説明

絶縁回路基板の外観検査方法

【課題】従来の絶縁回路基板の外観検査方法では不良を確実に且つ高速で検査することはできなかった。
【解決手段】本発明の絶縁回路基板の外観検査方法においては、絶縁回路基板を撮像手段により撮影し、撮影された検査画像を所定の閾値で2値化することにより回路パターン部と絶縁部とに分け、前記回路パターン部において回路パターンの島を抽出しその数を数え、予め登録された良品画像の回路パターン部の回路パターンの島の数とが一致した場合を合格品とする検査工程1と、前記絶縁部において絶縁の島を抽出しその数を数え、予め登録された前記良品画像の絶縁部の絶縁の島の数と一致した場合を合格品とする検査工程2と、予め登録された前記良品画像の前記回路パターン部の前記回路パターンの島を1個含む検査範囲画像を設定し、前記検査範囲画像に相当する範囲内で、回路パターンの島を抽出してその数を数え、前記回路パターンの島の数が1個である場合を合格品ととする検査工程3を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁回路基板の外観検査方法、特に、絶縁回路基板の回路パターンの検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回路パターンの外観上の欠陥を認識する方法としては、被検査回路パターンと良品あるいはCADデータなどの設計回路パターンから取り込んだ基準画像データとを比較する比較法が一般的に用いられてきている。具体的には検査対象をCCDカメラ等で撮影し、その画像をA/D変換し、画像メモリに濃淡画像として記憶し、この記憶した画像を更に最適な値で2値化し、2値画像データとして別の画像メモリに記憶する。そして、この2値化画像データ(画素データ)と基準画像データとを比較し、両者が一致するかもしくは所定の類似度を満足すれば、被検査回路パターンは良品であると判別する。
【0003】
しかしながら、基準画像データと被検査回路パターンとの差画像を求める際に両者の位置決め精度が要求されること、あるいは全画素同士を比較するためには膨大な時間を必要とし、高速な検査ができないという問題がある。
【0004】
特許文献1はこれを解消するために、2値化画像を得たあとに、その2値化画像に対し回路パターン部にラベル付けを行う処理と、回路パターン部によって区切られた背景部にラベル付けを行う処理の少なくとも一方の処理を施し、ラベル付けされた画像端部におけるラベル値、又はそのラベル値と画像中に存在するラベル値に基づいて欠陥を認識することを特徴とする欠陥認識方法を開示している。
【0005】
また、特許文献2は複数のリードを有する被検査物を高速・高精度に検査することが可能である外観検査装置を開示している。これによると、記憶された2値画像データに対し、ショートを検出したい所望のエリアを仮想切り出し回路にて切り出して仮想枠を設け、この仮想枠内においてラベリング手段により閉曲面を有するエリアを抽出しこの閉曲面の数をカウントすることによりショート検出を行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62−148839号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開平08−078489号公報([要約]、[請求項1]、[0017])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記特許文献1の方法では回路の細線部の断線などの欠陥検査を目的とし、ラベル付けされた画像端部の設定が必要であり、多くの様々な形状の回路パターン部の検査においては画像端部の設定が困難で、その処理を行ったとしても時間がかかりすぎる恐れがある。また、特許文献2の方法は仮想枠の設定や閉曲面を有するエリアを抽出する処理において、特に複雑な回路パターンを多く有するエリアの場合、コンピューター等の演算装置の負荷が大きく時間がかかる恐れがあり、また、閉曲面の数をカウントするだけでは、閉曲面の内部での断線などの欠陥抽出をすることができない。
【0008】
