説明

絵の具またはクレヨン用のケース

【目的】絵の具、クレヨン用のケースにおいて、絵の具、クレヨンの臭気を抑制すること。
【構成】シクロデキストリンをケース内面に付着させた事を特徴とする絵の具、クレヨン用のケース。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絵の具、クレヨンを収納するケースに関し、ケース内の絵の具、クレヨンの臭いを抑制するケースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物質の臭気を抑制する方法としては、特許文献1に開示されているような、シートの表面の一部において金属イオンを担持している多孔質体が含有された消臭及び/又は除菌用シートが知られている。
【特許文献1】特開2007−82974号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1の消臭及び/又は除菌用シートを絵の具、クレヨン等のケースに入れると、絵の具、クレヨン等の臭いを抑制する事ができるが、別途部品を増やす必要がある。また金属イオンを担持している多孔質体をケース内に付着させる方法もあるが、多孔質体をケースに定着させるには別途定着材を加える必要がある。すると多孔質体の空孔が定着材で塞がれ、消臭作用が損なわれる。そこで消臭作用を強くする為、多孔質体の量を増やすと、色調が不透明となる為、ケース内に付着させると多孔質体を付着させる場所を設ける必要がある。この際、絵の具,クレヨンのケースのケース内面は使用方法等の注意書き等を表記する為に利用されており、結果、絵の具、クレヨンの臭気を吸着するのに充分な量を付着させる事ができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
即ち、本考案は、少なくともシクロデキストリンをケース内面に付着させた絵の具またはクレヨン用のケースを要旨とする。
【発明の効果】
【0005】
シクロデキストリン分子は環状構造の親油部分に、シクロデキストリンの内径より小さい疎水性臭気分子、または疎水性臭気分子の一部を取り込み複合化する事ができる。するとケース内に収納した物質から発生する疎水性の臭気成分分子、または疎水性の臭気成分分子の一部を取り込み複合化する事により、ケース内に収納した物質から発生する臭気成分を抑える事ができる。よって絵の具、クレヨンの臭いを抑制する事ができる。またシクロデキストリンは造膜作用があり、ケースの内面に定着させる事ができ、さらに透明なのでケース内の全面に絵の具、クレヨンの臭いを抑制させる効果を与える事ができる。
【0006】
シクロデキストリンは、環状オリゴ糖である。
本発明においては、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリンのいずれか1種若しくは2種以上を用いることができ、また、置換基を有してもよい。置換基を有するシクロデキストリンとしては、特に限定されず用いることが出来る。例えば、ヒドロキシルアルキル化シクロデキストリン、アルキル化シクロデキストリン、グルコキシル化シクロデキストリン、アミノ化シクロデキストリン、カルボキシメチル化シクロデキストリン、グルコース残基の少なくともその一部をヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、2,3−ジヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシブチル、2−ヒドロキシイソブチル、ジエチルアミノエチル、トリメチルアンモニウムプロピルなどの親水性官能基にしたシクロデキストリン、エピクロルヒドリンや多価グリシジルエーテルなどの架橋剤にて高分子化したシクロデキストリンポリマー、グルコース、マルノースなどの分岐側鎖を有する分岐シクロデキストリン、高度分岐環状デキストリン等のいずれか1種若しくは2種以上を用いることができる。
【0007】
絵の具、クレヨン用のケースの形状は従来公知のものが挙げられ、具体的には絵の具、クレヨンを収納した内箱に蓋となる外箱を被せたケース。スリーブ式外箱に挿脱自在な内箱を差し込んだケース。絵の具、クレヨンの収容部と蓋体がヒンジ部によって連結されたケースが挙げられる。なお材質は問わず使用可能である。
【0008】
絵の具、クレヨン用のケースの内面にシクロデキストリンを付着させる方法としては、シクロデキストリンに溶剤を加えてシクロデキストリン溶液を作成し、シクロデキストリン溶液をケース内面に向けスプレーしたり、刷毛等で塗布し、乾燥させる方法が挙げられる。シクロデキストリンの溶液を作成する際の溶剤としてはピネン、セイリネン、サンタレンなどの炭化水素類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどの脂肪族アルコール類、テルピネオール、イソボルネオなどのテルペンアルコール類、サンタロール、セドロール、ランブテロールなどのセスキテルベンアルコール類、フェニルエチルアルコール、桂皮アルコールなどの芳香族アルコール類、パラクレゾール、チモールなどのフェノール類、ベンジルベンゾエート、イソオイゲノールなどのフェニルエーテル類、アグルメなどのC8〜C13の炭化水素鎖をもつ脂肪族アルデヒド類、シトラール、シトロネラなどのテルペンアルデヒド類、ベンズアルデヒド、フェニルプロピルアルデヒドなどの芳香族アルデヒド類、シスジャスモン、メントンなどの環状ケトン類、ナノラクトンなどのラクトン類、ベンジルアセテート、ゲラニルアセテートなどのエステル類、インドール、メチルアンスラアニレートなどのニトロ化化合物類、蒸留水などを例示できる。これら溶剤を単独または複数種組み合わせて使用される。
