絶縁型スイッチング電源装置
【課題】電力伝達用のトランスを用いて、信号伝達もすることができる絶縁型スイッチング電源装置を実現する。
【解決手段】トランスにより1次巻線側と2次巻線側とが絶縁された絶縁型スイッチング電源装置に関する。1次巻線側から2次巻線側へ伝達する信号を出力する信号出力手段と、信号出力手段から出力された信号に応じてスイッチング素子をオンオフ動作させる制御パルスの周波数を変化させるスイッチング制御手段と、トランスの2次巻線に誘起するパルス電圧から信号出力手段で出力した信号を抽出する信号抽出手段とを設けた。
【解決手段】トランスにより1次巻線側と2次巻線側とが絶縁された絶縁型スイッチング電源装置に関する。1次巻線側から2次巻線側へ伝達する信号を出力する信号出力手段と、信号出力手段から出力された信号に応じてスイッチング素子をオンオフ動作させる制御パルスの周波数を変化させるスイッチング制御手段と、トランスの2次巻線に誘起するパルス電圧から信号出力手段で出力した信号を抽出する信号抽出手段とを設けた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスにより1次巻線側と2次巻線側とが絶縁された絶縁型スイッチング電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図10は従来の絶縁型スイッチング電源装置における電力伝達及び信号伝達の説明図であり、図11は従来の絶縁型スイッチング電源装置の動作を説明するための波形図である。
絶縁型スイッチング電源装置の一例としてプッシュプルコンバータについて説明する。プッシュプルコンバータの1次側と2次側とは、トランスTR1により絶縁されている。
【0003】
スイッチング素子SW1,SW2をスイッチングさせることにより、トランスの1次巻線Np1,Np2に印加される電圧を制御し、トランスの2次巻線Nsから整流平滑回路U21を介して直流電圧の出力Voを取り出す。
【0004】
発振器U11からは図11のようにデューティ比一定のパルス信号POUT1,POUT2が出力されており、スイッチング素子SW1,SW2はパルス信号POUT1,POUT2に従いそれぞれオン/オフ動作を行う。スイッチング素子SW1,SW2は、例えば、トランジスタ、FET等で構成される。
【0005】
スイッチング素子SW1とスイッチング素子SW2とはそれぞれ逆の動作となり、スイッチング素子SW1がオンの場合スイッチング素子SW2はオフ、スイッチング素子SW1がオフの場合スイッチング素子SW2はオンとなる。
2次巻線Nsには、スイッチング素子SW1がオンのときVi×Ns/Np1の電圧が正側に発生し、スイッチング素子SW2がオンのときVi×Ns/Np2の電圧が負側に発生し、整流平滑回路U21で整流平滑されて直流電圧の出力Voを出力する。
【0006】
1次側から2次側への信号伝達は、フォトカプラPC1を介して行われている。論理信号生成器U12からの信号は、フォトカプラPC1内でLEDにより電気信号から光信号へ変えられ、受光素子で光信号を電気信号に戻すことで電気的に絶縁している。
【0007】
【特許文献1】特開平6−153531号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
絶縁型スイッチング電源装置において、1次側の信号を2次側に伝達するためには、信号伝達用にフォトカプラ等の絶縁素子を使用しなければならず、信号のデータ量等に応じて絶縁素子の数も増やす必要があった。
【0009】
また、これら信号伝達用の部品は、絶縁部分に配置する必要があり、プリント基板上の実装密度を均一にできないという問題点があった。
【0010】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、電力伝達用のトランスを用いて、信号伝達もすることができる絶縁型スイッチング電源装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような課題を達成するために、本発明は次のとおりの構成になっている。
(1)トランスにより1次巻線側と2次巻線側とが絶縁され、前記トランスの1次巻線に印加される電圧をスイッチング素子でオンオフ動作させることにより、前記トランスの2次巻線から整流平滑回路を介して直流電圧の出力を取り出す絶縁型スイッチング電源装置において、
1次巻線側から2次巻線側へ伝達する信号を出力する信号出力手段と、
該信号出力手段から出力された信号に応じて前記スイッチング素子をオンオフ動作させる制御パルスの周波数を変化させるスイッチング制御手段と、