本発明は上記問題を鑑みて、回路パターンを高速で断線などの致命的欠陥を見逃すことなく検査することのできる外観検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願の発明者らは鋭意研究の結果、上述の課題を解消する本発明の絶縁回路基板の外観検査方法を見いだした。本発明の外観検査方法は、絶縁回路基板を撮像手段により撮影し、撮影された検査画像を所定の閾値で2値化することにより回路パターン部と絶縁部とに分け、前記回路パターン部において回路パターンの島を抽出しその数を数え、前記回路パターンの島の数が予め登録された良品画像の回路パターン部の回路パターンの島の数と一致するかどうか判別し、一致した場合を合格品とし、一致しなかった場合を不合格品とする検査工程1と、前記絶縁部において絶縁の島を抽出しその数を数え、前記絶縁の島の数が予め登録された前記良品画像の絶縁部の絶縁の島の数と一致するかどうか判別し、一致した場合を合格品とし、一致しなかった場合を不合格品とする検査工程2と、予め登録された前記良品画像の前記回路パターン部の前記回路パターンの島を1個含む検査範囲画像を設定し、前記検査画像において前記検査範囲画像に相当する範囲内で、回路パターンの島を抽出してその数を数え、前記回路パターンの島の数が1個である場合を合格品とし、0個または2個以上である場合を不合格品とする検査工程3を有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の絶縁回路基板の外観検査方法は、予め登録された前記良品画像の前記絶縁部の島を1個含む検査範囲画像を設定し、前記検査画像において前記検査範囲画像に相当する範囲内で、絶縁の島を抽出してその数を数え、前記絶縁の島の数が1個である場合を合格品とし、0個または2個以上である場合を不合格品とする検査工程4を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の絶縁回路基板の外観検査方法は、予め登録された前記良品画像の前記回路パターン部の島を1個含む検査範囲画像を設定し、前記検査画像において前記検査範囲画像に相当する範囲内で、絶縁の島を抽出してその数を数え、この検査範囲内における前記良品画像の絶縁の島の数と一致するかどうか判別し、一致した場合を合格品とし、一致しなかった場合を不合格品とする検査工程5を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の絶縁回路基板の外観検査方法では、従来と比較して複雑な演算が不要であり、且つ断線やショートなどの絶縁回路基板として致命的欠陥を見落とすことなく絶縁回路基板を高速で検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】検査工程1および検査工程2のフロー図である。
【図2】検査工程3または検査工程4のフロー図である。
【図3A】絶縁回路基板の良品画像の模式図である。
【図3B】回路パターンの島の断線不良を有する絶縁回路基板の検査画像の模式図である。
【図3C】回路パターンの島間のショート不良を有する絶縁回路基板の検査画像の模式図である。
【図3D】回路パターンの島の内部の断線不良を有する絶縁回路基板の検査画像の模式図である。
【図3E】回路パターンのショート不良および断線不良を有する絶縁回路基板の検査画像の模式図である。
【図4A】検査工程3、5における良品検査画像において回路パターン部の上部のパターンの島1個を含む検査範囲画像の模式図である。
【図4B】検査工程3、5における良品検査画像において回路パターン部の真ん中のパターンの島1個を含む検査範囲画像の模式図である。
【図4C】検査工程3、5における良品検査画像において回路パターン部の下部のパターンの島1個を含む検査範囲画像の模式図である。
【図5A】検査工程3における良品画像であって、回路パターン部の真ん中のパターンの島1個を含む検査範囲画像に関する画像例である。
【図5B】検査工程3における検査画像であって、回路パターン部の真ん中の回路パターンの島1個を含む検査範囲画像に関し、回路パターンの島の断線不良の画像例である。
【図5C】検査工程3における検査画像であって、回路パターン部の真ん中のパターンの島1個を含む検査範囲画像に関し、回路パターンの島内のショート不良の画像例である。
【図6A】検査工程4における良品画像であって、絶縁部の絶縁の島1個を含む検査範囲画像に関する画像例である。
【図6B】検査工程4における検査画像であって、絶縁部の絶縁の島1個を含む検査範囲画像に関し、絶縁の島内のショート不良の画像例である。
【図6C】検査工程4における検査画像であって、絶縁部の絶縁の島1個を含む検査範囲画像に関し、回路パターンが断線している不良の画像例である。
【図7A】検査工程5における良品画像であって、回路パターン部の真ん中のパターンの島1個を含む検査範囲画像に関する画像例である。
