説明

結晶性改質オレフィン樹脂

【課題】衝撃強度、耐傷付き性、成形加工性に優れる結晶性改質オレフィン樹脂を提供すること。
【解決手段】以下の(i)〜(v)のすべてを満たす結晶性改質オレフィン樹脂。
(i)エチレン、プロピレンおよび炭素原子数4〜20のオレフィンからなる群から選ばれる少なくとも2種のオレフィンに由来する単量体単位を含有し、エチレンに由来する単量体単位の含有量が60モル%以下(ただし、結晶性改質オレフィン樹脂全体を100モル%とする)
(ii)JIS K7122に従う示差走査熱量測定において、−50℃から200℃の範囲で測定して得られる結晶の融解熱量が30J/gを超える
(iii)分岐指数が1未満
(iv)分子量分布が1.5〜3
(v)MFRが0.1〜30g/10分

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝撃強度、耐傷付き性、成形加工性に優れる結晶性改質オレフィン樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
オレフィン樹脂は、押出成形や射出成形によって種々の成形体に加工され、様々な用途に用いられている。オレフィン樹脂の用途には、衝撃強度および耐傷付き性という、成形体としての機械的性質と外観上の特性をともに満たすことが求められる用途がある。
このような特性を有するオレフィン樹脂を得るためには、例えば、ゴム成分を配合する方法などが挙げられるが、この方法によると、成形方法や成形条件によっては、成形中に不安定な状態となって所定の仕様の成形体が得られないなど、成形加工性に劣る場合がある。
例えば、インフレーション成形では、バブルが不安定となってインフレーションフィルムの厚さや幅に振れが生じたり、発泡成形では、気泡が破泡して発泡成形体が所定の発泡倍率に至らなかったりする場合があるため、衝撃強度および耐傷付き性と成形加工性のバランスに優れるオレフィン樹脂が求められていた。
例えば、特許文献1には、溶融張力を向上させるため、分岐指数が1未満である非晶性ないし主に結晶性プロピレン重合体物質およびその製造方法が記載されている。また、特許文献2には、溶融強度および加工性を改良するため所定の分子量分布、融点、特定の分枝指数を有する分岐ポリプロピレン組成物が記載されている。
【特許文献1】特許第2744317号明細書
【特許文献2】特表2002−523575号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載された非晶性ないし主に結晶性プロピレン重合体では、溶融張力が向上し、また、特許文献2に記載された分岐ポリプロピレン組成物では溶融強度が向上するものの、成形体の衝撃強度や耐傷付き性については、いずれも必ずしも十分とはいえない場合があった。
かかる現状において、本発明の解決しようとする課題、即ち、本発明の目的は、衝撃強度、耐傷付き性、成形加工性に優れる結晶性改質オレフィン樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
すなわち本発明は、以下の(i)〜(v)のすべてを満たす結晶性改質オレフィン樹脂に関するものである。
(i)エチレン、プロピレンおよび炭素原子数4〜20のオレフィンからなる群から選ばれる少なくとも2種のオレフィンに由来する単量体単位を含有し、エチレンに由来する単量体単位の含有量が60モル%以下(ただし、結晶性改質オレフィン樹脂全体を100モル%とする)
(ii)JIS K7122に従う示差走査熱量測定において、−50℃から200℃の範囲で測定して得られる結晶の融解熱量が30J/gを超える
(iii)分岐指数が1未満
(iv)分子量分布が1.5〜3
(v)MFRが0.1〜30g/10分
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、衝撃強度、耐傷付き性、成形加工性に優れる結晶性改質オレフィン樹脂および、その成形体が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の結晶性改質オレフィン樹脂は、エチレン、プロピレンおよび炭素原子数4〜20のオレフィンからなる群から選ばれる少なくとも2種のオレフィンに由来する単量体単位を含有し、エチレンに由来する単量体単位の含有量が60モル%以下の結晶性改質オレフィン樹脂である。炭素原子数4〜20のオレフィンに由来する単量体単位(以下、単に「オレフィン単位」という)としては、例えば、1−ブテン単位、1−ペンテン単位、1−ヘキセン単位、1−へプテン単位、1−オクテン単位、1−ノネン単位、1−デセン単位、1−ウンデセン単位、1−ドデセン単位、1−トリデセン単位、1−テトラデセン単位、1−ペンタデセン単位、1−ヘキサデセン単位、1−ヘプタデセン単位、1−オクタデセン単位、1−ノナデセン単位、1−エイコセン単位等の直鎖状オレフィン単位、3−メチル−1−ブテン単位、3−メチル−1−ペンテン単位、4−メチル−1−ペンテン単位、2−エチル−1−ヘキセン単位、2,2,4−トリメチル−1−ペンテン単位等の分岐状オレフィン単位等の鎖状オレフィン単位が挙げられる。
【0007】
該オレフィン単位の2種以上の具体的な組み合わせとしては、例えば、エチレン単位と1−ブテン単位、エチレン単位と1−ヘキセン単位、エチレン単位と1−オクテン単位、エチレン単位と4−メチル−1−ペンテン単位、エチレン単位とプロピレン単位と1−ブテン単位、エチレン単位とプロピレン単位と1−ヘキセン単位、エチレン単位と1−ブテン単位と1−ヘキセン単位、プロピレン単位と1−ブテン単位、プロピレン単位と1−ヘキセン単位、プロピレン単位と1−オクテン単位、プロピレン単位と4−メチル−1−ペンテン単位、プロピレン単位と1−ブテン単位と1−ヘキセン単位、1−ブテン単位と1−ヘキセン単位、1−ブテン単位と1−オクテン単位、1−ヘキセン単位と1−オクテン単位等の組み合わせが挙げられる。
【0008】
本発明の結晶性改質オレフィン樹脂としては、例えば、プロピレン単位−1−ブテン単位共重合構造、プロピレン単位−1−ヘキセン単位共重合構造、プロピレン単位−1−オクテン単位共重合構造、プロピレン単位−1−へプテン単位共重合構造、プロピレン単位−1−オクテン単位共重合構造、プロピレン単位−1−ノネン単位共重合構造、プロピレン単位−1−デセン単位共重合構造、プロピレン単位−1−ウンデセン単位共重合構造、プロピレン単位−1−ドデセン単位共重合構造、プロピレン単位−1−トリデセン単位共重合構造、プロピレン単位−1−テトラデセン単位共重合構造、プロピレン単位−1−ペンタデセン単位共重合構造、プロピレン単位−1−ヘキサデセン単位共重合構造、プロピレン単位−1−ヘプタデセン単位共重合構造、プロピレン単位−1−オクタデセン単位共重合構造、プロピレン単位−1−ナノデセン単位共重合構造、プロピレン単位−1−エイコセン単位共重合構造、エチレン単位−プロピレン単位−1−ブテン単位共重合構造、エチレン単位−プロピレン単位−1−ヘキセン単位共重合構造、エチレン単位−プロピレン単位−1−オクテン単位共重合構造、エチレン単位−1−ブテン単位−1−ヘキセン単位共重合構造をそれぞれ有する結晶性改質オレフィン樹脂等が挙げられる。本発明の結晶性改質オレフィン樹脂は、異なる2種以上の共重合構造を有していてもよい。
