説明

絞りロール調整装置

【課題】本発明は、引張りコイルばねの付勢力を調整する際の作業性を改善できる絞りロール調整装置を得ることにある。
【解決手段】絞りロール4を回転ドラム3に押し付ける引張りコイルばね17を有する絞りロール調整装置11, 12は、絞りロール4を支持するとともに外周面に引張りコイルばね17を巻き付ける溝21を有する第1のばね受け14と、第1のばね受け14を支持するブラケット13と、引張りコイルばね17の両端部を保持するとともに引張りコイルばね17を第1のばね受け14に巻き付けた状態に保持する第2のばね受け15と、第2のばね受け15をブラケット13に連結するねじ部材16とを含んでいる。ねじ部材16は、その上端に工具26を引っ掛ける係合部25を有し、この係合部25に工具26を引っ掛けてねじ部材16を回すことで、絞りロール4に加わる引張りコイルばね17の付勢力を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転ドラムに捕捉された不純物に含まれる水分を絞る絞りロールを、回転ドラムに押し付ける方向に弾性的に押し付ける絞りロール調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械では、工具の冷却、潤滑性能を維持するために水溶性あるいは油性のクーラントを使用している。この種のクーラントは、繰り返し使用することを前提としているので、クーラント中に混入している金属の切り屑や切粉のような不純物は、速やかに除去する必要がある。
【0003】
このことから、従来では、工作機械から排出されるクーラントを貯溜槽に導く経路の途中に不純物を除去する処理装置を設置している。従来の処理装置は、不純物を含む汚れたクーラントが流入する本体と、この本体に設けられたマグネットドラムおよび絞りロールとを備えている。
【0004】
マグネットドラムは、軸回り方向に回転することでクーラントに含まれる不純物を捕捉する。絞りロールは、マグネットドラムとの間で不純物に含まれる水分を絞る。絞りロールは、水切り効果を高めるため、マグネットドラムの外周面に所定の圧力をかけて押し付けることが望ましい。このため、従来の処理装置では、絞りロールの軸端部を支持する軸受にガイドポストを接続し、このガイドポストに止めボルトをねじ込むとともに、この止めボルトの外側に圧縮コイルばねを装着している。
【0005】
圧縮コイルばねは、止めボルトの頭部とガイドポストとの間に圧縮状態で介在され、上記絞りロールをマグネットドラムの外周面に押し付ける方向に弾性的に付勢している。
【0006】
したがって、圧縮コイルばねの圧縮量を変化させることで、マグネットドラムに対する絞りロールの押し付け力を調整することができる。圧縮コイルばねの圧縮量は、止めボルトを回転させて、ガイドポストに対するねじ込み量を変えることで任意に調整が可能となっている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】意匠登録第1170316号公報 (意匠に係る物品の説明、各部品を指し示すB−B、C−C断面図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の処理装置によると、圧縮コイルばねおよび止めボルトは、本体の左右の側板の外側に設けられているとともに、本体の高さ方向に沿う縦置きの姿勢で配置されている。さらに、止めボルトは、スパナのような工具を引っ掛ける頭部を有し、この頭部は止めボルトの下端に位置している。
【0008】
しかしながら、工具を引っ掛ける頭部が止めボルトの下端に位置すると、工具を用いて止めボルトを回す時に、作業者は、その都度止めボルトの頭部を下方から見上げるような無理な姿勢を強いられることになる。
【0009】
しかも、処理装置の本体は、クーラントを貯溜する貯溜槽の上に設置されるとともに、この本体の側方に他の工作機械や工場の壁等が位置することがあり得る。このため、止めボルトの頭部の周囲に作業用のスペースを確保することが困難となり、マグネットドラムに対する絞りロールの押し付け力を調整する際の作業性が悪くなる。
【0010】
本発明の目的は、絞りロールを引張りコイルばねを用いて回転ドラムに押し付けるに当たり、この引張りコイルばねの付勢力を調整する際の作業性を改善できる絞りロール調整装置を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の一つの形態に係る絞りロール調整装置は、
