説明

絶縁抵抗測定装置

【課題】絶縁抵抗が大きい測定対象体についても、検査を誤る事態を回避しつつ絶縁抵抗を短時間で測定する。
【解決手段】測定対象体2の一方の端子2aに測定用電圧V1を印加する電圧発生部3と、測定対象体2を流れる電流I1を電圧に変換して出力するI/V変換部4とを備え、I/V変換部4は、演算増幅器11と、フィードバック抵抗12と、演算増幅器11の入力端子および測定対象体2の他方の端子2bの間に接続されるダイオード14,15と、他方の端子2bおよび基準電位の間に接続されるコンデンサ13とを含んで構成され、I/V変換部4から出力される電圧V2に基づいて測定対象体2の絶縁抵抗を測定し、充電部6と、演算増幅器11の出力端子およびフィードバック抵抗12の間に介装されると共に出力端子および充電部6の一方をフィードバック抵抗12に選択的に接続させる切替部16とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象体の絶縁抵抗を測定する絶縁抵抗測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の絶縁抵抗測定装置として、特許第3391310号公報に開示された種々の絶縁抵抗測定装置が知られている。これらの絶縁抵抗測定装置のうちの同公報における図7に開示された絶縁抵抗測定装置によれば、被測定コンデンサから電流計に至る経路の途中に介装された抵抗と、この抵抗に並列に接続された第1ダイオードと、この抵抗に第1ダイオードと向きが逆になるようにして並列に接続された第2ダイオードとを備えたことにより、介装された抵抗によってハムノイズなどに起因して発生するノイズ電流を低減させつつ、順方向に流れるノイズ電流と逆方向に流れるノイズ電流とを第1および第2ダイオードによってほぼ同じ大きさにして互いに相殺させることができる。したがって、測定している電流値をフィルタリングしたり、平均化するなどのディジタル処理を行ったときに、より真値に近い漏れ電流を求めることができる結果、より真値に近い絶縁抵抗を測定することができる。
【0003】
一方、出願人は、図2に示す構成の絶縁抵抗測定装置51を既に開発している。この絶縁抵抗測定装置51は、測定対象体2に測定用電圧V1を印加する電圧生成部3と、測定用電圧V1の印加時に測定対象体2を流れる電流I1に比例した電圧V2を出力するI/V変換部54とを少なくとも備え、測定対象体2が容量性負荷のときであってもその絶縁抵抗を正確に測定し得るように構成されている。この場合、I/V変換部54は、演算増幅器11、フィードバック抵抗12、コンデンサ13、およびダイオード14,15を備えて構成されている。この絶縁抵抗測定装置51では、コンデンサ13が、測定用電圧V1に重畳するノイズ成分(交流成分)を測定対象体2の静電容量と分圧することによって電圧V2に発生するふらつきを低減させる。また、各ダイオード14,15が、順方向電流の小さいときには順方向抵抗が大きくなり、かつ順方向電流の大きいときには順方向抵抗が小さくなるというダイオードの固有の電流−電圧特性により、測定対象体2の静電容量とフィードバック抵抗12とによって絶縁抵抗測定装置51が微分回路として作動するのを防止して、電圧V2のふらつきを低減させる。したがって、この絶縁抵抗測定装置51によれば、測定対象体2が容量性負荷であるときにおいても、電圧V2の安定度を高めることができるため、測定対象体2の絶縁抵抗を高精度で測定することができる。
【特許文献1】特許第3391310号公報(第3−4頁、第7図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の絶縁抵抗測定装置51では、コンデンサ13を配設したことにより、測定対象体2に対して測定用電圧V1の印加が電圧生成部3によって開始されたとしても、コンデンサ13が充電されるまで、測定対象体2を流れる電流I1がフィードバック抵抗12を流れない結果、測定対象体2の絶縁抵抗を算出し得る電圧V2がI/V変換部54から出力されないこととなる。この場合、コンデンサ13への充電時間は測定対象体2の絶縁抵抗、ダイオード14(または15)の順方向抵抗、およびコンデンサ13の静電容量とによって決定されるため、測定対象体2の絶縁抵抗が非常に大きいときには、I/V変換部54から電圧V2が出力されるまでにある程度の時間を要することとなる。したがって、この絶縁抵抗測定装置51には、電圧V2に基づく測定対象体2の絶縁抵抗の算出(測定)が遅くなるという解決すべき課題が存在する。
【0005】
