説明

絞り装置およびカメラのレンズ鏡筒

【課題】絞り羽根の作動音を低減することができる絞り装置およびカメラのレンズ鏡筒を提供する。
【解決手段】本発明に係わる絞り装置4は、入射した被写体光が通過する開口を規定するものであって、互いに所定方向に重ね合わせて配置された複数枚の絞り羽根20と、前記開口が所望の開口サイズとなるように、複数枚の絞り羽根20を所望の絞り値に応じて開閉駆動する駆動部50と、複数枚の絞り羽根20を収納する羽根室60と、駆動部50による絞り羽根20の開閉駆動時に、羽根室60の光軸L1方向の間隔を、非開閉駆動時よりも広くする羽根室可変手段としての圧電素子40を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絞り装置および、この絞り装置を備えたカメラのレンズ鏡筒に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カメラ等の光学機器には絞り装置が用いられている。この絞り装置は、複数枚の絞り羽根を光軸周りに開閉駆動することにより、入射した被写体光の開口(通過領域)を形成するとともに、その開口サイズを制御することにより被写体光の光量を調整するものである(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−337947号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の絞り装置を備えたレンズ鏡筒では、駆動時に絞り羽根同士が擦れることにより作動音が発生していた。このようなレンズ鏡筒が装着されたデジタルカメラにおいて動作撮影モードにして撮影した場合、絞り羽根同士の擦れによる作動音が騒音として録音されてしまうことがあった。したがって、従来の絞り装置においては、絞り羽根の作動音を低減することが望まれていた。
【0004】
本発明の課題は、絞り羽根の作動音を低減することができる絞り装置およびカメラのレンズ鏡筒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下のような解決手段により前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
請求項1に記載の発明は、入射した被写体光が通過する開口を規定するものであって、互いに所定方向に重ね合わせて配置された複数枚の絞り羽根(20)と、前記開口が所望の開口サイズとなるように、複数枚の前記絞り羽根を、所望の絞り値に応じて開閉駆動する駆動手段(50)と、複数枚の前記絞り羽根を収納する羽根室(60)と、前記駆動手段による前記絞り羽根の開閉駆動時に、前記羽根室の前記所定方向の間隔を、非開閉駆動時よりも広くする羽根室可変手段とを備えることを特徴とする絞り装置(4)である。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の絞り装置であって、前記羽根室可変手段は、前記駆動手段(50)による前記絞り羽根(20)の開閉駆動時に、前記羽根室(60)の前記所定方向の間隔を徐々に広くすることを特徴とするものである。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の絞り装置であって、前記羽根室可変手段は、前記駆動手段による前記絞り羽根(20)の開閉駆動時に、前記羽根室(60)の前記所定方向の間隔を、絞り値に応じて可変にすることを特徴とするものである。
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の絞り装置であって、前記羽根室可変手段は、前記開口の制御が不要な期間中は、前記羽根室(60)の前記所定方向の間隔を前記絞り羽根(20)の非開閉駆動時よりも狭くすることを特徴とするものである。
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の絞り装置であって、前記羽根室可変手段は、所定電圧の印加により伸縮変形する圧電素子(40)からなり、第1電圧が印加されたときは伸び変形して前記羽根室(60)の前記所定方向の間隔を非印加時よりも広くし、第2電圧が印加されたときは縮み変形して前記羽根室の前記所定方向の間隔を非印加時よりも狭くすることを特徴とするものである。
請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の絞り装置(4)と、入射した被写体光を屈折させて射出側の受光面に被写体像を形成する光学部材(3)と、前記絞り装置および前記光学部材が収納される筒体(7)とを備えることを特徴とするカメラのレンズ鏡筒(2)である。
