説明

絶縁ブッシングと電力ケーブルとの接続部およびこれを用いたケーブル接続部

【課題】垂直に配置される絶縁ブッシングと、垂直に立ち上げられるケーブル端末とを、一人の作業者でも容易に接続することができるようにする。
【解決手段】絶縁ブッシングと電力ケーブルとの接続部は、絶縁体12と、絶縁体の中心に埋設されそれ自身の端部が絶縁体の端部から軸方向外方に向けて突設された内部導体11とを有する絶縁ブッシング1と、ケーブル2の端部が段剥されてケーブル導体23が露出されたケーブル端末5と、ケーブル導体の端部とケーブル導体とを接続する連結導体3とを備えている。連結導体は、円筒状に組み合わせられる一対の半円筒状部と、円筒状に組み合わせられた一対の半円筒状部を径方向に伸縮可能に保持するワイヤーバネ等から成る保持部材と、一対の半円筒状部を一体に締結する六角穴付ボルト等から成る締結部材とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁ブッシングと電力ケーブルとの接続部に係わり、特に、絶縁ブッシングが垂直に配置され、電力ケーブルが絶縁ブッシングに向けて垂直に立ち上げられる場合に有用な絶縁ブッシングと電力ケーブルとの接続部に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、36kVクラスの固体絶縁スイッチギヤ用盤間母線においては、絶縁ブッシングの内部導体とケーブル端末のケーブル導体とを連結導体を介して接続することが行なわれている(例えば、非特許文献1)。
【0003】
図3は同盤間母線の導体接続部の一部断面図を示している。
【0004】
同図において、絶縁ブッシング100は、エポキシ絶縁体200とエポキシ絶縁体200の中心に埋設された内部導体300とを備えており、内部導体300の端部はエポキシ絶縁体200の端部から軸方向外方に向けて突設されている。
【0005】
CVケーブル400の端部は、段剥処理されてケーブル外部半導電層410、ケーブル絶縁層420およびケーブル導体430が露出されており、露出されたケーブル導体430の端部には導体接続端子440が圧縮により取り付けられている。
【0006】
このように段剥処理されたケーブル端末500のケーブル導体430と絶縁ブッシング100の内部導体300とは、図4に示す二つ割構成の連結導体600で電気的に接続される。
【0007】
同図において、連結導体600は、円筒状に組み合わせられる一対の半円筒状部610a、610bと、一対の半円筒状部610a、610bが円筒状に組み合わせられた状態で一対の半円筒状部610a、610bを締結するボルト620とで構成されている。
【0008】
なお、図中、符号220は絶縁ブッシング100のフランジ部210に埋設された埋込金具、630はねじ孔、640はボルト挿通孔、650は座ぐりを示している。
【0009】
しかしながら、このような盤間母線の接続においては、絶縁ブッシング100とケーブル端末500は水平方向での取り付け作業となることから、連結導体600の固定作業はさほど困難とならないものの、気中終端接続部のように、絶縁ブッシング100が垂直に配置され、CVケーブル400も垂直に立ち上げられる場合は、垂直方向での取付作業となるため、作業性が悪くなるという難点があった。具体的には、垂直方向での取付作業においては、一人の作業者がケーブル端末500を支え、もう一人の作業者が連結導体600のボルト620を締め込む作業を行なう必要があることから、少なくとも二人の作業者が必要になるという難点がある。また、水平にケーブル接続部を取り付ける場合においても、ケーブル側の導体接続端子と絶縁ブッシングの内部導体との芯ずれが生じないように連結導体を取り付ける必要があるところ、より作業性の良い接続部が望まれていた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】平成18年電気学会全国大会 7−122
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上述の難点を解決するためになされたもので、垂直に配置される場合であっても絶縁ブッシングの内部導体と、垂直に立ち上げられるケーブル端末のケーブル導体とを、一人の作業者でも容易に接続することができる絶縁ブッシングと電力ケーブルとの接続部を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様である絶縁ブッシングと電力ケーブルとの接続部は、絶縁体と、絶縁体の中心に埋設されそれ自身の端部が絶縁体の端部から軸方向外方に向けて突設された内部導体とを有する絶縁ブッシングと、ケーブルの端部が段剥されてケーブル導体が露出されたケーブル端末と、内部導体の端部とケーブル導体とを接続する連結導体とを備え、連結導体は、円筒状に組み合わせられる一対の半円筒状部と、円筒状に組み合わせられた一対の半円筒状部を径方向に伸縮可能に保持する保持部材と、一対の半円筒状部を一体に締結する締結部材とを備えるものである。
