説明

結晶方位測定装置、結晶加工装置及び結晶加工方法

【課題】効率良く正確に結晶インゴットの結晶方位を測定し、効率良く結晶インゴットを加工することができる。
【解決手段】側面が研削される前の円筒形状を持ちかつ円筒軸Aに略垂直に切断された結晶Wが、切断で生じたカット面Waを下にして載置されるテーブル121とカット面WaにX線3aを照射して回折したX線3bを測定してカット面Waを基準とした結晶Wの結晶方位を算出する算出手段127bとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶インゴットの加工の際に結晶方位を測定する結晶方位測定装置、結晶方位を測定して結晶インゴットを加工する結晶加工装置及び結晶加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体産業ではシリコン等の単結晶材料が使用されている。半導体製造プロセスで利用される単結晶材料は、通常、薄い円板形状のウェハとして供給される。このウェハは、例えば、チョコラルスキー引き上げ法等の製造技術を用いて成長させた円筒形状の結晶インゴットを、薄くスライスすることで作られる。結晶インゴットをウェハにスライスするとき、ウェハ表面が結晶方位に合うように、あるいは、結晶方位に対して所定角度傾斜するようにスライスする(オフカット)。
【0003】
図22に示すフローチャートを用いて結晶インゴットからウェハまで加工する従来の結晶加工方法について説明する。
【0004】
引き上げ法等で生成された結晶インゴットの形状は略円筒形状ではあるものの、両端面や側面(円筒周面)には凹凸がある。したがって、まず、円筒研削機で結晶インゴットの断面が円形になるように側面を研削(円筒研削)する(S1)。続いて、第1の結晶方位測定装置で結晶インゴットの側面の結晶方位(半径方向結晶方位)を測定する(S2)。
【0005】
半径方向結晶方位が測定されると、円筒研削機で半径方向結晶方位を基準にして結晶インゴットの側面にノッチを加工する(S3)。このノッチ(V溝)は、ウェハに加工された際にウェハの半径方向結晶方位を判別するためのマークである。なお、ノッチの代わりに結晶インゴットの側面にオリフラ面を加工しても良い。
【0006】
結晶インゴットにノッチが加工されると、切断機で、結晶インゴットの両端を円筒軸に直交するカット面で切断する(S4)。続いて、第2の結晶方位測定装置で、結晶の切断によって表れたカット面の結晶方位(軸方向結晶方位)を測定する(S5)。円筒研削と両端の切断によって結晶インゴットは円筒形になっているが、一般に、軸方向結晶方位は円筒軸に一致せず、カット面と軸方向結晶方位の方向の関係が不明であるため、ステップS5で軸方向結晶方位を測定してスライスの基準となる方向を決定する必要がある。
【0007】
軸方向結晶方位が測定された結晶インゴットは、プレートの基準方向に軸方向結晶方位を合わせてプレート上に接着される(S6)。なお、オフカットのウェハを生成する場合には、結晶インゴットは、プレートの基準方向に対して、軸方向結晶方位をオフカット角度傾斜させてプレートに接着される。
【0008】
プレートに結晶インゴットが接着されると、ワイヤーソーを有する切断機で結晶インゴットをスライスして複数のウェハを生成する(S7)。例えば、この切断機は、複数のワイヤーソーを平行に備えており、結晶インゴットから一度に複数のウェハをスライスすることができる。このとき、プレートの方向を基準にスライスすることで、各ウェハのウェハ表面に対して結晶方位(軸方向結晶方位)を垂直にする(オフカットの場合にはオフカット角度傾斜させる)ことができる。
【0009】
ウェハがスライスされると、面取り機で、スライスされた各ウェハの側面を面取り加工する(S8)。面取り加工では、各ウェハの側面を面取り研削しながら同時にノッチを除いてウェハ全体が規定の直径の真円の円盤状になるように加工する。
【0010】
図22で上述したように、従来の結晶加工方法においては、始めに結晶インゴットを円筒研削した後に(S1)、結晶インゴットの両端を切断し(S4)、カット面の結晶方位(軸方向結晶方位)を測定している(S5)。このように軸方向結晶方位の測定の前に円筒研削するのは、図23に示すように、軸方向結晶方位を測定する第2の結晶方位測定装置が結晶インゴットの側面を支えて軸方向結晶方位を測定するためである(例えば、特許文献1参照)。
【0011】
具体的には、図23に示すように、従来の結晶方位測定装置は、結晶インゴット64を支持する2本のガイドローラ68及びガイド板66を有している。ガイドローラ68は、ガイドローラ68上に載置される結晶インゴット64のカット面641をガイドローラ68に垂直なガイド板66のガイド面661に押し付けるように結晶インゴット64を支持する。このとき、ガイド板66はC点に対し微小角度回動するようになっており、ガイド面661とカット面641が密着する。
【0012】
また、従来の結晶方位測定装置は、ガイド板66に垂直な回転板67を有している。この回転板67は、結晶インゴット64のカット面641にコリメータ63で絞った第1X線62aを照射するX線管61とカット面641上の測定点Cで回折した第2X線62bを検出するX線検出器65とを備えている。図23に示すように、X線管61とX線検出器65とは、第1X線62aと第2X線62bとが成す角度が結晶方位の種類に応じたブラッグ角θ0を基準とした180°−2θ0になるように配置されている。したがって、第1X線62aが測定点Cに照射して、ブラッグ角θ0で回折した第2X線62bがX線検出器65で検出される。
【0013】
図23に示す結晶方位測定装置では、ガイド板66がカット面641に接した状態で回転板67に垂直であって測定点Cを通る回転軸でガイド板66を基準に回転板67を回転させ、X線検出器65の出力がピークの回転角度θ1を測定する。また、ピークの回転角度θ1が測定されると、結晶インゴット64をガイドローラ68上で円筒軸に対して90°回転させて固定し、同様にガイド板66がカット面641に接した状態で測定点Cを通る同一の回転軸で回転板167を回転させ、X線検出器65の出力がピークになる回転角度θ2を測定する。測定された回転角度θ1,θ2により、軸方向結晶方位を求めることができる。
【0014】
従来はこのようにガイドローラ68が結晶インゴット64の側面を基準に回転させて結晶方位を測定する結晶方位測定装置を使用していた。この場合、結晶インゴット64の側面に凹凸があると、結晶インゴット64の姿勢が乱れ、カット面641とガイド面661の密着性に悪影響を与え、正確に結晶方位を測定することができない。したがって、まず、断面が円形になるように円筒研削して側面の凹凸をなくした後、側面を基準に回転して軸方向結晶方位を測定していた。
【0015】
このように軸方向結晶方位が測定されると、測定された軸方向結晶方位を基準にして円筒形の結晶インゴットがスライスされてウェハが得られる。したがって、スライスによって得られるウェハの形状は、結晶インゴットの円筒軸と軸方向結晶方位とが一致した場合には円形状となり、円筒軸と軸方向結晶方位とのずれが大きくなるほど短軸と長軸との差が大きい楕円形状になる。
【0016】
得られたウェハが円形状であれば面取り加工では単にウェハの側面に沿って研削すればよいため、面取り加工は短時間でスムーズに行なうことができる。これに対し、仮にウェハが楕円形状であるときには、楕円形状を面取りしながら同時に円形状に研削する必要があり、研削量が多くなり面取り加工で必要な時間が長く、周方向で研削量が異なるため加工もスムーズでなくなる。
【0017】
シリコン等の単一元素の単結晶材料では、結晶インゴットを生成する際に、円筒軸と結晶方位(軸方向結晶方位)とがかなり良く一致するように成長させることが可能である。このように生成された結晶インゴットをスライスして得られたウェハは略円形状となり、面取り加工は短時間でスムーズに行なうことができる。
【0018】
また、オフカットの場合であっても、結晶インゴット生成の際にオフカット分傾斜させて種結晶を取り付けて引き上げることが可能であり、円筒軸から結晶方向が概略オフカット分傾斜した結晶インゴットを生成することができる。そのため、このように生成された結晶インゴットをスライスして得られたオフカットのウェハも略円形状となり、面取り加工は短時間でスムーズに行なうことができる。
【特許文献1】特開平7−146257号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
