説明

絞り装置

【課題】より広い範囲の絞り開口の径(サイズ)において絞り開口形状を円形に近くすることができ、絞り開口の径(サイズ)が小さくなっても複数枚の絞り羽根が競り上がるのを防止することができる絞り装置を得ること。
【解決手段】本発明の絞り装置は、複数枚の絞り羽根が、その絞り開口形成縁部の形状が異なる複数セットが用意されていること、複数セットの絞り羽根の絞り開口形成縁部の形状が、絞り開口の径を変化させるに際し、複数の絞り羽根セットのうち、絞り開口を形成する絞り羽根セットが切り替わるように設定されていること、及びいずれかのセットの絞り羽根の絞り開口形成縁部が絞り開口を形成しているとき、残りのセットの絞り羽根の絞り開口形成縁部は絞り開口を形成しないことを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラレンズその他で光量を制御するために用いる、複数枚の絞り羽根を有する絞り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の絞り装置は、複数枚の絞り羽根にそれぞれ回動中心ダボ(ピン)と開閉駆動ダボ(ピン)が備えられており、これらの複数枚の絞り羽根を同一円周上に等角度間隔で配置した上で、開閉駆動ダボを介して回動中心ダボを中心に回動させることで、複数枚の絞り羽根の重なりの程度を変化させ、複数枚の絞り羽根の絞り開口形成縁部によって形成される絞り開口の大きさを変化させている。具体的には、回動中心ダボは、円板状回動中心板に等角度間隔で形成した回動中心穴に嵌められ、開閉駆動ダボは、この円板状回動中心板に対して相対回動可能な円板状カム板に形成したカム溝に嵌められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63−8638号公報
【特許文献2】特開2003−5248号公報
【特許文献3】特開2009−271402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような絞り装置の絞り羽根形状(絞り開口形成縁部の形状)は、特定の径(特定のサイズ)の絞り開口のときに真円に近い形になるように設定されており、その特定の径の絞り開口以外では、その特定の径から離れる程、円形から離れていく(円形ではなくなる)ことが避けられない。しかし、カメラレンズでいうと、絞り開口は、円形に近いほど、ボケ像がきれいになることが知られており、また、ゴーストとして絞り開口が画面に表れるとき、円形のフレアの方が非円形のフレアより美しい。
【0005】
また、従来の絞り装置にあっては、絞り開口の形状を円形に近づけるべく絞り羽根の枚数を多くすればする程、絞り開口の径(サイズ)が小さくなるに従って、複数枚の絞り羽根が重なり合って競り上がる。複数枚の絞り羽根が競り上がると、絞り動作が鈍くなる、絞り羽根の塗装が剥げてこの塗装が剥げた部分の内面反射により良好な写真が撮れなくなるといった不都合が生じて好ましくない。
【0006】
本発明は、以上の問題意識に基づき、より広い範囲の絞り開口の径(サイズ)において絞り開口形状を円形に近くすることができ、絞り開口の径(サイズ)が小さくなっても複数枚の絞り羽根が競り上がるのを防止することができる絞り装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、複数枚の絞り羽根として絞り開口形成縁部の形状が異なる複数セットを用意し、この複数セットの絞り羽根の絞り開口形成縁部の形状を、絞り装置全体としての絞り開口の径を変化させるに際し、複数の絞り羽根セットのうち絞り開口を形成する絞り羽根セットが切り替わるように設定し(複数の絞り羽根セットがそれぞれ異なる特定範囲の径において絞り開口を形成するように設定し)、いずれかのセットの絞り羽根の絞り開口形成縁部が絞り開口を形成しているとき、残りのセットの絞り羽根の絞り開口形成縁部が絞り開口を形成しないようにすれば、複数セットの絞り羽根のうち最も円形に近い絞り開口セットを絞り開口の径(サイズ)に応じて切り替えて使用することができるため、より広い範囲の絞り開口の径(サイズ)において絞り開口形状を円形に近くすることができ、また、絞り開口を形成しない残りの絞り羽根セットを絞り開口から離して位置させることができるため、絞り開口の径(サイズ)が小さくなっても複数枚の絞り羽根が競り上がるのを防止することができるとの着眼に基づいて完成されたものである。
