絞り装置、レンズ装置および撮像装置
【課題】小型化を図りつつ、小絞り時の回折による影響を軽減すること。
【解決手段】絞り羽根閉じ位置に位置づけられた場合に、地板開口205よりも開口径の小さい小絞り開口501を形成する複数の絞り羽根410、420を、絞り羽根閉じ位置または絞り羽根開き位置に位置づけるようにアクチュエータによって駆動することによって撮像用の光学素子に入射する光量を調節する絞り装置において、小絞り開口501が形成された場合に、当該小絞り開口501を覆うNDフィルタ405を絞り羽根410に設けた。
【解決手段】絞り羽根閉じ位置に位置づけられた場合に、地板開口205よりも開口径の小さい小絞り開口501を形成する複数の絞り羽根410、420を、絞り羽根閉じ位置または絞り羽根開き位置に位置づけるようにアクチュエータによって駆動することによって撮像用の光学素子に入射する光量を調節する絞り装置において、小絞り開口501が形成された場合に、当該小絞り開口501を覆うNDフィルタ405を絞り羽根410に設けた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、絞り装置、レンズ装置および撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、たとえばコンパクトデジタルカメラなどの小型の撮像装置は、小絞り開口を有する小絞り部材を備えたものがあった。この小絞り部材は、たとえばシャッタ開口よりも開口径の小さい小絞り開口を備え、シャッタ開口において小絞り開口以外の領域を覆う形状を有している。シャッタ開口は、たとえば、撮像装置に対して最大光量を入射させる大きさで開口している。
【0003】
このような撮像装置は、具体的には、たとえば光量を絞る際にはシャッタ開口を覆う位置に小絞り部材を位置づけ、シャッタ開口で撮像をおこなう際には小絞り部材を光路から退避させる(たとえば、下記特許文献1を参照。)。また、このような撮像装置は、光路から退避させた絞り部材を収容する空間を有している。
【0004】
近年、カメラの小型化の要求にともない、レンズ鏡筒の外径寸法の小型化がおこなわれている。カメラの小型化の要求にともなってレンズ鏡筒の外径寸法を小型化した場合にも、光学性能を確保するため、レンズの開口径は可能な限り大口径化することが好ましい。上記特許文献1の技術では、レンズを大口径化した場合に、光路から退避させた小絞り部材を収容するスペースを確保することが難しい。
【0005】
これに対して、従来、たとえば小絞り開口を2枚の絞り羽根によって形成し、シャッタ開口で撮像をおこなう際には、2枚の絞り羽根を分割した状態で光路から退避させるようにした撮像装置があった(たとえば、下記特許文献2を参照。)。このような撮像装置は、上記の撮像装置と比較して、光路から退避させた状態の絞り部材を収容する空間を小さくすることができる。
【0006】
近年、たとえばデジタルカメラなどのように、フィルムに代わってCCDやCMOSなどの光電変換素子を用いて撮像する撮像装置が増加している。CCDは、フィルムと比較して回折の影響(たとえば小絞りボケなど)を受けやすい。このような不具合を防止するために、NDフィルタを備えているものが多くある。回折は、小絞り開口の形成時に生じるため、小絞り開口を形成可能な撮像装置がNDフィルタを備える必然性は高い。
【0007】
【特許文献1】特開2001−215553号公報
【特許文献2】特開2002−296637号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した特許文献2を含む従来の技術では、2枚の絞り羽根によって小絞り開口を形成するため、小型化を図ることはできるが、小絞り時に用いるNDフィルタを設けることが困難であるという問題があった。
【0009】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、小型化を図りつつ、小絞り時の回折による影響を軽減することができる絞り装置、レンズ装置および撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明にかかる絞り装置は、撮像用の光学素子に入射する光量を調節する絞り装置であって、所定位置に位置づけられた場合に、シャッタ開口よりも開口径の小さい小絞り開口を形成する複数の絞り羽根と、前記複数の絞り羽根を前記所定位置または前記シャッタ開口時の光路から退避する退避位置に位置づけるように、前記複数の絞り羽根を駆動する駆動手段と、前記複数の絞り羽根の中の一つの絞り羽根に設けられて、前記駆動手段により前記複数の絞り羽根を駆動することによって前記小絞り開口が形成された場合に、当該小絞り開口を覆う減光用フィルタと、を備えたことを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、複数の絞り羽根によって小絞り開口を形成することで、絞り羽根の収容に要する空間を小さくすることができる。また、複数の絞り羽根の中の一つの絞り羽根に減光用フィルタを設けることによって、小絞り時の光量を調整することができる。
【0012】
また、この発明にかかる絞り装置は、上記の発明において、前記一つの絞り羽根が、前記小絞り開口の外縁に占める割合が、その他の絞り羽根よりも大きくなるような形状を有しており、前記減光用フィルタは、前記一つの絞り羽根に接着されていることを特徴とする。この発明によれば、減光用フィルタを確実に接着することができ、減光用フィルタを安定して支持することができる。
【0013】
また、この発明にかかる絞り装置は、上記の発明において、前記駆動手段が、前記複数の絞り羽根が互いに摺動するように前記複数の絞り羽根を駆動し、前記減光用フィルタは、前記複数の絞り羽根のうち、最も外側の一つの絞り羽根の外側に設けられている。この発明によれば、複数の絞り羽根を摺動させた場合に減光用フィルタが傷つくことを防止できる。
【0014】
また、この発明にかかる絞り装置は、上記の発明において、前記複数の絞り羽根を摺動自在に支持する地板を備え、前記減光用フィルタは、前記一つの絞り羽根を間にして前記地板とは反対側に設けられていることを特徴とする。この発明によれば、複数の絞り羽根を地板に設けた場合にも、複数の絞り羽根を摺動させた場合に減光用フィルタが傷つくことを防止できる。
【0015】
また、この発明にかかる絞り装置は、上記の発明において、前記駆動手段が、前記複数の絞り羽根を、地板の外径範囲内で駆動することを特徴とする。この発明によれば、退避時における複数の絞り羽根を、地板の外径範囲内に収容することができる。
【0016】
また、この発明にかかる絞り装置は、上記の発明において、前記複数の絞り羽根が、前記退避位置側から各々が近接する方向に回動することで前記小絞り開口を形成することを特徴とする。この発明によれば、駆動手段にかかる負荷を分散することができる。
【0017】
また、この発明にかかる絞り装置は、上記の発明において、前記複数の絞り羽根は、前記小絞り開口を形成する開口形成羽根と、当該開口形成羽根とは別に、前記小絞り開口以外を閉塞するように前記シャッタ開口を覆う補助羽根と、から構成されていることを特徴とする。この発明によれば、シャッタ開口の大きさや地板の外径寸法などに左右されることなく、小絞り開口以外を閉塞するようにシャッタ開口を覆うことができる。
【0018】
また、この発明にかかるレンズ装置は、上記の絞り装置を備え、当該絞り装置を介して撮像用の光学素子に外光を入射させることを特徴とする。この発明によれば、小型化を図るとともに小絞り時の回折による影響を軽減することができるレンズ装置を得ることができる。
【0019】
また、この発明にかかる撮像装置は、上記のレンズ装置と、前記レンズ装置を介して受光した外光を光電変換する撮像用の光学素子と、を備えることを特徴とする。この発明によれば、撮像用の光学素子を用いた撮像装置において、小絞り時の回折による影響を軽減することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明にかかる絞り装置、レンズ装置および撮像装置によれば、小型化を図りつつ、小絞り時の回折による影響を軽減することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる絞り装置、レンズ装置および撮像装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0022】
(実施の形態1)
(レンズ装置の概略構成)
まず、図1を用いて、実施の形態1について説明する。図1は、この発明にかかる実施の形態1のレンズ装置の概略構成を示す説明図である。図1に示したように、実施の形態1のレンズ装置100は、鏡筒101と、第1〜第3レンズ群102〜104と、絞り装置105と、を備えている。
【0023】
鏡筒101は、光軸Cを軸心方向とする円筒形状を有している。鏡筒101は、撮像装置の本体に設けられたマウントなどに取り付けられる。撮像装置の本体内には、撮像素子が配置されている。撮像素子は、レンズ装置を介して受光した外光を光電変換し、入射光量に応じた電気信号を出力する。撮像素子は、具体的には、たとえばCCDなどによって実現される。撮像素子は、光の入射面が第3レンズ群104の焦点位置となる位置に設けられている。撮像装置の本体、マウントおよび撮像素子については、ここでは図示および説明を省略する。
【0024】
鏡筒101は、径の異なる3つの鏡筒106〜108を同心円上に重ね合わせることによって構成されている。各鏡筒106〜108は、隣接する鏡筒に対してスライド可能に設けられている。そして、鏡筒101は、各鏡筒106〜108を隣接する鏡筒に対してスライドさせることにより、光軸方向における寸法を伸縮させることができる。実施の形態1のレンズ装置は、沈胴タイプのレンズ装置である。
【0025】
鏡筒101内には、第1〜第3レンズ群102〜104が設けられている。第1レンズ群102は、鏡筒106内に設けられている。第2レンズ群103は、鏡筒107内に設けられている。第3レンズ群104は、鏡筒108内に設けられている。撮像装置の本体に対する各第1〜第3レンズ群102〜104の位置は、撮像装置の本体に対する各鏡筒106〜108の位置を変化させることによっても調整することができる。
【0026】
第1〜第3レンズ群102〜104は、光軸に沿って、被写体側から順に、第1レンズ群102、第2レンズ群103、第3レンズ群104の順に配列されている。第1レンズ群102は、被写体側に配置される。第3レンズ群104は、鏡筒108内において、鏡筒108に対して相対的に移動可能とされている。また、第3レンズ群104は、鏡筒108の軸心すなわち光軸方向に移動可能とされている。第3レンズ群104の移動機構については、ここでは説明を省略する。
【0027】
絞り装置105は、光軸方向において第1レンズ群102と第2レンズ群103との間に、設けられている。絞り装置105は、第1レンズ群102側から絞り装置105を通過して第2レンズ群103へ入射する光量を調整する(図2〜図8を参照)。
【0028】
(絞り装置の概略構成)
つぎに、絞り装置105について説明する。図2は、絞り装置105の概略構成を示す説明図である。絞り装置105は、地板201と、アクチュエータ202と、2枚の絞り羽根(図4における符号410、420を参照)と、を備えている。図2においては、地板201およびアクチュエータ202の関係を示している。また、図2には、地板201を2枚の絞り羽根が設けられている側(物体側)から見た状態が示されている。
【0029】
図2において、地板201は、円形の板状部材によって実現されている。地板201は、地板開口(シャッタ開口)205を備えている。地板開口205は、絞り装置105において透過可能な最大光量の光を通過させる。地板開口205は、地板201を光軸方向に貫通している。地板201は、絞り装置105において、地板開口205の中心が光軸を通るように設けられる。
【0030】