前記トランスの2次巻線に誘起するパルス電圧から前記信号出力手段で出力した信号を抽出する信号抽出手段と、
を有することを特徴とする絶縁型スイッチング電源装置。
【0012】
(2)前記信号出力手段は、n進数のデータを出力し、前記スイッチング制御手段は、n進数のそれぞれの値に対応した周波数の制御パルスを生成して出力することを特徴とする(1)記載の絶縁型スイッチング電源装置。
【0013】
(3)前記信号出力手段は、データの属性を示す命令を出力し、前記スイッチング制御手段は、命令ごとに定められた周波数の制御パルスを生成して出力することを特徴とする(1)又は(2)記載の絶縁型スイッチング電源装置。
【0014】
(4)前記信号出力手段は、アナログ値を出力し、前記スイッチング制御手段は、アナログ値のレベルに応じて定められた周波数の制御パルスを生成して出力することを特徴とする(1)記載の絶縁型スイッチング電源装置。
【0015】
(5)前記スイッチング制御手段は、前記信号出力手段からの信号がない場合には、所定の周波数の制御パルスを出力することを特徴とする(1)乃至(4)のいずれかに記載の絶縁型スイッチング電源装置。
【0016】
(6)前記スイッチング制御手段は、負荷に供給する出力電圧に応じて制御パルスのデューティ比を調整することを特徴とする(1)乃至(5)のいずれかに記載の絶縁型スイッチング電源装置。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば次のような効果がある。
トランスにより電力伝達に加え、信号伝達を行うことができるようになり、絶縁部分の部品を減らすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を用いて本発明を詳細に説明する。
図1は本発明の一実施例を示す構成図であり、図2は図1の信号伝達を説明するための波形図である。前出の図と同一のものは同一符号を付ける。
絶縁型スイッチング電源装置の一例としてプッシュプルコンバータについて説明する。
プッシュプルコンバータの1次側と2次側とは、トランスTR1により絶縁されている。
【0019】
スイッチング素子SW1,SW2をスイッチングさせることにより、トランスの1次巻線Np1,Np2に印加される電圧を制御し、トランスの2次巻線Nsから整流平滑回路U21を介して直流電圧の出力Voを取り出す。
【0020】
スイッチング制御手段U31は、信号出力手段U32からの「0」,「1」の論理信号を受け、論理信号をパルス信号に変換する。
図2に示すように、スイッチング制御手段U31は、信号出力手段U32からの論理信号が「0」の場合に周波数F0のパルスを生成し、論理信号が「1」の場合に周波数F1のパルスを生成して、スイッチング素子SW1,SW2に対してパルス信号POUT1,POUT2を出力する。
【0021】
トランスの2次巻線Nsにはパルス信号POUT1,POUT2と同期したパルス電圧が発生する。信号抽出手段U22は、トランスの2次巻線Nsに発生したパルス電圧VNsを受け、パルス電圧VNsを論理信号に変換する。信号抽出手段U22は、パルス電圧VNsの周波数がF0であれば論理信号「0」、パルス電圧VNsの周波数がF1であれば論理信号「1」であるとして信号を抽出する。
【0022】
図3は本発明の絶縁型スイッチング電源装置における電圧制御例を示す構成図であり、図4は図3の電圧制御を説明するための波形図である。
絶縁型スイッチング電源装置の2次側に配置された誤差増幅器U23により、出力電圧Voと基準電圧Vrとの差分を検出し、差分信号を絶縁素子U24を介して1次側へフィードバックする。スイッチング制御手段U31のパルス幅変調(PWM)回路により、出力電圧Voは基準電圧Vrと一致するように制御され、出力電圧Voは入力電圧Viや負荷に依存しない安定した電圧となる。
【0023】
図4に示すように、スイッチング制御手段U31のPWM回路は、周波数F0,F1は一定とし、スイッチング素子SW1,SW2の短絡時間(ton)となるオンデューティを制御する。出力電圧Voが基準電圧Vrより小さい場合はtonが長くなるように制御し、出力電圧Voが基準電圧Vrより大きい場合はtonが短くなるように制御する。
【0024】
このように、スイッチング制御手段U31によりスイッチング素子へ供給するパルス信号の周波数及びオンデューティを制御することにより、1つの絶縁トランスTR1で電力の伝達と情報の伝達をすることができるようになり、情報の伝達のために特別に絶縁素子を設ける必要がなくなる。
【0025】
図5は本発明の他の信号伝達例を示す波形図である。
