US 3,226,436及びUS 4,849,136に開示されている。
ミノサイクリンは、それ自体塩基として、或いは、例えば、スルホン酸、トリクロロ酢酸、若しくは塩酸などの有機、又は無機の酸の無毒性の酸付加塩として使用できる。
本発明より前は、非晶質形態のみ知られていたミノサイクリン塩基は、酸付加塩に相当するほど安定ではないため、ミノサイクリンの使用を活性成分として有望なものにする、安定な形態のミノサイクリン塩基を提供する方法が、調査されている。
【発明の概要】
【0003】
(詳細な説明)
本発明は、新たな結晶性ミノサイクリン塩基の多形を含む結晶性ミノサイクリン塩基、及びそれらの製造のための新規方法について記載する。
【0004】
驚くべきことに、実際は、ミノサイクリン塩基を安定な結晶形態で提供できることが、本発明によりこれまでに見出された。また、三種の結晶性ミノサイクリン塩基の新たな多形が本発明により見出された。
従って、その最も広範な態様において、本発明は結晶性ミノサイクリン塩基を提供する。
【0005】
一態様において、多形形態Iの結晶性ミノサイクリン塩基が提供される。これは、今まで、その非晶質形態のみが知られていたミノサイクリン塩基の結晶形態であり、このことは、当該分野における用途が当業者に公知である物理的特質によって示される。
【0006】
結晶形態Iのミノサイクリン塩基は、図1に示した特有のX線回折パターン、及び図2の赤外スペクトルを有する。
結晶形態Iは、図1に示すように、5.2、7.6、8.8、12.8、14.5、15.0、15.3、15.9、16.4、17.8、19.3、19.5、20.7、21.3、21.8、22.3、23.1、24.0、25.3、25.7及び26.5±0.2°2θにピークを有するX線回折パターンを特徴とする。さらに、該結晶形態Iは、図2に示すように、1646、1602、1581、1470、1397、1364、1286、1218、1182、1134、1072、1061、1023、1001、969、950、874、850、716、636、620及び545±4cm-1にピークを有する赤外スペクトルを特徴とする。
【0007】
別の態様において、本発明は、多形形態Iの結晶性ミノサイクリン塩基の製造方法を提供し、該方法は、非晶質ミノサイクリン塩基を、エーテル類から選択される有機溶媒に溶解させること、及び/又は懸濁させること、続いて、該混合物から結晶化させることを含む。
好ましくは、該方法は、非晶質ミノサイクリン塩基を、エーテル類から選択される有機溶媒に懸濁させること、該不均一混合物を0℃〜30℃、好ましい範囲である10℃〜15℃の温度まで冷却すること、及び該反応混合物から形態Iを単離することを含む。
任意の適当なエーテル溶媒を使用してもよいが、メチルtert-ブチルエーテルを使用することが好ましい。
【0008】
別の態様において、多形形態IIの結晶性ミノサイクリン塩基が提供される。これは、今まで、その非晶質形態のみが知られていたミノサイクリン塩基の結晶形態であり、このことは、当該分野における用途が当業者に公知である物理的特質によって示される。
【0009】
結晶形態IIのミノサイクリン塩基は、図3に示した特有のX線回折パターン、及び図4の赤外スペクトルを有する。
結晶形態IIは、図3に示すように、3.4、6.8、8.0、10.0、13.0、13.8、14.6、14.9、15.5、16.1、17.6、17.8、18.6、19.5、20.2、20.6、21.9、22.6、23.9、24.2、25.4、26.3、27.1、27.5、28.0及び29.1±0.2°2θにピークを有するX線回折パターンを特徴とする。さらに、該結晶形態IIは、図4に示すように、1644、1607、1582、1469、1453、1413、1396、1358、1287、1251、1217、1186、1166、1136、1061、999、970、874、716、621及び585±4cm-1にピークを有する赤外スペクトルを特徴とする。
【0010】
別の態様において、多形形態IIの結晶性ミノサイクリン塩基の製造方法は、非晶質ミノサイクリン塩基を、エステル類から選択される有機溶媒に溶解させること、及び/又は懸濁させること、続いて、該混合物から結晶化させることを含む。
