説明

給紙装置及び画像形成装置

【課題】昇降板上の用紙積載量にかかわらず所定のタイミングで安定して用紙を給送できるようにする。
【解決手段】カムギア24aのカム突起241aが突出部122aの第2面Sに係止している状態では、昇降板12は圧縮コイルばね124の付勢力に抗して、給紙ローラ13から離間した待機位置に保持されている。次に、カムギア24aが時計回りに回転し、カム突起241aと突出部122aの第2面Sとの係合状態が解消されると、突出部122aの第3面Sはカム突起241aと接触しないので、昇降板12は圧縮コイルばね124の付勢力によって瞬時に上方に移動して給紙位置となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は用紙を積載し昇降自在の昇降板を備えた給紙装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリンターやファクシミリ、複写機などの電子写真方式の画像形成装置では、所定のタイミングで画像形成部に用紙を給送するための給紙装置が備えられている。従来の給紙装置の一つとして、用紙を積載する昇降板と、用紙を給送する給紙ローラと、給紙ローラによって送り出された用紙を1枚ずつ分離する用紙分離部材とを備えた装置がある。かかる給紙装置では、昇降板を上昇させて、昇降板上の用紙を給紙ローラに圧接させ、給紙ローラを回転させて用紙を送り出すと共に、用紙分離部材によって、送り出された用紙を1枚ずつ分離している(例えば、特許文献1〜3を参照)。
【0003】
このような従来の給紙装置において、昇降板の昇降はギアの回転によって行われているため昇降速度が遅く、給紙ローラの回転と昇降板の昇降とを同一の駆動源で行っている場合には、昇降板上の積載用紙が多いときと少ないときとで、すなわち昇降板に積載されている用紙の高さによって給紙ローラによる給紙のタイミングが異なることがあった。
【0004】
このように給紙のタイミングが昇降板の用紙積載量によって異なると、例えば、給紙ローラと転写ローラとの間に搬送ローラがない画像形成装置の場合には、トナー画像の用紙への転写位置が変化し安定した画像が得られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-1350号公報
【特許文献2】特開2009-242025号公報
【特許文献2】特開2009-40607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、昇降板上の用紙積載量にかかわらず所定のタイミングで安定して用紙を給送できる給紙装置を提供することにある。
【0007】
また、本発明の他の目的は、位置ずれのない高品質の画像を安定して得られる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、用紙を積載し昇降自在の昇降板と、昇降板に積載された用紙を給送する給紙ローラと、給紙ローラに圧接し、給紙ローラによって送り出された用紙を1枚ずつ分離する用紙分離部材と、昇降板に積載された用紙が給紙ローラに圧接する給紙位置と、昇降板に積載された用紙が給紙ローラから離れた待機位置とに昇降板を移動させる昇降機構とを有し、前記昇降機構は待機位置から給紙位置に昇降板を瞬時に移動させるものであることを特徴とする給紙装置が提供される。
【0009】
前記昇降機構としては、昇降板を給紙ローラの方向に常に付勢する付勢部材と、回転自在のカム部材と、このカム部材と摺接する、昇降板に形成された突出部とから構成され、回転するカム部材と突出部とが摺接することによって、付勢部材の付勢力に抗して昇降板が給紙位置から待機位置に徐々に移動し、カム部材と突出部との接触状態が解消することによって、付勢部材の付勢力によって待機位置から給紙位置に昇降板が瞬時に移動する機構が好ましい。
【0010】
このとき、前記カム部材としては、外周面に歯が形成されたカムギアと、カムギアの側面に軸方向に突出するカム突起とを有するものであってもよい。また、前記突出部としては、前記カム突起と摺接して昇降板を給紙位置から待機位置に徐々に移動させる、昇降板の用紙載置面に対して傾きを有する第1面と、前記カム突起と摺接又は接触して昇降板を待機位置で保持する、昇降板の用紙載置面と略平行な第2面と、前記カム突起と接触しない、昇降板の用紙載置面に対して略垂直な第3面とを有しているものであってもよい。
【0011】
また、給紙ローラとカム部材とは同一の駆動源によって回転するのが好ましい。
【0012】
そしてまた、本発明によれば、給紙装置から送り出された用紙を、像担持体と転写ローラとによって挟持し搬送しながら像担持体から用紙にトナー像を転写する電子写真方式の画像形成装置であって、前記給紙装置として前記のいずれかに記載の給紙装置を用いることを特徴とする画像形成装置が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の給紙装置では、待機位置から給紙位置に昇降板が瞬時に移動するので、昇降板上の用紙積載量にかかわらず給紙ローラに用紙が直ちに接触し、用紙は、所定のタイミングで安定して給送される。これにより、給紙ローラと転写ローラとの間に搬送ローラがない画像形成装置であっても、位置ずれのない高品質の画像を安定して得られるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る画像形成装置及び給紙装置の一例を示す概説図である。
【図2】図1に示す給紙装置の断面斜視図である。
【図3】昇降機構の概説図である。
【図4】昇降板の移動状態を示す工程図である。
【図5】用紙分離部材が昇降板の移動に連動して移動する機構を説明する図である。
【図6】用紙分離部材が昇降板の移動に連動して移動する機構を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る給紙装置及び画像形成装置を図に基づいてさらに詳しく説明するが本発明はこれらの実施形態に何ら限定されるものではない。
【0016】
図1は、本発明に係る画像形成装置の一例を示すプリンターDの概略構成図である。図1に示すプリンターDは、トナー画像を担持し、反時計回りに回転駆動する円筒状の感光体(像担持体)20の周囲に、感光体20の表面を一様に帯電させる帯電ローラ21と、感光体20表面に光を照射して静電潜像を形成する露光装置22と、感光体20にトナーを供給し感光体20上の静電潜像を現像してトナー画像を形成する現像装置23と、現像装置23によって形成された感光体20上のトナー画像を用紙Pに転写する転写ローラ24とを備えている。
【0017】
また、装置下部には給紙装置1を備えている。給紙装置1は、給紙ローラ13と、給紙ローラ13に対して接触位置と離間位置とに移動する用紙分離部材14と、用紙分離部材14を給紙ローラ13の方向に付勢する圧縮コイルばね15と、用紙Pを積載する用紙トレイ11と、用紙Pが給紙ローラ13に圧接する給紙位置と離間した待機位置とに移動する昇降板12と、昇降板12を昇降移動させる昇降機構6(図3に図示)とを有する。昇降機構6については後述する。昇降板12が給紙位置になるとともに、用紙分離部材14が接触位置になると、給紙ローラ13によって最上の用紙から順に1枚ずつ搬送路に引き出される。
【0018】
画像形成動作について説明する。まず、所定の周速度で回転する感光体20の外周面が帯電ローラ21によって一様に帯電される。次に、帯電された感光体20の表面に、例えばパーソナルコンピュータなどの外部装置から入力される画像データに基づいて露光装置22から光が照射されて感光体20に静電潜像が形成される。続いて、この静電潜像は、現像装置23から供給されるトナーによって可視像化される。このようにして感光体20の表面に形成されたトナー画像は感光体20の回転によって、感光体20と転写ローラ24とのニップ部(転写領域)に搬送される。転写ローラ24は、不図示の駆動モータによって回転すると共に、圧縮コイルばね(不図示)によって感光体20に圧接している。また、転写ローラ24には、不図示の電圧印加手段によって転写バイアス電圧が印加される。
【0019】
一方、用紙トレイ11に積載された用紙Pは、給紙ローラ13によって最上の用紙から順に搬送路に引き出される。そして、タイミングセンサーSによって用紙Pの先端位置が検知され、感光体20の回転タイミングに合わせて転写領域に搬送される。感光体20と転写ローラ24とのニップ部を用紙Pが通過する際に、転写ローラ24に転写バイアス電圧が印加され、感光体20に形成されたトナー画像が用紙Pに転写される。トナー画像が転写された用紙Pは定着装置3に搬送される。定着装置3において用紙Pは加熱・加圧されて用紙P上のトナー画像は用紙Pに溶融定着する。トナー画像が定着した用紙Pは排紙ローラ対4によって排紙トレイ5に排出される。