結晶性改質オレフィン樹脂として好ましくは、プロピレン単位−1−ブテン単位共重合構造、プロピレン単位−1−ヘキセン単位共重合構造、プロピレン単位−1−オクテン単位共重合構造、エチレン単位−プロピレン単位−1−ブテン単位共重合構造、エチレン単位−プロピレン単位−1−ヘキセン単位共重合構造、エチレン単位−プロピレン単位−1−オクテン単位共重合構造をそれぞれ有する結晶性改質オレフィン樹脂であり、より好ましくは、プロピレン単位−1−ブテン単位共重合構造、エチレン単位−プロピレン単位−1−ブテン単位共重合構造をそれぞれ有する結晶性改質オレフィン樹脂である。
【0009】
本発明の結晶性改質オレフィン樹脂は、本発明の目的を損なわない範囲でエチレン、プロピレンおよび炭素原子数4〜20のオレフィン単位以外の単量体を更に重合して得られる共重合体でもよく、該単量体単位としては、例えば、環状オレフィン単位、ビニル芳香族化合物単位、ポリエン化合物単位を挙げることができる。
【0010】
環状オレフィン単位としては、例えば、ノルボルネン単位、5−メチルノルボルネン単位、5−エチルノルボルネン単位、5−プロピルノルボルネン単位、5,6−ジメチルノルボルネン単位、1−メチルノルボルネン単位、7−メチルノルボルネン単位、5,5,6−トリメチルノルボルネン単位、5−フェニルノルボルネン単位、5−ベンジルノルボルネン単位、5−エチリデンノルボルネン単位、5−ビニルノルボルネン単位、1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン単位、2−メチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン単位、2−エチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン単位、2,3−ジメチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン単位、2−ヘキシル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン単位、2−エチリデン−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン単位、2−フルオロ−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン単位、1,5−ジメチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン単位、2−シクロへキシル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン単位、2,3−ジクロロ−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン単位、2−イソブチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン単位、1,2−ジヒドロジシクロペンタジエン単位、5−クロロノルボルネン単位、5,5−ジクロロノルボルネン単位、5−フルオロノルボルネン単位、5,5,6−トリフルオロ−6−トリフルオロメチルノルボルネン単位、5−クロロメチルノルボルネン単位、5−メトキシノルボルネン単位、5,6−ジカルボキシルノルボルネンアンハイドレート、5−ジメチルアミノノルボルネン単位、5−シアノノルボルネン単位、シクロペンテン単位、3−メチルシクロペンテン単位、4−メチルシクロペンテン単位、3,4−ジメチルシクロペンテン単位、3,5−ジメチルシクロペンテン単位、3−クロロシクロペンテン単位、シクロへキセン単位、3−メチルシクロへキセン単位、4−メチルシクロヘキセン単位、3,4−ジメチルシクロヘキセン単位、3−クロロシクロヘキセン単位、シクロへプテン単位、ビニルシクロヘキサン単位等が挙げられる。
【0011】
ビニル芳香族化合物単位としては、例えば、スチレン単位、α−メチルスチレン単位、p−メチルスチレン単位、ビニルキシレン単位、モノクロロスチレン単位、ジクロロスチレン単位、モノブロモスチレン単位、ジブロモスチレン単位、フルオロスチレン単位、p−t−ブチルスチレン単位、エチルスチレン単位、ビニルナフタレン単位等が挙げられる。
【0012】
ポリエン化合物単位としては、共役ポリエン化合物単位および非共役ポリエン化合物単位を挙げることができる。共役ポリエン化合物単位としては、例えば、直鎖状脂肪族共役ポリエン化合物単位や分岐状脂肪族共役ポリエン化合物単位等の脂肪族共役ポリエン化合物単位、脂環式共役ポリエン化合物単位等が挙げられ、非共役ポリエン化合物単位としては、例えば、脂肪族非共役ポリエン化合物単位、脂環式非共役ポリエン化合物単位、芳香族非共役ポリエン化合物単位等が挙げられる。これらは、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アラルキル基、アラルキルオキシ基等を有していてもよい。
【0013】
脂肪族共役ポリエン化合物単位としては、例えば、1,3−ブタジエン単位、イソプレン単位、2−エチル−1,3−ブタジエン単位、2−プロピル−1,3−ブタジエン単位、2−イソプロピル−1,3−ブタジエン単位、2−ヘキシル−1,3−ブタジエン単位、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン単位、2,3−ジエチル−1,3−ブタジエン単位、2−メチル−1,3−ペンタジエン単位、2−メチル−1,3−ヘキサジエン単位、2−メチル−1,3−オクタジエン単位、2−メチル−1,3−デカジエン単位、2,3−ジメチル−1,3−ペンタジエン単位、2,3−ジメチル−1,3−ヘキサジエン単位、2,3−ジメチル−1,3−オクタジエン単位、2,3−ジメチル−1,3−デカジエン単位等が挙げられる。
【0014】
脂環式共役ポリエン化合物単位としては、例えば、2−メチル−1,3−シクロペンタジエン単位、2−メチル−1,3−シクロヘキサジエン単位、2,3−ジメチル−1,3−シクロペンタジエン単位、2,3−ジメチル−1,3−シクロヘキサジエン単位、2−クロロ−1,3−ブタジエン単位、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン単位、1−フルオロ−1,3−ブタジエン単位、2−クロロ−1,3−ペンタジエン単位、2−クロロ−1,3−シクロペンタジエン単位、2−クロロ−1,3−シクロヘキサジエン単位等が挙げられる。
【0015】
