説明

給紙装置及び画像形成システム

【課題】用紙の分離性能を確保しつつ、用紙のばたつきを抑制する。
【解決手段】給紙装置は、複数の用紙を積載する給紙トレイと、給紙トレイに積載された用紙Tのうち、最上位の用紙Tを吸着して搬送する吸着搬送部5と、吸着搬送部5に吸着された用紙Tと、当該用紙Tの下方の用紙Tとの間にエアーを送り、吸着された用紙Tをその下方の用紙Tから分離する分離部6と、分離部6から送られたエアーの気流y1の下流に位置する用紙Tの端部において、当該気流y1と用紙を挟んで反対側に、当該気流y1と同じ方向の気流x1を生じさせる気流調整部7と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給紙装置及び画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
給紙装置から画像形成装置に用紙を給紙する方法として、エアーサクション方式が知られている。エアーサクション方式では積載された用紙がエアーにより1枚ずつ分離されて搬送される。例えば、給紙装置に積載された用紙の上位層にエアーが吹き付けられる。上位数枚の用紙が浮上すると、浮上した用紙のうち最上位の用紙が、吸気口が形成されたベルトによって吸着される。吸着された用紙とその下方の用紙との間にはさらにエアーが送られ、このエアーによって最上位の用紙は下方の用紙から分離され、ベルトに吸着された状態で搬送される。
【0003】
エアーサクション方式では、ベルトに用紙が吸着された後に送られるエアーによって用紙の端部にばたつきが生じやすい。これは、用紙の下方を通過する気流が、用紙の端部を通過した直後に渦流となり、用紙の端部がこの渦流に巻き込まれるからである。用紙のばたつきは、気流の速度が大きいとき、或いは用紙の坪量が小さいときに顕著になる。ばたつきが大きいと騒音が増大し、用紙に折れや傷が生じる場合がある。
【0004】
ばたつきの問題に対しては、センサーによって用紙のばたつきの有無やばたつきの量を検知し、送るエアー量を小さくする等の調整を行う給紙装置が開示されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−11718号公報
【特許文献2】特開2007−39196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、塗工紙のように用紙間の密着力が強い用紙に対し、ばたつき防止のためにエアー量を小さく調整すると、分離が十分に行われず、分離不良による重送が生じる場合がある。このように、従来のばたつき防止策は、用紙の分離性能の確保とばたつきの抑制を両立することができない場合があり、全ての用紙に対応できるわけではなかった。
【0007】
本発明の課題は、用紙の分離性能を確保しつつ、用紙のばたつきを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、
複数の用紙を積載する給紙トレイと、
前記給紙トレイに積載された用紙のうち、最上位の用紙を吸着して搬送する吸着搬送部と、
前記吸着搬送部に吸着された用紙と、当該用紙の下方の用紙との間にエアーを送り、吸着された用紙をその下方の用紙から分離する分離部と、
前記分離部から送られたエアーの気流の下流に位置する用紙の端部において、当該気流と用紙を挟んで反対側に、当該気流と同じ方向の気流を生じさせる気流調整部と、
を備える給紙装置が提供される。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、
前記気流調整部は、前記分離部から送られたエアーの気流と略同一の速度の気流を生じさせる請求項1に記載の給紙装置が提供される。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、
前記気流調整部は、前記分離部から送られたエアーの気流の上流から下流に向けてエアーを送り、気流を生じさせる請求項1又は2に記載の給紙装置が提供される。
【0011】
請求項4に記載の発明によれば、
前記分離部が送るエアーの量を調整し、調整されたエアーの量に応じて、前記分離部からのエアーの気流と前記気流調整部からのエアーの気流の速度が略同一となるように、前記気流調整部が送るエアーの量を決定する制御部を備え、