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のカメラのレンズ鏡筒(2)であって、前記羽根室可変手段は、前記レンズ鏡筒が撮影不能な状態にあるときには、前記羽根室(60)の前記所定方向の間隔を、前記絞り羽根(20)の非開閉駆動時よりも狭くすることを特徴とするものである。
なお、符号を付して説明した構成は、適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成物に代替してもよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、絞り羽根の作動音を低減することができる絞り装置およびカメラのレンズ鏡筒を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照して、本発明に係わる絞り装置およびカメラのレンズ鏡筒の実施形態について説明する。なお、以下に示す図面には、説明と理解を容易にするために、適宜にXYZの直交座標系を設けた。この座標系では、撮影者が光軸L1を水平として横長の画像を撮影する場合のカメラ位置(以下、正位置という)において撮影者から見て左側に向かう方向をXプラス方向とする。また、正位置において上側に向かう方向をYプラス方向とする。さらに、正位置において被写体に向かう方向をZ方向とする。なお、実施形態に示す各部の形状や、長さ、厚みなどの縮尺は必ずしも実物と一致するものではなく、また説明に必要のない部分については適宜に省略又は簡略化して描いている。
【0008】
図1は、本実施形態の絞り装置4を備えたレンズ鏡筒2およびそのレンズ鏡筒2が装着されたカメラ1の概略図である。本実施形態のレンズ鏡筒2は、入射した被写体光を屈折させて出射側に被写体像を形成する光学部材としてのレンズ3と、このレンズ3の開口サイズを調節する絞り装置4とを備え、これらが筒体7に収納されている。またカメラ1はカメラボディ5と、レンズ3により形成された被写体像を撮像して電気信号に変換する撮像部6とを備え、レンズ鏡筒2がカメラボディ5に対して着脱自在に装着される構成となっている。
【0009】
図2は、絞り装置4の絞り羽根20が最小絞り(最小F値)位置にあるときの平面図、図3は同装置4の絞り羽根20が最大絞り(最大F値)位置にあるときの平面図である。なお、図2および図3では、絞り羽根20の配置を分かり易くするため、カム板10(最上面)の裏側に収納されている絞り羽根20を実線で示し、このうち隣接する絞り羽根20と重なり合う部分のみを破線で示している。以下、図1〜図3を参照しながら絞り装置4の構成を説明する。
【0010】
絞り装置4は、中央に円形の開口部を有するカム板10と、複数枚の絞り羽根20と、中央に円形の開口部を有する固定環30とを備えている。これらカム板10、絞り羽根20、固定環30は、光軸L1を中心として配置されている。
【0011】
カム板10は、絞り羽根20のカム軸21と係合する複数のカム溝11が形成された回転部材である。カム板10の外縁部には図示しないセグメントギヤが設けられ、後述する駆動部50のピニオンギヤ51と噛み合っている。カム板10が、前記セグメントギヤの回転により光軸L1を中心として回転駆動されることにより、複数枚の絞り羽根20が同時に回転駆動される構造となっている。
【0012】
絞り羽根20は、入射した被写体光が通過する開口を規定するものであって、互いに光軸L1方向に重ね合わせて配置されている。この絞り羽根20は、金属又は樹脂などの薄板状部材により形成されている。各絞り羽根20には、カム板10のカム溝11と係合するカム軸21と、固定環30の軸穴31(図2に1箇所だけ図示する)と係合する回転軸22とが設けられている。
【0013】
固定環30は、レンズ鏡筒2の内部に固定配置される部材であり、絞り羽根20の回転軸22が挿入される軸穴31が形成されている。複数枚の絞り羽根20は、この固定環30とカム板10との間に収納され、さらにカム板10の外側から図示しない押さえ板が嵌め込まれて固定環30の外周部と嵌合されることにより、一体的な組み立て部品となる。この固定環30とカム板10との間に形成される空間は、複数枚の絞り羽根20を収納する羽根室60となる。なお、カム板10と固定環30との嵌合部分については図示を省略する。
【0014】
