説明

給紙部カバー、給紙装置、記録装置

【課題】 被記録材を差し込む差込口を備えた、被記録材を堆積した状態でセット可能な給紙装置において、効果的に前記差込口からの塵埃の進入を防止し、以て正常な給紙動作を維持すること。
【解決手段】 プリンタ100はハウジング部材1と記録部カバー2と給紙部カバー3とを備えている。記録部カバー2はハウジング部材1に回動可能に取り付けられ、給紙部カバー3は、記録部カバー2に回動可能に取り付けられる。給紙部カバー3は、印刷用紙Pがセットされた状態において当接部36ががガイド部材4の上縁と当接した状態で閉状態となり、該閉状態において、セットされた印刷用紙Pの最上位のものの記録面Sと、ガイド面1bとの間の隙間aを覆って塵埃の進入を防止する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、被記録材を上方から差し込む為の差込口を備え、該差込口から被記録材を差し込むことによって被記録材をセット可能な給紙装置において、前記差込口に形成される隙間を覆う給紙部カバーに関する。
【0002】
【従来の技術】FAX、プリンタ等に代表される記録装置においては、被記録材としての例えば印刷用紙を複数枚堆積した状態でセットし、該複数枚堆積した状態でセットされる印刷用紙を1枚ずつ繰り出して印刷用紙に記録を行う記録部へと給送する給紙装置が設けられている。
【0003】この様な給紙装置の1つとして、印刷用紙を傾斜した状態で堆積保持するASF(オート・シード・フィーダ)がある。ASFは、印刷用紙を上方から差し込む差込口と、該差込口の下方に設けられ、回動することにより印刷用紙を給送する給紙ローラとを備え、前記差込口から差し込まれ、傾斜した状態で堆積保持された印刷用紙の最上位のものを1枚ずつ繰り出し、印刷を行う記録部へと該印刷用紙を給送する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ここで、前記差込口が開放状態にあると、給紙装置内部に塵埃が進入する。塵埃が進入すると給紙ローラに付着し、その付着量が多くなると給紙ローラと印刷用紙との接触摩擦抵抗が低減し、印刷用紙を繰り出すことができなくなり、また、給紙装置を構成するその他の各構成要素に悪影響を及ぼす虞もある。
【0005】そこで本発明は上記問題に鑑みなされたものであり、その課題は、被記録材を差し込む差込口を備えた、被記録材を堆積した状態でセット可能な給紙装置において、効果的に前記差込口からの塵埃の進入を防止し、以て正常な給紙動作を維持することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本願請求項1記載の給紙部カバーは、被記録材を上方から差し込む為の差込口と、該差込口の下方に設けられ、回動することにより被記録材を給送する給紙ローラと、を備えた、前記差込口から差し込まれた被記録材を複数枚堆積した状態でセット可能な、該堆積状態にセットされた被記録材を1枚ずつ繰り出して被記録材に記録を行う記録部へと給送する給紙装置において、被記録材がセットされた状態における前記差込口において被記録材の記録面側に形成される隙間を覆う状態と、前記隙間を開放する状態とを変化可能に固設されることを特徴とする。
【0007】給紙装置において被記録材を差し込む差込口からは塵埃等の異物が給紙装置内部に進入し易くなっていて、該塵埃等が進入すると、給紙装置の構成要素、特に、給紙ローラに悪影響を及ぼし、給紙動作を阻害する場合がある。しかし、本願請求項1記載の給紙部カバーは、被記録材がセットされた状態における前記差込口において被記録材の記録面側に形成される隙間を覆う状態と、前記隙間を開放する状態とを変化可能に固設されるので、単に前記差込口全体を覆う「蓋」としてでは無く、被記録材を差し込んだ状態における、当該差込口に生じる隙間を覆うので、被記録材がセットされた状態、即ち記録動作中における塵埃の進入を防止でき、以て前述した不具合の発生を効果的に防止することができる。また、当該給紙部カバーは給紙装置或いは該給紙装置が設置される記録装置等の構成要素に固設されるので、当該給紙部カバーを紛失する虞が無い。更に、給紙装置が給紙動作に際して騒音を発生させる様な場合、該給紙部カバーによって、この様な騒音を一定量遮断することができるという作用効果をも得ることができる。