【0008】
すなわち、本発明の絞り装置は、回動中心ダボと開閉駆動ダボと絞り開口形成縁部を有する複数枚の絞り羽根を有し、円周方向に離間させて配置した上記複数枚の絞り羽根を、上記開閉駆動ダボを介して上記回動中心ダボを中心に回動させ、上記複数枚の絞り羽根の重なりの程度を変化させて該複数枚の絞り羽根の絞り開口形成縁部によって形成される絞り開口の径を変化させる絞り装置において、上記複数枚の絞り羽根は、その絞り開口形成縁部の形状が異なる複数セットが用意されていること、上記複数セットの絞り羽根の絞り開口形成縁部の形状は、上記絞り開口の径を変化させるに際し、上記複数の絞り羽根セットのうち、絞り開口を形成する絞り羽根セットが切り替わるように設定されていること、及びいずれかのセットの絞り羽根の絞り開口形成縁部が絞り開口を形成しているとき、残りのセットの絞り羽根の絞り開口形成縁部は絞り開口を形成しないことを特徴としている。
【0009】
本発明の絞り装置は、具体的には、上記複数の絞り羽根セットの開閉駆動ダボがそれぞれ嵌まる複数種類のカム溝を形成した円板状カム板を有し、この円板状カム板の複数種類のカム溝の形状は、上記絞り開口の径を変化させるに際し、上記複数の絞り羽根セットのうち、絞り開口を形成する絞り羽根セットが切り替わるように設定されていることを特徴としている。
【0010】
本発明の絞り装置は、具体的には、上記複数セットの絞り羽根の絞り開口形成縁部の形状は、各セットの絞り羽根の絞り開口形成縁部が絞り開口を形成しているときに、それぞれ最も真円に近いポイントを持つように設定されていることを特徴としている。
【0011】
本発明の絞り装置は、具体的には、上記絞り羽根セットは2種類が用意されていること、全ての絞り羽根の回動中心ダボと開閉駆動ダボは互いに反対の方向に突出していること、全ての絞り羽根の回動中心ダボが嵌まる回動中心穴を形成した円板状回動中心板が備えられていること、及び2種類の絞り羽根セットの開閉駆動ダボがそれぞれ嵌まる2種類のカム溝を円周方向に交互に形成した、上記円板状回動中心板に対して相対回転可能な円板状カム板が備えられていることを特徴としている。
【0012】
本発明の絞り装置は、具体的には、上記絞り開口の径を変化させるに際し、上記絞り開口の最大径と最小径の略中間径において、上記2種類の絞り羽根セットのうち絞り開口を形成する絞り羽根セットが切り替わることを特徴としている。
【0013】
本発明の絞り装置は、別の具体例では、上記絞り羽根セットは2種類が用意されていること、上記2種類の絞り羽根セットの開閉駆動ダボがそれぞれ嵌まる2種類のカム溝を交互に形成した円板状カム板を有すること、及び上記2種類の絞り羽根セットは上記円板状カム板を挟んだ表裏に位置することを特徴としている。
【0014】
本発明の絞り装置は、さらに別の具体例では、絞り羽根セットは2種類が用意されていること、第1の絞り羽根セットの絞り羽根の回動中心ダボと、第2の絞り羽根セットの絞り羽根の回動中心ダボは互いに反対方向に突出しており、全ての絞り羽根の開閉駆動ダボは回動中心ダボとは反対方向に突出していること、第1の絞り羽根セットの開閉駆動ダボが嵌まるカム溝と、第2の絞り羽根セットの開閉駆動ダボが嵌まるカム溝とを円周方向に交互に形成した円板状カム板が備えられていること、上記円板状カム板を挟んで、第1の絞り羽根セット用の第1円板状回動中心板と、第2の絞り羽根セット用の第2円板状回動中心板とが備えられ、この第1、第2の円板状回動中心板にそれぞれ、第1、第2の絞り羽根セットの絞り羽根の回動中心ダボが回動自在に嵌まる回動中心穴が形成されていること、及び第1、第2の円板状回動中心板は、円板状カム板に対して相対回動することを特徴している。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、より広い範囲の絞り開口の径(サイズ)において絞り開口形状を円形に近くすることができ、絞り開口の径(サイズ)が小さくなっても複数枚の絞り羽根が競り上がるのを防止することができる絞り装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態1に係る絞り装置を示す分解斜視図である。
【図2】円板状回動中心板の構成を示す平面図である。