また、固定環30とカム板10との間には、絞り羽根20の開閉駆動時に、羽根室60の光軸L1方向の間隔を可変とする羽根室可変手段としての圧電素子40が配置されている。この圧電素子40は、所定電圧の印加により光軸L1方向に伸縮変形する部材であり、固定環30とカム板10のそれぞれに接着により取り付けられている。固定環30の外周部には、圧電素子40を収納するための切り欠き部(符号省略)が、光軸L1を中心として平面的に等間隔で3箇所に形成されており、各圧電素子40は、この切り欠き部にそれぞれ収納されている。
さらに、各圧電素子40の上には、固定環30の外周枠と同一形状の枠形部材30a、30b、30cが接着により取り付けられている。カム板10は、固定環30の外周部に設けられた図示しない段差部と、圧電素子40の枠形部材30a〜30cを除く平坦部に接着により取り付けられている。そして、各圧電素子40は、図1に示すように、制御部100と電気的に接続されている(図1では、3箇所に配置された圧電素子40うちの一つを図示する)。
【0015】
制御部100から各圧電素子40には、所定電圧の羽根室可変信号が印加される。本実施形態の圧電素子40は、第1電圧の羽根室可変信号が印加されたときは伸び変形して、羽根室60の光軸L1方向の間隔を電圧の非印加時よりも広くし、第2電圧の羽根室可変信号が印加されたときは縮み変形して、羽根室60の光軸L1方向の間隔を電圧の非印加時よりも狭くするように動作する。ここで、第1電圧、第2電圧は相対的に電位差を有する電圧であればよく、具体的な電圧値は適宜に選択されるものである。
【0016】
なお、羽根室可変信号が印加されていないときは、羽根室60の光軸L1方向の間隔は初期設定の間隔(以下、基準間隔という)となる。このように、基準間隔におけるカム板10は、回転動作を妨げない程度に各絞り羽根20を押圧して、隣接する絞り羽根同士の重なり合いを維持している。一方、第2電圧の羽根室可変信号が印加されたときは、羽根室60の光軸L1方向の間隔はさらに狭くなり、カム板10は、回転動作に適さない程度に各絞り羽根20を押圧することになる。
【0017】
また、制御部100は、後述する絞り羽根20を回転駆動するタイミングに合わせて羽根室可変信号を各圧電素子40に印加している。例えば、絞り羽根20を開閉駆動する直前に第1電圧の羽根室可変信号を印加することにより、絞り羽根20が開閉駆動されている間は、羽根室60の光軸L1方向の間隔が電圧の非印加時よりも広くなる。また、絞り羽根20の開閉駆動を停止した後に、羽根室可変信号の印加を停止することにより、羽根室60の光軸L1方向の間隔は基準間隔となる。或いは、絞り羽根20の開閉駆動を停止した後に、第2電圧の羽根室可変信号を印加するようにした場合は、羽根室60の光軸L1方向の間隔は電圧の非印加時よりも狭くなる。このように、絞り羽根20を開閉駆動するタイミングに合わせて羽根室可変信号を印加することにより、羽根室60の光軸L1方向の間隔は絞り値に応じて可変となる。
【0018】
なお、上述したように、絞り羽根20の開閉駆動を停止した後に、羽根室60の光軸L1方向の間隔を基準間隔とするか、或いは電圧の非印加時よりも狭くするかは、適宜に選択されるものである。
【0019】
さらに、制御部100は、絞り羽根20を回転駆動するとき以外にも、適宜に第2電圧の羽根室可変信号を各圧電素子40に印加して、羽根室60の光軸L1方向の間隔を制御している。例えば、カメラ1の図示しないレリーズボタンが押下されていないときなど、被写体光が通過する開口の制御が不要な期間中は、第2電圧の羽根室可変信号を各圧電素子40に印加して、羽根室60の光軸L1方向の間隔は電圧の非印加時よりも狭くなるように制御している。
【0020】
同様に、カメラ1の電源がオフされた時や、沈胴式のレンズ鏡筒であれば縮胴時などのように、レンズ鏡筒が撮影不能な状態にあるときは、第2電圧の羽根室可変信号を各圧電素子40に印加して、羽根室60の光軸L1方向の間隔は電圧の非印加時よりも狭くなるように制御している。
【0021】
上述したように、本実施形態の制御部100は、絞り羽根20の回転駆動と、圧電素子40への電圧印加とを制御する回路であり、マイクロプロセッサにより構成されている。
【0022】
駆動部50は、図1に示すように、ピニオンギヤ51、回転軸52、およびステッピングモータ53により構成されている。このうち、ピニオンギヤ51がカム板10の外縁部に設けられた不図示のセグメントギヤと噛み合っている。また、ステッピングモータ53は制御部100と電気的に接続されており、この制御部100からステッピングモータ53に、絞り羽根駆動信号(パルス信号)が印加される。
