説明

結球野菜収穫機

【課題】本発明は、収穫後の洗浄作業などの余計な手間を要せず、所望の位置で確実に切断して収穫すると共に収穫作業の効率化を図ることができ得る簡易な構造の結球野菜収穫機を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の結球野菜収穫機は、走行車体に、畝に植生する結球野菜の結球部を挟扼する案内装置と、案内装置により挟扼された結球野菜を切断して結球野菜の外葉と結球部とを分離する回転刈刃を有する切断装置とを設け、前記案内装置を前記走行車体の前方で前記畝に沿って前低後高状に配置した左右の案内ロッドにより構成し、この左右の案内ロッドにより畝の頂面の直上で両案内ロッドの間が狭くなる狭隘部を形成すると共に前記回転刈刃を前記狭隘部の後下方で畝の直上に配置したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畝に植生するキャベツなどの結球野菜を刈り取るための結球野菜収穫機に関する。
【背景技術】
【0002】
キャベツなどの結球野菜を刈り取る収穫機として例えば特許文献1に記載の収穫機が知られている。
【0003】
特許文献1に記載の収穫機は、機体前部に備える引き抜き装置によって畝に植生するキャベツ等の結球野菜を引き抜き、これを機体後方に搬送する途中でその根茎部や外葉を切断する構成となっている。
【0004】
このような収穫機は、引き抜き装置、コンベア、切断装置に加えて切断する際の位置決め装置などを要しており、装置が大型化、複雑化していたためコストやメンテナンスの点で不利となっているうえに、このような大型の装置では多条処理を行うために引き抜き装置等を左右に並べるような構成を取り難く、作業の効率化に限界があった。特に、雪中で春までキャベツを貯蔵する、いわゆる越冬キャベツなどは、雪の降る直前や降り始めのうちにキャベツを掘り出して圃場に並べておく必要があるため、作業の効率化は重要な課題となっている。
【0005】
また普通に収穫作業を行う場合でも、従来の収穫機のように結球野菜を畝から引き抜いて搬送途中で切断処理を行う構成では、引き抜いた結球野菜の根茎部や外葉に付着した畝土が搬送中に飛散して結球部を汚したり、切断刃に付着して結球部の切断面を汚したりすることがあり、洗浄作業が必要となって手間がかかるという問題があった。特に、切断刃に土が付着した場合、土が結球部にこびりついて除きにくいため商品価値が著しく減少するという問題があった。
【特許文献1】特開2001-190127号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする問題点は、従来の収穫機では、装置構成の大型化により作業の効率化に限界があるうえに、畝土が結球部やその切断面に付着して洗浄作業を要したりしていた点であり、本発明は、所望の位置で確実に切断可能であると共に切断作業の効率化を図ることができるうえに、結球部を汚すことなく切断して収穫することも可能な結球野菜収穫機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1記載の結球野菜収穫機は、走行車体と、結球野菜の外葉と結球部とを分離する回転刈刃を有する切断装置と、畝に植生する結球野菜の結球部を回転刈刃に案内する案内装置と、を備え、前記走行車体の横幅方向にエンジンの動力で回転する出力軸を架設し、前記切断装置は、前記回転刈刃を支持する回転刈刃フレームの後端を前記出力軸に揺動自在に連結すると共に、回転刈刃フレームに備える伝動機構を介して出力軸の回転を回転刈刃フレーム先端の回転刈刃に伝動してなり、前記案内装置は、車体の前後方向に沿って設置した左右に一対の案内フレームの後端を前記出力軸に揺動自在に連結し、両案内フレームの先端をそれぞれ前記回転刈刃の左右に配置すると共に、前記両先端に回転刈刃に向けて斜め後方に伸びる上側と下側の案内ロッドをそれぞれ取り付け、上側の案内ロッドを下側の案内ロッドに沿って伸ばしてなり、前記案内フレームの一方に回転刈刃フレーム受け止め体を一体的に設け、当該案内フレームの先端を地表面に接触すると共に前記受け止め体に回転刈刃フレームの下側面を接触させて回転刈刃を地表面より所定高さに浮上させることを特徴とする。