従来、半導体基板の材料はシリコン等の単一元素が主流であった。これに対し、近年、単一元素では得られない性能と用途を有する化合物単結晶の半導体基板が需要を伸ばしている。半導体基板の材料となる化合物としては、例えば、ガリウム砒素(GaAs)、インジウムリン(InP)、サファイア(Al23)等がある。また化合物半導体基板の用途としては、高速トランジスタや高耐熱トランジスタ、発光ダイオード、半導体レーザー、太陽電池等がある。さらに、半導体基板の他にも、化合物単結晶は、蛍石(CaF2)や水晶等が、レンズや発振子等として利用されている。
【0020】
しかし、図22に示すフローチャートを用いて上述したような従来の結晶加工方法は、化合物単結晶の結晶インゴットの加工には適さない。
【0021】
それは、第1に、オフカットのウェハを生成する際に結晶インゴットの円筒軸とスライス面(カット面)方位を一致させることが困難であり、化合物単結晶材料の場合にはウェハの加工時間が単一元素結晶材料のウェハの場合と比較して長くなるためである。
【0022】
これは、化合物半導体の一般的な特徴として、結晶が成長するとき不規則になりやすく、不均質になったり欠陥が生じたりして、大きな結晶が作りにくい特性のためである。
【0023】
すなわち、シリコンのように単一元素であればオフカット分傾けて結晶インゴットを成長させることができるのに対し、化合物単結晶の場合は、結晶が不均質になるため傾けて成長させることは困難になる。さらに、シリコン等の単一元素の結晶インゴットの場合、オフカットは0°〜4°程度であるのに対し、化合物単結晶の結晶インゴットの場合には、オフカットが0°〜15°程度と大きいことによる。
【0024】
したがって、生成された結晶インゴットの円筒軸とスライス面方位とのずれが大きくなる。このような結晶インゴットをスライスして得られるウェハは円形状とは程遠く、長軸と短軸の長さが大きく異なる楕円形状となる。スライスされたウェハが楕円形状であると、面取り加工に必要な時間は、円形状の単一元素のウェハの場合と比較して長くなる。1つの結晶インゴットからは複数枚(例えば数百枚)のウェハが得られるが、1つの結晶インゴットから得られるウェハの枚数をm枚とし、1枚のウェハの面取り加工で延長された時間をn秒とすると、ウェハの面取り加工に必要な時間は、m×n(秒)も延長されることとなり、円滑な結晶加工を妨げることになる。
【0025】
特に、化合物単結晶は硬くて加工しにくいものが多く、このとき楕円形状だと、著しく加工時間が長くなる。
【0026】
第2に、結晶インゴットの円筒軸とスライス面方位のずれが大きいことにより、結晶インゴットのプレートへの接着が困難となるためである。
【0027】
例えば、図22のフローチャートで説明した加工方法では、軸方向結晶方位が測定された結晶インゴットは、プレートの基準方向を基準にしてスライス面方位を合わせてプレートに接着される。このとき、1枚のプレートには、複数の結晶インゴットを接着することができるが、各結晶インゴットの円筒軸の方向とスライス面方位は異なるため、プレート上では結晶インゴットの向きを揃えて接着することができず、結晶インゴットをプレートに接着しにくい。
【0028】
第3に、化合物単結晶は、硬く加工がしにくいため、不良ウェハが生じやすい問題があるためである。
【0029】
円筒軸とスライス面方位とのずれが大きい結晶インゴットをスライスする場合、プレートに接着された結晶インゴットに対してワイヤーソーが斜めに当たってスライスされる。
【0030】
化合物単結晶は硬くて加工しにくいため、このような結晶インゴットの切断時にワイヤーソーが結晶インゴット表面を通過するとき横滑り力が働きワイヤーソーのたわみでスライス面が振れて、不良ウェハが生じる問題がある。
【0031】
また、図23を用いて上述したように、従来の結晶方位測定装置では、円筒研削後の結晶インゴットを測定していたため、円筒研削前の結晶インゴットの結晶方位を測定することができないという問題があった。
【0032】
上記課題に鑑み本発明は、効率良く正確に結晶インゴットの結晶方位を測定することが可能な結晶方位測定装置と、効率良く結晶インゴットを加工することのできる結晶加工装置及び結晶加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0033】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の結晶方位測定装置は、X線源から発生したX線を結晶に照射し、前記結晶から回折したX線をX線検出器で検出して前記結晶の結晶方位を測定する結晶方位測定装置であって、側面が研削される前の円筒形状を持ちかつ円筒軸に略垂直に切断された結晶が、前記切断で生じたカット面を下にして載置されるテーブルと前記カット面にX線を照射して回折したX線を測定して前記カット面を基準とした前記結晶の結晶方位を算出する算出手段とを備えることを要旨とする。
【0034】
上記構成の結晶方位測定装置では、結晶のカット面を下にテーブルに載置し、このカット面にX線を当てて回折されるX線を検出することができる。したがって、円筒研削前の結晶インゴットに対してカット面を基準にした軸方向結晶方位を測定することができる。
【0035】
また、請求項2に記載の結晶測定装置は、X線源から第1X線を発生させて結晶に照射し、前記結晶の測定点で回折した第2X線をX線検出器で検出して前記結晶の結晶方位を測定する結晶方位測定装置であって、側面が研削される前の円筒形状を持ちかつ円筒軸に略垂直に切断された結晶が、前記切断で生じたカット面を下にして載置されるテーブル面を有するとともに、前記X線源から発生した第1X線及び前記カット面上の前記測定点で回折した第2X線が通過するための貫通孔を前記テーブル面の中心に有するテーブルと、前記テーブル面に垂直であって前記テーブルの中心を通るφ軸を回転軸として前記テーブルを所定角度でφ回転させるφ回転手段と、前記第1X線が前記カット面に直交する測定面を沿うように、また所定角度で回折される前記第2X線が検出されるように、前記測定点を基準とした位置関係で前記X線源及び前記X線検出器を支持する支持手段と、前記測定面に垂直で前記測定点を通るθ軸を回転軸として前記支持手段を所定範囲内の回転角度でθ回転させるθ回転手段と、前記φ回転の各角度に対してθ回転するように前記φ回転手段及び前記θ回転手段を制御する制御手段と、前記X線検出器の検出データとθ回転の回転角度とから、前記カット面を基準として前記結晶の結晶方位を算出する算出手段とを備えることを要旨とする。
【0036】
上記構成の結晶方位測定装置では、結晶のカット面を下にテーブルに載置し、このカット面にX線を当てて回折されるX線を検出することができる。したがって、円筒研削前の結晶インゴットに対してカット面を基準にした軸方向結晶方位を測定することができる。
【0037】
請求項3に記載の結晶加工装置は、請求項1又は請求項2のいずれか1に記載の結晶方位測定装置と、前記カット面を、測定された前記結晶方位と所定角度で交差するように研削するカット面研削機と、前記結晶の側面を、前記カット面研削機で研削された新たなカット面と垂直に円筒形に研削する円筒研削機とを備えることを要旨とする。
【0038】
上記構成の結晶加工装置では、円筒研削前にカット面をウェハの面方向に合わせて研削し、この研削後のウェハの面方向に合わせたカット面に直交する円筒軸に対して円筒研削しているので、円筒研削後にカット面に平行の方向にスライスすると、スライス後のウェハは真円となる。したがって、真円なので短時間で効率良くウェハの面取り加工を行なうことが可能となる。また、研削後のカット面とウェハのスライス面が平行であるため、プレート接着時及びスライス時の位置合わせを容易に行なうことができる。
【0039】
請求項4に記載の結晶加工方法は、側面が研削される前の円筒形状を持ちかつ円筒軸に略垂直に切断された結晶を、前記切断で生じたカット面を下にしてテーブル上に位置決めするステップと、前記カット面にX線を照射して回折したX線を測定して前記カット面を基準とした前記結晶の結晶方位を算出するステップと、前記カット面を、算出された前記結晶方位と所定角度で交差するように研削するステップと、前記結晶の側面を、研削された新たなカット面と垂直に円筒形に研削するステップと、円筒形に研削された前記結晶を、前記新たなカット面と平行にで切断して複数のウェハを得るステップとを有することを要旨とする。
【0040】
上記構成の結晶加工方法では、円筒研削前にカット面をウェハの面方向に合わせて研削し、この研削後のウェハの面方向に合わせたカット面に直交する円筒軸に対して円筒研削しているので、円筒研削後にカット面に平行にスライスすると、スライス後のウェハは真円となる。したがって、真円なので、短時間で効率良くウェハの面取り加工を行なうことが可能となる。また、研削後のカット面とウェハのスライス面が平行であるため、プレート接着時及びスライス時の位置合わせを容易に行なうことができる。