【0013】
本発明の第2の態様は、第1の態様である絶縁ブッシングと電力ケーブルにおいて、連結導体の外周に形成される環状溝に保持部材が配置されているものである。
【0014】
本発明の第3の態様は、第1の態様または第2の態様である絶縁ブッシングと電力ケーブルにおいて、保持部材はワイヤーバネで構成され、ワイヤーバネは円筒状に組み合わせられた一対の半円筒状部の外周に設けられるものである。
【0015】
本発明の第4の態様は、第1の態様乃至第3の態様である絶縁ブッシングと電力ケーブルにおいて、締結部材はボルトで構成され、ボルトは、半円筒状部の一方側に設けた座ぐりおよびボルト挿通孔に挿入され、それ自身の先端部が半円筒状部の他方側に設けらたねじ孔に螺着されるものである。
【0016】
本発明の第5の態様は、第1の態様乃至第4の態様の何れかの態様である絶縁ブッシングと電力ケーブルにおいて、絶縁ブッシングは垂直に配置され、連結導体の上半部は予め内部導体の端部に装着されて内部導体の端部に固定され、ケーブル端末は絶縁ブッシングに向けて垂直に立ち上げられ、ケーブル端末は連結導体の下半部にプラグイン接続されるものである。
【0017】
本発明の第6の態様であるケーブル接続部は、第1の態様乃至第5の態様の何れかの態様である絶縁ブッシングと電力ケーブルとの接続部と、ゴムブロック絶縁筒とを備え、ゴムブロック絶縁筒は絶縁ブッシングと電力ケーブルとの接続部を構成する導体接続部の外周に設けられるものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の第1の態様乃至第6の態様の絶縁ブッシングと電力ケーブルとの接続部およびこれを用いたケーブル接続部によれば、連結導体が円筒状に組み合わせられる一対の半円筒状部と、円筒状に組み合わせられた一対の半円筒状部を径方向に伸縮可能に保持する保持部材してのワイヤーバネと、一対の半円筒状部を一体に締結する締結部材としてのボルトとを備えることから、連結導体を内部導体の端部に固定することができる。また、この状態において、絶縁ブッシングに向けてケーブル端末の導体接続端子をプラグイン接続することができることから、従来に比べ作業性が良くなり、容易に接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の絶縁ブッシングと電力ケーブルとの接続部の一例を示す一部断面図。
【図2】本発明における連結導体の説明図で、分図(a)は連結導体の正面図、分図(b)は分図(a)のA−O線断面図。
【図3】従来の絶縁ブッシングと電力ケーブルとの接続部の一例を示す一部断面図。
【図4】従来の連結導体の説明図で、分図(a)は連結導体の正面図、分図(b)は分図(a)のA−O線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の絶縁ブッシングと電力ケーブルとの接続部を適用した好ましい実施の形態例について、図面を参照して説明する。
【0021】
図1は、垂直に配置される絶縁ブッシングと垂直に立ち上げられるケーブル端末との接続状況を模式的に示す説明図である。
【0022】
同図において、絶縁ブッシング1は、中心に配設される銅または銅合金等の棒体からなる内部導体11と、内部導体11の外周に設けられる硬質でかつ絶縁性の絶縁体12とを備えている。ここで、絶縁体12はエポキシ絶縁樹脂等から成り、内部導体11と共にモールドにより一体的に形成されている。
【0023】
このような構成の絶縁ブッシング1は、垂直に配置され、絶縁体12の下端部から軸方向外方に向けて内部導体11の下端部が突設されている。
【0024】
一方、ケーブル2の端部は段剥処理されてケーブル外部半導電層21、ケーブル絶縁層22およびケーブル導体23が露出されており、露出されたケーブル導体23の端部には導体接続端子24が圧縮により取り付けられている。ここで、導体接続端子24の外径は内部導体11の外径と略同径とされている。
【0025】
図2は、内部導体の端部とケーブル導体とを接続する連結導体3を示している。
【0026】
同図においては、連結導体3は、円筒状に組み合わせられる一対の半円筒状部31a、31bと、円筒状に組み合わせられた一対の半円筒状部31a、31bを径方向に伸縮可能に保持する保持部材としてのワイヤーバネ32と、一対の半円筒状部31a、31bを一体に締結する締結部材としてのボルト33とを備えている。
【0027】