請求項2記載の発明は、前記回転刈刃を畝の中央より左右の畝溝側のいずれかに寄せて配置すると共に、回転刈刃の後部側から寄せた畝溝側の刃先を覆うカバーを、この回転刈刃に取り付けたことを特徴とする。
請求項3記載の発明は、前記下側の案内ロッドは、畝の頂面の直上で狭くなる狭隘部を有し、前記回転刈刃を前記狭隘部の後下方に配置したことを特徴とする。
請求項4記載の発明は、前記回転刈刃の直後に前記車体の前後方向に沿ったコンベアを設け、前記案内ロッドの後端部を前記コンベアの先端部まで延伸すると共に、前記回転刈刃の直後より、左右の案内ロッドの間隔を広くして引渡し部を形成したことを特徴とする。
請求項5記載の発明は、前記コンベアを、前半部の受取りコンベアと後半部の排出コンベアにより構成し、受取りコンベアの後部を車体の横幅方向に架設したコンベア駆動軸に揺動自在に連結すると共に、受取りコンベアと前記回転刈刃フレームをリンクを介して連結し、回転刈刃フレームに連動して受取りコンベアの前部を上下動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載のごとく、走行車体の横幅方向にエンジンの動力で回転する出力軸を架設し、結球野菜の外葉と結球部とを切断分離する回転刈刃を支持する回転刈刃フレームの後端を前記出力軸に揺動自在に連結すると共に、回転刈刃フレームに備える伝動機構を介して出力軸の回転を回転刈刃フレーム先端の回転刈刃に伝動して切断装置となし、走行車体の前後方向に沿って設置した左右に一対の案内フレームの後端を前記出力軸に揺動自在に連結し、両案内フレームの先端をそれぞれ前記回転刈刃の左右に配置すると共に、両先端に回転刈刃に向けて斜め後方に伸びる上側と下側の案内ロッドをそれぞれ取り付けて、上側の案内ロッドを下側の案内ロッドに伸ばして案内装置となし、前記案内フレームの一方に回転刈刃フレーム受け止め体を一体的に設け、当該案内フレームの先端を地表面に接触すると共に前記受け止め体に回転刈刃フレームの下側面を接触させて回転刈刃を地表面より所定高さに浮上させることにより、結球野菜収穫機の前進に伴って、畝に植生する結球野菜の結球部は、上側と下側の案内ロッドにより回転刈刃の直前に案内され、結球部が根本から切断される。
そのため、簡易な構成によって、結球部と外葉とを確実に切断分離できると共に、これを左右に並べて多条処理による作業の大幅な効率化を図り得る。さらに、畝に植生する毛旧野菜を引き抜かずに根本から切断することができて畝土を飛散させるおそれがなく、不要な外葉を畝に残したままで結球部を汚さずに切断することができる。
【0009】
請求項2記載のごとく、回転刈刃を畝の中央より左右のいずれかに寄せて配置し、この回転刈刃の後部側から寄せた畝溝側にかけての刃先を覆うカバーを回転刈刃に取り付けたことにより、切断分離された結球部が回転刈刃によって再び切断されることがなく収穫の歩留りを向上することができると共に、再切断された結球部の除去などの後処理を要せず作業効率を向上することができる。
【0010】
請求項3記載のごとく、畝の頂面の直上で、左右の下側の案内ロッドの間隔を狭くして狭隘部となし、この狭隘部の後下方に回転刈刃を配置したことにより、結球部が狭隘部によって挟まれて後側がわずかに持ち上がり、回転刈刃によって結球部を確実に切断分離することができる。
【0011】
請求項4記載のごとく、回転刈刃の直後に、走行車体の前後方向に沿ったコンベアを設け、案内ロッドの後端部をコンベアの先端部まで延伸すると共に、回転刈刃の直後から左右の案内ロッドの間隔を広くして引渡し部となしたことにより、回転刈刃によって切断分離された結球部は引渡し部を通過してコンベアに受け渡されるため圃場に落下することがなく、結球部を汚すおそれがない。
【0012】