【0041】
請求項5記載の結晶加工方法では、側面が研削される前の円筒形状を持ちかつ円筒軸に略垂直に切断された結晶を、前記切断で生じたカット面を下にしてテーブル上に位置決めするステップと、前記テーブルに垂直であって前記テーブルの中心を通るφ軸を回転軸として前記テーブルを所定角度でφ回転させるステップと、前記カット面上の測定点に照射する第1X線を発生するX線源と前記測定点から回折した第2X線を検出するX線検出器とを前記測定点を基準とした位置関係で支持する支持手段を、前記第1X線を含み前記カット面に直交する測定面に垂直であって前記測定点を通るθ軸を回転軸として所定範囲内の回転角度でθ回転させるステップと、前記φ回転の各角度に対してθ回転するように前記φ回転手段及び前記θ回転手段を制御するステップと、前記X線検出器の検出データとθ回転の回転角度とから、前記カット面を基準として前記結晶の結晶方位を算出するステップと、前記カット面を、算出された前記結晶方位と所定角度で交差するように研削するステップと、前記結晶の側面を、研削された新たなカット面と垂直に円筒形に研削するステップと、円筒形に研削された前記結晶を、前記新たなカット面と平行にで切断して複数のウェハを得るステップとを有することを要旨とする。
【0042】
上記構成の結晶加工方法では、円筒研削前にカット面をウェハの面方向に合わせて研削し、この研削後のウェハの面方向に合わせたカット面に直交する円筒軸に対して円筒研削しているので、円筒研削後にカット面に平行にスライスすると、スライス後のウェハは真円となる。したがって、真円なので短時間で効率良くウェハの面取り加工を行なうことが可能となる。また、研削後のカット面とウェハのスライス面が平行であるため、プレート接着時及びスライス時の位置合わせを容易に行なうことができる。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、結晶インゴットの結晶方位を効率良く測定することができるとともに、結晶インゴットを効率良く加工することのできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
〈結晶加工装置〉
図1のブロック図に示すように、本発明の最良の実施形態に係る結晶加工装置1は、加工前の結晶インゴットを保存する第1保存棚10aと、略円筒形状の結晶インゴットの両端を円筒軸と垂直に切断する第1切断機11と、両端の切断によって表れた結晶インゴットのカット面(断面)の結晶方位(軸方向結晶方位h)を測定する結晶方位測定装置12と、測定された軸方向結晶方位hに対して垂直にカット面を研削するカット面研削機13と、結晶インゴットの側面(周囲)を研削されたカット面に垂直に研削して結晶インゴットを円筒形にする円筒研削機14と、加工途中または加工後の結晶インゴットを保存する第2保存棚10bと、第1保存棚10a、第1切断機11、結晶方位測定装置12、カット面研削機13、円筒研削機14及び第2保存棚10b間における結晶インゴットの搬送を行なう第1搬送装置18aを有している。この第1搬送装置18aは、軌道に沿って結晶Wを搬送する例えば無人搬送車あるいはベルトコンベアのような装置である。
【0045】
また、結晶加工装置1は、第2保存棚10bに保存されている結晶インゴットをプレートに接着する接着ステージ15と、結晶インゴットを所定の厚さのウェハに切断(スライス)する第2切断機16と、切断で得られたウェハを面取り加工する面取り機17と、ウェハを保存する第3保存棚10cと、第2保存棚10b、接着ステージ15、第2切断機16、面取り機17及び第3保存棚10c間における結晶インゴット又はウェハの搬送を行なう第2搬送装置18bを有している。この第2搬送装置18bも第1搬送装置18aと同様に、軌道に沿って結晶インゴットまたはウェハを搬送する例えば無人搬送車あるいはベルトコンベアのような装置である。
【0046】
以下に、結晶加工装置1が有する主要な装置(結晶方位測定装置、カット面研削機、円筒研削機、面取り機)の構成について、図面を用いて説明する。
【0047】
《結晶方位測定装置》
図2(a)の正面図及び図2(b)の平面図を用いて結晶方位測定装置12について説明する。この結晶方位測定装置12は、結晶インゴットW(以下、「結晶W」とする)の軸方向結晶方位hを測定する。
【0048】
図2に示すように、結晶方位測定装置12は、結晶Wを載置し、φ軸20を回転軸として回転するテーブル121と、テーブル121を回転させるφ回転機構122と、結晶Wの測定点Cに第1X線3aを照射させるX線管123と、測定点Cで回折した第2X線3bを検出するX線検出器124と、X線管123及びX線検出器124が固定され、θ軸21を回転軸として所定角度回転するフレーム125と、フレーム125を回転させるθ回転機構126と、X線検出器124の検出データを入力するとともに、φ回転機構122及びθ回転機構126を制御する制御処理部127とを有している。
【0049】
テーブル121は、図2(b)に示すように、結晶Wを載置するテーブル面121aと、テーブル面121aに垂直であって、テーブル121上で結晶Wを位置決めする基準となる治具部材121bと、第1X線3a及び第2X線3bが通過する貫通孔121cとを有している。
【0050】
テーブル121に結晶Wが載置されるときには、結晶Wは、後述する第1カット面Wa1とテーブル面121aとが接するとともに、後述する仮オリフラ面Wb1が垂直面121dに接するように位置合決めされる。なお、以下で説明する結晶Wは、仮オリフラ面Wb1が加工されているカット面を第1カット面Wa1とし、反対側のカット面を第2カット面Wa2として説明する。
【0051】
テーブル121の回転軸であるφ軸20は、テーブル面121aに垂直であって、テーブル121(テーブル面121a)の中心を通る軸である。また、貫通孔121cの中心はテーブル121の中心と一致している。
【0052】
貫通孔121cは、第1X線3a及び第2X線3bの進行を妨げないように設けられる孔であり、その直径はX線管123及びX線検出器124との位置関係によって定められる。図2(a)に示す貫通孔121cの形状は、テーブル面121a側の直径と底面側の直径とが異なる円錐台形状である。
【0053】
φ回転機構122は、図2(b)に示すように、例えば歯車122aやベルト122bを有し、モータ(図示せず)の駆動で回転する歯車122aに連動するベルト122bの動きでφ軸20を回転軸としてテーブル121を回転させる。
【0054】
X線管123は、コリメータ123aによって細く絞った第1X線3aを結晶Wの測定点Cに照射し、測定点Cで回折した第2X線3bをX線検出器124が検出する。この測定点Cは、テーブル121に結晶Wを載置したときに、図2(a)に示すように、第1カット面Wa1とφ軸20との交点に設定するが、完全に交点と一致しなくても、交点に近い位置であればよい。
【0055】
測定点Cを含みテーブル面121aに垂直な面(図2(a)では、紙面に平行な面)を測定面としたとき、フレーム125は、図2(a)に示すように、測定する結晶面のブラッグ角をθ0として、第1X線3aと測定点Cで回折された第2X線3bとが成す角度が180°−2θ0となり、第1X線3aが測定面に含まれるように、X線管123とX線検出器124とを支持している。第2X線3bは、ほぼ測定面に沿って回折されるが、測定する結晶方位の側面からのずれにより、測定面を中心にずれる。このため、X線検出器124は、第2X線3bが測定面から少しずれても検出できるような大きさを持っている。ブラッグ角θ0は結晶Wの結晶面の種類によって異なる。したがって、フレーム125は、結晶Wの結晶面(カット面Wa)の種類に応じて第1X線3aと第2X線3bとが成す角度が180°−2θ0になるようにテーブル121と測定点Cを基準としてX線管123とX線検出器124との位置関係を調整する。
【0056】
θ回転機構126は、θ軸21を回転軸として、X線管123及びX線検出器124を支持するフレーム125を所定角度回転する。θ軸21は、上述した測定面に直交し、測定点Cを通る軸である。
【0057】
制御処理部127は、複数のφ回転位置でθ回転スキャンを行なうようにφ回転機構122及びθ回転機構126を制御する制御手段127aと、X線検出器124から第2X線3bの検出データを入力してX線検出器124から入力した検出データに基づいて、第1カット面Wa1を基準にした軸方向結晶方位hとしてx方向の傾斜角δx及びy方向の傾斜角δyを算出する算出手段127bと、X線検出器124のインタフェース(図示せず)とを有するコンピュータである。ここで、θ回転スキャンとは、フレーム125をθ軸に対し回転させながらX線検出器124で第2X線3bを検出することをいう。
