説明

給油継手部品を備えたリニアガイド装置

【課題】給油継手部品が簡単な構造でエンドキャップに確実に固定されて、潤滑油が漏れない給油継手部品を備えたリニアガイド装置を提供する。
【解決手段】エンドキャップの上側には凹部又は凸部が形成され、給油口と、その上側に配置される潤滑剤供給源の給油出口と、を接続する給油口を有する給油継手部品を備え、この給油継手部品は、エンドキャップの凹部又は凸部に嵌合する凸部又は凹部を有し、エンドキャップの給油口と給油継手部品の給油口は油漏れ防止部材を介して連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給油継手部品を備えたリニアガイド装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、エンドキャップ上面からテーブルを介して給油するとき,エンドキャップ上面とテーブルの間にスキマが空く場合に,そのスキマを埋めて潤滑剤供給の通路を形成するために、給油継手部品を用いなければならず、この給油継手部品をエンドキャップに固定する時の作業がしにくい等の課題があった。
【0003】
この部分の改善の先行技術としては、図6に示す給油継手部品を備えたリニアガイド装置(特開2008−267591号公報)がある。リニアガイド装置は、案内レール4とスライダ5と複数個の転動体(不図示)とを備えている。案内レール4およびスライダ5は、互いに対向配置されて転動体の転動通路(不図示)を形成する転動溝(転動体が「ころ」の場合には転動面)を有する。スライダ5は、さらに、転動体の戻し通路(不図示)と、前記戻し通路と前記転動通路とを連通させる方向転換路(不図示)を有する。そして、前記転動通路、戻し通路、および方向転換路で転動体の循環経路が構成され、この循環経路内を転動体が循環することにより、案内レール4およびスライダ5の一方が他方に対して相対的に直線運動する。
【0004】
このようなリニアガイド装置のスライダ5においては、スライダ本体3の直動方向端部にエンドキャップ2が固定されている。エンドキャップ2は、案内レール4の幅方向両側に配置される脚部23と、両脚部と直交する方向に延びて両脚部を連結する胴部21とからなる。そして、両脚部のスライダ本体側の面に、転動体の方向転換路の外側溝(不図示)が形成され、胴部21には給油口(不図示)が形成されている。また、エンドキャップ2には、前記給油口から前記方向転換路に向かう油路(不図示)が形成されている。スライダ本体3の上面がスライダ5の上に取り付けるテーブル(不図示)の取り付け面となる。
【0005】
従来より、スライダ5の上に取り付けるテーブル内に油路を設け、この油路を通してエンドキャップ2に給油することが行われている。その際に、エンドキャップ2の上面がスライダ本体3の上面より低く形成されている場合には、例えば図6及び図7に示すように、エンドキャップ2の胴部21の上面に設けた給油口22の上に、ほぼ円柱体からなるブロック状の給油継手部品100を取り付けている。
【0006】
図7に示すように、給油継手部品100の円板状の下端突出部101に、エンドキャップ2の給油口22に連通する給油口101aが形成されている。また、エンドキャップ2の給油口22の上に、給油継手部品100の下端突出部101が遊嵌される円形の凹部230が形成されている。この凹部230に、給油継手部品100の下端突出部101が嵌合されている。
【0007】
しかしながら、この先行技術には、エンドキャップ2の凹部230の内周面に更に凹部を設けなければならないという問題がある。一般にエンドキャップ2は樹脂の射出成形で形成されるが,射出成形する場合には,この内周面の凹部で金型が抜けなくなってしまう。金型を無理に抜くことは出来るが,この場合はエンドキャップ内周面の凹部の形状が崩れるので,給油継手部品100の下端突出部101が凹部230とぴったりと嵌合せず、潤滑油が漏れやすくなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−267591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は上記のような従来技術が有する問題点を解決し、給油継手部品が簡単な構造でエンドキャップに確実に固定されて、潤滑油が漏れない給油継手部品を備えたリニアガイド装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明は次のような構成からなる。