【図3】円板状カム板の構成を示す平面図である。
【図4】2種類の絞り羽根(絞り羽根セット)の構成を対比して示す平面図である。
【図5】円板状回動中心板と円板状カム板の間に絞り羽根を保持した状態を示す断面図である。
【図6】絞り開口の径(サイズ)が最大の場合の2種類の絞り羽根(絞り羽根セット)の回動位置を対比して示す図である。
【図7】絞り開口の径(サイズ)が最小の場合の2種類の絞り羽根(絞り羽根セット)の回動位置を対比して示す図である。
【図8】絞り開口の径(サイズ)を変化させた場合の有効な絞り開口形状の移り変わりを、2種類の絞り羽根セットのそれぞれがなす絞り開口形状の移り変わりと対比して説明する図である。
【図9】本発明の実施の形態2に係る絞り装置を示す分解斜視図である。
【図10】2種類の絞り羽根(絞り羽根セット)の別の構成を対比して示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施の形態1)
図1ないし図8を用いて、本発明の実施の形態1に係る絞り装置1を説明する。絞り装置1は、カメラレンズやプロジェクタ等の光学機器(図示せず)に搭載されて、透過光量を制御するために使用される。符号Oは、この光学機器の撮影光軸(つまり絞り装置1の開口の中心)を示している。
【0018】
図1に示すように、絞り装置1は、互いに相対回転可能な円板状回動中心板10と円板状カム板20の間に、14枚の絞り羽根30を保持してなる。
【0019】
図1、図2に示すように、円板状回動中心板10は、その中央部に光束を通過させる円形の光束通過開口11を有する。この光束通過開口11の周囲には、絞り羽根30を収容する収容凹部12が形成され、この収容凹部12の周囲には、円板状カム板20の外周縁が当接する円形段部13が形成されている。収容凹部12には、14枚の絞り羽根30に対応させて、周方向に等角度間隔で14個の回動中心穴14が形成されている。
【0020】
円板状カム板20は、円板状回動中心板10との間に保持した絞り羽根30を駆動するための駆動部材であり、その外周縁が円板状回動中心板10の円形段部13に、円板状回動中心板10と相対回転可能に嵌合されている。図1、図3に示すように、円板状カム板20は、その中央部に光束を通過させる円形の光束通過開口21を有する。この光束通過開口21の周囲には、2種類の形状のカム溝22と23が7個ずつ、円周方向に交互に合計14個形成されている。カム溝22は、絞り開口形成面22Aと絞り開口非形成面22Bとからなるくの字形状を有しており、カム溝23は、絞り開口非形成面23Aと絞り開口形成面23Bとからなるくの字形状を有している。
【0021】
図1、図4に示すように、絞り羽根30は、透過光量を制御するための可変開口絞りVAを形成するものである。絞り羽根30の絞り開口の最大径(最大サイズ)は、円板状回動中心板10の光束通過開口11及び円板状カム板20の光束通過開口21の径(サイズ)よりも大きくなるように設定されている。従って、絞り羽根30を開放(機械的端点)した状態(Fナンバーが最小の状態)では、円板状回動中心板10の光束通過開口11及び円板状カム板20の光束通過開口21によって可変開口絞りVAが形成される。一方、絞り羽根30を開放(機械的端点)した状態から絞っていくと(Fナンバーを大きくしていくと)、絞り羽根30の絞り開口の径(サイズ)が円板状回動中心板10の光束通過開口11及び円板状カム板20の光束通過開口21の径(サイズ)よりも小さくなり、絞り羽根30によって可変開口絞りVAが形成される。絞り羽根30は、円板状カム板20の2種類の形状のカム溝22と23に対応させて、2種類の形状の第1の絞り羽根32と第2の絞り羽根33を7枚ずつ、円周方向に交互に離間して配置してなる。以下では、7枚の第1の絞り羽根32を「第1の絞り羽根セット32」と呼び、7枚の第2の絞り羽根33を「第2の絞り羽根セット33」と呼ぶ。
【0022】
第1の絞り羽根セット32と第2の絞り羽根セット33(14枚の全ての絞り羽根30)にはそれぞれ、円板状回動中心板10の側に突出させて、円板状回動中心板10の回動中心穴14に回動自在に嵌まる回動中心ダボ32Aと33Aが形成されている。
【0023】