【0058】
具体的には、制御手段127aは、90°毎にテーブル121をφ回転させる。また制御手段127aは、各φ回転位置でθ回転スキャンを行なって第2X線3bの検出値がピークとなるθを測定する。φ回転の初期位置を0°とし、φ回転角度を0°、90°、180°及び270°の4方位に変化させて測定されたθをそれぞれθ1、θ2、θ3、θ4としたとき、算出手段127bは、x方向の傾斜角δxを式(1)によって求め、y方向の傾斜角δyを式(2)によって求める。
【0059】
δx=(θ1−θ3)/2 ・・・(1)
δy=(θ2−θ4)/2 ・・・(2)
この傾斜角δx,δyは、φ軸20(すなわち第1カット面Wa1の法線(円筒軸A))を基準とした軸方向結晶方位hのx方向、y方向の傾斜角度を表わす。なお、式(1)及び式(2)を用いて上述した傾斜角の測定の一例では4方位(0°、90°、180°、270°)でθ回転スキャンを行っているが、例えば、特許第3847913号公報に記載されているように2方位(0°、90°)のみでθ回転スキャンを行なってもよい。
【0060】
《カット面研削機》
図3を用いて、結晶Wのカット面Wa1,Wa2を研削し、仮オリフラ面Wb1を加工するカット面研削機13について説明する。図3(a)はカット面研削機13の正面図、図3(b)は結晶Wの固定方法について説明するカット面研削機13の平面図、図3(c)は結晶Wのカット面Wa(Wa1〜Wa4)の研削について説明するカット面研削機13の断面図である。
【0061】
カット面研削機13は、砥石131と、軸22を回転軸として砥石131を回転させながら砥石131を研削面23(図3ではxy平面)に沿って移動させて結晶Wのカット面Waを研削又は仮研削し、または結晶Wの第1カット面Wa1に仮オリフラ面Wb1を加工する砥石駆動部132とを有している。また、カット面研削機13は、砥石駆動部132上で砥石131とカット面Waとを対向させて結晶Wを固定する固定部133と、固定部133を傾斜することで固定部133に固定された結晶Wを傾斜する傾斜機構134とを有している。
【0062】
固定部133は、図3(a)及び図3(b)に示すように、結晶Wの側面を保持して結晶Wを固定する。傾斜機構134は、結晶Wを固定する固定部133を傾斜することで結晶Wを傾斜する。ここで傾斜機構134は、第1カット面Wa1を仮研削する場合、固定部133を傾斜して結晶Wの概略の円筒軸A’に略直交する凹凸のある第1カット面Wa1が研削面23と略平行になるように調整する。また、傾斜機構134は、仮オリフラ面Wb1を加工する場合、第1カット面Wa1を仮研削した後に第1カット面Wa1が研削面23に直交するように仮研削の際の状態から固定部133を90°傾斜する。
【0063】
第1カット面Wa1の仮研削が終了すると、円筒軸Aが定義される。円筒軸Aは、図3(a)及び図3(c)に示すように、第1カット面Wa1に垂直で平均的に結晶Wの中央を通る線のことである。
【0064】
一方、傾斜機構134は、第1カット面Wa1が仮研削され、軸方向結晶方位hを測定後に第1カット面Wa1を研削する場合、第1カット面Wa1が研削面23に平行になる位置から固定部133を傾斜して結晶Wの軸方向結晶方位hが研削面23に直交するように調整する。具体的には、軸方向結晶方位hは第1カット面Wa1に垂直な円筒軸Aを基準にx方向の傾斜角δx及びy方向の傾斜角δyとして測定されている。したがって、軸方向結晶方位hに垂直に第1カット面Wa1を研削するためには、図4に示すように、結晶Wの円筒軸Aが研削面23に直交する、すなわちカット面Wa1が研削面に平行になる位置を基準としてxの負方向に傾斜角δxの角度を傾斜し、yの負方向に傾斜角δyの角度を傾斜させて研削すればよい。なお、第1カット面Wa1が軸方向結晶方位hに垂直に研削された新たな第1カット面Wa3では、図5に示すように、軸方向結晶方位hが第1カット面Wa3の直交軸(図4のz軸)と一致し、円筒軸Aと一致しなくなる。
【0065】
また、傾斜機構134は、第1カット面Wa1の研削後に第2カット面Wa2を研削する場合、第1カット面Wa1を研削したときの傾斜状態から180°傾斜(回転)することで、新たな第2カット面Wa4を新たな第1カット面Wa3に対して平行に研削することができる。
【0066】
砥石131は、円柱形であって、砥石131の円柱軸と回転軸である軸22(図3ではx軸と平行)とは一致する。砥石131が回転したとき、砥石131の側面の最上部と接する部分が研削されるため、図3(a)及び図3(c)に示すように、砥石131の側面の最上部と接する面を研削面23とする。
【0067】
カット面研削機13は、カット面Waを仮研削又は研削する場合、傾斜機構134が固定部133を傾斜後、図3(c)に示すように結晶Wのカット面Waと研削面23とが接するように傾斜機構134を下方に移動させ、又は砥石駆動部132を上方に移動させて位置合わせする。研削面23は砥石131の側面の最上部であるため、カット面Waと研削面23が接したときカット面Waには砥石131が接している。したがって、カット面研削機13では、砥石駆動部132が、砥石131を回転させながら研削面23に沿って砥石131を移動させることでカット面Waを研削する。このとき、砥石駆動部132は、砥石131の側面の最上部がカット面Waを研削できる範囲を砥石131の移動範囲として駆動する。
【0068】
また、カット面研削機13では、仮オリフラ面Wb1を加工する場合、結晶Wの仮オリフラ面Wb1を設ける位置を研削面23に接するように位置合わせし、砥石駆動部132が、仮オリフラ面Wb1が形成されるまで砥石131を回転させながら研削面23に沿って砥石131を移動させる。このとき、砥石駆動部132は、砥石131の側面の最上部が仮オリフラ面Wb1を加工できる範囲を移動範囲として駆動する。
【0069】
なお、カット面研削機13では、砥石駆動部132自体が移動する構成であってもよく、また、砥石駆動部132は固定されていて砥石131のみが移動する構成であってもよい。
【0070】
《円筒研削機》
図6を用いて、円筒形状の結晶Wの側面を研削する円筒研削機14について説明する。図6(a)は円筒研削機14の正面図であり、図6(b)は結晶Wの結晶方位(半径方向結晶方位k)の測定方法と結晶Wの研削について説明する円筒研削機14の断面図である。引き上げ法等で生成された結晶Wは円筒形状ではあるものの、図6に示すように側面に凹凸があるため、円筒研削機14で結晶Wの側面を研削して凹凸のない円筒形(図6(b)のWn)にする。
【0071】
円筒研削機14は、砥石141と、軸24を回転軸として砥石141を回転させながら砥石141を研削面25(図6では、xz平面)に沿って移動させて結晶Wの側面を研削する砥石駆動部142とを有している。また、円筒研削機14は、砥石駆動部142上で砥石141に側面が向くように結晶Wを固定するとともに研削面25に平行な軸26を回転軸として結晶Wを回転させる回転機構143と、砥石駆動部142及び結晶Wの上方に位置する結晶方位測定装置144とを有している。
【0072】
砥石141は、円柱形であって、砥石141の円柱軸と回転軸である軸24(図6ではz軸と平行)とは一致する。砥石141が回転したとき、砥石141の側面の最上部と接する部分が研削されるため、図6(a)及び図6(b)に示すように、砥石141の側面の最上部と接する面が研削面25である。
【0073】
回転機構143は、図6(a)に示すように、第1支持部143aが第1パッド143cを備え、この第1パッド143cに対して平行に第2支持部143bが第2パッド143dを備えており、第1パッド143cと第2パッド143dの間隔をシリンダやスプリング(図示せず)によって調整することができる。回転機構143では、第1パッド143cに結晶Wのカット面Waの一方が接し、第2パッド143dに結晶Wのカット面Waの他方に接した状態で第1パッド143c及び第2パッド143dの間隔を狭めて結晶Wを支持する。結晶Wを支持した回転機構143は、モータ143eが軸26(図6ではz軸と平行)を回転軸として結晶Wを回転させる。ここで、第1パッド143cと第2パッド143dの結晶Wを支持する面は、間隔を変えるときも回転するときも常に垂直になるようにされている。
【0074】