好ましくは、該方法は、非晶質ミノサイクリン塩基を、エステル類から選択される有機溶媒に懸濁させること、該不均一混合物を0℃〜30℃、好ましい範囲である10℃〜15℃の温度まで冷却すること、及び該反応混合物から形態IIを単離することを含む。
任意の適当なエステルを溶媒として使用してもよいが、酢酸エチルを使用することが好ましい。
【0011】
別の態様において、多形形態IIIの結晶性ミノサイクリン塩基が提供される。これは、今まで、その非晶質形態のみが知られていたミノサイクリン塩基の結晶形態であり、このことは、当該分野における用途が当業者に公知である物理的特質によって示される。
【0012】
結晶形態IIIのミノサイクリン塩基は、図5に示した特有のX線回折パターン、及び図6の赤外スペクトルを有する。
結晶形態IIIは、図5に示すように、6.5、10.0、13.2、15.1、16.5、17.9、19.6、20.2、21.1、22.3、23.7、24.8、26.4、28.1及び30.5±0.2°2θにピークを有するX線回折パターンを特徴とする。さらに、該結晶形態IIIは、図6に示すように、1647、1605、1581、1470、1399、1307、1286、1251、1216、1195、1179、1136、1094、1058、1024、1000、973、950、870、825、806、716、680、634、615、584、515、496及び413±4cm-1にピークを有する赤外スペクトルを特徴とする。
【0013】
別の態様において、多形形態IIIの結晶性ミノサイクリン塩基の製造方法は、非晶質ミノサイクリン塩基を、アルコール類から選択される有機溶媒に溶解させること、及び/又は懸濁させること、続いて、該混合物から結晶化させることを含む。
好ましくは、該方法は、非晶質ミノサイクリン塩基を、アルコール類から選択される有機溶媒に懸濁させること、該不均一混合物を0℃〜30℃、好ましい範囲である10℃〜15℃の温度まで冷却すること、及び該反応混合物から形態IIIを単離することを含む。
任意の適当なアルコールを溶媒として使用してもよいが、エタノールを使用することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【発明を実施するための形態】
【0015】
上記方法によって得られる形態I、II及びIIIの結晶性ミノサイクリン塩基は、全ての不純物を制御することで高い純度を有し、特に4-エピミノサイクリンは、通常は1.2% w/w(すなわち塩基の重量に基づく)より下である。
従って、別の態様において、本発明は、実質的に4-エピミノサイクリンを含まない結晶性ミノサイクリン塩基を提供する。実質的に含まないとは、多形の重量に基づいて、わずか約1.2%の不純物(w/w)しか存在しないことを意味する。好ましくは、不純物のレベルは1.2% w/w未満である。
従って、さらなる態様において、本発明は、1.2% w/w(塩基の重量に基づく)未満の4-エピミノサイクリンを含む結晶性ミノサイクリン塩基を提供する。
【0016】
本発明の別の態様は、工業規模での非晶質ミノサイクリン塩基の製造方法を提供し、この場合、特に、4-エピミノサイクリンの含有量を低いレベルに維持しながら、ミノサイクリン塩基が高純度で得られる。
【0017】
一態様において、非晶質ミノサイクリン塩基の製造方法が提供され、該方法は、好ましくは、メチルtert-ブチルエーテル、ジクロロメタン、又は酢酸イソプロピルから選択される有機溶媒中のミノサイクリンの溶液又は懸濁液の噴霧乾燥を含む。
【0018】
好ましい非晶質ミノサイクリン塩基の製造方法は、下記工程を含む:
1)ミノサイクリン塩基を1つ以上の有機溶媒に溶解させ、溶液又は懸濁液を形成する工程
2)工程1)で得られた溶液又は懸濁液を噴霧乾燥する工程
3)このようにして得られた非晶質ミノサイクリンを、任意に乾燥させる工程、必要であれば、真空下、25℃〜45℃、好ましくは35℃〜45℃の温度で乾燥させる。
【0019】
任意の適当な溶媒を使用でき、好ましい溶媒には、メチルtert-ブチルエーテル、ジクロロメタン、又は酢酸イソプロピルが含まれる。
噴霧乾燥に適した任意の技術を使用してもよい。例えば、(当業者には明らかである)従来の噴霧乾燥技術を用いることができる。
【実施例】
【0020】
以下の実施例は、本発明の例示を与えるものであり、何らその範囲を限定しない。