前記気流調整部は、前記制御部によって決定された量のエアーを送る請求項3に記載の給紙装置が提供される。
【0012】
請求項5に記載の発明によれば、
前記給紙トレイに積載された用紙のサイズに応じて、前記気流調整部から送られたエアーの気流が前記用紙の端部において生じる位置に、前記気流調整部の位置を決定する制御部と、
前記制御部により決定された位置に、前記気流調整部を移動させる移動部と、
を備える請求項3に記載の給紙装置が提供される。
【0013】
請求項6に記載の発明によれば、
前記気流調整部は、前記用紙の端部側からエアーを吸引し、気流を生じさせる請求項1又は2に記載の給紙装置が提供される。
【0014】
請求項7に記載の発明によれば、
前記分離部が送るエアーの量を調整し、調整されたエアーの量に応じて、前記分離部からのエアーの気流と前記気流調整部のエアーの吸引により生じた気流の速度が略同一となるように、前記気流調整部が吸引するエアーの量を決定する制御部を備え、
前記気流調整部は、前記制御部によって決定された量のエアーを吸引する請求項6に記載の給紙装置が提供される。
【0015】
請求項8に記載の発明によれば、
請求項1〜7の何れか一項に記載の給紙装置と、
画像形成装置と、
を備える画像形成システムが提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、分離部からの気流の下流に位置する用紙の端部において、用紙を挟んだ上下の気流の速度差を縮小することができる。速度差の縮小により、用紙の端部付近での渦流の発生を抑制してばたつきを抑制することができる。ばたつき抑制のため、分離部から送られるエアーを調整する必要はないので、用紙の分離性能を確保しつつ、ばたつきの抑制が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施の形態に係る画像形成システムを示す図である。
【図2】給紙装置の給紙トレイの斜視図である。
【図3】用紙の先端側から見た給紙トレイの図である。
【図4】吸着搬送部付近の給紙トレイの側面図である。
【図5】吸着搬送部付近の給紙トレイの側面図である。
【図6】用紙の端部で生じる渦流のイメージ図である。
【図7】給紙トレイの側面図である。
【図8】用紙の端部における気流のイメージ図である。
【図9】給紙装置の機能ブロック図である。
【図10】シャッターの開閉制御に係るタイミングチャートである。
【図11】用紙のサイズに応じた気流調整部の位置を示す図である。
【図12】エアーを吸引する気流調整部の配置例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0019】
図1は、本実施の形態に係る画像形成システム1を示す。
画像形成システム1は画像形成装置2、給紙装置3を備え、給紙装置3から給紙された用紙Tを、画像形成装置2が印刷に用いることができる。
【0020】
図1に示すように、画像形成装置2は、ADF(Auto Document Feeder)211、スキャナ212、印刷部22、給紙トレイ23、用紙反転部24を備える。ADF211はセットされた原稿をスキャナ212に搬送し、スキャナ212は原稿をスキャンする。印刷部22は、スキャンにより生成された画像データに基づいてトナーで画像を形成し、給紙トレイ23又は給紙装置3から給紙される用紙Tに印刷する。
【0021】
印刷部22は、帯電部221、露光部222、感光ドラム223、現像部224、クリーニング部225、定着装置226を備える。印刷時、帯電部221が感光ドラム223を帯電させる。露光部222がPWM(Pulse Width Modulation)変換された画像データに基づいてレーザ光を照射すると、感光ドラム223上には静電潜像が形成される。その後、現像部224が現像を行うと、感光ドラム223上にトナーの画像が形成される。トナーの画像は、給紙トレイ23又は給紙装置3から搬送された用紙T上に転写され、定着装置226により定着処理される。
【0022】
両面印刷を行う場合、表面が印刷された用紙Tは用紙反転部24に搬送され、用紙反転部24により裏表が反転されて印刷部22に再給紙される。用紙反転部24には循環経路が設けられ、この循環経路を用紙Tが通過することによって用紙Tの裏表が反転する。
【0023】
給紙装置3は、図1に示すように、3つの大容量の給紙トレイ31を備える。