円筒研削機14では、結晶Wの側面を研削する場合、回転機構143によって支持されている結晶Wの側面と研削面25とを接するように回転機構143と砥石駆動部142を近づける。結晶Wの側面と研削面25とが接した状態で回転機構143が結晶Wを回転し、砥石駆動部142が砥石141を回転させながら研削面25に沿って複数回往復して移動させることで、結晶Wを円筒形に研削することができる。具体的には、砥石駆動部142は、砥石141を結晶Wの円筒の高さ方向(図6では、z軸方向)の直線上を往復移動させ、結晶Wの断面が図6(b)に示すように円形Wnの円筒形になるまで研削する。
【0075】
第1パッド143cと第2パッド143dの結晶と接する面は軸26と垂直であるので、結晶Wはカット面Waが軸26に垂直になるように支持され、軸26で回転されながら軸26に平行な研削面25で研削されるので、結晶Wはこの円筒研削によってカット面Waに垂直な円筒軸の円筒に研削される。
【0076】
結晶Wが円筒形に研削されると、結晶方位測定装置144は、結晶Wの側面の結晶方位(半径方向結晶方位k)を測定する。具体的には、結晶方位測定装置144は、図6(b)に示すように結晶Wの側面に第1X線3cを放射するX線管144a及び結晶Wの側面から回折した第2X線3dを検出するX線検出器144bを備えている。この第1X線3cと第2X線3dが成す角は、結晶面の種類に応じて定められるブラッグ角θ0を基準とした180°−2θ0に設定されている。そして、軸26に対して結晶Wを回転させながら、X線検出器144bで検出する第2X線3dがピーク値となる結晶Wの回転位置を探すことで半径方向結晶方位kを測定する。
【0077】
半径方向結晶方位kが測定されると、回転機構143、は結晶Wを回転して、砥石駆動部142がある下方に結晶Wのオリフラ面Wb2を加工する方向を向けて位置合わせする。結晶Wのオリフラ面Wb2を加工する方向が砥石駆動部142に向くと、砥石駆動部142は砥石を回転しながら研削面25に沿って平行に移動することで結晶Wにオリフラ面Wb2を加工する。このとき、砥石駆動部142は、砥石141の側面の最上部がオリフラ面Wb2を研削することができる範囲を砥石141の移動範囲として駆動する。
【0078】
《面取り機》
図7を用いて、ウェハWwの側面を面取り加工する面取り機17について説明する。
【0079】
面取り機17は、例えば特開平9−102474号公報に記載されているような構成であり、図7に示すように、ウェハWwを支持して回転させるウェハ回転部171と、円形状で側面にU字形状の溝172aを有する砥石172と、砥石172の中心を通る軸28を回転軸として砥石172を回転させる砥石駆動部173とを有している。
【0080】
ウェハ回転部171は、互いに平行な面を有してその間隔がシリンダやスプリング(図示せず)によって調整することのできる第1支持部171a及び第2支持部171bとを有している。ウェハ回転部171では、第1支持部171aと第2支持部171bの間にウェハWwを挟んで支持するとき、ウェハWwの中心が軸27上に位置するように位置合せされる。また、ウェハ回転部171は、ウェハWwを支持した状態で軸27を回転軸としてウェハWwを回転させる。
【0081】
面取り機17では、ウェハ回転部171と砥石駆動部173とを近づけてウェハWwの側面に砥石172の溝172aを押し当てる。ウェハWwの側面に溝172aを押し当てた状態でウェハ回転部171がウェハWwを回転させ、砥石駆動部173が砥石172を回転させ、ウェハWwの側面の角の面取りをするとともに軸27方向から見たウェハWwの形状がオリフラ面Wb2を除いて真円となるように加工する。ウェハWwのオリフラ面Wb2は直線であるため、ウェハWwを回転させずに、砥石172のみを回転させながらオリフラ面Wb2に沿って直線に移動することで面取りすることができる。
【0082】
なお、面取り機17は、ウェハWwをウェハケースから取り出してウェハ回転部に設定する等の作業を行なうウェハのハンドリング手段を有しているが、図示は省略している。
【0083】
〈結晶加工方法〉
続いて、結晶加工装置1において結晶WからウェハWwを加工するまでの結晶加工方法を説明する。はじめに、図8に示すフローチャートを用いて結晶加工装置1における結晶加工の第1処理として、第1保存棚10aで保存される結晶Wを加工して、第2保存棚10bに保存するまでの処理について説明する。
【0084】
まず、第1搬送装置18aによって第1保存棚10aに保存されている結晶Wが第1切断機11に搬送されると、第1切断機11が有するバンドソーで搬送された結晶Wの両端を切断する(S001)。第1保存棚10aに保存されている結晶Wは、図9(a)に示すように、引き上げ法等で生成された凹凸のある略円筒形状である。この結晶Wが、図9(b)に示すように結晶の概略の円筒軸A’に略垂直な面で切断されると、図9(c)に示すように両端に鋸目の凹凸が残った略平面のカット面Wa1,Wa2が生じる。
【0085】
ステップS001で切断された結晶Wが第1搬送装置18aによってカット面研削機13に搬送されると、カット面研削機13はステップS001の切断で生じた第1カット面Wa1を、凹凸を削って平坦な平面に仮研削するとともに、結晶Wの側面に仮オリフラ面Wb1を加工する(S002)。これにより、結晶方位の測定に適した滑らかな第1カット面Wa1となる。また、仮オリフラ面Wb1は結晶Wの結晶方位を把握するための基準として設けられるものであるため円筒の側面の全範囲に加工する必要はなく、図4(d)に示すように側面の短い範囲で加工すればよい。
【0086】
第1カット面Wa1が仮研削されるとともに仮オリフラ面Wb1が加工された結晶Wは、第1搬送装置18aによって結晶方位測定装置12に搬送され、結晶方位測定装置12で結晶Wの第1カット面Wa1軸方向結晶方位hを測定する(S003)。軸方向結晶方位hは、図4(d)に示すように、結晶Wの円筒軸Aと一致せずにずれている。ここで、円筒軸Aは、研削された第1カット面Wa1に垂直で平均的に結晶Wの中央を通る線のことである。
【0087】
ステップS003で軸方向結晶方位hが測定された結晶Wは、第1搬送装置18aによって再びカット面研削機13に搬送され、カット面研削機13によって軸方向結晶方位hに垂直に第1カット面Wa1を研削する(S004)。このとき、カット面研削機13の傾斜機構134は、ステップS002で加工された仮オリフラ面Wb1を基準として、ステップS003で測定された軸方向結晶方位hを用いて、研削面23に対して軸方向結晶方位hが垂直になるように固定部133を傾斜する。
【0088】
また、第1カット面Wa1の研削後、カット面研削機13によって新たな第1カット面Wa3に平行に第2カット面Wa2が研削される(S005)。ステップS004、S005の研削が終了すると、カット面Wa1,Wa2の研削で現れた新たなカット面Wa3,Wa4は、図9(e)に示すように軸方向結晶方位hに垂直になる。
【0089】
カット面Wa1,Wa2が研削後の結晶Wは、第1搬送装置18aによって円筒研削機14に搬送され、円筒研削機14で結晶Wの側面を新たなカット面Wa3,Wa4に垂直な円筒面に研削することで、円筒形に研削される(S006)。図10(g)に示す結晶Wは、円筒研削機14によって結晶Wの図9(f)に点線Wnで表わす側面が研削されて得られた一例である。なお、この円筒研削で仮オリフラ面Wb1も研削される。
【0090】
ステップS006で円筒研削した後、円筒研削機14の結晶方位測定装置144は、結晶Wの半径方向結晶方位kを測定する(S007)。結晶方位測定装置144で半径方向結晶方位kを測定すると、円筒研削機14は、半径方向結晶方位kを基準として図10(h)に示すように、結晶Wにオリフラ面Wb2を加工する(S008)。
【0091】
ステップS008でオリフラ面Wb2が加工された結晶Wは、第1搬送装置18aによって第2保存棚10bに搬送されて第2保存棚10bで保存される。このステップS001〜S008の処理が結晶加工の第1処理である。
【0092】
次に、図11に示すフローチャートを用いて結晶加工の第2処理として、第2保存棚10bで保存される結晶WからウェハWwを加工して、ウェハWwを第3保存棚10cで保存するまでの処理について説明する。
【0093】
まず、結晶加工装置1では、第2保存棚10bで保存される結晶Wが、第2搬送装置18bにより接着ステージ15に搬送されて、接着ステージ15で結晶WをプレートPに接着する(S009)。このとき、図10(i)に示すように複数の結晶Wの第1カット面Wa3と第2カット面Wa4とが接するようにして配置されて、オリフラ面Wb2がプレートPに接着される。各カット面Wa3,Wa4は、軸方向結晶方位hに対して垂直に研削されているため、各カット面Wa3,Wa4が接するように結晶Wが接着されたとしても、全ての結晶Wの軸方向結晶方位hは同一の方向を向くことになる。
【0094】