また、電流I1がコンデンサ13を充電している間では、フィードバック抵抗12に電流I1が流れずに、その後において、コンデンサ13の充電が進むに従って電流I1の一部が徐々にフィードバック抵抗12を流れ始める。そして、コンデンサ13の充電を完了した後に、すべての電流I1がフィードバック抵抗12を流れて、測定対象体2の絶縁抵抗を算出し得る状態となる。このため、I/V変換部54から出力される電圧V2は、測定対象体2への測定用電圧V1の印加直後に、まず、ゼロボルトになり、その後において、コンデンサ13の充電が進むに従い、測定対象体2の絶縁抵抗を算出し得る電圧値に移行する。つまり、電圧V2(言い換えれば電流I1)に基づいて算出される測定対象体2の絶縁抵抗は、測定対象体2への測定用電圧V1の印加直後において、まず無限大になり、その後においては、実際の値に向けて徐々に移行する。したがって、例えば、正常時における絶縁抵抗が大きい絶縁抵抗体を測定対象体2として、その絶縁抵抗を測定するときに、上記の絶縁抵抗測定装置51では、最初に無限大に近い極めて大きな抵抗値が測定される。このため、この絶縁抵抗測定装置51には、絶縁抵抗が低下して不良品となっている測定対象体2のその絶縁抵抗を測定するときに、測定開始直後に大きな抵抗値が測定されるため、測定者によって正常(良品)であると誤って検査するおそれがあるという課題も存在する。
【0006】
本発明は、かかる解決すべき課題に鑑みてなされたものであり、絶縁抵抗が大きい測定対象体についても、検査を誤る事態を回避しつつ、この絶縁抵抗をより短時間で測定し得る絶縁抵抗測定装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく請求項1記載の絶縁抵抗測定装置は、測定対象体の一端に測定用電圧を印加する電圧生成部と、前記測定用電圧の印加時に前記測定対象体を流れる電流を電圧に変換して出力するI/V変換部とを備え、前記I/V変換部は、演算増幅器と、フィードバック抵抗と、前記演算増幅器の入力端子および前記測定対象体の他端の間に接続されるダイオード相補回路と、前記測定対象体の前記他端および基準電位の間に接続されるコンデンサとを含んで構成され、前記I/V変換部から出力される前記電圧に基づいて前記測定対象体の絶縁抵抗を測定する絶縁抵抗測定装置であって、充電部と、前記演算増幅器の出力端子および前記フィードバック抵抗の間に介装されると共に当該出力端子および前記充電部の一方を前記フィードバック抵抗に選択的に接続させる切替部とを備えている。
【0008】
また、請求項2記載の絶縁抵抗測定装置は、請求項1記載の絶縁抵抗測定装置において、前記電圧生成部による前記測定電圧の印加に先立って、前記切替部を制御して前記充電部を前記フィードバック抵抗に接続させると共に、当該充電部を作動させて当該フィードバック抵抗および前記ダイオード相補回路を介して前記コンデンサを充電させる制御部を備えている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の絶縁抵抗測定装置によれば、電圧生成部による測定用電圧の印加に先立って切替部によって充電部をフィードバック抵抗に選択的に接続させて、充電部に対してダイオード相補回路を介して電流を供給させてコンデンサを充電させることにより、電圧生成部による測定用電圧の印加時に測定対象体を流れる電流が充電用電流としてコンデンサに流れるのを回避することができる結果、電圧生成部による測定用電圧の測定対象体への印加開始直後から測定対象体を流れる電流をフィードバック抵抗側に供給することができる。このため、I/V変換部は、電圧生成部による測定用電圧の測定対象体への印加開始から殆ど遅れることなく、電流に比例する電圧を出力することができる。したがって、この絶縁抵抗測定装置によれば、絶縁抵抗が大きい測定対象体についても、I/V変換部から出力される電圧に基づいて測定対象体の絶縁抵抗を短時間で算出することができる。
【0010】
また、この絶縁抵抗測定装置によれば、測定対象体を流れる電流がコンデンサを充電することなくフィードバック抵抗に直ちに流れるため、従来の絶縁抵抗測定装置とは異なり、測定対象体への測定用電圧の印加直後において、算出される測定対象体の絶縁抵抗が無限大になることを回避することができる。したがって、例えば、正常時における絶縁抵抗が極めて大きい絶縁抵抗体を測定対象体として、その絶縁抵抗を測定するときであっても、測定開始直後に無限大の抵抗値が測定されることに起因して測定対象体が正常であると測定者が誤認識して検査を誤る事態を確実に回避することができる。
【0011】