請求項5記載のごとく、前半部の受取りコンベアと後半部の排出コンベアにより前記コンベアを形成し、受取りコンベアの後部を車体の横幅方向に架設したコンベア駆動軸に揺動自在に連結すると共に、受取りコンベアと回転刈刃フレームをリンクを介して連結し、回転刈刃フレームに連動して受取りコンベアの前部を上下動させたことにより、横フレームの回動により高さ調節される回転刈刃に従って受取りコンベアの先端が上下に回動して、回転刈刃と受取りコンベアの先端との高さが合うように調整されるため、回転刈刃によって切断分離した結球部を受取りコンベアに確実に引き渡して結球部の汚れを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る結球野菜収穫機について、図1乃至図5を参照して説明する。図1は本発明に係る結球野菜収穫機の全体側面図である。また、図2は結球野菜収穫機の平面図であり、排出コンベア及び集積車の図示を省略している。
【0014】
結球野菜収穫機1は、走行車体10と、走行車体10の前方に設けられた刈取り作業部2と、刈り取った結球野菜を走行車体10の後方に搬送するコンベア3からなる搬送装置とにより構成されている。
【0015】
走行車体10を構成する機枠11は正面視において下方が開口するコ字状で、二条の畝を跨ぐ幅に形成している。この機枠11の左右にクローラ12、12を設ける。この一対のクローラ12、12はそれぞれ畝溝を走行可能な幅に形成する。機枠11の上面後部にはエンジン13を搭載し、機枠11の左右両側にエンジンからの動力をクローラ12、12に伝達するトランスミッションケース14、14を設ける。トランスミッションケース14には、走行車体10の横幅方向に出力軸16を架設する。さらに機枠11の上面前部中央には運転席15を設ける。
【0016】
刈取り作業部2は、畝に植生するキャベツ等の結球野菜を刈り取る切断装置4と、切断装置4によって刈り取るために結球野菜の結球部を切断装置4に案内する案内装置5とにより構成する。
【0017】
切断装置4は、走行車体10の横幅方向に架設した出力軸16と、この出力軸16に接続して前方に延伸した横フレーム40と、横フレーム40から下方に延伸した縦フレーム42と、縦フレーム42の下端に取り付けた円板状の回転刈刃43a、43bとからなる。この横フレーム40と縦フレーム42とにより回転刈刃フレームが構成される。また不図示の伝動機構は、筒状の横フレーム40及び縦フレーム42の内部にそれぞれ伝動軸及び回転軸を配置して構成される。
【0018】
横フレーム40は、出力軸16上に軸支点を有し、この軸支点を中心として上下に揺動可能に接続する。また、縦フレーム42は、ギアボックス41との接続部のまわりに左右に揺動可能に接続する。本実施形態では、この切断装置4を走行車体10の左右に一対設けている。
【0019】
回転刈刃43a、43bは、走行車体10が跨ぐ二条の畝のそれぞれの中央よりも左右いずれかに寄せると共に、走行車体10より前方に突出して設けられた受取りコンベア30の先端直前に配置する。両回転刈刃43a、43bはそれぞれ、ギアボックス41を介して横フレーム40の伝動軸からの動力をうけた縦フレーム42の回転軸によって互いに内向きに回転駆動する。すなわち、図2において右側の回転刈刃43aは平面視時計回りに、左側の回転刈刃43bは平面視反時計回りに回転する。
【0020】
図3に回転刈刃43aの斜視図を示す。図3に示すように、回転刈刃43aの刃先は鋸刃状に形成する。この刃先はあさりのない鋸刃状に形成するのが好ましい。通常、鋸などには切断容易のためにあさりが形成されているが、あさりがあると余分な切りくずが生じることとなり、この切りくずが散ると、結球部やその切断面を汚したり、圃場に散った切りくずが腐敗して病気の元となったりするおそれがあるためである。また、あさり無しの刃先で切断した場合、切断面が綺麗になる。
【0021】