プレートPに接着した結晶Wは、第2搬送装置18bによって第2切断機16まで搬送され、第2切断機16が結晶Wを複数のウェハWwに切断する(S010)。第2切断機16は、例えば特開平9−19920号公報に記載されるようなワイヤーソーを有している。第2切断機16では、搬送された結晶Wをワイヤーソーに対して位置決めして保持して切断する。ワイヤーソーで結晶Wが図10(j)に示すように平行に切断されると、図10(k)に示すような複数の同一の厚さのウェハWwとなる。結晶Wと接着されていたプレートPは、ステップS010の切断と同時にウェハWwから剥奪されるか、また、切断後にウェハWwから剥奪される。
【0095】
ステップS010で切断された各ウェハWwは、第2搬送装置18bによって面取り機17に搬送され、面取り機17が各ウェハWwを面取り加工する(S011)。なお、第2切断機16では同時に複数のウェハWwが生成されるため、ウェハWwは多数枚ずつウェハケースに収納して面取り機17に搬送して面取りをする。面取り機17は、ウェハWwをウェハケースから1枚ずつ取り出して面取りを行い、再びウェハケースに収納する。
【0096】
ステップS011で面取り加工されたウェハWwは、第2搬送装置18bによって第3保存棚10cに搬送されて第3保存棚10cで保存される。このステップS009〜S011の処理が結晶加工の第2処理である。
【0097】
上述した結晶方位測定装置12では、円筒研削前の結晶Wのカット面Wa1を下にしてテーブル面121aに載置し、このカット面Wa1に第1X線3aを照射して回折される第2X線3bを検出する。したがって、結晶Wが側面でなくカット面Waで保持されるので、円筒研削前の結晶に対してもカット面の位置決めが確実になり、カット面Wa1を基準とした軸方向結晶方位hを正確に測定することができる。また、カット面Wa1を下にしてテーブル121上に載置してテーブル121を回転し、このφ軸20近傍に測定点Cを合わせているので、φ回転毎の測定点Cのずれを防止し軸方向結晶方位hの測定を正確に行なうことができる。さらに、第1カット面Wa1が仮研削された結晶Wに仮オリフラ面Wb1を加工してカット面Waのマーク(基準位置)を定めているため、第1カット面Wa1の軸方向結晶方位hの測定及び第1カット面Wa1を研削する際の位置決めを確実にすることができる。
【0098】
上述した結晶加工装置1では、円筒研削前にカット面Wa1,Wa2をウェハWwの面方向である軸方向結晶方位hに合わせて新たなカット面Wa3,Wa4として研削し、この新たなカット面Wa3,Wa4に直交する円筒軸に対して円筒研削した後にカット面Wa3,Wa4の方向にスライスしているので、スライスで得られるウェハWwは、オリフラ面Wb2を除いて真円の円板状となる。したがって、従来のようにスライスで楕円形状のウェハWwが得られた場合と比較して、円筒研削時に最終目的の規定の直径に極めて近い直径で円筒研削できるので、面取り加工においては研削量は極めて小さく、短時間で効率良く面取り加工をすることができる。
【0099】
また、結晶加工装置1では、加工される全ての結晶Wのカット面Wa3,Wa4は軸方向結晶方位hに垂直であるとともに、ウェハWwの各スライス面は研削後のカット面Wa3,Wa4に平行である。そのため、プレートPに複数の結晶Wを接着する際、各結晶Wをカット面Wa3,Wa4で突き合わせてプレートPに接着すればよい。したがって、結晶WのプレートP上での位置合わせを容易にすることができる。また、スライス時にワイヤーソーがカット面Wa3,Wa4に対して斜めにかかることがないため、不良ウェハが生じず、効率の良いウェハの生成が可能となる。
【0100】
〈第1変形例〉
図12乃至図14を用いて、本発明の第1変形例に係る結晶加工装置について説明する。この第1変形例に係る結晶加工装置は、オフカットのウェハを加工することができる。第1変形例に係る結晶加工装置の構成は、上述した結晶加工装置1と同一の構成であるため同一の符号を用いて説明する。
【0101】
図12に示すフローチャートは、第1変形例に係る結晶加工装置1の第1処理を説明するフローチャートであるが、図8で上述した処理と同一の処理には同一の符号を付して説明を省略する。図12のフローチャートを図8のフローチャートと比較すると、ステップS004に代わるステップS104において、オフカットで第1カット面Wa1を研削する点で異なる。
【0102】
結晶Wが搬送されたカット面研削機13は、傾斜機構134が結晶Wを固定した固定部133を傾斜するときにS003で測定された軸方向結晶方位hに対してオフカット角度θi傾斜させた方向h’に垂直になるように第1カット面Wa1を研削する(S104)。したがって、図13に示すように、研削後の新たな第1カット面Wa3は、方向h’に垂直になる。
【0103】
図14を参照して、例えば、オフカット角度θiがx軸方向の角δoxとy軸方向の角δoyで表わされるとき、測定された軸方向結晶方位hの傾斜角δx及びδyから、オフカット角度θi傾斜させた方向h’の傾斜角δx’,δy’を式(3)及び式(4)でもとめる。
【0104】
δx’=δx−δox ・・・(3)
δy’=δy−δoy ・・・(4)
ここで求めたδx’,δy’の符号を反転した値が、傾斜機構134における傾斜の調整量である。すなわち、傾斜機構134で、第1カット面Wa1を、円筒軸Aを基準として、xの負方向にδx’、yの負方向にδy’傾斜させて研削すれば、新たなカット面Wa3は、方向h’に垂直になる。
【0105】
ステップS104で第1カット面Wa1を研削した後、ステップS005において傾斜機構134が固定部133を180°傾斜(回転)して第2カット面Wa2を研削すれば、両方の新たなカット面Wa3,Wa4がオフカット角度で研削される。したがって、続く006以降の処理で加工された結晶Wを用いて生成されたウェハWwは、オフカットのウェハWwとなる。
【0106】
〈第2変形例〉
図15を用いて、本発明の第2変形例に係る結晶加工装置について説明する。研削された新たなカット面Wa3,Wa4が軸方向結晶方位hに垂直にならないと適正なウェハWwを生成することができない。したがって、この第2変形例に係る結晶加工装置は、正確な方向に新たな第1カット面Wa3の研削がされたか否かを確認し、不良ウェハの生成を防止する。第2変形例に係る結晶加工装置の構成は、上述した結晶加工装置1と同一の構成であるため同一の符号を用いて説明する。
【0107】
図15は、第2変形例に係る結晶加工装置1の第1処理を説明するフローチャートであるが、図8で上述した処理と同一の処理には同一の符号を付して説明を省略する。図15のフローチャートを図8のフローチャートと比較すると、ステップS004で第1カット面Wa1を研削した後に、ステップS201及びS202を有している点で異なる。
【0108】
具体的には、第2変形例に係る結晶加工装置1では、ステップS004で第1カット面Wb1が研削された結晶Wは、第1搬送装置18aによって再び結晶方位測定装置12に搬送され、研削された新たな第1カット面Wa3の軸方向結晶方位hが確認用として測定された(S201)後、軸方向結晶方位hが正確か判定される(S202)。
【0109】
ステップS201で測定された軸方向結晶方位hが新たな第1カット面Wa3に垂直ではないとき(S202でNO)、カット面研削機13では、第1カット面Wa3が軸方向結晶方位hに対して垂直になるまでステップS004及びS201を繰り返す。
【0110】
ステップS201で測定された軸方向結晶方位hが新たな第1カット面Wa3に垂直になると(S202でYES)、カット面研削機13では、ステップS005において第2カット面Wa2が研削され、結晶加工装置1ではその後の処理が継続してウェハWwを生成する。
【0111】
上述したように、第2変形例に係る結晶加工装置1では、新たな第1カット面Wa3が軸方向結晶方位hに対して垂直であるか否かを判定し、垂直である場合にのみ次の処理に進み、軸方向結晶方位hに対して垂直でない場合には再び第1カット面Wa3を研削することで、適正なウェハWwの生成を可能にする。
【0112】
なお、第2変形例に係る結晶加工装置1において、ステップS004の処理を図12を用いて上述したステップS104に代えるとともに、ステップS202における確認でオフカット角度θi傾斜されているか否かを判定することによってオフカットのウェハWwの加工にも適用することができる。
【0113】
〈第3変形例〉