図2は、給紙トレイ31の斜視図である。
図2に示すように、トレイ32、規制部材33、34により、給紙トレイ31に用紙Tの収容部が形成されている。規制部材33はトレイ32上に積載された用紙Tの先端を規制し、規制部材34は用紙Tの後端を規制する。用紙Tの先端とは用紙Tの搬送方向下流の端部をいい、用紙Tの後端とは搬送方向上流の端部をいう。規制部材34は搬送方向に移動可能であり、収容する用紙Tのサイズに対応して規制部材34の位置を変更させることができる。
【0024】
給紙トレイ31には浮上部4、吸着搬送部5、分離部6が設けられ、給紙トレイ31に積載された用紙Tはエアーサクション方式により給紙される。
【0025】
浮上部4は用紙Tの両側面に設けられており、その筐体はトレイ32上に積載された用紙Tの側面を規制する。浮上部4はファン41を備え、ファン41は送風口42を介して用紙Tの側面にエアーを送る。トレイ32上に積載された用紙Tは、トレイ32の昇降によってその高さ位置が常に調整され、上位数枚の用紙Tが送風口42の位置に達するように調整される。よって、ファン41から送られたエアーは、トレイ32上に積載された上位数枚の用紙Tに吹き付けられる。吹き付けられたエアーは上位数枚の用紙Tの用紙間を通過し、上位数枚の用紙Tが浮上する。浮上部4の筐体には、ファン41の吸気口を開閉するシャッター43が設けられている。ファン41からエアーを送る際はシャッター43が開かれ、エアー送りを停止する際はシャッター43が閉じられる。
【0026】
吸着搬送部5は、用紙Tの搬送方向下流に設けられている。吸着搬送部5は、3つのローラ52を巻回して回動するベルト51と、ベルト51の内側に配置された吸引部53とを備える。ベルト51は多数の小径の貫通孔が設けられており、吸引部53によってエアーが吸引されると、ベルト51に設けられた貫通孔が吸引口となって用紙Tがベルト面に吸着される。ベルト51の回動によりベルト51に吸着された用紙Tは搬送方向に搬送される。
【0027】
分離部6は、吸着搬送部5の下部に設けられている。分離部6は鉛直上方向にエアーを送るファン61を備える。ファン61からのエアーは、ダクト62によって斜め上方に送られ、ベルト51のベルト面に吹き付けられる。エアーはベルト面に突き当たって方向を変え、用紙Tの搬送方向下流から上流へと流れる。
【0028】
図3〜図5を参照して、浮上部4、吸着搬送部5、分離部6による用紙Tの給紙過程を説明する。
図3は、用紙Tの先端側から見た給紙トレイ31の図である。
浮上部4のファン41及び分離部6のファン61がエアー送りを開始すると、図3に示すように、ファン41から鉛直上方向に送られたエアーはガイド44によって送風口42に送られ、トレイ32上に積載された上位数枚の用紙Tの側面に吹き付けられる。一方、分離部6から送られたエアーは用紙Tに対し斜め下方向から用紙Tの先端に向けて吹き付けられる。
【0029】
吹き付けられたエアーによって、図4に示すように上位数枚の用紙Tが浮上する。浮上した用紙Tのうち最上位の用紙Tが、図5に示すように、吸引部53によってベルト51に吸着される。ベルト51に用紙Tが吸着された後、シャッター43によって吸気口が閉じられ、浮上部4からのエアー送りが停止すると、分離部6から送られるエアーのみ用紙Tに吹き付けられる。分離部6からのエアーは最上位の用紙Tとその下方の用紙Tの間を通過し、最上位の用紙Tはその下方の用紙Tから分離する。分離された下方の用紙Tは自重によって鉛直下方向に下降し、トレイ32上に再び積載される。
【0030】
用紙Tの分離時、分離部6から送られたエアーによって、当該エアーの気流の下流に位置する用紙Tの端部がばたつくことがある。これは、用紙Tの上面と下面における気流の速度差によって、渦流が発生し、用紙Tの端部がこの渦流に巻き込まれるためである。
図6は用紙Tの端部(後端)における気流のイメージ図である。図6に示すように、ベルト51に吸着された用紙Tの下面には分離部6から送られたエアーが通過し、気流y1が生じているが、用紙Tの上面には気流は発生していない。言い換えれば、用紙Tの上面には速度0の気流がある。
【0031】