第1の絞り羽根セット32には、円板状カム板20の側(回動中心ダボ32Aの反対側)に突出させて、円板状カム板20のカム溝22に嵌まる開閉駆動ダボ32Bが形成されている。第2の絞り羽根セット33には、円板状カム板20の側(回動中心ダボ33Aの反対側)に突出させて、円板状カム板20のカム溝23に嵌まる開閉駆動ダボ33Bが形成されている。
【0024】
第1の絞り羽根セット32は、絞り開口の径(サイズ)が最大径(最大サイズ)から中間径(中間サイズ)の間において最も円形に近い形状の絞り開口を形成する絞り開口形成縁部32Cを有している。第1の絞り羽根セット32の絞り開口の最大径(最大サイズ)は、円板状回動中心板10の光束通過開口11及び円板状カム板20の光束通過開口21の径(サイズ)よりも大きくなるように設定されている。従って、第1の絞り羽根セット32の絞り開口の径が最大径であるときは、円板状回動中心板10の光束通過開口11及び円板状カム板20の光束通過開口21が可変開口絞りVAを形成する。第1の絞り羽根セット32は、その絞り開口の径が最大径の状態を除き、開閉駆動ダボ32Bがカム溝22の絞り開口形成面22Aを移動しているときは、有効な光量制限絞り開口を形成し、絞り開口の径を最大径から中間径の間で変化させる。第1の絞り羽根セット32は、その開閉駆動ダボ32Bがカム溝22の絞り開口非形成面22Bを移動しているときは、有効な光量制限絞り開口を形成せず、絞り開口の径を殆ど変化させない。つまり、絞り開口の径が最小径であるときは、絞り開口形成縁部32Cは、可変開口絞りVAの形成に関与せず、第2の絞り羽根セット33(絞り開口形成縁部33C)により形成された可変開口絞りVAの外側で停止(待機)する(図7)。
【0025】
第2の絞り羽根セット33は、絞り開口の径(サイズ)が中間径(中間サイズ)から最小径(最小サイズ)の間において最も円形に近い形状の絞り開口を形成する絞り開口形成縁部33Cを有している。第2の絞り羽根セット33は、その開閉駆動ダボ33Bがカム溝23の絞り開口非形成面23Aを移動しているときは、有効な光量制限絞り開口を形成せず、絞り開口の径を殆ど変化させない。第2の絞り羽根セット33は、その開閉駆動ダボ33Bがカム溝23の絞り開口形成面23Bを移動しているときは、有効な光量制限絞り開口を形成し、絞り開口の径を中間径から最小径の間で変化させる。従って、例えば絞り開口の径が最大径であるときは、絞り開口形成縁部33Cは、可変開口絞りVAの形成に関与せず、円板状回動中心板10の光束通過開口11及び円板状カム板20の光束通過開口21によって形成された可変開口絞りVAの外側で停止(待機)し(図6)、絞り開口の径が最小径であるときは、絞り開口形成縁部33Cが可変開口絞りVAを形成する(図7)。
【0026】
以上の構成の絞り装置1を使用するときは、図5に示すように、第1の絞り羽根セット32と第2の絞り羽根セット33(14枚の全ての絞り羽根30)の回動中心ダボ32Aと33Aを円板状回動中心板10の回動中心穴14に回動自在に嵌め、第1の絞り羽根セット32と第2の絞り羽根セット33の開閉駆動ダボ32Bと33Bを円板状カム板20のカム溝22と23にそれぞれ嵌め、駆動部材である円板状カム板20の外周縁を円板状回動中心板10の円形段部13に、円板状回動中心板10と相対回転可能に嵌合する。この状態で円板状回動中心板10と円板状カム板20を相対回転させると、第1の絞り羽根セット32と第2の絞り羽根セット33が、開閉駆動ダボ32Bと33Bを介して回動中心ダボ32Aと33Aを中心に回動して、第1の絞り羽根セット32と第2の絞り羽根セット33の重なりの程度を変化させて可変開口絞りVAの径を変化させることにより、透過光量が制御される。円板状回動中心板10と円板状カム板20の相対回転は、例えば、円板状回動中心板10と円板状カム板20を貫通する図示しないレバーや長孔等を利用した周知の技術を用いて行うことができる。
【0027】
図8を参照して、可変開口絞りVAの径を最大径(例えばFナンバーが5.6)から最小径(例えばFナンバーが32)まで絞っていく場合の絞り装置1の動作を説明する。可変開口絞りVAが最大径のとき、第1の絞り羽根セット32の開閉駆動ダボ32Bはカム溝22の絞り開口形成面22Aに嵌まっており、第2の絞り羽根セット33の開閉駆動ダボ33Bはカム溝23の絞り開口非形成面23Aに嵌まっている。この状態では、円板状回動中心板10の光束通過開口11及び円板状カム板20の光束通過開口21によって可変開口絞りVAが形成される。