図16及び図17を用いて、本発明の第3変形例に係る結晶加工装置について説明する。この第3変形例に係る結晶加工装置は、実際にオリフラ面が加工される結晶方向と同一の方向で仮オリフラ面を加工する。第3変形例に係る結晶加工装置の構成は、上述した結晶加工装置1と同一の構成であるため同一の符号を用いて説明する。上述した結晶加工装置1において仮オリフラ面Wb1は、半径方向結晶方位kを測定する前に半径方向結晶方位kとは無関係に加工されており、最終的に加工されるオリフラ面Wb2とは異なる方向に加工されている。これに対し、第3変形例に係る結晶加工装置1では、仮オリフラ面Wb1を最終的に加工されるオリフラ面Wb2と同一の方向に加工する。
【0114】
図16に示すフローチャートは、第3変形例に係る結晶加工装置の第1処理を説明するフローチャートであるが、図8で上述した処理と同一の処理については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0115】
図16に示すフローチャートにあるように、第3変形例に係る結晶加工装置1では、ステップS001で切断された結晶Wは、第1搬送装置18aによってカット面研削機13に搬送され、カット面研削機13においてカット面Wa1,Wa2が互いに平行に仮研削される(S301)。
【0116】
ステップS301でカット面Wa1,Wa2が仮研削された結晶Wは、第1搬送装置18aによって円筒研削機14に搬送され、円筒研削機14において仮円筒研削がされる(S302)。ここで仮円筒研削される長さは、半径方向結晶方位kを測定することが可能な長さであれば良く、図17(a)に示すように5mm程度でよい。すなわち、仮研削で現れる側面Eに対して、第1X線3cを照射し、この側面Eから第2X線3dが回折される長さを確保することができればよい。
【0117】
ステップS302において仮円筒研削がされると、回転機構143が結晶Wを回転させ、仮円筒研削によって生じた凹凸のない側面Eを利用して結晶Wの半径方向結晶方位kを測定する(S303)。
【0118】
ステップS303において結晶Wの半径方向結晶方位kが測定されると、回転機構143は結晶Wのオリフラ面Wb2を加工する方向を砥石駆動部142に対向させるとともに、砥石駆動部142は砥石141を駆動して仮オリフラ面Wb1を加工する(S304)。ステップS304では、仮オリフラ面Wb1を結晶Wの全範囲に対して加工するのではなく、図17(b)に示すように例えば10mm程度の長さで加工すればよい。
【0119】
ステップS304において仮オリフラ面Wb1が加工されるとステップS003において軸方向結晶方位hが測定され、結晶加工装置1ではその後の処理が継続してウェハWwを生成する。
【0120】
このように仮オリフラ面Wb1も実際のオリフラ面Wb2と同一の方向に合わせて加工することにより、オリフラ面Wb2を基準としたオフカットの加工を容易にする。
【0121】
〈第4変形例〉
図18及び図19を用いて、本発明の第4変形例に係る結晶加工装置について説明する。この第4変形例に係る結晶加工装置は、結晶を複数に切断し、切断された各結晶からウェハを生成する。第4変形例に係る結晶加工装置の構成は、上述した結晶加工装置1と同一の構成であるため同一の符号を用いて説明する。
【0122】
図18に示すフローチャートは、第4変形例に係る結晶加工装置1の第1処理を説明するフローチャートであるが、図8で上述した処理と同一の処理については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0123】
図9(d)でも示したしたように第1保存棚10aで保存されている加工前の結晶Wの軸方向結晶方位hと概略の円筒軸A’は、ずれている場合が多い。したがって、図19(a)に示すように加工前の結晶Wから円筒研削をした後にウェハWwとすることができる領域Wrは限られている。また、ウェハWwの直径D1は短くなることもあり、一般的に規定されるウェハの直径を満たすことができないおそれもある。したがって、図19(b)に示すようにカット面Wa1,Wa2で結晶Wを切断するときに複数に切断すればウェハWwにする領域Wr(Wr1,Wr2,Wr3)を広く確保することが可能となり、得られるウェハWwの直径D2も長くすることができる。
【0124】
図18に示すフローチャートにあるように、第4変形例に係る結晶加工装置1では、第1切断機11は、搬送された結晶Wの両端面を切断する際、結晶Wを複数の領域Wrに切断する(S401)。このとき、第1切断機11は、各カット面Wa1,Wa2は、結晶Wの概略の円筒軸A’に対して垂直に設定する。
【0125】
ステップS401で結晶Wを複数の領域Wrに切断した後、結晶加工装置1は、各領域Wrの結晶Wそれぞれに対して、ステップS002〜S008の処理を行なった後(S402)、ウェハWwを生成する。
【0126】
なお、結晶Wを複数の領域に切断する場合、円筒軸A’に対するカット面Wa1,Wa2の傾斜角αが大きいほど、切断する際の長さL2を短くして切断する数を多くすると、無駄が少なくなる。このとき、長さL2は、式(5)に示すように求めることができる。なお、この傾斜角αは、概略として、傾斜角δx,δyによって表わされる角度である。
【0127】
L2=D2・sinα+(Dw−D2・cosα)/tanα
≒(Dw−D2)/tanα
≒最終ウェハ直径D2に対する結晶Wの余裕分/tan(α) ・・・(5)
式(5)でD2は最終ウェハの直径、Dwは結晶Wから凹凸を除いた有効直径、「余裕分」とは、(Dw−D2)のことである。
【0128】
上述した第4変形例に係る結晶加工装置1では、結晶Wを複数の領域Wrに切断することによって、ウェハWwを生成する領域を広くとることができる。
【0129】
なお、オフカットのウェハWwを加工する場合には、上述した傾斜角αは概略として、傾斜させた方向h’の傾斜角δx’,δy’によって表わされる角度であり、この場合、図19はhをh’におきかえたものとなる。
【0130】
〈第5変形例〉
図20及び図21を用いて、本発明の第5変形例に係る結晶加工装置について説明する。この第5変形例に係る結晶加工装置は、軸方向結晶方位と略垂直な面で結晶を複数に切断し、切断された各結晶からウェハを生成する。第5変形例に係る結晶加工装置の構成は、上述した結晶加工装置1と同一の構成であるため同一の符号を用いて説明する。
【0131】
図20に示すフローチャートは、第5変形例に係る結晶加工装置1の第1処理を説明するフローチャートであるが、図8で上述した処理と同一の処理については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0132】
図20に示すフローチャートにあるように、第5変形例に係る結晶加工装置1では、第1切断機11は、搬送された結晶Wの片端面を、例えば円筒軸A’に垂直に切断する(S001)。その後、カット面研削機13が第1カット面Wa1を仮研削するとともに、仮オリフラ面Wb1を加工する(S002)。続いて、結晶方位測定装置12が軸方向結晶方位hを測定する(S003)。軸方向結晶方位hが測定されると、カット面研削機13は、第1カット面Wa1を軸方向結晶方位hに垂直に新たな第1カット面Wa3として研削する(S004)。
【0133】
軸方向結晶方位hに垂直に新たな第1カット面Wa3が研削された結晶Wは第1切断機11に搬送され、第1切断機11が、図21に示すように軸方向結晶方位hに合わせて結晶Wを複数の領域Wr(Wr1,Wr2,Wr3)に切断する(S501)。
【0134】
ステップS501で結晶Wを複数の領域Wrに切断した後、結晶加工装置1は、各領域Wrの結晶Wそれぞれに対して、ステップS002〜S008の処理を行なった後(S502)、ウェハWwを生成する。
【0135】
なお、結晶Wを複数の領域に切断する場合、円筒軸A’に対するカット面Wa1,Wa2の傾斜角αが大きいほど、切断する際の長さL3を短くすると無駄が少なくなる。このときの長さL3は、αを用いて、式(6)に示すように求めることができる。なお、この傾斜角αは、概略として、傾斜角δx,δyによって表わされる角度である。
【0136】
L3=(Dw−D3・cosα)/sinα
≒(Dw−D3)/sinα
≒最終ウェハ直径D3に対する結晶Wの余裕分/sin(α) ・・・(6)
式(6)でD3は最終ウェハの直径、Dwは結晶Wから凹凸を除いた有効直径、「余裕分」とは、(Dw−D3)のことである。
【0137】
上述した第5変形例に係る結晶加工装置1では、結晶Wを複数の領域Wrに切断するとき、軸方向結晶方位hに対して垂直方向に切断することによって、図19で示した第4変形例の場合と比較して、ウェハWwを生成する領域Wrを広くとることができる。
【0138】