また、図3に示すように、回転刈刃43aにはカバー44を取り付ける。回転刈刃43aは進行方向左側に寄っており、このカバー44により回転刈刃43aの後部及び左側部の刃先を覆う。また、カバー44は、回転刈刃43aの後部から内側に向かって突出する突出部45を備えている。
【0022】
このカバー44により、切断された結球部がコンベア3へ移動する途中でさらに回転刈刃43によって傷つけられることを防ぐ。また、カバー44の突出部45により、円板状の回転刈刃43と回転刈刃43の直後に近接する受取りコンベア30との間に結球部が落ち込んだり、結球部が挟まって回転刈刃43により傷つけられることを防ぐ。
【0023】
次に案内装置5について説明する。図4は、刈取り作業部2の正面図であり、コンベアの図示を省略している。
【0024】
本実施形態の案内装置5は、左右のクローラ12、12が走行する畝間を前方に延伸した左右の支持フレーム50、60と、走行車体10が跨ぐ二条の畝の畝間を前方に延伸した中央の支持フレーム70と、これらの支持フレーム50、60、70のそれぞれの先端に形成した取付部51、61、71から走行車体10に向かって延伸した案内ロッド52、62、72a、72bとにより構成する。
【0025】
まず、案内装置5の支持フレーム50、60、70について説明する。
【0026】
左右の支持フレーム50、60は、その後端をそれぞれ切断装置4の横フレーム40の先端のギアボックス41に設けた取付板41aに取り付けて、上下に回動可能かつ任意の角度位置で固定可能に構成する。この支持フレーム50、60は高い位置にある取付板41aから前下方に向かって延伸され、その先端を畝間に配置する。支持フレーム50、60と横フレーム40とにより案内フレームが構成される。
【0027】
この先端に形成した錐体形状の取付部51、61は畝溝上を滑動する。この取付部51、61に案内ロッド52、62を取り付ける。案内ロッド52、62は、それぞれ取付部51、61から、走行車体10が跨ぐ畝の側面に沿って後上方に向かって延出する。取付部51、61を接地させることにより、案内ロッド52、62が畝に対して所定の位置に配置される。
【0028】
中央の支持フレーム70は、後部杆76と、前部杆77と、油圧シリンダ78とからなり、この中央の支持フレーム70により案内フレームを構成する。後部杆76の後端は走行車体10の出力軸16のスリーブ16aに取り付ける。後部杆76の先端には、前部杆77の後端を回動自在に取り付けると共に、この後部杆76と前部杆77とを油圧シリンダ78で接続する。
【0029】
前部杆77の先端には案内ロッド72a、72bを取り付ける錐体形状の取付部71を形成すると共に、畝溝を転動するゲージホイル79を設ける。案内ロッド72a、72bはそれぞれ、左右の畝の側面に沿って取付部71から後上方に向かって延出する。
【0030】
この支持フレーム70は、切込み16b、16bにより横フレーム40、40とは独立に回動可能に構成する。また、指示フレーム70を取り付けたスリーブ16aには、回転刈刃フレーム受け止め体17、17を一体に取り付ける。この回転刈刃フレーム受け止め体17、17は左右の横フレーム40、40の下側に当接可能に配置される。中央の支持フレーム70を油圧シリンダ78により伸縮させてスリーブ16aを回動し、回転刈刃フレーム受け止め体17、17により規定される横フレーム40、40の回動下死点を決める。
【0031】
次に、支持フレーム50、60、70に取り付けた案内ロッド52、62、72a、72bについて説明する。
【0032】
進行方向左側の畝の左右側面に沿ってそれぞれ前低後高状に配置された案内ロッド52、72aを畝の頂面直上で対向させて、両案内ロッド52、72aの間隔を狭くした狭隘部53を形成する。狭隘部53は、畝の略中央において、後方に向かって畝の頂面の直上からわずかに上向きに形成されている。
【0033】