【図7B】検査工程5における検査画像であって、回路パターン部の真ん中の回路パターンの島1個を含む検査範囲画像に関し、絶縁の島内のショート不良の画像例である。
【図7C】検査工程5における検査画像であって、回路パターン部の真ん中のパターンの島1個を含む検査範囲画像に関し、回路パターンが断線している不良の画像例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、絶縁回路基板の外観検査に関する検査方法の発明である。
【0015】
絶縁回路基板は、例えば絶縁体としてアルミナやAlNを主成分とするセラミックス基板、回路パターンの材料として銅やアルミニウムなどの金属板からなり、セラミックス基板と金属板はろう接法や直接接合法などにより接合される。または、例えば絶縁体としてガラスエポキシ基板や紙エポキシ基板、回路パターンの材料として銅などの金属箔からなり、該絶縁体と該金属箔は接着剤などにより接合されている。
【0016】
前記回路パターンは、前記金属板または金属箔と絶縁体であるセラミックス基板またはガラスエポキシ基板等を接合後にエッチングなどにより形成するか、或いは予め回路パターン形状をプレス等で打ち抜いた金属板または金属箔を絶縁体に接合して形成する。その後回路パターンに必要に応じてめっきなどを施しても良い。
【0017】
絶縁回路基板の製造において不良が発生することがあるが、特にパターンの断線不良やパターンのショート不良は絶縁回路基板にとって致命的な問題となる恐れがある。
【0018】
発生する不良品を外観検査により除去する方法として人が目視で除去する方法があるが、特に個数が多いと労力がかかるとともに検査ミスで不良の流出する恐れがある。したがって、画像認識による外観検査装置を用いて検査を行うことが好ましい。しかしながら、特に微細で多くの回路パターンを有する回路基板においては、一般的に行われる比較法などの外観検査方法は検査装置への負荷が高く、時間がかかりすぎる。或いは高価で能力の高い検査装置が必要になるという問題がある。
【0019】
また、前述のセラミックス基板と金属板を接合した金属セラミックス接合絶縁回路基板においては銅やアルミニウムからなる金属回路板にNiめっきやNi合金めっき等が施されている場合がある。このような金属回路板またはNiめっきやNi合金めっきが施された金属回路板において、該金属回路板表面の結晶の粒界と粒内で光の反射率が大きく異なる場合があり、画像認識による検査が困難な場合がある。
【0020】
この点について本発明者は種々実験、検討の結果以下の検査方法により、特に問題となる不良を確実に除去でき、且つ非常に短時間で検査できる検査方法、検査装置の能力が高くなくても短時間で検査可能な方法を見いだした。
【0021】
本発明の検査方法を以下図面と共に説明する。
【0022】
本発明の外観検査方法は、まず、検査対象である絶縁回路基板を撮像手段により撮影する。撮影手段は画像をRGBや輝度などの情報をデジタル化でき、後で情報処理できるものであればよく、例えばCCDカメラ、CMOSカメラなどにより絶縁回路基板を撮影し、これを検査画像としその情報を外観検査装置の記憶部に記憶させる。
【0023】
また、別に予めCAD図面の情報や実際の製品の良品を撮影したものを、良品画像としてその情報を外観検査装置の記憶部に記憶、登録しておく。
【0024】
図1に示すように、本発明の検査工程は、まず検査画像を前記記憶部から呼び出し、該検査画像を所定の閾値で2値化することにより回路パターン部と絶縁部とに分ける。すなわち、画像は例えば絶縁の島の集合からなる絶縁部の白と、回路パターンの島の集合からなる回路パターン部の黒に、白黒化された状態となる。2値化は一般的に実施されているように、検査画像の各画素における輝度情報やRGB情報などについて、回路パターン部と絶縁部を区別できる適当な閾値を設けて2値化(白黒化)する。例えば、検査画像の各画素が輝度情報により0〜255の値を有している場合、下限値30から上限値120の範囲を白(または黒)とし、この上限と下限の範囲外を黒(または白)にするというものである。
【0025】
また2値化の前に、必要に応じて位置補正やグレースケール変換を行ってもかまわない。検査画像の位置補正は、パターンの外形を前記記憶部に登録しておき、その外形と角度、位置のずれ等を求めて補正する。グレースケール変換は、撮影された検査画像をRGB情報などの基準で濃度値に分ける画像変換で、検査画像が濃淡の画像に変換される。また、適宜ノイズ除去を行っても良い。ノイズ除去とは、例えば撮影した検査画像において本来直線である回路パターンのラインが画素により凹凸が発生する場合に直線に補正するなどの処理などをいう。