アクチュエータ202は、地板201の一面側に設けられている。アクチュエータ202は、具体的には、たとえばCCDやCMOSなどの撮像素子が配置される側に設けられている。アクチュエータ202は、地板201に対して、2枚の絞り羽根が設けられている側とは反対側に設けられている。アクチュエータ202は、回転軸206と、回転体207と、永久磁石であるマグネットロータ(図3における符号303を参照)と、コイル208と、コイルヨーク(鉄芯)209と、を備えている。
【0031】
回転軸206は、地板201の板面に直交する方向を軸心方向として延出しており、軸心周りに回転可能に設けられている。回転体207は、回転軸206に設けられている。実施の形態1においては、回転軸206と回転体207とは一体成形されている。また、回転体207は、回転軸に固定されており、回転軸206の回転にともなって、回転軸芯周りを回転軸206の回転方向と同一方向に回転する。
【0032】
ここで、図3は、回転軸206および回転軸206に設けられた各部を示す説明図である。図3において、回転体207は、回転軸206から回転軸206の半径方向に延出するアーム部301と、アーム部301の先端部から回転軸206の延出方向と並行に突出する突起302と、を備えている。アーム部301および突起302は、回転体207の回転に連動して地板201の板面に沿って変位する。
【0033】
マグネットロータ303は、回転軸206に設けられている。また、マグネットロータ303は、回転軸206とは別材料によって形成されている。マグネットロータ303は、具体的には、たとえば磁性体によって形成されている。マグネットロータ303は、略円筒状を有する磁性体であって、内周面を回転軸の外周面に接着することによって回転軸206に固定されている。回転軸206にマグネットロータ303を固定する方法については説明を後述する(図12を参照)。
【0034】
コイル208は、通電されることにより磁力を発生させ、コイルヨーク209を電磁石として機能させる。コイルヨーク209は、コイル208を支持するとともに、回転体207が回転軸芯周りに回転自在となるように回転体207を支持する。回転軸206は、コイル208に通電され、コイルヨーク209が電磁石として機能しているときに、マグネットロータ303が発生させる磁力方向に応じた方向に回転する。
【0035】
アクチュエータ202は、レンズ装置100が備える制御部が出力した制御信号に基づいて駆動する。レンズ装置100が備える制御部については、ここでは図示および説明を省略する。アクチュエータ202は、レンズ装置100が備える制御部からの制御信号が入力された場合に動作する。具体的には、たとえばコイル208への通電をおこなってマグネットロータ303を所定方向に所定角度回転させる。マグネットロータ303は、絞り羽根開き位置から絞り羽根閉じ位置へ、あるいは、絞り羽根閉じ位置から絞り羽根開き位置へ回転する。
【0036】
回転体207は、マグネットロータ303の回転にともなって回転軸206とともに所定方向に所定角度回転する。具体的には、たとえば回転体207は、マグネットロータ303の回転方向と同一方向に回転し、絞り羽根開き位置から絞り羽根閉じ位置へ、あるいは、絞り羽根閉じ位置から絞り羽根開き位置へ回転する。突起302は、回転体207の回転にともなって回転体207の回転方向に応じた位置に変位する。具体的には、たとえば突起302は、回転体207の回転方向と同一方向に変位し、絞り羽根開き位置から絞り羽根閉じ位置へ、あるいは、絞り羽根閉じ位置から絞り羽根開き位置へ変位する。
【0037】
図4および図5は、絞り装置105の概略構成および動作を示す説明図である。図4および図5においては、地板201および2枚の絞り羽根410、420の関係を示している。図4および図5において、2枚の絞り羽根410、420は、各々回動軸401,402を介して地板201に連結されており、各々地板201の板面に沿って回動自在とされている。絞り羽根410は、絞り羽根420よりも地板201から離間する側に設けられている。2枚の絞り羽根410、420は、各々板形状を有しており、一部が重ねあわされた状態で地板201に設けられている。
【0038】
各絞り羽根410、420は、長孔403、404を備えている。長孔403、404は、回転体207が備える突起302と係合している。突起302は、回転体207の回転にともなって変位する際に、長孔403、404を介して2枚の絞り羽根410、420を付勢する。
【0039】
2枚の絞り羽根410、420は、突起302からの付勢力を受けて、突起302の変位方向(マグネットロータ303の回転方向)に応じた方向に回動する。2枚の絞り羽根410、420は、それぞれ、絞り羽根開き位置から絞り羽根閉じ位置へ、あるいは、絞り羽根閉じ位置から絞り羽根開き位置へ回動する。2枚の絞り羽根410、420の回動方向は、相反する方向とされている。突起302は、2枚の絞り羽根410、420の回動に際して、長孔403、404内をスライドしながら変位する。
【0040】
2枚の絞り羽根410、420は、重ねあわされた状態で地板201に設けられており、互いに対向する面を摺動させながら回動する。これにより、2枚の絞り羽根410、420は、2枚の絞り羽根410、420の間および地板201と絞り羽根420との間に隙間を形成することなく回動する。すなわち、2枚の絞り羽根410、420の間および地板201と絞り羽根420との間に隙間が形成されないので、2枚の絞り羽根410、420の位置にかかわらず、2枚の絞り羽根410、420の間および地板201と絞り羽根420との間から光がもれることがない。
【0041】
2枚の絞り羽根410、420は、図4に示した絞り羽根開き位置から、それぞれ矢印A、A’で示した方向に回動し、絞り羽根閉じ位置(所定位置)に位置付けられる。絞り羽根閉じ位置に向かって回動する2枚の絞り羽根410、420の回動方向は、相反する方向とされている。そして、2枚の絞り羽根410、420は、絞り羽根閉じ位置に位置付けられた場合に、小絞り開口501を形成する。小絞り開口501は、地板開口205の開口径よりも開口径が小さい。小絞り開口501は、光軸方向に貫通している。また、2枚の絞り羽根410、420は、絞り装置105において、中心が図1に示した光軸Cを通るような小絞り開口501を形成する。
【0042】
ここで、各絞り羽根410、420の形状について説明する。図6および図7は、絞り羽根410、420の形状を示す平面図である。図6および図7に示したように、2枚の絞り羽根410、420は、それぞれが小絞り開口501の外縁部の一部を形成する。そして、小絞り開口501の外縁部において、絞り羽根410が占める割合は、絞り羽根420が占める割合より大きい。すなわち、小絞り開口501の外縁部において、絞り羽根410が占める割合は、小絞り開口501の半周分より大きい。
【0043】
また、2枚の絞り羽根410、420は、図5の位置から矢印B、B’で示した方向に回動し、絞り羽根開き位置に位置付けられる。絞り羽根開き位置に向かって回動する2枚の絞り羽根410、420の回動方向は、相反する方向とされている。2枚の絞り羽根410、420は、絞り羽根開き位置に位置付けられた場合に、地板開口205から退避した位置に位置付けられる。すなわち、2枚の絞り羽根410、420は、絞り羽根開き位置に位置付けられた場合に、地板開口205によって形成される光路に干渉しない位置に位置付けられる。
【0044】
実施の形態1においては、このように2枚の絞り羽根410、420の回動方向を相反する方向とすることにより、2枚の絞り羽根410、420を同一方向に回動させる場合と比較して、装置の姿勢によってアクチュエータ202にかかる負荷を分散させることができる。これによって、装置の姿勢によらずアクチュエータ202の駆動量を抑制し、安定した小絞り開口を形成することができる。
【0045】
また、実施の形態1においては、2枚の絞り羽根410、420を互いに接近する方向に回動させ、小絞り開口501が形成された時点における各絞り羽根410、420の位置を、絞り羽根閉じ位置としている。このため、2枚の絞り羽根410、420の回動角度を最小限にして小絞り開口を形成することができる。すなわち、実施の形態1によれば、アクチュエータ202の駆動量を最小限にして小絞り開口を形成することができる。なお、2枚の絞り羽根410、420を互いに接近する方向に回動させ、交差した後に小絞り開口501を形成するようにしてもよい。
【0046】
絞り羽根410は、減光用フィルタとしてのND(Neutral Density)フィルタ405を備えている。NDフィルタ405は、色の中立性を維持したまま、レンズに入る光の量を減少させる。
【0047】
NDフィルタ405は、小絞り開口501の開口面積よりも大きい。NDフィルタ405は、絞り羽根410が絞り羽根閉じ位置に位置付けられた場合に、小絞り開口を覆うように設けられている。NDフィルタ405の大きさは、絞り羽根410が絞り羽根閉じ位置に位置付けられて、NDフィルタ405が小絞り開口501を覆った状態において、小絞り開口501をオフセットした最小の大きさとされている。
【0048】
また、NDフィルタ405は、絞り羽根410が絞り羽根開き位置に位置付けられた場合に、地板開口205から退避した位置、すなわち、地板開口205によって形成される光路に干渉しない位置に位置付けられる。
【0049】
NDフィルタ405は、熱溶融性を有する接着剤を用いた熱圧着によって絞り羽根410に取り付けられている。熱圧着箇所は、絞り羽根410の回動に際して移動するNDフィルタ405の、回動軸401から最も離間する位置の移動軌跡上に設けられている。このように、絞り羽根410は、小絞り開口501の外縁部の一部の形成に加えて、NDフィルタ405の保持部材としても機能する。
【0050】
NDフィルタ405は、絞り羽根410を間にして絞り羽根420とは反対側に設けられている。このため、重ね合わされた2枚の絞り羽根410、420が回動した場合に、NDフィルタ405が絞り羽根420に擦れるなどしてNDフィルタ405が傷つくことを防止することができる。絞り羽根410、420は、トップカバー(図8における符号801を参照)によって覆われている。
【0051】
絞り羽根410は、光軸方向における寸法、すなわち厚みが、絞り羽根420の厚みよりも大きい。これによって、絞り羽根410は、NDフィルタ405を安定して支持することができる。絞り羽根420の厚みは、地板開口205において光を遮蔽することができる厚さ(材質)であれば、可能な限り小さくしてもよい。これによって、光軸方向における地板開口205と小絞り開口501の形成位置とを近づけることができる。これによって、光学性能の低下を抑制しつつ、小絞り開口501を形成することができる。
【0052】
図8は、トップカバーを示す平面図である。図8において、絞り装置105は、絞り羽根をカバーするトップカバー801を備えている。トップカバー801は、2枚の絞り羽根410、420を覆った状態で地板201に対向するように設けられる。トップカバー801は、地板201の外周縁近傍において均等に配置された3箇所に、トップカバー801を地板201に固定するためのネジが挿入されるネジ孔802が形成されている。トップカバー801は、このネジ孔802に挿入されるネジ(図9〜図11における符号901を参照)を介して地板201に固定される。
【0053】
なお、実施の形態1においては、ネジを用いてトップカバー801を地板201に固定するようにしたが、これに限るものではない。トップカバー801は、たとえば地板201あるいは鏡筒101に爪部材などを設け、この爪部材にトップカバー801の縁部分を引っ掛けることによってトップカバー801を地板201に固定するようにしてもよい。
【0054】