脂肪族非共役ポリエン化合物単位としては、例えば、1,4−ヘキサジエン単位、1,5−ヘキサジエン単位、1,6−ヘプタジエン単位、1,6−オクタジエン単位、1,7−オクタジエン単位、1,8−ノナジエン単位、1,9−デカジエン単位、1,13−テトラデカジエン単位、1,5,9−デカトリエン単位、3−メチル−1,4−ヘキサジエン単位、4−メチル−1,4−ヘキサジエン単位、5−メチル−1,4−ヘキサジエン単位、4−エチル−1,4−ヘキサジエン単位、3−メチル−1,5−ヘキサジエン単位、3,3−ジメチル−1,4−ヘキサジエン単位、3,4−ジメチル−1,5−ヘキサジエン単位、5−メチル−1,4−ヘプタジエン単位、5−エチル−1,4−ヘプタジエン単位、5−メチル−1,5−ヘプタジエン単位、6−メチル−1,5−ヘプタジエン単位、5−エチル−1,5−ヘプタジエン単位、3−メチル−1,6−ヘプタジエン単位、4−メチル−1,6−ヘプタジエン単位、4,4−ジメチル−1,6−ヘプタジエン単位、4−エチル−1,6−ヘプタジエン単位、4−メチル−1,4−オクタジエン単位、5−メチル−1,4−オクタジエン単位、4−エチル−1,4−オクタジエン単位、5−エチル−1,4−オクタジエン単位、5−メチル−1,5−オクタジエン単位、6−メチル−1,5−オクタジエン単位、5−エチル−1,5−オクタジエン単位、6−エチル−1,5−オクタジエン単位、6−メチル−1,6−オクタジエン単位、7−メチル−1,6−オクタジエン単位、6−エチル−1,6−オクタジエン単位、6−プロピル−1,6−オクタジエン単位、6−ブチル−1,6−オクタジエン単位、4−メチル−1,4−ノナジエン単位、5−メチル−1,4−ノナジエン単位、4−エチル−1,4−ノナジエン単位、5−エチル−1,4−ノナジエン単位、5−メチル−1,5−ノナジエン単位、6−メチル−1,5−ノナジエン単位、5−エチル−1,5−ノナジエン単位、6−エチル−1,5−ノナジエン単位、6−メチル−1,6−ノナジエン単位、7−メチル−1,6−ノナジエン単位、6−エチル−1,6−ノナジエン単位、7−エチル−1,6−ノナジエン単位、7−メチル−1,7−ノナジエン単位、8−メチル−1,7−ノナジエン単位、7−エチル−1,7−ノナジエン単位、5−メチル−1,4−デカジエン単位、5−エチル−1,4−デカジエン単位、5−メチル−1,5−デカジエン単位、6−メチル−1,5−デカジエン単位、5−エチル−1,5−デカジエン単位、6−エチル−1,5−デカジエン単位、6−メチル−1,6−デカジエン単位、6−エチル−1,6−デカジエン単位、7−メチル−1,6−デカジエン単位、7−エチル−1,6−デカジエン単位、7−メチル−1,7−デカジエン単位、8−メチル−1,7−デカジエン単位、7−エチル−1,7−デカジエン単位、8−エチル−1,7−デカジエン単位、8−メチル−1,8−デカジエン単位、9−メチル−1,8−デカジエン単位、8−エチル−1,8−デカジエン単位、6−メチル−1,6−ウンデカジエン単位、9−メチル−1,8−ウンデカジエン単位、6,10−ジメチル−1,5,9−ウンデカトリエン単位、5,9−ジメチル−1,4,8−デカトリエン単位、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエン単位、13−エチル−9−メチル−1,9,12−ペンタデカトリエン単位、5,9,13−トリメチル−1,4,8,12−テトラデカジエン単位、8,14,16−トリメチル−1,7,14−ヘキサデカトリエン単位、4−エチリデン−12−メチル−1,11−ペンタデカジエン単位等が挙げられる。
【0016】
脂環式非共役ポリエン化合物単位としては、例えば、ビニルシクロヘキセン単位、5−ビニル−2−ノルボルネン単位、5−エチリデン−2−ノルボルネン単位、5−メチレン−2−ノルボルネン単位、5−イソプロペニル−2−ノルボルネン単位、シクロヘキサジエン単位、ジシクロペンタジエン単位、シクロオクタジエン単位、2,5−ノルボルナジエン単位、2−メチル−2,5−ノルボルナジエン単位、2−エチル−2,5−ノルボルナジエン単位、2,3−ジイソプロピリデン−5−ノルボルネン単位、2−エチリデン−3−イソプロピリデン−5−ノルボルネン単位、6−クロロメチル−5−イソプロペニル−2−ノルボルネン単位、1,4−ジビニルシクロヘキサン単位、1,3−ジビニルシクロヘキサン単位、1,3−ジビニルシクロペンタン単位、1,5−ジビニルシクロオクタン単位、1−アリル−4−ビニルシクロヘキサン単位、1,4−ジアリルシクロヘキサン単位、1−アリル−5−ビニルシクロオクタン単位、1,5−ジアリルシクロオクタン単位、1−アリル−4−イソプロペニルシクロヘキサン単位、1−イソプロペニル−4−ビニルシクロヘキサン単位、1−イソプロペニル−3−ビニルシクロペンタン単位、メチルテトラヒドロインデン単位等が挙げられる。
【0017】
芳香族非共役ポリエン化合物単位としては、例えば、ジビニルベンゼン単位、ビニルイソプロペニルベンゼン単位等が挙げられる。
【0018】
本発明の結晶性改質オレフィン樹脂の結晶性は、JIS K 7122(1987)に従う示差走査熱量測定(DSC)において、−50℃〜200℃の温度範囲に観測される結晶融解ピークの有無と結晶融解熱量によって測定され、結晶性とは結晶融解ピークが観測され、そのピークの結晶融解熱量が30J/gを超えることをいう。
本発明の結晶性改質オレフィン樹脂の結晶性は、30J/gを超え90J/g以下であることが好ましく、30J/gを超え70J/g以下であることがより好ましい。
該融解熱量が30J/g以下の場合、結晶性が低いことによって耐傷付き性が悪い場合がある。また、融解熱量が80J/gを超えると衝撃強度が不足する場合がある。
【0019】
本発明の結晶性改質オレフィン樹脂の分子量分布(Mw/Mn)は、衝撃強度の観点から1.5〜3であり、好ましくは1.5〜2.8、より好ましくは1.5〜2.6である。
【0020】
本発明の結晶性改質オレフィン樹脂の極限粘度は、衝撃強度の点から、好ましくは0.1〜10dl/gであり、より好ましくは0.1〜7dl/gであり、更に好ましくは0.3〜5dl/gである。なお、極限粘度は、135℃テトラリン中でウベローデ粘度計を用いて測定される。
【0021】
本発明の結晶性改質オレフィン樹脂の分岐指数とは、長鎖分岐の程度を表す指数であり、下式により定義される。
分岐指数(g)=〔η〕B/〔η〕L
ここで、〔η〕Bは結晶性改質オレフィン樹脂の固有粘度であり、〔η〕Lは本発明の結晶性改質オレフィン樹脂と同じ重量平均分子量を有する直鎖状の結晶性オレフィン共重合体の固有粘度である。
重量平均分子量は、M.L.McConnellによってAmerican Laboratory,May,63−75(1978)に記載されている方法、即ち、低角度レーザー光散乱光度測定法で測定した。
〔η〕Bと〔η〕Lとの比が樹脂の長鎖分岐の程度を表し、長鎖分岐が存在する場合、分岐指数は1未満となる。
本発明の結晶性改質オレフィン樹脂の分岐指数は、溶融張力を高めて成形加工性を向上させる観点から好ましくは1未満であり、より好ましくは0.95未満である。