【0008】本願請求項2記載の給紙部カバーは、請求項1において、被記録材の幅方向に長い板状体からなり、セットされる被記録材を側視する方向から視て時計方向および反時計方向に回動する為の第1の回動軸を備え、該第1の回動軸を中心に回動することにより、前記隙間を覆う状態と、前記隙間を開放する状態とを変化することを特徴とする。本願請求項2記載の発明によれば、給紙部カバーが被記録材の幅方向に長い板状体からなり、回動することにより、前記隙間を覆う状態と、前記隙間を開放する状態とを変化するので、単純な構造によって低コストに当該給紙部カバーを構成することができる。
【0009】本願請求項3記載の給紙部カバーは、請求項1または2において、前記給紙装置と、被記録材に記録を行う記録部および該記録部へ供給するインクが貯留された着脱可能なインク・カートリッジを備えた、主走査方向に往復動するキャリッジと、該キャリッジを露呈させる為の開口部が設けられた、該キャリッジおよび前記給紙装置を覆う様に設けられるハウジング部材と、前記開口部を覆う状態と開放した状態とを変化可能な、前記ハウジング部材に開閉可能に設けられる記録部カバーと、を備えた記録装置における、前記記録部カバーに取り付けられることを特徴とする。本願請求項3記載の発明によれば、給紙部カバーが、前記給紙装置と、被記録材に記録を行う記録部およびインク・カートリッジを備えたキャリッジと、該キャリッジを露呈させる為の開口部が設けられた、該キャリッジおよび前記給紙装置を覆う様に設けられるハウジング部材と、前記開口部を覆う状態と開放した状態とを変化可能な、前記ハウジング部材に開閉可能に設けられる記録部カバーと、を備えた記録装置における、前記記録部カバー側に取り付けられるので、前記ハウジング部材の設計においては給紙部カバーの取り付けを考慮する必要が無く、以て前記ハウジング部材の設計の自由度を高めることが可能となる。
【0010】本願請求項4記載の給紙部カバーは、請求項3において、前記記録部カバーの開閉動作と独立して前記隙間を覆う状態と前記隙間を開放する状態とを変化する開閉動作が可能となる様に取り付けられることを特徴とする。本願請求項4記載の発明によれば、給紙部カバーの開閉動作が、記録部カバーの開閉動作と関係なく独立して行うことができるので、従って記録部カバーの開閉動作に囚われず給紙部カバーを開閉させることが可能となり、以て給紙部カバーの操作性が向上する。
【0011】本願請求項5記載の給紙部カバーは、請求項3または4において、前記記録部カバーが第2の回動軸を中心に回動可能に前記ハウジング部材に設けられ、回動することにより、前記開口部を覆う状態と開放した状態とを変化するものであり、当該給紙部カバーの前記第1の回動軸の軸心が、前記第2の回動軸の軸心と一致する様に前記記録部カバーに取り付けられることを特徴とする。本願請求項5記載の発明によれば、記録部カバー或いは、給紙部カバーを回動させる際に、回動対象では無い相手側に影響を与えずに、当該回動を行うことができる。即ち、記録部カバーおよび給紙部カバーは、双方共に別個の回動軸を備え、該回動軸を中心に回動することにより開閉動作を行う様になっている。ここで、記録部カバーの回動軸(第2の回動軸)と給紙部カバーの回動軸(第1の回動軸)との軸心がずれている場合、記録部カバーが回動すると、前記第1の回動軸の位置は、前記第2の回動軸を中心に回動変位することになる。つまり、記録部カバーの回動によって、給紙部カバーもがその状態を変化させることになる。しかし、本願請求項5記載の発明によれば記録部カバーの回動軸(第2の回動軸)と給紙部カバーの回動軸(第1の回動軸)との軸心が一致しているのでこの様な不具合を招来することが無く、以て記録部カバーと、給紙部カバーとを、互いに影響を与えずに独立して開閉させることが可能となる。
【0012】本願請求項6記載の給紙部カバーは、請求項3から5のいずれか1項において、前記第1の回動軸を回動中心とした回動動作が、当該回動動作を行う為の回動しろを前記第1の回動軸の周りに必要とするものであり、前記ハウジング部材には該回動しろを吸収する、被記録材の幅方向に延びる凹部が形成されていることを特徴とする。
