説明

絶縁フィルム

【課題】簡便かつ低コストで作製可能であり、耐放電劣化性と機械特性とに優れた絶縁フィルムを提供すること。
【解決手段】重量平均分子量が35,000〜75,000であるポリアミドイミド樹脂と、平均一次粒子径が200nm以下である絶縁性微粒子とを含む、絶縁フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械特性および耐放電劣化性に優れた絶縁フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車用モーター、産業用モーター、大型機器のインバータ等においては使用電圧が高くなる傾向があり、それらに使用される絶縁材料に対しても高い耐熱性および耐電圧性が求められている。
【0003】
絶縁材料の耐電圧性は、熱劣化や放電劣化の影響で経年低下する。具体的には、放電劣化においては、絶縁材料に小さな空隙、クラック、傷等の欠陥が存在すると、電圧の印加によって、該欠陥において微弱な放電すなわち部分放電(コロナ放電)が発生する。この部分放電の繰り返しによって、局部破壊が起こり、徐々にそれが樹枝状に進展し、最終的に絶縁破壊に至ると考えられている。また、このときの樹枝状の破壊痕跡を電気トリーという。
【0004】
上記放電劣化への対策として、樹脂と該樹脂中に分散した絶縁性微粒子とを含む絶縁塗料が知られている(特許文献1)。このような絶縁塗料で被覆された絶縁電線は、その被覆層において絶縁性微粒子が電気トリーの進展を抑制するので放電劣化に対して優れた耐性を示す。
【0005】
上記絶縁塗料と同様に、樹脂と該樹脂中に分散した絶縁性微粒子とを含む絶縁フィルムについて検討すると、樹脂としてポリアミドイミド樹脂を用いる場合には、充填剤の添加によってフィルムが脆くなるという問題がある。そのため、ポリアミドイミド樹脂に充填剤(シラン化合物)を添加する代わりに、末端カルボン酸にシロキサンが導入されたシラン変性ポリアミドイミド樹脂を用いることによって、十分な機械特性を有するフィルムを得ること(特許文献2)や、このようなシラン変性ポリアミドイミド樹脂に無機微粒子を添加することによって、放電(コロナ)劣化への耐性を有する絶縁材料を得ることが提案されている(非特許文献1)。
【0006】
しかしながら、上記シラン変性ポリアミドイミド樹脂は、通常のポリアミドイミド樹脂に比べて調製に手間とコストがかかる。したがって、より簡便かつ低コストで作製可能であり、放電劣化への耐性と機械特性とに優れた絶縁フィルムに対する要求がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3496636号
【特許文献2】特開2001−240670号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】古河電工時報、第110号、33〜36頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、簡便かつ低コストで作製可能であり、放電劣化への耐性と機械特性とに優れた絶縁フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討した結果、ある特定の範囲内の重量平均分子量を有していれば、一般的な構造のポリアミドイミド樹脂であっても、所定の値以下の平均粒子径を有する絶縁性微粒子と組み合わせて用いることにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明の絶縁フィルムは、重量平均分子量が35,000〜75,000であるポリアミドイミド樹脂と、平均一次粒子径が200nm以下である絶縁性微粒子とを含む。
好ましい実施形態においては、上記絶縁性微粒子がシリカ、アルミナ、チタニア、および層状ケイ酸塩(クレイ)から選択される少なくとも1つを含む。
好ましい実施形態においては、上記絶縁フィルムは、上記ポリアミドイミド樹脂100重量部に対して、上記絶縁性微粒子を1〜20重量部含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、一般的な構造のポリアミドイミド樹脂を用いることができるので、簡便かつ低コストで、耐放電劣化性および機械特性に優れた絶縁フィルムが得られ得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】絶縁寿命時間の測定における回路の概略図である。
【図2】絶縁寿命時間の測定における電極の配置を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[絶縁フィルム]
本発明の絶縁フィルムは、重量平均分子量が35,000〜75,000であるポリアミドイミド樹脂と、平均一次粒子径が200nm以下である絶縁性微粒子とを含む。本発明の絶縁フィルムの厚みは、好ましくは10μm〜150μmである。
【0015】
[ポリアミドイミド樹脂]
上記ポリアミドイミド樹脂は、分子骨格中に剛直なイミド基と柔軟性を付与するアミド基を有する樹脂である。このようなポリアミドイミド樹脂を用いることにより、本発明の絶縁フィルムは優れた耐熱性、機械特性、絶縁性等を発揮し得る。本発明に用いられるポリアミドイミド樹脂としては一般的に知られている構造のものを使用することができる。
【0016】