この狭隘部53よりも後部は、案内ロッド52を回転刈刃43aの縦フレーム42の内側を通ってコンベア3の受取りコンベア30まで延出し、案内ロッド72aを狭隘部53から走行車体10の中央側に曲げて案内ロッド52との間隔を徐々に広くすると共に受取りコンベア30の前端部まで延出して、引渡し部54を形成する。切断装置4の回転刈刃43aは、カバーで覆われていない前部及び内側部が、この狭隘部53の直後で引渡し部54の下方にくるように配置する。
【0034】
進行方向右側の畝の右側面に沿う案内ロッド62と左側面に沿う案内ロッド72bも畝の頂面直上で対向させて、両案内ロッド62、72bの間隔を狭くした狭隘部63を形成すると共に狭隘部63の後部には引渡し部64を形成する。
【0035】
また、取付部51、61、71には、案内ロッド52、62、72a、72bよりもさらに高い位置を後上方に延伸される上側の案内ロッド55、65、75a、75bを設ける。この上側の案内ロッド55、65、75a、75bは、それぞれ下側の案内ロッド52、62、72a、72bにほぼ沿うように取り付けられる。
【0036】
次に、搬送装置を構成するコンベアについて説明する。コンベア3は、刈り取った結球野菜を前方の刈取り作業部2から受け取る受取りコンベア30と、この受取りコンベア30と直列に設けて結球野菜を走行車体10の後方に運ぶ排出コンベア31とにより構成する。このコンベア3を、機枠11の下方をくぐるように走行車体10の前部から後部まで設ける。
【0037】
受取りコンベア30は、走行車体10よりも前方に突出させると共に前端側を畝の直上に配置し、畝上で切断した結球野菜の結球部を圃場に落下させることなく確実に受取り可能に構成する。排出コンベア31は、高く起立したラグ32を有しており、受取りコンベア30から結球部をさらに受け継いで結球野菜収穫機の後上方へと搬送し、走行車体10の後部に連結した集積車33に結球部を集積する。
【0038】
排出コンベア31は、トランスミッションケース14の駆動軸34により駆動され、受取りコンベア30へは、排出コンベア31の前端の伝達軸35から受取りコンベア30の後端の駆動軸36を介して動力が伝達される。駆動軸36には軸支点を設けて、受取りコンベア30をこの駆動軸36の回りに回動可能に構成する。また受取りコンベア30と刈取り作業部2とをリンク棒37によって連結する。
【0039】
次に、刈取り作業部とコンベアとの関係について図5を参照して説明する。図5は、結球野菜収穫機の前部を示す側面図である。簡単のために、支持フレームを破線で示す。また、Tは畝の頂面であり、Gはクローラの走行面である。
【0040】
刈取り作業部2の横フレーム40と受取りコンベア30とにリンク棒37の一端と他端とをそれぞれ軸着し、出力軸16、受取りコンベア30の駆動軸36、リンク棒37の取付け軸38、39により、横フレーム40と受取りコンベア30とを平行リンク状に連結する。
【0041】
横フレーム40と受取りコンベア30とをこのように連結することにより、横フレーム40を回動して回転刈刃43a、43bの高さ位置を調整したときに受取りコンベア30が駆動軸36の回りに回動して、受取りコンベア30の前端が回転刈刃43a、43bに合った高さ位置に調整される。
【0042】
上記のごとく構成した結球野菜収穫機の作用について、さらに図5を参照して説明する。
【0043】
走行車体10の前進に伴い、畝に植生するキャベツ等の結球野菜の結球部V1は狭隘部53を備える左右の案内ロッド52、72aに挟扼されて後部がわずかに持ち上げられる。また、上側の案内ロッド55、75aにより結球部V1は左右を抑えられて姿勢が安定する。
【0044】
そして、案内ロッド52、72aによって持ち上げられた結球部V1の根本を、狭隘部53の直後に配置された回転刈刃43aによって切断していく。
このとき、回転刈刃43aの高さ位置を畝の頂面Tに近接させておくと、結球部V1に外葉が多く付いた状態で切断することができ、回転刈刃43aの高さ位置を畝の頂面Tよりも少し離しておくと、結球部V1のみを切断することができる。
【0045】