すなわち、本発明に係る給油継手部品を備えたリニアガイド装置は案内レールの幅方向両側に配置される脚部と、両脚部と直交する方向に延びて両脚部を連結する胴部と、からなり、前記両脚部のスライダ本体側の面に、転動体の方向転換路の外側溝が形成され、前記胴部の上面に給油口が形成され、この給油口から前記方向転換路に向かう油路が形成されているエンドキャップが、スライダ本体の直動方向端部に固定されているスライダを備えたリニアガイド装置であって、前記エンドキャップの胴部の上側には凹部又は凸部が形成され、前記給油口と、その上側に配置される潤滑剤供給源の給油出口と、を接続する給油口を有する給油継手部品を備え、この給油継手部品は、前記エンドキャップの凹部又は凸部に嵌合する凸部又は凹部を有し、前記エンドキャップの給油口と前記給油継手部品の給油口は油漏れ防止部材を介して連結されていることを特徴としている。
【0011】
また、本発明に係る給油継手部品を備えたリニアガイド装置は案内レールの幅方向両側に配置される脚部と、両脚部と直交する方向に延びて両脚部を連結する胴部と、からなり、前記両脚部のスライダ本体側の面に、転動体の方向転換路の外側溝が形成され、前記胴部の上面に給油口が形成され、この給油口から前記方向転換路に向かう油路が形成されているエンドキャップが、スライダ本体の直動方向端部に固定されているスライダを備えたリニアガイド装置であって、前記エンドキャップの胴部の上側には凹部が形成され、前記給油口と、その上側に配置される潤滑剤供給源の給油出口と、を接続する給油口を有する給油継手部品を備え、この給油継手部品は、前記エンドキャップの凹部に対応する凹部を有し、前記エンドキャップの凹部と前記給油継手部品の凹部はピンによって連結され、かつ、前記エンドキャップの給油口と前記給油継手部品の給油口は油漏れ防止部材を介して連結されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、給油継手部品が簡単な構造でエンドキャップに確実に固定されて、潤滑油が漏れないという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態の給油継手部品を示す平面図(a)と正面図(b)である。
【図2】エンドキャップを示す平面図(a)と正面図(b)である。
【図3】図1の給油継手部品の取り付け状態を示す部分断面図である。
【図4】第2実施形態の給油継手部品を示す図である。
【図5】図4の給油継手部品の取り付け状態を示す部分断面図である。
【図6】リニアガイド装置を示す斜視図である。
【図7】従来の給油継手部品とその取付構造を説明する図である
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、第1実施形態の給油継手部品1を示す平面図(a)と正面図(b)である。この給油継手部品1は、ほぼ直方体状の本体部11と、凸部としての円柱状の突起12と、からなり、中心に油路13が形成されている。本体部11の上面には、スライダ本体の上面に固定されるテーブルに設けられた油路(不図示)と連結する部分に配設される油漏れ防止部材としてのOリングを嵌める凹所11aが形成されている。この給油継手部品1は、エンドキャップ2と同じ材料、例えばPOMなどの合成樹脂を用いた射出成形法で得ることができる。
【0015】
図2は、エンドキャップ2を示す平面図(a)と正面図(b)である。エンドキャップ2の胴部21の上面中心には給油継手部品1の油路13と連通する給油口22が形成されている。この給油口22は、エンドキャップ2のスライダ本体3側の面に形成された、方向転換路に向かう油路と接続されている。給油口22の周囲にOリングを嵌める凹所11bが形成されている。また胴部21の上面には給油継手部品1の突起12と対応する位置に直径が突起12の直径よりも多少小さい穴15が形成されている。穴15は、突起12と軽い締まりばめをする様になっていれば良く、突起12は穴15と締まりばめにて給油継手部品1をエンドキャップ2に固定することが出来れば、どの様な断面形状であっても良い。
【0016】
図3は、給油継手部品1をエンドキャップ2に取り付けた状態の図である。給油継手部品1をエンドキャップ2に取り付けるには、まず、エンドキャップ2の凹所11bにOリング16を嵌め込み、次に給油継手部品1の突起12をエンドキャップ2の穴15に合せ、嵌入することによって行われる。
したがって、この実施形態の油継手部品を備えたリニアガイド装置によれば、簡単な構造で給油継手部品がエンドキャップに確実に固定されて、潤滑油が漏れることがない。
【0017】
図4は第2実施形態の給油継手部品7を示す正面図であり、図5は第2実施形態の給油継手部品7をエンドキャップ2に取り付けた状態の図である。第2実施形態の給油継手部品7は第1の実施形態の給油継手部品1の突起12の代わりに凹部としての穴17とした点が異なる。第2実施形態のエンドキャップ2は第1の実施形態のエンドキャップ2と同じものである。