この場合、たとえばある程度の弾性を有する材料によって爪部材を形成し、トップカバー801を地板201あるいは鏡筒101に押し付ける際にこの爪部材を弾性変形させ、変形が復帰した時点で爪部材にトップカバー801の縁部分を引っ掛ける、いわゆるハメコミ式の取り付け方法を用いて、トップカバー801を地板201に固定するようにしてもよい。このようなハメコミ方式の取り付け方法を用いてトップカバー801を地板201に固定することにより、トップカバー801を容易に固定することができる。
【0055】
トップカバー801は、長孔803とトップカバー開口804とを備えている。長孔803とトップカバー開口804は、トップカバー801を光軸方向に貫通している。長孔803は、光軸方向において、アクチュエータ202の駆動にともなう突起の移動軌跡に重複する位置に設けられている。トップカバー開口804は、光軸方向において、NDフィルタ405の移動軌跡に重複する位置に設けられている。また、トップカバー開口804は、地板開口205よりも大きく開口している。
【0056】
また、トップカバー801は、孔805、806を備えている。孔805、806は、回動軸401、402の上端部を外部に開放し、回動軸401、402とトップカバー801とが擦れることを防止する。孔805、806を設けることにより、回動軸401、402とトップカバー801との摩擦を考慮することなく、トップカバー801の光軸方向の寸法を決定することができる。すなわち、回動軸401、402とトップカバー801との摩擦を回避するための遊び分を差し引いて、トップカバー801の光軸方向の寸法を小さくすることができる。
【0057】
図9〜図11は、絞り装置105の外観および動作を示す説明図である。図9において、2枚の絞り羽根410、420が絞り羽根開き位置に位置づけられている場合、突起302は長孔803の一端側に位置し、NDフィルタ405は、トップカバー開口804の一端側に位置している。2枚の絞り羽根410、420が絞り羽根開き位置に位置づけられている場合、NDフィルタ405は、トップカバー開口804において小絞り開口501に重複しない側の一端側に位置している。
【0058】
図10において、絞り羽根開き位置に位置づけられている2枚の絞り羽根410、420が、絞り羽根閉じ位置に向けて移動するように、アクチュエータ202を駆動した場合、突起302は長孔803内を一端側から他端側にスライドする。2枚の絞り羽根410、420は、小絞り開口501の外周縁を形成する部分を互いに接近させながら、地板201の板面に沿って回動する。
【0059】
図11において、2枚の絞り羽根410、420が絞り羽根閉じ位置に位置づけられた場合、突起302は長孔803の一端側から他端側に移動する。また、2枚の絞り羽根410、420が絞り羽根閉じ位置に位置づけられた場合、NDフィルタ405は、トップカバー開口804において小絞り開口501を覆う位置に位置付けられる。
【0060】
図9〜図11に示したように、トップカバー開口804を有するトップカバー801を設けることにより、NDフィルタ405の厚みを考慮することなく、トップカバー801の光軸方向の寸法を決定することができる。すなわち、NDフィルタ405の厚みを差し引いて、トップカバー801の光軸方向の寸法をNDフィルタ405の厚み分だけ小さくすることができる。
【0061】
また、トップカバー801を設けることにより、2枚の絞り羽根410、420を地板201側に付勢することができる。また、トップカバー801を設けることにより、絞り羽根410あるいは絞り羽根420が反り返るなどして、2枚の絞り羽根410、420の間あるいは2枚の絞り羽根410、420と地板201との間に隙間が生じた場合にも、当該隙間から光りがもれることを防止することができる。これによって、光学性能を低下させることなくNDフィルタ405を利用することができる。
【0062】
(マグネットロータ303の固定方法)
つぎに、マグネットロータ303の固定方法について説明する。図12は、図3の断面図である。図12には、図3に示した回転軸、回転体およびマグネットロータ303を、回動軸の軸心を通る平面で切断した断面が示されている。
【0063】
上述したように、マグネットロータ303は、回転軸206とは別材料によって形成されている。このため、絞り装置105の組み立てに際しては、マグネットロータ303を回転軸に固定する。実施の形態1においては、回転軸206の外周面のうち、マグネットロータ303が取り付けられる位置1200をあらして、凹凸(起伏)が生じた状態とする。回転軸の外周面は、具体的には、たとえばレーザーマーカーを用いて、彫刻文字など特定の印字パターン、アヤメ、格子模様などをマーキングすることによってあらす。
【0064】
レーザーマーカーは、レーザー光を用いてマーキング対象とする部材に熱を加え、マーキング対象とする部材に彫刻文字などをマーキングする装置である。レーザーマーカーは、たとえばマーキング対象とする部材が樹脂製であれば、当該樹脂の表面を溶かしたり焦がしたり変色させたりすることによってマーキングする。また、レーザーマーカーは、たとえばマーキング対象とする部材が紙製であれば、樹脂と同様に表面を焦がすことによってマーキングする。マーキング対象とする部材は、この他に、たとえばめっきが施された金属、印刷が施された紙、金属、ガラスなどであってもよく、特に材料を限定するものではない。
【0065】
つぎに、レーザーマーカーで表面をあらした位置1200に接着剤を塗布する。接着剤は、具体的には、たとえばディスペンサーなどを用いて塗布する。また、接着剤は、具体的には、たとえば紫外線硬化型の接着剤を用いる。また、接着剤は、具体的には、たとえば嫌気性を有し、硬化時間が短いシアノアクリレート系の接着剤を用いることができる。
【0066】
そして、接着剤を塗布した後に、マグネットロータ303の内径に回転軸206を挿入し、マグネットロータ303を回転軸206に固定する。紫外線硬化型の接着剤を用いる場合、塗布した接着剤の硬化方法は、たとえば作業者が手作業で紫外線を照射してもよいし、UV炉を経由するラインを採用し自動的に紫外線を照射するようにしてもよい。シアノアクリレート系の接着剤を用いることにより、硬化時間の短縮を図ることができる。
【0067】
紫外線硬化型の接着剤を用いる場合、回転軸206においてマグネットロータ303が固定される位置1200に、テーパ形状を設けてもよい。紫外線硬化型の接着剤を用いて透明な回転体を接着する場合、過剰に塗布した接着剤がそのまま硬化した場合にも液だれ状態で硬化していることを発見することが難しく、見落としてしまうことがある。液だれ状態で硬化した場合、その液だれ箇所が発見しづらい。液だれ状態のまま絞り装置105に組み込んだ場合は、回転不良などの不具合が発生するため、結局は製造しなおさなくてはならない。
【0068】
これに対して、実施の形態1のように、回転軸206の外周面にテーパ形状を設けること、接着剤を優先的にテーパ形状部分に納めることができ、接着剤の液だれによる回転不良などの不具合の発生を効果的に抑制することができる。
【0069】
このように、本来マーキング用途に使用しているレーザーマーカーを流用して回転軸206の表面をあらし、その後接着剤を用いて回転軸206にマグネットロータ303を固定することによって、回転軸206やマグネットロータ303を形成する材料に左右されることなく接着強度を高めることができる。また、回転軸206やマグネットロータ303を形成する材料を接着剤に応じて変更することなく、接着強度を高めることができる。
【0070】
また、レーザーマーカーは、絞り羽根410にNDフィルタ405を取り付ける際に、NDフィルタ405を取り付けるための接着剤が塗布される位置の表面性をあらすこともできる。絞り羽根410には、絞り羽根420に対する摺動性(すべり性)の向上を図るため、摺動用潤滑処理が施されていることがある。このような場合、接着剤が絞り羽根に接着しにくく、NDフィルタ405の接着不良が考えられる。また、一度接着したNDフィルタ405であっても脱離し易くなる。このような絞り羽根に対して、レーザーマーカーを用いて接着剤を塗布する部分の表面性をあらすことにより、絞り羽根410に対する接着剤の接着性を高め、絞り羽根にNDフィルタ405を確実に接着することができる。
【0071】
実施の形態1の絞り装置105、この絞り装置105を用いたレンズ装置100およびレンズ装置100を用いた撮像装置によれば、2枚の絞り羽根410、420によって小絞り開口501を形成することで、絞り羽根410、420の収容に要する空間を小さくすることができる。また、2枚の絞り羽根410、420のうち絞り羽根410にNDフィルタ405を設けることによって、小絞り時の回折による影響を軽減することができる。すなわち、実施の形態1の絞り装置105、この絞り装置105を用いたレンズ装置100およびレンズ装置100を用いた撮像装置によれば、小型化を図りつつ、小絞り時の回折による影響を軽減することができる。
【0072】
また、実施の形態1の絞り装置105、この絞り装置105を用いたレンズ装置100およびレンズ装置100を用いた撮像装置によれば、絞り羽根410が、小絞り開口501の外縁に占める割合が、絞り羽根420よりも大きくなるような形状を有しており、NDフィルタ405は、一つの絞り羽根410に接着剤を介して接着されている。これにより、NDフィルタ405を確実に接着し、NDフィルタ405を安定して支持することができる。また、これによってNDフィルタ405の脱落を防止することができる。
【0073】
なお、NDフィルタ405と絞り羽根410とは、たとえば溶剤型の接着剤など常温で硬化する接着剤、紫外線硬化型の接着剤、シアノアクリレート系の接着剤など、各種の接着剤を用いて接着してもよい。また、NDフィルタ405と絞り羽根410との接着は、接着剤を用いた接着に限るものではない。
【0074】
NDフィルタ405と絞り羽根410とは、たとえばレーザー光を用いてNDフィルタ405または絞り羽根410を高温で溶解し、NDフィルタ405と絞り羽根410とを溶着することによって接着してもよい。また、NDフィルタ405と絞り羽根410とは、たとえばNDフィルタ405および絞り羽根410に高圧力を加え、NDフィルタ405と絞り羽根410とを圧着によって接着してもよい。
【0075】
また、実施の形態1の絞り装置105、この絞り装置105を用いたレンズ装置100およびレンズ装置100を用いた撮像装置によれば、アクチュエータ202によって互いに摺動するように複数の絞り羽根410、420のうち、最も外側の絞り羽根410の外側にNDフィルタ405が設けられているため、絞り羽根410、420を摺動させた場合にNDフィルタ405が傷つくことを防止できる。
【0076】
また、実施の形態1の絞り装置105、この絞り装置105を用いたレンズ装置100およびレンズ装置100を用いた撮像装置によれば、NDフィルタ405は、地板201とは反対側に設けられているため、絞り羽根410、420を摺動させた場合にNDフィルタ405が傷つくことを防止できる。
【0077】
また、実施の形態1の絞り装置105、この絞り装置105を用いたレンズ装置100およびレンズ装置100を用いた撮像装置によれば、NDフィルタ405が脱落した場合は、絞り羽根410を絞り装置105に装着したままで、NDフィルタ405が脱落した絞り羽根410を、NDフィルタ405が取り付けられた新たな絞り羽根410に取り替えることが可能になる。あるいは、絞り羽根410を絞り装置105に装着したままで、NDフィルタ405が脱落した絞り羽根410に、NDフィルタ405を接着しなおすことができる。
【0078】
また、実施の形態1の絞り装置105、この絞り装置105を用いたレンズ装置100およびレンズ装置100を用いた撮像装置によれば、アクチュエータ202が、絞り羽根410、420を、地板201の外径範囲内で駆動するため、絞り羽根410、420を光路から退避させた際に、絞り羽根410、420を、地板201の外径範囲内に収容することができる。
【0079】