【0013】本願請求項6記載の発明によれば、給紙部カバーは、その回動に際し、前記第1の回動軸の周りに回動しろを必要とする。つまり、給紙部カバーにおいて、第1の回動軸の回動中心から突出する様な突起部が形成されている場合、当該突起部は、給紙部カバーの回動に際し、一定の軌跡を描くことになる。従って、当該軌跡を描く部分が、給紙部カバーの回動に必要な回動しろとなる。ここで、給紙部カバーが取り付けられた際に、前記ハウジング部材に、当該回動しろを吸収する為の、被記録材の幅方向に延びる凹部を形成する必要が生じる場合がある。この様に、被記録材の幅方向に延びる凹部を前記ハウジング部材に形成させることによって、前記ハウジング部材が、断面視において湾曲形状を有することになり、この様に湾曲形状を備えることによって、前記ハウジング部材は、幅方向(被記録材の幅方向)における剛性を高めることが可能となる。故に、前記ハウジング部材の強度を向上させることが可能となるという作用効果を奏することができる。
【0014】本願請求項7記載の給紙部カバーは、請求項3から6のいずれか1項において、前記給紙部カバーが凹曲面を有するものであり、前記記録部カバーおよび前記給紙部カバーが共に閉状態にある際に、前記凹曲面が、前記記録部カバーが形成する凹曲面と滑らかに接続する様に前記記録部カバーに取り付けられることを特徴とする。本願請求項7記載の発明によれば、給紙部カバーおよび記録部カバーの双方が凹曲面を備えていて、給紙部カバーの凹曲面が、取り付けられた際に記録部カバーの湾曲面と滑らかに接続するので、これにより、外観上において不自然な凹凸形状を形成することなく、前記2つの給紙部カバーが設けられた際の美観を確保することができる。
【0015】本願請求項8記載の給紙装置は、請求項1から7のいずれか1項に記載の給紙部カバーを備えていることを特徴とする。本願請求項8記載の発明によれば、給紙装置において、前述した本願請求項1から7のいずれか1項に記載の発明と同様な作用効果を得ることができる。
【0016】本願請求項9記載の記録装置は、請求項8項に記載の給紙装置を備えていることを特徴とする。本願請求項9記載の発明によれば、記録装置において、前述した本願請求項1から7のいずれか1項に記載の発明と同様な作用効果を得ることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。先ず、図1および図2を参照しつつ、本発明に係る「記録装置」および「給紙装置」の大略について説明する。ここで、図1は本発明に係る「記録装置」としてのインク・ジェット・プリンタ(以下「プリンタ」と略称する)100の外観斜視図であり、図中、符号50は該プリンタ100の後部に設けられる、給紙装置としての給紙部を示している。また、図2は、プリンタ100の側断面概略図である。図示する様に、プリンタ100は、ハウジング部材1と、記録部カバー2と、給紙部カバー3によって外観が構成されている。
【0018】ハウジング部材1は、プリンタ100の機構部全体を覆い、その中央部には開口部7が形成されている。開口部7は、印刷用紙Pにインク滴を吐出する記録ヘッド8(図2参照)へインクを供給するインク・カートリッジ(図示せず)の交換作業を、ハウジング部材1を取り外さずに行う為の開口部であり、通常時(使用時)は記録部カバー2によって覆われ、当該インク・カートリッジの交換作業時に、記録部カバー2が開放されることによって露呈する様になっている。尚、図1において、符号2’で示す仮想線は、記録部カバー2が一定量開放された状態を示している。
【0019】次に、ハウジング部材1の後方部には差込口6が形成され、該差込口6に印刷用紙Pを上方から差し込むことにより、給紙部50に印刷用紙Pをセットすることができる様になっている。セットされる印刷用紙Pは、図2に示す様に側視において傾斜した状態で堆積保持され、その背面(最も最下位にある印刷用紙Pの背面)は、ハウジング部材1と一体的に形成された、差込口6の一辺を形成するガイド部材4によって支えられる。尚、必要に応じて、該ガイド部材4から更に上方において印刷用紙Pの背面を支える為の用紙支え部材(図示せず)が設けられる場合もある。また、堆積保持される印刷用紙Pの右側端(図1における右側端)は、同様にハウジング部材1と一体的に形成された固定エッジガイド(図示せず)によってガイドされ、左側端(図1における左側端)は、ガイド部材4上を印刷用紙Pの幅方向にスライド可能に設けられる可動エッジガイド5によってガイドされ、これにより、給紙部50による印刷用紙Pの給送時における、当該印刷用紙Pの斜行が防止される。
【0020】差込口6には、該差込口6から給紙部50内部への塵埃の進入を防止する為の、給紙部カバー3が開閉可能に配設される。該給紙部カバー3の詳細な構成および作用効果については、後に説明する。尚、図1において符号3’で示す仮想線は、該給紙部カバー3が一定量開放された状態を示すものである。
