説明

結束金具および鉄筋の結束方法

【課題】 作業工程を増大させず、かつ、確実に交差する鉄筋を固定する。
【解決手段】 第1の本体11の第1の側部21、第2の側部22は、それぞれ、連結部23に形成された貫通穴29から挿通されるボルト13の進行方向に延びる延長部26、27と、延長部の延びる方向に垂直な方向に腕部24、24とを有する。腕部24には、連結部23と離間する側に、第1の鉄筋15の側部と接して支持する鉄筋支持凹部25が形成される。第2の本体12は、第1の側部21と接する側部41を有し、その第1の本体11に隣接する第1端おいて、第1の本体11の連結部23と平行となるように側部41から延び、かつ、ボルト13の軸を受け入れるネジ穴44が設けられた第1端延長部42を有する。第1の本体11と離間する側の第2端においては、その断面形状が円弧状の、第1の鉄筋15と交差する第2の鉄筋16の側面を支持する第2端湾曲部43を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2本の交差する鉄筋を結束するための結束金具および鉄筋の結束方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物、たとえば、コンクリートによる建物やトンネルの外壁の工事においては、コンクリート内に鉄筋を組み立てた上で、型枠にコンクリートを流し込んで構造物を形成している。鉄筋組み立てにおいて、鉄筋同士を交差させて固定する場合に、番線(なまし鉄線)などを用いて両者の交差部分を結束し、或いは、溶接にて両者の交差部分を溶着固定する方法が知られている。また、両者の交差部分を、結束金具を用いて固定する方法も提案されている。
【0003】
番線を用いた結束では、作業時間が非常にかかる上、結束された交差部分における強度を確保するのが困難であるという問題点がある。また、溶接を用いる場合には、溶着強度は、作業者の技量に頼る部分が大きく、作業者の熟練度によって大きく溶着強度に差異が生ずる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4281886号公報
【特許文献2】特開2010−13882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
たとえば、特許文献1には、交差させる二本の鉄筋のうち、第1鉄筋の一側面を軸方向に沿って受ける第1係止溝と、第1係止溝に係止した第1鉄筋に交差して第2鉄筋を挿入する開口部と、第2鉄筋に対し反第1鉄筋側であって第2鉄筋の反交差側側面を楔側面で押圧する位置に配置されると共に少なくとも楔挿入側が長穴に形成された楔穴とを有するクリップ本体を備えた結束金具が開示されている。楔穴は、ボルトとナットとにより締め付けられ、これにより、2つの直交する鉄筋がクリップ本体に挟み込まれるようになっている。
【0006】
また、特許文献2には、2つの側板部および側板部を上方で連結する連結板部を有する本体1において、側板部には、第1鉄筋を嵌合させる鉄筋嵌合凹部が設けられ、かつ、連結板部には、締結ボルトを貫通させるためのネジ穴が形成された結束金具が開示されている。この結束金具では、第1鉄筋と直交する第2鉄筋を、ネジ穴から挿入された締結ボルトを締め付けることにより押し下げ、第1鉄筋およびその下に位置する第2鉄筋を締め付けるように構成されている。
【0007】
特許文献1に開示された結束金具においては、楔穴にねじ込まれるボルトとして、標準仕様ではない特殊なものを要する必要があった。また、2つの交差する鉄筋を挟み込む構造では、交差する鉄筋の相対位置が動かないようにしっかりと固定することは容易ではない。また、施工時において、結束金具を鉄筋に取り付ける場合に、ボルトとナットを一時的に取り外す必要があり、作業工程が増大するという問題点もある。
【0008】