切断された結球部V2は、狭隘部53の後部に形成された引渡し部54を落下して受取りコンベア30に引き渡される。引渡し部54を通過する際には左右の案内ロッド55、75aにより結球部V2の圃場への落下が防止される。
【0046】
上記のごとく構成した結球野菜収穫機は、以下に述べる効果を奏する。
【0047】
本発明の結球野菜収穫機は、走行車体の前方から走行車体に向かって後上方に延伸した左右の案内ロッドを備え、この左右の案内ロッドの間隔を畝の頂面の直上で狭くして狭隘部を形成し、この狭隘部の直後に回転刈刃を配置しており、結球野菜収穫機の前進により案内ロッドの狭隘部に結球野菜の結球部が挟まれて押し上げられ、狭隘部の直後に配置した回転刈刃によって結球部が根本から切断される。このような簡易な構成により結球部を根本から確実に切断でき、これを左右に並べて多条処理による作業の大幅な効率化を図り得る。また、構成が簡易なため安価に形成することができると共にメンテナンス等の手間も少なく済むため使い勝手がよい。
【0048】
さらに、畝に植生する結球野菜を引き抜かずに根本から切断することができるため畝土を飛散させるおそれがなく、結球部を汚さずにまた不要な外葉部を畝上に残したままで必要な結球部を切断することができる。畝土が飛散して回転刈刃に付着した場合に汚れた回転刈刃によって結球部の切断面が汚れることとなって洗浄作業に労力を要するうえに、汚れを落としきれずに商品価値が著しく落ちてしまうおそれがあったことから、このように畝土の飛散を防止することは切断作業において重要である。
【0049】
このような多条処理による作業の大幅な効率化は、結球野菜の通常の収穫作業においても有利であるうえに、いわゆる越冬キャベツなどにおいては特に有利となる。いわゆる越冬キャベツは雪が降る直前にキャベツを切断分離する必要があるが、キャベツを早く切断しすぎると雪が降る前に霜などにより凍りついて変色し、味や風味が著しく損なわれることとなる一方で、雪が降り積もってからではキャベツが雪に埋もれて切断作業ができなくなってしまうためである。
【0050】
このような越冬キャベツにおいては、切断したキャベツは圃場に集積しておくこととなる。この場合、コンベアの図示を省略した図4のごとく、結球野菜収穫機には搬送装置を設けなくてもよく、切断されたキャベツを集積車に搬送せず、そのまま圃場に放出する。本実施形態のような2条狩りに構成すると、キャベツは走行車体の跨ぐ左右の畝に挟まれた畝溝に落下し、後の集積作業の手間と労力を抑えることができる。
【0051】
また、本発明の結球野菜収穫機は、走行車体に、切断した結球部を機体後方へと搬送するコンベアをさらに設けて、このコンベアの直前に回転刈刃を配置しており、回転刈刃によって根本から切断分離された結球部は回転刈刃の直後にあるコンベアに確実に受け継がれる。そのため、不要な外葉部を畝上に残したままで必要な結球部を切断すると共に、結球部を圃場に落とすことなく汚さずにコンベアにより搬送して集積することができ、通常の切断作業において汚れ落としなどの後処理作業を要せず、作業の効率化を図ることができる。
【0052】
また、本発明の結球野菜収穫機は、走行車体より前方に延出した支持フレームの先端に案内ロッドを取り付けて、この支持フレームの先端から畝に沿って前低後高状に配置されており、案内ロッドの後端部が自由端となっている。そのため、結球野菜の結球部は案内ロッドの弾性により狭隘部で適度に押し上げられると共に、狭隘部によって結球野菜が引き抜かれることを抑止でき、畝土の飛散を防止することができる。
【0053】
また、本発明の結球野菜収穫機は、上側と下側の2組の案内ロッドを設けており、下側の案内ロッドが形成する狭隘部によって根本を挟まれた結球部の高い位置を上側の案内ロッドによって抑えると共に、回転刈刃によって切断された結球部が上側の案内ロッドにより抑えられて下側の案内ロッドの上に保持される。そのため、切断のときには結球部の姿勢が安定して切断位置のばらつきを抑えることができると共に、切断された結球部が不意に落下することがなく切断した結球部を汚さない。