【0022】
本発明の結晶改質オレフィン樹脂のMFRは0.1〜30g/10分であり、好ましくは0.3〜20g/10分であり、より好ましくは0.5〜15g/10分であり、更に好ましくは0.5〜10g/10分であり、特に好ましくは0.5〜5g/10分である。
MFRが0.1g/10分未満の場合、成形加工時の押出負荷が過剰となり、押出機やスクリューの形状によっては成形加工ができなくなる場合がある。また、MFRが30g/10分を超えると成形品の衝撃強度や耐傷付き性が不十分となる場合がある。
【0023】
本発明の結晶性改質オレフィン樹脂は、以下の(i)〜(iv)のすべてを満たす結晶性オレフィン共重合体と有機過酸化物とを混合し、得られた混合物を熱処理することによって得ることができる。
(i)エチレン、プロピレンおよび炭素原子数4〜20のオレフィンからなる群から選ばれる少なくとも2種のオレフィンに由来する単量体単位を含有し、エチレンに由来する構造単位の含有量が60モル%以下(ただし、結晶性オレフィン共重合体全体を100モル%とする)
(ii)JIS K7122に従う示差走査熱量測定において、−50℃から200℃の範囲で測定して得られる結晶の融解熱量が30J/gを超える
(iii)分子量分布が1.5〜3
(iv)MFRが0.1〜30g/10分
【0024】
本発明に用いられる結晶性オレフィン共重合体は、エチレン、プロピレンおよび炭素原子数4〜20のオレフィンからなる群から選ばれる少なくとも2種のオレフィンに由来する単量体単位を含有し、エチレンに由来する単量体単位の含有量が60モル%以下である結晶性オレフィン共重合体である。
炭素原子数4〜20のオレフィンとしては、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−へプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン等の直鎖状オレフィン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ヘキセン、2,2,4−トリメチル−1−ペンテン等の分岐状オレフィン等の鎖状オレフィンが挙げられる。
【0025】
該オレフィンに由来する単量体単位(以下、単に「該オレフィン単位」という)の2種以上の具体的な組み合わせとしては、本発明の結晶性改質オレフィン樹脂の衝撃強度や耐傷付き性の観点から、好ましくは該オレフィン単位の炭素原子数の合計が6以上である組み合わせであり、より好ましくは炭素原子数の合計が7以上である組み合わせである。
【0026】
該オレフィン単位の2種以上の具体的な組み合わせとしては、例えば、エチレンとプロピレン、エチレンと1−ブテン、エチレンと1−ヘキセン、エチレンと1−オクテン、エチレンと4−メチル−1−ペンテン、エチレンとプロピレンと1−ブテン、エチレンとプロピレンと1−ヘキセン、エチレンと1−ブテンと1−ヘキセン、プロピレンと1−ブテン、プロピレンと1−ヘキセン、プロピレンと1−オクテン、プロピレンと4−メチル−1−ペンテン、プロピレンと1−ブテンと1−ヘキセン、1−ブテンと1−ヘキセン、1−ブテンと1−オクテン、1−ヘキセンと1−オクテン等の組み合わせが挙げられる。
【0027】
本発明に用いられる結晶性オレフィン共重合体としては、例えば、プロピレンーエチレン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−1−オクテン共重合体、プロピレン−1−へプテン共重合体、プロピレン−1−オクテン共重合体、プロピレン−1−ノネン共重合体、プロピレン−1−デセン共重合体、プロピレン−1−ウンデセン共重合体、プロピレン−1−ドデセン共重合体、プロピレン−1−トリデセン共重合体、プロピレン−1−テトラデセン共重合体、プロピレン−1−ペンタデセン共重合体、プロピレン−1−ヘキサデセン共重合体、プロピレン−1−ヘプタデセン共重合体、プロピレン−1−オクタデセン共重合体、プロピレン−1−ナノデセン共重合体、プロピレン−1−エイコセン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−プロピレン−1−オクテン共重合体、エチレン−1−ブテン−1−ヘキセン共重合体等が挙げられる。本発明の結晶性オレフィン共重合体は、2種以上を併用してもよい。
本発明に用いられる結晶性オレフィン共重合体として好ましくは、プロピレンーエチレン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−1−オクテン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−プロピレン−1−オクテン共重合体が挙げられ、より好ましくは、プロピレンーエチレン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体である。
【0028】
本発明に用いられる結晶性オレフィン共重合体の結晶性は、JIS K 7122(1987)に従う示差走査熱量測定(DSC)において、−50℃〜200℃の温度範囲に観測される結晶融解ピークの有無と結晶融解熱量によって測定され、結晶性とは結晶融解ピークが観測され、そのピークの結晶融解熱量が30J/gを超えることをいう。
本発明に用いられる結晶性オレフィン共重合体の結晶融解ピークの結晶融解熱量は、本発明の結晶性改質オレフィン樹脂の衝撃強度の観点から30J/gを超えるものであり、30J/gを超え90J/g以下であることが好ましく、30J/gを超え70J/g以下であることがより好ましい。該融解熱量が30J/g以下の場合、結晶性が低いことにより耐傷付き性が十分でない場合がある。また、融解熱量が80J/gを超えると衝撃強度が十分でない場合がある。
【0029】
本発明に用いられる結晶性オレフィン共重合体がエチレンに由来する単量体単位を含有する場合、結晶性改質オレフィン樹脂の衝撃強度および耐傷付き性の観点から、エチレン由来の単量体単位の含有量が60モル%以下であることが好ましく、
より好ましくは、
[y/(x+y)]<0.6であり
更に好ましくは、
[y/(x+y)]<0.8である。
なお、上記関係式において、xは結晶性オレフィン共重合体のエチレンに由来する単量体単位の含有量(モル%)であり、yは結晶性オレフィン共重合体の炭素原子数4〜20のオレフィン単位に由来する単量体単位の含有量(モル%)である(ただし、該結晶性オレフィン共重合体を構成する単量体全体を100モル%とする)。
【0030】
本発明に用いられる結晶性オレフィン共重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、本発明の結晶性改質オレフィン樹脂の衝撃強度の観点から1.5〜3であり、好ましくは1.5〜2.8、より好ましくは1.5〜2.6である。なお、分子量分布はゲルパーミエイションクロマトグラフ(GPC)を用いて所定の条件で測定される。
【0031】