特許文献2に開示された結束金具においては、2つの交差した鉄筋の交差位置の上部から締結ボルトを締め付けて、締結ボルトの押圧力により直接鉄筋を固定するため、交差位置に多大な力を与える必要がある。すなわち、締結ボルトの締め付けを著しく強くする必要がある。これは、作業の際に多大な力が必要であるだけでなく、交差位置における鉄筋の変形を引き起こすおそれもある。
【0009】
本発明は、作業工程を増大させず、かつ、確実に交差する鉄筋を固定できる結束金具および鉄筋の結束方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、2本の交差する鉄筋を結束する結束金具であって、
平行する第1の側部、第2の側部、および、これらを一端で連結する連結部を有する第1の本体と、第1の本体の前記第1の側部および第2の側部の間の空間に入り込むことができる第2の本体と、を備え、
前記第1の本体において、第1の側部は、前記連結部に形成された貫通穴から挿通されるボルトの進行方向に延びる延長部と、延長部の延びる方向に垂直な方向に腕部を有するとともに、前記第2の側部は、前記第1の側部と同様の位置に延長部および腕部を有し、前記腕部のそれぞれにおいて、前記連結部と離間する側に、前記第1の鉄筋の側部と接して第1の鉄筋を支持する鉄筋支持凹部が形成され、
前記第2の本体は、前記第1の本体の第1の側部と接する側部を有し、前記第1の本体に隣接する側の端部である第1端おいて、前記第1の本体の連結部と平行となるように前記側部から延びる第1端延長部を有し、前記第1端延長部には、前記第1の本体の連結部に形成された貫通穴を貫通した、前記ボルトの軸を受け入れるネジ穴が設けられ、また、前記第1の本体と離間する側の端部である第2端において、その断面形状が円弧状の、前記第1の鉄筋と交差する第2の鉄筋の側面を支持する第2端湾曲部を有し、
前記第1の本体の連結部に形成された前記貫通穴および前記第2の本体の第1端延長部に形成された前記ネジ穴に螺入された前記ボルトを所定の一方の方向に回転させて前記ボルトを前進させることにより、前記ボルトの回転に伴って、前記第2の本体が、前記第1の本体の側に引き寄せられ、前記第1の鉄筋および前記第2の鉄筋が接触して、前記第1の鉄筋および前記第2の鉄筋が強固に固定されることを特徴とする結束金具により達成される。
【0011】
好ましい実施態様においては、前記第1の本体の第1の側部の延長部の内側壁と、前記第2の本体の側部の外側壁とが接触し、前記第2の本体は、前記第1の本体における内側壁にガイドされつつ、前記ボルトの回転に伴って、前記第1の側部、第2の側部および連結部により確定される空間内を並進する。
【0012】
また、本発明の目的は、2本の交差する鉄筋を結束する結束金具であって、
平行する第1の側部、第2の側部、および、これらを一端で連結する連結部を有する第1の本体と、第1の本体の前記第1の側部および第2の側部の間の空間に入り込むことができる第2の本体と、を備え、
前記第1の本体において、第1の側部は、前記連結部に形成された貫通穴から挿通されるボルトの進行方向に延びる延長部と、延長部の延びる方向に垂直な方向に腕部を有するとともに、前記第2の側部は、前記第1の側部と同様の位置に延長部および腕部を有し、前記腕部のそれぞれにおいて、前記連結部と離間する側に、前記第1の鉄筋の側部と接して第1の鉄筋を支持する鉄筋支持凹部が形成され、
前記第2の本体は、前記第1の本体の第1の側部と接する側部を有し、前記第1の本体に隣接する側の端部である第1端おいて、前記第1の本体の連結部と平行となるように前記側部から延びる第1端延長部を有し、前記第1端延長部には、前記第1の本体の連結部に形成された貫通穴を貫通した、前記ボルトの軸を受け入れるネジ穴が設けられ、また、前記第1の本体と離間する側の端部である第2端において、その断面形状が円弧状の、前記第1の鉄筋と交差する第2の鉄筋の側面を支持する第2端湾曲部を有し、