一対の半円筒状部31a、31bは、絶縁ブッシング1の内部導体11とケーブル端末5の導体接続端子24の外周半部に当接する部分で内方に突設するように設けられた半円状の当接面32a、32bを備えており、軸方向中央部の外周には円周方向に沿って半周溝33a、33bが設けられている。
【0028】
一対の半円筒状部31a、31bのうち、一方の半円筒状部31aの分割部には分割面と直交する方向に少なくとも二つのねじ孔34a(35a)が180度の間隔をおいて二箇所(図2では合計四つのねじ孔)設けられている。また、他方の半円筒状部31bの分割部のねじ孔34a、35aと対応する位置には分割面と直交する方向にボルト挿通孔34b、35bが設けられ、さらに、他方の半円筒状部31bの外周部のボルト挿通孔34b、35bと対応する位置には座ぐり36、36がボルト挿通孔34b、35bの軸線と一致する方向にかつボルト挿通孔34b、35bと連通するように設けられている。ここで、半周溝33a、33bの深さは保持部材としてのワイヤーバネ32の外径寸法より大きくされている。
【0029】
このような構成の一対の半円筒状部31a、31bは、円筒状に組み合わせることで、軸方向中央部外周に環状の環状溝37が形成され、当該環状溝37に保持部材としてのワイヤーバネ32を嵌着することで、一対の半円筒状部31a、31bが円筒状に保持された状態で径方向に伸縮することになる。
【0030】
しかして、このように円筒状に組み合わせられた連結導体3の上半部は、先ず、垂直に配置された絶縁ブッシング1の内部導体11の下端部に装着されて、当該内部導体11の端部に固定される。そして、ケーブル端末5を絶縁ブッシング1に向けて垂直に立ち上げ、導体接続端子24を連結導体3の下半部に挿入し、押し込む。これにより、連結導体の3の下半部にケーブル端末5が固定される。すなわち、ケーブル端末5は連結導体3の下半部にプラグイン接続される。
【0031】
この状態で締結部材としての六角穴付ボルト等から成るボルト33を座ぐり36およびボルト挿通孔34b、35bに挿入し、その先端部をねじ孔34a、35aに螺着する。このボルト33による締め付けにより、一対の半円筒状部31a、31bが一体化されると共に、当接面32a、32bが絶縁ブッシング1の内部導体11とケーブル端末5のケーブル導体23に当接され電気的に接続されることになり、当接面による面接触により、例えば1250Aのような大電流にも対応可能となる。また、六角穴付ボルト等から成る締結部材としてのボルト33を堅固に締め付けることで、組立て後においてケーブル2側から大きな引き抜き力が加わった場合等においてもケーブル導体23が連結導体3から外れることがなくなる。
【0032】
なお、図中、符号12bは絶縁体12のフランジ部12aに埋設された埋込金具を示している。
【0033】
次に、このような構成の絶縁ブッシング1および連結導体3の外周に、図示しないが非特許文献1に記載されている周知のゴムブロック絶縁筒を配置し、金具ボルトによって、埋込金具12bに固定し、ケーブルの防水処理を行うことでケーブル接続部を形成することができる。なお、ゴムブロック絶縁筒は、例えば絶縁ゴムから成る円筒状の絶縁筒本体と、絶縁筒本体の中央部内周に絶縁筒本体と一体的に設けられ、かつそれ自身の内周面が露出するように設けられた半導電ゴム等から成る内部遮蔽層と、絶縁筒本体の外周に絶縁筒本体と一体的に設けられれた半導電ゴム(または半導電塗料)等から成る外部遮蔽層とを備えている。
【0034】
以上のように、本発明の連結導体3を用いた絶縁ブッシングと電力ケーブルとの接続部およびこれを用いたケーブル接続部によれば、当該連結導体3が円筒状に組み合わせられる一対の半円筒状部31a、31bと、円筒状に組み合わせられた一対の半円筒状部31a、31bを径方向に伸縮可能に保持する保持部材してのワイヤーバネ32と、一対の半円筒状部31a、31bを一体に締結する締結部材としてのボルト33とを備えることから、絶縁ブッシング1が垂直に配置された場合でも、連結導体3を絶縁ブッシング1の内部導体11の下端部に装着し、当該連結導体3を内部導体11の端部にケーブル端末5を接続する前に予め固定することができる。また、この状態において、絶縁ブッシング1に向けて垂直に立ち上げられたケーブル端末5の導体接続子24をプラグイン接続することができることから、作業者が一人であっても容易に接続することができる。また、絶縁ブッシング1が水平に配置された場合は、従来に比べブッシング1の内部導体11とケーブル端末5の中心合わせ等の作業性が良くなり、容易に接続作業を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