【0021】次に、図2において、給紙部カバー3の下方には給紙部50の主構成要素である給紙ローラ7が配設されている。給紙ローラ7は、堆積保持された印刷用紙Pの最上位のものの記録面Sと接触した状態で回動することにより、下流側へ当該最上位の印刷用紙Pを繰り出し、給送する。給紙ローラ7の下流側には搬送ローラ9が配設されていて、該搬送ローラ9が上方に位置する小ローラとの間で給送された印刷用紙Pをニップした状態で回動することにより、印刷用紙Pを記録ヘッド8とプラテン10との間に一定ピッチで搬送する。記録ヘッド8によって印刷の行われた印刷用紙Pは、記録ヘッド8の下流側に位置する排紙ローラ11の回動により、プリンタ100の外に排出される。以上が、プリンタ100および給紙部50の大略である。
【0022】次に、記録部カバー2および給紙部カバー3の詳細な構成について図2乃至図4を参照しつつ説明する。ここで、図3は、記録部カバー2および給紙部カバー3の分解斜視図であり、図4は、給紙部カバー3の平面図である。図2に示す様に、記録部カバー2は上に凸となる湾曲形状からなり、幅方向(印刷用紙Pの幅方向)に突出する、「第2の回動軸」としての2つの突起状の回動軸20,20(図4においてより明示)を有し、該回動軸20,20が、ハウジング部材1に形成された軸受部(図示せず:ハウジング部材1における形成位置を、図1において符号1cで示す)に嵌合し、そして該回動軸20,20を中心に回動することにより、前述した開口部7を覆う状態と、開放する状態(例えば、図1における符号2’で示した状態)とに変化することができる様になっている。
【0023】一方、給紙部カバー3も記録部カバー2と同様に、上に凸となる湾曲形状からなり、幅方向(印刷用紙Pの幅方向)に突出する、「第1の回動軸」としての2つの突起状の回動軸30,30(図4においてより明示)を有し、該回動軸30,30が、記録部カバー2に形成された軸受部21(図3参照)に嵌合し、そして該回動軸30,30を中心に回動することにより、閉じた状態と、開いた状態(例えば、図1における符号3’で示した状態)とに変化することができる様になっている。尚、当該閉じた状態と開いた状態についてのより詳しい説明は、後に行うこととする。
【0024】ところで、記録部カバー2の回動軸20,20は、より詳しくは、記録部カバー2の凹曲面と直交する平面を形成する、略円盤形状をなす第2軸形成部23,23から突出する様に設けられ、また、同様に、給紙部カバー3においても、回動軸30,30は、給紙部カバー3の凹曲面と直交する平面を形成する、略円盤形状をなす第1軸形成部33,33から突出する様に設けられている(図3参照)。これは、それぞれの回動軸をそれぞれの軸受部に嵌合させる際に、それぞれの回動軸を、互いに近接する方向に一旦やや引っ込める必要がある為であり、即ち、第1軸形成部33,33および第2軸形成部23,23を前記互いに近接する方向に僅かに弾性変形させることによって、それぞれの回動軸をそれぞれの軸受部に嵌合させることが可能となる。
【0025】一方、給紙部カバー3においては、図4に示す平面視において第1軸形成部33,33をその両端に形成する凸部32(断面視においては板形状をなしている:図2参照)が形成されている。従って、給紙部カバー3は、その回動に際し、凸部32(図4において、凸部32における、中心線cから下側の領域)が回動するための一定の回動しろを必要とする。一方、記録部カバー2側においても同様に、図3および図4に示す様に凸部32と嵌合する形状をなす凹部22が形成されていて、該凹部22の両側部分(図4において、記録部カバー2の、中心線cから上側の領域)が、記録部カバー2の回動に際して一定の回動しろを必要とする。
【0026】ここで、第1軸形成部33,33および第2軸形成部23,23は、図2に示す様に、記録部カバー2および給紙部カバー3において下方側に形成されているので、記録部カバー2および給紙部カバー3をハウジング部材1に設けるに当たって、該ハウジング部材1に、前述した回動しろを吸収する領域が必要となる。従ってこの様な理由から、ハウジング部材1には該回動しろを吸収する為の幅方向に延びる凹部1aが形成されている。従って、ハウジング部材1は、該凹部1aが形成されたことにより、幅方向の剛性(ハウジング部材1の中心部を上から押圧する様な外力が加わった際の、当該外力に対抗する為の剛性)が向上し、以てその強度を向上させている。