上記ポリアミドイミド樹脂の重量平均分子量は、35,000〜75,000であり、好ましくは40,000〜75,000、より好ましくは50,000〜70,000であり、さらに好ましくは55,000〜67,000である。重量平均分子量が35,000未満であると、得られるフィルムの機械特性が不十分となる。また、重量平均分子量が75,000を超えると、粘度が大きくなって作業性および絶縁性微粒子の分散性が低下する場合がある。
【0017】
上記ポリアミドイミド樹脂は、任意の適切な合成方法によって得られ得る。例えば、無水トリメリット酸クロライドとジアミンとを反応させる酸クロライド法、トリメリット酸無水物とジイソシアネートとを反応させるイソシアネート法、トリメリット酸無水物とジアミンとを反応させる直接重合法が挙げられる。なかでも、作業の効率性に優れるという点から、イソシアネート法が好ましい。
【0018】
上記イソシアネート法を採用する場合に用いられるジイソシアネートとしては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジイソシアネートの芳香族ジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、ジシクロへキシルメタンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネートが挙げられる。なかでも、コスト面に優れることから、ジフェニルメタンジイソシアネートおよびジシクロへキシルメタンジイソシアネートが好ましい。
【0019】
上記トリメリット酸無水物とジイソシアネートとの反応は任意の適切な溶媒中で行われ得る。該溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0020】
上記反応においては、必要に応じて、触媒を用いてもよい。該触媒としては、任意の適切な物を用いることができ、例えば、ジアザビシクロウンデンセン、トリエチレンジアミン、フッ化カリウム、フッ化セシウム等が挙げられる。
【0021】
反応温度および反応時間については、目的等に応じて適切に設定され得る。例えば、反応温度は120〜250℃、反応時間は4〜20時間であり得る。反応温度は一定であってもよく、段階的に変化させてもよい。
【0022】
[絶縁性微粒子]
上記絶縁性微粒子は、上記ポリアミドイミド樹脂中に分散して存在することによって、絶縁フィルムの放電劣化における電気トリーの進展を抑制する。これにより、放電劣化が抑制されるので、フィルムが絶縁破壊されるまでの時間(「絶縁寿命時間」ともいう)を長くすることができる。
【0023】
上記絶縁性微粒子の平均一次粒子径は、200nm以下であり、好ましくは3〜150nm、より好ましくは5〜100nm、さらに好ましくは8〜50nmである。平均一次粒子径が200nmを超えると、電気トリーの進展を抑制する効果が低下し、十分な絶縁寿命時間が得られない場合がある。ここで、該平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡観察によって得られたフィルム断面の画像において、絶縁性微粒子の一次粒子50個の長径を測定し、その平均値を算出することによって得られ得る。
【0024】
上記絶縁性微粒子としては、特に制限は無く、シリカ、アルミナ、チタニア、窒化ホウ素、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、層状ケイ酸塩(クレイ)等が挙げられる。なかでも、分散性および絶縁性に優れることから、シリカ、アルミナ、チタニア、および層状ケイ酸塩(クレイ)が好ましく用いられ得る。例えば、シリカとしては、フュームドシリカ、コロイダルシリカ等が好ましく用いられ得る。
【0025】
上記絶縁性微粒子としては、種々の粒子径のものが市販されているので、目的に応じて選択して用いることができる。絶縁性微粒子には、必要に応じて、任意の適切な表面処理を施してもよい。表面処理としては、例えば、アミノシラン化合物を用いたアミノ基の導入、トリメチルシラン等を用いた疎水化処理等が挙げられる。表面処理は単独で行ってもよく、2種以上を組み合わせて行ってもよい。
【0026】
本発明の絶縁フィルム中における絶縁性微粒子の含有量は、上記ポリアミドイミド樹脂の樹脂固形分100重量部に対して好ましくは1〜20重量部、より好ましくは2〜15重量部、さらに好ましくは3〜10重量部である。含有量がこのような範囲であれば、機械特性および絶縁寿命に優れた絶縁フィルムが得られ得る。
【0027】
[絶縁フィルムの作製方法]
本発明の絶縁フィルムは、代表的には、上記ポリアミドイミド樹脂のワニスに上記絶縁性微粒子を加えて分散させること、得られた絶縁性微粒子分散ワニスを基板に塗布し乾燥させること、および、得られた乾燥フィルム(「半硬化フィルム」と称する場合がある)を基板から離型して加熱硬化させること、によって作製され得る。
【0028】
上記ポリアミドイミド樹脂のワニスの樹脂濃度は、目的等に応じて任意の適切な値に設定され得る。該樹脂濃度は、通常10〜40重量%である。上記絶縁性微粒子の分散方法および絶縁性微粒子分散ワニスの塗布方法としては、それぞれ任意の適切な方法が採用され得る。
【0029】
上記絶縁性微粒子分散ワニスの乾燥温度および時間は、塗布厚み等に応じて適切に設定され得る。例えば、乾燥温度は、50℃〜200℃であり得る。また、乾燥時間は、10分〜60分であり得る。乾燥温度は一定でもよく、段階的に変化させてもよい。
【0030】
