説明

絞り機構

【課題】 絞り羽根面積を,絞り開口部の全開時と全閉時において調整可能な絞り羽根機構を提供する。
【解決手段】 絞り開口部122が形成された支持基台部120と,第1絞り羽根ユニット140および第2絞り羽根ユニット160と,駆動部180とを備えている。各羽根ユニットは,駆動部に係合する柄部を備えた開口調整部142,162と開口調整部に対し相対移動可能に重ねあわされた先端部144,164とから構成される。絞り全開時には,先端部と開口調整部との重なり面積が最大になるように重ねあわされ,絞り閉止時には,先端部と開口調整部とが一部ずらされるように重ねあわされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,絞り機構に係り,特に,テレビカメラや監視カメラ等に使用されるレンズ鏡胴の絞り機構に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に,テレビカメラや監視カメラ等に使用されるレンズ鏡胴の絞り機構は,絞り開口部が形成されたフレームに支持された絞り羽根を,所定の駆動機構により移動させることにより,絞り開口部の開口面積を調節できるように構成されている。このような絞り機構としては,例えば,上記フレームに支持された2枚の絞り羽根を,例えばアイリスメータ等の駆動機構を使用して光軸に対して垂直方向に移動させることにより,絞り開口部の開口面積を調節するものがある(例えば,特許文献1〜6を参照)。
【0003】
特許文献1〜6に記載の絞り機構においては,絞り羽根の外縁部に,絞り羽根の光軸に対して垂直方向の移動をガイドするスリット状の案内溝が形成されており,この案内溝には,フレームに設けられた案内ピンが係合している。かかる構成により,2枚の絞り羽根を,上記案内溝に沿って光軸に対して垂直方向に互い違いに移動させることにより,絞り開口部の開口面積を調整するように構成されている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−140227号公報
【特許文献2】特開2000−147593号公報
【特許文献3】特開平9−244095号公報
【特許文献4】特開平8−43878号公報
【特許文献5】特開平6−294985号公報
【特許文献6】特開平6−62308号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら,上記構成にかかる絞り羽根機構は,2枚の絞り羽根を光軸に対して垂直方向に互い違いに動かして絞り開口部の開口面積を調整する構成となっているため,各絞り羽根は,絞り開口部の少なくとも半分を閉止するに十分な垂直方向面積を有している必要があり,垂直方向サイズのコンパクト化には限界があった。
【0006】
そこで,本発明は,このような問題に鑑みてなされたもので,その目的は,絞り羽根面積を,絞り開口部の全開時と全閉時において調整可能に構成することにより,絞り羽根の垂直方向サイズの小型化を実現することが可能な,新規かつ改良された絞り機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために,本発明のある観点によれば,絞り開口部が形成された支持基台部と,支持基台部に,互いに協動して絞り開口部の開口面積を調節するように支持された第1絞り羽根ユニットおよび第2絞り羽根ユニットと,第1絞り羽根ユニットと第2絞り羽根ユニットとが互いに協動するように駆動する駆動部とを備えた絞り機構が提供される。この絞り機構において,第1絞り羽根ユニットと第2絞り羽根ユニットは,それぞれ,駆動部に係合する柄部を備えた開口調整部と開口調整部に対し相対移動可能に重ねあわされた先端部とから構成され,絞り全開時には,先端部と開口調整部との重なり面積が最大になるように重ねあわされ,絞り閉止時には,先端部と開口調整部とが一部ずらされるように重ねあわされることにより,面積を調整可能に構成されている。
【0008】
かかる構成により,2枚の絞り羽根ユニットの垂直方向の面積が最大となる絞り全開時には,先端部と開口調整部との重なり面積が最大になるように重ねあわされるので,各絞り羽根ユニットの面積を小さくすることが可能となる。また,絞り開口部を閉止するに十分な面積が必要な全閉時には,先端部と開口調整部とが一部ずらされるように重ねあわされるので,各絞り羽根ユニットの面積を大きくすること可能となる。結果として,従来の絞り羽根機構に比較して,各絞り羽根ユニットの垂直方向サイズをコンパクト化できる。
【0009】