前記第1の本体の連結部に形成された前記貫通穴および前記第2の本体の第1端延長部に形成された前記ネジ穴に螺入された前記ボルトを所定の一方の方向に回転させて前記ボルトを前進させることにより、前記ボルトの回転に伴って、前記第2の本体が、前記第1の本体の側に引き寄せられ、前記第1の鉄筋および前記第2の鉄筋が接触して、前記第1の鉄筋および前記第2の鉄筋が強固に固定されるように構成された結束金具において、
前記第1の本体における前記第2の側部の端部と、前記第2の本体における前記第2端湾曲部の先端との間の距離が、前記第2の鉄筋の半径より大きくなるように、前記第1の本体と前記第2の本体とを離間させ、
前記第1の本体において、第1の側部および第2の側部のそれぞれの鉄筋支持凹部を、前記第1の鉄筋と対向させるように位置させて、前記結束金具を、前記第1の鉄筋の方向に並進させて、前記第1の鉄筋の側面と前記鉄筋支持凹部の湾曲面とを接触させ、
前記第1の鉄筋の側面と前記鉄筋支持凹部の湾曲面との接触を維持させつつ、前記結束金具を、前記第2の鉄筋の方向に並進させて、前記第2の鉄筋の側面と前記第2の本体の第2端湾曲部の内面とを接触させ、
前記ボルトを一方の方向に回転させて前記ボルトを前進させ、前記ボルトが一方の方向に回転することにより、前記第2の本体を、前記第1の本体の連結部に向かって移動させ、前記第1の鉄筋および前記第2の鉄筋を強固に固定するように構成されたことを特徴とする鉄筋の結束方法により達成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、作業工程を増大させず、かつ、確実に交差する鉄筋を固定できる結束金具および鉄筋の結束方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の実施の形態にかかる結束金具を使用して鉄筋を固定した状態を示す外観図である。
【図2】図2は、本実施の形態にかかる結束金具および固定された鉄筋を示す正面図である。
【図3】図3は、本実施の形態にかかる結束金具および固定された鉄筋を示す側面図である。
【図4】図4は、本実施の形態にかかる結束金具および固定された鉄筋を示す正面部分断面図である。
【図5】図5は、本実施の形態にかかる結束金具の構成部材を分解した状態で示す斜視図である。
【図6】図6は、本実施の形態にかかる結束金具の鉄筋への取り付けを説明する図である。
【図7】図7は、本実施の形態にかかる結束金具の鉄筋への取り付けを説明する図である。
【図8】図8は、本実施の形態にかかる結束金具の鉄筋への取り付けを説明する図である。
【図9】図9は、本実施の形態にかかる結束金具の鉄筋への取り付けを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の実施の形態にかかる結束金具を使用して鉄筋を固定した状態を示す外観図である。図2〜図4は、それぞれ、本実施の形態にかかる結束金具および固定された鉄筋を示す正面図、側面図、正面部分断面図である。
【0016】
図1〜図4に示すように、本実施の形態にかかる結束金具10は、第1の本体11、第2の本体12、ボルト13およびナット14を有する。第1の本体11および第2の本体12を、ボルト13にて取り付けて、ボルト13を締め付けることにより、交差する第1の鉄筋15および第2の鉄筋16を強固に固定することができる。
【0017】
第1の本体11は、平行する第1の側部21、第2の側部22と、第1の側部21および第2の側部22を、その一端で連結する連結部23を有する。なお、本明細書において、第1の鉄筋15が、水平方向に延び、第2の鉄筋16が垂直方向に延びた状態を想定している。そこで、図1や図2における縦方向を垂直方向、横方向を水平方向とする。これに従うと、図1に示す結束金具10は、第1の本体11の右側部に第2の本体12が位置している。しかしながら、結束金具10は、上記向き以外の向き(たとえば、右向きに90度回転させた向き、つまり、第1の部材11の下側に第2の部材12が位置し、ボルト13が下側に螺入されるような態様)で使用することも可能であることは言うまでも無く、上下左右の位置関係も、図1に示す使用態様にしたがって便宜上延べているに過ぎない。