上記乾燥フィルムの加熱硬化温度および時間は、乾燥フィルムの厚み等に応じて適切に設定され得る。例えば、硬化温度は250℃〜400℃であり得る。また、硬化時間は、5分〜60分であり得る。乾燥フィルムを加熱硬化する際には、フィルムが収縮しないように固定しておくことが好ましい。
【実施例】
【0031】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例になんら限定されるものではない。なお、実施例等における測定方法は以下のとおりである。
【0032】
(1)重量平均分子量
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、ポリエチレンオキシド(PEO)換算により測定した。GPC条件は以下の通りである。
GPC装置:製品名「HLC−8120GPC」(東ソー製)
カラム:「TSKgel superAWM−H」+「TSKgel superAW4000」+「TSKgel superAW2500」(東ソー製)
流量:0.4ml/min
濃度:1.0g/l
注入量:20μl
カラム温度:40℃
溶離液:10mM−LiBr+10mM−リン酸/DMF
(2)引張強度および伸び(%)
厚さ50μmのフィルムをダンベル状3号形に打ち抜いたものをサンプルとした。テンシロン万能試験機(東洋ボールドウィン製)を用いて、100mm/分の引張速度で該サンプルを引っ張り、切断に至った際の引張強度および伸び(%)(=(切断時の長さ―元の長さ)/元の長さ×100)を求めた。
(3)絶縁寿命時間
耐圧試験機(製品名「5051A」、鶴賀電機製)を用い、印加電圧をAC3kVとして常温気中下で絶縁破壊に至る時間を測定した。測定回路および電極配置をそれぞれ図1および図2に示す。測定試料上の20点を測定後、破壊時間のワイブル分布を作成し、累積発生確率が63.2%になる時間を平均絶縁寿命時間とした。
(4)平均一次粒子径
透過型電子顕微鏡(製品番号「H−7650」、日立ハイテクノロジーズ製)を用い、100kVの加速電圧でフィルム断面の観察を行った。得られた観察画像から、絶縁性微粒子の一次粒子50個について長径を測定し、その平均値を平均一次粒子径とした。
(5)ワニスの粘度
デジタル粘度計HBDV−I Prime(ブルックフィールド社製)を用いて、25℃におけるワニスの粘度を評価した。
【0033】
[合成例1]
撹拌翼付きメカニカルスターラーを取り付けた4つ口フラスコにトリメリット酸無水物(TMA)1.00モル、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)1.00モル、およびN−メチル−2−ピロリジノン(NMP)1063gを仕込み、120℃で2時間反応させた。その後、180℃に昇温して3時間反応させた。これにより、ポリアミドイミドワニスを得た。得られたポリアミドイミド樹脂の重量平均分子量は65,500であった。
【0034】
[合成例2]
反応時間を120℃で3時間としたこと以外は合成例1と同様にして、ポリアミドイミドワニスを得た。得られたポリアミドイミド樹脂の重量平均分子量は33,700であった。
【0035】
[合成例3]
反応時間を120℃で1.5時間としたこと以外は合成例1と同様にしてポリアミドイミドワニスを得た。得られたポリアミドイミド樹脂の重量平均分子量は9,410であった。
【0036】
[合成例4]
反応時間を120℃で2時間、その後180℃で2時間としたこと以外は合成例1と同様にしてポリアミドイミドワニスを得た。得られたポリアミドイミド樹脂の重量平均分子量は58,800であった。
【0037】
[合成例5]
反応時間を120℃で2時間、その後180℃で5時間としたこと以外は合成例1と同様にしてポリアミドイミドワニスを得た。得られたポリアミドイミド樹脂の重量平均分子量は76,400であった。
【0038】
合成例1〜5で得られたポリアミドイミドワニスの樹脂固形分を25重量%に調整し、調整後のワニス(溶媒:NMP)の粘度を測定した。結果を表1に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
[実施例1]
合成例1のポリアミドイミドワニスに、樹脂固形分に対するフィラー量が5重量部となるようにナノシリカ(製品名「AEROSIL(R)RA200H」、日本アエロジル製)を添加し、ビーズミルで分散させた。得られたシリカ分散ワニスを乾燥後の厚みが50μmとなるようにガラス基板上に塗布した。これを80℃で15分、次いで150℃で15分加熱し、室温まで冷却してから、ガラス基板から離型し、これにより、自立性のある半硬化フィルムを得た。該半硬化フィルムの端部を固定し、340℃で15分さらに加熱することにより、ポリアミドイミドの硬化フィルムを得た。
【0041】
[実施例2]
絶縁性微粒子としてシリカ(製品名「AEROSIL(R)NA50H」、日本アエロジル製)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ポリアミドイミドの硬化フィルムを得た。
【0042】
[実施例3]
絶縁性微粒子としてシリカ(製品名「AEROSIL(R)RX200」、日本アエロジル製)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ポリアミドイミドの硬化フィルムを得た。
【0043】
[実施例4]
絶縁性微粒子としてシリカ(製品名「AEROSIL(R)200」、日本アエロジル製)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ポリアミドイミドの硬化フィルムを得た。