速度差のある気流が合流すると、気流の合流部分で、速度の大きい気流が速度の小さい気流の方に流れ込み、渦流が生じる。そのため、用紙Tの下面を通過した気流y1が、用紙Tの上面に流れ込んで渦流y2が生じ、渦流y2により生じた揚力によって用紙Tの端部が浮上する。用紙Tの端部が浮上すると、渦流y2の方向が変化し、逆方向の渦流y3が生じるため、用紙Tの端部は下降する。下降によって元の方向の渦流y2が生じ、また用紙Tの端部が浮上するといったように、渦流y2、y3によって用紙Tの端部の浮上と下降が繰り返され、ばたつきが生じる。
【0032】
このような気流y1の下流に位置する用紙Tの端部のばたつきを防止するため、図2及び図7に示すように、分離部6から送られるエアーの気流y1と用紙Tを挟んで反対側に、気流調整部7が設けられている。気流調整部7はエアーを送るファン71を備え、ファン71から送られたエアーはダクト72によって用紙Tの後端に向けて送られる。気流調整部7のエアー送りにより、図8に示すように、分離部6から送られたエアーの気流y1の下流に位置する用紙Tの後端において、気流y1と用紙Tを挟んで反対側に、気流y1と同じ方向の気流x1が生じる。用紙Tの下面を通過する気流y1に対し、用紙Tの上面には少なくとも気流調整部7による気流x1が生じているので、用紙Tを挟んで上下に生じた気流x1、y1の速度差が小さくなる。速度差の縮小により渦流の発生、ひいては用紙Tの後端のばたつきを抑制することができる。
【0033】
好ましくは、気流調整部7は分離部6から送られたエアーの気流y1と略同一の速度の気流x1を生じさせる。用紙を挟んだ上下の気流x1、y1の速度を略同一とすることにより、用紙の端部付近の渦流の発生を防止し、用紙Tのばたつきを防止することが可能となる。例えば、気流調整部7からの気流x1が分離部6からの気流y1と略同一の速度となるときのファン71の回転数を実験的に求め、ファン71を当該回転数により回転させればよい。
【0034】
気流調整部7は移動部8に取り付けられており、移動部8は気流調整部7の位置を搬送方向に移動させることができる。移動部8は、例えばレール上に取り付けられた気流調整部7をモーター等によって駆動してその位置を移動させる。
【0035】
図9は、給紙装置3の機能ブロック図である。
図9に示すように、給紙装置3はセンサーs1〜s3、浮上部4、吸着搬送部5、分離部6、気流調整部7、移動部8、制御部9を備えている。
【0036】
センサーs1は図2に示すように規制部材33に取り付けられており、トレイ32上に積載された用紙Tの高さを検知する。センサーs1は、例えばトレイ32から一定の高さ位置に取り付けられ、この高さに用紙Tが有ればON信号、用紙Tが無ければOFF信号を制御部9に出力する。
【0037】
センサーs2は、図4に示すように吸着搬送部5のベルト51付近に設けられており、ベルト51に吸着された用紙Tを検知する。センサーs2は、ベルト51に吸着された用紙Tが有ればON信号、無ければOFF信号を制御部9に出力する。
【0038】
センサーs3は、図4に示すように用紙Tの搬送出口付近に設けられており、吸着搬送部5の搬送によって搬送出口を通過する用紙Tを検知する。センサーs3は、搬送出口を通過する用紙Tが有ればON信号、無ければOFF信号を制御部9に出力する。
【0039】
制御部9は、CPU(Central Processing Unit)やRAM(Random Access Memory)等から構成され、給紙装置3の各部を制御する。
例えば、制御部9はセンサーs1〜s3から入力される検知信号によって給紙制御を行う。
【0040】
センサーs1によりOFF信号が入力されると、制御部9は図示しない昇降モーターを駆動させ、トレイ32の高さ位置を上昇させる。センサーs1からON信号が入力されると、制御部9はトレイ32の上昇を停止し、トレイ32に積載された用紙Tの高さ位置を一定の高さ位置に調整する。一定の高さ位置は、浮上部4から送られるエアーが用紙Tの上位数枚になる位置であり、また吸着搬送部5による用紙Tの吸着が適切に行われる高さ位置である。
【0041】
制御部9は、センサーs2及びセンサーs3から入力される検知信号によって、浮上部4のシャッター43の開閉、つまり浮上部4のファン41によるエアー送りの開始と停止を制御する。図10はその開閉制御を示すタイミングチャートである。図10に示すように、制御部9は吸着搬送部5への用紙Tの吸着が検知されてから、搬送出口を通過する用紙Tが検知されるまでの間、シャッター43を閉じて浮上部4からのエアー送りを停止する。その後、搬送出口を通過する用紙Tが検知されると、制御部9はシャッター43を開き浮上部4からのエアー送りを開始する。