【0028】
この状態で円板状回動中心板10と円板状カム板20を相対回転させると、第1の絞り羽根セット32の開閉駆動ダボ32Bがカム溝22の絞り開口形成面22Aを移動し、第2の絞り羽根セット33の開閉駆動ダボ33Bがカム溝23の絞り開口非形成面23Aを移動する。すなわち、第1の絞り羽根セット32の絞り開口形成縁部32Cが有効な光量制限絞り開口を形成しながら可変開口絞りVAの径を徐々に絞っていき、第2の絞り羽根セット33(絞り開口形成縁部33C)は、有効な光量制限絞り開口を形成しない範囲内で、第1の絞り羽根セット32(絞り開口形成縁部32C)により形成された可変開口絞りVAの外側で僅かに動く(Fナンバーが5.6から9.5の間)。
【0029】
やがて可変開口絞りVAの径が中間径(例えばFナンバーが9.5から11の間)に到達すると、第1の絞り羽根セット32(絞り開口形成縁部32C)と第2の絞り羽根セット33(絞り開口形成縁部33C)が協働して有効な光量制限絞り開口を形成した状態となる。つまり、第1の絞り羽根セット32と第2の絞り羽根セット33の切り替わりの瞬間には、第1の絞り羽根セット32と第2の絞り羽根セット33が協働して、各7枚の第1の絞り羽根セット32と絞り羽根セット33を合わせた14枚の全ての絞り羽根によって有効な光量制限絞り開口が形成される。さらに可変開口絞りVAの径が中間径よりも小さくなると、第1の絞り羽根セット32の開閉駆動ダボ32Bがカム溝22の絞り開口形成面22Aから絞り開口非形成面22Bを移動し、第2の絞り羽根セット33の開閉駆動ダボ33Bがカム溝23の絞り開口非形成面23Aから絞り開口形成面23Bを移動する。
【0030】
そして可変開口絞りVAの径が最小径に到達するまで、第2の絞り羽根セット33の絞り開口形成縁部33Cが有効な光量制限絞り開口を形成しながら可変開口絞りVAの径を徐々に絞っていき、第1の絞り羽根セット32(絞り開口形成縁部32C)は、有効な光量制限絞り開口を形成しない範囲内で、第2の絞り羽根セット33(絞り開口形成縁部33C)により形成された可変開口絞りVAの外側で僅かに動く(Fナンバーが11から32の間)。
【0031】
可変開口絞りVAの径が最大径から中間径の間で(例えばFナンバーが8程度のとき)、第1の絞り羽根セット32(絞り開口形成縁部32C)により形成される可変開口絞りVAは極めて円形に近い形状(真円形状)となり、その近辺の径でも円形に近い形状となる。また、可変開口絞りVAの径が中間径から最小径の間で(例えばFナンバーが22程度のとき)、第2の絞り羽根セット33(絞り開口形成縁部33C)により形成される可変開口絞りVAは極めて円形に近い形状(真円形状)となり、その近辺の径でも円形に近い形状となる。
【0032】
従って、本実施の形態1の絞り装置1により可変開口絞りVAの径を最大径(例えばFナンバーが5.6)から最小径(例えばFナンバーが32)まで絞っていくときには、第1の絞り羽根セット32と第2の絞り羽根セット33によって、可変開口絞りVAが極めて円形に近い形状(真円形状)となるポイントが2箇所(例えばFナンバーが8程度のポイントと22程度のポイント)存在することになる。これにより、可変開口絞りが極めて円形に近い形状(真円形状)となるポイントが1箇所しか存在しない従来技術と比べて、絞り全域に亘って円形に近い形状の可変開口絞りVAを得ることができる。
【0033】
このように本実施の形態1によれば、2種類の形状の第1の絞り羽根セット32と第2の絞り羽根セット33を、可変開口絞りVAの径が最大径から中間径の間では第1の絞り羽根セット32(絞り開口形成縁部32C)が有効な光量制限絞り開口を形成し、可変開口絞りVAの径が中間径から最小径の間では第2の絞り羽根セット33(絞り開口形成縁部33C)が有効な光量制限絞り開口を形成するように切り替えて使用するため、より広い範囲の絞り開口の径において絞り開口形状を円形に近くすることができる。また、有効な光量制限絞り開口を形成しない残りの絞り羽根セットを可変開口絞りVAから離れた位置に位置させることができるため、絞り開口の径が小さくなっても複数枚の絞り羽根が競り上がるのを防止することができる。
【0034】
(実施の形態2)
図9、図10を用いて、本発明の実施の形態2に係る絞り装置2を説明する。実施の形態1と同一の構成要素には同一の符号を付している。