【0026】
(検査工程1)
次に、2値化された検査画像の前記回路パターン部において回路パターンの島を抽出し、その数を数える。この回路パターンの島の数が、予め登録された良品画像の(良品)回路パターン部の(良品)回路パターンの島の数と一致するかどうか判別し、一致した場合を合格品とし、一致しなかった場合を不合格品とする検査工程を検査工程1とする。
【0027】
図3Aは絶縁回路基板2の良品画像1であり、絶縁回路基板2の点線で示された検査範囲5の内側に回路パターン部(例えば銅板で形成された回路パターン部)が黒で示されており、図3Aの場合この回路パターン部に3個の回路パターンの島3が存在する。
【0028】
図3Bは回路パターンの断線不良を有する絶縁回路基板2の2値化された後の検査画像11の例で、この場合は点線で示された検査範囲5の回路パターン部に4個の回路パターンの島3が存在する。よって良品画像1の回路パターンの島3の数である3個と一致しないので不合格品と判定される。
【0029】
図3Cは回路パターンのパターンショート不良を有する絶縁回路基板2の2値化された後の検査画像11の例で、この場合は点線で示された検査範囲5の回路パターン部に2個の回路パターンの島3が存在する。よって良品画像1の回路パターンの島3の数3個と一致しないので不合格品と判定される。
【0030】
図3Dは回路パターン内の配線の断線不良を有する絶縁回路基板2の2値化された後の検査画像11の例で、この場合は点線で示された検査範囲5の回路パターン部に3個の回路パターンの島3が存在する。よって良品画像1の回路パターンの島3の数3個と一致しているので合格品と判定される。
【0031】
図3Eは上部と真ん中の回路パターンの島が連結されたショート不良と、真ん中の島の断線不良の両方の不良モードを有する絶縁回路基板2の2値化された後の検査画像11の例で、この場合は点線で示された検査範囲5の回路パターン部に3個の回路パターンの島3が存在する。よって良品画像1の回路パターンの島の数3個と一致しているので合格品と判定される。
【0032】
前記検査画像の前記回路パターン部において前記回路パターンの島を抽出する方法として、指定面積以上の面積を有する2値化された検査画像、すなわち指定面積以上の黒い部分を抽出(算出)するのが好ましい。指定面積は回路パターンの島とする黒の面積を設定、指定するもので、図3Aの良品画像との関連から適当な値に設定すれば良い。例えば、良品画像の最小の回路パターンの島の面積の1/5〜1/2の範囲で値を最初に指定しておき、それ以上の値の面積を有する黒い部分を回路パターンの島と判定、抽出(算出)すれば良い。
【0033】
特に前記金属セラミックス接合絶縁回路基板において、例えば結晶粒内に比べて結晶粒界における光の反射率が著しく大きい場合は、回路パターン内に反射率(輝度)が著しく大きい場所と小さい場所があることになり、前記閾値の範囲を設定するだけでは回路パターンを正常に判定しない場合がある。したがって、例えば粒界からの反射を除外してより正確な外観検査を行うためにも、適当な指定面積を設定し、指定面積以上の面積を有するものを回路パターンの島と判断することが好ましい。すなわちノイズをできるだけ排除し、より正確な判定を行うためである。上記の通り、適当な指定面積は概ね良品画像の最小の回路パターンの島の面積の1/5〜1/2程度であった。
【0034】
(検査工程2)
また図1に示すように、検査画像の2値化された前記絶縁部において絶縁の島を抽出しその数を数え、前記絶縁の島の数が、予め登録された前記良品画像の絶縁部の絶縁の島の数と一致するかどうか判別し、一致した場合を合格品とし、一致しなかった場合を不合格品とする検査工程を検査工程2とする。
【0035】
図3Aは絶縁回路基板の良品画像1であり、絶縁回路基板の点線で示された検査範囲5の内側に絶縁部(例えばセラミックス基板が露出して見える回路間や外周部)が白で示されており、図3Aの場合この絶縁部に7個の絶縁の島4が存在する。
【0036】
図3Bは回路パターンの断線不良を有する絶縁回路基板の2値化された後の検査画像11の例で、この場合は点線で示された検査範囲5の絶縁部に7個の絶縁の島4が存在する。よって良品画像1の絶縁の島4の数である7個と一致するので合格品と判定される。
【0037】
図3Cは回路パターンのパターンショート不良を有する絶縁回路基板の2値化された後の検査画像11の例で、この場合は点線で示された検査範囲5の絶縁部に7個の絶縁の島4が存在する。よって良品画像1の絶縁の島4の数である7個と一致するので合格品と判定される。