【0042】
また、制御部9は分離部6から送るエアーの量を制御する。用紙Tの坪量や塗工の有無によって用紙間の密着力が異なり、用紙Tの分離性能が変わるためである。密着力が大きいほど分離性能は低下するので、制御部9は密着力に比例して分離部6から送るエアーの量を増大させ、分離性能を上げる。具体的には、用紙Tの種類毎に良好な分離性能が得られるときのエアーの量として、分離部6のファン61の回転数をテーブル化しておき、各給紙トレイ31にセットされた用紙Tの種類に対応する回転数でファン61を駆動するよう制御すればよい。
【0043】
分離部6から送られるエアーの量が調整された場合、用紙Tの下面を通過する気流y1の速度が大きくなるため、用紙Tを挟んだ上下の気流x1、y1の速度のバランスが崩れる。よって、調整された分離部6のエアーの量に応じて、制御部9が気流調整部7から送られるエアーの量を決定し、分離部6による気流y1と気流調整部7による気流x1の速度を略同一とすることが好ましい。気流調整部7が制御部9により決定された量のエアーを送ることにより、用紙Tの種類によらず、用紙Tの分離性能を確保できるとともに、用紙Tの端部のばたつきを防止できる。
【0044】
例えば、分離部6から送るエアーの量の調整値(例えば、ファン61の回転数)に対し、気流調整部7から送るエアーの量の調整値(例えばファン71の回転数)をテーブル化しておき、制御部9は気流調整部7から送るエアーの量の調整値を、テーブルの分離部6の調整値に応じた調整値に決定する。気流調整部7のエアーの量の調整値としては、エアーの量が調整された分離部6からのエアーの気流y1と、気流調整部7からのエアーの気流x1とが、気流y1の下流に位置する用紙Tの端部において略同一の速度となるときのファン71の回転数を求めればよい。気流調整部7は制御部9により決定された調整値でファン71を回転し、エアーを送る。
【0045】
また、各給紙トレイ31に収容された用紙Tのサイズに応じて、気流調整部7から送られるエアーの気流x1が、少なくとも分離部6からの気流y1の下流に位置する用紙Tの端部において生じるように、制御部9が気流調整部7の位置を決定し、移動部8が制御部9により決定された位置に気流調整部7を移動させることが好ましい。これにより、給紙トレイ31にセットされた用紙Tのサイズによらず、分離部6からの気流y1の下流に位置する用紙Tの端部において少なくとも気流x1を生じさせることができ、用紙Tの端部のばたつきを防止できる。
【0046】
例えば、図11に示すように、給紙トレイ31にA4サイズの用紙Tがセットされていれば、気流調整部7を位置F1に移動して、気流調整部7から送られるエアーによって用紙Tの後端に気流x1を生じさせる。用紙TがA4サイズからB5サイズに変更され、用紙Tの後端の位置が搬送方向下流側にずれると、位置F1からエアーを送っても用紙Tの後端において気流x1は生じにくい。よって、制御部9は、エアー送りによってB5サイズの用紙Tの後端において気流x1が生じる位置F2に、気流調整部7を移動させる。
【0047】
以上のように、本実施の形態によれば、給紙装置3は、複数の用紙Tを積載する給紙トレイ31と、給紙トレイ31に積載された用紙Tのうち、最上位の用紙Tを吸着して搬送する吸着搬送部5と、吸着搬送部5に吸着された用紙Tと、当該用紙Tの下方の用紙Tとの間にエアーを送り、吸着された用紙Tをその下方の用紙Tから分離する分離部6と、分離部6から送られたエアーの気流y1の下流に位置する用紙Tの端部において、当該気流y1と用紙Tを挟んで反対側に、当該気流と同じ方向の気流x1を生じさせる気流調整部7と、を備える。気流調整部7は、分離部6から送られたエアーの気流y1の上流から下流に向けてエアーを送り、気流x1を生じさせる。
【0048】
これにより、気流y1の下流に位置する用紙の端部において、用紙Tを挟んだ上下の気流x1、y1の速度差を縮小することができる。速度差の縮小により、用紙Tの端部付近での渦流の発生を抑制してばたつきを抑制することができる。ばたつき抑制のため、分離部6から送られるエアーを調整する必要はないので、用紙Tの分離性能を確保しつつ、ばたつきの抑制が可能となる。
【0049】
なお、上述した実施の形態は、本発明の好適な一例であり、これに限定されない。