【0035】
絞り装置2は、互いに相対回転不能な第1の円板状回動中心板40と第2の円板状回動中心板50の間に、円板状カム板20と14枚の絞り羽根30を、第1の絞り羽根セット32と第2の絞り羽根セット33が円板状カム板20を介して互いに反対側に位置するように保持してなる。すなわち、第1の円板状回動中心板40と円板状カム板20の間に第1の絞り羽根セット32が位置し、第2の円板状回動中心板50と円板状カム板20の間に第2の絞り羽根セット33が位置している。
【0036】
図9、図10に示すように、第1の絞り羽根セット32の回動中心ダボ32Aと第2の絞り羽根セット33の回動中心ダボ33Aは、第1の円板状回動中心板40と第2の円板状回動中心板50の側に向けて、互いに反対方向に突出している。また、第1の絞り羽根セット32と第2の絞り羽根セット33(14枚の全ての絞り羽根30)の開閉駆動ダボ32Bと33Bは、円板状カム板20に向けて、回動中心ダボ32Aと33Aとは反対方向に突出している。
【0037】
第1の円板状回動中心板40は、その中央部に光束を通過させる円形の光束通過開口41を有する。この光束通過開口41の周囲には、第1の絞り羽根セット32を収容する収容凹部42が形成され、この収容凹部42の周囲には、円板状カム板20の外周縁が当接する小径円形段部43が形成され、この小径円形段部43の周囲には、第2の円板状回動中心板50の外周縁が相対回転不能に嵌合される大径円形段部44が形成されている。収容凹部42には、第1の絞り羽根セット32の回動中心ダボ32Aに対応させて、周方向に等角度間隔で7個の回動中心穴45が形成されている。
【0038】
第2の円板状回動中心板50は、その中央部に光束を通過させる円形の光束通過開口51を有する。この光束通過開口51の周囲には、第2の絞り羽根セット33を収容する収容凹部52が形成され、この収容凹部52には、第2の絞り羽根セット33の回動中心ダボ33Aに対応させて、周方向に等角度間隔で7個の回動中心穴53が形成されている。
【0039】
円板状カム板20は、実施の形態1と同様の構成を有していて、そのカム溝22に第1の絞り羽根セット32の開閉駆動ダボ32Bが嵌まり、そのカム溝23に第2の絞り羽根セット33の開閉駆動ダボ33Bが嵌まる。
【0040】
以上の構成の絞り装置2を使用するときは、第1の絞り羽根セット32の回動中心ダボ32Aを第1の円板状回動中心板40の回動中心穴45に回動自在に嵌め、第2の絞り羽根セット33の回動中心ダボ33Aを第2の円板状回動中心板50の回動中心穴53に回動自在に嵌め、円板状カム板20の外周縁を第1の円板状回動中心板40の小径円形段部43に当接させて第1の絞り羽根セット32の開閉駆動ダボ32Bを円板状カム板20のカム溝22に嵌め、第2の円板状回動中心板50の外周縁を第1の円板状回動中心板50の大径円形段部44に相対回転不能に嵌合して第2の絞り羽根セット33の開閉駆動ダボ33Bを円板状カム板20のカム溝23に嵌める。この状態で、円板状カム板20を第1の円板状回動中心板40と第2の円板状回動中心板50に対して相対回動させる。すると、第1の絞り羽根セット32と第2の絞り羽根セット33が、開閉駆動ダボ32Bと33Bを介して回動中心ダボ32Aと33Aを中心に回動して、第1の絞り羽根セット32と第2の絞り羽根セット33の重なりの程度が変化して可変開口絞りVAの径が変化することにより、透過光量が制御される。第1の円板状回動中心板40及び第2の円板状回動中心板50と円板状カム板20との相対回転は、例えば、第1の円板状回動中心板40及び第2の円板状回動中心板50と円板状カム板20を貫通する図示しないレバーや長孔等を利用した周知の技術を用いて行うことができる。
【0041】
本実施の形態2も実施の形態1と同様に、2種類の形状の第1の絞り羽根セット32と第2の絞り羽根セット33を、可変開口絞りVAの径が最大径から中間径の間では第1の絞り羽根セット32(絞り開口形成縁部32C)が有効な光量制限絞り開口を形成し、可変開口絞りVAの径が中間径から最小径の間では第2の絞り羽根セット33(絞り開口形成縁部33C)が有効な光量制限絞り開口を形成するように切り替えて使用するため、より広い範囲の絞り開口の径において絞り開口形状を円形に近くすることができる。
【0042】