請求項2記載の絶縁抵抗測定装置によれば、制御部が、電圧生成部による測定用電圧の印加に先立って、切替部を制御して充電部をフィードバック抵抗に接続させると共に、充電部を作動させてフィードバック抵抗およびダイオード相補回路を介してコンデンサを充電させることにより、電圧生成部による測定用電圧の印加に先立ってコンデンサを自動的に充電することができる。したがって、コンデンサが未充電の状態のまま絶縁抵抗の測定を実施する事態を確実に回避することができるため、測定対象体の絶縁抵抗を常に短時間で測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る絶縁抵抗測定装置の最良の形態について説明する。
【0013】
最初に、絶縁抵抗測定装置1の構成について説明する。
【0014】
絶縁抵抗測定装置1は、図1に示すように、電圧生成部3、I/V変換部4、A/D変換部5、充電部6、演算制御部7および表示部8を備え、測定対象体2の絶縁抵抗Rを測定可能に構成されている。この場合、電圧生成部3は、演算制御部7に制御されて、測定対象体2の一方の端子(本発明における一端)2aに測定用電圧V1(既知の値。例えば5000V)を印加する。
【0015】
I/V変換部4は、電流−電圧変換回路であって、測定用電圧V1の印加時に測定対象体2を流れる電流I1を測定対象体2の他方の端子(本発明における他端)2bを介して入力すると共に、電流I1に比例する電圧V2(電流I1と後述するフィードバック抵抗12の抵抗値との乗算値)に変換して出力する。具体的には、I/V変換部4は、演算増幅器11、フィードバック抵抗12、測定対象体2の他方の端子2bとグランド(本発明における基準電位)との間に接続されたコンデンサ13(例えば、10nF)、演算増幅器11の反転入力端子(本発明における演算増幅器の入力端子)と測定対象体2の他方の端子2bとの間に介装されて他方の端子2bからフィードバック抵抗12への電流の流れを許容して一方向性素子として機能する第1のダイオード14(本発明におけるダイオード相補回路を構成する一方のダイオードであって、以下、「ダイオード14」ともいう)、ダイオード14に対して逆向きで並列接続されてフィードバック抵抗12から他方の端子2bへの電流の流れを許容して一方向性素子として機能する第2のダイオード15(本発明におけるダイオード相補回路を構成する他方のダイオードであって、以下、「ダイオード15」ともいう)、および演算増幅器11の出力端子とフィードバック抵抗12との間に介装された切替部16とを備えている。この場合、ダイオード14,15で本発明におけるダイオード相補回路が構成される。切替部16は、例えばリレーで構成されると共に、演算制御部7によって制御されて、演算増幅器11の出力端子および充電部6の一方をフィードバック抵抗12に選択的に接続する。なお、I/V変換部4は、切替部16によって演算増幅器11の出力端子とフィードバック抵抗12とが接続されているときに演算増幅器11が反転増幅器として作動して電圧V2を出力する。また、演算増幅器11のフィードバックループ内にフィードバック抵抗12と共に切替部16が含まれる構成のため、本例では、切替部16をI/V変換部4に含める構成を採用したが、これに限らない。例えば、I/V変換部4の外部に切替部16を配設する構成を採用することもできる。
【0016】
A/D変換部5は、I/V変換部4から出力される電圧V2の値をディジタルデータD1に変換して演算制御部7に出力する。充電部6は、演算制御部7によって制御されて、充電用電圧V3(既知の電圧値)を切替部16に出力する。演算制御部7は、電圧生成部3、充電部6および切替部16の動作を制御する。また、演算制御部7は、本発明における制御部に相当し、A/D変換部5から出力されるディジタルデータD1に基づいて電流I1の値を算出すると共に、算出した電流I1の値と測定用電圧V1とに基づいて測定対象体2の絶縁抵抗Rの値を算出する算出処理を実行する。表示部8は、液晶パネル等で構成されている。
【0017】
次に、絶縁抵抗測定装置1による測定対象体2の絶縁抵抗の測定動作について説明する。
【0018】
まず、不図示のプローブを使用して、図1に示すように、電圧生成部3を測定対象体2の一方の端子2aに接続すると共に、I/V変換部4を測定対象体2の他方の端子2bに接続し、次いで、絶縁抵抗測定装置1を作動させる。
【0019】