【0054】
また、本発明の結球野菜収穫機は、切断装置を、走行車体の左右方向に設けた出力軸と、この出力軸より前方に延伸した横フレームと、この横フレームより下方に延伸した縦フレームと、この縦フレームの下端に設けた回転刈刃とにより構成し、出力軸上に軸支点を形成して該軸支点の回りに横フレームを回動可能にしており、横フレームの回動により回転刈刃の高さ位置を調節することが可能となる。そのため、回転刈刃の高さを低くして畝の頂面に近接した位置で結球部を切断分離して、結球部に外葉が多く付いた状態で切断することができると共に、回転刈刃の高さを高くして畝の直上から浮いた位置で切断して結球部に外葉がほとんどない状態で切断することもでき、作業に応じて所望の位置で切断するこにより作業性の向上を図ることができる。
【0055】
例えば、越冬キャベツなどにおいては、切断したキャベツを圃場に放出するため、結球部に土が付着することとなるが、回転刈刃の高さ位置を調整できることにより、回転刈刃を畝の頂面に近接させておき、結球部に外葉が多く付くように切断することで結球部の汚れを抑えることができる。
【0056】
また、本発明の結球野菜収穫機は、切断装置に、出力軸上に軸支点を有し該軸支点の回りに回動する案内フレームを設けてこれに横フレームの回動下死点を規定する回転刈刃フレーム受け止め体を形成しており、この回転刈刃フレーム受け止め体により回転刈刃の高さ位置の下死点が規定される。そのため、回転刈刃が畝に衝突して土を噛むことがなく、回転刈刃の土噛みにより切断面がひどく汚れて商品価値が著しく落ちてしまうことがない。
【0057】
また、本発明の結球野菜収穫機は、案内ロッドにより形成した狭隘部より後部の間隔を後方に向かって広くしていき、コンベアの前部に至る引渡し部を形成しており、回転刈刃によって切断された結球部は結球野菜収穫機の前進に伴って狭隘部から引渡し部を通過してコンベアに受け渡される。そのため、畝上で切断した結球部を落下させることなくコンベアに確実に受け渡すことができて結球部を汚すおそれがない。
【0058】
また、本発明の結球野菜収穫機は、走行車体の横幅方向に設けた出力軸上に軸支点を有する横フレームと、コンベアの受取りコンベアの駆動軸上に軸支点を有する該受取りコンベアとにリンク棒の一端と他端とをそれぞれ軸着して、横フレームと受取りコンベアとを平行リンク状に連結しており、回転刈刃の高さ位置調節のために横フレームを回動することによって受取りコンベアの前部の高さ位置も回転刈刃の高さに合わせて自動に調整される。そのため、回転刈刃から受取りコンベアへの結球部の引渡しを確実に行って結球部の汚れを防止すると共に、作業を行う圃場に応じた調整を簡便に行うことができて作用の効率化を図ることができる。
【0059】
また、回転刈刃には、その後部と一方の側部を覆うカバーを取り付けており、切断された結球部が回転刈刃に当たって再び切断されることがない。そのため、収穫の歩留りを向上することができると共に再切断された結球部の除去などの後処理を要せず作業効率を向上することができる。
【0060】
また、回転刈刃の後部と一側部を覆うカバーには、その後部を内側に突出した突出部を設けており、この突出部によって回転刈刃とコンベアの前部との間の隙間がふさがれている。そのため、切断された結球部が案内ロッドから脱落しても回転刈刃とコンベアとの間の突出部に当たり、圃場への落下を防止できて結球部を汚すことがない。
【0061】
本実施形態の結球野菜収穫機は、2条の畝を跨ぐ走行車体に案内ロッドから成る案内装置と回転刈刃から成る切断装置とをそれぞれ左右に設けて、2条を同時に切断作業する構成となっているが、上述した簡易な構成の刈取り作業部によれば3条以上の多条狩りの構成をとることも可能である。また、単条狩りの構成を取ることも可能であり、本実施形態に示したような乗用型でなく、歩行型の走行車体にエンジンを搭載した簡易構成の切断機とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明に係る結球野菜収穫機の全体側面図である。