本発明に用いられる結晶性オレフィン共重合体のMFRは0.1〜30g/10分であり、好ましくは0.3〜20g/10分であり、より好ましくは0.5〜15g/10分であり、特に好ましくは0.5〜10g/10分である。
MFRが0.1g/10分未満の場合、押出負荷が高すぎて溶融混合ができない場合がある。また、MFRが30g/10分を超えると目的とする溶融張力の改良効果が充分得られない場合がある。
【0032】
本発明に用いられる結晶性オレフィン共重合体は、公知のチーグラー・ナッタ型触媒または公知のシングルサイト触媒(メタロセン系等)を用いて製造することができるが、本発明の結晶性改質オレフィン樹脂の衝撃強度、耐傷付き性の観点から、公知のシングルサイト触媒(メタロセン系等)が好ましく、かかるシングルサイト触媒としては、例えば、特開昭58−19309号公報、特開昭60−35005号公報、特開昭60−35006号公報、特開昭60−35007号公報、特開昭60−35008号公報、特開昭61−130314号公報、特開平3−163088号公報、特開平4−268307号公報、特開平9−12790号公報、特開平9−87313号公報、特開平11−80233号公報、特表平10−508055号公報等に記載のメタロセン系触媒、特開平10−316710号公報、特開平11−100394号公報、特開平11−80228号公報、特開平11−80227号公報、特表平10−513489号公報、特開平10−338706号公報、特開平11−71420号公報等に記載の非メタロセン系の錯体触媒が挙げられる。これらの中でも、入手容易性の観点から、好ましくはメタロセン触媒であり、より好ましくはシクロペンタジエン形アニオン骨格を少なくとも1個有し、C1対掌構造を有する周期表第3族〜第12族の遷移金属錯体である。また、メタロセン触媒を用いた製造方法としては、例えば欧州特許公開第1211287号明細書の方法が挙げられる。
【0033】
本発明に用いられる有機過酸化物の添加量は、結晶性オレフィン共重合体100重量部に対し、0.1〜4重量部であり、好ましくは0.3〜3重量部であり、より好ましくは0.3〜2重量部である。添加量が過少であると溶融張力の向上が小さく、十分な成形加工性が得られない場合がある。また、添加量が過多になると架橋反応によるゲルの生成や、分解による低分子量成分の生成により十分な衝撃強度が得られない場合がある。
本発明に用いられる有機過酸化物は、1分間分解半減期温度が50〜130℃であり、より好ましくは70〜120℃であり、更に好ましくは90〜120℃である。
有機過酸化物の1分間分解半減期温度が低すぎると、混合時の発熱により有機過酸化物が分解を生じてしまい、添加量に見合う溶融張力の向上が得られない場合がある。また、分解温度が高すぎると所定の熱処理時間内で充分な反応が起こらず、目的とする溶融張力の向上が得られない場合や、分子量の低下により衝撃強度が不十分となる場合がある。
【0034】
また、本発明に用いられる有機過酸化物は、分解してラジカルを発生した後、ポリオレフィン樹脂からプロトンを引き抜く作用があることが好ましい。1分間分解半減期温度が50〜130℃であるラジカル重合開始剤としては、ジアシルパーオキサイド化合物、パーカボネート化合物やアルキルパーエステル化合物等が挙げられる。
【0035】
パーカボネート化合物としては、ジセチルパーオキシジカーボネート、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート,ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジミリスチルパーオキシカーボネート等が挙げられる。
【0036】
アルキルパーエステル化合物としては、1,1,3,3−テトラメチルブチルネオデカノエート、α―クミルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート等が挙げられる。
【0037】
他のラジカル重合開始剤としては、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブテン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、n−ブチル−4,4−ビス(t−ベルオキシ)バレラート、ジ−t−ブチルベルオキシイソフタレート、ジクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等が挙げられる。上記ラジカル重合開始剤は、1種のみならず2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0038】
本発明に用いられる有機過酸化物は、公知の希釈剤で希釈されたものを用いてもよい。希釈剤としては、例えば、タルク、クレー、シリカ、炭酸カルシウム等のフィラー類やポリオレフィン系樹脂のパウダー等粉末状のもの、パラフィン系、ナフテン系、芳香族系の各種オイルやジオクチルフタレートなどの可塑剤など、常温で液状の炭化水素系化合物や、シリコーンオイルや変性シリコーンオイルなど常温で液状の珪素系化合物などが挙げられる。
希釈剤は、オレフィン樹脂のパウダーや常温で液状の炭化水素系化合物が好ましく、オレフィン樹脂のパウダーがより好ましい。
【0039】
本発明に用いられる有機過酸化物を希釈剤により希釈されたマスターバッチとして使用する場合、有機過酸化物と希釈剤の合計を100重量%とするとき、有機過酸化物は好ましくは3〜30重量%の濃度である。
有機過酸化物の濃度が過少であると希釈剤の影響により衝撃強度が不足する場合がある。また、有機過酸化物の濃度が過多になるとマスターバッチの分散性が低下し、溶融張力の改良効果が充分に得られない場合がある。
【0040】
本発明に用いられる有機過酸化物のマスターバッチの製造方法としては、例えば、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、ブレンダー等を用いて、室温または必要に応じて有機過酸化物の性能を損なわない範囲内の温度で混合することができる。また必要に応じて不活性ガスの雰囲気下で行うこともできる。また、減圧下で配合することにより有機過酸化物の含浸を促進させることもできる。
【0041】
本発明の結晶性改質オレフィン樹脂は、結晶性オレフィン共重合体と有機過酸化物を室温〜50℃、好ましくは室温〜40℃で混合し、得られた混合物を熱処理することにより製造される。混合温度が50℃を超えると、有機過酸化物の分解反応が開始し、目的とする溶融張力が得られない場合がある。
結晶性オレフィン共重合体と有機過酸化物の好ましい混合方法としては、例えば、各成分の全部もしくはいくつかに分割したものを、ヘンシェルミキサー、タンブラーミキサー、リボンブレンダー、ブレンダー等を用いて混合物とする方法などを挙げることができる。
【0042】
