説明

給湯装置

【課題】湯水に供給する水改質成分の添加濃度を一定にできる給湯装置を提供すること。
【解決手段】注湯経路26と、前記注湯経路26に配設され、前記注湯経路26を流れる湯水の温度を検出する温度検出手段28と、前記注湯経路26を流れる湯水に機能改質成分を添加する水改質手段33と、制御手段とを備え、前記温度検出手段28の検出温度が低い場合より高い場合の方を、前記注湯経路26を流れる湯水に機能改質成分を添加する時間を短くすることを特徴とする給湯装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水改質を目的とした成分を所定量、給湯水に添加する機能を備えた給湯装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来この種の装置は、目的の成分を含む材料を湯水に添加する水改質手段を、湯沸かし部に水道水を供給する給水経路中、または湯沸かし部で沸いた湯を浴槽へ導く注湯経路中に配設し、給湯水中に、所定の目的の水改質成分を添加する方法が公開されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図8は、特許文献1に記載された従来の給湯装置を示すものである。図8に示すように、水経路中に、水改質手段を組み込んで構成されている。
【0004】
前記特許文献1において、水改質手段としては、添加成分を電極(亜鉛陽極1)とした電気分解方式を用い、注湯水が水改質手段を通過中に、電極1、2に通電し、電極1の一部を注湯水中に電気分解させることで、所定濃度の水改質成分を添加することができる。
【0005】
また、特許文献1以外の他の水改質手段としては、水改質成分を含有した無機化合物を、湯水と接触させて濃度拡散を利用して溶解する手段も用いることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−190882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来の構成には、水改質成分の添加濃度を一定にする構成は開示されていない。
【0008】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、湯水に供給する水改質成分の添加濃度を一定にできる給湯装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記従来の課題を解決するために、本発明の給湯装置は、注湯経路と、前記注湯経路に配設され、前記注湯経路を流れる湯水の温度を検出する温度検出手段と、前記注湯経路を流れる湯水に機能改質成分を添加する水改質手段と、制御手段とを備え、前記温度検出手段の検出温度が低い場合より高い場合の方を、前記注湯経路を流れる湯水に機能改質成分を添加する時間を短くすることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、湯水に供給する水改質成分の添加濃度を一定にできる給湯装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態における給湯装置の構成図
【図2】同水改質回路の詳細図
【図3】同電気分解方式を用いた水改質回路の詳細図
【図4】同開弁時のバイパス電磁弁の詳細図
【図5】同閉弁時のバイパス電磁弁の詳細図
【図6】同水温に対する無機化合物の溶解度特性を表す図
【図7】同水温に対する水改質手段への通水時間の割合を表す図
【図8】従来の給湯装置の構成図
【発明を実施するための形態】
【0012】
第1の発明は、注湯経路と、前記注湯経路に配設され、前記注湯経路を流れる湯水の温度を検出する温度検出手段と、前記注湯経路を流れる湯水に機能改質成分を添加する水改質手段と、制御手段とを備え、前記温度検出手段の検出温度が低い場合より高い場合の方を、前記注湯経路を流れる湯水に機能改質成分を添加する時間を短くすることを特徴とする給湯装置で、水温によって変化する湯水に供給する機能改質成分の添加濃度を一定とすることが可能となる。
【0013】
第2の発明は、前記注湯経路からの湯水を分流させるように形成した並列分岐経路を備え、前記並列分岐経路に前記水改質手段を配設するとともに、前記水改質手段に湯水を通水する時間を変更することを特徴とする給湯装置で、水温によって変化する湯水に供給する機能改質成分の添加濃度を一定とすることが可能となる。
【0014】