また、本実施の形態2によれば、第1の絞り羽根セット32と第2の絞り羽根セット33が円板状カム板20を介して互いに反対側に位置していて干渉しないため、複数枚の絞り羽根が重なり合って競り上がるのをより確実に防止することができる。
【0043】
以上の実施の形態では、第1の絞り羽根セット32と第2の絞り羽根セット33の2種類の絞り羽根セットを用いる場合を例示して説明したが、絞り羽根セットは3種類またはそれ以上とすることもできる。絞り羽根セットを3種類とする場合、例えば、実施の形態1と2を組み合わせて、円板状カム板に3種類のカム溝を設け、円板状カム板の一方の側に1種類の絞り羽根セットを位置させ、他方の側に2種類の絞り羽根セットを位置させることが好ましい。
【0044】
以上の実施形態では、第1の絞り羽根セット32と第2の絞り羽根セット33の2種類の絞り羽根セットを使用した場合を例示して説明したが、絞り羽根セットの種類の数はこれに限定されず、3種類以上としてもよい。この場合、絞り羽根セットの種類の数に応じて、極めて円形に近い形状(真円形状)の可変開口絞りが形成されるポイントを増やすことができて有利である。
【0045】
以上の実施の形態では、第1の絞り羽根セット32と第2の絞り羽根セット33を7枚ずつとして合計14枚の絞り羽根30を使用した場合を例示して説明したが、絞り羽根の枚数はこれに限定されず適宜変更可能である。
【0046】
以上の実施の形態では、円板状カム板20に、第1の絞り羽根セット32の開閉駆動ダボ32Bが嵌まるカム溝22と、第2の絞り羽根セット33の開閉駆動ダボ33Bが嵌まるカム溝23とを形成している。しかし、円板状カム板を省略して各絞り羽根自体にカム溝を形成し、各絞り羽根の開閉駆動ダボを隣接する絞り羽根のカム溝に嵌める態様も可能である。
【0047】
以上の実施形態では、円板状回動中心板10に円形段部13を一体形成した場合を例示して説明したが、円板状回動中心板10と、円形段部13を有する部材とを別部材として構成する態様も可能である。
【0048】
以上の実施形態では、第1の絞り羽根セット32と第2の絞り羽根セット33のうち、可変開口絞りVAを形成しない方の絞り羽根セットは、絞り動作中において、可変開口絞りVAの外側で僅かに動くようになっている。しかし、例えば円板状カム板20のカム溝22、23の形状を工夫することで、可変開口絞りVAを形成しない方の絞り羽根セットが可変開口絞りVAの外側で停止(待機)するようにしてもよいし、あるいは可変開口絞りVAの外側からさらに最大径方向に戻るように動作させることも可能である。これにより、絞り羽根30の競り上がり防止効果をより顕著に得ることができる。
【0049】
以上の実施形態では、Fナンバーが8程度のときに第1の絞り羽根セット32が極めて円形に近い形状(真円形状)の可変開口絞りVAを形成し、Fナンバーが22程度のときに第2の絞り羽根セット33が極めて円形に近い形状(真円形状)の可変開口絞りVAを形成する場合を例示して説明した。しかし、第1の絞り羽根セット32と第2の絞り羽根セット33が極めて円形に近い形状(真円形状)の可変開口絞りVAを形成するポイントはこれに限定されず、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 絞り装置
10 円板状回動中心板
11 光束通過開口
12 収容凹部
13 円形段部
14 回動中心穴
20 円板状カム板
21 光束通過開口
22 カム溝
22A 絞り開口形成面
22B 絞り開口非形成面
23 カム溝
23A 絞り開口非形成面
23B 絞り開口形成面
30 絞り羽根
32 第1の絞り羽根(第1の絞り羽根セット)
32A 回動中心ダボ
32B 開閉駆動ダボ
32C 絞り開口形成縁部
33 第2の絞り羽根(第2の絞り羽根セット)
33A 回動中心ダボ
33B 開閉駆動ダボ
33C 絞り開口形成縁部
2 絞り装置
40 第1の円板状回動中心板
41 光束通過開口
42 収容凹部
43 小径円形段部
44 大径円形段部
45 回動中心穴
50 第2の円板状回動中心板
51 光束通過開口
52 収容凹部
53 回動中心穴
VA 可変開口絞り
O 撮影光軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回動中心ダボと開閉駆動ダボと絞り開口形成縁部を有する複数枚の絞り羽根を有し、