【0018】
図5は、本実施の形態にかかる結束金具の構成部材を分解した状態で示す斜視図である。第1の側部21および第2の側部22は、後述する延長部の長さ(水平方向の長さ)を除き、同様の形状を有している。第1の側部21は、後述する連結部23における貫通穴29を介してボルト13が挿通される方向に沿って延びる延長部26と、延長部26の延びる方向から垂直な方向に(図1、図2においては上方に)延びる腕部24と、を有する。第2の側部22も、同様に、延長部27および腕部24を有する。本実施の形態においては、第1の側部21の延長部26の長さ(水平方向の長さ)は、第2の側部22の延長部27の長さよりも長い。
【0019】
腕部24の第1の鉄筋15に対向する側(図1、図2における右側)には、第1の鉄筋15の側部と接して、第1の鉄筋15を支持する鉄筋支持凹部25が形成される。鉄筋支持凹部25の形状は、第1の鉄筋15の側部の断面形状と略一致しているのが望ましい。たとえば、鉄筋支持凹部25は円弧を描き、その半径は、第1の鉄筋15の半径より僅かに大きくなっている。
【0020】
連結部23には、ボルト13を受け入れる貫通穴29が形成されている。本実施の形態にかかるボルト13は、標準仕様のボルト(呼び径10mm×呼び長さ50mm)である。ボルト13の軸50は、連結部23の貫通穴29を貫通し、さらに、後述する第2の本体12の第1端延長部42に形成されたネジ穴44まで達し、当該ネジ穴44に螺入される。
【0021】
第1の側部21の延長部26の内側壁28は、第2の本体12の側部41の外側壁45と接触する。ボルト13の軸50が、上記第2の本体12の第1端延長部42に形成されたネジ穴44に螺合された状態で、ボルト13が回転されると、ボルト13の直線方向の動き(図1においては、ボルト13の水平方向の動き)に伴って、第2の本体12も水平方向に移動する。たとえば、ボルト13が一方の方向に回転されると、ボルト13は前方に進行し、これに伴って、第2の本体12は、左方向(つまり、第1の本体11と近接する方向)に移動する。このときに、第1の本体11における内側壁28が、第2の本体12の外側壁45と接触することで、第2の本体12の移動がガイドされる。第1の側部21の延長部26は、上述したような第2の本体12のガイドとしての機能を有するため、第2の側部22の延長部27よりも長くなっている。
【0022】
第2の本体12は、第1の本体11に隣接する側の端部(第1端)において、前記第1の本体11の連結部23と平行となるように側部41から延びる第1端延長部42を有する。第1端延長部42の長さ(奥行き)は、第1の本体11の側部21、22の間隔と略同じ(実際には側部21、22の間隔より僅かに小さい)である。したがって、ボルト13の回転に伴って、第2の本体12は、第1の本体の側部21、22の間の空間54で、第1の本体11に近接するように、或いは、第1の本体11から離間するように並進することができる。上述したように、第1端延長部42の略中央には、第1の本体11の連結部23に形成された貫通穴29を貫通した、ボルト13の軸50を受け入れるネジ穴44が形成されている。
【0023】
また、第2の本体12は、第1の本体11と離間する側の端部(第2端)において、側部41から、断面形状が円弧状である第2端湾曲部43が延びる。第2端湾曲部43は、第2の鉄筋16を支持する鉄筋支持部として機能する。したがって、第2端湾曲部43の断面は、第2の鉄筋16を支持できるように、所定の半径(第2の鉄筋16より僅かに大きな半径)で湾曲している。また、第2端湾曲部43の先端46と、第1端延長部42の先端47との間は、第2の鉄筋16が通過できるように、第2の鉄筋16の幅(直径)よりも大きくなるよう離間している。