開口調整部と先端部を,いずれか一方に形成された突起部と,いずれか他方に形成され突起部が嵌合し案内される溝部と,を備えているように構成すれば,駆動部を駆動させて,開口調整部を移動させる際に,開口調整部を先端部に対して確実かつ正確に相対移動させることが可能となる。
【0010】
駆動部により開口調整部材を駆動することにより,開口調整部材に形成された溝部または突起部のいずれか一方が先端部に形成された突起部または溝部のいずれか他方に対して相対移動し,突起部が溝部の一端に係合した場合に,さらに,双方が重ね合わさったまま移動可能であるように構成すれば,各絞り羽根ユニットの面積を容易に可変とする構成を実現できる。
【0011】
開口調整部と先端部のいずれか一方の外縁部に開口調整部と先端部のいずれか他方の外縁部に係合可能な係合部が形成しても良い。かかる構成によれば,駆動部により開口調整部を駆動することにより,開口調整部に形成された溝部または突起部のいずれか一方が先端部に形成された突起部または溝部のいずれか他方に対して相対移動し,突起部が溝部の一端に係合しない状態であっても,開口調整部と先端部のいずれか他方の外縁部に形成された係合部が開口調整部と先端部のいずれか一方の外縁部に係合した場合に,さらに,双方が重ね合わさったまま移動させることが可能である。かかる構成によれば,溝部の長さにかかわらず,絞り羽根ユニットの面積を可変調整するに必要な構造を実現できる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように,本発明によれば,絞り羽根面積を,絞り開口部の全開時と全閉時において調整可能に構成することにより,絞り羽根の垂直方向サイズの小型化を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら,本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお,本明細書及び図面において,実質的に同一の機能構成を有する構成要素については,同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0014】
まず,図1に基づいて,本発明の一実施形態に係る絞り機構の全体構成について説明する。なお,図1は,本実施形態に係る絞り機構100の全体構成を示す正面図である。
【0015】
図1に示すように,本実施形態に係る絞り機構100は,本実施形態に係る支持基台部としてのフレーム120と,フレーム120上で支持された第1絞り羽根ユニット140および第2絞り羽根ユニット160と,第1絞り羽根ユニット140と第2絞り羽根ユニット160とが互いに協動するように第1絞り羽根ユニット140および第2絞り羽根ユニット160を駆動する駆動部180と,第1絞り羽根ユニット140および第2絞り羽根ユニット160を絞り機構100の正面側から押さえる押さえ板と(図示せず),を主に備える。フレーム120,第1絞り羽根ユニット140および第2絞り羽根ユニット160は,それぞれ,加工性に優れ,所定の剛性を有する材料,例えばポリカーボネート等の樹脂、金属の薄板等により形成される。
【0016】
フレーム120には絞り開口部122が形成されており,第1絞り羽根ユニット140と第2絞り羽根ユニット160は,互いに協動して絞り開口部122の開口面積(絞り)を調節するように,フレーム120に支持されている。
【0017】
第1絞り羽根ユニット140と第2絞り羽根ユニット160の構造については,図4〜図8に関連して,後に詳細に説明する。ここでは,まず,図2(a)(b)を参照しながら,駆動部180の構成について詳細に説明する。
【0018】
駆動部180は,第1絞り羽根ユニット140および第2絞り羽根ユニット160を,例えばアイリスメータ等により光軸に対して垂直方向に動作させる部材である。駆動部180は,図2(a)(b)に示すように,リンク機構190と電動モータ要素200とから構成されている。リンク機構190は,図2(a)に示すように,基台部192と,それぞれ第1絞り羽根ユニット140および第2絞り羽根ユニット160に係合する二本のアーム194a,194bと,各アーム194a,194bを回動させる駆動軸196と,各アーム194a,194bの両端に設けられた略円柱状の駆動ピン198a,198bとから成る。
【0019】
電動モータ要素200は,図2(b)に示すように,環状ヨーク202と,駆動コイル204と,制動コイル206とから成る。これらの電動モータ要素200は,爪状の止め具208,210により,基台部192に固定されている。また駆動コイル204と制動コイル206とはリング部材212により絶縁状態に区画化されている。
【0020】
駆動部180は,不図示の制御器から制御信号を受けて,駆動コイル204に電流を流して,アーム194a,194bを時計方向回りまたは半時計方向回りに回転させる。所定量回転すると,制動コイル206に電流が供給され,アーム194a,194bを所定位置で停止させる。かかる動作により,後述するように,第1絞り羽根ユニット140と第2絞り羽根ユニット160は,互い違いに上下移動して,いわゆるギロチンのように動作して,絞り開口部122を開閉する。
【0021】
次に,図3〜図8を参照しながら,第1絞り羽根ユニット140と第2絞り羽根ユニット160の構造について説明する。第1絞り羽根ユニット140は,開放時には,絞り開口部122の上側の輪郭を規定するとともに,閉止時には,絞り開口部122の上半分を閉止する。これに対して,第2絞り羽根ユニット160は,開放時には,絞り開口部122の下側の輪郭を規定するとともに,閉止時には,絞り開口部122の下半分を閉止する。
【0022】
第1絞り羽根ユニット140と第2絞り羽根ユニット160は,それぞれ,開口調整部142,162と,開口調整部142,162に対し相対移動可能に重ねあわせ可能な先端部144,164とから構成されている。開口調整部142,162は,それぞれ,駆動部180に係合する柄部142a,162aと,アーチ部142bまたは逆アーチ部162bを備えている。
【0023】
まず,図3(a)(b)を参照しながら,開口調整部142と先端部144とから成る第1絞り羽根ユニット140の詳細な構造について説明する。
【0024】
図3(a)に示すように,先端部144は,アーチ形状を有しており,閉止時には,開口調整部142のアーチ部142bと相補的に絞り開口部122を閉止し,開放時には,開口調整部142のアーチ部142bの下縁と相補的に絞り開口部122の上縁を規定する寸法形状に設計される。アーチ形状の先端部144の両側脚部にはそれぞれ突起部144aが設けられている。これらの突起部144aは,組立時に,開口調整部142の溝部146に,それぞれ係合して,開口調整部142と先端部144との相対移動を案内する。
【0025】
図3(b)に示すように,開口調整部142は,柄部142aとアーチ部142bとから構成されている。柄部142aの最下端には,溝部150が形成されている。この溝部150に,駆動部180のアーム194aの先端に設けられた駆動ピン198aが係合し,開口調整部142全体を上下に駆動させる。また,柄部142aには,縦方向に溝部148が設けられている。この溝部148には,フレーム120に設けた不図示の突起部が係合し,開口調整部142の上下方向の移動を案内する。
【0026】
アーチ部142bの両側脚部には,溝146が形成されている。この溝146に対して,先端部144の突起部144aが係合して,開口調整部142と先端部144とを相互に相対移動させる。アーチ部142bは,閉止時には,先端部144と相補的に絞り開口部122を閉止し,開放時には,先端部144の下縁と相補的に絞り開口部122の上縁を規定する寸法形状に設計される。
【0027】
また,アーチ部142bの下縁部には,係合部152が形成されている。この係合部152は,アーチ部142bの下縁部の一部を折り曲げたり,あるいは別の部材と取り付けたりことに構成することができる。この係合部152は後述するように,先端部144の下縁部に係合して,第1の絞り羽根ユニット140を一体的に押し上げるように動作する。
【0028】
次に,第1絞り羽根ユニット140の動作について,図7(a)(b)を参照しながら説明する。
【0029】
図7(a)は,第1絞り羽根ユニット140の開放時の状態を示している。図示のように,絞り全開時には,開口調整部142が最上部位置に移動し,先端部144と開口調整部142との重なり面積が最大になるように重ねあわされる。図7(b)は,第1絞り羽根ユニット140の閉止時の状態を示している。図示のように,絞り閉止時には,開口調整部142が最上部位置に移動し,先端部144と開口調整部142とが一部ずらされるように重ねあわされ,絞り開口部122の上半分を閉止する。
【0030】
次に,図7(a)の開放状態から図7(b)の閉止状態に移行する動作について説明する。駆動部180のアーム194aが下方に移動するにつれて,開口調整部142も下方に移動する。当初は,先端部142の突起部144aが開口調整部142の溝部146を移動可能なので,先端部142は開放時の位置にとどまっている。その結果,先端部144と開口調整部142とが一部ずらされるように重ねあわされた状態になり,第1の絞り羽根ユニット140全体の面積が拡大する。さらに開口調整部142が下方に移動すると,先端部142の突起部144aが開口調整部142の溝部146の上端に当接し,面積が拡大した状態で,図7(b)に示すように,第1絞り羽根ユニット140全体を最下端位置まで移動し,絞り開口部122の上半分を閉止する。