【0027】次に、以下給紙部カバー3の他の作用効果を図面を参照しつつ説明する。先ず、図2において、印刷用紙Pを差し込む差込口6の下方には、給紙ローラ3が配設されている。従って、該差込口6から塵埃が進入すると、給紙ローラ3に付着して、給紙ローラ3と印刷用紙Pとの摩擦力が損なわれ、給紙ローラ3による印刷用紙Pの給送が行えないという不具合が発生する虞があり、或いは、プリンタ100のその他の構成要素に悪影響を及ぼす虞がある。
【0028】ここで、給紙部カバー3は、差込口6において、セットされた印刷用紙Pの最上位のものの記録面Sと、該記録面Sと対向する給紙部カバー1のガイド面1bとの間に形成される隙間aを覆う様になっている。より詳しくは、給紙部カバー3は、当接部35,35がガイド部材4の上縁に当接することによって閉じた状態を維持し、且つ、給紙部カバー3には平面視において凹部31(図4参照)が形成されているので、従って給紙部カバー3は、該凹部31によってセットされた印刷用紙Pを回避しつつ、閉状態となって隙間aを覆い、以て塵埃の進入を防ぐと同時に、給紙部50において発生する騒音を遮断している。
【0029】次に、給紙部カバー3は、前述の様に回動軸30,30によって記録部カバー2を介してハウジング部材1に取り付けられているので、これによって、プリンタ100から脱着可能な、単純な「蓋」の様な場合とは異なり、給紙部カバー3を紛失することが無い。また、記録部カバー2を介してハウジング部材1に取り付けられることにより、ハウジング部材1の設計においては給紙部カバー3の取り付けを考慮する必要が無く、以てハウジング部材1の設計の自由度を高めている。更に、給紙部カバー3の開閉動作は、記録部カバー2の開閉動作と関係なく独立して行うことができるので、これによってプリンタ100全体としてメンテナンス性が向上している。
【0030】加えて、記録部カバー2の回動軸20,20の軸心と、給紙部カバー3の回動軸30,30の軸心とが一致する様に設けられている(図2および図4参照)。図5は、当該軸心を一致させたことによる作用効果を示す為の記録部カバー2および給紙部カバー3の側面図であり、(A),(B)に示す様に、軸心を一致させたことによって、給紙部カバー3の回動動作((A)の状態)と記録部カバー2の回動動作((B)の状態)において、それぞれが回動する際に、相手側に影響を与えずに、独立して回動動作を行うことが可能となる。即ち、例えば(B)に示す様に給紙部カバー3の回動軸30が記録部カバー2の回動軸20から偏倚した位置30’に設けられている場合、記録部カバー2が回動軸20を中心に回動すると、該回動に伴って、給紙部カバー3が符号3”で示した様に変位することになる。しかし、記録部カバー2と給紙部カバー3との回動軸は軸心が一致しているので、この様な現象が生じることなく、それぞれの開閉動作の独立性を保っている。
【0031】また、記録部カバー2と給紙部カバー3とは、それぞれ閉状態にある際に、その凹曲面が滑らかに接続する様に配設されている。図6は記録部カバー2と給紙部カバー3との接続部の拡大図(側面図)であり、符号24は記録部カバー2が形成する凹曲面、符号34は給紙部カバー3が形成する凹曲面を示している。図示する様に、記録部カバー2と給紙部カバー3とはそれぞれ凹曲面24と34とを有しているが、それぞれが閉状態となった際に、凹曲面24と34とは滑らかに接続するので、これにより、プリンタ100の外観において不自然な凹凸形状を形成することなく、凹曲面24と34とがなすプリンタ100の美観を保っている。
【0032】
【発明の効果】以上説明した様に、本発明によれば、被記録材の差込口を備えた給紙装置において、被記録材を差し込んだ状態における当該差込口に生じる隙間を給紙部カバーで覆うので、被記録材がセットされた状態、即ち記録動作中における塵埃の進入を防止でき、正常な給紙動作を維持することができる。また、給紙部カバーは給紙装置或いは該給紙装置が設置される記録装置等の構成要素に固設されるので、当該給紙部カバーを紛失する虞が無い。更に、被記録材を差し込む場合には開放状態にできるので、被記録材を差し込む際にも邪魔になることが無い。加えて、給紙装置が給紙動作に際して騒音を発生させる様な場合、該給紙部カバーによって、この様な騒音を低減させることができるという作用効果をも得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るインク・ジェット・プリンタの外観斜視図である。
【図2】本発明に係るインク・ジェット・プリンタの側断面概略図である。
【図3】本発明に係る記録部カバーおよび給紙部カバーの分解斜視図である。