また、実施の形態1の絞り装置105、この絞り装置105を用いたレンズ装置100およびレンズ装置100を用いた撮像装置によれば、絞り羽根410、420が、絞り羽根閉じ位置と絞り羽根開き位置との間を移動する際に、互いに相反する方向に回動するので、装置の姿勢位置によるアクチュエータ202にかかる負荷を分散することができる。
【0080】
そして、実施の形態1の撮像装置は、上述した絞り装置105を備えるレンズ装置100を介して受光した外光をCCDやCMOSなどの光電変換素子によって受光するデジタルカメラであるため、小型でかつ小絞り時の回折による影響を軽減した、良好な画像を撮像することができる。
【0081】
(実施の形態2)
つぎに、この発明にかかる実施の形態2について説明する。図13は、この発明にかかる実施の形態2の絞り装置の概略構成を示す説明図である。図13に示したように、実施の形態2の絞り装置1300は、地板201に設けられた2枚の絞り羽根1301、1302および補助羽根1303を備えている。
【0082】
2枚の絞り羽根1301、1302および補助羽根1303は、絞り羽根閉じ位置に位置付けられた場合に、小絞り開口(図18における符号1801を参照)を形成する。小絞り開口は、地板開口1306のうち、小絞り開口以外の領域を覆うことによって形成される。2枚の絞り羽根410、420は、それぞれが小絞り開口の外縁部の一部を形成する。一方、補助羽根1303は、小絞り開口の形成には関与しない。すなわち、小絞り開口は、2枚の絞り羽根410、420によって形成される。
【0083】
補助羽根1303は、回動軸401を介して地板201に連結されており、地板201の板面に沿って回動自在とされている。また、補助羽根1303は、地板201と絞り羽根1302との間に位置するように設けられている。すなわち、2枚の絞り羽根1301、1302および補助羽根1303は、地板201側から順に、補助羽根1303、絞り羽根1302、絞り羽根1301の順序で設けられている。
【0084】
ここで、絞り羽根1301、1302および補助羽根1303の形状について説明する。図14および図15は、絞り羽根1301、1302の形状を示す平面図である。図16は、補助羽根1303の形状を示す平面図である。図14および図15に示したように、2枚の絞り羽根1301、1302は、それぞれが小絞り開口の外縁部の一部を形成する形状を有している。小絞り開口の外縁部は、補助羽根1303の有無あるいは補助羽根1303の枚数にかかわらず、2枚の絞り羽根1301、1302によって形成される。
【0085】
補助羽根1303は、奇数枚設ける場合は、小絞り開口の外縁部において占める割合が大きい方の絞り羽根(実施の形態2では、絞り羽根1301)側に設けられる。補助羽根1303は、小絞り開口の外縁部に臨む部分は有していない。補助羽根1303は、長孔1601を備えている。長孔1601は、回転体207が備える突起302と係合している。
【0086】
突起302は、回転体207の回転にともなって変位する際に、長孔1601を介して2枚の絞り羽根1301、1302および補助羽根1303を付勢する。2枚の絞り羽根1301、1302および補助羽根1303は、突起302からの付勢力を受けて、突起302の変位方向(マグネットロータ303の回転方向)に応じた方向に回動する。
【0087】
補助羽根1303の厚みは、絞り羽根410、420の厚みよりも小さい。補助羽根1303の厚みは、光路を通過する光を遮蔽することが可能であれば可能な限り小さくすることが可能となる。これによって、地板開口1306の開口径が大きく補助羽根1303を設けなければ小絞り開口を形成できない場合にも、光軸方向における地板開口205と小絞り開口の形成位置とを近づけることができる。これによって、光学性能の低下を抑制しつつ、小絞り開口を形成することができる。
【0088】
図17および図18は、絞り装置1300の概略構成および動作を示す説明図である。図17および図18に示したように、補助羽根1303は、絞り羽根開き位置から絞り羽根閉じ位置へ回動する際に、絞り羽根の後方を追いかけるようにして回動する。このような回動動作によって、補助羽根1303の回動量を、絞り羽根410の回動量よりも少なくすることができる。
【0089】
補助羽根1303は、地板開口1306のうち、絞り羽根410では覆いきれない部分を覆う位置に位置づけられる。絞り羽根410の絞り羽根閉じ位置は、小絞り開口1801を形成する位置に定められる。すなわち、絞り羽根開き位置から絞り羽根閉じ位置までの移動量を大幅に少なくすることは難しい。また、絞り羽根1301は、NDフィルタ405を備えた分の重量が加算されているため、アクチュエータ202の負荷を軽減するためには、絞り羽根1301のサイズは極力小さいことが好ましい。実施の形態2によれば、補助羽根1303を設けることによって、絞り羽根1301のサイズを小さくするとともに、重量を軽くすることができる。これによって、アクチュエータ202の負荷を軽減することができる。
【0090】
実施の形態2は、地板201に設けられた地板開口1306の開口径が、実施の形態1の地板201に設けられた地板開口501の開口径よりも大きい。地板開口1306の開口径(地板開口径)をA、地板201の外径をBとした場合、地板開口1306によって光路が形成されている際の2枚の絞り羽根1301、1302および補助羽根1303を収容可能な領域(羽根収納スペース)Cは、C=(B−A)/2によってあらわされる。
【0091】
ここで、たとえば1枚の絞り羽根を用いて地板開口1306を覆うことが可能なサイズの絞り羽根があったと仮定する。このような仮定の絞り羽根のサイズは、地板開口1306を覆うために少なくとも直径がA以上となる。ここで、C<Aの関係が成立する場合、たとえば小絞り開口1801の非形成時などに絞り羽根を光路から退避させる際に、羽根収納スペース内に収納しきることができない。
【0092】
このような仮定の絞り羽根は、具体的には、たとえば仮定の絞り羽根が地板201の外径よりも外側に突出しないように仮定の絞り羽根を光路から退避させると、仮定の絞り羽根の一部が地板開口1306に干渉した状態となる。すなわち、仮定の絞り羽根によって光路が一部遮断されてしまう。また、このような仮定の絞り羽根は、具体的には、たとえば仮定の絞り羽根が地板開口1306に干渉しないように仮定の絞り羽根を光路から退避させると、仮定の絞り羽根の一部が、地板201の外径よりも外側に突出してしまう。すなわち、仮定の絞り羽根を筐体内に納めるために絞り装置1300が大きくなってしまう。
【0093】
実施の形態2の絞り羽根1301、1302および補助羽根1303は、地板開口径A、地板201の外径B、羽根収納スペースCの寸法に応じて、地板開口1306によって形成されている光路から退避した場合に、羽根収納スペースC内に収納可能となるように分割されている。これにより、地板開口径Aおよび地板201の外径Bの寸法、すなわち羽根収納スペースCの寸法にかかわらず、絞り羽根閉じ位置に位置づけられた場合に小絞り開口を形成し、小絞り開口を形成しない場合は光路から退避する退避位置に位置づけることができる。
【0094】
上述したように、実施の形態2によれば、絞り羽根1301、1302および補助羽根1303によって地板開口1306を閉塞し、小絞り開口1801を形成するため、地板開口1306の大きさや地板201の外径寸法などに左右されることなく、小絞り開口1801形成することができる。
【0095】
以上説明したように、これらの実施の形態1、2の絞り装置、レンズ装置および当該レンズ装置を用いた撮像装置100によれば、小型化を図りつつ、小絞り時の回折による影響を軽減することができる
【産業上の利用可能性】
【0096】
以上のように、本発明にかかるレンズ装置および撮像装置は、光量を段階的に調整する絞り装置、レンズ装置および撮像装置に有用であり、特に、コンパクトデジタルカメラなどの小型の撮像装置に用いる絞り装置、レンズ装置および撮像装置に適している。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】この発明にかかる実施の形態1のレンズ装置の概略構成を示す説明図である。
【図2】絞り装置の概略構成を示す説明図である。
【図3】回転軸および回転軸に設けられた各部を示す説明図である。
【図4】絞り装置の概略構成および動作を示す説明図(その1)である。
【図5】絞り装置の概略構成および動作を示す説明図(その2)である。
【図6】絞り羽根の形状を示す平面図(その1)である。
【図7】絞り羽根の形状を示す平面図(その2)である。
【図8】トップカバーを示す平面図である。
【図9】絞り装置の外観および動作を示す説明図(その1)である。
【図10】絞り装置の外観および動作を示す説明図(その2)である。
【図11】絞り装置の外観および動作を示す説明図(その3)である。
【図12】図3の断面図である。
【図13】この発明にかかる実施の形態2の絞り装置の概略構成を示す説明図である。
【図14】絞り羽根の形状を示す平面図(その3)である。
【図15】絞り羽根の形状を示す平面図(その4)である。
【図16】補助羽根の形状を示す平面図である。
【図17】絞り装置の概略構成および動作を示す説明図(その1)である。
【図18】絞り装置の概略構成および動作を示す説明図(その2)である。
【符号の説明】
【0098】
100 レンズ装置
105 絞り装置
201 地板
205 地板開口
410 絞り羽根
420 絞り羽根
501 小絞り開口
1301 絞り羽根
1302 絞り羽根
1306 地板開口
1801 小絞り開口
【技術分野】
【0001】
この発明は、絞り装置、レンズ装置および撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、たとえばコンパクトデジタルカメラなどの小型の撮像装置は、小絞り開口を有する小絞り部材を備えたものがあった。この小絞り部材は、たとえばシャッタ開口よりも開口径の小さい小絞り開口を備え、シャッタ開口において小絞り開口以外の領域を覆う形状を有している。シャッタ開口は、たとえば、撮像装置に対して最大光量を入射させる大きさで開口している。
【0003】
このような撮像装置は、具体的には、たとえば光量を絞る際にはシャッタ開口を覆う位置に小絞り部材を位置づけ、シャッタ開口で撮像をおこなう際には小絞り部材を光路から退避させる(たとえば、下記特許文献1を参照。)。また、このような撮像装置は、光路から退避させた絞り部材を収容する空間を有している。
【0004】
近年、カメラの小型化の要求にともない、レンズ鏡筒の外径寸法の小型化がおこなわれている。カメラの小型化の要求にともなってレンズ鏡筒の外径寸法を小型化した場合にも、光学性能を確保するため、レンズの開口径は可能な限り大口径化することが好ましい。上記特許文献1の技術では、レンズを大口径化した場合に、光路から退避させた小絞り部材を収容するスペースを確保することが難しい。
【0005】
これに対して、従来、たとえば小絞り開口を2枚の絞り羽根によって形成し、シャッタ開口で撮像をおこなう際には、2枚の絞り羽根を分割した状態で光路から退避させるようにした撮像装置があった(たとえば、下記特許文献2を参照。)。このような撮像装置は、上記の撮像装置と比較して、光路から退避させた状態の絞り部材を収容する空間を小さくすることができる。
【0006】
近年、たとえばデジタルカメラなどのように、フィルムに代わってCCDやCMOSなどの光電変換素子を用いて撮像する撮像装置が増加している。CCDは、フィルムと比較して回折の影響(たとえば小絞りボケなど)を受けやすい。このような不具合を防止するために、NDフィルタを備えているものが多くある。回折は、小絞り開口の形成時に生じるため、小絞り開口を形成可能な撮像装置がNDフィルタを備える必然性は高い。
【0007】
【特許文献1】特開2001−215553号公報
【特許文献2】特開2002−296637号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した特許文献2を含む従来の技術では、2枚の絞り羽根によって小絞り開口を形成するため、小型化を図ることはできるが、小絞り時に用いるNDフィルタを設けることが困難であるという問題があった。