なお、オフカットのウェハWwを加工する場合には、結晶Wを切断するときに軸方向結晶方位hからオフカット角度傾斜させた方向h’に合わせて切断する。この場合の結晶の切断状態は、図21でhをh’におきかえた状態である。この場合、傾斜角αは、概略として、傾斜させた方向h’の傾斜角δx’,δy’によって表わされる角度である。
【0139】
〈第6変形例〉
上述した最良の実施形態では、半径方向結晶方位を判別するためのマークとしてオリフラ面を用いたが、オリフラ面の代わりにノッチ(V溝)を用いても良いことは、当業者には明らかなことである。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】本発明の最良の実施形態に係る結晶加工装置の構成を説明するブロック図である。
【図2】図1の結晶加工装置が備える結晶方位測定装置の構成を説明する図である。
【図3】図1の結晶加工装置が備えるカット面研削機の構成を説明する図である。
【図4】研削前の結晶の軸方向結晶方位について説明する図である。
【図5】研削後の結晶の軸方向結晶方位について説明する図である。
【図6】図1の結晶加工装置が備える円筒研削機の構成を説明する図である。
【図7】図1の結晶加工装置が備える面取り機の構成を説明する図である。
【図8】本発明の最良の実施形態に係る結晶加工装置における結晶加工の第1処理を説明するフローチャートである。
【図9】本発明の結晶加工装置において加工される結晶の各処理の状態を表す図である。
【図10】図9に続いて結晶加工装置で加工される結晶の各処理の状態を表す図である。
【図11】本発明の最良の実施形態に係る結晶加工装置において結晶加工の第1処理に続く第2処理を説明するフローチャートである。
【図12】第1変形例の結晶加工装置における第1処理を説明するフローチャートである。
【図13】第1変形例の結晶加工装置におけるオフカットについて説明する図である。
【図14】第1変形例の結晶加工装置で調整する調整量について説明する図である。
【図15】第2変形例の結晶加工装置における第1処理を説明するフローチャートである。
【図16】第3変形例の結晶加工装置における第1処理を説明するフローチャートである。
【図17】第3変形例の結晶加工装置で加工される結晶の状態を表す図である。
【図18】第4変形例の結晶加工装置における第1処理を説明するフローチャートである。
【図19】第4変形例の結晶加工装置において加工される結晶について説明する図である。
【図20】第5変形例の結晶加工装置における第1処理を説明するフローチャートである。
【図21】第5変形例の結晶加工装置において加工される結晶について説明する図である。
【図22】従来の結晶加工装置における処理を説明するフローチャートである。
【図23】従来の結晶加工装置の結晶方位測定装置の構成を説明する図である。
【符号の説明】
【0141】
1…結晶加工装置
10a〜10c…保存棚
11…第1切断機
12…結晶方位測定装置
121…テーブル
121a…テーブル面
121b…治具部材
121c…貫通孔
121d…垂直面
122…φ回転機構(φ回転手段)
122a…歯車
122b…ベルト
123…X線管(X線源)
123a…コリメータ
124…X線検出器
125…フレーム(支持手段)
126…θ回転機構(θ回転手段)
127…制御処理部
127a…制御手段
127b…算出手段
A,A’…円筒軸
C…測定点
W…結晶
Wa…カット面
Wb…オリフラ面
20…φ軸
21…θ軸
3a,3c…第1X線
3b,3d…第2X線
13…カット面研削機
131…砥石
132…砥石駆動部
133…固定部
134…傾斜機構
14…円筒研削機
141…砥石
142…砥石駆動部
143…回転機構
143a,143b…支持部
143c,143d…パッド
143e…モータ
144…結晶方位測定装置
144a…X線管
144b…X線検出器
15…接着ステージ
16…第2切断機
17…面取り機
171…ウェハ回転部
171a,171b…支持部
172…砥石
172a…溝
173…砥石駆動部
18a,18b…搬送装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線源から発生したX線を結晶に照射し、前記結晶から回折したX線をX線検出器で検出して前記結晶の結晶方位を測定する結晶方位測定装置であって、
側面が研削される前の円筒形状を持ちかつ円筒軸に略垂直に切断された結晶が、前記切断で生じたカット面を下にして載置されるテーブルと
前記カット面にX線を照射して回折したX線を測定して前記カット面を基準とした前記結晶の結晶方位を算出する算出手段と、
を備えることを特徴とする結晶方位測定装置。
【請求項2】
X線源から第1X線を発生させて結晶に照射し、前記結晶の測定点で回折した第2X線をX線検出器で検出して前記結晶の結晶方位を測定する結晶方位測定装置であって、
側面が研削される前の円筒形状を持ちかつ円筒軸に略垂直に切断された結晶が、前記切断で生じたカット面を下にして載置されるテーブル面を有するとともに、前記X線源から発生した第1X線及び前記カット面上の前記測定点で回折した第2X線が通過するための貫通孔を前記テーブル面の中心に有するテーブルと、
前記テーブル面に垂直であって前記テーブルの中心を通るφ軸を回転軸として前記テーブルを所定角度でφ回転させるφ回転手段と、
前記第1X線が前記カット面に直交する測定面を沿うように、また所定角度で回折される前記第2X線が検出されるように、前記測定点を基準とした位置関係で前記X線源及び前記X線検出器を支持する支持手段と、
前記測定面に垂直で前記測定点を通るθ軸を回転軸として前記支持手段を所定範囲内の回転角度でθ回転させるθ回転手段と、
前記φ回転の各角度に対してθ回転するように前記φ回転手段及び前記θ回転手段を制御する制御手段と、
前記X線検出器の検出データとθ回転の回転角度とから、前記カット面を基準として前記結晶の結晶方位を算出する算出手段と、
を備えることを特徴とする結晶方位測定装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれか1に記載の結晶方位測定装置と、
前記カット面を、測定された前記結晶方位と所定角度で交差するように研削するカット面研削機と、
前記結晶の側面を、前記カット面研削機で研削された新たなカット面と垂直に円筒形に研削する円筒研削機と、
を備えることを特徴とする結晶加工装置。
【請求項4】
側面が研削される前の円筒形状を持ちかつ円筒軸に略垂直に切断された結晶を、前記切断で生じたカット面を下にしてテーブル上に位置決めするステップと、
前記カット面にX線を照射して回折したX線を測定して前記カット面を基準とした前記結晶の結晶方位を算出するステップと、
前記カット面を、算出された前記結晶方位と所定角度で交差するように研削するステップと、
前記結晶の側面を、研削された新たなカット面と垂直に円筒形に研削するステップと、
円筒形に研削された前記結晶を、前記新たなカット面と平行に切断して複数のウェハを得るステップと、
を有することを特徴とする結晶加工方法。
【請求項5】
側面が研削される前の円筒形状を持ちかつ円筒軸に略垂直に切断された結晶を、前記切断で生じたカット面を下にしてテーブル上に位置決めするステップと、
前記テーブルに垂直であって前記テーブルの中心を通るφ軸を回転軸として前記テーブルを所定角度でφ回転させるステップと、
前記カット面上の測定点に照射する第1X線を発生するX線源と前記測定点から回折した第2X線を検出するX線検出器とを前記測定点を基準とした位置関係で支持する支持手段を、前記第1X線を含み前記カット面に直交する測定面に垂直であって前記測定点を通るθ軸を回転軸として所定範囲内の回転角度でθ回転させるステップと、
前記φ回転の各角度に対してθ回転するように前記φ回転手段及び前記θ回転手段を制御するステップと、
前記X線検出器の検出データとθ回転の回転角度とから、前記カット面を基準として前記結晶の結晶方位を算出するステップと、
前記カット面を、算出された前記結晶方位と所定角度で交差するように研削するステップと、
前記結晶の側面を、研削された新たなカット面と垂直に円筒形に研削するステップと、
円筒形に研削された前記結晶を、前記新たなカット面と平行に切断して複数のウェハを得るステップと、
を有することを特徴とする結晶加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2009−186181(P2009−186181A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−22934(P2008−22934)
【出願日】平成20年2月1日(2008.2.1)
【出願人】(391017540)東芝ITコントロールシステム株式会社 (107)
【Fターム(参考)】