第3の発明は、前記並列分岐経路に流れる湯水の流量を変更する電磁弁を備え、前記電磁弁の開閉時間を変更することを特徴とする給湯装置で、水温によって変化する湯水に供給する機能改質成分の添加濃度を一定とすることが可能となる。
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0016】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における給湯装置の構成図を示すものである。図2は、同実施の形態における水改質回路の詳細図を示すものである。
【0017】
図1において、圧縮機10、給湯熱交換器11、減圧手段12、蒸発器13を冷媒回路14で順に環状に接続してヒートポンプユニット15を構成している。貯湯ユニット16の貯湯タンク17には水が貯留されており、出湯回路18は貯湯タンク17、給湯水ポンプ19、給湯熱交換器11、貯湯タンク17を順に接続する回路である。
【0018】
浴槽水加熱回路20は、貯湯タンク17、風呂熱交換器21、浴槽水加熱ポンプ22、貯湯タンク17を順に接続する回路であり、風呂熱交換器21の他方の回路には浴槽23が接続されている。浴槽水循環回路24は、浴槽23、浴槽水を搬送する浴槽水ポンプ25、風呂熱交換器21を順に接続する回路である。
【0019】
浴槽水注湯経路26は、貯湯タンク17の水を、浴槽水循環回路24を経由して浴槽23へ注湯する回路である。この回路には貯湯タンク17の高温の水と水道水を混合する浴槽水混合弁27、注湯する水温を検知する温度検出手段28、浴槽水注湯経路26の回路の開閉を行う浴槽水注湯弁29を順に備える。
【0020】
水改質回路30は、浴槽水注湯弁の下流側の浴槽水注湯経路26内の途中に配設されている回路である。
【0021】
図2に示すように、水改質回路30は、浴槽水注湯経路内26の注湯経路の途中に2ヶ所の分岐部31を設け、両分岐部31を並列分岐経路32で接続し、並列分岐経路32の
経路に水改質手段33を配置し、水改質手段33と上流の分岐部31の間には、バイパス電磁弁34が配置され、バイパス電磁弁34の開閉により水改質手段33への湯水の供給を開閉できるように構成されており、前述のように構成された水改質回路30は貯湯ユニット16の筐体内に納められている。
【0022】
また、水改質手段33にて水改質成分を添加された水は再び分岐部31を経て、浴槽水注湯経路26の湯水と合流し、水改質成分が添加された湯水が浴槽23に注湯される。
【0023】
なお、水改質手段33は、目的の水改質成分を水に溶解添加できる手段であればよく、図2に示すような、水改質成分を含有した無機化合物35の粒子を収納容器36内に充填し、無機化合物35の下流側にフィルター37を配設し、無機化合物35と湯水を直接接触させる溶解方式や、図3に示すような目的成分を電極1、2とし、電極1、2に電源部9から通電して、水に水改質成分を分解溶出させる電気分解方式を用いてもよいが、直接溶解方式の方が、コスト面、コンパクト性、可燃性ガス発生など安全性、消費電力量等の面でメリットが多く、本実施の形態では溶解方式を前提に説明する。
【0024】
ヒートポンプユニット15で貯湯タンク17に貯留された水を加熱する運転は、以下のような動作となる。貯湯タンク17の水は、給湯水ポンプ19によって給湯熱交換器11へ搬送され、ヒートポンプサイクル動作によって加熱される。給湯水ポンプ19は給湯熱交換器11で加熱された給湯水の温度が予め決定した温度になるように、出湯回路18の流量を制御する。
【0025】
浴槽23への湯張り、並びに浴槽23に貯留されている水(浴槽水)の加熱は以下のような動作となる。浴槽水注湯経路26の浴槽水混合弁27は、温度検出手段28で検知する注湯温度がリモコン等(図示せず)で予め設定された温度となるように、高温の水と水道水の混合割合を調整する。
【0026】
所定温度となった湯水は、浴槽水注湯経路26、浴槽水循環回路24を順に経由して浴槽23へ流出する。一方、浴槽23の浴槽水を加熱する場合は、貯湯タンク17に貯留された高温の水を、浴槽水加熱ポンプ22によって風呂熱交換器21へ搬送し、浴槽水ポンプ25より搬送された浴槽水を加熱する。風呂熱交換器21で浴槽水を加熱して温度が下がった給湯水は、貯湯タンク17の下部より内部へ流入する。
【0027】
図4にバイパス電磁弁34が閉弁した際の詳細図を示す。弁体38はプランジャー39に接続され、バネ40によって並列分岐経路32の流路を塞いでいる。分岐部31より分岐された湯水は弁体38まで供給されるが、弁体38によって並列分岐経路32が閉塞されているため、水改質手段33へは湯水は流れず、浴槽23には水改質成分は添加されない。
【0028】
図5にバイパス電磁弁が開弁した際の詳細図を示す。端子41より電圧が電磁コイル42に供給され電磁コイル42は励磁され、プランジャー39および弁体38をバネ40の圧縮力に抗して並列分岐経路32を開弁し、分岐部31より分岐された湯水を水改質手段33に供給する。
【0029】
以上のように構成された給湯装置について、以下その動作、作用を説明する。
【0030】
使用者が浴槽23へ湯はりを行う場合は、リモコン等で湯はり動作の指示操作を行う。リモコン操作後、予め設定された温度に浴槽水混合弁27で調整された水が、浴槽水注湯弁29を閉から開に制御することにより、浴槽水注湯弁29から、浴槽水注湯経路26内に湯水が流入し、浴槽水注湯経路26に流れる湯水の一部が並列分岐経路32側に分流し
、水改質手段33にて水改質成分を添加された水が、再び分岐部31を経て、浴槽水注湯経路26の湯水と合流し、水改質成分が添加された湯水が浴槽23に注湯される。
【0031】
前記水改質手段33内においては、流入した湯水が収納容器36に充填された無機化合物35の粒子で形成された多孔質の空間を通過する。水には粘性があるため、多孔質の空間を通過する際に無機化合物35の表面から表面近傍の領域には速度境界層が生成される。無機化合物35は水に対して溶解性を持つため、無機化合物35の表面近傍の無機化合物35の表面分子は、表面近傍の水に溶解し、水の溶解濃度が上昇する。表面近傍の水は流速が小さいため、溶解濃度は高い値となる。
【0032】
これに対して流速の大きい多孔質空間の中心部の流れる水の溶解濃度は低い。このとき、水中に溶解する無機化合物の濃度差が生じた場合は、濃度差に応じて高い方から低い物質が移動する(フィックの法則)ため、表面近傍の水に溶解した無機化合物は濃度の低い中心の水に移動する。この物質拡散の原理を利用することで、無機化合物35を多孔質空間内の水に溶解させることができる。
【0033】
図6に水温に対する無機化合物の溶解度の特性を示す。溶解度は水温に対してほぼ直線的な特性となり、水温が低ければ溶解度は小さく、水温が高くなると溶解度は大きくなる。
【0034】
浴槽23へ湯はりを行う場合に、バイパス電磁弁34の開閉弁動作を、浴槽水注湯弁29の開閉弁動作と連動させた場合、浴槽水混合弁27で調整された水の温度によって、図6に示す特性により、無機化合物35の溶解量が変化してしまう。
【0035】
なお、無機化合物35として亜鉛を含む亜鉛化合物(酸化亜鉛、炭酸亜鉛など)とした場合、次の効果を得ることができる。亜鉛は比較的要求量の多いヒトの必須元素の一つであり、通常の食事からの供給では欠乏しやすく、栄養強化目的で、食品に添加される元素である。これに対しては、浴槽に亜鉛を溶解させた水を供給することで、入浴中に経皮吸収による栄養強化を行うことができる。
【0036】
また、亜鉛化合物の酸化亜鉛は、薬局方、化粧品原料基準で認可を受けている材料であり、主にヒトの肌の角層に対して収斂作用、消炎作用などの作用を与え、肌の角層の改善を行うこともできる。
【0037】
また、無機化合物35として用いることができる材料は、酸化亜鉛以外に、亜鉛化合物として、酸化亜鉛(ZnO)、塩基性炭酸亜鉛(mZnCO・nZn(OH))、水酸化亜鉛(Zn(OH))、亜鉛置換型ゼオライト、亜鉛置換型キレート、亜鉛シリカゲル担持物、であり、これらを単一または組み合わせて用いることができる。
【0038】
また、硫酸カルシウム、水酸化マグネシウム、鉄化合物(酸化鉄、水酸化鉄)、酸化銅、酸化ケイ素、二酸化マンガン、水酸化コバルト、酸化チタン、塩化銀、硫酸バリウムを用いることができる。
【0039】
以上のような効果を期待することを考えると、浴槽に供給する無機化合物の添加濃度は、適切な値で一定とすることが望ましい。
【0040】
これを実現するためには、浴槽水混合弁27で調整された水の温度による無機化合物の溶解量の違いを補正し、バイパス電磁弁34の開時間を調整すれば良い。浴槽水混合弁27で調整された水の温度は、温度検出手段28によって検出可能である。温度検出手段28としてサーミスタを用いた場合、温度検出を通常0.1℃程度の分解能で行うことが可
能であり、精度良く温度検出できる。
【0041】
一定としたい無機化合物の所望の添加濃度Cに対して、無機化合物の溶解量演算を、例えば以下のように一次式を用いて行う。
【0042】
図6において、浴槽23へ湯はりを行う場合に、バイパス電磁弁34の開閉弁動作を、浴槽水注湯弁29の開閉弁動作と連動させた場合、所望の添加濃度Cを実現できる溶解度をA、その時の浴槽水混合弁27で調整された水の温度をTとする。