【0018】
給油継手部品7をエンドキャップ2に取り付けるには、まず、エンドキャップ2の凹所11bにOリング16を嵌め込み、次にエンドキャップ2の2箇所の穴15にピン18を圧入する。このピン18の直径は穴15及び給油継手部品7の穴17の直径よりも多少大きくなっている。そしてこの2箇所のピン18の位置に給油継手部品7の穴17を合せ給油継手部品7押し込むことによって、給油継手部品7がエンドキャップ2に固定される。ピン18は、穴15及び穴17と締まりばめによって給油継手部品7をエンドキャップ2に固定することが出来れば、どの様な断面形状であっても良く、スプリングピン等を用いても良い。
この第2の実施形態の給油継手部品を備えたリニアガイド装置によっても、簡単な構造で給油継手部品がエンドキャップに確実に固定されて、潤滑油が漏れることがない。
【0019】
なお、第2実施形態の説明において、まずエンドキャップ2の2箇所の穴15にピン18を圧入した後に給油継手部品7の穴17をそのピン18の位置に合わせて給油継手部品7を押し込んでエンドキャップ2に固定する例を示したが、まず、ピン18を給油継手部品7の穴17に圧入し、この給油継手部品7に圧入されたピン18をエンドキャップ2の穴15に圧入して、給油継手部品7をエンドキャップ2に固定しても良い。
また、突起12と穴15が締まりばめする構造を示したが、必ずしも締まりばめでなくとも、例えば穴が奥側で広がる様な構造としておき、突起も先端で広がる構造として、突起先端の広がりが穴の中で引っ掛かる構造としても良い。例えば、エンドキャップ2の穴15が、エンドキャップ2の肉盗みと貫通できるような場合には、このような構造でも良い。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、給油継手部品を備えたリニアガイド装置として、各種機械装置に広く適用できる。
【符号の説明】
【0021】
1 給油継手部品
2 エンドキャップ
3 スライダ本体
4 案内レール
12 突起(凸部)
15 穴(凹部)
16 Oリング(油漏れ防止部材)
17 穴(凹部)
18 ピン
21 胴部
22 給油口
23 脚部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
案内レールの幅方向両側に配置される脚部と、両脚部と直交する方向に延びて両脚部を連結する胴部と、からなり、前記両脚部のスライダ本体側の面に、転動体の方向転換路の外側溝が形成され、前記胴部の上面に給油口が形成され、この給油口から前記方向転換路に向かう油路が形成されているエンドキャップが、スライダ本体の直動方向端部に固定されているスライダを備えたリニアガイド装置であって、
前記エンドキャップの胴部の上側には凹部又は凸部が形成され、前記給油口と、その上側に配置される潤滑剤供給源の給油出口と、を接続する給油口を有する給油継手部品を備え、この給油継手部品は、前記エンドキャップの凹部又は凸部に嵌合する凸部又は凹部を有し、前記エンドキャップの給油口と前記給油継手部品の給油口は油漏れ防止部材を介して連結されていることを特徴とするリニアガイド装置。
【請求項2】
案内レールの幅方向両側に配置される脚部と、両脚部と直交する方向に延びて両脚部を連結する胴部と、からなり、前記両脚部のスライダ本体側の面に、転動体の方向転換路の外側溝が形成され、前記胴部の上面に給油口が形成され、この給油口から前記方向転換路に向かう油路が形成されているエンドキャップが、スライダ本体の直動方向端部に固定されているスライダを備えたリニアガイド装置であって、
前記エンドキャップの胴部の上側には凹部が形成され、前記給油口と、その上側に配置される潤滑剤供給源の給油出口と、を接続する給油口を有する給油継手部品を備え、この給油継手部品は、前記エンドキャップの凹部に対応する凹部を有し、前記エンドキャップの凹部と前記給油継手部品の凹部はピンによって連結され、かつ、前記エンドキャップの給油口と前記給油継手部品の給油口は油漏れ防止部材を介して連結されていることを特徴とするリニアガイド装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−94729(P2011−94729A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−249888(P2009−249888)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】