【0009】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、小型化を図りつつ、小絞り時の回折による影響を軽減することができる絞り装置、レンズ装置および撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明にかかる絞り装置は、撮像用の光学素子に入射する光量を調節する絞り装置であって、所定位置に位置づけられた場合に、シャッタ開口よりも開口径の小さい小絞り開口を形成する複数の絞り羽根と、前記複数の絞り羽根を前記所定位置または前記シャッタ開口時の光路から退避する退避位置に位置づけるように、前記複数の絞り羽根を駆動する駆動手段と、前記複数の絞り羽根の中の一つの絞り羽根に設けられて、前記駆動手段により前記複数の絞り羽根を駆動することによって前記小絞り開口が形成された場合に、当該小絞り開口を覆う減光用フィルタと、を備えたことを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、複数の絞り羽根によって小絞り開口を形成することで、絞り羽根の収容に要する空間を小さくすることができる。また、複数の絞り羽根の中の一つの絞り羽根に減光用フィルタを設けることによって、小絞り時の光量を調整することができる。
【0012】
また、この発明にかかる絞り装置は、上記の発明において、前記一つの絞り羽根が、前記小絞り開口の外縁に占める割合が、その他の絞り羽根よりも大きくなるような形状を有しており、前記減光用フィルタは、前記一つの絞り羽根に接着されていることを特徴とする。この発明によれば、減光用フィルタを確実に接着することができ、減光用フィルタを安定して支持することができる。
【0013】
また、この発明にかかる絞り装置は、上記の発明において、前記駆動手段が、前記複数の絞り羽根が互いに摺動するように前記複数の絞り羽根を駆動し、前記減光用フィルタは、前記複数の絞り羽根のうち、最も外側の一つの絞り羽根の外側に設けられている。この発明によれば、複数の絞り羽根を摺動させた場合に減光用フィルタが傷つくことを防止できる。
【0014】
また、この発明にかかる絞り装置は、上記の発明において、前記複数の絞り羽根を摺動自在に支持する地板を備え、前記減光用フィルタは、前記一つの絞り羽根を間にして前記地板とは反対側に設けられていることを特徴とする。この発明によれば、複数の絞り羽根を地板に設けた場合にも、複数の絞り羽根を摺動させた場合に減光用フィルタが傷つくことを防止できる。
【0015】
また、この発明にかかる絞り装置は、上記の発明において、前記駆動手段が、前記複数の絞り羽根を、地板の外径範囲内で駆動することを特徴とする。この発明によれば、退避時における複数の絞り羽根を、地板の外径範囲内に収容することができる。
【0016】
また、この発明にかかる絞り装置は、上記の発明において、前記複数の絞り羽根が、前記退避位置側から各々が近接する方向に回動することで前記小絞り開口を形成することを特徴とする。この発明によれば、駆動手段にかかる負荷を分散することができる。
【0017】
また、この発明にかかる絞り装置は、上記の発明において、前記複数の絞り羽根は、前記小絞り開口を形成する開口形成羽根と、当該開口形成羽根とは別に、前記小絞り開口以外を閉塞するように前記シャッタ開口を覆う補助羽根と、から構成されていることを特徴とする。この発明によれば、シャッタ開口の大きさや地板の外径寸法などに左右されることなく、小絞り開口以外を閉塞するようにシャッタ開口を覆うことができる。
【0018】
また、この発明にかかるレンズ装置は、上記の絞り装置を備え、当該絞り装置を介して撮像用の光学素子に外光を入射させることを特徴とする。この発明によれば、小型化を図るとともに小絞り時の回折による影響を軽減することができるレンズ装置を得ることができる。
【0019】
また、この発明にかかる撮像装置は、上記のレンズ装置と、前記レンズ装置を介して受光した外光を光電変換する撮像用の光学素子と、を備えることを特徴とする。この発明によれば、撮像用の光学素子を用いた撮像装置において、小絞り時の回折による影響を軽減することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明にかかる絞り装置、レンズ装置および撮像装置によれば、小型化を図りつつ、小絞り時の回折による影響を軽減することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる絞り装置、レンズ装置および撮像装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0022】
(実施の形態1)
(レンズ装置の概略構成)
まず、図1を用いて、実施の形態1について説明する。図1は、この発明にかかる実施の形態1のレンズ装置の概略構成を示す説明図である。図1に示したように、実施の形態1のレンズ装置100は、鏡筒101と、第1〜第3レンズ群102〜104と、絞り装置105と、を備えている。
【0023】
鏡筒101は、光軸Cを軸心方向とする円筒形状を有している。鏡筒101は、撮像装置の本体に設けられたマウントなどに取り付けられる。撮像装置の本体内には、撮像素子が配置されている。撮像素子は、レンズ装置を介して受光した外光を光電変換し、入射光量に応じた電気信号を出力する。撮像素子は、具体的には、たとえばCCDなどによって実現される。撮像素子は、光の入射面が第3レンズ群104の焦点位置となる位置に設けられている。撮像装置の本体、マウントおよび撮像素子については、ここでは図示および説明を省略する。
【0024】
鏡筒101は、径の異なる3つの鏡筒106〜108を同心円上に重ね合わせることによって構成されている。各鏡筒106〜108は、隣接する鏡筒に対してスライド可能に設けられている。そして、鏡筒101は、各鏡筒106〜108を隣接する鏡筒に対してスライドさせることにより、光軸方向における寸法を伸縮させることができる。実施の形態1のレンズ装置は、沈胴タイプのレンズ装置である。
【0025】
鏡筒101内には、第1〜第3レンズ群102〜104が設けられている。第1レンズ群102は、鏡筒106内に設けられている。第2レンズ群103は、鏡筒107内に設けられている。第3レンズ群104は、鏡筒108内に設けられている。撮像装置の本体に対する各第1〜第3レンズ群102〜104の位置は、撮像装置の本体に対する各鏡筒106〜108の位置を変化させることによっても調整することができる。
【0026】
第1〜第3レンズ群102〜104は、光軸に沿って、被写体側から順に、第1レンズ群102、第2レンズ群103、第3レンズ群104の順に配列されている。第1レンズ群102は、被写体側に配置される。第3レンズ群104は、鏡筒108内において、鏡筒108に対して相対的に移動可能とされている。また、第3レンズ群104は、鏡筒108の軸心すなわち光軸方向に移動可能とされている。第3レンズ群104の移動機構については、ここでは説明を省略する。
【0027】
絞り装置105は、光軸方向において第1レンズ群102と第2レンズ群103との間に、設けられている。絞り装置105は、第1レンズ群102側から絞り装置105を通過して第2レンズ群103へ入射する光量を調整する(図2〜図8を参照)。
【0028】
(絞り装置の概略構成)
つぎに、絞り装置105について説明する。図2は、絞り装置105の概略構成を示す説明図である。絞り装置105は、地板201と、アクチュエータ202と、2枚の絞り羽根(図4における符号410、420を参照)と、を備えている。図2においては、地板201およびアクチュエータ202の関係を示している。また、図2には、地板201を2枚の絞り羽根が設けられている側(物体側)から見た状態が示されている。
【0029】
図2において、地板201は、円形の板状部材によって実現されている。地板201は、地板開口(シャッタ開口)205を備えている。地板開口205は、絞り装置105において透過可能な最大光量の光を通過させる。地板開口205は、地板201を光軸方向に貫通している。地板201は、絞り装置105において、地板開口205の中心が光軸を通るように設けられる。
【0030】
アクチュエータ202は、地板201の一面側に設けられている。アクチュエータ202は、具体的には、たとえばCCDやCMOSなどの撮像素子が配置される側に設けられている。アクチュエータ202は、地板201に対して、2枚の絞り羽根が設けられている側とは反対側に設けられている。アクチュエータ202は、回転軸206と、回転体207と、永久磁石であるマグネットロータ(図3における符号303を参照)と、コイル208と、コイルヨーク(鉄芯)209と、を備えている。
【0031】
回転軸206は、地板201の板面に直交する方向を軸心方向として延出しており、軸心周りに回転可能に設けられている。回転体207は、回転軸206に設けられている。実施の形態1においては、回転軸206と回転体207とは一体成形されている。また、回転体207は、回転軸に固定されており、回転軸206の回転にともなって、回転軸芯周りを回転軸206の回転方向と同一方向に回転する。
【0032】
ここで、図3は、回転軸206および回転軸206に設けられた各部を示す説明図である。図3において、回転体207は、回転軸206から回転軸206の半径方向に延出するアーム部301と、アーム部301の先端部から回転軸206の延出方向と並行に突出する突起302と、を備えている。アーム部301および突起302は、回転体207の回転に連動して地板201の板面に沿って変位する。
【0033】
マグネットロータ303は、回転軸206に設けられている。また、マグネットロータ303は、回転軸206とは別材料によって形成されている。マグネットロータ303は、具体的には、たとえば磁性体によって形成されている。マグネットロータ303は、略円筒状を有する磁性体であって、内周面を回転軸の外周面に接着することによって回転軸206に固定されている。回転軸206にマグネットロータ303を固定する方法については説明を後述する(図12を参照)。
【0034】
コイル208は、通電されることにより磁力を発生させ、コイルヨーク209を電磁石として機能させる。コイルヨーク209は、コイル208を支持するとともに、回転体207が回転軸芯周りに回転自在となるように回転体207を支持する。回転軸206は、コイル208に通電され、コイルヨーク209が電磁石として機能しているときに、マグネットロータ303が発生させる磁力方向に応じた方向に回転する。
【0035】
アクチュエータ202は、レンズ装置100が備える制御部が出力した制御信号に基づいて駆動する。レンズ装置100が備える制御部については、ここでは図示および説明を省略する。アクチュエータ202は、レンズ装置100が備える制御部からの制御信号が入力された場合に動作する。具体的には、たとえばコイル208への通電をおこなってマグネットロータ303を所定方向に所定角度回転させる。マグネットロータ303は、絞り羽根開き位置から絞り羽根閉じ位置へ、あるいは、絞り羽根閉じ位置から絞り羽根開き位置へ回転する。
【0036】
回転体207は、マグネットロータ303の回転にともなって回転軸206とともに所定方向に所定角度回転する。具体的には、たとえば回転体207は、マグネットロータ303の回転方向と同一方向に回転し、絞り羽根開き位置から絞り羽根閉じ位置へ、あるいは、絞り羽根閉じ位置から絞り羽根開き位置へ回転する。突起302は、回転体207の回転にともなって回転体207の回転方向に応じた位置に変位する。具体的には、たとえば突起302は、回転体207の回転方向と同一方向に変位し、絞り羽根開き位置から絞り羽根閉じ位置へ、あるいは、絞り羽根閉じ位置から絞り羽根開き位置へ変位する。
【0037】