なおケースの内面とは、ケースの部品である外箱と内箱、あるいは収容部と蓋体によって囲まれたケース内部である。
【0009】
その他、香料を用いる事もできる。香料を用いる場合はシクロデキストリンの溶液に香料を加え、ケース内面にスプレーしたり、刷毛等で塗布するとよい。
【0010】
絵の具とは所謂液状描画材であり、溶剤として水を、着色成分として顔料を、定着剤として天然樹脂、合成樹脂、穀物、膠等の樹脂を、その他補助成分として、安定剤、乾燥剤等を配合したもので、錫製やポリエチレン製のチューブに入れてケースに収納する。
クレヨンとは所謂固形描画材であり、着色成分として顔料を、成型材としてパラフィンワックス・マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス及び/又はカルナウバワックス・木ロウ・ミツロウといった植物系や動物系のワックスを、その他補助成分として体質顔料と、ワセリン・スピンドル油・鉱油などのオイル分を配合したもので、柱状に成型した後、紙を巻いてケースに収納する。
【実施例】
【0011】
図面に基づき一例について説明する。
図1に示したものは、紙製の内箱2に蓋となる紙製の外箱1を被せたケースの斜視図である。内箱2とは絵の具、クレヨンを収納する箱である。内箱2は絵の具、クレヨンを整列させる為、内箱2の内部に仕切りを設けたりトレーを置く事もできる。外箱1とは内箱2に被せて蓋とする為の箱である。その寸法は内箱2に外箱1を被せた際にガタつきが無く、かつ自由に取り外しができる程度とする。シクロデキストリンを付着させる位置を例として図2に外箱1の天井部分内側3をドットにて示す。シクロデキストリンの付着量はケース全体で0.01グラム〜0.3グラム程度である。香料を用いる際はシクロデキストリンの付着量に対し0.1%〜50%とする。
【0012】
図3に示したものは、紙製のスリーブ式外箱4に挿脱自在な紙製の内箱2を差し込んだケースの斜視図である。図4に示したものは図3のスリーブ式外箱4を展開した部品図である。スリーブ式外箱4とは内箱2を差し込んで蓋とする為の筒状の部品である。内箱2とスリーブ式外箱4の大きさはガタつきが無く、自由に取り外しができる程度に接触した状態にする。シクロデキストリンを付着させる位置を例として図4にスリーブ式外箱4の天井部分内側5をドットにて示す。シクロデキストリンの付着量はケース全体で0.01グラム〜0.3グラム程度である。香料を用いる際はシクロデキストリンの付着量に対し0.1%〜50%とする。
【0013】
図5に示したものはポリプロピレン製の絵の具、クレヨンの収容部6とポリプロピレン製の蓋体7がポリプロピレン製のヒンジ部8によって連結されたケースである。蓋体7と絵の具、クレヨンの収容部6は勘合部を設けたり、ホックで固定する等の方法で保管時に開かないようにする。シクロデキストリンを付着させる位置を例として蓋体6の天井部分内側9をドットにて示す。シクロデキストリンの付着量はケース全体で0.01グラム〜0.3グラム程度である。香料を用いる際はシクロデキストリン3の付着量に対し0.1%〜50%とする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】一例を示す斜視図。
【図2】部品を示す斜視図。
【図3】他の一例を示す斜視図。
【図4】部品を示す展開図
【図5】更に他の一例を示す外観図。
【符号の説明】
【0015】
1 外箱
2 内箱
3 天井部分内側
4 スリーブ式外箱
5 天井部分内側
6 絵の具、クレヨンの収容部
7 蓋体
8 ヒンジ部
9 天井部分内側

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともシクロデキストリンをケース内面に付着させた絵の具またはクレヨン用のケース。
【請求項2】
更に香料をケース内面に付着させた請求項1に記載のケース。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−161213(P2009−161213A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−341055(P2007−341055)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000005511)ぺんてる株式会社 (899)
【Fターム(参考)】