【0023】
上記構成において、制御部100から印加された絞り羽根駆動信号によりステッピングモータ53が回転駆動されると、このステッピングモータ53の回転軸52に取り付けられたピニオンギヤ51が回転し、さらにピニオンギヤ51と噛み合う不図示のセグメントギヤが回転することで、カム板10が所定方向に回転する。先に説明したように、カム板10のカム溝11は、絞り羽根20のカム軸21と係合しているため、カム板10が図2の時計回りに回転すると、カム溝11と係合するカム軸21はカム溝11に沿って光軸L1の方向(内側方向)に移動する。
【0024】
これにより、絞り羽根20は回転軸22を中心として時計回りに回転する。カム板10は、すべての絞り羽根20のカム軸21と係合しているため、上記のようにカム板10が時計回りに回転駆動されると、すべての絞り羽根20が回転軸22を中心として時計回りに回転することになる。そして、各絞り羽根20のカム軸21がカム溝11の終端部に達すると、図3に示すように、すべての絞り羽根20が最大絞り位置となり、被写体光が通過する開口が閉じられて、開口サイズは最も小さくなる。また、この状態からカム板10が反時計回りに回転駆動されたときには、上記と反対の動作となり、すべての絞り羽根20は回転軸22を中心として反時計回りに回転することになる。したがって、図2に示すように、すべての絞り羽根20が最小絞り位置となり、被写体光が通過する開口が開かれて、開口サイズは最も大きくなる。
【0025】
また、制御部100は、絞り値に応じた絞り羽根駆動信号をステッピングモータ53へ出力している。ステッピングモータ53の回転量は、入力されるパルス信号の数に比例している。このため、露出値に基づいて設定された絞り値が大きい場合はパルス数の多い羽根駆動信号が出力され、絞り値が小さい場合はパルス数の少ない羽根駆動信号が出力されることになる。
【0026】
このように、駆動部50は、入射した被写体光が通過する開口が所望の開口サイズとなるように、複数枚の絞り羽根20を所望の絞り値に応じて開閉駆動する駆動手段として機能する。
【0027】
次に、本実施形態における絞り装置4の動作について説明する。図4(a)、(b)は、図2のA−A線における断面図であり、絞り羽根20が最小絞り位置にあるときの断面を示している。このうち、図4(a)は羽根室60の間隔を狭くしたときの状態を示す断面図、図4(b)は羽根室60の間隔を広くしたときの状態を示す断面図である。図4(a)に示すように、羽根室60の間隔を狭くした状態では、カム板10は、固定環30の外周部に設けられた段差部30dに接している。
【0028】
また、図5(a)、(b)は、図3のB−B線における断面図であり、絞り羽根20が最大絞り位置にあるときの断面を示している。このうち、図5(a)は羽根室60の間隔を広くしたときの状態を示す断面図、図5(b)は羽根室60の間隔を狭くしたときの状態を示す断面図である。なお、図4および図5には図示していないが、羽根室可変信号が印加されていないときの羽根室60の間隔(基準間隔)は、図4(a)および図5(b)よりもやや広い間隔に保たれている。
【0029】
ここでは、絞り羽根20を図2の最小絞り位置から図3の最大絞り位置まで回転駆動するときの動作について説明する。まず、図2および図4(a)に示す状態において、制御部100から第1電圧の羽根室可変信号が各圧電素子40に印加されると、各圧電素子40は伸び変形する。このため、圧電素子40と係合するカム板10は図4(a)の矢印C方向に持ち上げられ、図4(b)に示すように、羽根室60の光軸L1方向の間隔が電圧の非印加時よりも広くなる。
【0030】
このようにして、羽根室60の光軸L1方向の間隔が広くなった後、制御部100から所定の絞り値に対応した絞り羽根駆動信号がステッピングモータ53に印加されると、ステッピングモータ53の回転軸52に取り付けられたピニオンギヤ51が回転する。これにより、ピニオンギヤ51と噛み合う不図示のセグメントギヤが回転して、カム板10が時計回りに回転駆動される。カム板10が時計回りに回転駆動されると、各絞り羽根20が回転軸22を中心として時計回りに回転する。そして、各絞り羽根20のカム軸21がカム溝11の終端部に達すると、図3および図5(a)に示すように、すべての絞り羽根20が最大絞り位置となり、被写体光が通過する開口が閉じられて、開口サイズは最も小さくなる。このような動作は、絞り羽根20を図2の最小絞り位置から中間絞り位置まで回転駆動するときも同じである。