整流平滑回路U21を介して出力電圧Voを出力し続けるためには、信号出力手段U32から信号がない場合にもスイッチング制御手段U31は何らかのパルスを出力する必要がある。このため、信号出力手段U32から論理信号「0」,「1」が出力されない場合に、スイッチング制御手段U31が周波数F0,F1以外の周波数F2のパルス信号を生成し出力するようにしたものである。
【0026】
これにより、信号出力手段U32から論理信号がない場合であっても、電源装置を正常に制御することができる。また、信号抽出手段U22で検出した周波数がF2であれば論理信号がないと認識することができ、論理信号「0」,「1」の信号列の先頭と最終を明確にすることができる。
【0027】
図6は本発明の他の信号伝達例を示す波形図である。
信号出力手段U32がプロセッサ等であり、データとその属性を示す命令等を生成し出力する場合について説明する。
スイッチング制御手段U31は、データが「0」の場合に周波数F0のパルスを生成し、データが「1」の場合に周波数F1のパルスを生成し、命令をF0,F1以外の周波数のパルスに変換して、データと命令をパルス信号POUT1,POUT2としてスイッチング素子SW1,SW2に対して出力する。
【0028】
図6では、スイッチング制御手段U31が信号出力手段U32から受信した命令がリード命令のときに周波数F2のパルスを生成し、ライト命令のときに周波数F3のパルスを生成する。
トランスの2次巻線Nsの電圧VNsには、ライト命令を示す周波数F3のパルスの後に、ライトすべき場所を示すアドレスデータとライトすべきデータの周波数F0,F1によるパルス列が続き、リード命令を示す周波数F2のパルスの後に、リードすべき場所を示すアドレスデータの周波数F0,F1によるパルス列が続いている。
【0029】
信号抽出手段U22で2次巻線Nsに発生した電圧VNsのパルスの周波数を検出することにより、電力伝達用のトランスを用いてデータと命令を伝達することができる。
【0030】
図7は本発明の他の信号伝達例を示す波形図である。
信号出力手段U32がプロセッサ等であり、n進数のデータを生成し出力する場合について説明する。
スイッチング制御手段U31は、n進数のデータの0からnに対応して、それぞれを周波数F0からFnのn個の周波数のパルスに変換して、n進数のデータをパルス信号POUT1,POUT2としてスイッチング素子SW1,SW2に対して出力する。
【0031】
図7では、0から7のデータに対してF0からF7の周波数のパルスを割り当てている。
このようにすることで、n進数のデータを2進数に変換せず、そのまま伝達することが可能となり、複雑な処理がなくなり伝送効率を上げることができる。
【0032】
また、信号出力手段U32がアナログ値を出力するものであってもよく、この場合、スイッチング制御手段U31は、アナログ値のレベルに応じて定められた周波数の制御パルスを生成して出力する。
【0033】
図8は本発明の絶縁型スイッチング電源装置を並列接続した実施例を示す図である。
本発明の絶縁型スイッチング電源装置の出力を突き合わせダイオードを介して並列接続している。突き合わせダイオードにより、各電源装置への出力電流の回り込みを防止している。
【0034】
本発明の電源装置を並列接続することにより、パラレル伝送として複数ビットの信号伝達をすることができる。また、電源装置ごとに伝達する信号を決め、役割ごとに伝送することもできる。
また、各電源装置で同じ信号を伝達し、2次側で受信した信号を比較することにより、伝達されてきた信号の正当性を判断することもできる。
【0035】
図9は本発明の他の電源方式例を示す構成図である。
絶縁型スイッチング電源装置としてハーフブリッジ方式とした場合の回路例を示している。スイッチング周波数を制御して信号伝達をしているので、この他にも、フルブリッジ方式、フォワード方式、フライバック方式等、他の方式のコンバータへも本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施例を示す構成図である。
【図2】図1の信号伝達を説明するための波形図である。
【図3】本発明の絶縁型スイッチング電源装置における電圧制御例を示す構成図である。
【図4】図3の電圧制御を説明するための波形図である。
【図5】本発明の他の信号伝達例を示す波形図である。
【図6】本発明の他の信号伝達例を示す波形図である。
【図7】本発明の他の信号伝達例を示す波形図である。
【図8】本発明の絶縁型スイッチング電源装置を並列接続した実施例を示す図である。
【図9】本発明の他の電源方式例を示す構成図である。
【図10】従来の絶縁型スイッチング電源装置における電力伝達及び信号伝達の説明図である。
【図11】従来の絶縁型スイッチング電源装置の動作を説明するための波形図である。
【符号の説明】
【0037】
Np1,Np2 1次巻線
Ns 2次巻線
SW1,SW2 スイッチング素子
TR1,TR2 トランス
U21 整流平滑回路
U22 信号抽出手段
U31 スイッチング制御手段
U32 信号出力手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスにより1次巻線側と2次巻線側とが絶縁された絶縁型スイッチング電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図10は従来の絶縁型スイッチング電源装置における電力伝達及び信号伝達の説明図であり、図11は従来の絶縁型スイッチング電源装置の動作を説明するための波形図である。
絶縁型スイッチング電源装置の一例としてプッシュプルコンバータについて説明する。プッシュプルコンバータの1次側と2次側とは、トランスTR1により絶縁されている。
【0003】
スイッチング素子SW1,SW2をスイッチングさせることにより、トランスの1次巻線Np1,Np2に印加される電圧を制御し、トランスの2次巻線Nsから整流平滑回路U21を介して直流電圧の出力Voを取り出す。
【0004】
発振器U11からは図11のようにデューティ比一定のパルス信号POUT1,POUT2が出力されており、スイッチング素子SW1,SW2はパルス信号POUT1,POUT2に従いそれぞれオン/オフ動作を行う。スイッチング素子SW1,SW2は、例えば、トランジスタ、FET等で構成される。
【0005】
スイッチング素子SW1とスイッチング素子SW2とはそれぞれ逆の動作となり、スイッチング素子SW1がオンの場合スイッチング素子SW2はオフ、スイッチング素子SW1がオフの場合スイッチング素子SW2はオンとなる。
2次巻線Nsには、スイッチング素子SW1がオンのときVi×Ns/Np1の電圧が正側に発生し、スイッチング素子SW2がオンのときVi×Ns/Np2の電圧が負側に発生し、整流平滑回路U21で整流平滑されて直流電圧の出力Voを出力する。
【0006】
1次側から2次側への信号伝達は、フォトカプラPC1を介して行われている。論理信号生成器U12からの信号は、フォトカプラPC1内でLEDにより電気信号から光信号へ変えられ、受光素子で光信号を電気信号に戻すことで電気的に絶縁している。
【0007】
【特許文献1】特開平6−153531号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
絶縁型スイッチング電源装置において、1次側の信号を2次側に伝達するためには、信号伝達用にフォトカプラ等の絶縁素子を使用しなければならず、信号のデータ量等に応じて絶縁素子の数も増やす必要があった。
【0009】
また、これら信号伝達用の部品は、絶縁部分に配置する必要があり、プリント基板上の実装密度を均一にできないという問題点があった。
【0010】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、電力伝達用のトランスを用いて、信号伝達もすることができる絶縁型スイッチング電源装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような課題を達成するために、本発明は次のとおりの構成になっている。
(1)トランスにより1次巻線側と2次巻線側とが絶縁され、前記トランスの1次巻線に印加される電圧をスイッチング素子でオンオフ動作させることにより、前記トランスの2次巻線から整流平滑回路を介して直流電圧の出力を取り出す絶縁型スイッチング電源装置において、
1次巻線側から2次巻線側へ伝達する信号を出力する信号出力手段と、
該信号出力手段から出力された信号に応じて前記スイッチング素子をオンオフ動作させる制御パルスの周波数を変化させるスイッチング制御手段と、
前記トランスの2次巻線に誘起するパルス電圧から前記信号出力手段で出力した信号を抽出する信号抽出手段と、
を有することを特徴とする絶縁型スイッチング電源装置。
【0012】
(2)前記信号出力手段は、n進数のデータを出力し、前記スイッチング制御手段は、n進数のそれぞれの値に対応した周波数の制御パルスを生成して出力することを特徴とする(1)記載の絶縁型スイッチング電源装置。
【0013】
(3)前記信号出力手段は、データの属性を示す命令を出力し、前記スイッチング制御手段は、命令ごとに定められた周波数の制御パルスを生成して出力することを特徴とする(1)又は(2)記載の絶縁型スイッチング電源装置。
【0014】
(4)前記信号出力手段は、アナログ値を出力し、前記スイッチング制御手段は、アナログ値のレベルに応じて定められた周波数の制御パルスを生成して出力することを特徴とする(1)記載の絶縁型スイッチング電源装置。
【0015】
(5)前記スイッチング制御手段は、前記信号出力手段からの信号がない場合には、所定の周波数の制御パルスを出力することを特徴とする(1)乃至(4)のいずれかに記載の絶縁型スイッチング電源装置。
【0016】
(6)前記スイッチング制御手段は、負荷に供給する出力電圧に応じて制御パルスのデューティ比を調整することを特徴とする(1)乃至(5)のいずれかに記載の絶縁型スイッチング電源装置。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば次のような効果がある。
トランスにより電力伝達に加え、信号伝達を行うことができるようになり、絶縁部分の部品を減らすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を用いて本発明を詳細に説明する。
図1は本発明の一実施例を示す構成図であり、図2は図1の信号伝達を説明するための波形図である。前出の図と同一のものは同一符号を付ける。
絶縁型スイッチング電源装置の一例としてプッシュプルコンバータについて説明する。
プッシュプルコンバータの1次側と2次側とは、トランスTR1により絶縁されている。
【0019】
スイッチング素子SW1,SW2をスイッチングさせることにより、トランスの1次巻線Np1,Np2に印加される電圧を制御し、トランスの2次巻線Nsから整流平滑回路U21を介して直流電圧の出力Voを取り出す。
【0020】
スイッチング制御手段U31は、信号出力手段U32からの「0」,「1」の論理信号を受け、論理信号をパルス信号に変換する。
図2に示すように、スイッチング制御手段U31は、信号出力手段U32からの論理信号が「0」の場合に周波数F0のパルスを生成し、論理信号が「1」の場合に周波数F1のパルスを生成して、スイッチング素子SW1,SW2に対してパルス信号POUT1,POUT2を出力する。
【0021】
トランスの2次巻線Nsにはパルス信号POUT1,POUT2と同期したパルス電圧が発生する。信号抽出手段U22は、トランスの2次巻線Nsに発生したパルス電圧VNsを受け、パルス電圧VNsを論理信号に変換する。信号抽出手段U22は、パルス電圧VNsの周波数がF0であれば論理信号「0」、パルス電圧VNsの周波数がF1であれば論理信号「1」であるとして信号を抽出する。
【0022】
図3は本発明の絶縁型スイッチング電源装置における電圧制御例を示す構成図であり、図4は図3の電圧制御を説明するための波形図である。
絶縁型スイッチング電源装置の2次側に配置された誤差増幅器U23により、出力電圧Voと基準電圧Vrとの差分を検出し、差分信号を絶縁素子U24を介して1次側へフィードバックする。スイッチング制御手段U31のパルス幅変調(PWM)回路により、出力電圧Voは基準電圧Vrと一致するように制御され、出力電圧Voは入力電圧Viや負荷に依存しない安定した電圧となる。
【0023】
図4に示すように、スイッチング制御手段U31のPWM回路は、周波数F0,F1は一定とし、スイッチング素子SW1,SW2の短絡時間(ton)となるオンデューティを制御する。出力電圧Voが基準電圧Vrより小さい場合はtonが長くなるように制御し、出力電圧Voが基準電圧Vrより大きい場合はtonが短くなるように制御する。
【0024】
このように、スイッチング制御手段U31によりスイッチング素子へ供給するパルス信号の周波数及びオンデューティを制御することにより、1つの絶縁トランスTR1で電力の伝達と情報の伝達をすることができるようになり、情報の伝達のために特別に絶縁素子を設ける必要がなくなる。
【0025】
図5は本発明の他の信号伝達例を示す波形図である。
整流平滑回路U21を介して出力電圧Voを出力し続けるためには、信号出力手段U32から信号がない場合にもスイッチング制御手段U31は何らかのパルスを出力する必要がある。このため、信号出力手段U32から論理信号「0」,「1」が出力されない場合に、スイッチング制御手段U31が周波数F0,F1以外の周波数F2のパルス信号を生成し出力するようにしたものである。
【0026】