【0020】
プリンターDでは、給紙ローラ13から、感光体20と転写ローラ24とのニップ部までの間の搬送路には搬送ローラ対を設けていない。これにより搬送路を短くし装置の小型化を図っている。また、転写ローラ24の周速度を給紙ローラ13の周速度よりも速くして、搬送路において用紙Pが弛んでループ状になるのを防ぎ、搬送路を最小限の容積に抑えて装置のさらなる小型化を図ってもよい。
【0021】
図2に、給紙装置1の部分断面斜視図を示す。昇降板12は、幅方向両側にある軸121aによって揺動自在に支持されており、昇降機構6(図3に図示)によって、昇降板12に積載された用紙Pが給紙ローラ13に圧接する給紙位置と、昇降板12に積載された用紙Pが給紙ローラ13から離れた待機位置とに移動する。
【0022】
図3に示すように、昇降板12を給紙位置と待機位置とに移動させる昇降機構6は、昇降板12を給紙ローラ13の方向へ常に付勢する圧縮コイルばね(付勢部材)124と、ハウジングに回転自在に設けられたカムギア24aと、カムギア24aの側面に形成されたカム突起241aと、昇降板12の幅方向両側に形成された突出部122aとから構成される。突出部122aは略台形状をなし、昇降板の用紙載置面に対して所定の傾斜角を有する第1面Sと、用紙載置面と略平行な第2面Sと、用紙載置面に対して略垂直な第3面Sとを有する。
【0023】
図4(a)に、昇降板12が待機位置にあるときの状態図を示す。カムギア24aのカム突起241aが突出部122aの第2面Sに係止し、昇降板12は圧縮コイルばね124の付勢力に抗して、給紙ローラ13から離間した待機位置に保持されている。次に、同図(b),(c)に示すように、カムギア24aが時計回りに回転すると、カム突起241aと突出部122aの第2面Sとの係合状態が解消される。突出部122aの第3面Sはカム突起241aと接触しないので、カム突起241aと突出部122aの第2面S2との係合状態が解消された時に、昇降板12は圧縮コイルばね124の付勢力によって瞬時に上方に移動して給紙位置となる。昇降板12のかかる移動速度は、従来のギアの回転による移動速度に比べて格段に速く、昇降板上の用紙積載量にかかわらず給紙ローラ13に用紙Pが直ちに接触するようになる。これにより、用紙は、所定のタイミングで安定して給送される。
【0024】
図4(d)に示すように、カムギア24aがさらに時計回りに回転して、カム突起241aが突出部122aの第1面Sに接触すると、カム突起241aは突出部122aの第1面Sを摺動して、圧縮コイルばね124の付勢力に抗して昇降板12を徐々に押し下げる。そして、カム突起241aが突出部122aの第2面Sに係止することによって昇降板12は待機位置に保持される。
【0025】
一方、給紙ローラ13は、カムギア24aの回転に連動して回転する。図2に示すように、カムギア24aと連結ギア25aとが歯合し、連結ギア25aには回転軸17が取り付けられている。そして、回転軸17には給紙ローラ13が固定されている。してしたがって、不図示の駆動源によってカムギア24aが回転すると、給紙ローラ13も同時に回転し、カムギア24aが一回転する間に給紙ローラ13によって1枚の用紙が給送される。また、昇降板12は、用紙Pが1枚給送されるごとに待機位置と給紙位置との間を往復移動する。なお、カムギア24aが1回転する周期は、給紙ローラ13から給送された用紙Pの先端部が感光体20と転写ローラ24との間で挟持されるまで給紙ローラ13が回転するように設定される。
【0026】
また、用紙分離部材14の、給紙ローラ13に対する離接移動は、昇降板12の移動に連動させるのが好ましい。図5及び図6に、連動機構の一例を示す垂直断面図を示す。用紙分離部材14は、給紙ローラ13と接触して用紙Pを挟み込むフリクションパッド141とそれを保持するホルダー142とを有し、圧縮コイルばね15によって給紙ローラ13の方向に常に付勢されている。そして、ホルダー142に形成された突起142aが、ハウジングに固定された一方端を支点として揺動する略L字状のレバー18に当接している。また、レバー18の自由端側は、昇降板12の先端位置にあるレバー当接部123(図6に図示)の下方に位置している。
【0027】