【図2】結球野菜収穫機の平面図である。
【図3】回転刈刃の斜視図である。
【図4】刈取り作業部の正面斜視図である。
【図5】刈取り作業部の作用を示す側面図である。
【符号の説明】
【0063】
1 結球野菜収穫機
10 走行車体
11 機枠
12 クローラ
13 エンジン
14 トランスミッションケース
15 運転席
16 出力軸
2 刈取り作業部
3 コンベア
30 受取りコンベア
31 排出コンベア
32 ラグ
33 集積車
34 駆動軸
35 伝達軸
36 駆動軸
37 リンク棒
4 切断装置
40 横フレーム
41 ギアボックス
42 縦フレーム
43a、43b 回転刈刃
44 カバー
45 突出部
5 案内装置
50、60、70 支持フレーム
51、61、71 取付部
52、62、72a、72b 案内ロッド
53、63 狭隘部
54、64 引渡し部
55、65、75a、75b 抑え杆
76 後部杆
77 前部杆
78 油圧シリンダ
79 ゲージホイル
V1、V2 結球部
T 頂面
G 走行面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体と、結球野菜の外葉と結球部とを分離する回転刈刃を有する切断装置と、畝に植生する結球野菜の結球部を回転刈刃に案内する案内装置と、を備え、
前記走行車体の横幅方向にエンジンの動力で回転する出力軸を架設し、
前記切断装置は、前記回転刈刃を支持する回転刈刃フレームの後端を前記出力軸に揺動自在に連結すると共に、回転刈刃フレームに備える伝動機構を介して出力軸の回転を回転刈刃フレーム先端の回転刈刃に伝動してなり、
前記案内装置は、車体の前後方向に沿って設置した左右に一対の案内フレームの後端を前記出力軸に揺動自在に連結し、両案内フレームの先端をそれぞれ前記回転刈刃の左右に配置すると共に、前記両先端に回転刈刃に向けて斜め後方に伸びる上側と下側の案内ロッドをそれぞれ取り付け、上側の案内ロッドを下側の案内ロッドに沿って伸ばしてなり、
前記案内フレームの一方に回転刈刃フレーム受け止め体を一体的に設け、当該案内フレームの先端を地表面に接触すると共に前記受け止め体に回転刈刃フレームの下側面を接触させて回転刈刃を地表面より所定高さに浮上させることを特徴とする結球野菜収穫機。
【請求項2】
前記回転刈刃を畝の中央より左右の畝溝側のいずれかに寄せて配置すると共に、回転刈刃の後部側から寄せた畝溝側の刃先を覆うカバーを、この回転刈刃に取り付けたことを特徴とする請求項1記載の結球野菜収穫機。
【請求項3】
前記下側の案内ロッドは、畝の頂面の直上で狭くなる狭隘部を有し、前記回転刈刃を前記狭隘部の後下方に配置したことを特徴とする請求項1記載の結球野菜収穫機。
【請求項4】
前記回転刈刃の直後に前記車体の前後方向に沿ったコンベアを設け、前記案内ロッドの後端部を前記コンベアの先端部まで延伸すると共に、前記回転刈刃の直後より、左右の案内ロッドの間隔を広くして引渡し部を形成したことを特徴とする請求項1記載の結球野菜収穫機。
【請求項5】
前記コンベアを、前半部の受取りコンベアと後半部の排出コンベアにより構成し、受取りコンベアの後部を車体の横幅方向に架設したコンベア駆動軸に揺動自在に連結すると共に、受取りコンベアと前記回転刈刃フレームをリンクを介して連結し、回転刈刃フレームに連動して受取りコンベアの前部を上下動することを特徴とする請求項4記載の結球野菜収穫機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−5636(P2009−5636A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−170866(P2007−170866)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【出願人】(000113816)マメトラ農機株式会社 (25)
【Fターム(参考)】