本発明において結晶性オレフィン共重合体と有機過酸化物の混合物を熱処理する方法としては公知の方法が適用可能であり、各種オーブン、オートクレーブなど加熱雰囲気下で処理する方法や、赤外線、遠赤外線、可視光線、紫外線などの照射により熱処理する方法などが挙げられる。
また、混合と熱処理を同時に実施可能な方法として、例えば溶融混練方法が挙げられる。これは、ニーダー、バンバリーミキサー、プラストミル、ブラベンダーなどのバッチ式溶融混練装置や、カレンダー成形機やロール混練機、一軸または二軸の押出機等の連続式溶融混練装置など、公知の手段が広く採用可能である。
本発明の結晶性改質オレフィン樹脂を得る方法としては、長鎖分岐の生成を樹脂内で均一に生じさせる観点より溶融混練方法での実施が好ましい。
【0043】
熱処理の温度は、好ましくは150〜220℃であり、より好ましくは150〜200℃であり、特に好ましくは160〜190℃の範囲である。熱処理の温度が低すぎるとラジカル重合開始剤の反応速度が遅く、目的とする改質効果を得るために長時間の混練が必要となり、樹脂の劣化による分子量低下を生じる場合がある。また、熱処理温度が高すぎると有機過酸化物の急激な分解により局部的にゲルが生成する場合や、原料樹脂が分解し、目的とする溶融張力の向上効果が得られない場合がある。
【0044】
熱処理の方法として溶融混練を用いる場合、例えば、前半と後半の熱処理の温度を変えることができる。例えば、前半部分を低く温度設定することで各成分の分散を優先しながら緩やかに熱処理を実施し、後半部分を高く温度設定し、未反応の有機過酸化物を充分反応させるなどの方法を取ることができる。
【0045】
熱処理の時間は、好ましくは0.1〜60分間であり、より好ましくは0.5〜40分間である。熱処理時間が短すぎると溶融張力の改良効果が十分得られない場合がある。また、熱処理時間が長すぎると結晶性オレフィン共重合体の分解により、十分な衝撃強度が得られない場合がある。
本発明の結晶性改質オレフィン樹脂の製造時、熱処理は低酸素濃度条件で実施するのが好ましい。低酸素濃度条件とは、例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガスなどの不活性ガスにより熱処理雰囲気を置換したものであり、なかでも安全性、経済性、取り扱い性の観点より窒素ガスの適用がより好ましい。
【0046】
本発明における結晶性改質オレフィン樹脂には、その目的、効果を大きく阻害しない範囲で、一般にポリオレフィン系樹脂に添加される公知の物質、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、中和剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、銅害防止剤、難燃剤、発泡剤、可塑剤、各種フィラー等を配合することも可能である。
【0047】
本発明の結晶性改質オレフィン樹脂は、他の公知の樹脂との樹脂組成物としても、各種成形用途に好適に使用することができる。
【0048】
他の公知の樹脂としては種々の熱可塑性樹脂が挙げられ、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等のポリエチレン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体樹脂、エチレン−アクリル酸エステル共重合体樹脂、エチレン−メタクリル酸共重合体樹脂、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体樹脂、エチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体樹脂、エチレン−アクリル酸エステル−メタクリル酸グリシジル共重合体樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エチレン−環状オレフィン共重合体樹脂が挙げられる。また、これらの公知の樹脂は、本願発明の目的、効果を大きく阻害しない範囲で1種だけでなく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
上記の熱可塑性樹脂として好ましくは、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)系樹脂等のポリオレフィン系樹脂であり、より好ましくは炭素原子数2以上の脂肪族オレフィンに由来する単量体単位を主たる単位とするポリオレフィン系樹脂であり、更に好ましくは炭素原子数3以上の脂肪族オレフィンに由来する単量体単位を主たる単位とするポリオレフィン系樹脂である。中でも、リサイクル性の観点より、ポリプロピレン系樹脂が特に好ましい。
【0050】
ポリプロピレン系樹脂の一般的な製造方法としては、例えば、チタン含有固体状遷移金属成分と有機金属成分とからなるチーグラー・ナッタ型触媒、または、少なくとも1個のシクロペンタジエニル骨格を有する周期表第4族〜第6族の遷移金属化合物と助触媒成分とからなるメタロセン触媒を重合用触媒として用い、スラリー重合法、気相重合法、バルク重合法、溶液重合法またはこれらを組み合わせた重合法で、一段重合法または多段重合法によって、プロピレンを重合してプロピレン単独重合体を製造する方法や、プロピレンと、炭素原子数2〜12のオレフィン単位からなる群から選ばれる少なくとも1種のオレフィン(プロピレンを除く)単位を共重合して共重合体を製造する方法が挙げられる。また、ポリプロピレン系樹脂として、市販品を用いてもよい。
【0051】
本発明の結晶性改質オレフィン樹脂を含む樹脂組成物の全体を100重量部としたとき、結晶性改質オレフィン樹脂の含有量は、樹脂組成物の成形加工性の観点から、好ましくは1〜90重量部であり、より好ましくは1〜80重量部であり、更に好ましくは2〜60重量部の範囲である。
結晶性改質オレフィン樹脂の含有量が少ない場合、成形加工性が十分でないことがあり、例えば、次に述べる発泡成形法においては、発泡成形体の発泡倍率が不足する場合がある。一方、結晶性改質オレフィン樹脂の含有量が多い場合、溶融張力が高すぎることによって発泡成形体の発泡倍率が不足する場合がある。
【0052】
本発明の結晶性改質オレフィン樹脂および該樹脂を含む樹脂組成物は、例えば、発泡成形法、押出成形法、異型押出成形法、多色押出成形法、被覆(芯入)押出成形法、射出成形法、圧縮成形法、中空成形法、粉末成形法、カレンダー成形法、ブロー成形法、インフレーション法等の公知の成形方法によって各種の成形品とすることが可能であり、なかでも発泡成形に好適に用いられる。発泡成形には揮発性溶剤や無機ガスを用いた押出発泡、熱分解型発泡剤を用いた化学発泡等の方法を採用することができる。
【0053】
粉末成形法としては、例えば、スラッシュ成形法、流動浸漬法、静電塗装法、粉末溶射法、粉末回転成形法が挙げられる。
【0054】
