説明

絞り素子、絞り素子ユニット、および撮像装置

【課題】真円形の絞り孔を形成することができる絞り素子、絞り素子ユニット、および撮像装置を提供することを目的とする。
【解決手段】少なくとも所定の光軸方向については光を透過させる、光軸方向に交わる平面状の透明な壁と壁に沿った内部空間とを有する、内部空間に流体を収容する流体収容器と、流体収容器の内部空間内に収容された、壁に沿って環状に偏って存在する不透明な磁性流体と、磁性流体と共に流体収容器の内部空間内に収容された、磁性流体とは不混和な、壁上で磁性流体と環状の境界を生じる透明な非磁性流体と、境界の環の大きさを変える磁場を自力あるいは他力で発生させる磁場発生器とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光の光束を調節する絞り素子、絞り素子ユニット、および被写体光を結像して画像データを取得する撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、被写体を撮影する撮像装置に、撮影場所の明るさなどに応じて被写体光の光量を調節するための絞りやNDフィルタ等が備えられている。絞りには、予め孔が空けられた板を孔が光軸上にくるように配置して光束を絞るものや、複数の絞り羽で光軸を取り囲み、その取り囲んだ絞り孔の大きさを変化させることによって、絞り孔を通過する光の光量を制御するものなどがある。それらの中でも、複数の絞り羽を使った絞りは、絞り孔の大きさを複数段階に調整することができ、光量調整の自由度が高いという利点がある。
【0003】
ところで、複数の絞り羽を使った絞りは、絞りを開放したときの絞り孔の形状が真円になるように設計されているものが多く、絞りを絞るにつれて複数の絞り羽の重なり部分が角張ってしまい、小絞りに設定したときには、絞り孔の形状が多角形に近い形状になってしまう。このような状態で撮影を行うと、例えば、ポートレート撮影などであえてぼかした写真を撮影する場合、ボケが多角形にはっきりと写ってしまって滑らかなぼかしにならなかったり、高輝度の被写体を撮影したときに、多角形の頂点の数に対応した数の光芒が現れてしまう。また、小絞り時における絞り孔の形状を真円に近づけようとすると、かなり多くの絞り羽を使用しなければならず、複雑な構造になってしまうという問題がある。
【0004】
この点に関し、特許文献1には、絞り羽の形状を工夫することによって、少数の絞り羽のみで開放時と小絞り時のいずれも真円形状の絞り孔を形成するとともに、それ以外の開口時にも、真円に近い形状を形成する絞り装置について記載されている。
【特許文献1】特開2002−99022号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載された絞り装置でも、全ての開口時において真円形の絞り孔を形成することはできず、上述したような不具合を完全には回避することができないという問題がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、真円形の絞り孔を形成することができる絞り素子、絞り素子ユニット、および撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明の絞り素子は、少なくとも所定の光軸方向については光を透過させる、光軸方向に交わる平面状の透明な壁と壁に沿った内部空間とを有する、内部空間に流体を収容する流体収容器と、
流体収容器の内部空間内に収容された、壁に沿って環状に偏って存在する不透明な磁性流体と、
磁性流体と共に流体収容器の内部空間内に収容された、磁性流体とは不混和な、壁上で磁性流体と環状の境界を生じる透明な非磁性流体と、
境界の環の大きさを変える磁場を自力あるいは他力で発生させる磁場発生器とを備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明の絞り素子によると、磁場発生器によって磁場が印加されると、その磁場によって流体収容器内の磁性流体が引き寄せられ、磁性流体と非磁性流体との境界の環の大きさが変化する。絞り素子に入射された光は、環の内側の透明部分は透過して、透明部分の外側の不透明部分で吸収されるため、本発明の絞り素子によると、円形の絞り孔を形成することができる。
【0009】
また、本発明の絞り素子において、上記磁場発生器が、同心円状の複数段の磁場発生部を備えたものであることが好ましい。
【0010】
複数段の磁場発生部を備えることによって、流体収容器に印加される磁場を同心円状に複数段に調整することができ、複数段階の絞り値を実現することができる。
【0011】
また、上記目的を達成する本発明の絞り素子ユニットは、少なくとも所定の光軸方向については光を透過させる、光軸方向に交わる平面状の透明な壁と壁に沿った内部空間とを有する、内部空間に流体を収容する流体収容器と、
流体収容器の内部空間内に収容された、壁に沿って環状に偏って存在する不透明な磁性流体と、
磁性流体と共に流体収容器の内部空間内に収容された、磁性流体とは不混和な、壁上で磁性流体と環状の境界を生じる透明な非磁性流体と、
境界の環の大きさを変える磁場を自力あるいは他力で発生させる磁場発生器と、
磁場発生器で発生される磁場を制御して、境界の環の大きさを変化させる制御部とを備えたことを特徴とする。
【0012】
本発明の絞り素子ユニットによると、本発明の絞り素子と同様に、円形の絞り孔を形成することができるとともに、光の光束を精度良く調整することができる。
【0013】
尚、本発明にいう絞り素子ユニットについては、ここではその基本形態のみを示すのにとどめるが、これは単に重複を避けるためであり、本発明にいう絞り素子ユニットには、上記の基本形態のみではなく、前述した絞り素子の各形態に対応する各種の形態が含まれる。
【0014】
また、上記目的を達成する本発明の撮像装置は、少なくとも所定の光軸方向については光を透過させる、光軸方向に交わる平面状の透明な壁と壁に沿った内部空間とを有する、内部空間に流体を収容する流体収容器と、
流体収容器の内部空間内に収容された、壁に沿って環状に偏って存在する不透明な磁性流体と、
磁性流体と共に流体収容器の内部空間内に収容された、磁性流体とは不混和な、壁上で磁性流体と環状の境界を生じる透明な非磁性流体と、
境界の環の大きさを変える磁場を自力あるいは他力で発生させる磁場発生器と、
磁場発生器で発生される磁場を制御して、境界の環の大きさを変化させる制御部と、
流体収容器を通ってきた被写体光が表面に結像されて、被写体光を表わす画像信号を生成する撮像器とを備えたことを特徴とする。
【0015】
本発明にいう撮像器とは、光を受光して受光信号を生成する受光素子が複数配備されたCCDや、CMOSセンサなどを指す。
【0016】
本発明の撮像装置によると、光の光束を円形の絞り孔で調整することができ、光芒を抑えたり、滑らかなぼかしを実現した撮影画像を得ることができる。
【0017】
尚、本発明にいう撮像装置については、ここではその基本形態のみを示すのにとどめるが、これは単に重複を避けるためであり、本発明にいう撮像装置には、上記の基本形態のみではなく、前述した絞り素子の各形態に対応する各種の形態が含まれる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、真円形の絞り孔を形成することができる絞り素子、絞り素子ユニット、および撮像装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態が適用されたデジタルカメラを前面斜め上から見た外観斜視図である。
【0021】
図1に示すように、このデジタルカメラ100の前面中央部には、撮影レンズ101と、回転させることによって、撮影レンズ101に内蔵された絞りの絞り値を調整する絞りリング105が備えられている。また、このデジタルカメラ100の前面上部には、光学式ファインダ対物窓102および補助光発光部103が備えられている。さらに、このデジタルカメラ100の上面には、スライド式の電源スイッチ104およびレリーズスイッチ150が備えられている。
【0022】
図2は、図1に示すデジタルカメラ100の概略構成図である。
【0023】
図2に示すように、デジタルカメラ100の内訳は、撮影光学系110と、信号処理部120とに分かれる。デジタルカメラ100には、それらのほかにも、撮影した画像を表示させるための画像表示部130、撮影した画像信号を記録しておくための外部記録媒体140、撮影のための各種処理をデジタルカメラ100に行なわせる、ズームスイッチ170、撮影モードスイッチ160、レリーズスイッチ150、および絞り113の絞り値を切り替える絞り切替スイッチ180が設けられている。
【0024】
まず撮影光学系110の構成を、図2を参照して説明する。
【0025】
デジタルカメラ100では、図2の左方から被写体光が入射し、ズームレンズ115、およびフォーカスレンズ114を経て、被写体光の光量を調整する絞り113を通過した後、シャッタ112が開いている場合は、後段に配置されたCCD111上に結像する。本来、撮影光学系には複数のレンズが配備され、それら複数のレンズのうち少なくとも1つのレンズがピント調節に大きく関与し、各レンズの相対位置が焦点距離に関与するが、この図2では、焦点距離の変化に係わるレンズをズームレンズ115として模式的に示しており、ピントの調節に係わるレンズをフォーカスレンズ114として模式的に示している。
【0026】
ズームレンズ115、フォーカスレンズ114、絞り113、およびシャッタ112は、ズームモータ115a、フォーカスモータ114a、絞りコントローラ113a、およびシャッタモータ112aによりそれぞれ駆動され移動する。これらズームモータ115a、フォーカスモータ114a、絞りコントローラ113a、およびシャッタモータ112aを作動させる指示は、信号処理部120中のデジタル信号処理部120bから直接に、あるいはモータドライバ120cを通じて伝達される。
【0027】
ズームレンズ115は、ズームモータ115aによって光軸に沿う方向に移動される。ズームレンズ115が、信号処理部120からの信号に応じた位置に移動されることによって、焦点距離が変化して撮影倍率が決定される。
【0028】
フォーカスレンズ114は、TTLAF(Through The Lens Auto Focus)機能を実現するためのレンズである。このTTLAF機能とは、光軸に沿う方向にフォーカスレンズを移動させながら、CCD111で得られた画像信号のコントラストを信号処理部120のAF/AE演算部126で検出し、そのコントラストのピークが得られるレンズ位置をピント位置として、フォーカスレンズ114をピント位置に調節するものである。このTTLAF機能によって、コントラストがピークになる被写体に自動的に焦点を合わせて撮影を行うことができる。
【0029】
絞り113は、容器内に透明な非磁性流体と、不透明な磁性流体とが収容されて構成されている。撮影者によって図1の絞りリング105が回転されると、図2の絞り切替スイッチ180では絞りリング105の移動位置に応じた絞り値が設定される。絞り値の情報はシステムコントローラ121に伝えられ、さらに、システムコントローラ121から絞りコントローラ113aに伝えられる。絞りコントローラ113aは、システムコントローラ121から伝えられた絞り値に応じて絞り113の容器内に収容された磁性流体に磁場を印加し、非磁性流体と磁性流体との境界位置を移動させる。この絞り113と絞りコントローラ113aについては、後で詳しく説明する。
【0030】
ズームレンズ115、フォーカスレンズ114、絞り113、およびシャッタ112を通過してきた被写体光はCCD111上で結像され、CCD111において、被写体像を表わす画像信号が生成される。このCCD111は、本発明にいう撮像器の一例に相当する。
【0031】
撮像光学系110は、以上のように構成されている。
【0032】
続いて信号処理部120の構成を説明する。
【0033】
CCD111上に結像させた被写体像が画像信号としてアナログ処理(A/D)部120aに読み出され、このアナログ処理部(A/D)120aでアナログ信号がデジタル信号に変換されデジタル信号処理部120bへと供給される。デジタル信号処理部120bにはシステムコントローラ121が配備されており、そのシステムコントローラ121内の動作の手順を示したプログラムにしたがってデジタル信号処理部120b内の信号処理が行なわれる。このシステムコントローラ121と、画像信号処理部122、画像表示制御部123、画像圧縮部124、メディアコントローラ125、AF/AE演算部126、キーコントローラ127、およびバッファメモリ128との間のデータの受け渡しはバス1200を介して行なわれ、そのバス1200を介してデータの受け渡しが行なわれるときのバッファとして内部メモリ129が働いている。この内部メモリ129に各部の処理プロセスの進行状況に応じて変数となるデータが随時書き込まれて、システムコントローラ121、および画像信号処理部122、画像表示制御部123、画像圧縮部124、メディアコントローラ125、AF/AE演算部126、キーコントローラ127、角度演算部129の各部では、そのデータを参照することにより適切な処理が行なわれる。つまり、システムコントローラ121からの指示がバス1200を介して上記の各部に伝えられ、各部の処理プロセスが立ち上げられる。そして、その内部メモリ129のデータがプロセスの進行状況に応じて書き換えられ、さらにシステムコントローラ121側で参照されて上記の各部の動作が管理される。言い換えれば、電源が投入され、システムコントローラ121内のプログラムの手順にしたがって各部のプロセスが立ち上げられる。たとえば、ームスイッチ170、撮影モードスイッチ160、レリーズスイッチ150、および絞り切替スイッチ180が操作されると、その操作されたという情報がキーコントローラ127を経由してシステムコントローラ121に伝えられ、その操作に応じた処理がシステムコントローラ121内のプログラムの手順にしたがって行われる。
【0034】
レリーズ操作が行われると、CCD111から読み出された画像データは、アナログ処理(A/D)部120aでアナログ信号からデジタル信号に変換され、このデジタル化された画像データがデジタル信号処理部120b内のバッファメモリ128にいったん蓄えられる。このデジタル化された画像データのRGB信号が画像信号処理部122でYC信号に変換され、さらに画像圧縮部124でJPEG圧縮と呼ばれる圧縮が行なわれて画像信号が画像ファイルとなってメディアコントローラ125を介して外部記録媒体140に記録される。この画像ファイルとして記録された画像データは、画像表示制御部123を通じて画像表示部130において再生される。この処理の際、AF/AE演算部126では、ピント調節のためにRGB信号から被写体距離ごとにコントラストを検出することが行なわれる。この検出結果に基づいて、フォーカスレンズ114によってピント調整が行われる。またAF/AE演算部126ではRGB信号から輝度信号が抽出され、そこから被写界輝度が検出される。
【0035】
デジタルカメラ100は、基本的には以上のように構成されている。
【0036】
以下では、絞りコントローラ113aによる絞り113の調整について詳しく説明する。
【0037】
図3は、絞り113の概略構成図である。
【0038】
図3のパート(A)には、絞り113を光軸上から見た図が示されており、図3のパート(B)には、絞り113を光軸に垂直な面で切断したときの断面図が示されている。
【0039】
まずは絞り113について説明する。
【0040】
絞り113は、透明な流体収容器300に、有色染料が添加された磁性流体210と、透明な非磁性流体220とが収容されて形成されている。
【0041】
絞り113は、透明な流体収容器300と、電流の印加を受けて磁場を発生する透明なコイル500a,500b,500cと、流体収容器300内に収容された、有色染料が添加された磁性流体210と透明な非磁性流体220とで形成されている。
【0042】
流体収容器300は、円形の薄板形状を有しており、その薄板形状の内部に磁性流体210および非磁性流体220が収容されている。本実施形態においては、光透過性を有するプラスチック(例えば、ゼオノア:日本ゼオン社製の双環性脂肪族モノマーからなるプラスチックなど)で構成された流体収容器300が適用されており、流体収容器300の、薄板形状の側面側の内面は、親水性を有する親水性膜(例えば、ペルヒドロポリシラザンから調整されるSiO2膜)で覆われており、薄板形状の上底面の中央部分の内面は、疎水性を有する疎水性膜(例えば、サイトップ:旭硝子社製などのフッ素系ポリマー)で覆われている。流体収容器300は、本発明にいう流体収容器の一例にあたる。
【0043】
上記のような流体収容器300に、相互に不混和な磁性流体210と、非磁性流体220とが収容される。近年、イオン性液体を利用することで、液体状の磁性体が合成できることが報告されており(Chemistry Letters,第1590頁、2004年発行)、本実施形態では、このようなイオン性液体を利用した水性の磁性流体210(例えば、塩化鉄酸イミダゾリウムなどのイオン性液体:屈折率1.50)が用いられ、非磁性流体220としては油性の流体(例えば、炭化水素系化合物、さらに好ましくは、炭化水素系芳香族化合物。メシチレン:屈折率1.498、オルトキシレン:屈折率1.503など)が用いられる。この磁性流体210は、本発明にいう磁性流体の一例にあたり、非磁性流体220は、本発明にいう非磁性流体の一例に相当する。
【0044】
磁性流体210は、流体収容器300の、薄板形状の側面側の内面に塗布された疎水性膜と反撥し、非磁性流体220は、薄板形状の上底面の中央部分の内面に塗布された親水性膜と反撥する。その結果、図3のパート(B)に示すように、磁性流体210は薄板形状の側面側に偏って環状に存在し、その環内に非磁性流体220が存在する。
【0045】
コイル500a,500b,500cは、相互に軸径が異なり、流体収容器300の後側(被写体光の出射側)に、軸を揃えて配置されている。絞りコントローラ113aは、コイル500a,500b,500cそれぞれに個別に電流を印加することによって、流体収容器300への磁場の印加位置を環状に複数段階(この例では、3段階)に調整することができる。コイル500a,500b,500cは、本発明にいう磁場発生器の一例にあたり、絞りコントローラ113aは、本発明にいう制御部の一例に相当する。
【0046】
以上のような構成を有する絞り113に、磁性流体210と非磁性流体220とが収容された予備タンク400が備えられている。予備タンク400は、絞り113の流体収容器300と繋がっており、流体収容器300との間で磁性流体210および非磁性流体220が自在に出入する。
【0047】
絞り113の絞り値は、以下のような手順で調整される。
【0048】
撮影者が、図1の絞りリング105を回転させると、図2の絞り切替スイッチ180では、絞りリング105の移動位置に応じた絞り値が設定される。絞り値の情報は、システムコントローラ121を介して絞りコントローラ113aに伝えられる。
【0049】
例えば、絞り切替スイッチ180によって全3段階のうちの1段階目の絞り値が設定されたとすると、絞りコントローラ113aは、外側のコイル500aと中央のコイル500bそれぞれに逆方向の電流を印加する。
【0050】
図4は、印加電流と、発生する磁場との関係を説明する図である。
【0051】
図3のパート(B)において、外側のコイル500aと、中央のコイル500bそれぞれに逆方向の電流が印加されると、図4のパート(A)に示すように、コイル500a,500bでは、相互に逆方向の磁界が発生する。その結果、外側のコイル500aで発生した磁界と、中央のコイル500bで発生した磁界とが重なり合う部分では、それら相互に逆方向の磁界が打ち消しあい、図4のパート(B)に示すように、外側のコイル500aを取り囲む磁界のみが残る。
【0052】
図4のパート(B)に示すような磁場が流体収容器300に印加されると、磁性流体210が外側のコイル500aを取り囲む磁場に引き付けられ、磁性流体210と非磁性流体220との境界が環状を保ったまま外側のコイル500aの位置まで移動する(図3のパート(A)参照)。絞り113に光を入射すると、その光は非磁性流体220は透過し、磁性流体210では吸収されることによって、光の光束が非磁性流体220と磁性流体210との境界の環状の大きさに合わせて調整される。このように、撮影者によって指定された絞り値に応じて、非磁性流体220と磁性流体210との境界の環状の大きさが変更され、絞り113の絞り値が調整される。
【0053】
また、絞り切替スイッチ180によって全3段階のうちの2段階目の絞り値が設定されたとすると、絞りコントローラ113aによって、中央のコイル500bと、内側のコイル500cそれぞれに逆方向の電流が印加される。その結果、中央のコイル500aを取り囲む磁界のみが残って流体収容器300に印加される。
【0054】
図5は、2段階目の絞り値が設定されたときの、磁性流体210と非磁性流体220との境界を示す図である。
【0055】
中央のコイル500bと、内側のコイル500cに逆方向の電流が印加されると、中央のコイル500aを取り囲む磁界が流体収容器300に印加され、磁性流体210と非磁性流体220との境界が環状を保ったまま中央のコイル500bの位置まで移動する。このとき、非磁性流体220と磁性流体210との境界の環状が、図3のパート(A)に示す境界の環状よりも小さくなっている。この状態では、図3のパート(A)に示す状態よりも、絞り113によって多くの光量が減衰される。
【0056】
このように、本実施形態の絞り113によると、簡易な構成で円形の絞りを実現することができる。
【0057】
ここで、上記では、本発明にいう磁性流体および非磁性流体の一例として、磁性液体および非磁性液体それぞれの実施例が示されているが、本発明にいう磁性流体および非磁性流体は、ゾルなどであってもよい。
【0058】
また、上記では、本発明にいう磁場発生器の一例として、電流の印加を受けて磁場を発生するコイルが示されているが、本発明にいう磁場発生器は、自力で磁場を発生する永久磁石であってもよい。この場合、磁性流体の移動は、永久磁石自体の移動によって実現される
続いて、本発明を構成する各構成部分において採用可能な種々の形態について付記する。
【0059】
本発明に用いられる磁性流体とは、いかなるものであってもよいが、好ましくはイオン性液体である。イオン性液体とは、カチオン性化合物とアニオン性化合物とからなるイオン性化合物であり、かつ、液体であるものを意味する。イオン性液体は、通常の溶媒が蒸気圧を応じた揮発性化合物であるのに対し、蒸気圧がない揮発しない液体として、機能性材料の溶媒として応用が期待されているものである。本発明に用いられるイオン性液体としては、いかなるものであってもよいが、好ましくは、カチオン性化合物としてはイミダゾリウム塩化合物、ピリジニウム塩化合物、アンモニウム塩化合物、ホスホニウム塩化合物などが挙げられる。具体的には、1−エチルー3−メチルイミダゾリウム、1−n-ブチルー3−メチルイミダゾリウム、1−エチルー3−エチルイミダゾリウムなどが挙げられる。好ましくは、イミダゾリウム塩化合物である。さらに好ましくは、1−エチルー3−メチルイミダゾリウム塩化合物、1−n-ブチルー3−メチルイミダゾリウム塩化合物である。アニオン性化合物としては、磁性を発現する元素を含有することが好ましく、磁性を発現する元素としては鉄、コバルト、ニッケルが挙げられる。特に好ましくは鉄である。
【0060】
本発明の磁性流体には必要に応じて染料を添加することができる。用いられる染料としては、いかなるものであってもよいが、例えば、アゾ色素、アントラキノン色素、ペリレン色素、メロシアニン色素、アゾメチン色素、フタロペリレン色素、インジゴ色素、アズレン色素、ジオキサジン色素、ポリチオフェン色素などが挙げられる。
【0061】
上記実施形態においては、着色された磁性流体は文献(Chemistry Letters、第1590頁、2004年)記載の方法に従い合成した。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の一実施形態が適用されたデジタルカメラを前面斜め上から見た外観斜視図である。
【図2】図1に示すデジタルカメラ100の概略構成図である。
【図3】絞り113の概略構成図である。
【図4】印加電流と、発生する磁場との関係を説明する図である。
【図5】2段階目の絞り値が設定されたときの、磁性流体210と非磁性流体220との境界を示す図である。
【符号の説明】
【0063】
100 デジタルカメラ
150 レリーズボタン
101 撮影レンズ
102 光学式ファインダ対物窓
103 補助光発光部
104 電源スイッチ
105 絞りリング
110 撮影光学系
111 CCD
112 シャッタ
112a シャッタモータ
113 絞り
113a 絞りコントローラ
114 フォーカスレンズ
114a フォーカスモータ
115 ズームレンズ
115a ズームモータ
120 信号処理部
120a アナログ処理(A/D)部
120b デジタル信号処理部
120c モ−タドライバ
121 システムコントローラ
122 画像信号処理部
123 画像表示制御部
124 画像圧縮部
125 メディアコントローラ
126 AF/AE演算部
127 キーコントローラ
128 バッファメモリ
129 内部メモリ
1200 バス
130 画像表示部
140 外部記録媒体
150 レリーズスイッチ
160 撮影モードスイッチ
170 ズームスイッチ
180 絞り切替えスイッチ
210 磁性流体
220 非磁性流体
300 流体収容器
500a,500b,500c コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも所定の光軸方向については光を透過させる、該光軸方向に交わる平面状の透明な壁と該壁に沿った内部空間とを有する、該内部空間に流体を収容する流体収容器と、
前記流体収容器の内部空間内に収容された、前記壁に沿って環状に偏って存在する不透明な磁性流体と、
前記磁性流体と共に前記流体収容器の内部空間内に収容された、該磁性流体とは不混和な、前記壁上で該磁性流体と環状の境界を生じる透明な非磁性流体と、
前記境界の環の大きさを変える磁場を自力あるいは他力で発生させる磁場発生器とを備えたことを特徴とする絞り素子。
【請求項2】
前記磁場発生器が、同心円状の複数段の磁場発生部を備えたものであることを特徴とする請求項1記載の絞り素子。
【請求項3】
少なくとも所定の光軸方向については光を透過させる、該光軸方向に交わる平面状の透明な壁と該壁に沿った内部空間とを有する、該内部空間に流体を収容する流体収容器と、
前記流体収容器の内部空間内に収容された、前記壁に沿って環状に偏って存在する不透明な磁性流体と、
前記磁性流体と共に前記流体収容器の内部空間内に収容された、該磁性流体とは不混和な、前記壁上で該磁性流体と環状の境界を生じる透明な非磁性流体と、
前記境界の環の大きさを変える磁場を自力あるいは他力で発生させる磁場発生器と、
前記磁場発生器で発生される磁場を制御して、前記境界の環の大きさを変化させる制御部とを備えたことを特徴とする絞り素子ユニット。
【請求項4】
少なくとも所定の光軸方向については光を透過させる、該光軸方向に交わる平面状の透明な壁と該壁に沿った内部空間とを有する、該内部空間に流体を収容する流体収容器と、
前記流体収容器の内部空間内に収容された、前記壁に沿って環状に偏って存在する不透明な磁性流体と、
前記磁性流体と共に前記流体収容器の内部空間内に収容された、該磁性流体とは不混和な、前記壁上で該磁性流体と環状の境界を生じる透明な非磁性流体と、
前記境界の環の大きさを変える磁場を自力あるいは他力で発生させる磁場発生器と、
前記磁場発生器で発生される磁場を制御して、前記境界の環の大きさを変化させる制御部と、
前記流体収容器を通ってきた被写体光が表面に結像されて、該被写体光を表わす画像信号を生成する撮像器とを備えたことを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−235548(P2006−235548A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−54095(P2005−54095)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【出願人】(000005430)フジノン株式会社 (2,231)
【Fターム(参考)】