【0031】
次に,図7(b)の閉止状態から図7(a)の開放状態に移行する動作について説明する。駆動部180のアーム194aが上方に移動するにつれて,開口調整部142も上方に移動する。当初は,先端部142の突起部144aが開口調整部142の溝部146を移動可能なので,先端部142は閉止時の位置にとどまっている。さらに開口調整部142が上方に移動すると,開口調整部142のアーチ部142bの下縁の係合部152が先端部144の下縁に当接し,開口調整部142と先端部144が重なった状態で,すなわち,第1絞り羽根ユニット140の面積が最小の状態で,上昇し,図7(a)に示す開放位置にまで移動し,絞り開放部122を全開状態にする。
【0032】
次いで,図4(a)(b)を参照しながら,開口調整部162と先端部164とから成る第2絞り羽根ユニット160の詳細な構造について説明する。
【0033】
図4(a)に示すように,先端部164は,逆アーチ形状を有しており,閉止時には,開口調整部162の逆アーチ部162bと相補的に絞り開口部122を閉止し,開放時には,開口調整部162の逆アーチ部162bの上縁と相補的に絞り開口部122の下縁を規定する寸法形状に設計される。逆アーチ形状の両側脚部にはそれぞれ溝部164aが設けられている。これらの溝部164aは,組立時に,開口調整部162の突起部166に,それぞれ係合して,開口調整部162と先端部164との相対移動を案内する。
【0034】
図4(b)に示すように,開口調整部162は,柄部162aと逆アーチ部162bとから構成されており,全体としてy字形状をしている。柄部162aの最下端には,溝部170が形成されている。この溝部170に,駆動部180のアーム194bの先端に設けられた突起部198bが係合し,開口調整部162全体を上下に駆動させる。また,柄部162aには,縦方向に溝部168が設けられている。この溝部168には,フレーム120に設けた不図示の突起部が係合し,開口調整部162の上下方向の移動を案内する。
【0035】
逆アーチ部162bの両側脚部には,突起部166が形成されている。この突起部166に対して,先端部144の溝部164aが係合して,開口調整部162と先端部164とを相互に相対移動させる。逆アーチ部162bは,閉止時には,先端部164と相補的に絞り開口部122を閉止し,開放時には,先端部144の上縁と相補的に絞り開口部122の下縁を規定する寸法形状に設計される。
【0036】
また,逆アーチ部162bの上縁部には,係合部172が形成されている。この係合部172は,逆アーチ部162bの上縁部の一部を折り曲げたり,あるいは別の部材と取り付けたりことに構成することができる。この係合部172は後述するように,先端部164の上縁部に係合して,一体的に押し下げるように動作する。
【0037】
次に,第2絞り羽根ユニット160の動作について,図8(a)(b)を参照しながら説明する。
【0038】
図8(a)は,第2絞り羽根ユニット160の開放時の状態を示している。図示のように,絞り全開時には,開口調整部162が最下部位置に移動し,先端部164と開口調整部162との重なり面積が最大になるように重ねあわされる。図8(b)は,第1絞り羽根ユニット160の閉止時の状態を示している。図示のように,絞り閉止時には,開口調整部162が最上部位置に移動し,先端部164と開口調整部162とが一部ずらされるように重ねあわされ,絞り開口部122の下半分を閉止する。
【0039】
次に,図8(a)の開放状態から図8(b)の閉止状態に移行する動作について説明する。駆動部180のアーム194bが上方に移動するにつれて,開口調整部162も上方に移動する。当初は,開口調整部162の突起部166が先端部162の溝部164aを移動可能なので,先端部162は開放時の位置にとどまっている。その結果,先端部164と開口調整部162とが一部ずらされるように重ねあわされた状態になり,第2の絞り羽根ユニット160全体の面積が拡大する。さらに開口調整部162が上方に移動すると,開口調整部162の突起部166が先端部162の溝部164aの上端に当接し,面積が拡大した状態で,図8(b)に示すように,第2絞り羽根ユニット160全体が最上方位置まで移動し,絞り開口部122の下半分を閉止する。
【0040】
次に,図8(b)の閉止状態から図8(a)の開放状態に移行する動作について説明する。駆動部180のアーム194bが下方に移動するにつれて,開口調整部162も下方に移動する。当初は,開口調整部162の突起部166が先端部162の溝部164aを移動可能なので,先端部142は閉止時の位置にとどまっている。さらに開口調整部162が下方に移動すると,開口調整部162の逆アーチ部162bの上縁の係合部172が先端部164の上縁に当接し,開口調整部162と先端部164が重なった状態で,すなわち,第2絞り羽根ユニット160の面積が最小の状態で,下降し,図8(a)に示す開放位置にまで移動し,絞り開放部122を全開状態にする。
【0041】
図5および図6には,上述の第1の絞り羽根ユニット140と第2の絞り羽根ユニット160を組み合わせた状態の絞り機構の構成が示されている。なお,図5は,第1の絞り羽根ユニット140と第2の絞り羽根ユニット160平面図であり,図6は,図6の平面図を,A−A線またはB−B線で断裁した断面図である。
【0042】
図5(a)および図6(a)に示すように,第1絞り羽根ユニット140が最上方位置にあり,第2絞り羽根ユニット160が最下方位置にある場合に,絞り開口122は全開となる。その際に,第1絞り羽根ユニット140および第2絞り羽根ユニット160のそれぞれを構成する開口調整部142,162と先端部144,164とが重なり合うので,第1絞り羽根ユニット140および第2絞り羽根ユニット160の面積が最小化され,絞り機構の寸法が,特に縦方向にコンパクト化される。
【0043】
図5(b)および図6(b)に示すように,第1絞り羽根ユニット140が最下方位置にあり,第2絞り羽根ユニット160が最上方位置にある場合に,絞り開口122は全閉となる。その際に,第1絞り羽根ユニット140および第2絞り羽根ユニット160のそれぞれを構成する開口調整部142,162と先端部144,164とが一部が重なり合った状態で展開し,第1絞り羽根ユニット140および第2絞り羽根ユニット160の面積が拡大され,絞り開口122を確実に閉止することができる。
【0044】
図9(a)(b)には,比較例として,第1絞り羽根240および第2絞り羽根260が単一の部材から構成される絞り開口222を開閉する絞り機構の概略構成が示されている。なお,図9(a)は開口時の状態,図9(b)は閉止時の状態をそれぞれ示している。図9(a)に示すように,第1絞り羽根240および第2絞り羽根260が単一の部材から構成されているため,絞り開口222を十分に閉止するためには,縦方向に十分な厚みが必要であり,したがって,開口時に,第1絞り羽根240の高さも高くならざるを得なかった。また,図9(b)に示すように,第1絞り羽根240および第2絞り羽根260が単一の部材から構成されているため,閉止時にも第2絞り羽根222の逆アーチの脚部も大きく上方に突き出る構造となっていた。
【0045】
図10には,さらに本実施の形態にかかる絞り機構の効果の理解を助けるために,図5(a)に示す本実施の形態にかかる絞り機構の開放時の状態と,図9(a)に示す従来の絞り機構の開放時の状態を併置したものである。図面より容易に理解できるように,本実施の形態にかかる絞り機構は,従来の絞り機構に比較して,開放時にαだけ縦方向にコンパクト化されている。
【0046】
以上説明したように,本発明によれば,絞り羽根面積を,絞り開口部の全開時と全閉時において調整可能に構成することにより,絞り羽根の垂直方向サイズの小型化を実現することができる。
【0047】
以上,添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが,本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば,特許請求の範囲に記載された範疇内において,各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり,それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0048】
特に,溝部および突起部の構成については,先端部と開口調整部のいずれか一方に溝部を形成すれば,いずれか他方に突起部を形成すれば,上記実施形態と同様の効果を得ることができる。また,係合部についても,上記実施形態においては,いずれも開口調整部側に設けたが,先端部側に設けることも可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は,絞り機構に適用可能であり,特に,テレビカメラや監視カメラ等に使用されるレンズ鏡胴の絞り機構に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施形態に係る絞り機構の全体構成を示す正面図である。