【0044】
[実施例5]
絶縁性微粒子としてアルミナ(製品名「AEROXIDE(R)AluC」、日本アエロジル製)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ポリアミドイミドの硬化フィルムを得た。
【0045】
[実施例6]
絶縁性微粒子としてチタニア(製品名「AEROXIDE(R)TiO P90」、日本アエロジル製)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ポリアミドイミドの硬化フィルムを得た。
【0046】
[実施例7]
絶縁性微粒子としてクレイ(製品名「エスベンNO−12S」、ホージュン製)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ポリアミドイミドの硬化フィルムを得た。
【0047】
[実施例8]
合成例4のポリアミドイミドワニスを用いたこと以外は実施例1と同様にして、ポリアミドイミドの硬化フィルムを得た。
【0048】
[比較例1]
ナノシリカを添加しないこと以外は実施例1と同様にして、ポリアミドイミドの硬化フィルムを得た。
【0049】
[比較例2]
合成例3のポリアミドイミドワニスを用いたこと以外は実施例1と同様にして、シリカ分散ワニスを調製し、ガラス基板上に塗布した。これを80℃で15分、次いで150℃で15分加熱し、室温まで冷却した。ガラス基板上のシリカ分散ポリアミドイミド樹脂を該基板から離型しようとしたが、伸びが小さく、脆いためにフィルムとして離型できなかった。
【0050】
[比較例3]
合成例2のポリアミドイミドワニスを用いたこと以外は実施例1と同様にして、シリカ分散ワニスを調製し、ガラス基板上に塗布した。これを80℃で15分、次いで150℃で15分加熱し、室温まで冷却した。ガラス基板上のシリカ分散ポリアミドイミド樹脂を該基板から離型して半硬化フィルムを得たが、その際、フィルムにワレが生じた。
【0051】
[比較例4]
絶縁性微粒子としてシリカ(製品名「アドマファインSC1050−SXT」、アドマテックス製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ポリアミドイミドの硬化フィルムを得た。
【0052】
[比較例5]
合成例5のポリアミドイミドワニスを用いたこと以外は実施例1と同様にして、ポリアミドイミドの硬化フィルムを得た。
【0053】
上記実施例および比較例で得られたポリアミドイミドの硬化フィルムおよび半硬化フィルムについて、引張強度、伸び、および平均絶縁寿命時間を測定した。結果を表2に示す。
【0054】
【表2】

【0055】
表2に示される通り、実施例1〜8のフィルムは、機械特性に優れ、かつ、20時間よりも長い平均絶縁寿命時間を有している。これに対し、比較例1のポリアミドイミドフィルムは、絶縁性微粒子を含まないために平均絶縁寿命時間が約10時間と短かった。比較例2では、重量平均分子量が9,410であるポリアミドイミド樹脂を用いたので、絶縁性微粒子の添加によって半硬化フィルムの機械特性が低下して脆くなり、その結果、フィルムを基板から離型することができなかった。比較例3では、重量平均分子量が33,700であるポリアミドイミド樹脂を用いたので、絶縁性微粒子の添加によって半硬化フィルムの機械特性が低下して脆くなり、その結果、離型する際にフィルムにワレが生じた。比較例4では、絶縁性微粒子の粒子径が大きいために、放電劣化への耐性が不十分であった。比較例5では、ポリアミドイミド樹脂の重量平均分子量が大きいために、絶縁性フィラーの分散不良が起こり、放電劣化への耐性が不十分であった。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の絶縁フィルムは、自動車用モーター、産業用モーター、大型機器のインバータ等に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0057】
1 電極
2 測定試料(絶縁フィルム)
3 フレームグラウンド


【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量が35,000〜75,000であるポリアミドイミド樹脂と、平均一次粒子径が200nm以下である絶縁性微粒子とを含む、絶縁フィルム。
【請求項2】
前記絶縁性微粒子がシリカ、アルミナ、チタニア、および層状ケイ酸塩(クレイ)から選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載の絶縁フィルム。
【請求項3】
前記ポリアミドイミド樹脂100重量部に対して、前記絶縁性微粒子を1〜20重量部含む、請求項1または2に記載の絶縁フィルム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−60575(P2013−60575A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−120614(P2012−120614)
【出願日】平成24年5月28日(2012.5.28)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【出願人】(000190611)日東シンコー株式会社 (104)
【Fターム(参考)】