絞りロールの軸端部を回転自在に支持するとともに、外周面に引張りコイルばねを巻き付ける溝を有する円盤状の第1のばね受けと、
上記第1のばね受けを支持するブラケットと、
上記引張りコイルばねの両端部を保持するとともに、上記引張りコイルばねを上記第1のばね受けの溝に巻き付けた状態に保つ第2のばね受けと、
上記第2のばね受けを上記ブラケットに連結するとともに、縦置きの姿勢で配置されるねじ部材と、を含み、
上記ねじ部材は、その上端に工具を引っ掛ける係合部を有し、この係合部に工具を引っ掛けて上記ねじ部材を回すことで、上記第2のばね受けを上記第1のばね受けに対し近づいたり遠ざかる方向に移動させ、上記第1のばね受けを介して上記絞りロールに加わる上記引張りコイルばねの付勢力を調整することを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、例えばドライバあるいはボックスレンチのような工具を絞りロールの上方から係合部に向けて挿入することができる。このため、ねじ部材を絞りロールの上方から工具を用いて回すことができ、たとえ絞りロールの側方から下方に至る領域に広い作業スペースを確保できないような状況下においても、ねじ部材を容易に操作することができる。よって、絞りロールに加わる引張りコイルばねの付勢力を調整する際の作業性が格段に向上する。
【0013】
しかも、ねじ部材を回すと、第2のばね受けが引張りコイルばねの両端を引張るので、例えば引張りコイルばねの一端を固定して他端を引張る場合との比較において、引張りコイルばねを変形させる際の第2のばね受けのストロークが半分となる。したがって、ねじ部材を回す回数も少なくて済み、引張りコイルばねの付勢力を調整したり、引張りコイルばねを用いて第1のばね受けをブラケットに組み付ける際の作業性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1は、工作機械に用いるクーラントを浄化するセパレータ1を開示している。工作機械から排出される汚れたクーラントは、処理すべきダーティー液の一例であり、例えば金属の切り屑や鉄粉のような磁性スラッジからなる不純物を含んでいる。
【0016】
セパレータ1は、ダーティー槽2と、このダーティー槽2に設けられたマグネットドラム3および絞りロール4とを備えている。ダーティー槽2は、工作機械から排出される汚れたクーラントを一次的に貯溜する。マグネットドラム3は、回転ドラムの一例であり、図2の矢印A方向に回転することで、クーラント中に含まれる不純物を吸着する。
【0017】
絞りロール4は、マグネットドラム3の外周面に付着した不純物に含まれる水分を絞るためのものであり、例えば硬質ゴムのような弾性材で造られている。絞りロール4は、マグネットドラム3の上に平行に配置されているとともに、その軸端部が一対の絞りロール調整装置11,12を介してダーティー槽2の側板5b,5cの上端部に支持されている。
【0018】
絞りロール調整装置11,12は、互いに共通の構成を有するので、一方の絞りロール調整装置11を代表して説明する。図2ないし図5に示すように、絞りロール調整装置11は、ブラケット13、第1のばね受け14、第2のばね受け15、調整ボルト16および引張りコイルばね17を備えている。
【0019】
ブラケット13は、例えばステンレス製であり、側板5cの外面に重なり合う第1の部分13aと、この第1の部分13aの下端から側方に向けて略直角に折り返された第2の部分13bとを有している。第1の部分13aは、側板5cの上端部にねじ18を介して固定されているとともに、第1の部分13aの上縁に開口するU字形の切り欠き部19を有している。
【0020】
第1のばね受け14は、円盤状をなしている。第1のばね受け14の中央部に、絞りロール4の軸端部を回転自在に支持する軸受20が組み込まれている。第1のばね受け14の外周面にばね受け溝21とガイド溝22が形成されている。ばね受け溝21およびガイド溝22は、第1のばね受け14の軸方向に互いに隣り合っている。ガイド溝22にブラケット13の切り欠き部19の縁が摺動可能に嵌合しており、この嵌合により、第1のばね受け14が絞りロール4と一緒にダーティー槽2の高さ方向に移動可能となっている。
【0021】
言い換えると、絞りロール4は、第1のばね受け14と切り欠き部19との嵌合部分をガイドとしてマグネットドラム3に近づいたり遠ざかる方向に移動可能となっている。