【0031】
この状態で、制御部100から第2電圧の羽根室可変信号が各圧電素子40に印加されると、各圧電素子40は縮み変形する。このため、圧電素子40と係合するカム板10は図5(a)の矢印D方向に沈み込み、図5(b)に示すように、羽根室60の光軸L1方向の間隔が電圧の非印加時よりも狭くなる。
【0032】
上述したように、絞り羽根20が回転駆動される際には、羽根室60の光軸L1方向の間隔が広がり、絞り羽根20が特定の絞り値の位置で停止したときには、羽根室60の光軸L1方向の間隔が狭くなる。このような動作は、絞り羽根20を図3の最大絞り位置から図2の最小絞り位置(又は中間絞り位置)まで回転駆動するときも同じである。
【0033】
上記実施形態によると、以下の効果を奏する。
(1)絞り羽根20の開閉駆動時に、羽根室60の光軸L1方向の間隔を非開閉駆動時よりも広くなるようにしたので、重ね合わせて配置された絞り羽根同士の接触圧を弱くすることができる。したがって、絞り羽根20の開閉駆動時における絞り羽根同士の擦れによる作動音を低減することができる。
【0034】
これによれば、動作撮影モード時に絞り装置4が動作した場合でも、絞り羽根同士の擦れによる作動音が騒音として録音されてしまうことがなく、録画画像の品質低下を防ぐことができる。なお、絞り羽根同士の擦れによる作動音は、絞り羽根20を所望の開口サイズまで閉じるときだけでなく、閉じた絞り羽根20を開くときにも発生するため、動作撮影モードのように連続して絞り羽根20を回転駆動する場合に有効なものとなる。
(2)絞り羽根20の開閉駆動時に、羽根室60の光軸L1方向の間隔を絞り値に応じて可変とすることにより、絞り羽根20が回転駆動される際には絞り羽根同士の接触圧を弱くし、且つ絞り羽根20の回転駆動が所望の絞り値の位置で停止したときには、各絞り羽根20を押圧した状態とすることができる。このため、絞り羽根20が所望の絞り位置で停止したときには、隣接する絞り羽根20の隙間から光が漏れるのを防ぐことができる。これにより、撮影した画像の画質低下を防ぐことができる。
(3)被写体光が通過する開口の制御が不要な期間中は、羽根室60の光軸L1方向の間隔が電圧の非印加時よりも狭くなるようにしたので、上記期間中、各絞り羽根20は押圧された状態となり、絞り羽根同士の接触圧が高められるので、カメラ1に振動や衝撃などが加わった場合でも、隣接する絞り羽根同士の重なり合いを維持することができる。したがって、カメラ1に振動や衝撃などが加わった場合の絞り羽根20の擦れによる磨耗や破損を防ぐことができる。
(4)レンズ鏡筒2が撮影不能な状態にあるときは、羽根室60の光軸L1方向の間隔が電圧の非印加時よりも狭くなるようにしたので、上記期間中、各絞り羽根20は押圧された状態となり、絞り羽根同士の接触圧が高められるので、レンズ鏡筒2に振動や衝撃などが加わった場合でも、隣接する絞り羽根同士の重なり合いを維持することができる。したがって、カメラ1に装着された状態のときだけでなく、レンズ鏡筒2単体の状態において振動や衝撃などが加わった場合の絞り羽根20の擦れによる磨耗や破損を防ぐことができる。
(5)羽根室可変手段として、第1電圧が印加されたときは伸び変形して羽根室60の光軸L1方向の間隔を電圧の非印加時よりも広くし、第2電圧が印加されたときは縮み変形して羽根室60の光軸L1方向の間隔を電圧の非印加時よりも狭くするように動作する圧電素子を用いているため、羽根室60の光軸L1方向の間隔を簡単且つ正確に制御することができる。
(変形形態)
【0035】
以上、説明した実施形態に限定されることなく、本発明は以下に示すような種々の変形や変更が可能であり、それらも本発明の範囲内である。
(1)上記実施形態では、単一構造の圧電素子40により羽根室60の間隔を制御する例について示したが、羽根室可変手段として、複数の圧電素子からなる積層型の圧電アクチュエータを用いてもよい(図示を省略)。このような積層型の圧電アクチュエータの各圧電素子に対し個別に電圧を印加することにより、羽根室60の間隔を段階的に広くしたり、狭くしたりすることができる。すなわち、絞り羽根同士の重なりが少ないときは羽根室60の間隔を広くする割合を少なくし、絞り羽根同士の重なりが多くなるにつれて羽根室60の間隔が徐々に広くなるように制御することができる。これによれば、絞り羽根の重なり状態に応じて羽根室60の間隔を適切な間隔に保つことができるので、絞り羽根20の開閉駆動時に、絞り羽根同士の接触圧を強くすることなしに、圧電素子40の駆動量を必要最小限に抑えることができる。