【0043】
浴槽水混合弁27で調整された水の温度が、Tよりも高い場合の溶解度は、Aよりも大きくなるため、所望の添加濃度Cを実現するために、バイパス電磁弁34の閉弁動作を、浴槽水注湯弁29の閉弁動作よりも早く行えば良い。
【0044】
使用者がリモコン操作で設定できる設定温度範囲を、最低T、最高Tとすると、浴槽水混合弁27で調整された水の温度Tの範囲は、T≦T≦Tとなる。ここで図6におけるTがTと等しくなるように、無機化合物の充填量を決定し、水改質回路30の構造を設計しておく。
【0045】
ところで、水改質手段33に湯水の通水を行う場合、温度検出手段28で検出された水温の所定範囲内とすることができる。例えば、下限を(T−3)、上限を(T+3)とすると、水改質手段33に湯水の通水を行う温度Tの範囲は、
−3≦T≦T+3・・・(1)
となる。
【0046】
このように水改質手段33に湯水の通水を行う場合の温度範囲を設定しておくと、異常検出として利用でき、水改質回路30を保護することができる。すなわち、浴槽水注湯弁29が開弁して温度検出手段28で検出された水温Tが(T−3)よりも低い場合や、(T+3)よりも高い場合、浴槽水混合弁27の混合動作不良等の不具合が考えられ、このような場合にはバイパス電磁弁34を閉弁のままとしておき、水改質手段33に湯水の通水を行わない。
【0047】
図7は、無機化合物の所望の添加濃度Cを実現するための、浴槽水混合弁27で調整された水の温度Tに対する、水改質手段33に湯水を供給する通水時間割合を示したものである。
【0048】
前述のようにリモコン操作で設定できる最低の設定温度T(=T)の時の通水時間割合Bは、バイパス電磁弁34の開閉弁動作を、浴槽水注湯弁29の開閉弁動作と連動させた場合に対応するため、B=100%となる。
【0049】
図7により、浴槽水混合弁27で調整された水の温度Tにおける通水割合Bは、下記のようになる。ここでBは、リモコン操作で設定できる最高の設定温度Tにおける通水時間割合とする。
【0050】
B=B−{(T−T)(B−B)/(T−T)}・・・(2)
使用者が設定した浴槽への注湯流量をQとすると、バイパス電磁弁34の閉弁動作は注湯流量Qが下記の時に実施すれば良く、浴槽へ供給する無機化合物の添加濃度をCの値に一定とすることができる。
【0051】
Q=BQ・・・(3)
ここで浴槽23への注湯量Qは、図1に示すように、浴槽水混合弁27より下流の注湯
経路に設けられた流量検出手段50によって検出される注湯流量qを積算することにより、演算可能である。
【0052】
ここで流量検出手段50としては、例えば内部に羽車のような回転体を有し、回転パルスを検出することで流量検出を行う方式がある。
【0053】
なお、上記一連の運転動作は、マイコン等の制御手段(図示せず)からの信号に基づいて、制御されている。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上のように、本発明にかかる給湯装置は、湯水に供給する水改質成分の添加濃度を一定にすることができ、貯湯式給湯機の他、ガス熱源の給湯機にも利用できる。
【符号の説明】
【0055】
23 浴槽
24 浴槽水循環回路
26 浴槽水注湯経路
28 温度検出手段
29 浴槽水注湯弁
30 水改質回路
31 分岐部
32 並列分岐経路
33 水改質手段
34 バイパス電磁弁
35 無機化合物
36 収納容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
注湯経路と、前記注湯経路に配設され、前記注湯経路を流れる湯水の温度を検出する温度検出手段と、前記注湯経路を流れる湯水に機能改質成分を添加する水改質手段と、制御手段とを備え、前記温度検出手段の検出温度が低い場合より高い場合の方を、前記注湯経路を流れる湯水に機能改質成分を添加する時間を短くすることを特徴とする給湯装置。
【請求項2】
前記注湯経路からの湯水を分流させるように形成した並列分岐経路を備え、前記並列分岐経路に前記水改質手段を配設するとともに、前記水改質手段に湯水を通水する時間を変更することを特徴とする請求項1に記載の給湯装置。
【請求項3】
前記並列分岐経路に流れる湯水の流量を変更する電磁弁を備え、前記電磁弁の開閉時間を変更することを特徴とする請求項2に記載の給湯装置。

【図1】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図8】
image rotate