例えば、上記実施の形態では、気流調整部7はエアーを送ることによって気流x1を生じさせていたが、エアーを吸引することによって気流x1を生じさせてもよい。吸引する場合、図12に示すように、分離部6から送られるエアーの気流y1の下流に気流調整部7を配置すればよい。気流調整部7のファン71によって用紙Tの後端側から用紙Tの上面側のエアーを吸引し、用紙Tの後端において気流x1を生じさせる。気流x1の発生により、エアーを送る場合と同様に、用紙Tの分離性能を確保しつつ、用紙Tの端部のばたつきを抑制できる。
【0050】
吸引によって気流x1を生じさせる場合も、調整された分離部6のエアーの量に応じて、気流調整部7が吸引するエアーの量を制御部9が決定し、気流調整部7が決定された量のエアーを吸引して、分離部6による気流y1と気流調整部7による気流x1の速度を略同一とすることが好ましい。これにより、用紙Tの種類によらず、用紙Tの分離性能を確保でくるとともに、用紙Tの端部のばたつきを防止できる。
【0051】
また、画像形成装置2が備える給紙トレイが、エアーサクション方式による給紙を行う場合には、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 画像形成システム
2 画像形成装置
22 印刷部
3 給紙装置
4 浮上部
41 ファン
43 シャッター
5 吸着搬送部
51 ベルト
53 吸引部
6 分離部
61 ファン
7 気流調整部
71 ファン
72 ダクト
8 移動部
9 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の用紙を積載する給紙トレイと、
前記給紙トレイに積載された用紙のうち、最上位の用紙を吸着して搬送する吸着搬送部と、
前記吸着搬送部に吸着された用紙と当該用紙の下方の用紙との間にエアーを送り、吸着された用紙をその下方の用紙から分離する分離部と、
前記分離部から送られたエアーの気流の下流に位置する用紙の端部において、当該気流と用紙を挟んで反対側に、当該気流と同じ方向の気流を生じさせる気流調整部と、
を備える給紙装置。
【請求項2】
前記気流調整部は、前記分離部から送られたエアーの気流と略同一の速度の気流を生じさせる請求項1に記載の給紙装置。
【請求項3】
前記気流調整部は、前記分離部から送られたエアーの気流の上流から下流に向けてエアーを送り、気流を生じさせる請求項1又は2に記載の給紙装置。
【請求項4】
前記分離部が送るエアーの量を調整し、調整されたエアーの量に応じて、前記分離部からのエアーの気流と前記気流調整部からのエアーの気流の速度が略同一となるように、前記気流調整部が送るエアーの量を決定する制御部を備え、
前記気流調整部は、前記制御部によって決定された量のエアーを送る請求項3に記載の給紙装置。
【請求項5】
前記給紙トレイに積載された用紙のサイズに応じて、前記気流調整部から送られたエアーの気流が前記用紙の端部において生じる位置に、前記気流調整部の位置を決定する制御部と、
前記制御部により決定された位置に、前記気流調整部を移動させる移動部と、
を備える請求項3に記載の給紙装置。
【請求項6】
前記気流調整部は、前記用紙の端部側からエアーを吸引し、気流を生じさせる請求項1又は2に記載の給紙装置。
【請求項7】
前記分離部が送るエアーの量を調整し、調整されたエアーの量に応じて、前記分離部からのエアーの気流と前記気流調整部のエアーの吸引により生じた気流の速度が略同一となるように、前記気流調整部が吸引するエアーの量を決定する制御部を備え、
前記気流調整部は、前記制御部によって決定された量のエアーを吸引する請求項6に記載の給紙装置。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか一項に記載の給紙装置と、
画像形成装置と、
を備える画像形成システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2012−246068(P2012−246068A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116868(P2011−116868)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】