カレンダー成形法としては、例えば、厚さ精度の高い平滑なシートを連続生産し得るシーティング加工法、ピンホールがなく厚さ精度の高いシートを連続生産し得るダブリング加工法、布とシートとを貼合せて複合体を連続生産し得るトッピング加工法、接着性向上を目的として、熱可塑性エラストマー組成物を布にすり込むフリクション加工法、ロール表面の彫刻模様をシート表面に連続して型付けし得るプロファイリング加工法が挙げられる。
【0055】
本発明の結晶性改質オレフィン樹脂を成形して得られる成形体は、その優れた特徴を利用して、例えば、車両部品、電気・電子機器部品、電線、建築材料、農業・水産・園芸用品、化学産業用品、土木資材、産業・工業資材、家具、文房具、日用・雑貨用品、衣服、容器・包装用品、玩具、レジャー用品、医療用品等の用途に用いることができる。
【0056】
車両部品としては、例えば、インパネ、ドア、ピラー、エアーバッグカバー等の自動車内装表皮、オーバーフェンダー、クラウディングパネル、ルーフレール、サイドモール等の自動車外装部品、ホース、チューブ、ガスケット、パッキング、ウェザーストリップ、各種シールスポンジ、ウォッシャー液ドレンチューブ、燃料タンク用クッション材、自転車部品が挙げられる。
【0057】
電気・電子機器部品としては、例えば、電気・機械部品、電子部品、弱電部品、家電部材、冷蔵庫用品、照明器具、電気用カバーが挙げられる。
上記の電線として、プラスチックケーブル、絶縁電線、電線保護材が挙げられる。
【0058】
建築材料としては、例えば、リブ、巾木、パネル、ターポリン等の壁・天井材用途、波板、樋および屋根下地材等の屋根材用途、敷居材やタイル等の床部材用途や、目地、目地棒、防水シート等の防水用途、ダクト、ケーブルダクト、プレハブ部材、浄化槽等の設備・装置部品用途、建築用エッジ、建築用ガスケット、カーペット抑え、アングル、ルーバー等の構造・造作材用途、ジョイナー、養生シート等の工業資材用途が挙げられる。
【0059】
農業・水産・園芸用品としては、例えば農業用ハウス用途が挙げられる。
産業・工業用資材として、例えば、機械カバー、機械部品、パッキング、ガスケット、フランジ、レザー帆布、ボルト、ナット、バルブ、金属保護用フィルム、凹凸付ホース、緩衝材が挙げられる。
家具としては、例えば、キャビネット、スツール、ソファー、マット、カーテン、テーブルクロスが挙げられる。
【0060】
文房具としては、例えば、カードケース、筆記具ケース、アクセサリー、キーケース、キャッシュカードケース、ステッカー、ラベル、ブックカバー、ノートカバー、バインダー、手帳、表紙、ファイル、カード、定期類、下敷き、ホルダー、マガジントレー、アルバム、テンプレート、筆記具軸が挙げられる。
【0061】
日用・雑貨用品としては、例えば、風呂蓋、すのこ、バケツ、洋服カバー、布団ケース、洋傘、傘カバー、すだれ、裁縫用具、棚板、棚受け、額縁、エプロン、トレー、テープ、紐、ベルト類、鞄が挙げられる。
衣服としては、例えば、レインコート、雨具シート、子供レザーコート、履き物、シューズカバー、手袋、スキーウエア、帽子、帽子用副資材が挙げられる。
【0062】
容器・包装用品としては、例えば、食品容器、衣料包装品、梱包・包装資材、化粧品瓶、化粧品容器、薬品瓶、食品瓶、理化学瓶、洗剤瓶、コンテナ、キャップ、フードパック、積層フィルム、工業用シュリンクフィルム、業務用ラップフィルムが挙げられる。
【0063】
医療用品としては、例えば、輸液バッグ、連続携行式腹膜透析バッグ、血液バッグが挙げられる。
【実施例】
【0064】
以下実施例により、本発明を説明するが、これらは単なる例示であり、本発明を逸脱しない限りこれら実施例に限定されるものではない。
[1]材料
(1)結晶性オレフィン共重合体
EP−1:プロピレン−エチレン共重合体
メタロセン系触媒を用いて重合されたプロピレン−エチレン共重合体(以下、共重合体EP−1と称す)を用いた。エチレンに由来する単量体単位の含有量は3.7重量%(プロピレン−エチレン共重合体全体を100重量%とする)、分子量分布は2.4、重量平均分子量は52.0万、極限粘度は2.02dl/gであった。
共重合体EP−1のMFR(230℃、21.18N)は2g/10分、示差走査型熱量計で測定された最大の結晶融解ピーク温度は124℃、結晶の融解熱量は67J/gであった。共重合体EP−1の物性評価結果を表1に示す。
EP−2:プロピレン−エチレン共重合体
チーグラー・ナッタ系触媒を用いて重合されたプロピレンーエチレン共重合体(以下、共重合体EP−2と称す)を用いた。エチレンに由来する単量体単位の含有量は0.3重量%、分子量分布は4.0、重量平均分子量は101万、極限粘度は3.02dl/gであった。
共重合体EP−2のMFR(230℃、21.18N)は0.5g/10分、示差走査型熱量計で測定された最大の結晶融解ピーク温度は163℃、結晶の融解熱量は96J/gであった。共重合体EP−2の物性評価結果を表1に示す。
【0065】
【表1】

【0066】
(2)P−1:有機過酸化物
有機過酸化物として、1分間分解半減期温度が100℃である有機過酸化物ジセチルパーオキシジカーボネート(化薬アクゾ製のパーカドックス24FL)を用いた。
【0067】
[2]物性
(1)結晶性オレフィン共重合体の単量体単位含有量
核磁気共鳴装置(Bruker社製 商品名AC−250)を用いて、1H−NMRスペクトル、13C−NMRスペクトルの測定結果に基づき算出した。具体的には、13C−NMRスペクトルにおいて、プロピレン単量体単位由来のメチル炭素のスペクトル強度と1−ブテン単量体単位由来のメチル炭素のスペクトル強度との比からプロピレン単量体単位と1−ブテン単量体単位の組成比を算出し、次に、1H−NMRスペクトルにおいて、メチン単位とメチレン単位由来の水素のスペクトル強度とメチル単位由来の水素のスペクトル強度との比からエチレン単量体単位、プロピレン単量体単位および1−ブテン単量体単位の組成比を算出した。
【0068】
(2)結晶性
本発明の結晶性改質オレフィン樹脂、および、本発明に用いられる結晶性オレフィン共重合体の結晶性は、JIS K 7122(1987)に従う示差走査熱量測定(DSC)において、−50℃〜200℃の温度範囲に観測される結晶融解ピークの有無と結晶融解熱量によって測定され、結晶性とは結晶融解ピークが観測され、そのピークの結晶融解熱量が30J/gを超えることをいう。
【0069】
上記、結晶性の測定に用いた示差走査熱量計(セイコー電子工業社製DSC220C:入力補償DSC)を用いた測定は、以下の条件で実施した。
(i)試料約5mgを室温から30℃/分の昇温速度で200℃まで昇温し、昇温完了後、5分間保持した。
(ii)次いで、200℃から10℃/分の降温速度で−50℃まで降温し、降温完了後、5分間、保持した。
(iii)次いで、−50℃から10℃/分の昇温速度で200℃まで昇温した。この(iii)で観察されるピークが結晶の融解ピークである。
【0070】
(3)極限粘度[η](dl/g)