この際に、まず、演算制御部7が、切替部16を制御して接点16aと接点16cとを接続することにより、演算増幅器11の出力端子とフィードバック抵抗12とを切り離すと共にフィードバック抵抗12に充電部6を接続させる。次いで、演算制御部7は、充電部6を制御して、充電部6に充電用電圧V3を出力させる。これにより、充電用電圧V3に基づく充電電流が、切替部16の接点16c、切替部16の接点16a、フィードバック抵抗12およびダイオード15を介してコンデンサ13に供給されて、コンデンサ13に対する充電が開始される。演算制御部7は、この充電の開始から所定時間経過した後に、充電部6による充電用電圧V3の出力を停止させる。この場合、この所定時間は、フィードバック抵抗12の抵抗値およびダイオード15の順方向抵抗値の加算値、充電用電圧V3の電圧値、およびコンデンサ13の静電容量値などに基づいて、過不足のない状態でコンデンサ13が充電されるように予め設定されている。この場合、フィードバック抵抗12の抵抗値は測定対象体2の絶縁抵抗Rと比較して十分に小さいため、充電部6によるコンデンサ13の充電は、測定対象体2を介して電圧生成部3から充電されるのと比較して極めて短時間で完了する。したがって、この所定時間は、絶縁抵抗測定装置1による絶縁抵抗Rの全測定時間に対して殆ど影響を与えないような極めて短い時間に設定することができる。次いで、演算制御部7は、切替部16を制御して接点16aと接点16bとを接続することにより、充電部6とフィードバック抵抗12とを切り離すと共に演算増幅器11の出力端子をフィードバック抵抗12に接続させる。これにより、I/V変換部4では、フィードバックループが形成された演算増幅器11が反転増幅動作を開始する。
【0020】
続いて、演算制御部7は、電圧生成部3を制御して、測定対象体2に対する測定用電圧V1の印加を開始させる。この場合、コンデンサ13が充電部6によって既に充電されているため、測定用電圧V1の印加に起因して測定対象体2を流れる電流I1は、コンデンサ13を充電しないため、ダイオード14およびフィードバック抵抗12を介して演算増幅器11の出力端子側に直ちに流れ始める。また、I/V変換部4では、上記したように演算増幅器11が、既に反転増幅動作を開始している。したがって、I/V変換部4は、フィードバック抵抗12の抵抗値に電流I1を乗算して得られる電圧値と等しい電圧値の電圧V2を直ちに生成して出力する。次いで、A/D変換部5が、入力した電圧V2の電圧値を示すディジタルデータD1を生成して演算制御部7に出力する。演算制御部7は、入力したディジタルデータD1で示される電圧V2に基づいて、測定対象体2の絶縁抵抗Rを算出する算出処理を実行する。具体的には、演算制御部7は、電圧V2の電圧値をフィードバック抵抗12の抵抗値で除算することによって電流I1の電流値を算出し、算出した電流I1の電流値と測定用電圧V1とに基づいて、測定対象体2の絶縁抵抗Rを算出する。次いで、演算制御部7は、算出した絶縁抵抗Rを表示部8に表示させる。演算制御部7は、以上の算出処理を所定時間おきに繰り返し実行する。これにより、絶縁抵抗測定装置1では、演算制御部7によって算出された絶縁抵抗Rが表示部8にリアルタイムで表示される。
【0021】
このように、この絶縁抵抗測定装置1によれば、電圧生成部3による測定用電圧V1の印加に先立って切替部16によって充電部6をフィードバック抵抗12に選択的に接続させて、充電部6に対して第2のダイオードを介して電流を供給させてコンデンサ13を充電させることにより、電圧生成部3による測定用電圧V1の印加時に測定対象体2を流れる電流I1が充電用電流としてコンデンサ13に流れるのを回避することができる結果、電圧生成部3による測定用電圧V1の測定対象体2への印加開始直後から測定対象体2を流れる電流I1をフィードバック抵抗12側に供給することができる。このため、I/V変換部4は、電圧生成部3による測定用電圧V1の測定対象体2への印加開始から殆ど遅れることなく、電流I1に比例する電圧V2を出力することができる。したがって、この絶縁抵抗測定装置1によれば、測定対象体2の絶縁抵抗Rが非常に大きいときであっても、この電圧V2に基づいて測定対象体2の絶縁抵抗Rを短時間で算出することができる。また、この絶縁抵抗測定装置1によれば、測定用電圧V1の測定対象体2への印加開始から殆ど遅れることなく、演算制御部7が、電圧V2の電圧値を示すディジタルデータD1と既知の測定用電圧V1とに基づいて測定対象体2の絶縁抵抗Rを自動的に算出するため、正確かつ簡易に絶縁抵抗Rを測定することができる。
【0022】
また、この絶縁抵抗測定装置1によれば、測定対象体2を流れる電流I1がコンデンサ13を充電することなくフィードバック抵抗12に直ちに流れるため、従来の絶縁抵抗測定装置51とは異なり、測定対象体2への測定用電圧V1の印加直後において、演算制御部7において算出される測定対象体2の絶縁抵抗Rが無限大になることを回避することができる。したがって、例えば、正常時における絶縁抵抗Rが極めて大きい絶縁抵抗体を測定対象体2として、その絶縁抵抗Rを測定するときであっても、測定開始直後に無限大の抵抗値が測定されることに起因して測定対象体2が正常であると測定者が誤認識して検査を誤る事態を確実に回避することができる。