前述の実施例においては、図面に示した特定の実施の形態をもって本発明を説明しているが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する限り、次のように構成してもよい。
【0036】
第1に、前述の実施例においては、垂直に配置された絶縁ブッシング1と垂直に立ち上げられたケーブル端末5との接続について述べているが、絶縁ブッシング1およびケーブル端末5は水平に配置した状態で接続してもよく、特に絶縁ブッシングの向きは限定されるものではない。
【0037】
第2に、前述の実施例においては、内部導体11の下端部が全長に亘って同径のものについて述べているが、内部導体11の下端部に連結導体3を係止するリング状の突起部を形成してもよい。すなわち、当接面が連結導体側でなく、ブッシングの内部導体側にあってもよい。
【0038】
第3に、前述の実施例においては、保持部材としてワイヤーバネを使用しているが、ワイヤーバネに代えてコイル状のスプリングを使用してもよい。
【0039】
第4に、本発明の絶縁ブッシングと電力ケーブルとの接続部およびこれを用いたケーブル接続部は、気中終端接続部、ガス中終端接続部、油中終端接続部、中間接続部、盤間母線等、ゴムブロック絶縁筒による絶縁方式のものであればいずれに適用してもよい。
【0040】
第5に、内部導体は銅や銅合金で形成したものに限定されず、アルミニウムまたはアルミニウム合金で形成してもよい。
【0041】
第6に、前述の実施例においては、定格電圧が36kVクラスのものについて説明しているが、当該定格電圧はこれより低い電圧、若しくは高い電圧でもよい。
【符号の説明】
【0042】
1・・・絶縁ブッシング
12・・・絶縁体
11・・・内部導体
2・・・ケーブル
23・・・ケーブル導体
3・・・連結導体
31a、31b・・・一対の半円筒状部
32・・・保持部材(ワイヤーバネ)
33・・・締結部材(ボルト)
34a、35a・・・ねじ孔
34b、35b・・・ボルト挿通孔
36・・・座ぐり
5・・・ケーブル端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁体と、絶縁体の中心に埋設されそれ自身の端部が前記絶縁体の端部から軸方向外方に向けて突設された内部導体とを有する絶縁ブッシングと、
ケーブルの端部が段剥されてケーブル導体が露出されたケーブル端末と、
前記内部導体の端部と前記ケーブル導体とを接続する連結導体とを備え、
前記連結導体は、円筒状に組み合わせられる一対の半円筒状部と、円筒状に組み合わせられた前記一対の半円筒状部を径方向に伸縮可能に保持する保持部材と、前記一対の半円筒状部を一体に締結する締結部材とを備えることを特徴とする絶縁ブッシングと電力ケーブルとの接続部。
【請求項2】
前記連結導体の外周に形成される環状溝に前記保持部材が配置されていることを特徴とする請求項1記載の絶縁ブッシングと電力ケーブルとの接続部。
【請求項3】
前記保持部材はワイヤーバネで構成され、前記ワイヤーバネは円筒状に組み合わせられた前記一対の半円筒状部の外周に設けられることを特徴とする請求項1または請求項2記載の絶縁ブッシングと電力ケーブルとの接続部。
【請求項4】
前記締結部材はボルトで構成され、前記ボルトは、前記半円筒状部の一方側に設けた座ぐりおよびボルト挿通孔に挿入され、それ自身の先端部が前記半円筒状部の他方側に設けらたねじ孔に螺着されることを特徴とする請求項1乃至請求項3何れか1項記載の絶縁ブッシングと電力ケーブルとの接続部。
【請求項5】
前記絶縁ブッシングは垂直に配置され、前記連結導体の上半部は予め前記内部導体の端部に装着されて前記内部導体の端部に固定され、前記ケーブル端末は前記絶縁ブッシングに向けて垂直に立ち上げられ、前記ケーブル端末は前記連結導体の下半部にプラグイン接続されることを特徴とする請求項1乃至請求項4何れか1項記載の絶縁ブッシングと電力ケーブルとの接続部。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5何れか1項記載の絶縁ブッシングと電力ケーブルとの接続部と、ゴムブロック絶縁筒とを備え、前記ゴムブロック絶縁筒は前記絶縁ブッシングと電力ケーブルとの接続部を構成する導体接続部の外周に設けられていることを特徴とするケーブル接続部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−120320(P2011−120320A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−272809(P2009−272809)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(306013120)昭和電線ケーブルシステム株式会社 (218)
【Fターム(参考)】