【0038】
図3Dは回路パターン内配線の断線不良を有する絶縁回路基板の2値化された後の検査画像11の例で、この場合は点線で示された検査範囲5の絶縁部に6個の絶縁の島4が存在する。よって良品画像1の絶縁の島4の数7個と一致していないので不合格品と判定される。
【0039】
図3Eは上部と真ん中の回路パターンの島が連結されたショート不良と、真ん中の島の断線不良の両方の不良モードを有する絶縁回路基板2の2値化された後の検査画像11の例で、この場合は点線で示された検査範囲5の絶縁部に7個の絶縁の島3が存在する。よって良品画像1の絶縁の島の数7個と一致しているので合格品と判定される。
【0040】
前記検査画像の前記絶縁部において前記絶縁の島を抽出すする方法として、指定面積以上の面積を有する2値化された検査画像、すなわち白い部分を抽出するのが好ましい。指定面積は絶縁の島とする白の部分の面積を設定するもので、図3Aの良品画像との関連から適当な値に設定すれば良い。例えば、良品画像の最小の絶縁の島の面積の1/5〜1/2の値を最初に指定しておき、それ以上の値の面積を有する白い部分を絶縁の島と判定、抽出すれば良い。
【0041】
絶縁部において絶縁の島を抽出するときに、指定面積以上の面積を有する2値化された検査画像を抽出する理由は、回路パターンの島の場合と同様な理由であり、何らかの理由で絶縁部において反射率の大きく異なる部分があっても、より正確な絶縁部の島を抽出するためである。すなわちノイズをできるだけ排除し、より正確な判定を行うためである。
【0042】
(検査工程3)
図2に示されるように、前記良品画像の前記良品回路パターン部の前記良品回路パターンの島を1個含む検査範囲画像を設定し、前記検査画像において前記検査範囲画像に相当する範囲内で、指定面積以上の前記回路パターンの島の数を数え、前記回路パターンの島の数が1個である場合を合格品とし、0個または2個以上である場合を不合格品とする検査工程を検査工程3とする。具体的には、例えば図4A、図4B、図4Cに示すように、回路パターン部の回路パターンの島を1個含む検査範囲画像6をそれぞれ設定し、それぞれについて回路パターンの島を数える。
【0043】
図5Aは前記良品画像の前記良品回路パターン部の前記良品回路パターンの島を1個含む検査範囲画像を設定した例である。点線の範囲が検査範囲画像となる。
【0044】
図5Bは回路パターンの断線した不良例であり、良品画像図5Aに相当する図5Bの点線で示される検査範囲画像内で、回路パターンの島が2個存在する。この場合1個でないので不合格品と判定される。
【0045】
図5Cは回路パターン内部で回路パターンがショートした不良例であり、良品画像図5Aに相当する図5Cの点線で示される検査範囲画像内で、回路パターンの島が1個存在する。この場合1個であるので合格品と判定される。
【0046】
図3Eは上部と真ん中の回路パターンの島が連結されたショート不良と、真ん中の島の断線不良の両方の不良モードを有する絶縁回路基板2の2値化された後の検査画像11の例で、前記図5Aの良品回路パターンの島1個を含む検査範囲画像について図3Eで相当する部分、すなわち図3Eの検査画像11の真ん中の島の部分について回路パターンの島の数を数えたところ2個であった。この場合1個でないので不合格品と判定される。
【0047】
(検査工程4)
図2に示されるように、前記良品画像の前記絶縁部の前記絶縁の島を1個含む検査範囲画像を設定し、前記検査画像において前記検査範囲画像に相当する範囲内で、指定面積以上の前記絶縁の島の数を数え、前記絶縁の島の数が1個である場合を合格品とし、0個または2個以上である場合を不合格品とする検査工程を検査工程4とする。
【0048】
図6Aは前記良品画像の前記絶縁部の前記良品絶縁の島を1個含む検査範囲画像を設定した例である。点線の範囲が検査範囲画像となる。
【0049】
図6Bは回路パターンのショートした不良例であり、良品画像図6Aに相当する図6Bの点線で示される検査範囲画像内で、絶縁の島が2個存在する。この場合1個でないので不合格品と判定される。
【0050】
図6Cは回路パターン内部で断線した不良例であり、良品画像図6Aに相当する図6Cの点線で示される検査範囲画像内で、絶縁の島が1個存在する。この場合1個であるので合格品と判定される。
【0051】
(検査工程5)