(実施例1:形態Iの結晶性ミノサイクリン塩基の製造)
非晶質ミノサイクリン塩基(0.5g)を、メチルtert-ブチルエーテル(4ml)に懸濁させ、生じる不均一混合物を、0℃〜30℃、好ましくは10℃〜15℃の温度で、約2時間撹拌する。
生成物を濾過し、メチルtert-ブチルエーテル(1ml)で洗浄し、真空下、約45℃〜50℃で乾燥させ、結晶性ミノサイクリン塩基を得る。
収量:0.38g
XRPDパターン及び赤外スペクトルを図1及び図2に示す。
4-エピミノサイクリン:0.06%面積 (HPLC)
融点:113℃
【0021】
(実施例2:形態Iの結晶性ミノサイクリン塩基の製造)
非晶質ミノサイクリン塩基(0.5g)を、メチルtert-ブチルエーテル(6ml)に溶解させ、生じる溶液を、0℃〜30℃、好ましくは10℃〜15℃の温度で、撹拌する。
約5分後、該溶液から形態Iの結晶性ミノサイクリン塩基が沈殿する。
生じる懸濁液を濾過し、メチルtert-ブチルエーテル(1ml)で洗浄し、真空下、約45℃〜50℃で乾燥させ、結晶性ミノサイクリン塩基を得る。
収量:0.45g
融点:113℃
【0022】
(実施例3:形態IIの結晶性ミノサイクリン塩基の製造)
非晶質ミノサイクリン塩基(20g)を、酢酸エチル(160ml)に懸濁させ、生じる不均一混合物を、0℃〜30℃、好ましくは10℃〜15℃の温度で、約3時間撹拌する。
生成物を濾過し、酢酸エチル(10ml)で洗浄し、真空下、約45℃〜50℃で乾燥させ、結晶性ミノサイクリン塩基を得る。
収量:17.4g
HPLC純度:99.5%面積
4-エピミノサイクリン:0.11%面積
融点:187℃
XRPDパターン及び赤外スペクトルを図3及び図4に示す。
【0023】
(実施例4:形態IIの結晶性ミノサイクリン塩基の製造)
非晶質ミノサイクリン塩基(5g)を、酢酸エチル(40ml)に溶解させ、生じる溶液を、0℃〜30℃、好ましくは10℃〜15℃の温度で、約3時間撹拌し、その後、形態IIの結晶性ミノサイクリン塩基が沈殿する。
生成物を濾過し、酢酸エチル(5ml)で洗浄し、真空下、約45℃〜50℃で乾燥させ、形態IIの結晶性ミノサイクリン塩基を得る。
収量:3.2g
融点:187℃
【0024】
(実施例5:形態IIIの結晶性ミノサイクリン塩基の製造)
非晶質ミノサイクリン塩基(0.5g)を、エチルアルコール(2.5ml)に懸濁させ、生じる不均一混合物を、0℃〜30℃、好ましくは10℃〜15℃の温度で、少なくとも10時間撹拌する。
生成物を濾過し、エチルアルコール(0.5ml)で洗浄し、真空下、約45℃〜50℃で乾燥させ、形態IIIの結晶性ミノサイクリン塩基を得る。
収量:0.44g
XRPDパターン及び赤外スペクトルを図5及び図6に示す。
4-エピミノサイクリン:0.12%面積(HPLC)
融点:193℃
【0025】
(実施例6:非晶質ミノサイクリン塩基の製造)
ジクロロメタン、酢酸イソプロピル、又はメチルtert-ブチルエーテル中のミノサイクリン塩基の溶液を、従来の噴霧乾燥装置で入口温度45〜105℃及び出口温度30℃〜75℃を使用した噴霧乾燥によって単離した。
単離された生成物を使用して、任意の形態の結晶性ミノサイクリン塩基を直接得ることができ、又は真空下、約45℃で後乾燥工程にかけて、純粋な非晶質ミノサイクリン塩基を得ることができる。
収量:24.5g
HPLC純度:98.6%面積
XRPDパターン及び赤外スペクトルを図7及び図8に示す。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶であることを特徴とするミノサイクリン塩基。
【請求項2】
図1に示すように、5.2、7.6、8.8、12.8、14.5、15.0、15.3、15.9、16.4、17.8、19.3、19.5、20.7、21.3、21.8、22.3、23.1、24.0、25.3、25.7及び26.5±0.2°2θにピークを有するX線回折パターンを特徴とする、形態Iの結晶性ミノサイクリン塩基。
【請求項3】
図2に示すように、1646、1602、1581、1470、1397、1364、1286、1218、1182、1134、1072、1061、1023、1001、969、950、874、850、716、636、620及び545±4cm-1にピークを有する赤外スペクトルをさらに特徴とする、請求項2記載の形態Iの結晶性ミノサイクリン塩基。