【0022】
第2のばね受け15は、例えばステンレス製であり、第1のばね受け14とブラケット13の第2の部分13bとの間に位置している。第2のばね受け15とブラケット13の第2の部分13bとは、互いに平行となるように向かい合っている。
【0023】
調整ボルト16は、ねじ部材の一例であり、ねじ部16aと六角形の頭部16bとを有している。ねじ部16aは、第2のばね受け15の上方から第2のばね受け15およびブラケット13の第2の部分13bを貫通するとともに、第2の部分13bの下面に溶接したナット23にねじ込まれている。
【0024】
そのため、調整ボルト16は、第2のばね受け15をブラケット13の第2の部分13bに連結しており、ナット23に対する調整ボルト16のねじ込み量を調整することで、第2のばね受け15が第1のばね受け14に近づいたり遠ざかる方向に移動するようになっている。
【0025】
図3および図5に示すように、調整ボルト16の頭部16bは、第1のばね受け14よりもダーティー槽2の側方に張り出している。頭部16bの上面に係合部としての十字穴25が形成されている。十字穴25は、ドライバのような工具26の先端を引っ掛ける係合部の一例であり、ローラ支持部11の上方を指向している。
【0026】
引張りコイルばね17は、弾性変形が可能なコイル部27と、このコイル部27の端末に位置する一対のフック部28a,28bとを有している。コイル部27は、第1のばね受け14の上方からそのばね受け溝21に巻き付けられている。コイル部27の両端部27a,27bは、互いに平行をなして第1のばね受け14の下方に向けて直線状に導かれている。フック部28a,28bは、第2のばね受け15の両端に引っ掛かっている。
【0027】
引張りコイルばね17は、コイル部27を第1のばね受け14に円弧状に巻き付けた状態で第1のばね受け14と第2のばね受け15との間に亘って架け渡されている。すなわち、引張りコイルばね17は、第1のばね受け14をブラケット13の切り欠き部19に保持するとともに、そのコイル部27の弾性により第1のばね受け14を第2のばね受け15に近づく方向に付勢している。
【0028】
言い換えると、引張りコイルばね17は、第1のばね受け14を介して絞りロール4をマグネットドラム3の外周面に押し付ける方向に付勢しており、これにより絞りロール4がマグネットドラム3の外周面に所定の圧力で接している。
【0029】
このようなセパレータ1において、マグネットドラム3に対する絞りロール4の押し付け力を調整するための調整ボルト16は、上下方向に沿う縦置きの姿勢で配置されるとともに、その上端に十字穴25が形成された頭部16bを有している。このため、調整ボルト16を回す際には、図2および図3に示すように、ダーティー槽2の上方から側板5cに沿うようにして工具26を差し込むことで、この工具26の先端を調整ボルト16の十字穴25に引っ掛けることができる。
【0030】
このため、調整ボルト16をダーティー槽2の上方から工具26を用いて回すことができ、たとえダーティー槽2の側方から下方に至る領域に広い作業スペースを確保できないような状況下においても、調整ボルト16を容易に操作することができる。それとともに、工具26を引っ掛ける十字穴25がダーティー槽2の上方を指向しているので、工具26を用いて調整ボルト16を回す際に、作業者が屈み込んだりダーティー槽2の下方を覗き込むような無理な姿勢を強いられることもない。
【0031】
よって、絞りロール4に加わる引張りコイルばね17の付勢力を調整する際の作業性が格段に向上する。
【0032】
さらに、調整ボルト16をナット23にねじ込んでいくと、第2のばね受け15が引張りコイルばね17の両端部27a,27bを引張るので、例えば引張りコイルばね17の一端を固定して他端を引張る場合との比較において、引張りコイルばね17を変形させる際の第2のばね受け15のストロークが半分となる。
【0033】
したがって、調整ボルト16を回す回数が少なくて済むことになり、それ故、引張りコイルばね17の付勢力を調整したり、あるいは引張りコイルばね17を用いて第1のばね受け14をブラケット13に組み付ける時の作業性が向上する。
【0034】
加えて、上記構成のセパレータ1によると、引張りコイルばね17を第1のばね受け14に円弧状の巻き付けることで、絞りロール4をマグネットドラム3の外周面に押し付ける付勢力を発生させている。このため、例えばマグネットドラム3と絞りロール4との間にスラッジの大きな塊が導かれた場合には、絞りロール4がマグネットドラム3から押し上げられるような力を受けて、引張りコイルばね17のうち主にコイル部27の直線状をなす両端部27a,27bが伸びる方向に変形する。
【0035】
これに対し、従来の圧縮コイルばねを用いて絞りロール4をマグネットドラム3に押し付ける構成では、絞りロール4とマグネットドラム3との間にスラッジの塊が入り込んだ時に、絞りロール4がマグネットドラム3から逃げることができず、マグネットドラム3がロックし易くなる。
【0036】
したがって、圧縮コイルばねの代わりに引張りコイルばね17を用いることで、絞りロール4がスラッジの塊を逃げるようにマグネットドラム3の外周面から容易に離脱し、スラッジの塊が絞りロール4とマグネットドラム3との間に噛み込まれることはない。よって、マグネットドラム3のロックを防止でき、不純物の大きさに囚われることなく安定した運転を継続することができる。
【0037】
なお、本発明は上記実施の形態に特定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施可能である。
【0038】
例えば回転ドラムはマグネットドラムに限らず、フィルタドラムであってもよい。
【0039】
さらに、調整ボルトの頭部に形成する係合部も十字穴に限らず、例えば直線状のすり割り、あるいは六角穴であってもよい。そのため、調整ボルトを回す工具にしても、ドライバに限らず、例えば六角棒レンチやボックスレンチを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施の形態に係るセパレータの斜視図。
【図2】本発明の実施の形態において、マグネットドラム、絞りロールおよびローラ支持部の位置関係を示す断面図。
【図3】本発明の実施の形態において、ローラ支持部の調整ボルトを工具を用いて回す状態を示す断面図。
【図4】本発明の実施の形態において、ローラ支持部のブラケット、第1のばね受けおよび第2のばね受けの位置関係を示す正面図。
【図5】本発明の実施の形態に係るローラ支持部の斜視図。
【符号の説明】
【0041】
3…回転ドラム(マグネットドラム)、4…絞りロール、11,12…絞りロール調整装置、13…ブラケット、14…第1のばね受け、15…第2のばね受け、16…ねじ部材(調整ボルト)、17…引張りコイルばね、21…溝(ばね受け溝)、25…係合部(十字穴)、26…工具。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転ドラムに捕捉された不純物に含まれる水分を絞る絞りロールを、上記回転ドラムの外周面に押し付ける方向に付勢する引張りコイルばねを有する絞りロール調整装置であって、
上記絞りロールの軸端部を回転自在に支持するとともに、外周面に上記引張りコイルばねを巻き付ける溝を有する円盤状の第1のばね受けと、
上記第1のばね受けを支持するブラケットと、
上記引張りコイルばねの両端部を保持するとともに、上記引張りコイルばねを上記第1のばね受けの溝に巻き付けた状態に保つ第2のばね受けと、
上記第2のばね受けを上記ブラケットに連結するとともに、縦置きの姿勢で配置されるねじ部材と、を含み
上記ねじ部材は、その上端に工具を引っ掛ける係合部を有し、この係合部に工具を引っ掛けて上記ねじ部材を回すことで、上記第2のばね受けを上記第1のばね受けに対し近づいたり遠ざかる方向に移動させ、上記第1のばね受けを介して上記絞りロールに加わる上記引張りコイルばねの付勢力を調整することを特徴とする絞りロール調整装置。
【請求項2】
請求項1の記載において、上記ねじ部材は頭部を有するボルトであり、このボルトの頭部に上記係合部が形成されていることを特徴とする絞りロール調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−185738(P2007−185738A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−5149(P2006−5149)
【出願日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(594204756)株式会社ブンリ (11)
【Fターム(参考)】