説明

給湯機

【課題】 熱源機を利用せずに熱交換器のみで水を加熱する場合でも、十分な水量を温水利用箇所に供給することができる給湯機を提供する。
【解決手段】 給湯機10は、案内路81と、蓄熱タンク22と、第3熱交換器92と、バーナ加熱装置90と、第1バイパス水路89と、分配弁96と、第2バイパス水路97を備えている。第2バイパス水路97は、案内路81に設けられた分配弁96をパイパスするように設けられている。そのため、分配弁96によって分配弁96を通過して流れる案内路内の水が減少した場合でも、第2バイパス水路97を設けることで、分配弁96よりも下流へと流れる案内路81内の水を増加させることができる。これによって、第3熱交換器92によって加熱される水の量を増加させることができ、第3熱交換器92のみで水を加熱する場合でも、十分な水量を温水利用箇所100に供給することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水を加熱して温水利用箇所に供給する給湯機に関する。特に、水を加熱するための手段として、外部の熱源により加熱された熱媒との熱交換を利用する給湯機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、水を加熱して温水利用箇所に供給する給湯機が開示されている。特許文献1の給湯機は、供給源から供給された水を温水利用箇所まで案内する案内路と、ヒートポンプを循環する熱媒との熱交換によって案内路内の水を加熱する熱交換器と、熱交換器より温水利用箇所側の案内路内の水を燃料の燃焼によって加熱する熱源機を備えている。この給湯機では、温水利用箇所での設定温度が熱交換器の能力範囲以内である場合、熱交換器を用いて水を加熱し、温水利用箇所での設定温度が熱交換器の能力範囲以上である場合、熱交換器を経た水を熱源機によってさらに加熱する。
【0003】
【特許文献1】特開2004−125226号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃料を燃焼させる熱源機は、加熱能力が高い。従って、熱交換器によってある程度昇温した水を熱源機でさらに加熱すると、温水利用箇所での設定温度以上の水になることが多い。この場合には、加熱された水に加熱されていない水を混ぜ合わせることによって、加熱された水を設定温度にまで冷やす必要がある。
給湯機を設置する環境によっては、加熱されていない水を供給する水の供給源が複数個用意できない場合も多い。本発明者らは、供給源から供給された水を熱交換器に至る前の案内路から分岐させて熱源機より下流側の案内路へと合流させるパイパス水路と、バイパス水路に流れ込む水の量を調整する調整手段とを設けた給湯機を考案した。本発明者らが考案した給湯機によれば、熱交換器を経た水を熱源機でさらに加熱する場合に、単数の供給源を用いて所望の設定温度に調整された水を温水利用箇所に供給することができる。
【0005】
しかしながら、調整手段を案内路に設けた場合、調整手段の圧損が大きい。このために、調整手段を案内路に設けると、調整手段を設けない場合に比べて案内路を流れる水の量が減少する。
熱源機を利用しなければ温水利用箇所に設定温度の水を供給することができない場合、熱源機の高い加熱能力によって水が設定温度よりも十分に高い温度まで加熱される場合があるために、上記のバイパス水路の水量が多くなるように調整手段を調整する必要がある。バイパス水路を利用して水量を確保することができるために、温水利用箇所に十分な水量を供給することができる。
一方、熱交換器は、熱源機と比べて加熱能力が低い。従って、熱源機を利用しなくても温水利用箇所に設定温度の水を供給することができる場合、熱交換器のみでは設定温度よりも十分に高い温度まで加熱されない場合があるために、上記のバイパス水路の水量を多くすることができない。バイパス水路を利用して水量を確保することできないために、温水利用箇所に十分な水量を供給することができない。
熱源機を利用しなくても温水利用箇所に設定温度の水を供給することができる場合であっても、熱源機を利用して水を設定温度よりも十分に高い温度まで加熱し、上記のバイパス水路の水量を多くすることも考えられる。しかしながら、熱源機を利用する必要がないにもかかわらず熱源機を利用する手法を採用することは、エネルギー効率の観点から見て好ましくない。
【0006】
本発明は上記の問題を解決する。すなわち本発明は、熱源機を利用せずに熱交換器のみで水を加熱する場合でも、十分な水量を温水利用箇所に供給することができる給湯機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、水を加熱して温水利用箇所に供給する給湯機を提供する。この給湯機は、案内路と、蓄熱タンクと、熱交換器と、熱源機と、第1バイパス水路と、調整手段と、第2バイパス水路を備えている。案内路は、水の供給源から温水利用箇所まで水を案内する。蓄熱タンクは、外部の熱源により加熱された熱媒を貯留する。熱交換器は、蓄熱タンクに貯留された熱媒との熱交換によって案内路内の水を加熱する。熱源機は、熱交換器より温水利用箇所側の案内路内の水を燃料の燃焼によって加熱する。第1バイパス水路は、一端が熱交換器より供給源側の案内路に接続されているとともに、他端が熱源機より温水利用箇所側の案内路に接続されている。すなわち、第1バイパス水路は、熱交換器と熱源機をバイパスしている。調整手段は、第1バイパス水路の前記一端と案内路との間に配置されており、第1バイパス水路に流れ込む水の量を調整する。第2バイパス水路は、一端が調整手段より供給源側の案内路に接続されているとともに、他端が調整手段と熱交換器との間の案内路に接続されている。すなわち、第2バイパス水路は、調整手段をバイパスしている。
なお、上述した「調整手段」は、供給源から供給された水を案内路と第1バイパス水路に分岐する分配弁と言い換えることができる。なお、案内路と第1バイパス水路のそれぞれに調整弁を設置した構成としてもよい。この場合、一対の調整弁が調整手段として機能する。
【0008】
本発明の給湯機は、調整手段をバイパスする第2バイパス水路を備えている。第2バイパス水路を利用すると、調整手段の圧損の影響を受けないために、多くの水を熱交換器に供給することができる。このために、熱源機を利用せずに熱交換器のみで水を加熱する場合に、十分な水量を温水利用箇所に供給することができる。
【0009】
本発明の給湯機では、蓄熱タンクに貯留された熱媒の温度を検知する温度センサと、調整手段を制御する制御手段とをさらに備えていてもよい。制御手段は、温度センサによって検出された温度によって、次の2つの運転を選択して実行する。
(1)温度センサによって検出された温度が、温水利用箇所での設定温度に基づいた温度より高い間は、熱交換器を利用して水を加熱し、第1バイパス水路に流れ込む水の量が少なくなるように調整手段を制御し、第2バイパス水路に流れ込む水の量が多くなるように調整手段を制御する第1運転を実行する。
(2)温度センサによって検出された温度が、温水利用箇所での設定温度に基づいた温度より低い間は、熱源機を利用して水を加熱し、第1バイパス水路に流れ込む水の量が多くなるように調整手段を制御し、第2バイパス水路に水が流れ込まないように調整手段を制御する第2運転を実行する。
なお、温度センサは、蓄熱タンク内に設けられていてもよいし、他の部分(例えば熱媒の循環経路)に設けられていてもよい。また、上記の「温水利用箇所での設定温度に基づいた温度」は、設定温度そのものであってもよいし、設定温度に予め決められている値が加算された値であってもよい。
【0010】
温度センサによって検出された温度が、温水利用箇所での設定温度に基づいた温度より高い場合には、熱交換器のみによって案内路内の水を設定温度に基づいた温度まで上昇させることができる。そのため、この場合には、熱交換器のみを用いて案内路内の水を加熱する。熱源機よりもエネルギー効率のよい熱交換器のみを用いて案内路内の水を加熱することで、給湯機のエネルギー効率を向上させることができる。その一方、熱交換器の出力が熱源機に比べて低いために、案内路内の水が温水利用箇所での設定温度よりも十分に高い温度まで昇温しない場合がある。この場合には、第1バイパス水路に流れ込む水の量が少なくなるように調整手段を制御する第1運転を実行する。これによって、設定温度に調整された水を温水利用箇所に供給することができる。
【0011】
温度センサによって検出された温度が、温水利用箇所での設定温度に基づいた温度より低い場合には、熱交換器のみでは案内路内の水を設定温度に基づいた温度まで上昇させることができない。そのため、この場合には、熱交換器と熱源機を用いて案内路内の水を加熱する。熱源機を用いて水を加熱する場合、その高い出力によって案内路内の水が温水利用箇所での設定温度よりも十分に高い温度まで加熱される。第1バイパス水路に流れ込む水の量が多くなるように調整手段を制御する第1運転を実行することによって、第1バイパス水路に流れ込む水を用いて案内路内の水を温水利用箇所での設定温度にまで調整することができる。これによって、設定温度に調整された水を温水利用箇所に供給することができる。
【0012】
本発明野の給湯機では、外部の熱源機としてヒートポンプを備えていることが好ましい。この場合、蓄熱タンクは、ヒートポンプによって加熱された熱媒を貯留する。
エネルギー効率が高いヒートポンプを用いて蓄熱タンクの熱媒を加熱することで、給湯機のエネルギー効率をさらに向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、熱源機を利用せずに熱交換器のみで水を加熱する場合に、十分な水量を温水利用箇所に供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
下記に詳細に説明する実施例の構成を列記する。
(特徴1)調整手段と第2バイパス水路の上記の一端との間の案内路には、しぼり(例えば水流サーボ)が設けられている。その一方、第2バイパス水路には、しぼりが設けられていない。
(特徴2)蓄熱タンクと熱交換器の間には、蓄熱タンクと熱交換器の間で熱媒を案内する循環路と、循環路内の熱媒を循環させる循環ポンプが設けられている。
(特徴3)第2バイパス水路に流れ込む水の量を調整する第2調整手段(例えば開閉弁)がさらに設けられている。
(特徴4)第2調整手段は、制御手段によって制御されている。制御手段は、第1運転の間は、第2バイパス水路に流れ込む水の量が多くなるように第2調整手段を制御する(例えば開閉弁を開く)。また、制御手段は、第2運転の間は、第2バイパス水路に流れ込む水の量が少なくなるように第2調整手段を制御する(例えば開閉弁を閉じる)。
(特徴5)一端が熱交換器と熱源機との間の案内路に接続されているとともに、他端が熱源機と第1バイパス水路の他端との間の案内路に接続されている第3バイパス水路が設けられている。第3バイパス水路に流れ込む水の量を調整する第3調整手段が設けられている。
(特徴6)第3調整手段は、制御手段によって制御されている。制御手段は、第1運転の間は、第3バイパス水路に水の全量が流れ込むように第3調整手段を制御する。また、制御手段は、第2運転の間は、第3バイパス水路に流れ込まないように第3調整手段を制御する。
【実施例】
【0015】
本発明の実施例に係る給湯機について、図面を参照しながら説明する。図1は、給湯機10の概略構成を示す。給湯機10は、温水利用箇所100(例えば、蛇口、浴槽、シャワー等)に温水を供給する。ユーザは、温水利用箇所100から供給される温水の温度Taを設定することができる。以下では、温度Taのことを設定温度と呼ぶ。
図示するように、給湯機10は、ヒートポンプ50と、タンク水系統20と、給湯系統80を備えている。ヒートポンプ50は、外気を利用して高温を生成する熱源である。タンク水系統20は、蓄熱タンク22と、蓄熱タンク22に接続されている各水路により構成されている。タンク水系統20は、ヒートポンプ50から熱を回収して蓄熱タンク22に蓄熱するとともに、蓄熱タンク22が蓄熱している熱を給湯系統80に供給する。給湯系統80は、水道水供給源105と温水利用箇所100に接続されている。給湯系統80は、タンク水系統20から供給される熱を利用して水道水供給源105から供給される水を加熱し、加熱した水を温水利用箇所100に供給する各水路により構成されている。また、給湯機10は、制御装置60を備えている。制御装置60は、図示されない配線によって給湯機10の各部と接続されており、給湯機10の各部の動作を制御する。
【0016】
ヒートポンプ50は、熱媒体(本実施例では二酸化炭素)を循環させる熱媒体循環路51と、熱媒体循環路51に配設されている第1熱交換器(蒸発器)52と、圧縮器53と、第2熱交換器(凝縮器)54と、膨張弁55とを備えている。圧縮器53が熱媒体循環路51内の熱媒体を送り出すので、熱媒体が、第1熱交換器52、圧縮器53、第2熱交換器54、膨張弁55の順に熱媒体循環路51内を循環する。
【0017】
第1熱交換器52は、外気を送風するファンを備えており、送風した外気と熱媒体循環路51内の熱媒体との間で熱交換させる熱交換器である。後に説明するように、第1熱交換器52には、膨張弁55を通過後の低圧低温の液体状態にある熱媒体が供給される。第1熱交換器52は、熱媒体と外気とを熱交換させることによって、熱媒体を加熱する。熱媒体は、加熱されることにより気化して、低圧高温の気体状態となる。
【0018】
圧縮器53は、熱媒体循環路51内の熱媒体を圧縮して第2熱交換器54側に送り出す。圧縮器53には、第1熱交換器52を通過後の熱媒体が供給される。すなわち、低圧高温の気体状態にある熱媒体が供給される。圧縮器53が熱媒体を圧縮すると、熱媒体は圧縮されて、高温高圧の超臨界状態となる。
【0019】
第2熱交換器54は、熱媒体循環路51内の熱媒体と後述する蓄熱循環水路30内の水との間で熱交換させる熱交換器である。第2熱交換器54の熱媒体循環路51には、圧縮器53から送り出された高温高圧の気体状態にある熱媒体が供給される。第2熱交換器54では、熱媒体によって蓄熱循環水路30内の水が加熱される。一方、熱媒体は、熱を奪われることによって冷却され、低温高圧の液体状態となる。
【0020】
膨張弁55には、第2熱交換器54を通過後の熱媒体が供給される。すなわち、低温高圧の液体状態の熱媒体が供給される。熱媒体は、膨張弁55を通過する際に、減圧されて膨張する。これによって、低温低圧の液体状態となる。膨張弁55を通過した熱媒体は、上述したように第1熱交換器52に供給される。
【0021】
以上のように、ヒートポンプ50が作動すると、熱媒体循環路51内を熱媒体がその温度と圧力を変化させながら循環し、第1熱交換器52によって吸収された熱が第2熱交換器54によって蓄熱循環水路30内の水へと供給され、蓄熱循環水路30内の水が加熱される。
【0022】
タンク水系統20は、蓄熱タンク22と、蓄熱循環水路30と、熱供給循環水路35と、シスターン40を備えている。
【0023】
蓄熱循環水路30は、上流端が蓄熱タンク22の下部に接続されており、下流端が蓄熱タンク22の上部に接続されている。蓄熱循環水路30には、循環ポンプ32が介装されている。循環ポンプ32は、蓄熱循環水路30内の水を上流側から下流側へ送り出す。また、上述したように、蓄熱循環水路30は、ヒートポンプ50の第2熱交換器54を通過している。ヒートポンプ50を作動させると、蓄熱循環水路30内の水が第2熱交換器54によって加熱される。したがって、循環ポンプ32とヒートポンプ50を作動させると、蓄熱タンク22の下部の水が第2熱交換器54に送られて加熱され、加熱された水が蓄熱タンク22の上部に戻される。すなわち、蓄熱循環水路30は、蓄熱タンク22内に蓄熱するための水路である。
【0024】
熱供給循環水路35は、上流端が蓄熱タンク22の上部に接続されており、下流端が蓄熱タンク22の下部に接続されている。熱供給循環水路35には、循環ポンプ36が介装されている。循環ポンプ36は、熱供給循環水路35内の水を上流側から下流側へ送り出す。また、熱供給循環水路35は、第3熱交換器92を備えている。第3熱交換器92には、蓄熱タンク22から蓄熱循環水路30によって加熱された水が供給される。第3熱交換器92は、熱供給循環水路35内の水と給湯系統80の案内路81内の水との間で熱交換させる熱交換器である。通常、熱供給循環水路35内を流れる水は案内路81内を流れる水に比べて高温である。したがって、第3熱交換器92では、案内路81内の水が加熱されるとともに、熱供給循環水路35内の水が冷却される。循環ポンプ36を作動させると、蓄熱タンク22の上部の水が第3熱交換器92に送られて冷却され、冷却された水が蓄熱タンク22の下部に戻される。すなわち、熱供給循環水路35は、給湯系統80に熱を供給するための水路である。
【0025】
蓄熱タンク22内には、満水まで水が貯留されている。上述したように、蓄熱循環水路30は加熱された水を蓄熱タンク22の上部に供給し、熱供給循環水路35は冷却された水を蓄熱タンク22の下部に供給する。したがって、蓄熱タンク22内には、その上部に高温の水の層が形成され、その下部に低温の水の層が形成される。このように、高温の層と低温の層が形成されている状態を、温度成層という。また、以下では、高温の層と低温の層の境界部を温度成層境界部という。蓄熱循環水路30により蓄熱が行われると、蓄熱タンク22内の高温の水の量が増えるので、温度成層境界部の位置が下降する。熱供給循環水路35により熱供給(放熱)が行われると、蓄熱タンク22内の低温の水の量が増えるので、温度成層境界部の位置が上昇する。
蓄熱タンク22には、サーミスタ23〜26が取り付けられている。サーミスタ23〜26は、蓄熱タンク22内の水の温度を測定する。図1に示すように、サーミスタ23〜26は、蓄熱タンク22の高さ方向に略均等間隔で取り付けられている。各サーミスタ23〜26は、その取付位置の水の温度を測定する。温度成層境界部の位置は、サーミスタ23〜26の検出値により特定できる。
【0026】
シスターン40は、蓄熱タンク22の上方に設置されている。シスターン40は、その上部が開放されている。シスターン40は、給水路44により水道水供給源105に接続されている。シスターン40内には、水が貯留されている。シスターン40は、シスターン水路42によって蓄熱タンク22に接続されている。シスターン40は、蓄熱タンク22に水を補給する。
【0027】
給湯系統80は、案内路81と、第1バイパス水路89と、第2バイパス水路97と、第3バイパス水路86と、バーナ加熱装置90と、分配弁94,96と、開閉弁98と、水量センサ83,87と、水量サーボ88と、サーミスタ91とを備えている。
【0028】
案内路81は、上流端が水道水供給源105に接続されており、下流端が温水利用箇所100に接続されている。案内路81は、水道水供給源105から供給された水を温水利用箇所100まで案内する。
上述したように、案内路81は、第3熱交換器92を通過している。水道水供給源105から案内路81に水が供給されると、案内路81内の水が第3熱交換器92によって加熱される。案内路81のうち、第3熱交換器92を通過する部分を第1加熱部82と呼ぶ。
また、案内路81は、第3熱交換器92より温水利用箇所100側においてバーナ加熱装置90を通過している。バーナ加熱装置90は、バーナ90aを備えている。バーナ加熱装置90が作動すると、案内路81内の水がバーナ90aによって加熱される。案内路81のうち、バーナ加熱装置90を通過する部分を第2加熱部84と呼ぶ。
【0029】
第1バイパス水路89は、上流端が第3熱交換器92より水道水供給源105側の案内路81に接続されており、下流端がバーナ加熱装置90より温水利用箇所100側の案内路81に接続されている。つまり、第1バイパス水路89は、案内路81のうちの第1加熱部82と第2加熱部84をバイパスしている水路である。
案内路81には、分配弁96が介装されている。分配弁96には、第1バイパス水路89の上流端が接続されている。分配弁96は、第3熱交換器92に流れ込む水の量と、第1バイパス水路89に流れ込む水の量を調整する。
【0030】
本実施例の給湯系統80では、第1バイパス水路89と分配弁96を設けることによって、バーナ加熱装置90によって加熱された水が流れる部分の案内路81に、水道水供給源105から供給された加熱されていない水を注入することができる。これによって、バーナ加熱装置90によって案内路81内の水が温水利用箇所100での設定温度Taに比べて大幅に高い温度まで加熱された場合でも、案内路81内の水を設定温度Taまで冷却することができる。
【0031】
第2バイパス水路97は、上流端が分配弁96より水道水供給源105側の案内路81に接続されており、下流端が分配弁96と第3熱交換器92との間の案内路81に接続されている。つまり、第2バイパス水路97は、分配弁96をバイパスしている。第2バイパス水路97には、開閉弁98が介装されている。
【0032】
本実施例の給湯系統80では、第2バイパス水路97と開閉弁98によって、分配弁96を介さないで水道水供給源105から供給された水を第3熱交換器92に案内することができる。これによって、第3熱交換器92に案内される水の量を増加させることができる。
【0033】
第2バイパス水路97の上流端と分配弁96との間の案内路81には、水量サーボ88が設けられている。水量サーボ88は、分配弁96に流れ込む水の量を調整する。その一方、第2バイパス水路97には水量サーボ(しぼり)が設けられていない。第2バイパス水路97に水量サーボが設けられていないために、第2バイパス水路97を通過して水道水供給源105から第3熱交換器92へと案内される水の流量を十分に確保することができる。
【0034】
第3バイパス水路86は、上流端が第3熱交換器92とバーナ加熱装置90との間の案内路81に接続されており、下流端がバーナ加熱装置90と第1バイパス水路89の下流端との間の案内路81に接続されている。つまり、第3バイパス水路86は、案内路81のうちの第2加熱部84をバイパスしている。
案内路81には、分配弁94が介装されている。分配弁94には、第3バイパス水路86の上流端が接続されている。分配弁94は、第2加熱部84に流れ込む水の量と、第3バイパス水路86に流れ込む水の量を調整する。
【0035】
本実施例の給湯系統80では、第3バイパス水路86と分配弁94によって、バーナ加熱装置90を介さないで案内路81内の水を温水利用箇所100へと案内することができる。そのため、第3熱交換器92のみを用いて案内路81内の水を温水利用箇所100での設定温度Taまで加熱することができる場合には、案内路81内の水がバーナ加熱装置90を通過しないようにすることができる。案内路81内の水が作動していないバーナ加熱装置90内を通過すると、水が大幅に冷却されることがある。案内路81内の水がバーナ加熱装置90を通過しないようにすることで、案内路81内の水が大幅に冷却されることが防止され、熱損失が少なくなる。
【0036】
第1バイパス水路89の下流端よりも温水利用箇所100側の案内路81には、サーミスタ91が設けられている。サーミスタ91は、その位置における案内路81内の水の温度(すなわち、温水利用箇所100に供給される水の温度)を測定する。
第2バイパス水路97の上流端と水量サーボ88との間の案内路81には、水量センサ83が設けられている。水量センサ83は、その位置の案内路81内を流れる水の流量(すなわち、水道水供給源105から供給される水の流量)を測定する。
第3バイパス水路86には、水量センサ87が設けられている。水量センサ87は、その位置の第3バイパス水路86内を流れる水の流量を測定する。
【0037】
図2は、制御装置60が実行する処理のフローチャートである。以下、図2を用いて、温水利用箇所100に温水を供給するときの動作について説明する。
給湯機10の制御装置60では、水量センサ83の流量SQ1が規定値(本実施例では2L/min)以上である場合に(S2でYES)、温水利用箇所100において温水の供給が求められていることを検知し、温水利用箇所100に供給される温水の温度と流量の制御を開始する。
制御装置60は、蓄熱タンク22に設けられたサーミスタ23の温度Tbと温水利用箇所100での設定温度Taに5が加算された値とを比較し(S4)、前者が後者より高い場合には(S4でYES)、第1運転を実行する。一方、前者が後者より低い場合には(S4でNO)、第2運転を実行する。
【0038】
(第1運転)
第1運転では、制御装置60は以下のように各部を制御する。
・開閉弁98 :第2バイパス水路97への経路を全開(S12)
・分配弁94 :第3バイパス水路86への経路を全開
バーナ加熱装置90への経路を全閉(S14)
・循環ポンプ36 :循環ポンプ36の制御を開始(S16)
・分配弁96 :第1バイパス水路89への経路の開度が小の状態で分配弁96の制御を開始(S18)
【0039】
第1運転では、第3バイパス水路86への経路を全開にし、バーナ加熱装置90への経路を全閉にする(S14)とともに、循環ポンプ36の制御を開始(S16)する。つまり、第1運転では、案内路81に供給された水を第3熱交換器92のみによって加熱する。第3熱交換器92は、その出力がバーナ加熱装置90に比べて低い一方、循環ポンプ36を制御することでその出力を細かく制御することができる。そのため、第1運転では、第3熱交換器92によって、案内路81に供給された水が温水利用箇所100での設定温度Taへと調整される。
【0040】
第1運転では、第3熱交換器92によって案内路81に供給された水が温水利用箇所100での設定温度Taへと調整されている。そのため、第3熱交換器92によって加熱された水を第1バイパス水路89内の水を用いて冷却する必要がほとんどない。第1運転では、分配弁96の制御を開始し(S18)、第1バイパス水路89への経路の開度が小となる状態とする。
その一方、本実施例の案内路81では、分配弁96の圧損によって案内路81内の水の量が制限されている。第1バイパス水路89への経路の開度が小さくなると、第1バイパス水路89を通過して流れる水の量が制限されてしまい、温水利用箇所100で要求されている水の量を十分に確保することができない虞がある。
本実施例では、第1運転のときに、開閉弁98によって第2バイパス水路97への経路を全開にする(S12)。これによって、第3熱交換器92に供給される水の量を増加させることができる。温水利用箇所100に供給可能な温水の量を増加させることができ、温水利用箇所100で要求されている水の量を十分に確保することができる。
【0041】
制御装置60は、水量センサ87の流量SQ2を規定値(本実施例では2L/min)と比較する(S20)。流量SQ2が規定値よりも少ない場合には(S20でNO)、後述する温水利用箇所100に供給される温水の制御を終了する終了過程へと移行する。一方、流量SQ1が規定値以上である場合には(S20でYES)、再び蓄熱タンク22に設けられたサーミスタ23の温度Tbと温水利用箇所100での設定温度Taに5が加算された値との比較を行う(S22)。前者が後者より低く変化した場合には(S22でNO)、第2運転へと動作を変更する。一方、前者が後者より高い場合には(S22でYES)、第1運転を継続する。
【0042】
(第2運転)
第2運転では、制御装置60は以下のように各部を制御する。
・開閉弁98 :第2バイパス水路97への経路を全閉(S32)
・分配弁94 :第3バイパス水路86への経路を全閉
バーナ加熱装置90への経路を全開(S34)
・循環ポンプ36 :循環ポンプ36の制御を開始(S36)
・バーナ加熱装置90:バーナ90aを作動(S36)
・分配弁96 :第1バイパス水路89への経路の開度が大の状態で分配弁96の制御を開始(S38)
【0043】
第2運転では、第3バイパス水路86への経路を全閉にし、バーナ加熱装置90への経路を全開にする(S34)とともに、循環ポンプ36の制御を開始し、バーナ90aを作動する(S36)。つまり、第2運転では、案内路81に供給された水を第3熱交換器92とバーナ加熱装置90によって加熱する。第3熱交換器92でも加熱することで、蓄熱タンク22の熱を使い切ることができ、ヒートポンプ50の蓄熱効果が向上する。通常、バーナ加熱装置90は、その出力が第3熱交換器92に比べて高い一方、その出力を低温で細かく制御することが難しい。そのため、第2運転では、案内路81に供給された水が温水利用箇所100での設定温度Taよりも大幅に高い温度まで加熱される場合がある。
本実施例では、第2運転のときに、分配弁96の制御を開始し(S38)、第1バイパス水路89への経路の開度が大となる状態とする。これによって、バーナ加熱装置90によって加熱された案内路81内の水を、第1バイパス水路89内の水を用いて冷却することができ、案内路81内の水の温度を温水利用箇所100での設定温度Taへと調整することができる。なお、本実施例では、第2運転のときに、開閉弁98によって第2バイパス水路97への経路を全閉にする(S32)。
【0044】
第2運転では、第1バイパス水路89への経路の開度が大きい。そのため、分配弁96の圧損によって案内路81内の水の量が制限された場合でも、第1バイパス水路89を通過して流れる水の量によって、温水利用箇所100で要求されている水の量を十分に確保することができる。
【0045】
制御装置60は、水量センサ83の流量SQ1を規定値と比較する(S40)。流量SQ1が規定値よりも少ない場合には(S40でNO)、バーナ90aを停止(S44)し、後述する温水利用箇所100に供給される温水の制御を終了する終了過程へと移行する。一方、流量SQ1が規定値以上である場合には(S40でYES)、再び蓄熱タンク22に設けられたサーミスタ23の温度Tbと温水利用箇所100での設定温度Taに5が加算された値との比較を行う(S42)。前者が後者より低い場合には(S42でNO)、第2運転を継続する。一方、前者が後者より高く変化した場合には(S42でYES)、バーナ90aを停止(S46)し、第1運転へと動作を変更する。
【0046】
(終了過程)
制御装置60は、第1運転の実施中に水量センサ87の流量SQ2が規定値よりも少なった場合(S20でNO)と第2運転の実施中に水量センサ83の流量SQ1が規定値よりも少なった場合(S40でNO)に、温水利用箇所100において温水の供給が停止されたことを検知するとともに、温水利用箇所100に供給される温水の温度と流量の制御を停止する。制御装置60は、以下のように各部を制御する。
・分配弁96 :分配弁96の制御を停止(S52)
・循環ポンプ36 :循環ポンプ36の制御を停止(S54)
【0047】
以上に説明したように、本実施例の給湯機10では、分配弁96をバイパスする第2バイパス水路97を設けることで、第3熱交換器92のみを用いて案内路81に供給された水を加熱する場合に、温水利用箇所100に十分な量の水を供給することが可能となる。
【0048】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】給湯機10の接続図。
【図2】制御装置60が実行する処理のフローチャート。
【符号の説明】
【0050】
10 給湯機
20 タンク水系統
22 蓄熱タンク
23 サーミスタ
30 蓄熱循環水路
32 循環ポンプ
35 熱供給循環水路
36 循環ポンプ
40 シスターン
42 シスターン水路
44 給水路
50 ヒートポンプ
51 熱媒体循環路
52 第1熱交換器
53 圧縮器
54 第2熱交換器
55 膨張弁
60 制御装置
80 給湯系統
81 案内路
82 第1加熱部
83 水量センサ
84 第2加熱部
86 第3バイパス水路
87 水量センサ
88 水量サーボ
89 第1バイパス水路
90 バーナ加熱装置
90a バーナ
91 サーミスタ
92 第3熱交換器
94 分配弁
96 分配弁
97 第2バイパス水路
98 開閉弁
100 温水利用箇所
105 水道水供給源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を加熱して温水利用箇所に供給する給湯機であり、
水の供給源から温水利用箇所まで水を案内する案内路と、
外部の熱源により加熱された熱媒を貯留する蓄熱タンクと、
蓄熱タンクに貯留された熱媒との熱交換によって案内路内の水を加熱する熱交換器と、
熱交換器より温水利用箇所側の案内路内の水を燃料の燃焼によって加熱する熱源機と、
一端が熱交換器より供給源側の案内路に接続されているとともに、他端が熱源機より温水利用箇所側の案内路に接続されている第1バイパス水路と、
第1バイパス水路の前記一端と案内路との間に配置されており、第1バイパス水路に流れ込む水の量を調整する調整手段と、
一端が調整手段より供給源側の案内路に接続されているとともに、他端が調整手段と熱交換器との間の案内路に接続されている第2バイパス水路と
を備えた給湯機。
【請求項2】
蓄熱タンクに貯留された熱媒の温度を検知する温度センサと、調整手段を制御する制御手段とをさらに備え、
制御手段は、(1)温度センサによって検出された温度が、温水利用箇所での設定温度に基づいた温度より高い間は、熱交換器を利用して水を加熱し、第1バイパス水路に流れ込む水の量が少なくなるように調整手段を制御し、第2バイパス水路に流れ込む水の量が多くなるように調整手段を制御する第1運転を実行し、(2)温度センサによって検出された温度が、温水利用箇所での設定温度に基づいた温度より低い間は、熱源機を利用して水を加熱し、第1バイパス水路に流れ込む水の量が多くなるように調整手段を制御し、第2バイパス水路に水が流れ込まないように調整手段を制御する第2運転を実行する
ことを特徴とする請求項1に記載の給湯機。
【請求項3】
外部の熱源としてヒートポンプを備えており、
蓄熱タンクは、ヒートポンプによって加熱された熱媒を貯留する
ことを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載の給湯機。

【図1】
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【図2】
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