図4および図5は、絞り装置105の概略構成および動作を示す説明図である。図4および図5においては、地板201および2枚の絞り羽根410、420の関係を示している。図4および図5において、2枚の絞り羽根410、420は、各々回動軸401,402を介して地板201に連結されており、各々地板201の板面に沿って回動自在とされている。絞り羽根410は、絞り羽根420よりも地板201から離間する側に設けられている。2枚の絞り羽根410、420は、各々板形状を有しており、一部が重ねあわされた状態で地板201に設けられている。
【0038】
各絞り羽根410、420は、長孔403、404を備えている。長孔403、404は、回転体207が備える突起302と係合している。突起302は、回転体207の回転にともなって変位する際に、長孔403、404を介して2枚の絞り羽根410、420を付勢する。
【0039】
2枚の絞り羽根410、420は、突起302からの付勢力を受けて、突起302の変位方向(マグネットロータ303の回転方向)に応じた方向に回動する。2枚の絞り羽根410、420は、それぞれ、絞り羽根開き位置から絞り羽根閉じ位置へ、あるいは、絞り羽根閉じ位置から絞り羽根開き位置へ回動する。2枚の絞り羽根410、420の回動方向は、相反する方向とされている。突起302は、2枚の絞り羽根410、420の回動に際して、長孔403、404内をスライドしながら変位する。
【0040】
2枚の絞り羽根410、420は、重ねあわされた状態で地板201に設けられており、互いに対向する面を摺動させながら回動する。これにより、2枚の絞り羽根410、420は、2枚の絞り羽根410、420の間および地板201と絞り羽根420との間に隙間を形成することなく回動する。すなわち、2枚の絞り羽根410、420の間および地板201と絞り羽根420との間に隙間が形成されないので、2枚の絞り羽根410、420の位置にかかわらず、2枚の絞り羽根410、420の間および地板201と絞り羽根420との間から光がもれることがない。
【0041】
2枚の絞り羽根410、420は、図4に示した絞り羽根開き位置から、それぞれ矢印A、A’で示した方向に回動し、絞り羽根閉じ位置(所定位置)に位置付けられる。絞り羽根閉じ位置に向かって回動する2枚の絞り羽根410、420の回動方向は、相反する方向とされている。そして、2枚の絞り羽根410、420は、絞り羽根閉じ位置に位置付けられた場合に、小絞り開口501を形成する。小絞り開口501は、地板開口205の開口径よりも開口径が小さい。小絞り開口501は、光軸方向に貫通している。また、2枚の絞り羽根410、420は、絞り装置105において、中心が図1に示した光軸Cを通るような小絞り開口501を形成する。
【0042】
ここで、各絞り羽根410、420の形状について説明する。図6および図7は、絞り羽根410、420の形状を示す平面図である。図6および図7に示したように、2枚の絞り羽根410、420は、それぞれが小絞り開口501の外縁部の一部を形成する。そして、小絞り開口501の外縁部において、絞り羽根410が占める割合は、絞り羽根420が占める割合より大きい。すなわち、小絞り開口501の外縁部において、絞り羽根410が占める割合は、小絞り開口501の半周分より大きい。
【0043】
また、2枚の絞り羽根410、420は、図5の位置から矢印B、B’で示した方向に回動し、絞り羽根開き位置に位置付けられる。絞り羽根開き位置に向かって回動する2枚の絞り羽根410、420の回動方向は、相反する方向とされている。2枚の絞り羽根410、420は、絞り羽根開き位置に位置付けられた場合に、地板開口205から退避した位置に位置付けられる。すなわち、2枚の絞り羽根410、420は、絞り羽根開き位置に位置付けられた場合に、地板開口205によって形成される光路に干渉しない位置に位置付けられる。
【0044】
実施の形態1においては、このように2枚の絞り羽根410、420の回動方向を相反する方向とすることにより、2枚の絞り羽根410、420を同一方向に回動させる場合と比較して、装置の姿勢によってアクチュエータ202にかかる負荷を分散させることができる。これによって、装置の姿勢によらずアクチュエータ202の駆動量を抑制し、安定した小絞り開口を形成することができる。
【0045】
また、実施の形態1においては、2枚の絞り羽根410、420を互いに接近する方向に回動させ、小絞り開口501が形成された時点における各絞り羽根410、420の位置を、絞り羽根閉じ位置としている。このため、2枚の絞り羽根410、420の回動角度を最小限にして小絞り開口を形成することができる。すなわち、実施の形態1によれば、アクチュエータ202の駆動量を最小限にして小絞り開口を形成することができる。なお、2枚の絞り羽根410、420を互いに接近する方向に回動させ、交差した後に小絞り開口501を形成するようにしてもよい。
【0046】
絞り羽根410は、減光用フィルタとしてのND(Neutral Density)フィルタ405を備えている。NDフィルタ405は、色の中立性を維持したまま、レンズに入る光の量を減少させる。
【0047】
NDフィルタ405は、小絞り開口501の開口面積よりも大きい。NDフィルタ405は、絞り羽根410が絞り羽根閉じ位置に位置付けられた場合に、小絞り開口を覆うように設けられている。NDフィルタ405の大きさは、絞り羽根410が絞り羽根閉じ位置に位置付けられて、NDフィルタ405が小絞り開口501を覆った状態において、小絞り開口501をオフセットした最小の大きさとされている。
【0048】
また、NDフィルタ405は、絞り羽根410が絞り羽根開き位置に位置付けられた場合に、地板開口205から退避した位置、すなわち、地板開口205によって形成される光路に干渉しない位置に位置付けられる。
【0049】
NDフィルタ405は、熱溶融性を有する接着剤を用いた熱圧着によって絞り羽根410に取り付けられている。熱圧着箇所は、絞り羽根410の回動に際して移動するNDフィルタ405の、回動軸401から最も離間する位置の移動軌跡上に設けられている。このように、絞り羽根410は、小絞り開口501の外縁部の一部の形成に加えて、NDフィルタ405の保持部材としても機能する。
【0050】
NDフィルタ405は、絞り羽根410を間にして絞り羽根420とは反対側に設けられている。このため、重ね合わされた2枚の絞り羽根410、420が回動した場合に、NDフィルタ405が絞り羽根420に擦れるなどしてNDフィルタ405が傷つくことを防止することができる。絞り羽根410、420は、トップカバー(図8における符号801を参照)によって覆われている。
【0051】
絞り羽根410は、光軸方向における寸法、すなわち厚みが、絞り羽根420の厚みよりも大きい。これによって、絞り羽根410は、NDフィルタ405を安定して支持することができる。絞り羽根420の厚みは、地板開口205において光を遮蔽することができる厚さ(材質)であれば、可能な限り小さくしてもよい。これによって、光軸方向における地板開口205と小絞り開口501の形成位置とを近づけることができる。これによって、光学性能の低下を抑制しつつ、小絞り開口501を形成することができる。
【0052】
図8は、トップカバーを示す平面図である。図8において、絞り装置105は、絞り羽根をカバーするトップカバー801を備えている。トップカバー801は、2枚の絞り羽根410、420を覆った状態で地板201に対向するように設けられる。トップカバー801は、地板201の外周縁近傍において均等に配置された3箇所に、トップカバー801を地板201に固定するためのネジが挿入されるネジ孔802が形成されている。トップカバー801は、このネジ孔802に挿入されるネジ(図9〜図11における符号901を参照)を介して地板201に固定される。
【0053】
なお、実施の形態1においては、ネジを用いてトップカバー801を地板201に固定するようにしたが、これに限るものではない。トップカバー801は、たとえば地板201あるいは鏡筒101に爪部材などを設け、この爪部材にトップカバー801の縁部分を引っ掛けることによってトップカバー801を地板201に固定するようにしてもよい。
【0054】
この場合、たとえばある程度の弾性を有する材料によって爪部材を形成し、トップカバー801を地板201あるいは鏡筒101に押し付ける際にこの爪部材を弾性変形させ、変形が復帰した時点で爪部材にトップカバー801の縁部分を引っ掛ける、いわゆるハメコミ式の取り付け方法を用いて、トップカバー801を地板201に固定するようにしてもよい。このようなハメコミ方式の取り付け方法を用いてトップカバー801を地板201に固定することにより、トップカバー801を容易に固定することができる。
【0055】
トップカバー801は、長孔803とトップカバー開口804とを備えている。長孔803とトップカバー開口804は、トップカバー801を光軸方向に貫通している。長孔803は、光軸方向において、アクチュエータ202の駆動にともなう突起の移動軌跡に重複する位置に設けられている。トップカバー開口804は、光軸方向において、NDフィルタ405の移動軌跡に重複する位置に設けられている。また、トップカバー開口804は、地板開口205よりも大きく開口している。
【0056】
また、トップカバー801は、孔805、806を備えている。孔805、806は、回動軸401、402の上端部を外部に開放し、回動軸401、402とトップカバー801とが擦れることを防止する。孔805、806を設けることにより、回動軸401、402とトップカバー801との摩擦を考慮することなく、トップカバー801の光軸方向の寸法を決定することができる。すなわち、回動軸401、402とトップカバー801との摩擦を回避するための遊び分を差し引いて、トップカバー801の光軸方向の寸法を小さくすることができる。
【0057】
図9〜図11は、絞り装置105の外観および動作を示す説明図である。図9において、2枚の絞り羽根410、420が絞り羽根開き位置に位置づけられている場合、突起302は長孔803の一端側に位置し、NDフィルタ405は、トップカバー開口804の一端側に位置している。2枚の絞り羽根410、420が絞り羽根開き位置に位置づけられている場合、NDフィルタ405は、トップカバー開口804において小絞り開口501に重複しない側の一端側に位置している。
【0058】
図10において、絞り羽根開き位置に位置づけられている2枚の絞り羽根410、420が、絞り羽根閉じ位置に向けて移動するように、アクチュエータ202を駆動した場合、突起302は長孔803内を一端側から他端側にスライドする。2枚の絞り羽根410、420は、小絞り開口501の外周縁を形成する部分を互いに接近させながら、地板201の板面に沿って回動する。
【0059】
図11において、2枚の絞り羽根410、420が絞り羽根閉じ位置に位置づけられた場合、突起302は長孔803の一端側から他端側に移動する。また、2枚の絞り羽根410、420が絞り羽根閉じ位置に位置づけられた場合、NDフィルタ405は、トップカバー開口804において小絞り開口501を覆う位置に位置付けられる。
【0060】
図9〜図11に示したように、トップカバー開口804を有するトップカバー801を設けることにより、NDフィルタ405の厚みを考慮することなく、トップカバー801の光軸方向の寸法を決定することができる。すなわち、NDフィルタ405の厚みを差し引いて、トップカバー801の光軸方向の寸法をNDフィルタ405の厚み分だけ小さくすることができる。
【0061】
また、トップカバー801を設けることにより、2枚の絞り羽根410、420を地板201側に付勢することができる。また、トップカバー801を設けることにより、絞り羽根410あるいは絞り羽根420が反り返るなどして、2枚の絞り羽根410、420の間あるいは2枚の絞り羽根410、420と地板201との間に隙間が生じた場合にも、当該隙間から光りがもれることを防止することができる。これによって、光学性能を低下させることなくNDフィルタ405を利用することができる。