これにより、信号出力手段U32から論理信号がない場合であっても、電源装置を正常に制御することができる。また、信号抽出手段U22で検出した周波数がF2であれば論理信号がないと認識することができ、論理信号「0」,「1」の信号列の先頭と最終を明確にすることができる。
【0027】
図6は本発明の他の信号伝達例を示す波形図である。
信号出力手段U32がプロセッサ等であり、データとその属性を示す命令等を生成し出力する場合について説明する。
スイッチング制御手段U31は、データが「0」の場合に周波数F0のパルスを生成し、データが「1」の場合に周波数F1のパルスを生成し、命令をF0,F1以外の周波数のパルスに変換して、データと命令をパルス信号POUT1,POUT2としてスイッチング素子SW1,SW2に対して出力する。
【0028】
図6では、スイッチング制御手段U31が信号出力手段U32から受信した命令がリード命令のときに周波数F2のパルスを生成し、ライト命令のときに周波数F3のパルスを生成する。
トランスの2次巻線Nsの電圧VNsには、ライト命令を示す周波数F3のパルスの後に、ライトすべき場所を示すアドレスデータとライトすべきデータの周波数F0,F1によるパルス列が続き、リード命令を示す周波数F2のパルスの後に、リードすべき場所を示すアドレスデータの周波数F0,F1によるパルス列が続いている。
【0029】
信号抽出手段U22で2次巻線Nsに発生した電圧VNsのパルスの周波数を検出することにより、電力伝達用のトランスを用いてデータと命令を伝達することができる。
【0030】
図7は本発明の他の信号伝達例を示す波形図である。
信号出力手段U32がプロセッサ等であり、n進数のデータを生成し出力する場合について説明する。
スイッチング制御手段U31は、n進数のデータの0からnに対応して、それぞれを周波数F0からFnのn個の周波数のパルスに変換して、n進数のデータをパルス信号POUT1,POUT2としてスイッチング素子SW1,SW2に対して出力する。
【0031】
図7では、0から7のデータに対してF0からF7の周波数のパルスを割り当てている。
このようにすることで、n進数のデータを2進数に変換せず、そのまま伝達することが可能となり、複雑な処理がなくなり伝送効率を上げることができる。
【0032】
また、信号出力手段U32がアナログ値を出力するものであってもよく、この場合、スイッチング制御手段U31は、アナログ値のレベルに応じて定められた周波数の制御パルスを生成して出力する。
【0033】
図8は本発明の絶縁型スイッチング電源装置を並列接続した実施例を示す図である。
本発明の絶縁型スイッチング電源装置の出力を突き合わせダイオードを介して並列接続している。突き合わせダイオードにより、各電源装置への出力電流の回り込みを防止している。
【0034】
本発明の電源装置を並列接続することにより、パラレル伝送として複数ビットの信号伝達をすることができる。また、電源装置ごとに伝達する信号を決め、役割ごとに伝送することもできる。
また、各電源装置で同じ信号を伝達し、2次側で受信した信号を比較することにより、伝達されてきた信号の正当性を判断することもできる。
【0035】
図9は本発明の他の電源方式例を示す構成図である。
絶縁型スイッチング電源装置としてハーフブリッジ方式とした場合の回路例を示している。スイッチング周波数を制御して信号伝達をしているので、この他にも、フルブリッジ方式、フォワード方式、フライバック方式等、他の方式のコンバータへも本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施例を示す構成図である。
【図2】図1の信号伝達を説明するための波形図である。
【図3】本発明の絶縁型スイッチング電源装置における電圧制御例を示す構成図である。
【図4】図3の電圧制御を説明するための波形図である。
【図5】本発明の他の信号伝達例を示す波形図である。
【図6】本発明の他の信号伝達例を示す波形図である。
【図7】本発明の他の信号伝達例を示す波形図である。
【図8】本発明の絶縁型スイッチング電源装置を並列接続した実施例を示す図である。
【図9】本発明の他の電源方式例を示す構成図である。
【図10】従来の絶縁型スイッチング電源装置における電力伝達及び信号伝達の説明図である。
【図11】従来の絶縁型スイッチング電源装置の動作を説明するための波形図である。
【符号の説明】
【0037】
Np1,Np2 1次巻線
Ns 2次巻線
SW1,SW2 スイッチング素子
TR1,TR2 トランス
U21 整流平滑回路
U22 信号抽出手段
U31 スイッチング制御手段