135℃において、ウベローデ粘度計を用いて測定した。テトラリン単位体積あたりの結晶性オレフィン共重合体の濃度cが、0.6、1.0、1.5mg/mlである結晶性オレフィン共重合体のテトラリン溶液を調整し、135℃における極限粘度を測定した。それぞれの濃度で3回繰り返し測定し、得られた3回の値の平均値をその濃度での比粘度(ηsp)とし、ηsp/cのcをゼロ外挿した値を極限粘度[η](dl/g)として求めた。値が大きいほど分子量が高いことを表す。
【0071】
(4)分岐指数
本明細書中に記載された方法により測定した。
本発明に用いられる直鎖状の結晶性オレフィン共重合体を測定したところ、直鎖状のオレフィン共重合体の固有粘度[η]Lと重量平均分子量(Mw)との間には次式の関係にあることが示されたので、各試料の実測した重量平均分子量(Mw)を代入して、同一重量平均分子量の固有粘度[η]Lを求め、この値から分岐指数を計算した。
log[η]L=0.769×log(Mw)−4.09
(5)分子量分布
ゲルパーミエイションクロマトグラフ(GPC)によって下記の条件で測定を行った。
装置:Waters社製 150C ALC/GPC
カラム:昭和電工社製Shodex Packed ColumnA−80M 2本
温度:140℃
溶媒:o−ジクロロベンゼン
溶出溶媒流速:1.0ml/分
試料濃度:1mg/ml
測定注入量:400μl
分子量標準物質:標準ポリスチレン
検出器:示差屈折
【0072】
(6)メルトマスフローレート(MFR、単位:g/10分)
JIS K 7210(1999)のA法に従い、荷重21.2N、温度230℃の条件で測定を行った。値が大きいほど流動性が良好であることを表す。
【0073】
(7)溶融張力(単位:cN)
東洋精機(株)製メルトテンションテスターを用い、下記条件にて溶融張力を測定した。値が大きいほど、溶融張力に優れ、中空成形時や真空成形時の耐ドローダウン性などの成形加工性に優れることを表す。オリフィス:L/D=4(D=2mm)
測定温度:190℃
予熱時間:10分
押出速度:5.7mm/分
引取速度:3.2m/分
【0074】
(8)衝撃強度(単位:kJ/m2
引張衝撃強度は、23℃の室温下、S型形状の試験片を用いて、ASTM D1822−61Tに規定された方法に従い測定した。値が大きいほど衝撃強度に優れることを表す。評価に用いたサンプルは、230℃の熱プレス成形機にて厚さ1mmのシートを作成し、成形後、室温23℃、湿度50%に調整された恒温室内で24時間以上状態調整して用いた。
【0075】
(9)耐傷付き性
成形品表面に傷をつけ、その傷の残り度合いを表面粗さ計で測定し、耐傷付き性の指標として用いた。値が小さいほど耐傷付き性が良好であることを表す。
サンプルは、230℃の熱プレス成形機にて1mmのシートを作成し、成形後、室温23℃、湿度50%に調整された恒温室内で24時間以上状態調整したものを用いた。
先端半径0.05mmのサファイア針を取り付けた表面性試験機(新東科学株式会社製HEIDON−14S)を用い、荷重200g、移動速度75mm/分の条件でシート成形品の表面に傷を付け、傷付後1時間以内に、傷深さを表面粗さ計で測定した。
表面粗さは、レーザー顕微鏡(キーエンス製 VK−8500型)を用い、カラー超深度モード、測定ピッチ0.5μm、対物レンズ20倍で測定し、得られた三次元画像を傾き補正した後、測定範囲内の表面粗さ(Ry)を求めた。表面粗さはn=5の平均値で表した。
【0076】
[実施例1]
窒素30cc/分で吹き付けたローター回転数20rpm、ジャケット温度220℃のブラベンダープラスチコーダー製バッチ式混練機に結晶性オレフィン共重合体として共重合体EP−1 100重量部を投入し、溶融させた後、有機過酸化物P−1 1重量部、酸化防止剤としてチバスペシャルティケミカルズ(株)製Irganox1010 0.12重量部を予め均一に混合した混合物を1分以内に混練機内に投入した。
原料投入後、ローター回転数60rpmで5分間溶融混練し、結晶性改質オレフィン樹脂(以下、樹脂Aと称する)を得た。得られた樹脂Aの物性を表2に示す。
[比較例1]
結晶性オレフィン共重合体として共重合体EP−2 100重量部とした以外は、実施例1と同様の方法で結晶性改質オレフィン樹脂(以下、樹脂Bと称する)を得た。得られた樹脂Bの物性を表2に示す。樹脂Bは溶融張力が不安定なため、定量的な数値を得ることができなかった。
[比較例2]
有機過酸化物P−1を用いなかった以外は、実施例1と同様の方法で結晶性改質オレフィン樹脂(以下、樹脂Cと称する)を得た。得られた樹脂Cの物性を表2に示す。
【0077】
【表2】

【0078】
本発明の範囲に含まれる実施例1は、衝撃強度、耐傷付き性、成形加工性に優れる。本発明の結晶性改質オレフィン樹脂の要件である分岐指数、分子量分布、MFRを満足していない比較例1、2は、実施例と比較して各物性が不十分である。したがって、本発明の要件を満足することが重要である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(i)〜(v)のすべてを満たす結晶性改質オレフィン樹脂。
(i)エチレン、プロピレンおよび炭素原子数4〜20のオレフィンからなる群から選ばれる少なくとも2種のオレフィンに由来する単量体単位を含有し、エチレンに由来する単量体単位の含有量が60モル%以下(ただし、結晶性改質オレフィン樹脂全体を100モル%とする)
(ii)JIS K7122に従う示差走査熱量測定において、−50℃〜200℃の範囲で測定して得られる結晶の融解熱量が30J/gを超える
(iii)分岐指数が1未満
(iv)分子量分布が1.5〜3
(v)MFRが0.1〜30g/10分
【請求項2】
以下の(i)〜(iv)のすべてを満たす結晶性オレフィン共重合体と、1分間分解半減期温度が50〜130℃である有機過酸化物とのを室温〜50℃で混合し、得られた混合物を、150〜220℃で熱処理して得られる請求項1記載の結晶性改質オレフィン樹脂の製造方法。
(i)エチレン、プロピレンおよび炭素原子数4〜20のオレフィンからなる群から選ばれる少なくとも2種のオレフィンに由来する単量体単位を含有し、エチレンに由来する単量体単位の含有量が60モル%以下(ただし、結晶性オレフィン共重合体全体を100モル%とする)
(ii)JIS K7122に従う示差走査熱量測定において、−50℃〜200℃の範囲で測定して得られる結晶の融解熱量が30J/gを超える
(iii)分子量分布が1.5〜3
(iv)MFRが0.1〜30g/10分
【請求項3】
請求項2記載の結晶性オレフィン共重合体100重量部に対し、請求項2記載の有機過酸化物を0.1〜4重量部混合する請求項2記載の結晶性改質オレフィン樹脂の製造方法。
【請求項4】
請求項1記載の結晶性改質オレフィン樹脂を成形して得られる成形体。

【公開番号】特開2008−239846(P2008−239846A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−83912(P2007−83912)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】