前記良品画像の前記良品回路パターン部の島を1個含む検査範囲画像を設定し、前記検査画像において前記検査範囲画像に相当する範囲内で、指定面積以上の前記絶縁の島の数を数え、この検査範囲内における前記良品画像の良品絶縁の島の数と一致するかどうか判別し、一致した場合を合格品とし、一致しなかった場合を不合格品とする検査工程を検査工程5とする。
【0052】
図7Aは前記良品画像の前記回路パターン部の前記良品回路パターンの島を1個含む検査範囲画像を設定した例である。このとき絶縁の島が3個存在する。点線の範囲が検査範囲画像となる。
【0053】
図7Bは回路パターンの配線がショートした不良例であり、良品画像図7Aに相当する図7Bの点線で示される検査範囲画像内で、絶縁の島が4個存在する。良品画像の場合の絶縁の島が3個であるので島の数は一致せず不合格とされる。
【0054】
図7Cは回路パターンが断線した不良例であり、良品画像図7Aに相当する図7Cの点線で示される検査範囲画像内で、絶縁の島が2個存在する。良品画像の場合の絶縁の島が3個であるので島の数は一致せず不合格とされる。
【実施例1】
【0055】
金属とセラミックス基板を接合した縦3cm、横4cmの絶縁回路基板サンプルを27個準備した(サンプルNo.1〜27)。回路パターンは銅板からなりその上にNi合金めっきが施されている。この中に3個の不良基板を予め混入させておき、上記検査工程1〜3により外観検査を実施した。不良の種類は以下の通りである。なお、回路パターン形状は図3Aとほぼ同形状である。
【0056】
サンプルNo.5:パターンの断線不良。(図3Bに相当)
【0057】
サンプルNo.7:パターンの断線不良。(図3Dに相当)
【0058】
サンプルNo.8:パターンの断線不良及びショート不良。(図3Eに相当)
【0059】
まず、予め検査対象の絶縁回路基板について、目視検査により基準となる外観良品を抽出し、その外観良品の絶縁回路基板をCCDカメラで撮影してその画像を検査装置の記憶部に良品画像として登録した。この画像をグレースケール(輝度情報0〜255)に変換し、回路パターン部と絶縁部(セラミックス基板部)に区別されるように輝度情報について2値化のための閾値の上限値150、下限値30を設定した。次に前記2値化の上限値と下限値の範囲内と範囲外に分け、前記良品画像を白黒化した。また、指定面積を良品画像の回路パターンの最小の島の1/4、良品画像の絶縁の島の最小の島の1/4に設定し、指定面積以上の回路パターンの島及び絶縁の島を抽出し、さらに各島について1つだけを切り出し、それを検査範囲画像として記憶部に保存した。
【0060】
次に、検査対象の絶縁回路基板を外観検査装置の撮影台に固定し、CCDカメラにより撮影して得たカラーの画像を上記良品画像と同様に前記外観検査装置の記憶部に検査画像として記憶させ、画像処理部で2値化して白黒化した。さらに、前記良品画像の処理と同様、前記検査画像について指定面積以上の回路パターン部の島の数、および指定面積以上の絶縁部(セラミックス部分)の島の数をカウントした。
【0061】
断線不良があれば島の数は増加し、ショート不良があれば島の数は減少することになる。
【0062】
(検査工程1)
次に検査装置の記憶部に登録された良品画像の回路パターン部の島数と、検査画像でカウントされた回路パターン部の島数を比べ、島数が一致した場合は合格品とし、島数が少ない、または多い場合は不合格とし、不良として削除した。このときサンプルNo.5が不良として判定された。
【0063】
(検査工程2)
検査工程1において合格品となったものについて、登録された良品画像の絶縁部(セラミックス部分)の島数と、検査画像でカウントされた絶縁部(セラミックス部分)の島数を比べ、島数が一致した場合を合格品とし、島数が少ない、または多い場合は不合格品として除去した。このときサンプルNo.7が不良として判定された。
【0064】
(検査工程3)
前記検査画像について前記予め登録され用意した回路部の1つの島を切り出した前記検査範囲画像に相当する(前記検査画像の)範囲内でパターンの島の数を数え、島の数が1個の場合合格品とし、島の数が0(あるべき回路が無い)または2個以上(回路が断線している)の場合を不合格品とし除去し、これを前記用意した画像の数の分について繰り返した。このときサンプルNo.8が不良として判定された。
【0065】
以上、検査工程1〜3に要した検査時間は従来の比較法と比べて1/5以下の時間である約3秒/個であった。また、表1に示すとおり、3個のサンプルNo.5、7、8全ての不良を検出することができた。
【実施例2】
【0066】