U32 信号出力手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスにより1次巻線側と2次巻線側とが絶縁され、前記トランスの1次巻線に印加される電圧をスイッチング素子でオンオフ動作させることにより、前記トランスの2次巻線から整流平滑回路を介して直流電圧の出力を取り出す絶縁型スイッチング電源装置において、
1次巻線側から2次巻線側へ伝達する信号を出力する信号出力手段と、
該信号出力手段から出力された信号に応じて前記スイッチング素子をオンオフ動作させる制御パルスの周波数を変化させるスイッチング制御手段と、
前記トランスの2次巻線に誘起するパルス電圧から前記信号出力手段で出力した信号を抽出する信号抽出手段と、
を有することを特徴とする絶縁型スイッチング電源装置。
【請求項2】
前記信号出力手段は、n進数のデータを出力し、前記スイッチング制御手段は、n進数のそれぞれの値に対応した周波数の制御パルスを生成して出力することを特徴とする請求項1記載の絶縁型スイッチング電源装置。
【請求項3】
前記信号出力手段は、データの属性を示す命令を出力し、前記スイッチング制御手段は、命令ごとに定められた周波数の制御パルスを生成して出力することを特徴とする請求項1又は2記載の絶縁型スイッチング電源装置。
【請求項4】
前記信号出力手段は、アナログ値を出力し、前記スイッチング制御手段は、アナログ値のレベルに応じて定められた周波数の制御パルスを生成して出力することを特徴とする請求項1記載の絶縁型スイッチング電源装置。
【請求項5】
前記スイッチング制御手段は、前記信号出力手段からの信号がない場合には、所定の周波数の制御パルスを出力することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の絶縁型スイッチング電源装置。
【請求項6】
前記スイッチング制御手段は、負荷に供給する出力電圧に応じて制御パルスのデューティ比を調整することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の絶縁型スイッチング電源装置。
【請求項1】
トランスにより1次巻線側と2次巻線側とが絶縁され、前記トランスの1次巻線に印加される電圧をスイッチング素子でオンオフ動作させることにより、前記トランスの2次巻線から整流平滑回路を介して直流電圧の出力を取り出す絶縁型スイッチング電源装置において、
1次巻線側から2次巻線側へ伝達する信号を出力する信号出力手段と、
該信号出力手段から出力された信号に応じて前記スイッチング素子をオンオフ動作させる制御パルスの周波数を変化させるスイッチング制御手段と、
前記トランスの2次巻線に誘起するパルス電圧から前記信号出力手段で出力した信号を抽出する信号抽出手段と、
を有することを特徴とする絶縁型スイッチング電源装置。
【請求項2】
前記信号出力手段は、n進数のデータを出力し、前記スイッチング制御手段は、n進数のそれぞれの値に対応した周波数の制御パルスを生成して出力することを特徴とする請求項1記載の絶縁型スイッチング電源装置。
【請求項3】
前記信号出力手段は、データの属性を示す命令を出力し、前記スイッチング制御手段は、命令ごとに定められた周波数の制御パルスを生成して出力することを特徴とする請求項1又は2記載の絶縁型スイッチング電源装置。
【請求項4】
前記信号出力手段は、アナログ値を出力し、前記スイッチング制御手段は、アナログ値のレベルに応じて定められた周波数の制御パルスを生成して出力することを特徴とする請求項1記載の絶縁型スイッチング電源装置。
【請求項5】
前記スイッチング制御手段は、前記信号出力手段からの信号がない場合には、所定の周波数の制御パルスを出力することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の絶縁型スイッチング電源装置。
【請求項6】
前記スイッチング制御手段は、負荷に供給する出力電圧に応じて制御パルスのデューティ比を調整することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の絶縁型スイッチング電源装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−44837(P2009−44837A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−206441(P2007−206441)
【出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】
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