【図2】同実施形態における絞り機構の駆動部を示す正面図であり,(a)はリンク機構を,(b)は電動モータ要素をそれぞれ示している。
【図3】同実施形態における絞り機構を構成する第1の絞り羽根の構成を示す正面図であり,(a)は先端部を示し,(b)は開口調整部を示している。
【図4】同実施形態における絞り機構を構成する第2の絞り羽根の構成を示す正面図であり,(a)は先端部を示し,(b)は開口調整部を示している。
【図5】同実施形態における絞り機構の動作を説明するための平面図であり,(a)は,絞り開口部が開放している状態を示す図であり,(b)は,絞り開口部が閉塞している状態を示す図である。
【図6】図5に示す絞り気候の断面図であり,(a)はA−A線にて断裁した断面図,(b)はB−B線にて断裁した断面図をそれぞれ示している。
【図7】同実施形態における絞り機構の第1の絞り羽根ユニットの動作を説明するための平面図であり,(a)は,絞り開口部が開放している状態を示す図であり,(b)は,絞り開口部が閉塞している状態を示す図である。
【図8】同実施形態における絞り機構の第2の絞り羽根ユニットの動作を説明するための平面図であり,(a)は,絞り開口部が開放している状態を示す図であり,(b)は,絞り開口部が閉塞している状態を示す図である。
【図9】従来の絞り機構の動作を説明するための平面図であり,(a)は,絞り開口部が開放している状態を示す図であり,(b)は,絞り開口部が閉塞している状態を示す図である。
【図10】(A)は従来の絞り機構を示す平面図であり,絞り開口部が開放している状態を示す図であり,(B)は,本実施の形態にかかる絞り機構の平面図であり,絞り開口部が閉塞している状態を示す図である。
【符号の説明】
【0051】
100 絞り機構
120 フレーム(支持基台部)
122 絞り開口部
140 第1絞り羽根ユニット
142 開口調整部
144 先端部
144a 突起部
146 溝部
160 第2絞り羽根ユニット
162 開口調整部
164 先端部
164a 溝部
166 突起部
180 駆動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絞り開口部が形成された支持基台部と;
前記支持基台部に,互いに協動して前記絞り開口部の開口面積を調節するように支持された第1絞り羽根ユニットおよび第2絞り羽根ユニットと;
前記第1絞り羽根ユニットと前記第2絞り羽根ユニットとが互いに協動するように駆動する駆動部と;
を備えた絞り機構であって:
前記第1絞り羽根ユニットと前記第2絞り羽根ユニットは,それぞれ,前記駆動部に係合する柄部を備えた開口調整部と前記開口調整部に対し相対移動可能に重ねあわされた先端部とから構成され,絞り全開時には,前記先端部と前記開口調整部との重なり面積が最大になるように重ねあわされ,絞り閉止時には,前記先端部と前記開口調整部とが一部ずらされるように重ねあわされることにより,面積を調整可能に構成されていることを特徴とする,絞り機構。
【請求項2】
前記開口調整部と前記先端部とは,いずれか一方に形成された突起部と,いずれか他方に形成され前記突起部が嵌合し案内される溝部と,を備えていることを特徴とする,請求項1に記載の絞り機構。
【請求項3】
前記駆動部により前記開口調整部材を駆動することにより,前記開口調整部材に形成された前記溝部または前記突起部のいずれか一方が前記先端部に形成された前記突起部または前記溝部のいずれか他方に対して相対移動し,前記突起部が前記溝部の一端に係合した場合に,さらに,双方が重ね合わさったまま移動可能であることを特徴とする,請求項2に記載の絞り機構。
【請求項4】
前記開口調整部と前記先端部のいずれか一方の外縁部に前記開口調整部と前記先端部のいずれか他方の外縁部に係合可能な係合部が形成されており,前記駆動部により前記開口調整部を駆動することにより,前記開口調整部に形成された前記溝部または前記突起部のいずれか一方が前記先端部に形成された前記突起部または前記溝部のいずれか他方に対して相対移動し,前記突起部が前記溝部の一端に係合しない状態であっても,前記開口調整部と前記先端部のいずれか他方の外縁部に形成された係合部が前記開口調整部と前記先端部のいずれか一方の外縁部に係合した場合に,さらに,双方が重ね合わさったまま移動可能であることを特徴とする,請求項2に記載の絞り機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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