【請求項4】
形態Iの結晶性ミノサイクリン塩基の製造方法であって、該方法が、非晶質ミノサイクリン塩基を、エーテル類から選択される有機溶媒に溶解させること、及び/又は懸濁させること、続いて、該混合物から結晶化させることを含む、前記方法。
【請求項5】
前記有機溶媒がメチルtert-ブチルエーテルである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
図3に示すように、3.4、6.8、8.0、10.0、13.0、13.8、14.6、14.9、15.5、16.1、17.6、17.8、18.6、19.5、20.2、20.6、21.9、22.6、23.9、24.2、25.4、26.3、27.1、27.5、28.0及び29.1±0.2°2θにピークを有するX線回折パターンを特徴とする、形態IIの結晶性ミノサイクリン塩基。
【請求項7】
図4に示すように、1644、1607、1582、1469、1453、1413、1396、1358、1287、1251、1217、1186、1166、1136、1061、999、970、874、716、621及び585±4cm-1にピークを有する赤外スペクトルをさらに特徴とする、請求項6記載の形態IIの結晶性ミノサイクリン塩基。
【請求項8】
形態IIの結晶性ミノサイクリン塩基の製造方法であって、該方法が、非晶質ミノサイクリン塩基を、エステル類から選択される有機溶媒に溶解させること、及び/又は懸濁させること、続いて、該混合物から結晶化させることを含む、前記方法。
【請求項9】
前記有機溶媒が酢酸エチルである、請求項8記載の方法。
【請求項10】
図5に示すように、6.5、10.0、13.2、15.1、16.5、17.9、19.6、20.2、21.1、22.3、23.7、24.8、26.4、28.1及び30.5±0.2°2θにピークを有するX線回折パターンを特徴とする、形態IIIの結晶性ミノサイクリン塩基。
【請求項11】
図6に示すように、1647、1605、1581、1470、1399、1307、1286、1251、1216、1195、1179、1136、1094、1058、1024、1000、973、950、870、825、806、716、680、634、615、584、515、496及び413±4cm-1にピークを有する赤外スペクトルをさらに特徴とする、請求項10記載の形態IIIの結晶性ミノサイクリン塩基。
【請求項12】
形態IIIの結晶性ミノサイクリン塩基の製造方法であって、該方法が、非晶質ミノサイクリン塩基を、アルコール類から選択される有機溶媒に溶解させること、及び/又は懸濁させること、続いて、該混合物から結晶化させることを含む、前記方法。
【請求項13】
前記有機溶媒がエタノールである、請求項12記載の方法。
【請求項14】
非晶質ミノサイクリン塩基の製造方法であって、該方法が、有機溶媒中のミノサイクリンの溶液を噴霧乾燥することを含む、前記方法。
【請求項15】
前記溶媒がメチルtert-ブチルエーテル、ジクロロメタン、又は酢酸イソプロピルである、請求項14記載の方法。
【請求項16】
4-エピミノサイクリンの含有量が1.2% w/wより下である、請求項4〜5、8〜9、又は12〜13のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
実質的に4-エピミノサイクリンを含まない、結晶性ミノサイクリン塩基。
【請求項18】
1.2% w/w未満の4-エピミノサイクリンを含む、請求項16記載の結晶性ミノサイクリン塩基。

【公表番号】特表2010−519247(P2010−519247A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−550320(P2009−550320)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【国際出願番号】PCT/GB2008/000625
【国際公開番号】WO2008/102161
【国際公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(507128610)ホビオネ インテル リミテッド (7)
【Fターム(参考)】