(2)上記実施形態では、羽根室可変手段として、所定電圧の印加により所定方向に伸縮変形する圧電素子を用いた例について説明したが、同等に機能するものであれば他の部材を用いることもできる。例えば、通電による熱の発生で伸縮変形する形状記憶合金を用いてもよい。
(3)上記実施形態では、本発明に係わる絞り装置およびカメラのレンズ鏡筒を、カメラボディに対してレンズ鏡筒が着脱自在に装着されるデジタルカメラに適用した例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、レンズ一体型カメラ、ビデオカメラに設けられた絞り装置、レンズ鏡筒にも適用することもできる。
【0036】
また、上記実施形態および変形形態は適宜に組み合わせて用いることができるが、各実施形態の構成は図示により明らかであるため、詳細な説明は省略する。また、本発明は以上説明した実施形態によって限定されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】実施形態の絞り装置を備えたレンズ鏡筒およびそのレンズ鏡筒が装着されたカメラの概略図である。
【図2】絞り装置の絞り羽根が最小絞り位置にあるときの平面図である。
【図3】絞り羽根が最大絞り位置にあるときの平面図である。
【図4】(a)、(b)は図2のA−A線における断面図である。
【図5】(a)、(b)は図3のB−B線における断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1:カメラ、2:レンズ鏡筒、4:絞り装置、10:カム板、20:絞り羽根、30:固定環、40:圧電素子、50:駆動部、60:羽根室、100:制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射した被写体光が通過する開口を規定するものであって、互いに所定方向に重ね合わせて配置された複数枚の絞り羽根と、
前記開口が所望の開口サイズとなるように、複数枚の前記絞り羽根を、所望の絞り値に応じて開閉駆動する駆動手段と、
複数枚の前記絞り羽根を収納する羽根室と、
前記駆動手段による前記絞り羽根の開閉駆動時に、前記羽根室の前記所定方向の間隔を、非開閉駆動時よりも広くする羽根室可変手段と、
を備えることを特徴とする絞り装置。
【請求項2】
請求項1に記載の絞り装置であって、
前記羽根室可変手段は、
前記駆動手段による前記絞り羽根の開閉駆動時に、前記羽根室の前記所定方向の間隔を徐々に広くすること、
を特徴とする絞り装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の絞り装置であって、
前記羽根室可変手段は、
前記駆動手段による前記絞り羽根の開閉駆動時に、前記羽根室の前記所定方向の間隔を、絞り値に応じて可変にすること、
を特徴とする絞り装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の絞り装置であって、
前記羽根室可変手段は、
前記開口の制御が不要な期間中は、前記羽根室の前記所定方向の間隔を前記絞り羽根の非開閉駆動時よりも狭くすること、
を特徴とする絞り装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の絞り装置であって、
前記羽根室可変手段は、
所定電圧の印加により伸縮変形する圧電素子からなり、第1電圧が印加されたときは伸び変形して前記羽根室の前記所定方向の間隔を非印加時よりも広くし、第2電圧が印加されたときは縮み変形して前記羽根室の前記所定方向の間隔を非印加時よりも狭くすること、
を特徴とする絞り装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の絞り装置と、
入射した被写体光を屈折させて射出側の受光面に被写体像を形成する光学部材と、
前記絞り装置および前記光学部材が収納される筒体と、
を備えることを特徴とするカメラのレンズ鏡筒。
【請求項7】
請求項6に記載のカメラのレンズ鏡筒であって、
前記羽根室可変手段は、
前記レンズ鏡筒が撮影不能な状態にあるときには、前記羽根室の前記所定方向の間隔を、前記絞り羽根の非開閉駆動時よりも狭くすること、
を特徴とするカメラのレンズ鏡筒。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate