説明

給湯機

【課題】原水から溶解成分を除去するろ過手段を長寿命化した給湯機を提供する。
【解決手段】水または湯を蓄える貯湯タンク1と、貯湯タンク1の水から溶解成分を分離するろ過手段6と、貯湯タンク1からろ過手段6へ通じる給水流路7と、給水流路7上で貯湯タンク1からろ過手段6へ水を送るポンプ8と、水の溶解成分を析出し分離する析出分離手段16と、ろ過手段6から析出分離手段16へ通じろ過手段6により溶解成分が濃縮した水が送られる循環水流路14と、循環水流路14と給水流路7の水をポンプ8に送る給水循環水混合手段15とを有し、ろ過手段6により濃縮した水を析出分離手段16により溶解成分を分離して再利用することで、ろ過手段6の閉塞を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器へ供給する水から溶解成分を除去する給湯機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の給湯機は、図2に示すような構成であった(例えば、特許文献1参照)。以下、その構成について説明する。図2において、給湯機はボイラ31への給水ライン32を備え、さらにこの給水ライン32と接続された活性炭ろ過処理部33、軟水化処理部34、プレフィルタ35、ろ過膜部36および脱気処理部37を上流側からこの順で備えている。また、給湯機は、処理水を貯留する給水タンク38と、濾過膜部36の上流側に設けられ、軟水化処理された給水をろ過膜部36へ加圧して供給するポンプ39を備えている。さらに、ろ過膜部36には、ろ過膜に阻止された溶存塩類が濃縮された濃縮水を系外へ排水する排水ライン40が接続されている。そして、この排水ライン40は、ポンプ39の上流側の給水ライン32と、循環水ライン41で接続されており、濃縮水の一部がポンプ39の上流側へ還流されるようになっている。
【特許文献1】特開2006−305500号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来の構成では、循環水ラインがろ過膜部の給水ラインに直結されていることから、ろ過膜部で濃縮された水の溶解成分は全て再びろ過膜部に導かれる。ろ過膜部に導かれる水に含まれる炭酸カルシウム等の溶解成分が、溶解度を超えて濃縮されると、ろ過膜上に析出して沈着することにより、ろ過膜の目詰まりを引き起こす。
【0004】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、ろ過手段で濃縮された水から溶解成分を除去することで、再びろ過手段に導く水の溶解成分を減少させ、ろ過手段に溶解成分が溶解度を超えて濃縮され析出することを防止し、ろ過手段を長寿命化した給湯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記従来の課題を解決するために、本発明の給湯機は、水または湯を蓄える貯湯タンクと、前記貯湯タンクの水から溶解成分を分離するろ過手段と、前記貯湯タンクから前記ろ過手段へ通じる給水流路と、前記給水流路上で前記貯湯タンクから前記ろ過手段へ水を送るポンプと、湯を製造する熱交換手段と、前記ろ過手段から前記熱交換手段へ通じ前記ろ過手段により溶解成分を除去したが送られる熱交流路と、前記熱交換手段から前記貯湯タンクに通じ前記熱交換手段により製造した湯が送られる貯湯流路と、水の溶解成分を析出し分離する析出分離手段と、前記ろ過手段から前記析出分離手段へ通じ前記ろ過手段により溶解成分を濃縮した水が送られる循環水流路と、前記循環水流路と前記給水流路の水を前記ポンプに送る給水循環水混合手段とを備えたものである。
【0006】
これによって、ろ過手段により溶解成分が濃縮した水から、析出分離手段により溶解成分を析出して分離し除去することができるので、濃縮水から溶解成分を減少させて再びろ過手段に投入することが出来るので、ろ過手段の長寿命化を図ることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の給湯機は、ろ過手段により濃縮された水の溶解成分を析出分離し除去することができるので、ろ過手段の目詰まりを防止し、ろ過手段の長寿命化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
第1の発明は、水または湯を蓄える貯湯タンクと、前記貯湯タンクの水から溶解成分を分離するろ過手段と、前記貯湯タンクから前記ろ過手段へ通じる給水流路と、前記給水流路上で前記貯湯タンクから前記ろ過手段へ水を送るポンプと、湯を製造する熱交換手段と、前記ろ過手段から前記熱交換手段へ通じ前記ろ過手段により溶解成分を除去した水が送られる熱交流路と、前記熱交換手段から前記貯湯タンクに通じ前記熱交換手段により製造した湯が送られる貯湯流路と、水の溶解成分を析出し分離する析出分離手段と、前記ろ過手段から前記析出分離手段へ通じ前記ろ過手段により溶解成分を濃縮した水が送られる循環水流路と、前記循環水流路と前記給水流路の水を前記ポンプに送る給水循環水混合手段とを備えた給湯機で、ろ過手段により溶解成分を濃縮した水から析出分離手段により溶解成分を除去して再利用することができるので、ろ過手段に水の溶解成分が溶解度を超えて濃縮されることを防止し、ろ過手段の長寿命化を図ることができる。
【0009】
第2の発明は、ろ過手段から析出分離手段の間の循環水流路上に循環水排水切換手段を有し、前記ろ過手段により濃縮した水を排出可能としたものである。前記循環水流路を流れる水から溶解成分を除去する前記析出分離手段の能力を超えて、前記ろ過手段により濃縮した場合は、前記循環水排水切換手段によって流路を切換えることにより、濃縮水を排出することができるので、前記ろ過手段は高濃度の循環水を処理しないため目詰まりが発生し難くなり、前記ろ過手段の長寿命化を図ることができる。
【0010】
第3の発明は、循環水排水切換手段から析出分離手段に通じる排水流路を有し、前記排水流路は、前記析出分離手段を流れる循環水流路と反対方向に水が流れるよう前記析出分離手段に接続したものである。前記析出分離手段により前記循環水流路を流れる濃縮水から溶解成分を析出させた析出物は、前記循環水流路の水流方向の下流側から前記析出分離手段に蓄積し、排水時に前記析出分離手段内の水流が反転したさいに容易に排出することができる。
【0011】
第4の発明は、原水ラインから給湯タンクに通じる原水流路と、前記原水流路上に設け原水の流路を分岐する原水分岐手段と、製造した湯を貯湯タンクから導く給湯流路と、前記原水分岐手段から導かれた水と前記給湯流路の湯を混合する原水給湯混合手段と、原水ラインから前記原水分岐手段の間の前期原水流路上に設け通過する原水に含まれる残留塩素を除去する残留塩素除去手段とを設けて、前記ろ過手段に導かれる原水から残留塩素を除去可能としたものである。残留塩素はその酸化力により前記ろ過手段のろ過性能を劣化させるので、前記残留塩素除去手段により残留塩素を除去することで前記ろ過手段の長寿命化を図ることができる。また、給水循環水混合手段より上流に前記残留塩素除去手段を設けることにより、前記ろ過手段により高濃度に濃縮された溶解成分を含む水が前記残留塩素除去手段に流入することがないので、前記残留塩素除去手段内で高濃度になった溶解成分が析出成長し前記残留塩素除去手段を閉塞することがいので、給湯機の信頼性を向上することができる。
【0012】
第5の発明は、原水ラインから残留塩素除去手段に通じる原水流路上に粗ろ過手段を設けて、給湯機に導かれる原水から不溶物を除去可能としたものであり、ろ過手段や残留塩素除去手段と共に、ポンプや分岐・混合・切換手段が原水に含まれる鉄錆びや砂当の粒子により詰まることを防止することができ、給湯機の信頼性を向上することができる。
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0014】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における給湯機の構成図である。図1において、水と製造した湯を蓄える貯湯タンク1は、水道水、工業用水、地下水等の水源から供給される原水ラインに原水流路2により接続しており、原水流路2上に原水の流路を分岐する原水分岐手段3を設けている。水道栓から原水分岐手段3の間の原水流路2上に、粗ろ過手段4を上流側、残留塩素除去手段5を下流側に設置している。水に含まれる溶解成分を分離するろ過手段6は、給水流路7により貯湯タンク1に接続しており、給水流路7上のポンプ8により貯湯タンク1からろ過手段6に水を送っている。ろ過手段6によりろ過することで溶解成分を除去した透過水は、湯を製造する熱交換手段9に熱交流路10を通って送られる。熱交手段9により製造した湯は、貯湯流路11によって貯湯タンク1に送られる。貯湯タンク1に蓄えられた湯は、給湯流路12によって導かれ、原水分岐手段3から導かれた原水と原水給湯混合手段13によって混合され給湯機より出湯する。
【0015】
ろ過手段6により溶解成分が濃縮した濃縮水は、循環水流路14により導かれ給水循環水混合手段15で給水流路7と合流し、再びポンプ8によりろ過手段6に送られる。析出分離手段16は、循環水流路14上に設けており、循環水流路14を流れる濃縮水から溶解成分を析出し分離する。ろ過手段6から析出分離手段16の間の循環水流路14上に循環水排水切換手段17を設けており、排水流路18は循環水排水切換手段17から析出分離手段16に、析出分離手段16を流れる循環水流路14と反対方向に水が流れるよう接続している。
【0016】
ろ過手段6は、水中の溶解成分の透過を阻止する分離膜である逆浸透膜(RO膜)またはナノろ過膜(NF膜)により形成しており、組成は架橋ポリアミドまたは酢酸セルロースである。溶解成分の阻止性能が高く低圧でろ過可能なことから、組成が架橋ポリアミドのRO膜が好ましい。なお、耐遊離塩素性がある組成が酢酸セルロースのRO膜またはNF膜を用いた場合は、残留塩素除去手段5を省くことができるので、給湯機の構成を簡素化することも可能である。ろ過手段6は、水中の溶解成分、具体的には、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、鉄イオン、塩化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン等の各種陽イオン、陰イオンを除去することで、熱交換手段9で水を加熱した際のスケール生成を防止することができ、また、熱交手段8や貯湯タンク1等の構成部材である銅等の金属の腐蝕を防止することができる。
【0017】
析出分離手段16は、炭酸カルシウムの粉砕結晶、例えば寒水石を充填したろ過フィルタにより形成しており、これが結晶核として作用することにより、溶解成分が濃縮した循環水から炭酸カルシウムを析出し、ろ過除去することができる。なお、ゼオライト等の二酸化炭素吸着材を通過させた脱炭酸大気をマイクロバブル等の形状にして投入することで、循環水中に溶解している炭酸カルシウムの析出をさらに加速、増加することも可能である。
【0018】
析出した炭酸カルシウムは、析出分離手段16で循環水流路14の下流側で蓄積する。循環水排水切換手段17により切換えた排水流路18は、析出分離手段16内を循環水流路14の水流とは反対方向に排水が流れるので、析出分離手段16を逆洗することができ、蓄積した炭酸カルシウムを効率的に排出することができる。一時硬度と呼ばれる炭酸カルシウムは、溶解度が低く、ろ過手段6により容易に過飽和状態とすることができるので、析出分離することが可能であるが、永久硬度と呼ばれる塩化カルシウム等、他の塩化物塩や硫酸塩等の溶解塩の多くは溶解度が高く、結晶核を投入して析出分離することが困難である。これらの溶解塩は、ろ過手段6の分離膜界面では局所的に濃縮されるので分離膜上に析出して分離膜を閉塞する。
【0019】
また、金属の腐蝕を促進するので、所定の濃度以上に循環水が濃縮した時に排出することが好ましい。ろ過手段6により生成した濃縮水は循環して使用することから、全て排出する構成に比べ排水量を削減することができ、また、さらに循環水の溶解成分を析出分離手段16により除去することから循環水の溶解成分の濃度上昇を抑えることができるので、更なる排水量の削減が可能である。
【0020】
残留塩素除去手段5は、活性炭を充填したろ過フィルタにより形成しており、活性炭の多孔質構造に残留塩素を取り込むことで残留塩素を除去する。残留塩素除去手段5を小型で低コストに構成するためには、処理水との接触効率を上げる必要があるため、活性炭は、微細な粒状、または、繊維状に加工し密に充填している。処理水に不溶物が存在している場合は、その不溶物を密に充填した活性炭で、ろ過除去するため、残留塩素除去手段5が不溶物により閉塞するので、処理水に不溶物が存在する可能性のある循環水流路14への設置は適さず、溶解成分のみが透過する原水流路に設置することが好ましい。
【0021】
粗ろ過手段4は、中空糸等の精密ろ過膜(MF膜)により形成しており、原水に含まれる砂や鉄さび等の不溶性物質をろ過除去するものである。給湯機に導かれる原水から不溶物を除去することで、ろ過手段や残留塩素除去手段5と共に、ポンプや分岐・混合・切換手段の詰まりを防止することができ、給湯機の信頼性を向上することができる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
以上のように、本発明にかかる給湯機は、原水から溶解成分をろ過分離することができ、また濃縮した溶解成分を析出分離することでろ過分離性能の長寿命化を図ることができることから、家庭用、産業用に制限されることなく、ろ過分離技術を用いた水処理装置全般に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態1における給湯機の構成図
【図2】従来の給湯機の構成図
【符号の説明】
【0024】
1 貯湯タンク
2 原水流路
3 原水分岐手段
4 粗ろ過手段
5 残留塩素除去手段
6 ろ過手段
7 給水流路
8 ポンプ
9 熱交換手段
10 熱交流路
11 貯湯流路
12 給湯流路
13 原水給湯混合手段
14 循環水流路
15 給水循環水混合手段
16 析出分離手段
17 循環水排水切換手段
18 排水流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水または湯を蓄える貯湯タンクと、前記貯湯タンクの水から溶解成分を分離するろ過手段と、前記貯湯タンクから前記ろ過手段へ通じる給水流路と、前記給水流路上で前記貯湯タンクから前記ろ過手段へ水を送るポンプと、湯を製造する熱交換手段と、前記ろ過手段から前記熱交換手段へ通じ、前記ろ過手段により溶解成分を除去した水が送られる熱交流路と、前記熱交換手段から前記貯湯タンクに通じ前記熱交換手段により製造した湯が送られる貯湯流路と、水の溶解成分を析出し分離する析出分離手段と、前記ろ過手段から前記析出分離手段へ通じ前記ろ過手段により溶解成分を濃縮した水が送られる循環水流路と、前記循環水流路と前記給水流路の水を前記ポンプに送る給水循環水混合手段とを備えた給湯機。
【請求項2】
ろ過手段から析出分離手段の間の循環水流路上に循環水排水切換手段を設け、前記ろ過手段により濃縮した水を排出可能としたことを特徴とする請求項1に記載の給湯機。
【請求項3】
循環水排水切換手段から析出分離手段に通じる排水流路を有し、前記排水流路は、前記析出分離手段を流れる循環水流路と反対方向に水が流れるよう前記析出分離手段に接続したことを特徴とする請求項2に記載の給湯機。
【請求項4】
原水ラインから給湯タンクに通じる原水流路と、前記原水流路上に設け原水の流路を分岐する原水分岐手段と、製造した湯を貯湯タンクから導く給湯流路と、前記原水分岐手段から導かれた水と前記給湯流路の湯を混合する原水給湯混合手段と、原水ラインから前記原水分岐手段の間の前期原水流路上に設け通過する原水に含まれる残留塩素を除去する残留塩素除去手段とを設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の給湯機。
【請求項5】
原水ラインから残留塩素除去手段に通じる原水流路上に粗ろ過手段を設けたことを特徴とする請求項4に記載の給湯機。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−91125(P2010−91125A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−258171(P2008−258171)
【出願日】平成20年10月3日(2008.10.3)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】