【0023】
また、この絶縁抵抗測定装置1によれば、演算制御部7が、電圧生成部3による測定用電圧V1の印加に先立って、切替部16を制御して充電部6をフィードバック抵抗12に接続させると共に、充電部6を作動させてフィードバック抵抗12および第2のダイオード15を介してコンデンサ13を充電させることにより、電圧生成部3による測定用電圧V1の印加に先立ってコンデンサ13を自動的に充電することができる。したがって、コンデンサ13が未充電の状態のまま絶縁抵抗Rの測定を実施する事態を確実に回避することができるため、測定対象体2の絶縁抵抗Rを常に短時間で測定することができる。
【0024】
さらに、本発明におけるダイオード相補回路を構成する一対のダイオードとしては、トランジスタのダイオード特性を利用して、一対のバイポーラトランジスタで構成したり、ダイオード相補回路を構成する一方のダイオードとして内部の寄生ダイオードを用いると共にダイオード相補回路を構成する他方のダイオードとして電界効果型トランジスタ本体を用いて1つの電界効果型トランジスタで構成したりすることもできる。
【0025】
なお、本発明は、上記の構成に限定されない。例えば、絶縁抵抗測定装置1では、演算制御部7が電圧V2の電圧値を示すディジタルデータD1と既知の測定用電圧V1とに基づいて測定対象体2の絶縁抵抗を算出して液晶パネル等の表示部8に表示させる構成が採用されているが、表示部8をアナログメータで構成すると共に電圧V2でこのアナログメータの針を直接駆動して絶縁抵抗Rを表示させる構成を採用することもできる。この構成によれば、A/D変換部5を省くことができ、また演算制御部7において絶縁抵抗Rの算出を行う必要がなくなるために演算制御部7の構成を簡略化できる結果、絶縁抵抗測定装置をより簡易かつ安価に構成することができる。また、演算制御部7が電圧生成部3、充電部6および切替部16に対する制御を自動的に実施する構成を採用したが、切替部16の切り替えや、電圧生成部3および充電部6による所定の電圧の発生を手動操作で行う構成を採用することもできる。また、演算制御部7が測定対象体2の絶縁抵抗Rを自動的に算出する構成を採用したが、電圧V2に基づいて手計算で測定対象体2の絶縁抵抗Rを算出することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】絶縁抵抗測定装置1の構成を示すブロック図である。
【図2】絶縁抵抗測定装置51の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0027】
1 絶縁抵抗測定装置
2 測定対象体
2a 一方の端子
2b 他方の端子
3 電圧生成部
4 I/V変換部
6 充電部
7 演算制御部
11 演算増幅器
12 フィードバック抵抗
13 コンデンサ
14,15 ダイオード
16 切替部
I1 電流
V1 測定用電圧
V2 I/V変換部から出力される電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象体の一端に測定用電圧を印加する電圧生成部と、
前記測定用電圧の印加時に前記測定対象体を流れる電流を電圧に変換して出力するI/V変換部とを備え、
前記I/V変換部は、演算増幅器と、フィードバック抵抗と、前記演算増幅器の入力端子および前記測定対象体の他端の間に接続されるダイオード相補回路と、前記測定対象体の前記他端および基準電位の間に接続されるコンデンサとを含んで構成され、
前記I/V変換部から出力される前記電圧に基づいて前記測定対象体の絶縁抵抗を測定する絶縁抵抗測定装置であって、
充電部と、前記演算増幅器の出力端子および前記フィードバック抵抗の間に介装されると共に当該出力端子および前記充電部の一方を前記フィードバック抵抗に選択的に接続させる切替部とを備えている絶縁抵抗測定装置。
【請求項2】
前記電圧生成部による前記測定電圧の印加に先立って、前記切替部を制御して前記充電部を前記フィードバック抵抗に接続させると共に、当該充電部を作動させて当該フィードバック抵抗および前記ダイオード相補回路を介して前記コンデンサを充電させる制御部を備えている請求項1記載の絶縁抵抗測定装置。

【図1】
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【図2】
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