【図4】本発明に係る給紙部カバーの平面図である。
【図5】本発明に係る記録部カバーおよび給紙部カバーの側面図である。
【図6】本発明に係る記録部カバーおよび給紙部カバーの、接続部の拡大側面図である。
【符号の説明】
1 ハウジング部材
2 記録部カバー
3 給紙部カバー
4 ガイド部材
5 可動エッジガイド
6 差込口
7 開口部
20 回動軸
21 軸受部
22 凹部
23 第2軸形成部
24 凹曲面
30 回動軸
31 凹部
32 凸部
33 第1軸形成部
34 凹曲面
36 縁部
50 給紙装置
100 プリンタ
P 印刷用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】 被記録材を上方から差し込む為の差込口と、該差込口の下方に設けられ、回動することにより被記録材を給送する給紙ローラと、を備えた、前記差込口から差し込まれた被記録材を複数枚堆積した状態でセット可能な、該堆積状態にセットされた被記録材を1枚ずつ繰り出して被記録材に記録を行う記録部へと給送する給紙装置における、前記差込口を覆う給紙部カバーであって、被記録材がセットされた状態における前記差込口において被記録材の記録面側に形成される隙間を覆う状態と、前記隙間を開放する状態とを変化可能に固設される、ことを特徴とする給紙部カバー。
【請求項2】 請求項1において、被記録材の幅方向に長い板状体からなり、セットされる被記録材を側視する方向から視て時計方向および反時計方向に回動する為の第1の回動軸を備え、該第1の回動軸を中心に回動することにより、前記隙間を覆う状態と、前記隙間を開放する状態とを変化する、ことを特徴とする給紙部カバー。
【請求項3】 請求項1または2において、前記給紙装置と、被記録材に記録を行う記録部および該記録部へ供給するインクが貯留された着脱可能なインク・カートリッジを備えた、主走査方向に往復動するキャリッジと、該キャリッジを露呈させる為の開口部が設けられた、該キャリッジおよび前記給紙装置を覆う様に設けられるハウジング部材と、前記開口部を覆う状態と開放した状態とを変化可能な、前記ハウジング部材に開閉可能に設けられる記録部カバーと、を備えた記録装置における、前記記録部カバーに取り付けられることを特徴とする給紙部カバー。
【請求項4】 請求項3において、前記記録部カバーの開閉動作と独立して、前記隙間を覆う状態と前記隙間を開放する状態とを変化する開閉動作が可能となる様に取り付けられることを特徴とする給紙部カバー。
【請求項5】 請求項3または4において、前記記録部カバーが第2の回動軸を中心に回動可能に前記ハウジング部材に設けられ、回動することにより、前記開口部を覆う状態と開放した状態とを変化するものであり、当該給紙部カバーの前記第1の回動軸の軸心が、前記第2の回動軸の軸心と一致する様に前記記録部カバーに取り付けられる、ことを特徴とする給紙部カバー。
【請求項6】 請求項3から5のいずれか1項において、前記第1の回動軸を回動中心とした回動動作が、当該回動動作を行う為の回動しろを前記第1の回動軸の周りに必要とするものであり、前記ハウジング部材には該回動しろを吸収する、被記録材の幅方向に延びる凹部が形成されている、ことを特徴とする給紙部カバー。
【請求項7】 請求項3から6のいずれか1項において、前記給紙部カバーが凹曲面を有するものであり、前記記録部カバーおよび前記給紙部カバーが共に閉状態にある際に、前記凹曲面が、前記記録部カバーが形成する凹曲面と滑らかに接続する様に前記記録部カバーに取り付けられる、ことを特徴とする給紙部カバー。
【請求項8】 請求項1から7のいずれか1項に記載の給紙部カバーを備えていることを特徴とする給紙装置。
【請求項9】 請求項8記載の給紙装置を備えていることを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【図6】
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【公開番号】特開2002−273981(P2002−273981A)
【公開日】平成14年9月25日(2002.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−75084(P2001−75084)
【出願日】平成13年3月15日(2001.3.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】