【0024】
また、ボルト13には、ナット14が螺入されており、ナット14の一方の面が連結部23の面と接触するようになっている。
【0025】
本実施の形態において、第1の本体11および第2の本体12のサイズは以下のとおりである。以下に例示するサイズは、22mm径の鉄筋(異形鉄筋)を結束するための結束金具10にかかるものである。したがって、結束する鉄筋の径によりそのサイズは変化し得る。なお、図1および図2の表示の態様にしたがって、以下、横方向(水平方向)、縦方向(上下方向)および奥行き方向のそれぞれのサイズを、長さ、高さ、および、奥行きと称する。また、第1の本体11および第2の本体とも厚みは4mmである。
【0026】
第1の本体11において、第1の側部21の延長部26の長さは40mmである。その一方、第2の側部22の延長部27の長さは、延長部26より短く、たとえば約30mmである。また、連結部23の高さは60mm、奥行きは33mmである。腕部24に形成された鉄筋支持凹部25は、11.5mm半径の円弧を描いている。
【0027】
第2の本体12の長さは40mm、第1端延長部42の高さは30mm、奥行きは略25mm(実際には25mmより僅かに小さい)である。第2端湾曲部46も、11.5mmの円弧を描いている。また、第2端湾曲部43の先端46と、第1端延長部41の先端47との距離は27mmである。
【0028】
このように構成された結束金具10の作用について説明する。以下の説明では、鉄筋の交差部分に結束金具10を取り付けるときに、図6に示すように、初期的には、結束金具10は、第1の本体11にボルト13およびナット14が取り付けられた第1のピース51と、第2の本体12との2つのピースに分けられている。たとえば、第1の鉄筋15と第2の鉄筋16とが離間した状態では、結束金具10は、2つのピースに分離されて使用される。
【0029】
なお、図6においては、説明の便宜上、第1の鉄筋15および第2の鉄筋16は、離間した状態であるが、後述するように、本実施の形態にかかる結束金具10は、第1の鉄筋15および第2の鉄筋16が略接触して交差した状態であっても、取り付け可能である。この場合には、結束金具10の第1の本体11、第2の本体12、ボルト13およびナット14を組み立てて一体とした状態で、取り付けに使用することができる。これについては、図8および図9を参照して後述する。
【0030】
図6に示す状態で、作業者は、第1のピース51において、第1の本体11の側部21,22のそれぞれの鉄筋支持凹部25に第1の鉄筋15を整合させる。つまり、第1の鉄筋15の側面と、鉄筋支持凹部25の湾曲面52とを接触させた状態とする。また、作業者は、第2の本体12の第2端湾曲部43と第2の鉄筋16とを整合させる。つまり、第2の鉄筋16の側面と、第2の本体12の第2端湾曲部の内面53とを接触させた状態とする。
【0031】
作業者は、第1のピース51において、ボルト13を一方の方向に回転させてボルト13を前進させて、第2の本体12の第1端延長部42に形成されたネジ穴44に螺入させる。図7は、ボルト13が、第1端延長部42のネジ穴44に螺入された状態を示す図である。この状態で、作業者は、ボルト13をさらに一方の方向に回転させてボルト13を前進させる。ボルト13の回転に伴って、第2の本体12が、第1の本体11の側に引き寄せられる(図7の矢印A参照)。第2の本体12は、第1の本体11の第1の側部21、第2の側部22および連結部23により作られた空間54内に位置すると、その側部41の外側壁45が第1の本体11の第1の側部21の内側壁28と接触しつつ、第1の本体11の連結部23に向かって(矢印Aに示す方向に)移動する。
【0032】
第2の本体12が矢印A方向に移動すると、それに伴って、第2の鉄筋16も矢印A方向、つまり、略垂直方向に位置する第1の鉄筋15に隣接する方向に移動し、最終的に、第1の鉄筋15と第2の鉄筋16とは接触する。さらに、作業者がボルト13を一方の方向に回転させることで、第1の鉄筋15および第2の鉄筋16は、強固に固定され、相互に動くことができなくなる。このようにして、結束金具10により、第1の鉄筋15と第2の鉄筋16とが固定される。
【0033】
なお、上記説明においては、第1の鉄筋15と第2の鉄筋16とが離間した状態で、第1の本体11を含む第1のピース51と、第2の本体12とを、ボルト13により接近させる場合について説明したが、第1の鉄筋15と第2の鉄筋16とが略接触した状態で交差している場合に、本実施の形態にかかる結束金具10を適用できることは言うまでもない。
【0034】
この場合には、図8に示すように、作業者は、第1の本体11、第2の本体12、ボルト13およびナット14を含む結束金具10を組み立てて一体とさせた状態で、かつ、ボルト13を他方の方向に回転させて、第1の本体11と第2の本体12とを離間させておき、第1の本体11における第2の側部22の端部55と、第2の本体12における第2端湾曲部43の先端46との間の距離dが、第2の鉄筋16の半径より大きい状態にしておく。
【0035】
この状態で、結束金具10を矢印B方向に並進させて、第1の鉄筋15の側面と鉄筋支持凹部25の湾曲面52とを接触させる。次いで、作業者は、第1の鉄筋15の側面と鉄筋支持凹部25の湾曲面52との接触を維持させつつ、結束金具10を、第2の鉄筋16の位置する方向(矢印C方向)に並進させて、第2の鉄筋16の側面と、第2の本体12の第2端湾曲部の内面53とを接触させる。
【0036】
次いで、作業者は、ボルト13を一方の方向に回転させて、ボルト13を前進させる。図9に示すように、ボルト13は第2の本体12のネジ穴44に螺入されているため、ボルト13が一方の方向に回転することにより、第2の本体12は、第1の本体11の連結部23に向かって移動する(図9の矢印D参照)ため、第1の鉄筋15および第2の鉄筋16が強固に固定されることになる。
【0037】
このように、本実施の形態では、結束金具10を組み立てて一体とした状態で、交差する鉄筋の交差箇所に取り付けることができる。したがって、部品の脱落のおそれがない。したがって、高所や狭い場所での作業にも好適である。
【0038】
上述したように、本実施の形態において、結束金具10は、平行する第1の側部21、第2の側部22、および、これらを一端で連結する連結部23を有する第1の本体11を有する。第1の側部21は、連結部23に設けられた貫通穴29から挿通されるボルト13の進行方向に延びる延長部26と、延長部26の延びる方向に垂直な方向に腕部24を有する。同様に第2の側部22も、同様の位置に延長部27および腕部24を有する。腕部24のそれぞれにおいて、連結部23と離間する側に、第1の鉄筋の側部と接して第1の鉄筋15を支持する鉄筋支持凹部25が形成される。
【0039】
また、結束金具10は、第1の本体11の側部21、22の間の空間54に入り込むことができる第2の本体12を備える。第2の本体12は、第1の本体11の第1の側部21と接する側部41を有する。また、第1の本体11に隣接する側の端部である第1端おいて、第1の本体11の連結部23と平行となるように延びる第1端延長部42を有し、第1端延長部42には、第1の本体11の連結部23に形成された貫通穴29を貫通した、ボルト13の軸50を受け入れるネジ穴44が設けられる。また、第2の本体12は、第1の本体11と離間する側の端部である第2端において、その断面形状が円弧状の、第1の鉄筋15と交差する第2の鉄筋16の側面を支持する第2端湾曲部43を有する。
【0040】
上記構成において、第1の本体11の連結部23に形成された貫通穴29および第2の本体12の第1端延長部42に形成されたネジ穴44に螺入されたボルト13を所定の一方の方向に回転させてボルト13を前進させることにより、ボルト13の回転に伴って、第2の本体12が、第1の本体11の側に引き寄せられ、第1の鉄筋15および第2の鉄筋16が接触して、強固に固定される。このように、本実施の形態によれば、ボルト13を前進させて、第1の鉄筋15および第2の鉄筋16の交差箇所を直接締め付けるのではなく、ボルト13の回転力により第2の本体12を第1の本体11の側に引き寄せることにより、第1の鉄筋15および第2の鉄筋16を固定している。したがって、より強固な鉄筋の締め付けが可能となる。
【0041】
また、本実施の形態においては、第1の鉄筋15および第2の鉄筋16が略接触して交差している箇所において、後から、組み立てられて一体となった結束金具10を取り付けて、第1の鉄筋15および第2の鉄筋16を締め付けることが可能である。
締め付けは、たとえば、以下のようなステップを備える。
【0042】
作業者は、第1の本体11、第2の本体12、ボルト13およびナット14を含む結束金具10を組み立てて一体とさせた状態で、かつ、第1の本体11における第2の側部22の端部55と、第2の本体12における第2端湾曲部43の先端46との間の距離dが、第2の鉄筋16の直径より大きくなるように、第1の本体11と第2の本体12とを離間させておく。
【0043】
作業者は、第1の本体11の側部21、22の鉄筋支持凹部25を第1の鉄筋15と対向させるように位置させて、結束金具10を、第1の鉄筋15の方向に並進させて、第1の鉄筋15の側面と鉄筋支持凹部25の湾曲面52とを接触させる。
【0044】
次いで、作業者は、第1の鉄筋15の側面と鉄筋支持凹部25の湾曲面52との接触を維持させつつ、結束金具10を、第2の鉄筋16の方向に並進させて、第2の鉄筋16の側面と、第2の本体12の第2端湾曲部の内面53とを接触させる。
【0045】
この状態で、作業者は、ボルト13を一方の方向に回転させて、ボルト13を前進させる。ボルト13は第2の本体12のネジ穴44に螺入されているため、ボルト13が一方の方向に回転することにより、第2の本体12は、第1の本体11の連結部23に向かって移動するため、第1の鉄筋15および第2の鉄筋16が強固に固定されることになる
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0046】
10 結束金具
11 第1の本体
12 第2の本体
13 ボルト
14 ナット
15 第1の鉄筋
16 第2の鉄筋
21 第1の側部
22 第2の側部
23 連結部
24 腕部
25 鉄筋支持凹部
26、27 延長部
28 延長部の内側壁
29 貫通穴
41 側部
42 第1端延長部
43 第2端湾曲部
44 ネジ穴
45 外側壁
46 第2端湾曲部の先端
53 第2端湾曲部の内面
50 ボルトの軸
51 第1ピース
52 鉄筋支持凹部の湾曲面
54 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2本の交差する鉄筋を結束する結束金具であって、
平行する第1の側部、第2の側部、および、これらを一端で連結する連結部を有する第1の本体と、第1の本体の前記第1の側部および第2の側部の間の空間に入り込むことができる第2の本体と、を備え、
前記第1の本体において、第1の側部は、前記連結部に形成された貫通穴から挿通されるボルトの進行方向に延びる延長部と、延長部の延びる方向に垂直な方向に腕部を有するとともに、前記第2の側部は、前記第1の側部と同様の位置に延長部および腕部を有し、前記腕部のそれぞれにおいて、前記連結部と離間する側に、前記第1の鉄筋の側部と接して第1の鉄筋を支持する鉄筋支持凹部が形成され、