図5に示すように、昇降板12が、圧縮コイルばね124の付勢力に抗して押し下げられると、レバー18の自由端側が昇降板12のレバー当接部123(図6に図示)によって押し下げられて、レバー18は、ハウジングに固定された一方端を支点として下方向へ移動する。レバー18が下方に移動することによって、レバー18に当接しているホルダー142の突起142aが下方に押し下げられ、用紙分離部材14は下方に移動する。これによって、用紙分離部材14は、給紙ローラ13から離れた離間位置となる。一方、図6に示したように、昇降板12が、圧縮コイルばね124の付勢力によって上方に移動すると、レバー18は通常状態に戻り、用紙分離部材14は圧縮コイルばね15によって給紙ローラ13に圧接する。このように、用紙分離部材14は、昇降板12の昇降に連動して給紙ローラ13に対して接触位置と離間位置とに移動する。
【0028】
なお、以上説明した実施形態では、昇降板を移動させる昇降機構として、付勢手段とカム部材とを用いていたが、これに限定されるものではなく、例えばソレノイドを昇降機構として用いても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の給紙装置では、待機位置から給紙位置に昇降板が瞬時に移動するので、昇降板上の用紙積載量にかかわらず給紙ローラに用紙が直ちに接触し、用紙は、所定のタイミングで安定して給送される。これにより、給紙ローラと転写ローラとの間に搬送ローラがない画像形成装置であっても、位置ずれのない高品質の画像を安定して得られるようになり有用である。
【符号の説明】
【0030】
1 給紙装置
6 昇降機構
第1面
第2面
第3面
12 昇降板
13 給紙ローラ
14 用紙分離部材
20 感光体(像担持体)
24 転写ローラ
24a カムギア(カム部材)
122a 突出部
124 圧縮コイルばね(付勢部材)
241a カム突起(カム部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙を積載し昇降自在の昇降板と、昇降板に積載された用紙を給送する給紙ローラと、給紙ローラに圧接し、給紙ローラによって送り出された用紙を1枚ずつ分離する用紙分離部材と、昇降板に積載された用紙が給紙ローラに圧接する給紙位置と、昇降板に積載された用紙が給紙ローラから離れた待機位置とに昇降板を移動させる昇降機構とを有し、
前記昇降機構は待機位置から給紙位置に昇降板を瞬時に移動させるものであることを特徴とする給紙装置。
【請求項2】
前記昇降機構が、昇降板を給紙ローラの方向に常に付勢する付勢部材と、回転自在のカム部材と、このカム部材と摺接する、昇降板に形成された突出部とから構成され、
回転するカム部材と突出部とが摺接することによって、付勢部材の付勢力に抗して昇降板が給紙位置から待機位置に徐々に移動し、カム部材と突出部との接触状態が解消することによって、付勢部材の付勢力によって待機位置から給紙位置に昇降板が瞬時に移動する請求項1記載の給紙装置。
【請求項3】
前記カム部材が、外周面に歯が形成されたカムギアと、カムギアの側面に軸方向に突出するカム突起とを有するものである請求項2記載の給紙装置。
【請求項4】
前記突出部が、前記カム突起と摺接して昇降板を給紙位置から待機位置に徐々に移動させる、昇降板の用紙載置面に対して傾きを有する第1面と、前記カム突起と摺接又は接触して昇降板を待機位置で保持する、昇降板の用紙載置面と略平行な第2面と、前記カム突起と接触しない、昇降板の用紙載置面に対して略垂直な第3面とを有している請求項2又は3記載の給紙装置。
【請求項5】
給紙ローラとカム部材とが同一の駆動源によって回転する請求項2〜4のいずれかに記載の給紙装置。
【請求項6】
給紙装置から送り出された用紙を、像担持体と転写ローラとによって挟持し搬送しながら像担持体から用紙にトナー像を転写する電子写真方式の画像形成装置であって、
前記給紙装置として請求項1〜5のいずれかに記載の給紙装置を用いることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−112428(P2013−112428A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257224(P2011−257224)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】