金属とセラミックス基板を接合した縦6cm、横6.5cmの絶縁回路基板サンプルを30個準備し、1個の絶縁回路基板は35個の回路パターンの細かい島を有し、この中に1個の断線不良基板を予め混入させておき、上記検査工程1〜5により外観検査を実施した以外は実施例1と同様の方法で検査を行った。この結果不良基板を抽出でき、検査工程1〜5に要した検査時間は従来の比較法と比べて1/5以下の時間である約3秒/個のスピードで検査することができた。
【0067】
なお、上記検査工程1〜5の順番はどのようにしても良いが、検査工程1から5の順に行うことが、検査スピードの面から好ましい。また、不合格の場合は、検査工程1から3の中のいずれかが不合格になっているので、欠陥の内容を細かく知る必要の無い場合は、検査工程4、5は実施しなくても良いが、より確実に不良品を除去するためには実施してもよい。
【0068】
従来、回路部分にしか注目しなかったため検出できなかったエラーが、本発明のような絶縁部(セラミックス部分)に注目した前述の検査処理を実施することでより正確に不良を検出できるようになった。
【0069】
また、断線、パターンショート以外にも外観不良があるが、多くの不良を1つの撮像条件の検査画像で評価すると、本来検出されるべき不良を検出しない場合がある。例えば断線不良に画像処理の条件を適当なものとすると、他の不良(エラー)が検出できなかったり、逆に、本来OKのものがNGになってしまったりすることがある。
【0070】
さらに、回路が複雑になると、それぞれの部分は合わせた条件を設定することもますます困難となる。
【0071】
すなわち本発明は、このような従来の検査の状況から、特に電気回路基板として致命的な不良であるパターンの断線不良及びパターンのショート不良が確実に除去できる画像処理による外観検査方法を完成させたものである。
【0072】
【表1】

【符号の説明】
【0073】
1 良品画像
2 絶縁回路基板
3 島
4 島
5 検査範囲
6 検査範囲
11 検査画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁回路基板を撮像手段により撮影し、撮影された検査画像を所定の閾値で2値化することにより回路パターン部と絶縁部とに分け、前記回路パターン部において回路パターンの島を抽出しその数を数え、前記回路パターンの島の数が予め登録された良品画像の回路パターン部の回路パターンの島の数と一致するかどうか判別し、一致した場合を合格品とし、一致しなかった場合を不合格品とする検査工程1と、前記絶縁部において絶縁の島を抽出しその数を数え、前記絶縁の島の数が予め登録された前記良品画像の絶縁部の絶縁の島の数と一致するかどうか判別し、一致した場合を合格品とし、一致しなかった場合を不合格品とする検査工程2と、予め登録された前記良品画像の前記回路パターン部の前記回路パターンの島を1個含む検査範囲画像を設定し、前記検査画像において前記検査範囲画像に相当する範囲内で、回路パターンの島を抽出してその数を数え、前記回路パターンの島の数が1個である場合を合格品とし、0個または2個以上である場合を不合格品とする検査工程3を有することを特徴とする絶縁回路基板の外観検査方法。
【請求項2】
予め登録された前記良品画像の前記絶縁部の島を1個含む検査範囲画像を設定し、前記検査画像において前記検査範囲画像に相当する範囲内で、絶縁の島を抽出してその数を数え、前記絶縁の島の数が1個である場合を合格品とし、0個または2個以上である場合を不合格品とする検査工程4を有することを特徴とする請求項1記載の絶縁回路基板の外観検査方法。
【請求項3】
予め登録された前記良品画像の前記回路パターン部の島を1個含む検査範囲画像を設定し、前記検査画像において前記検査範囲画像に相当する範囲内で、絶縁の島を抽出してその数を数え、この検査範囲内における前記良品画像の絶縁の島の数と一致するかどうか判別し、一致した場合を合格品とし、一致しなかった場合を不合格品とする検査工程5を有することを特徴とする請求項1または2記載の絶縁回路基板の外観検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【公開番号】特開2011−153928(P2011−153928A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−15982(P2010−15982)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(506365131)DOWAメタルテック株式会社 (109)
【Fターム(参考)】