円周方向に離間させて配置した上記複数枚の絞り羽根を、上記開閉駆動ダボを介して上記回動中心ダボを中心に回動させ、上記複数枚の絞り羽根の重なりの程度を変化させて該複数枚の絞り羽根の絞り開口形成縁部によって形成される絞り開口の径を変化させる絞り装置において、
上記複数枚の絞り羽根は、その絞り開口形成縁部の形状が異なる複数セットが用意されていること、
上記複数セットの絞り羽根の絞り開口形成縁部の形状は、上記絞り開口の径を変化させるに際し、上記複数の絞り羽根セットのうち、絞り開口を形成する絞り羽根セットが切り替わるように設定されていること、及び
いずれかのセットの絞り羽根の絞り開口形成縁部が絞り開口を形成しているとき、残りのセットの絞り羽根の絞り開口形成縁部は絞り開口を形成しないこと、
を特徴とする絞り装置。
【請求項2】
請求項1記載の絞り装置において、
上記複数の絞り羽根セットの開閉駆動ダボがそれぞれ嵌まる複数種類のカム溝を形成した円板状カム板を有し、この円板状カム板の複数種類のカム溝の形状は、上記絞り開口の径を変化させるに際し、上記複数の絞り羽根セットのうち、絞り開口を形成する絞り羽根セットが切り替わるように設定されていることを特徴とする絞り装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の絞り装置において、
上記複数セットの絞り羽根の絞り開口形成縁部の形状は、各セットの絞り羽根の絞り開口形成縁部が絞り開口を形成しているときに、それぞれ最も真円に近いポイントを持つように設定されていることを特徴とする絞り装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項記載の絞り装置において、
上記絞り羽根セットは2種類が用意されていること、
全ての絞り羽根の回動中心ダボと開閉駆動ダボは互いに反対の方向に突出していること、
全ての絞り羽根の回動中心ダボが嵌まる回動中心穴を形成した円板状回動中心板が備えられていること、及び
2種類の絞り羽根セットの開閉駆動ダボがそれぞれ嵌まる2種類のカム溝を円周方向に交互に形成した、上記円板状回動中心板に対して相対回転可能な円板状カム板が備えられていることを特徴とする絞り装置。
【請求項5】
請求項4記載の絞り装置において、
上記絞り開口の径を変化させるに際し、上記絞り開口の最大径と最小径の略中間径において、上記2種類の絞り羽根セットのうち絞り開口を形成する絞り羽根セットが切り替わることを特徴とする絞り装置。
【請求項6】
請求項1ないし3のいずれか1項記載の絞り装置において、
上記絞り羽根セットは2種類が用意されていること、
上記2種類の絞り羽根セットの開閉駆動ダボがそれぞれ嵌まる2種類のカム溝を交互に形成した円板状カム板を有すること、及び
上記2種類の絞り羽根セットは上記円板状カム板を挟んだ表裏に位置することを特徴とする絞り装置。
【請求項7】
請求項1ないし3のいずれか1項記載の絞り装置において、
絞り羽根セットは2種類が用意されていること、
第1の絞り羽根セットの絞り羽根の回動中心ダボと、第2の絞り羽根セットの絞り羽根の回動中心ダボは互いに反対方向に突出しており、全ての絞り羽根の開閉駆動ダボは回動中心ダボとは反対方向に突出していること、
第1の絞り羽根セットの開閉駆動ダボが嵌まるカム溝と、第2の絞り羽根セットの開閉駆動ダボが嵌まるカム溝とを円周方向に交互に形成した円板状カム板が備えられていること、
上記円板状カム板を挟んで、第1の絞り羽根セット用の第1円板状回動中心板と、第2の絞り羽根セット用の第2円板状回動中心板とが備えられ、この第1、第2の円板状回動中心板にそれぞれ、第1、第2の絞り羽根セットの絞り羽根の回動中心ダボが回動自在に嵌まる回動中心穴が形成されていること、及び
第1、第2の円板状回動中心板は、円板状カム板に対して相対回動することを特徴とする絞り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−123299(P2012−123299A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275623(P2010−275623)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(311015207)ペンタックスリコーイメージング株式会社 (81)
【Fターム(参考)】