【0062】
(マグネットロータ303の固定方法)
つぎに、マグネットロータ303の固定方法について説明する。図12は、図3の断面図である。図12には、図3に示した回転軸、回転体およびマグネットロータ303を、回動軸の軸心を通る平面で切断した断面が示されている。
【0063】
上述したように、マグネットロータ303は、回転軸206とは別材料によって形成されている。このため、絞り装置105の組み立てに際しては、マグネットロータ303を回転軸に固定する。実施の形態1においては、回転軸206の外周面のうち、マグネットロータ303が取り付けられる位置1200をあらして、凹凸(起伏)が生じた状態とする。回転軸の外周面は、具体的には、たとえばレーザーマーカーを用いて、彫刻文字など特定の印字パターン、アヤメ、格子模様などをマーキングすることによってあらす。
【0064】
レーザーマーカーは、レーザー光を用いてマーキング対象とする部材に熱を加え、マーキング対象とする部材に彫刻文字などをマーキングする装置である。レーザーマーカーは、たとえばマーキング対象とする部材が樹脂製であれば、当該樹脂の表面を溶かしたり焦がしたり変色させたりすることによってマーキングする。また、レーザーマーカーは、たとえばマーキング対象とする部材が紙製であれば、樹脂と同様に表面を焦がすことによってマーキングする。マーキング対象とする部材は、この他に、たとえばめっきが施された金属、印刷が施された紙、金属、ガラスなどであってもよく、特に材料を限定するものではない。
【0065】
つぎに、レーザーマーカーで表面をあらした位置1200に接着剤を塗布する。接着剤は、具体的には、たとえばディスペンサーなどを用いて塗布する。また、接着剤は、具体的には、たとえば紫外線硬化型の接着剤を用いる。また、接着剤は、具体的には、たとえば嫌気性を有し、硬化時間が短いシアノアクリレート系の接着剤を用いることができる。
【0066】
そして、接着剤を塗布した後に、マグネットロータ303の内径に回転軸206を挿入し、マグネットロータ303を回転軸206に固定する。紫外線硬化型の接着剤を用いる場合、塗布した接着剤の硬化方法は、たとえば作業者が手作業で紫外線を照射してもよいし、UV炉を経由するラインを採用し自動的に紫外線を照射するようにしてもよい。シアノアクリレート系の接着剤を用いることにより、硬化時間の短縮を図ることができる。
【0067】
紫外線硬化型の接着剤を用いる場合、回転軸206においてマグネットロータ303が固定される位置1200に、テーパ形状を設けてもよい。紫外線硬化型の接着剤を用いて透明な回転体を接着する場合、過剰に塗布した接着剤がそのまま硬化した場合にも液だれ状態で硬化していることを発見することが難しく、見落としてしまうことがある。液だれ状態で硬化した場合、その液だれ箇所が発見しづらい。液だれ状態のまま絞り装置105に組み込んだ場合は、回転不良などの不具合が発生するため、結局は製造しなおさなくてはならない。
【0068】
これに対して、実施の形態1のように、回転軸206の外周面にテーパ形状を設けること、接着剤を優先的にテーパ形状部分に納めることができ、接着剤の液だれによる回転不良などの不具合の発生を効果的に抑制することができる。
【0069】
このように、本来マーキング用途に使用しているレーザーマーカーを流用して回転軸206の表面をあらし、その後接着剤を用いて回転軸206にマグネットロータ303を固定することによって、回転軸206やマグネットロータ303を形成する材料に左右されることなく接着強度を高めることができる。また、回転軸206やマグネットロータ303を形成する材料を接着剤に応じて変更することなく、接着強度を高めることができる。
【0070】
また、レーザーマーカーは、絞り羽根410にNDフィルタ405を取り付ける際に、NDフィルタ405を取り付けるための接着剤が塗布される位置の表面性をあらすこともできる。絞り羽根410には、絞り羽根420に対する摺動性(すべり性)の向上を図るため、摺動用潤滑処理が施されていることがある。このような場合、接着剤が絞り羽根に接着しにくく、NDフィルタ405の接着不良が考えられる。また、一度接着したNDフィルタ405であっても脱離し易くなる。このような絞り羽根に対して、レーザーマーカーを用いて接着剤を塗布する部分の表面性をあらすことにより、絞り羽根410に対する接着剤の接着性を高め、絞り羽根にNDフィルタ405を確実に接着することができる。
【0071】
実施の形態1の絞り装置105、この絞り装置105を用いたレンズ装置100およびレンズ装置100を用いた撮像装置によれば、2枚の絞り羽根410、420によって小絞り開口501を形成することで、絞り羽根410、420の収容に要する空間を小さくすることができる。また、2枚の絞り羽根410、420のうち絞り羽根410にNDフィルタ405を設けることによって、小絞り時の回折による影響を軽減することができる。すなわち、実施の形態1の絞り装置105、この絞り装置105を用いたレンズ装置100およびレンズ装置100を用いた撮像装置によれば、小型化を図りつつ、小絞り時の回折による影響を軽減することができる。
【0072】
また、実施の形態1の絞り装置105、この絞り装置105を用いたレンズ装置100およびレンズ装置100を用いた撮像装置によれば、絞り羽根410が、小絞り開口501の外縁に占める割合が、絞り羽根420よりも大きくなるような形状を有しており、NDフィルタ405は、一つの絞り羽根410に接着剤を介して接着されている。これにより、NDフィルタ405を確実に接着し、NDフィルタ405を安定して支持することができる。また、これによってNDフィルタ405の脱落を防止することができる。
【0073】
なお、NDフィルタ405と絞り羽根410とは、たとえば溶剤型の接着剤など常温で硬化する接着剤、紫外線硬化型の接着剤、シアノアクリレート系の接着剤など、各種の接着剤を用いて接着してもよい。また、NDフィルタ405と絞り羽根410との接着は、接着剤を用いた接着に限るものではない。
【0074】
NDフィルタ405と絞り羽根410とは、たとえばレーザー光を用いてNDフィルタ405または絞り羽根410を高温で溶解し、NDフィルタ405と絞り羽根410とを溶着することによって接着してもよい。また、NDフィルタ405と絞り羽根410とは、たとえばNDフィルタ405および絞り羽根410に高圧力を加え、NDフィルタ405と絞り羽根410とを圧着によって接着してもよい。
【0075】
また、実施の形態1の絞り装置105、この絞り装置105を用いたレンズ装置100およびレンズ装置100を用いた撮像装置によれば、アクチュエータ202によって互いに摺動するように複数の絞り羽根410、420のうち、最も外側の絞り羽根410の外側にNDフィルタ405が設けられているため、絞り羽根410、420を摺動させた場合にNDフィルタ405が傷つくことを防止できる。
【0076】
また、実施の形態1の絞り装置105、この絞り装置105を用いたレンズ装置100およびレンズ装置100を用いた撮像装置によれば、NDフィルタ405は、地板201とは反対側に設けられているため、絞り羽根410、420を摺動させた場合にNDフィルタ405が傷つくことを防止できる。
【0077】
また、実施の形態1の絞り装置105、この絞り装置105を用いたレンズ装置100およびレンズ装置100を用いた撮像装置によれば、NDフィルタ405が脱落した場合は、絞り羽根410を絞り装置105に装着したままで、NDフィルタ405が脱落した絞り羽根410を、NDフィルタ405が取り付けられた新たな絞り羽根410に取り替えることが可能になる。あるいは、絞り羽根410を絞り装置105に装着したままで、NDフィルタ405が脱落した絞り羽根410に、NDフィルタ405を接着しなおすことができる。
【0078】
また、実施の形態1の絞り装置105、この絞り装置105を用いたレンズ装置100およびレンズ装置100を用いた撮像装置によれば、アクチュエータ202が、絞り羽根410、420を、地板201の外径範囲内で駆動するため、絞り羽根410、420を光路から退避させた際に、絞り羽根410、420を、地板201の外径範囲内に収容することができる。
【0079】
また、実施の形態1の絞り装置105、この絞り装置105を用いたレンズ装置100およびレンズ装置100を用いた撮像装置によれば、絞り羽根410、420が、絞り羽根閉じ位置と絞り羽根開き位置との間を移動する際に、互いに相反する方向に回動するので、装置の姿勢位置によるアクチュエータ202にかかる負荷を分散することができる。
【0080】
そして、実施の形態1の撮像装置は、上述した絞り装置105を備えるレンズ装置100を介して受光した外光をCCDやCMOSなどの光電変換素子によって受光するデジタルカメラであるため、小型でかつ小絞り時の回折による影響を軽減した、良好な画像を撮像することができる。
【0081】
(実施の形態2)
つぎに、この発明にかかる実施の形態2について説明する。図13は、この発明にかかる実施の形態2の絞り装置の概略構成を示す説明図である。図13に示したように、実施の形態2の絞り装置1300は、地板201に設けられた2枚の絞り羽根1301、1302および補助羽根1303を備えている。
【0082】
2枚の絞り羽根1301、1302および補助羽根1303は、絞り羽根閉じ位置に位置付けられた場合に、小絞り開口(図18における符号1801を参照)を形成する。小絞り開口は、地板開口1306のうち、小絞り開口以外の領域を覆うことによって形成される。2枚の絞り羽根410、420は、それぞれが小絞り開口の外縁部の一部を形成する。一方、補助羽根1303は、小絞り開口の形成には関与しない。すなわち、小絞り開口は、2枚の絞り羽根410、420によって形成される。
【0083】
補助羽根1303は、回動軸401を介して地板201に連結されており、地板201の板面に沿って回動自在とされている。また、補助羽根1303は、地板201と絞り羽根1302との間に位置するように設けられている。すなわち、2枚の絞り羽根1301、1302および補助羽根1303は、地板201側から順に、補助羽根1303、絞り羽根1302、絞り羽根1301の順序で設けられている。
【0084】
ここで、絞り羽根1301、1302および補助羽根1303の形状について説明する。図14および図15は、絞り羽根1301、1302の形状を示す平面図である。図16は、補助羽根1303の形状を示す平面図である。図14および図15に示したように、2枚の絞り羽根1301、1302は、それぞれが小絞り開口の外縁部の一部を形成する形状を有している。小絞り開口の外縁部は、補助羽根1303の有無あるいは補助羽根1303の枚数にかかわらず、2枚の絞り羽根1301、1302によって形成される。
【0085】
補助羽根1303は、奇数枚設ける場合は、小絞り開口の外縁部において占める割合が大きい方の絞り羽根(実施の形態2では、絞り羽根1301)側に設けられる。補助羽根1303は、小絞り開口の外縁部に臨む部分は有していない。補助羽根1303は、長孔1601を備えている。長孔1601は、回転体207が備える突起302と係合している。
【0086】
突起302は、回転体207の回転にともなって変位する際に、長孔1601を介して2枚の絞り羽根1301、1302および補助羽根1303を付勢する。2枚の絞り羽根1301、1302および補助羽根1303は、突起302からの付勢力を受けて、突起302の変位方向(マグネットロータ303の回転方向)に応じた方向に回動する。
【0087】
補助羽根1303の厚みは、絞り羽根410、420の厚みよりも小さい。補助羽根1303の厚みは、光路を通過する光を遮蔽することが可能であれば可能な限り小さくすることが可能となる。これによって、地板開口1306の開口径が大きく補助羽根1303を設けなければ小絞り開口を形成できない場合にも、光軸方向における地板開口205と小絞り開口の形成位置とを近づけることができる。これによって、光学性能の低下を抑制しつつ、小絞り開口を形成することができる。
【0088】
図17および図18は、絞り装置1300の概略構成および動作を示す説明図である。図17および図18に示したように、補助羽根1303は、絞り羽根開き位置から絞り羽根閉じ位置へ回動する際に、絞り羽根の後方を追いかけるようにして回動する。このような回動動作によって、補助羽根1303の回動量を、絞り羽根410の回動量よりも少なくすることができる。
【0089】
補助羽根1303は、地板開口1306のうち、絞り羽根410では覆いきれない部分を覆う位置に位置づけられる。絞り羽根410の絞り羽根閉じ位置は、小絞り開口1801を形成する位置に定められる。すなわち、絞り羽根開き位置から絞り羽根閉じ位置までの移動量を大幅に少なくすることは難しい。また、絞り羽根1301は、NDフィルタ405を備えた分の重量が加算されているため、アクチュエータ202の負荷を軽減するためには、絞り羽根1301のサイズは極力小さいことが好ましい。実施の形態2によれば、補助羽根1303を設けることによって、絞り羽根1301のサイズを小さくするとともに、重量を軽くすることができる。これによって、アクチュエータ202の負荷を軽減することができる。
【0090】
実施の形態2は、地板201に設けられた地板開口1306の開口径が、実施の形態1の地板201に設けられた地板開口501の開口径よりも大きい。地板開口1306の開口径(地板開口径)をA、地板201の外径をBとした場合、地板開口1306によって光路が形成されている際の2枚の絞り羽根1301、1302および補助羽根1303を収容可能な領域(羽根収納スペース)Cは、C=(B−A)/2によってあらわされる。
【0091】
ここで、たとえば1枚の絞り羽根を用いて地板開口1306を覆うことが可能なサイズの絞り羽根があったと仮定する。このような仮定の絞り羽根のサイズは、地板開口1306を覆うために少なくとも直径がA以上となる。ここで、C<Aの関係が成立する場合、たとえば小絞り開口1801の非形成時などに絞り羽根を光路から退避させる際に、羽根収納スペース内に収納しきることができない。
【0092】
このような仮定の絞り羽根は、具体的には、たとえば仮定の絞り羽根が地板201の外径よりも外側に突出しないように仮定の絞り羽根を光路から退避させると、仮定の絞り羽根の一部が地板開口1306に干渉した状態となる。すなわち、仮定の絞り羽根によって光路が一部遮断されてしまう。また、このような仮定の絞り羽根は、具体的には、たとえば仮定の絞り羽根が地板開口1306に干渉しないように仮定の絞り羽根を光路から退避させると、仮定の絞り羽根の一部が、地板201の外径よりも外側に突出してしまう。すなわち、仮定の絞り羽根を筐体内に納めるために絞り装置1300が大きくなってしまう。
【0093】
実施の形態2の絞り羽根1301、1302および補助羽根1303は、地板開口径A、地板201の外径B、羽根収納スペースCの寸法に応じて、地板開口1306によって形成されている光路から退避した場合に、羽根収納スペースC内に収納可能となるように分割されている。これにより、地板開口径Aおよび地板201の外径Bの寸法、すなわち羽根収納スペースCの寸法にかかわらず、絞り羽根閉じ位置に位置づけられた場合に小絞り開口を形成し、小絞り開口を形成しない場合は光路から退避する退避位置に位置づけることができる。
【0094】
上述したように、実施の形態2によれば、絞り羽根1301、1302および補助羽根1303によって地板開口1306を閉塞し、小絞り開口1801を形成するため、地板開口1306の大きさや地板201の外径寸法などに左右されることなく、小絞り開口1801形成することができる。
【0095】
以上説明したように、これらの実施の形態1、2の絞り装置、レンズ装置および当該レンズ装置を用いた撮像装置100によれば、小型化を図りつつ、小絞り時の回折による影響を軽減することができる
【産業上の利用可能性】
【0096】
以上のように、本発明にかかるレンズ装置および撮像装置は、光量を段階的に調整する絞り装置、レンズ装置および撮像装置に有用であり、特に、コンパクトデジタルカメラなどの小型の撮像装置に用いる絞り装置、レンズ装置および撮像装置に適している。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】この発明にかかる実施の形態1のレンズ装置の概略構成を示す説明図である。
【図2】絞り装置の概略構成を示す説明図である。
【図3】回転軸および回転軸に設けられた各部を示す説明図である。
【図4】絞り装置の概略構成および動作を示す説明図(その1)である。
【図5】絞り装置の概略構成および動作を示す説明図(その2)である。
【図6】絞り羽根の形状を示す平面図(その1)である。
【図7】絞り羽根の形状を示す平面図(その2)である。
【図8】トップカバーを示す平面図である。
【図9】絞り装置の外観および動作を示す説明図(その1)である。
【図10】絞り装置の外観および動作を示す説明図(その2)である。
【図11】絞り装置の外観および動作を示す説明図(その3)である。
【図12】図3の断面図である。
【図13】この発明にかかる実施の形態2の絞り装置の概略構成を示す説明図である。
【図14】絞り羽根の形状を示す平面図(その3)である。
【図15】絞り羽根の形状を示す平面図(その4)である。
【図16】補助羽根の形状を示す平面図である。
【図17】絞り装置の概略構成および動作を示す説明図(その1)である。
【図18】絞り装置の概略構成および動作を示す説明図(その2)である。
【符号の説明】
【0098】
100 レンズ装置
105 絞り装置
201 地板
205 地板開口
410 絞り羽根
420 絞り羽根
501 小絞り開口
1301 絞り羽根
1302 絞り羽根
1306 地板開口
1801 小絞り開口
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像用の光学素子に入射する光量を調節する絞り装置であって、
所定位置に位置づけられた場合に、シャッタ開口よりも開口径の小さい小絞り開口を形成する複数の絞り羽根と、
前記複数の絞り羽根を前記所定位置または前記シャッタ開口時の光路から退避する退避位置に位置づけるように、前記複数の絞り羽根を駆動する駆動手段と、
前記複数の絞り羽根の中の一つの絞り羽根に設けられて、前記駆動手段により前記複数の絞り羽根を駆動することによって前記小絞り開口が形成された場合に、当該小絞り開口を覆う減光用フィルタと、
を備えたことを特徴とする絞り装置。
【請求項2】
前記一つの絞り羽根は、前記小絞り開口の外縁に占める割合が、その他の絞り羽根よりも大きくなるような形状を有しており、
前記減光用フィルタは、前記一つの絞り羽根に接着されていることを特徴とする請求項1に記載の絞り装置。
【請求項3】
前記駆動手段は、前記複数の絞り羽根が互いに摺動するように前記複数の絞り羽根を駆動し、
前記減光用フィルタは、前記複数の絞り羽根のうち、最も外側の一つの絞り羽根の外側に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の絞り装置。
【請求項4】
前記複数の絞り羽根を摺動自在に支持する地板を備え、
前記減光用フィルタは、前記一つの絞り羽根を間にして前記地板とは反対側に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の絞り装置。
【請求項5】
前記駆動手段は、前記複数の絞り羽根を、地板の外径範囲内で駆動することを特徴とする請求項4に記載の絞り装置。
【請求項6】
前記複数の絞り羽根は、前記退避位置側から各々が近接する方向に回動することで前記小絞り開口を形成することを特徴とする請求項1に記載の絞り装置。
【請求項7】
前記複数の絞り羽根は、前記小絞り開口を形成する開口形成羽根と、当該開口形成羽根とは別に、前記小絞り開口以外を閉塞するように前記シャッタ開口を覆う補助羽根と、から構成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の絞り装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一つに記載の絞り装置を備え、当該絞り装置を介して撮像用の光学素子に外光を入射させることを特徴とするレンズ装置。
【請求項9】
請求項8に記載のレンズ装置と、
前記レンズ装置を介して受光した外光を光電変換する撮像用の光学素子と、
を備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項1】
撮像用の光学素子に入射する光量を調節する絞り装置であって、
所定位置に位置づけられた場合に、シャッタ開口よりも開口径の小さい小絞り開口を形成する複数の絞り羽根と、
前記複数の絞り羽根を前記所定位置または前記シャッタ開口時の光路から退避する退避位置に位置づけるように、前記複数の絞り羽根を駆動する駆動手段と、
前記複数の絞り羽根の中の一つの絞り羽根に設けられて、前記駆動手段により前記複数の絞り羽根を駆動することによって前記小絞り開口が形成された場合に、当該小絞り開口を覆う減光用フィルタと、
を備えたことを特徴とする絞り装置。
【請求項2】
前記一つの絞り羽根は、前記小絞り開口の外縁に占める割合が、その他の絞り羽根よりも大きくなるような形状を有しており、
前記減光用フィルタは、前記一つの絞り羽根に接着されていることを特徴とする請求項1に記載の絞り装置。
【請求項3】
前記駆動手段は、前記複数の絞り羽根が互いに摺動するように前記複数の絞り羽根を駆動し、
前記減光用フィルタは、前記複数の絞り羽根のうち、最も外側の一つの絞り羽根の外側に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の絞り装置。
【請求項4】
前記複数の絞り羽根を摺動自在に支持する地板を備え、
前記減光用フィルタは、前記一つの絞り羽根を間にして前記地板とは反対側に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の絞り装置。
【請求項5】
前記駆動手段は、前記複数の絞り羽根を、地板の外径範囲内で駆動することを特徴とする請求項4に記載の絞り装置。
【請求項6】
前記複数の絞り羽根は、前記退避位置側から各々が近接する方向に回動することで前記小絞り開口を形成することを特徴とする請求項1に記載の絞り装置。
【請求項7】
前記複数の絞り羽根は、前記小絞り開口を形成する開口形成羽根と、当該開口形成羽根とは別に、前記小絞り開口以外を閉塞するように前記シャッタ開口を覆う補助羽根と、から構成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の絞り装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一つに記載の絞り装置を備え、当該絞り装置を介して撮像用の光学素子に外光を入射させることを特徴とするレンズ装置。
【請求項9】
請求項8に記載のレンズ装置と、
前記レンズ装置を介して受光した外光を光電変換する撮像用の光学素子と、
を備えることを特徴とする撮像装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2009−109644(P2009−109644A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−280471(P2007−280471)
【出願日】平成19年10月29日(2007.10.29)
【出願人】(000133227)株式会社タムロン (355)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月29日(2007.10.29)
【出願人】(000133227)株式会社タムロン (355)
【Fターム(参考)】
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