前記第2の本体は、前記第1の本体の第1の側部と接する側部を有し、前記第1の本体に隣接する側の端部である第1端おいて、前記第1の本体の連結部と平行となるように前記側部から延びる第1端延長部を有し、前記第1端延長部には、前記第1の本体の連結部に形成されたネジ穴を貫通した、前記ボルトの軸を受け入れるネジ穴が設けられ、また、前記第1の本体と離間する側の端部である第2端において、その断面形状が円弧状の、前記第1の鉄筋と交差する第2の鉄筋の側面を支持する第2端湾曲部を有し、
前記第1の本体の連結部に形成された前記貫通穴および前記第2の本体の第1端延長部に形成された前記ネジ穴に螺入された前記ボルトを所定の一方の方向に回転させて前記ボルトを前進させることにより、前記ボルトの回転に伴って、前記第2の本体が、前記第1の本体の側に引き寄せられ、前記第1の鉄筋および前記第2の鉄筋が接触して、前記第1の鉄筋および前記第2の鉄筋が強固に固定されることを特徴とする結束金具。
【請求項2】
前記第1の本体の第1の側部の延長部の内側壁と、前記第2の本体の側部の外側壁とが接触し、前記第2の本体は、前記第1の本体における内側壁にガイドされつつ、前記ボルトの回転に伴って、前記第1の側部、第2の側部および連結部により確定される空間内を並進することを特徴とする請求項1に記載の結束金具。
【請求項3】
2本の交差する鉄筋を結束する結束金具であって、
平行する第1の側部、第2の側部、および、これらを一端で連結する連結部を有する第1の本体と、第1の本体の前記第1の側部および第2の側部の間の空間に入り込むことができる第2の本体と、を備え、
前記第1の本体において、第1の側部は、前記連結部に形成された貫通穴から挿通されるボルトの進行方向に延びる延長部と、延長部の延びる方向に垂直な方向に腕部を有するとともに、前記第2の側部は、前記第1の側部と同様の位置に延長部および腕部を有し、前記腕部のそれぞれにおいて、前記連結部と離間する側に、前記第1の鉄筋の側部と接して第1の鉄筋を支持する鉄筋支持凹部が形成され、
前記第2の本体は、前記第1の本体の第1の側部と接する側部を有し、前記第1の本体に隣接する側の端部である第1端おいて、前記第1の本体の連結部と平行となるように前記側部から延びる第1端延長部を有し、前記第1端延長部には、前記第1の本体の連結部に形成された貫通穴を挿通した、前記ボルトの軸を受け入れるネジ穴が設けられ、また、前記第1の本体と離間する側の端部である第2端において、その断面形状が円弧状の、前記第1の鉄筋と交差する第2の鉄筋の側面を支持する第2端湾曲部を有し、
前記第1の本体の連結部に形成された前記貫通穴および前記第2の本体の第1端延長部に形成された前記ネジ穴に螺入された前記ボルトを所定の一方の方向に回転させて前記ボルトを前進させることにより、前記ボルトの回転に伴って、前記第2の本体が、前記第1の本体の側に引き寄せられ、前記第1の鉄筋および前記第2の鉄筋が接触して、前記第1の鉄筋および前記第2の鉄筋が強固に固定されるように構成された結束金具において、
前記第1の本体における前記第2の側部の端部と、前記第2の本体における前記第2端湾曲部の先端との間の距離が、前記第2の鉄筋の直径より大きくなるように、前記第1の本体と前記第2の本体とを離間させ、
前記第1の本体において、第1の側部および第2の側部のそれぞれの鉄筋支持凹部を、前記第1の鉄筋と対向させるように位置させて、前記結束金具を、前記第1の鉄筋の方向に並進させて、前記第1の鉄筋の側面と前記鉄筋支持凹部の湾曲面とを接触させ、
前記第1の鉄筋の側面と前記鉄筋支持凹部の湾曲面との接触を維持させつつ、前記結束金具を、前記第2の鉄筋の方向に並進させて、前記第2の鉄筋の側面と前記第2の本体の第2端湾曲部の内面とを接触させ、
前記ボルトを一方の方向に回転させて前記ボルトを前進させ、前記ボルトが一方の方向に回転することにより、前記第2の本体を、前記第1の本体の連結部に向かって移動させ、前記第1の鉄筋および前記第2の鉄筋を強固に固定するように構成されたことを特徴とする鉄筋の結束方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate